1 00:00:01,000 --> 00:00:18,920 ・~ (テーマ音楽) 2 00:00:18,920 --> 00:00:57,630 ・~ 3 00:00:59,400 --> 00:01:03,270 (やえ)あれ? 彌七つぁんは まだ 帰らねえのかい? 4 00:01:03,270 --> 00:01:07,270 (源造) もう 寄り合いの終わる頃だから もうじき帰ってくるでしょう。 5 00:01:07,270 --> 00:01:10,110 じゃあ 夕飯 もうちょっと待ってやすべなぇ。 6 00:01:10,110 --> 00:01:12,940 すみません。 いつも お客さんに ごはん作り させちまって。 7 00:01:12,940 --> 00:01:17,750 なに 田舎料理ばっかし…。 あれ? 風が出てきたなぇ。 8 00:01:17,750 --> 00:01:20,780 そうですね。 今夜も きっと冷えますよ。 9 00:01:20,780 --> 00:01:23,420 (りん)ちょっと 誰か 手貸して! 早く! 10 00:01:23,420 --> 00:01:26,090 何? どうしたんだ おりん。 松浪先生が…。 11 00:01:26,090 --> 00:01:28,420 松浪先生が どうしたんだ? 話してるひまねえの。 12 00:01:28,420 --> 00:01:32,130 早く来て! 早く! 何? 早く来て? ちょっと…。 13 00:01:36,100 --> 00:01:39,770 先生 大丈夫ですか 先生! 今 口がきけねえんだから・ 14 00:01:39,770 --> 00:01:42,610 呼ばったって しようねえべ! それより 早く 布団敷きな! 15 00:01:42,610 --> 00:01:45,280 あ はい。 あ… 布団 どこだべ? 16 00:01:45,280 --> 00:01:47,940 布団は 押し入れに 決まってるでしょう! 17 00:01:47,940 --> 00:01:50,610 なじょしたんだ おりん。 あっぱとっぱして。 18 00:01:50,610 --> 00:01:53,450 ほれ どきな。 母ちゃん やるから。 19 00:01:53,450 --> 00:01:56,950 はいはい はいはい 布団敷けたから ここさ下ろして! 20 00:01:56,950 --> 00:02:00,220 そっと。 そっとね。 そっとね! 21 00:02:00,220 --> 00:02:02,160 先生…。 22 00:02:02,160 --> 00:02:04,730 医者 呼んできます。 23 00:02:04,730 --> 00:02:07,760 火 おこして 部屋 暖めな。 はい! 24 00:02:07,760 --> 00:02:10,600 先生は大丈夫だから。 25 00:02:10,600 --> 00:02:13,300 しっかりしな! はい。 26 00:02:26,420 --> 00:02:31,090 (彌七)どこ行ったんだ 2人とも。 今時分。 27 00:02:31,090 --> 00:02:34,290 飯の支度は できてるのにな。 28 00:02:45,440 --> 00:02:51,770 2人して 手に手を取って 駆け落ちでもしたかな? 29 00:02:51,770 --> 00:02:58,650 あれで あねさんも よく見ると めんこい顔してっからな。 ハハハ…。 30 00:02:58,650 --> 00:03:00,580 …まさか! 31 00:03:00,580 --> 00:03:05,420 (医師)心身の甚だしき疲労による 昏睡 発熱であるからして・ 32 00:03:05,420 --> 00:03:07,890 まずは 絶対安静を守り・ 33 00:03:07,890 --> 00:03:10,790 頭部を冷やし 体躯を温め・ 34 00:03:10,790 --> 00:03:14,760 時至りて 目覚むれば ただちに さ湯を与え 水分を補い・ 35 00:03:14,760 --> 00:03:18,400 後に 消化よろしく 滋養に富んだ食物を・ 36 00:03:18,400 --> 00:03:21,070 これは 少量ずつ与えること。 お分かりかな? 37 00:03:21,070 --> 00:03:23,010 はい 分かりやす。 38 00:03:23,010 --> 00:03:25,410 あの… 熱は いつごろ 下がりますか? 39 00:03:25,410 --> 00:03:28,440 今も申し上げたとおり 極度の疲労による・ 40 00:03:28,440 --> 00:03:31,750 心身衰弱からきた 発熱であるからして・ 41 00:03:31,750 --> 00:03:35,420 疲労回復の暁には ただちに 解熱となるわけだが・ 42 00:03:35,420 --> 00:03:40,260 診察の結果 どうも 心の臓も いささか弱っておるようで・ 43 00:03:40,260 --> 00:03:44,130 もし これが パタリと止まることでも あれば これは一大事。 44 00:03:44,130 --> 00:03:47,600 やんだ! そんなの やんだ! 45 00:03:47,600 --> 00:03:52,770 大丈夫だ。 そんなことには なりはしないから。 46 00:03:52,770 --> 00:03:55,100 本当? 本当に大丈夫? 47 00:03:55,100 --> 00:03:59,110 (やえ) どうも ありがとうござりやした。 48 00:04:02,210 --> 00:04:05,550 [ 心の声 ] 神様 先生を お救いください。・ 49 00:04:05,550 --> 00:04:08,580 どうぞ 先生を おそばに召したり なさいませんように。・ 50 00:04:08,580 --> 00:04:11,350 先生をお取り上げになっては 嫌です。・ 51 00:04:11,350 --> 00:04:13,420 他には 何にも お願いしません。・ 52 00:04:13,420 --> 00:04:16,260 どうか 神様 先生を お助けください。・ 53 00:04:16,260 --> 00:04:20,060 お願いします! お願いします! 54 00:04:26,940 --> 00:04:29,770 本当に大丈夫ですか? (やえ)おりんと わたすと・ 55 00:04:29,770 --> 00:04:32,640 2人いれば 大丈夫だ。 彌七つぁん 心配してっぺから・ 56 00:04:32,640 --> 00:04:34,910 とにかく お前さん 帰って。 57 00:04:34,910 --> 00:04:38,580 悪かったなぇ。 重い物 しょわせたり・ 58 00:04:38,580 --> 00:04:41,420 医者さ 走らせたりして ごめんなぇ。 59 00:04:41,420 --> 00:04:43,420 いや…。 60 00:04:47,290 --> 00:04:49,290 じゃ…。 61 00:04:53,030 --> 00:05:06,540 ・~ 62 00:05:06,540 --> 00:05:10,210 他人様の台所 勝手に かんまぜて 悪かったけど・ 63 00:05:10,210 --> 00:05:16,550 熱い砂糖湯 作ったから ほら 飲まさんしょ。 元気 出っから。 64 00:05:16,550 --> 00:05:20,060 そだこと言わねえで 飲みな。 65 00:05:20,060 --> 00:05:22,960 先生のことは 母ちゃん 代わりに見てっから。 66 00:05:22,960 --> 00:05:25,660 お前 少し やすんで あっちさ…。 67 00:05:27,400 --> 00:05:29,400 おりん…。 68 00:06:03,530 --> 00:06:07,700 先生… 先生。 69 00:06:07,700 --> 00:06:11,710 先生 目覚ましたんですか。 先生…。 70 00:06:15,440 --> 00:06:18,050 起きて。 眠っては 駄目…。 71 00:06:18,050 --> 00:06:23,220 起きて。 目 覚まして! 先生! 先生! 72 00:06:23,220 --> 00:06:25,250 やめろ。 そだことしては駄目だ おりん。 73 00:06:25,250 --> 00:06:28,090 離して。 目 覚まさねえと 先生 死んでしまう! 74 00:06:28,090 --> 00:06:30,890 死んでしまう… 先生~! 75 00:06:33,730 --> 00:06:37,600 これくらいのことで そだに のぼせ上がって なじょする! 76 00:06:37,600 --> 00:06:41,900 母ちゃん お前を そだに みったぐねえ女に・ 77 00:06:41,900 --> 00:06:45,210 育てた覚えはねえぞぃ。 しっかりしねえか! 78 00:06:48,080 --> 00:06:55,420 そだに心配しなくても 先生は よくなっから。 79 00:06:55,420 --> 00:06:59,390 神様が ちゃんと守ってくださるから・ 80 00:06:59,390 --> 00:07:02,090 大丈夫だ おりん。 81 00:07:12,200 --> 00:07:15,870 (小鳥の鳴き声) 82 00:07:15,870 --> 00:07:20,380 なして? なして わたす ここさ いては いけねえの? 83 00:07:20,380 --> 00:07:23,710 先生が はっきり 目 覚めるまで わたす ここにいる! 84 00:07:23,710 --> 00:07:26,220 もう お前は いいから。 85 00:07:26,220 --> 00:07:31,390 先生の看病は 母ちゃんが ちゃんとすっから。 86 00:07:31,390 --> 00:07:34,220 今日は また お医者も来てくれるし・ 87 00:07:34,220 --> 00:07:36,890 お前 心配しねえで 学校さ帰りな。 88 00:07:36,890 --> 00:07:42,060 学校さ帰って 舎監の先生さまに 松浪先生のこと 話しな。 89 00:07:42,060 --> 00:07:45,900 そしたら 学校の方で 看病の人 よこしてくれっぺから。 90 00:07:45,900 --> 00:07:49,740 なして わたすは ここさ いては いけねえの? 91 00:07:49,740 --> 00:07:53,410 いさしてやりてえげんともなぇ・ 92 00:07:53,410 --> 00:07:57,280 こういうことには 節度っつうもんが あんだ。 93 00:07:57,280 --> 00:08:03,850 お前が これ以上 ここさいては その節度が切れっちまう。 94 00:08:03,850 --> 00:08:08,190 学校で勉強すんのが お前の務めだ。 95 00:08:08,190 --> 00:08:10,530 早く帰りな。 でも…。 96 00:08:10,530 --> 00:08:12,830 帰りな おりん。 97 00:08:16,330 --> 00:08:21,700 ・~ 98 00:08:21,700 --> 00:08:27,880 ・「Twinkle, twinkle, little star」 99 00:08:27,880 --> 00:08:39,690 ・~ 100 00:08:53,040 --> 00:08:55,910 (節子)おりんさん…。 101 00:08:55,910 --> 00:08:58,910 どこ行ってしまったんだろう。 102 00:09:05,510 --> 00:09:09,020 「母に会いに行ってきます。・ 103 00:09:09,020 --> 00:09:11,050 明日の朝 帰って来ますから・ 104 00:09:11,050 --> 00:09:14,760 心配しないで下さい。 りん」。 105 00:09:37,050 --> 00:09:42,720 明日 帰るっつうのに 荷物ぐらい まとめておかねばと思ってなぇ。 106 00:09:42,720 --> 00:09:45,050 今夜も また 松浪先生の所に? 107 00:09:45,050 --> 00:09:48,890 先生は もう大丈夫だから いいって言うんだげんと・ 108 00:09:48,890 --> 00:09:52,560 まだ ちょっと心配だし おりんにも約束したから・ 109 00:09:52,560 --> 00:09:57,430 今夜は あっちさ泊まりやす。 おばさんも大変でしたね 今度は。 110 00:09:57,430 --> 00:10:00,740 あねさん これ 相馬へ お土産に。 111 00:10:00,740 --> 00:10:03,240 いやいや すまねえなぇ。・ 112 00:10:03,240 --> 00:10:08,080 これ… 入るなぇ。 これ においが うつらねえかぇ? 113 00:10:08,080 --> 00:10:10,780 (彌七) ちょっと うつりますかねえ。 114 00:10:22,590 --> 00:10:25,260 先生…。 115 00:10:25,260 --> 00:10:29,770 先生 大丈夫ですか? 熱は下がったんですか? 116 00:10:29,770 --> 00:10:33,970 苦しくないですか? 先生。 (松浪)いや…。 117 00:10:42,110 --> 00:10:46,950 母ちゃん… 母ちゃん? 118 00:10:46,950 --> 00:10:52,620 あの… 母は? お帰りになった。 119 00:10:52,620 --> 00:10:55,420 先生 一人で ほっぽって? 120 00:10:59,400 --> 00:11:02,600 でも また来るんでしょ? 121 00:11:10,410 --> 00:11:13,240 先生…。 122 00:11:13,240 --> 00:11:15,440 帰りなさい。 123 00:11:18,910 --> 00:11:21,580 帰りなさい。 124 00:11:21,580 --> 00:11:26,760 生徒が こんな時間に こんな所にいては いけない。 125 00:11:26,760 --> 00:11:29,260 早く帰りなさい。 126 00:11:29,260 --> 00:11:31,560 帰りません。 127 00:11:34,600 --> 00:11:38,770 女学校の塀は 中から よじ登ることは できっけど・ 128 00:11:38,770 --> 00:11:43,640 外からは 登れないんです。 今 帰っても 中には入れません。 129 00:11:43,640 --> 00:11:47,110 明日の朝 賄いの おイネおばさんが・ 130 00:11:47,110 --> 00:11:50,980 通用門を開くまで わたすは帰れないんです。 131 00:11:50,980 --> 00:11:54,620 君は あの塀を 乗り越えてきたのかい? 132 00:11:54,620 --> 00:11:58,120 はい。 どうして そんな むちゃなことを。 133 00:12:02,420 --> 00:12:05,730 先生が心配だったからです。 134 00:12:05,730 --> 00:12:07,760 塀を乗り越えたりするのは・ 135 00:12:07,760 --> 00:12:11,070 見つかったら 退学になるって知っています。 136 00:12:11,070 --> 00:12:15,910 でも… 心配で…。 137 00:12:15,910 --> 00:12:19,410 心配で じっとしてらんにかったんです。 138 00:12:22,580 --> 00:12:26,750 ほんでも あの塀が あだに高いとは思わねかった。 139 00:12:26,750 --> 00:12:30,090 いや 飛び落ちる時 おっかねかったこと。 140 00:12:30,090 --> 00:12:32,920 けがしつまった。 けがをした? 141 00:12:32,920 --> 00:12:35,960 どこを けがした? 大したけがでねえんです。 142 00:12:35,960 --> 00:12:38,090 ちょっと すりむいただけだから。 どこを? 見せなさい。 143 00:12:38,090 --> 00:12:40,600 でも…。 いいから 見せなさい。 144 00:12:43,900 --> 00:12:48,440 飛び落ちる時 転んじまって…。 145 00:12:48,440 --> 00:12:53,110 前は あのぐらいの高さなんか 平気だったのに。 アハハ。 146 00:12:53,110 --> 00:12:57,450 それでも 化膿するといけないから 薬を つけておきなさい。 147 00:12:57,450 --> 00:13:00,420 薬は あそこの…。 (せきこみ) 148 00:13:00,420 --> 00:13:04,250 先生! (せきこみ) 149 00:13:04,250 --> 00:13:06,560 水を…。 はい! 150 00:13:10,990 --> 00:13:13,500 ・先生 しっかり飲んで。 151 00:13:21,570 --> 00:13:24,240 (せきこみ) 152 00:13:24,240 --> 00:13:26,580 お医者さん 呼んできましょうか? 先生。 153 00:13:26,580 --> 00:13:28,510 いや 大丈夫だ。 でも…。 154 00:13:28,510 --> 00:13:30,710 いいと言ったら いい。 155 00:13:33,750 --> 00:13:35,950 帰りなさい。 156 00:13:37,920 --> 00:13:43,730 学校に帰れなかったら 叔父さんのお宅に行きなさい。 157 00:13:43,730 --> 00:13:47,630 お母さんの所に帰りなさい。 158 00:13:47,630 --> 00:13:50,430 ここにいては いけない。 159 00:13:52,270 --> 00:13:56,140 なして いけないんですか? 160 00:13:56,140 --> 00:13:58,770 寄宿舎の規則を破ったり・ 161 00:13:58,770 --> 00:14:01,540 塀を乗り越えたりしたことは 悪いことだと思います。 162 00:14:01,540 --> 00:14:05,380 でも… 何にもしねえで・ 163 00:14:05,380 --> 00:14:09,050 寄宿舎の中で ただ 心配だけしてて・ 164 00:14:09,050 --> 00:14:14,390 その間に もしも… もしも 先生のご病気が悪くなって…。 165 00:14:14,390 --> 00:14:17,230 もしも… ごめんなさい 変なこと言って。 166 00:14:17,230 --> 00:14:19,900 でも…。 167 00:14:19,900 --> 00:14:23,200 もしも 先生が 死んでしまったりしたら…。 168 00:14:25,400 --> 00:14:29,270 死んでしまったりしたら…。 169 00:14:29,270 --> 00:14:31,570 そしたら わたす もっともっと・ 170 00:14:31,570 --> 00:14:34,380 もう 一生 後悔すると思ったんです! 171 00:14:37,080 --> 00:14:39,980 後悔しながら生きるのは 嫌です。 172 00:14:39,980 --> 00:14:42,750 だから ここに来たんです! 173 00:14:42,750 --> 00:14:45,650 退学になっても かまわねえから・ 174 00:14:45,650 --> 00:14:48,460 来たんです。