1 00:00:02,170 --> 00:00:20,920 ・~ (テーマ音楽) 2 00:00:20,920 --> 00:00:58,930 ・~ 3 00:01:02,900 --> 00:01:08,610 (やえ)あれ? おマツちゃん! 暑いなぇ。 寄ってかねえかぇ? 4 00:01:11,410 --> 00:01:14,910 (りん)なにも あだふうに 逃げねくたって…。 5 00:01:14,910 --> 00:01:19,080 おマツさんまで あんなに なっつまって…。 ひどいなぇ。 6 00:01:19,080 --> 00:01:23,590 しかたねえよ。 だれだって 我が身が 一番かわいいんだから。 7 00:01:23,590 --> 00:01:26,090 そのうち 分かってくれっぺよ。 8 00:01:26,090 --> 00:01:28,590 母ちゃん わたす ここ 代わっから。 9 00:01:28,590 --> 00:01:31,260 いいよ。 母ちゃん ここに座ってっから。 10 00:01:31,260 --> 00:01:34,300 でも ここさ居っと また今みてぐ 嫌な思い しねっかなんねから。 11 00:01:34,300 --> 00:01:37,070 お前 そだことに 気ぃ遣わねで いいから・ 12 00:01:37,070 --> 00:01:39,000 自分のこと やってな。 13 00:01:39,000 --> 00:01:42,870 そろそろ 仙台に戻る支度 しねっかなんねんだべ? 14 00:01:42,870 --> 00:01:48,110 いやいや こだな夏休みになるとは 思わねがったなぃ。 15 00:01:48,110 --> 00:01:51,780 ほんでも 母ちゃん お前が そばにいてくれて・ 16 00:01:51,780 --> 00:01:55,950 なんぼ助かったか。 ありがとなぇ。 17 00:01:55,950 --> 00:01:58,860 母ちゃん…。 18 00:01:58,860 --> 00:02:02,760 やっぱり わたすが ここに居た方が いい? 19 00:02:02,760 --> 00:02:05,060 え…? 20 00:02:05,060 --> 00:02:07,400 何 言ってんだ。 21 00:02:07,400 --> 00:02:10,230 お前 女学校の仕事が あんでねえの。 22 00:02:10,230 --> 00:02:14,740 でも…。 ここのことは 心配しなくていいから。 23 00:02:14,740 --> 00:02:19,910 母ちゃん。 ほんとのこと 言ってほしいんだ わたす。 24 00:02:19,910 --> 00:02:23,250 わたすが どうすれば 母ちゃんたちが うれしいのか・ 25 00:02:23,250 --> 00:02:25,280 わたすに どうしてもらいてえのか・ 26 00:02:25,280 --> 00:02:28,120 なぇ… ほんとの気持ち 言ってくらんしょ 母ちゃん。 27 00:02:28,120 --> 00:02:33,260 お前に やってもらいたい ことかぇ? 28 00:02:33,260 --> 00:02:39,560 ほんだなぁ… 母ちゃんから 別に注文はねえげんと…。 29 00:02:41,130 --> 00:02:45,440 おみつみてえに…・ 30 00:02:45,440 --> 00:02:51,110 親より先に死ぬのだけは やめてもらいてえ。 31 00:02:51,110 --> 00:02:56,610 それだけ守ってくれたら もう 何も 母ちゃんから 注文は…。 32 00:02:56,610 --> 00:02:59,520 あったわ。 あ 1つ あったわ。 33 00:02:59,520 --> 00:03:03,050 何? 何の注文? 34 00:03:03,050 --> 00:03:09,360 うれしい顔して 嫁っこに 行ってもらいたいってこと。 35 00:03:11,230 --> 00:03:13,560 母ちゃん…。 36 00:03:13,560 --> 00:03:17,230 仕事もいい。 勉強もいい。 37 00:03:17,230 --> 00:03:23,040 だげんど 女が 一生 独りで 仕事や勉強だけ やるっつうのは・ 38 00:03:23,040 --> 00:03:25,910 やっぱり寂しいべ。 39 00:03:25,910 --> 00:03:29,410 なにも 泣き泣き嫁に行くことは ねえげんと・ 40 00:03:29,410 --> 00:03:36,920 いい相手がいたら うれしい顔して 嫁っこに行ってもらいてえ。 41 00:03:36,920 --> 00:03:41,420 それだけだぁ 母ちゃんからの注文は。 42 00:03:41,420 --> 00:03:44,130 無理な注文かぃ? 43 00:03:48,300 --> 00:03:52,940 ううん。 無理じゃない。 44 00:03:52,940 --> 00:03:57,770 わたす 母ちゃんの その注文 かなえてあげられると思う。 45 00:03:57,770 --> 00:04:01,540 おりん…。 46 00:04:01,540 --> 00:04:07,880 わたす きっと お嫁に行く時は うれしい顔で行く。 47 00:04:07,880 --> 00:04:11,220 今すぐじゃないけど。 何? いつ? 48 00:04:11,220 --> 00:04:14,890 いつか分からないげんと… いつか きっと。 49 00:04:14,890 --> 00:04:19,760 はあ… そうかい。 そうかい やっぱり…! 50 00:04:19,760 --> 00:04:23,900 やっぱり? いやいやいや 女っつうものは・ 51 00:04:23,900 --> 00:04:27,770 やっぱり そう思うんでねえか っつうこと! 52 00:04:27,770 --> 00:04:30,770 これなら もう 何にも心配すっことねえわ。 53 00:04:30,770 --> 00:04:33,580 いがったなぇ おりん。 母ちゃん わたす まだ・ 54 00:04:33,580 --> 00:04:35,910 だれのとこさ行くとも 何とも 言ってねえんだよ? 55 00:04:35,910 --> 00:04:39,420 いいんだよ。 そだこと… そだこと言わねくたって・ 56 00:04:39,420 --> 00:04:42,920 お前たちの気持ちさえ そうなら それでいいんだ。 57 00:04:42,920 --> 00:04:44,950 お前たちって…。 58 00:04:44,950 --> 00:04:49,430 お前は 幸せになってくらんしょ。 59 00:04:49,430 --> 00:04:54,100 おみつの分まで 幸せになんねっか わがんねぞぃ。 60 00:04:54,100 --> 00:04:57,430 母ちゃん…。 61 00:04:57,430 --> 00:05:00,100 母ちゃんは わたすに・ 62 00:05:00,100 --> 00:05:03,970 何も心配しねえで 仙台さ 帰っていいって 言ったげんと・ 63 00:05:03,970 --> 00:05:08,210 ほんとに それで いいんだべか? 64 00:05:08,210 --> 00:05:12,720 兄ちゃんも わたすも 家のために 何にもしねえで・ 65 00:05:12,720 --> 00:05:19,890 自分で 好きなことばっかりしてて ほんとに それでいいんだべか。 66 00:05:19,890 --> 00:05:24,760 近所の人まで おみつは 肺病で死んだって そう思って・ 67 00:05:24,760 --> 00:05:27,560 だれも 寄っつかねく なっちまってる。 68 00:05:27,560 --> 00:05:32,900 そんな家 ほっぽっといて ほんとに仙台さ帰って・ 69 00:05:32,900 --> 00:05:35,200 ほんとに わたす それで いいんだべか!? 70 00:05:36,770 --> 00:05:39,680 (弘次郎) 余計な心配をする暇があったら・ 71 00:05:39,680 --> 00:05:44,480 自分の将来のことでも きちんと考えておけ。 72 00:05:53,090 --> 00:05:55,590 父ちゃん…。 73 00:05:57,960 --> 00:06:05,170 娘に そだことまで心配させては… 親も しまいだなぇ。 74 00:06:07,370 --> 00:06:48,910 ・~ 75 00:06:48,910 --> 00:06:52,780 (徳右衛門)弘次郎は どこへ行くと 言って 出かけたんだ? 76 00:06:52,780 --> 00:06:57,920 何にも言わねえで 黙って…。 黙って出かける所は・ 77 00:06:57,920 --> 00:07:02,360 決まっておりやす。 みつの所か…。 78 00:07:02,360 --> 00:07:06,230 (こと)いつまでも そのようなことでは…。 79 00:07:06,230 --> 00:07:09,230 わたす 迎えに行ってきやす。 80 00:07:12,030 --> 00:07:15,370 父ちゃん…。 81 00:07:15,370 --> 00:07:36,390 ・~ 82 00:07:36,390 --> 00:07:40,900 飯のあとで みなに話がある。 83 00:07:44,570 --> 00:07:48,070 <夕食のあと 弘次郎は・ 84 00:07:48,070 --> 00:07:50,570 思いがけないことを 話しだしたのです> 85 00:07:50,570 --> 00:07:53,080 東京へ? わたすたちが 東京へ…? 86 00:07:53,080 --> 00:07:56,110 そうです。 親父さまも おふくろさまも みな一緒に・ 87 00:07:56,110 --> 00:07:59,580 東京へ行きます。 そんな おとっつぁん いきなり…。 88 00:07:59,580 --> 00:08:02,550 (徳右衛門)理由は? この相馬を引き払い・ 89 00:08:02,550 --> 00:08:06,390 家じゅうで 東京に行くという その理由は 何か? 90 00:08:06,390 --> 00:08:09,690 (弘次郎)橘家と 私自身の 再生のためです。 91 00:08:12,030 --> 00:08:16,530 おみつを あのように 死なせたのは 私の責任です。 92 00:08:16,530 --> 00:08:20,400 士族としての体面や面目に こだわって 生きてきた・ 93 00:08:20,400 --> 00:08:22,410 私の やり方が・ 94 00:08:22,410 --> 00:08:26,040 みつを 吉川に嫁入らせ 殺してしまいました。 95 00:08:26,040 --> 00:08:30,550 父ちゃん それは違うわ! 黙って 聞きなさい。 96 00:08:30,550 --> 00:08:35,420 今まで 正しいと信じて 疑わなかった 私のやり方に・ 97 00:08:35,420 --> 00:08:40,220 おみつの死が 刃を 突きつけてきました。 98 00:08:40,220 --> 00:08:44,090 何もかも 分からなくなりました。 99 00:08:44,090 --> 00:08:47,400 子供に死なれた親は みな そのように迷うものだ。 100 00:08:47,400 --> 00:08:50,730 お前が そのように思いつめるのも 無理ないことだが・ 101 00:08:50,730 --> 00:08:54,900 やがて 月日が その悲しみを忘れさせて・ 102 00:08:54,900 --> 00:08:57,240 また 元のとおりに…。 103 00:08:57,240 --> 00:08:59,180 元のとおりになって・ 104 00:08:59,180 --> 00:09:01,680 また元のとおりに 生きていくことが・ 105 00:09:01,680 --> 00:09:06,180 果たして 正しいのかどうか…。 106 00:09:06,180 --> 00:09:11,350 己の中にのみ 閉じこもり 己の生き方を 押しつけ・ 107 00:09:11,350 --> 00:09:14,190 近所づきあいも ろくにしなかった。 108 00:09:14,190 --> 00:09:17,030 その結果が…・ 109 00:09:17,030 --> 00:09:20,860 おみつに あのような結婚をさせ・ 110 00:09:20,860 --> 00:09:24,700 あのように 忌まわしい噂を 着せかけられ・ 111 00:09:24,700 --> 00:09:28,040 そして…・ 112 00:09:28,040 --> 00:09:33,910 あのように… 死なせてしまいました。・ 113 00:09:33,910 --> 00:09:37,750 そういう自分に 再び 戻って良いのかどうか。・ 114 00:09:37,750 --> 00:09:43,450 この数日 考え抜き そして 決めました。 115 00:09:45,220 --> 00:09:48,260 (弘次郎)今まで 引きずってきた 過去を断ち切り・ 116 00:09:48,260 --> 00:09:51,990 心機一転 新しく生き直すためには・ 117 00:09:51,990 --> 00:09:54,400 この土地に このまま いては 駄目です。 118 00:09:54,400 --> 00:09:58,900 二本松からも相馬からも 遠く離れた 新しい場所で・ 119 00:09:58,900 --> 00:10:05,570 何もかも 初めから やり直し 自分自身を たたき直さなければ。 120 00:10:05,570 --> 00:10:10,250 それのできる所は 東京しか ありません。 121 00:10:10,250 --> 00:10:13,750 しかし 東京は お前の最も嫌っている・ 122 00:10:13,750 --> 00:10:16,250 明治新政府の お膝元だぞ? 123 00:10:16,250 --> 00:10:19,160 だからこそ 己をたたき直すのに・ 124 00:10:19,160 --> 00:10:21,920 一番 ふさわしい場所だと 思ったんです。 125 00:10:21,920 --> 00:10:25,590 それに 彌七の手紙にも あるように・ 126 00:10:25,590 --> 00:10:30,270 その気になれば 東京に 仕事は なんぼでも あるという。 127 00:10:30,270 --> 00:10:34,100 みなが この地を離れることに 反対であれば・ 128 00:10:34,100 --> 00:10:37,440 私一人が 出稼ぎに行ってもよい。 129 00:10:37,440 --> 00:10:41,110 何 かたって。 おとっつぁん一人に 出稼ぎさして・ 130 00:10:41,110 --> 00:10:44,010 私ら ここで ノウノウとしてられると思うのかぇ? 131 00:10:44,010 --> 00:10:47,280 だったら お前も一緒に行くのだ。 じいさま 何か言ってくだっしょ。 132 00:10:47,280 --> 00:10:50,320 おとっつぁんに 何か言ってやってくだっしょ! 133 00:10:50,320 --> 00:10:53,790 あの時と同じだな こと。 134 00:10:53,790 --> 00:10:57,290 二本松を捨てて 別の場所で生きたいと言った・ 135 00:10:57,290 --> 00:11:00,560 あの時の弘次郎と同じだ。 はい。 136 00:11:00,560 --> 00:11:03,400 やえ これは 止めても止まらぬぞ。 137 00:11:03,400 --> 00:11:06,740 そんな…。 (弘次郎)親父さまや おっかさまには・ 138 00:11:06,740 --> 00:11:08,770 まことに申し訳ないことですが…。 139 00:11:08,770 --> 00:11:10,910 (徳右衛門) こっちに気遣いは要らん。 140 00:11:10,910 --> 00:11:14,240 二本松を離れた後は どこへ行こうと同じこと。 141 00:11:14,240 --> 00:11:18,410 流れに身を任せて生きるのも 一興。 142 00:11:18,410 --> 00:11:23,090 ただ ことの体が…。 143 00:11:23,090 --> 00:11:26,590 私の方こそ 気遣いは要りません。 144 00:11:26,590 --> 00:11:31,460 弘次郎 お前が そうと決めたら 止めても無駄でしょう。 145 00:11:31,460 --> 00:11:34,330 私は どこへでも参りますよ。 146 00:11:34,330 --> 00:11:40,140 ただ… やえさんは この土地に 生まれ育った お人。・ 147 00:11:40,140 --> 00:11:43,770 なぇ やえさん 何か言いたいことが・ 148 00:11:43,770 --> 00:11:47,640 ござりましょう? 何だか 頭が ボウッとして…。 149 00:11:47,640 --> 00:11:50,450 何を どう考えていいのか…。 150 00:11:50,450 --> 00:11:55,620 父ちゃん わたすは? わたすは どうすればいいの? 151 00:11:55,620 --> 00:11:57,950 (弘次郎)もちろん お前も 一緒に行くのだ。・ 152 00:11:57,950 --> 00:12:02,390 お前にこそ 東京は 一番ふさわしい場所だ。・ 153 00:12:02,390 --> 00:12:07,260 それに お前が 今 一番 行きたい場所のはずだ。・ 154 00:12:07,260 --> 00:12:10,130 そうでないのか? 155 00:12:10,130 --> 00:12:13,040 父ちゃん…。 156 00:12:13,040 --> 00:12:20,580 私の決意は変わらない。 みなで 東京へ行くのだ。 157 00:12:20,580 --> 00:12:22,780 いいな? やえ。 158 00:12:25,450 --> 00:12:43,270 ・~ 159 00:12:43,270 --> 00:12:45,600 おばちゃん…。 160 00:12:45,600 --> 00:12:49,770 <りんの人間形成の 最初の基礎を作ってくれ・ 161 00:12:49,770 --> 00:12:53,440 そして 忘れがたい 青春の思い出を作ってくれた・ 162 00:12:53,440 --> 00:12:56,110 女学校との別れでした> 163 00:12:56,110 --> 00:13:00,880 おとっつぁん。 先に送る荷物 持っていきやすか? 164 00:13:00,880 --> 00:13:03,550 これが 先に送る分だなぇ。 165 00:13:03,550 --> 00:13:05,550 え? 166 00:13:09,360 --> 00:13:13,160 お前の両親の墓参りは 済んだのか? 167 00:13:19,100 --> 00:13:22,400 泣いてきたのか? 168 00:13:22,400 --> 00:13:25,410 おとっつぁん…。 169 00:13:28,580 --> 00:13:32,880 お前にも 苦労さすな。 170 00:13:38,920 --> 00:13:40,960 やえ…。 171 00:13:40,960 --> 00:14:13,560 ・~ 172 00:14:13,560 --> 00:14:16,460 ちょっと待って! 173 00:14:16,460 --> 00:14:41,580 ・~ 174 00:14:41,580 --> 00:14:47,260 <未知の世界 東京へ向かって 橘家の新しい旅立ちでした。・ 175 00:14:47,260 --> 00:14:49,930 行く手に待つのは 何か?・ 176 00:14:49,930 --> 00:14:54,230 でも りんの胸は 希望で いっぱいでした>