1 00:00:02,210 --> 00:00:15,820 ・~ (テーマ音楽) 2 00:00:15,820 --> 00:01:19,320 ・~ 3 00:01:21,280 --> 00:01:23,790 あっ 危ねえな! 気をつけろ! 4 00:01:23,790 --> 00:01:27,290 <師走の声を聞くと 東京の人々の動きは・ 5 00:01:27,290 --> 00:01:29,990 いっそう せわしげに なってきました> 6 00:01:31,630 --> 00:01:35,300 (やえ)気をつけてなぇ。 もう 道が凍みてっとこあっから・ 7 00:01:35,300 --> 00:01:38,800 滑って 転ばねえように。 また 腰 痛めっと 大変だから。 8 00:01:38,800 --> 00:01:41,300 (弘次郎) うっつぁしいな! そだことは 言われなくても 分かってる! 9 00:01:41,300 --> 00:01:43,340 黙ってろ。 はいはい 行ってこさんしょ。 10 00:01:43,340 --> 00:01:46,340 (こと)ご苦労さま。 行って参りやす。 11 00:01:48,480 --> 00:01:51,810 変わらねえなぇ。 え? 12 00:01:51,810 --> 00:01:55,320 おとっつぁん 相馬にいた時と・ 13 00:01:55,320 --> 00:01:58,150 ちっとも 変わっておりやせんなぇ。 14 00:01:58,150 --> 00:02:00,420 何を言うのですか。 15 00:02:00,420 --> 00:02:03,760 あれほど 武士に こだわっていた 弘次郎が・ 16 00:02:03,760 --> 00:02:07,630 ああして 木場の材木運びを しているのですよ。 17 00:02:07,630 --> 00:02:10,270 恥も ほこりも 振り捨てて。 18 00:02:10,270 --> 00:02:12,940 あれほどの変わりようが ござりやすか。 19 00:02:12,940 --> 00:02:16,810 わたすが言っているのは おとっつぁんの心のことで…。 20 00:02:16,810 --> 00:02:19,810 心が変わらないのが いけませんか? 21 00:02:19,810 --> 00:02:23,450 いや 変わらねぐて いがったって 言ってるんです。 22 00:02:23,450 --> 00:02:27,950 していることは変わっても おとっつぁんは やっぱり・ 23 00:02:27,950 --> 00:02:30,850 元のままの おとっつぁんで いがったなえって…。 24 00:02:30,850 --> 00:02:34,620 そうですとも。 何が どう変わろうと・ 25 00:02:34,620 --> 00:02:38,130 弘次郎の心は 決して変わりません。 26 00:02:38,130 --> 00:02:41,160 (徳右衛門)おい こと! こと! はい。 27 00:02:41,160 --> 00:02:43,630 わしの たっつけ袴 どこに出してある? 28 00:02:43,630 --> 00:02:47,970 たっつけ袴? そのようなことは 聞いておりやせんが。 29 00:02:47,970 --> 00:02:51,010 何を言うか。 今日 はくから 出しておけと・ 30 00:02:51,010 --> 00:02:53,310 昨夜 ちゃんと 言っておいたではないか。 31 00:02:53,310 --> 00:02:56,150 そのような話は 何も…。 32 00:02:56,150 --> 00:02:59,180 (徳右衛門)言うたぞ! 伺うておりやせん。 33 00:02:59,180 --> 00:03:01,950 言うた。 呆けるのは まだ早いぞ。 34 00:03:01,950 --> 00:03:05,250 何を言うのですか。 まあ どちらが先に・ 35 00:03:05,250 --> 00:03:07,290 呆けているのでござりやしょう。 36 00:03:07,290 --> 00:03:10,130 そっちだ。 まあ! 37 00:03:10,130 --> 00:03:12,130 なんと まあ…。 38 00:03:12,130 --> 00:03:15,830 今になって そんな急に 言われたとて…。 39 00:03:17,830 --> 00:03:22,110 <英語塾の事件以来 教師に おそれをなして・ 40 00:03:22,110 --> 00:03:25,140 家で仕立物の手伝いなどを していた りんでしたが・ 41 00:03:25,140 --> 00:03:27,610 はね駒が いつまでも そんなことで・ 42 00:03:27,610 --> 00:03:29,610 おさまるはずもなく…> 43 00:03:34,120 --> 00:03:37,150 何 お前 どこか でかけんの? (りん)うん。 44 00:03:37,150 --> 00:03:39,790 どこさ? 桂庵っていうとこ。 45 00:03:39,790 --> 00:03:42,460 ケイアンって 何だい? いろんな仕事の口・ 46 00:03:42,460 --> 00:03:44,790 探してくれるとこ。 おようさんが教えてくれたの。 47 00:03:44,790 --> 00:03:46,730 どんな仕事 世話してくれんの? 48 00:03:46,730 --> 00:03:48,970 それは 行ってみないと 分かんねえけど・ 49 00:03:48,970 --> 00:03:51,870 あんまり 大した仕事の口はねえ って おようさん言ってた。 50 00:03:51,870 --> 00:03:53,840 ふうん…。 51 00:03:53,840 --> 00:03:57,670 でも もしかして ひょっとしたら いい仕事があっかもしんねえし・ 52 00:03:57,670 --> 00:04:00,580 ただ じっと 家の中で 仕立物してるのも・ 53 00:04:00,580 --> 00:04:03,080 何か 能がない気がしてな…。 54 00:04:03,080 --> 00:04:05,920 とにかく 行ってきます。 ほんじゃ よし・ 55 00:04:05,920 --> 00:04:08,250 母ちゃんも 一緒に行くべ。 え? 母ちゃんも? 56 00:04:08,250 --> 00:04:10,750 また 塾の先生みたぐ だまされっと わかんねえから。 57 00:04:10,750 --> 00:04:13,660 それ言わないで。 今度は 気ぃつけっから もう大丈夫。 58 00:04:13,660 --> 00:04:16,260 ついてこなくて いいから。 お前 しっかりしてるようで・ 59 00:04:16,260 --> 00:04:18,190 抜けてっとこ あっから…。 60 00:04:18,190 --> 00:04:21,430 やっぱし 母ちゃんも一緒に行くべ。 61 00:04:21,430 --> 00:04:23,470 いいっつうのに もう…。 62 00:04:23,470 --> 00:04:27,600 わたす ちっこい童でねえんだぞぇ 母ちゃん。 63 00:04:27,600 --> 00:04:30,510 ああ いい気持ちだ。 64 00:04:30,510 --> 00:04:33,710 久しぶりに ゆっくり 息ついた。 65 00:04:36,310 --> 00:04:40,180 本当はなぇ お前に かこつけて・ 66 00:04:40,180 --> 00:04:42,620 母ちゃんも 外さ出てみたかったんだ。 67 00:04:42,620 --> 00:04:46,620 なんだかハァ 家さ いっと 肩 張っちまって…。 68 00:04:48,490 --> 00:04:52,300 狭いとこで 顔合わせてっからなぇ みんなで。 69 00:04:52,300 --> 00:04:55,200 どれどれ? 70 00:04:55,200 --> 00:04:58,800 あら! 張ってるわ 母ちゃん。 71 00:04:58,800 --> 00:05:03,410 じいさまも ばあさまも きっと 肩 張ってんだべなぇ。 72 00:05:03,410 --> 00:05:06,740 この頃 ちっと機嫌悪いし…。 73 00:05:06,740 --> 00:05:09,580 東京暮らしの疲れが 出てきたんでないかぇ。 74 00:05:09,580 --> 00:05:12,420 ほうだなぇ。 ごちゃごちゃしてっから。 75 00:05:12,420 --> 00:05:17,120 もうちっと広いとこさ のんびり 住まわせてあげられればなぇ…。 76 00:05:19,760 --> 00:05:23,260 わたす やっぱり 何か 仕事見つけねっか。 77 00:05:23,260 --> 00:05:25,560 母ちゃんにも 何かあっぺか。 78 00:05:29,430 --> 00:05:32,340 わたす 体を使う仕事 大好きですから・ 79 00:05:32,340 --> 00:05:34,600 ちゃんと お給料 いただけるんでしたら・ 80 00:05:34,600 --> 00:05:37,510 何でも やりますから。 体だけは 丈夫でやすから。 81 00:05:37,510 --> 00:05:42,110 (主人)女学校 出てんじゃなぁ…。 女学校出てては 駄目なんですか? 82 00:05:42,110 --> 00:05:46,620 学問した女は 使う方が 嫌がるんだ。 生意気だって…。 83 00:05:46,620 --> 00:05:49,120 じゃあ 女学校 出てないってことにすれば…。 84 00:05:49,120 --> 00:05:52,460 いやぁ どっか違うからなぁ。 85 00:05:52,460 --> 00:05:56,630 もったいないことしたなぁ。 女学校なんか行っちゃって。 86 00:05:56,630 --> 00:06:00,400 東京で こだこと言われるとは 思わねがったなぇ。 87 00:06:00,400 --> 00:06:03,900 あ お手当のいい口が あることは あるんだ。 88 00:06:03,900 --> 00:06:06,240 これは 今日一日だけの仕事だから…。 89 00:06:06,240 --> 00:06:09,140 いいです! 一日だけの仕事でも わたす やります! 90 00:06:09,140 --> 00:06:12,040 いや これはな…。 91 00:06:12,040 --> 00:06:15,410 あんたがいい。 え? わたす? 92 00:06:15,410 --> 00:06:17,350 (主人)あんたは 愛きょうがあって いい。・ 93 00:06:17,350 --> 00:06:20,250 ぽっちゃりして かわいい顔してる。 94 00:06:20,250 --> 00:06:23,090 うん やっぱり あんたがいい。 95 00:06:23,090 --> 00:06:25,760 やんだ。 何 語って…。 96 00:06:25,760 --> 00:06:28,420 おりんより わたすの方が かわいいなんて・ 97 00:06:28,420 --> 00:06:31,460 そんな うまいこと言って…。 いやいや なじょすっぺ。 98 00:06:31,460 --> 00:06:34,100 まあまあ わたすで できることでしたら・ 99 00:06:34,100 --> 00:06:37,000 何でも いたしやすから どだな仕事でやすか? 100 00:06:37,000 --> 00:06:41,770 本当に 何でもやるんだね? いや もうハァ 何でも…。 101 00:06:41,770 --> 00:06:44,610 一日権妻っていう仕事が あるんだがね…。 102 00:06:44,610 --> 00:06:47,510 一日…? 一日権妻。 103 00:06:47,510 --> 00:06:52,280 ゴンサイ? つまりさ 一日だけ 妾になる仕事。 104 00:06:52,280 --> 00:06:56,150 妾って… わたすが!? いや 一日だけで いいんだ。・ 105 00:06:56,150 --> 00:06:58,620 この節 けちな男が増えてね・ 106 00:06:58,620 --> 00:07:01,060 ちゃんと囲うには 金が かかるから・ 107 00:07:01,060 --> 00:07:06,230 せめて 一日だけでも 妾を持った 気分になりたいってもんさ。 108 00:07:06,230 --> 00:07:08,730 支度は 何も いらないんだから そちらさえ よけりゃ・ 109 00:07:08,730 --> 00:07:10,670 今からでも すぐ案内するよ。 110 00:07:10,670 --> 00:07:13,070 おしろいぐらい ちょいと つけといた方がいいな。 111 00:07:13,070 --> 00:07:15,740 あんたは 化粧映えのする顔してる。・ 112 00:07:15,740 --> 00:07:18,640 うちにある おしろい つけとくかい? 結構です! 113 00:07:18,640 --> 00:07:21,080 そんな… お世話さまでした。 114 00:07:21,080 --> 00:07:25,580 母ちゃん 行くべ! (主人)いやいや 手当がいいんだ。 115 00:07:25,580 --> 00:07:29,420 あの… ちょっと お伺いしますが。 (主人)はい。 何ですか? 116 00:07:29,420 --> 00:07:31,450 そこの坂井様の お屋敷では・ 117 00:07:31,450 --> 00:07:34,260 住み込みの女中は お入り用じゃございませんか? 118 00:07:34,260 --> 00:07:36,930 (主人)坂井様? そんな話は 聞いちゃいないがね。・ 119 00:07:36,930 --> 00:07:39,760 あんた 住み込み女中の口でも 探してるのかね? 120 00:07:39,760 --> 00:07:42,100 ええ どこか いいところが ありましたら…。 121 00:07:42,100 --> 00:07:44,130 みどりさん? 122 00:07:44,130 --> 00:07:49,270 おりんさん! あら おばさんも…。 123 00:07:49,270 --> 00:07:52,610 (みどり)アハハハハ! おばさんの方がいいって? 124 00:07:52,610 --> 00:07:55,650 それ 傑作… ハハッ。 125 00:07:55,650 --> 00:08:00,120 そんな大声で笑わないでよ。 こだこと 人に聞かれたら恥だわ。 126 00:08:00,120 --> 00:08:04,550 笑いごとじゃないわよ! 随分 失礼な話だと思わない? 127 00:08:04,550 --> 00:08:07,220 (みどり)それは あなたに対して? おばさんに対して? 128 00:08:07,220 --> 00:08:09,160 両方に対してよ! 129 00:08:09,160 --> 00:08:12,400 娘の前で 母親に 一日だけの妾になれなんて・ 130 00:08:12,400 --> 00:08:16,900 勧めるなんて 随分 人を侮辱した話だと思わない? 131 00:08:16,900 --> 00:08:18,830 ねえ 母ちゃん? 132 00:08:18,830 --> 00:08:22,710 のびっこと のびっこと…。 うまい餅だわぁ。 133 00:08:22,710 --> 00:08:25,410 のんびり お餅なんか引っ張って。 134 00:08:25,410 --> 00:08:27,910 悔しくねえのかぇ? 母ちゃん。 135 00:08:27,910 --> 00:08:29,950 いや 悔しいぞぇ。 136 00:08:29,950 --> 00:08:33,250 何つうこと 言うんだべ あの おやじは…。 137 00:08:33,250 --> 00:08:35,920 娘より わたすの方が めんこいなんて・ 138 00:08:35,920 --> 00:08:38,250 どこに 目つけてんだか…。 139 00:08:38,250 --> 00:08:41,760 わたすに 妾だと…。 いやいや たまげた。 140 00:08:41,760 --> 00:08:44,090 いや 悔しいぞぇ。 141 00:08:44,090 --> 00:08:47,960 何だか おばさん お喜びのようよ。 何を喜ぶのよ。 142 00:08:47,960 --> 00:08:50,870 そこが 女心の 複雑なとこなのよね。 143 00:08:50,870 --> 00:08:54,440 みどりさん あなたの考え方も 少し いやらしいんでない? 144 00:08:54,440 --> 00:08:57,110 あなたも そんな ムキになることないじゃない。 145 00:08:57,110 --> 00:09:01,380 おりんさん 東京で 女が何かして働こうと思ったら・ 146 00:09:01,380 --> 00:09:04,280 そんな お嬢さんっぽい考え だったら つぶされちゃうわよ。 147 00:09:04,280 --> 00:09:07,180 大体 桂庵なんて 半分 女衒みたいなこと やってるのが・ 148 00:09:07,180 --> 00:09:10,890 当たり前なのよ。 一日権妻で 憤慨しているようじゃ 甘い甘い。 149 00:09:10,890 --> 00:09:13,720 この おしるこ並みに甘いわよ。 だって みどりさんだって・ 150 00:09:13,720 --> 00:09:16,560 その桂庵に 女中の口 頼みに…。 151 00:09:16,560 --> 00:09:20,400 そうだ みどりさん 新聞記者 なして 辞めてしまったの? 152 00:09:20,400 --> 00:09:22,900 どうして 新聞記者 辞めて 女中さんに? 153 00:09:22,900 --> 00:09:25,400 私 新聞記者 辞めちゃいませんよ。 154 00:09:25,400 --> 00:09:28,900 え? だって…。 155 00:09:28,900 --> 00:09:32,580 この格好? これはね 化けこみ用。 156 00:09:32,580 --> 00:09:34,610 みどりさん 化け物になっちまったの? 157 00:09:34,610 --> 00:09:36,750 いや 化け物じゃないの。 化けこみ。 158 00:09:36,750 --> 00:09:39,780 何? 化けこみって。 159 00:09:39,780 --> 00:09:44,090 つまりさ 新聞記者という身分を隠して・ 160 00:09:44,090 --> 00:09:47,420 こういう格好をして 有名な人の家の女中とか・ 161 00:09:47,420 --> 00:09:50,090 格式のある料理屋の仲居とかで 住み込むの。 162 00:09:50,090 --> 00:09:52,760 そして そういう所の 人には見せない・ 163 00:09:52,760 --> 00:09:55,100 裏側の暮らしっぷりを すっぱ抜くのよ。 164 00:09:55,100 --> 00:09:57,430 新聞に書くの? そうよ。 165 00:09:57,430 --> 00:10:00,100 御大家の奥さんが 人が見ていないとこでは・ 166 00:10:00,100 --> 00:10:02,040 腹ばいになって タバコを吸うとか。 167 00:10:02,040 --> 00:10:05,780 有名な料理屋の主人が 女中たちには・ 168 00:10:05,780 --> 00:10:09,610 毎日 なすの煮つけ一品だけしか おかずにさせないとかさ。 169 00:10:09,610 --> 00:10:12,520 ウッター 書かれた人は たまげるだべな。 170 00:10:12,520 --> 00:10:14,780 そだことしていいの? みどりさん。 171 00:10:14,780 --> 00:10:18,120 そういう記事を 世の中の人は 喜んで読むのよ。 172 00:10:18,120 --> 00:10:21,160 みんな 誰でも 他人の隠し事には 興味があるのよね。 173 00:10:21,160 --> 00:10:24,630 そこを 私が満足させてあげるわけ。 174 00:10:24,630 --> 00:10:27,530 塀の穴から 中のぞくようなもんだなぇ。 175 00:10:27,530 --> 00:10:30,130 (みどり)そうそう おばさん よくお分かりね。 176 00:10:30,130 --> 00:10:32,800 わたすもね 娘っこの頃に・ 177 00:10:32,800 --> 00:10:36,970 庭で行水してたら 塀の穴から のぞく奴が いっから・ 178 00:10:36,970 --> 00:10:39,640 穴のまわりに すす 塗っといたんだ。 179 00:10:39,640 --> 00:10:42,680 そしたら 後で 盆の経 読みに来た坊さんの・ 180 00:10:42,680 --> 00:10:46,520 片目のまわりが 真っ黒で たまげたわぁ。 181 00:10:46,520 --> 00:10:49,150 (みどり)人間なんて 皆 そんなもんよ。 182 00:10:49,150 --> 00:10:54,660 じゃあ みどりさんは そのお坊さんと同じってわけ? 183 00:10:54,660 --> 00:10:59,330 おりんさんも厳しいこと言うわね。 でも まあ そんなもんかな。 184 00:10:59,330 --> 00:11:02,930 新聞記者の仕事って そういうのが多いの? 185 00:11:02,930 --> 00:11:05,600 私のしていることは 特別よ。 186 00:11:05,600 --> 00:11:09,270 だって 新聞記者の世界って 全く男の世界でしょ? 187 00:11:09,270 --> 00:11:12,610 その中で 女が負けずに 仕事してこうと思ったら・ 188 00:11:12,610 --> 00:11:17,110 男にはできない やり方で していくしかないじゃないの。・ 189 00:11:17,110 --> 00:11:20,920 男は 女中に化けられないもんね。 190 00:11:22,620 --> 00:11:27,120 でも 大変だなぇ。 そんな 男ばっかりの中で…。 191 00:11:27,120 --> 00:11:29,790 あ~ら 男ばっかりだから いいのよ。 192 00:11:29,790 --> 00:11:31,730 もう 男なんか よりどりみどり…。 193 00:11:31,730 --> 00:11:35,530 あっ みどりは 私だ。 アハハハハ! 私だね。 194 00:11:45,270 --> 00:11:49,480 みどりさんも あれで なかなか 大変だなぇ。 195 00:11:49,480 --> 00:11:53,320 あだに気張って 疲れねえべか? 196 00:11:53,320 --> 00:11:55,650 母ちゃん。 197 00:11:55,650 --> 00:11:58,320 わたす もう一軒 別の桂庵に行ってみる。 198 00:11:58,320 --> 00:12:01,290 桂庵は もう やめた方が いいんでねえかぇ? 199 00:12:01,290 --> 00:12:04,590 また 一日権妻なんて言われたら 腹立つべ? 200 00:12:04,590 --> 00:12:08,260 それだけじゃないと思うわ。 東京って こんなに広いんだもの。 201 00:12:08,260 --> 00:12:12,130 別の桂庵に行ってみれば ほかの仕事 あっかもしれねえし。 202 00:12:12,130 --> 00:12:15,770 ほんでも…。 みどりさんだって ああやって・ 203 00:12:15,770 --> 00:12:19,110 捨て身で 自分の仕事に 取り組んでるんですもの。 204 00:12:19,110 --> 00:12:21,440 ああいうふうに ならなければ・ 205 00:12:21,440 --> 00:12:24,280 東京で 女が 仕事なんて できないのよね。 206 00:12:24,280 --> 00:12:27,180 わたすも 自分に甘えていては 駄目だわ。 207 00:12:27,180 --> 00:12:30,150 もっと しっかりしねっか! 208 00:12:30,150 --> 00:12:33,790 わたす 桂庵に行ってみるから。 一人で いいから。 209 00:12:33,790 --> 00:12:36,490 いや おりん ちょっと…。 210 00:12:42,460 --> 00:12:46,470 (やえ)おりん ちょっと待ちなって…。 211 00:12:55,640 --> 00:12:57,980 おりん お前…。 母ちゃん。 わたす ちょっと・ 212 00:12:57,980 --> 00:13:00,580 中に入って聞いてみる。 お前 女中に…? 213 00:13:00,580 --> 00:13:03,250 女中だって 立派な仕事だわ。 みどりさんだって・ 214 00:13:03,250 --> 00:13:05,590 ああして 何でも してるんだもの わたすだって…。 215 00:13:05,590 --> 00:13:08,260 それに ここは 立派なお家のようだし。 216 00:13:08,260 --> 00:13:11,160 とにかく どんな仕事があるのか わたす 聞いてみっから。 217 00:13:11,160 --> 00:13:14,960 いや おりんは また…。 すぐ はねっちまうんだから…。 218 00:13:22,810 --> 00:13:24,810 ごめんください! 219 00:13:29,110 --> 00:13:31,310 ごめんください! 220 00:13:33,620 --> 00:13:35,550 誰も いねんだべか…。 221 00:13:35,550 --> 00:13:37,850 ごめんください! 222 00:13:39,960 --> 00:13:42,630 (キク)何のご用でしょうか? 223 00:13:42,630 --> 00:13:45,460 表の はり紙を見て 参りました。 224 00:13:45,460 --> 00:13:49,970 ああ あれを…。 でも 女中は 2人も いりませんよ。 225 00:13:49,970 --> 00:13:52,300 いえ わたすは この子の母親で…。 226 00:13:52,300 --> 00:13:56,810 おっかさん? ほう~ おっかさんの付き添いで…。 227 00:13:56,810 --> 00:13:59,480 いえ わざわざ ついてきて もらったんではありません。 228 00:13:59,480 --> 00:14:02,910 ちょうど 一緒に通りかかったら あのはり紙が見えたもんですから。 229 00:14:02,910 --> 00:14:05,950 そうなんでござりやす。 この子は なにも わたすなんか・ 230 00:14:05,950 --> 00:14:08,780 ついてなくても 一人で ちゃんと できるんでござりやす。 231 00:14:08,780 --> 00:14:16,090 あの… あの… この間も 一人で仙台の女学校さ…。 232 00:14:16,090 --> 00:14:19,600 いいから 母ちゃんは黙ってて。 233 00:14:19,600 --> 00:14:23,100 言葉の様子だと 東北の方から? 234 00:14:23,100 --> 00:14:25,930 はい 福島県の相馬から 参りました。 235 00:14:25,930 --> 00:14:30,440 福島から…。 まだ10月に出てきたばっかしで。 236 00:14:33,610 --> 00:14:37,780 あの… わたす 橘りんと申します。 二十歳になります。 237 00:14:37,780 --> 00:14:39,720 いや 親がついていながら・ 238 00:14:39,720 --> 00:14:42,450 二十歳になるまで 嫁にも行かせねえで・ 239 00:14:42,450 --> 00:14:44,390 お恥ずかしいことで ござりやすが・ 240 00:14:44,390 --> 00:14:46,790 これには いろいろ訳がござりやして…。 241 00:14:46,790 --> 00:14:49,490 ちょっと…。 とにかく お上がりなさい。 242 00:14:51,290 --> 00:14:55,800 わたすが 女学校 出たことや 先生してたことは 黙っててよ!