1 00:00:02,170 --> 00:00:20,560 ・~ (テーマ音楽) 2 00:00:20,560 --> 00:00:59,060 ・~ 3 00:01:02,570 --> 00:01:04,500 (源造)おはよう。 (りん)あ おはようございます。 4 00:01:04,500 --> 00:01:06,440 お母さん おはようございます。 (やえ)おはようござりやす。 5 00:01:06,440 --> 00:01:09,440 今朝は 早いこと。 早く起きないと やつらに井戸端 占領されるから。 6 00:01:09,440 --> 00:01:11,570 やつらだって。 悪いわね。 7 00:01:11,570 --> 00:01:15,080 んだなぇ これからは 早い者勝ちだわ 何でも。 8 00:01:15,080 --> 00:01:17,010 (花田)おはようございます。 あ おはようございます。 9 00:01:17,010 --> 00:01:19,420 おたくも早いこと。 グズグズしてると 井戸端 満員になるけ。 10 00:01:19,420 --> 00:01:21,750 もう 1人 行ってますよ。 えっ もう!? 11 00:01:21,750 --> 00:01:24,790 これからは 急ごう。 これから 朝は戦争だなぇ。 12 00:01:24,790 --> 00:01:26,920 こっちも 負けねえように さっさとしねっか。 13 00:01:26,920 --> 00:01:29,590 お釜の火 引いといてくだっしょ。 はいはい。 14 00:01:29,590 --> 00:01:32,260 (後藤)あの…。 何!? おたくも起きてたの。 15 00:01:32,260 --> 00:01:35,300 おはよう。 おはようございます。 あの…。 16 00:01:35,300 --> 00:01:38,940 ほれ 早く 井戸端さ行かねっか 顔洗う場所 なくなっちまうよ。 17 00:01:38,940 --> 00:01:41,770 この家の 便所… はばかりは あそこ1つだけなんですか? 18 00:01:41,770 --> 00:01:43,810 外便所 ないんですか? 悪いげんと・ 19 00:01:43,810 --> 00:01:46,610 はばかりは 1つだけだぞぇ。 だれか入ってんの? 20 00:01:46,610 --> 00:01:48,650 おじさんみたいなんですけど。 おとっつぁん? 21 00:01:48,650 --> 00:01:51,780 だったら ちょっこらちょっとでは 出てこねえぞぇ。 22 00:01:51,780 --> 00:01:54,450 悪いげんと ゆっくり 待たさんしょ。 そだこと…。 23 00:01:54,450 --> 00:01:57,950 そだことも こだことも 朝は もう早い者勝ち 強い者勝ち! 24 00:01:57,950 --> 00:02:00,390 ボッとしてっと ほれ 負けちまうから! 25 00:02:00,390 --> 00:02:02,430 ちょっと どいてくだっしょ! 26 00:02:02,430 --> 00:02:04,730 あうっ…。 27 00:02:04,730 --> 00:02:07,560 あ おじさん出た! (浦野)後藤はん お先。 28 00:02:07,560 --> 00:02:09,770 (後藤)あ~っ! 29 00:02:13,440 --> 00:02:16,070 ばあさま 洗い物あったら 出してくだっしょ。 30 00:02:16,070 --> 00:02:19,580 私 ついでに洗っちまうから。 (こと)何にも ありやせんぞぃ。 31 00:02:19,580 --> 00:02:22,080 あら ばあさま 何 縫ってるの? 32 00:02:22,080 --> 00:02:25,750 産着ですよ。 産着!? 33 00:02:25,750 --> 00:02:28,650 そんな びっくりした声を出して。 34 00:02:28,650 --> 00:02:32,260 やや子ができれば 産着がいるのは 当たり前でしょう。 35 00:02:32,260 --> 00:02:36,060 じゃ これ… 私の やや子の産着? 36 00:02:37,930 --> 00:02:40,430 少し早いようだけれども・ 37 00:02:40,430 --> 00:02:45,100 私が 針が持てるうちに 縫っておきたいと思ってなぃ。 38 00:02:45,100 --> 00:02:47,600 ばあさま ありがとう。 39 00:02:47,600 --> 00:02:50,440 でも こだに暑い時に あんまり無理しねえで。 40 00:02:50,440 --> 00:02:52,780 体に障っから。 41 00:02:52,780 --> 00:02:57,110 何にも 無理なんか してやしませんぞぃ。 42 00:02:57,110 --> 00:03:02,090 昔 自分の やや子の産着を 縫った時のことを・ 43 00:03:02,090 --> 00:03:05,390 思い出したりして 楽しくて。 44 00:03:05,390 --> 00:03:08,420 弘次郎の産着を縫った この手で・ 45 00:03:08,420 --> 00:03:15,570 今は 弘次郎の孫 私の ひ孫の産着を 縫っている。 46 00:03:15,570 --> 00:03:20,740 こうしているとなぃ この私の手を通して・ 47 00:03:20,740 --> 00:03:27,610 私の命が 針目を伝わっていく ような気がしてなぃ。 48 00:03:27,610 --> 00:03:30,450 私の命を受け継ぐ者が・ 49 00:03:30,450 --> 00:03:35,920 この産着を着て 元気に育ってくれる。 50 00:03:35,920 --> 00:03:40,590 こんな幸せなことは ござりやせんぞぃ。 51 00:03:40,590 --> 00:03:43,090 こんな うれしい思いを させてくれて・ 52 00:03:43,090 --> 00:03:45,760 おりん ありがとうなぇ。 53 00:03:45,760 --> 00:03:48,260 やんだ ばあさま そんな…。 54 00:03:48,260 --> 00:03:52,140 でも そうね…。 55 00:03:52,140 --> 00:03:55,040 この 私の おなかの子供には・ 56 00:03:55,040 --> 00:03:57,970 ばあさまや じいさまや おとっつぁんや 母ちゃんや・ 57 00:03:57,970 --> 00:04:00,710 源造さんや 私や・ 58 00:04:00,710 --> 00:04:03,050 みんなの血が 流れてるのね。 59 00:04:03,050 --> 00:04:07,220 私と源造さんだけの 子供じゃないのね。 60 00:04:07,220 --> 00:04:09,720 そうでやすよ。 61 00:04:09,720 --> 00:04:13,060 小野寺の家と 橘の家と・ 62 00:04:13,060 --> 00:04:19,830 両方の ご先祖様の血を受け継いで 生まれてくる やや子。 63 00:04:19,830 --> 00:04:25,640 一生懸命 立派な人間に 育ててくだっしょなぃ。 64 00:04:25,640 --> 00:04:28,600 はい! 一生懸命 育てます。 65 00:04:28,600 --> 00:04:30,610 源造さんと一緒に。 66 00:04:30,610 --> 00:04:34,340 そうそう。 子育てでなぃ・ 67 00:04:34,340 --> 00:04:38,750 何か 難しいことに ぶち当たった時に・ 68 00:04:38,750 --> 00:04:43,920 二親が そろって 力を合わせて 真剣に ことに当たれば・ 69 00:04:43,920 --> 00:04:48,420 必ず いい答えが 出てくるものでござりやすよ。 70 00:04:48,420 --> 00:04:51,460 何でも 源造さんと相談してなぃ。 71 00:04:51,460 --> 00:04:54,300 ばあさまも やっぱり じいさまと そうして・ 72 00:04:54,300 --> 00:04:58,130 おとっつぁんたちを育てたの? フフフ… じいさま? 73 00:04:58,130 --> 00:05:02,870 じいさまは 子育ては もう 私に任せっきり。 74 00:05:02,870 --> 00:05:06,710 何を尋ねても 「お前の いいと思うようにやれ。・ 75 00:05:06,710 --> 00:05:09,210 わしゃ 忙しい」の 一点張り。 76 00:05:09,210 --> 00:05:12,050 何だべ じいさま ずるいこと。 77 00:05:12,050 --> 00:05:17,390 んでもなぃ 一番大事なことの時には・ 78 00:05:17,390 --> 00:05:22,590 必ず じいさまが 道を決めてくれやした。 79 00:05:22,590 --> 00:05:28,430 これは 私にとっては とても安心なことでござりやした。 80 00:05:28,430 --> 00:05:34,440 だから 私は いつでも 心穏やかに 生きてこられました。 81 00:05:36,140 --> 00:05:42,410 ばあさま 今までに 一番うれしかったことって 何? 82 00:05:42,410 --> 00:05:44,350 フフフ…。 83 00:05:44,350 --> 00:05:50,290 うれしかったこと 悲しかったこと それぞれに あったけど…。 84 00:05:50,290 --> 00:05:55,590 そうだなぃ… じいさまと 一緒になって・ 85 00:05:55,590 --> 00:05:59,430 いい息子たちを 持たせてもらって・ 86 00:05:59,430 --> 00:06:04,870 いい嫁さまが来て かわいい孫ができて…。 87 00:06:04,870 --> 00:06:10,370 今は こうして ひ孫の産着を 縫わせてもらっている。 88 00:06:10,370 --> 00:06:15,710 今が 一番うれしい時で ござりやしょうなぃ。 89 00:06:15,710 --> 00:06:18,610 そう…。 90 00:06:18,610 --> 00:06:21,220 なぁ おりん・ 91 00:06:21,220 --> 00:06:26,390 元気な かわいい やや子を 産んでくだっしょなぃ。 92 00:06:26,390 --> 00:06:29,060 なっ? おりん。 93 00:06:29,060 --> 00:06:31,560 はい! 94 00:06:36,930 --> 00:06:40,670 (徳右衛門)棚があると 不要の物を 上に納められっから・ 95 00:06:40,670 --> 00:06:43,070 部屋が広く使えていい。 96 00:06:43,070 --> 00:06:45,980 ちいと曲がってないか? (弘次郎)しかし・ 97 00:06:45,980 --> 00:06:48,840 玄人はだしというか うまいものですね。 98 00:06:48,840 --> 00:06:52,250 何を言うか。 わしゃ 若い頃から 棚つりの名人だったんだぞ。 99 00:06:52,250 --> 00:06:55,590 棚つりのですか。 覚えてないか? 二本松の あの家。 100 00:06:55,590 --> 00:06:58,090 至る所に棚が あったろうが。 101 00:06:58,090 --> 00:07:00,360 ああ そう言えば ありましたな。 102 00:07:00,360 --> 00:07:05,190 (徳右衛門) フフフフフ しかし 気がつくと 棚の上には 品物でなくて・ 103 00:07:05,190 --> 00:07:08,700 お前たちが 乗ってたりしてな。 そうでした。 104 00:07:08,700 --> 00:07:14,370 弦一郎兄や彌七と 悪ふざけをして よく 母上に しかられました。 105 00:07:14,370 --> 00:07:18,870 あの頃 お前たちの母親は 厳しかったなぁ。 106 00:07:18,870 --> 00:07:23,210 板の間に 長い間 正座させられて…。 107 00:07:23,210 --> 00:07:27,720 あの時の足の痛さ まだ覚えています。 108 00:07:27,720 --> 00:07:30,620 あの頃は ことも若くて・ 109 00:07:30,620 --> 00:07:33,890 お前たちを 押さえつける元気があったな。 110 00:07:33,890 --> 00:07:36,390 今は ああだが…。 111 00:07:38,230 --> 00:07:42,500 お前は知らねえだろうが あれが娘の頃は・ 112 00:07:42,500 --> 00:07:47,440 家中の若侍が みな ひそかに 思いをかけたほどの美人でな・ 113 00:07:47,440 --> 00:07:50,640 わしは 仲間に恨まれた。 114 00:07:52,280 --> 00:07:55,410 往事茫々と言うが・ 115 00:07:55,410 --> 00:07:59,250 あれが 15で 嫁に来た時のことだけは・ 116 00:07:59,250 --> 00:08:03,120 今でも はっきり覚えてる。 117 00:08:03,120 --> 00:08:05,820 美しかった…。 118 00:08:07,960 --> 00:08:13,360 その息子にしては お前は 不細工だな。 119 00:08:13,360 --> 00:08:16,170 父上に似たんでしょう! 120 00:08:18,530 --> 00:08:21,370 ハハハハ! 121 00:08:21,370 --> 00:08:24,870 (やえ)じいさま 終わりやしたか? えっ? 122 00:08:24,870 --> 00:08:26,810 あ~。 123 00:08:26,810 --> 00:08:29,210 終わったら スイカでも切りやすべ。 124 00:08:29,210 --> 00:08:33,080 うまそうなスイカを 井戸さ冷やしてあっから。 125 00:08:33,080 --> 00:08:36,090 ばあさま スイカ 切りやしたぞぃ! 126 00:08:40,220 --> 00:08:43,130 みなさ~ん スイカ切りやしたよ! 127 00:08:43,130 --> 00:08:45,090 冷たいうちに 食べてくださ~い! 128 00:08:45,090 --> 00:08:47,960 ・(やえ)あいよ! 今 行くぞぃ! 129 00:08:47,960 --> 00:08:50,230 ばあさま ひと休みしてくだっしょなぇ。 130 00:08:50,230 --> 00:08:52,230 このスイカ 甘いぞぇ。 131 00:08:54,100 --> 00:08:58,410 ばあさま? あら 居眠りしてんだべか。 132 00:08:58,410 --> 00:09:01,380 ばあさま 起きて。 ばあさま! 133 00:09:01,380 --> 00:09:03,850 ちょ…。 134 00:09:03,850 --> 00:09:07,050 ばあさま どうしたの? ばあさ…。 135 00:09:10,350 --> 00:09:13,260 ばあさま! なじょしたんだ? 136 00:09:13,260 --> 00:09:16,860 ばあさまが… ばあさまが! 137 00:09:16,860 --> 00:09:20,130 ばあさま? おっかさま! 138 00:09:20,130 --> 00:09:22,700 こと! しっかりせい! 139 00:09:22,700 --> 00:09:25,200 しっかりしてくだっしょ おっかさま! こと! 140 00:09:25,200 --> 00:09:27,800 こと! おっかさま! 141 00:09:30,370 --> 00:09:34,710 おっかさま? おっかさま! おっかさま! 142 00:09:34,710 --> 00:09:37,210 おっかさま~! 143 00:09:40,580 --> 00:09:43,890 <時代の荒波に もまれながらも・ 144 00:09:43,890 --> 00:09:47,220 心優しく生きた りんの祖母は・ 145 00:09:47,220 --> 00:09:51,090 生まれてくる新しい命を 喜びつつ・ 146 00:09:51,090 --> 00:09:57,570 ほほえみを浮かべて その生涯を閉じたのでした> 147 00:09:57,570 --> 00:10:23,590 ・~ 148 00:10:23,590 --> 00:10:29,930 あまり泣いてばかりいて おなかの子に さわるようだと・ 149 00:10:29,930 --> 00:10:33,270 かえって おばあさまが 心配なさるよ。 150 00:10:33,270 --> 00:10:39,610 でも ばあさまに 私たちの子供を 見てもらいたかった…。 151 00:10:39,610 --> 00:10:45,410 その分 おじいさまに見てもらえば…。 152 00:10:48,620 --> 00:10:52,960 おじいさまが 一番さみしいんだよ。 153 00:10:52,960 --> 00:11:12,240 ・~ 154 00:11:12,240 --> 00:11:14,540 あ… おとっつぁん。 155 00:11:17,110 --> 00:11:23,950 今 ちょっと ばあさまのこと 思い出していたもんで…。 156 00:11:23,950 --> 00:11:28,660 何? 何か用かぇ? 157 00:11:32,430 --> 00:11:35,130 (やえ)何? おとっつぁん。 158 00:11:37,300 --> 00:11:42,140 おっかさまに…。 えっ? 159 00:11:42,140 --> 00:11:45,640 よく尽くしてくれた。 160 00:11:54,680 --> 00:11:57,390 ご苦労だったな。 161 00:12:07,260 --> 00:12:18,740 (嗚咽) 162 00:12:18,740 --> 00:12:34,920 ・~ 163 00:12:34,920 --> 00:12:38,790 ああ これは いい夜風だ。 164 00:12:38,790 --> 00:12:42,260 いい風が来るぞ こと…。 165 00:12:42,260 --> 00:12:46,770 あ また やってしまったな。 ハハハハ…。 166 00:12:46,770 --> 00:12:53,110 どうも この頃 風通しがいいと 思ったら お前のせいだ。 167 00:12:53,110 --> 00:12:58,450 お前の おっきな体が居ねえ分だけ 風が よく当たる。 168 00:12:58,450 --> 00:13:03,420 この部屋も 広々として まことに快適だ。 169 00:13:03,420 --> 00:13:07,720 独りも また楽し。 170 00:13:07,720 --> 00:13:12,930 案ずるなよ。 お前は どうも心配性で いかん。 171 00:13:12,930 --> 00:13:17,730 あれこれ言いたてて 弦一郎を困らすな。 172 00:13:17,730 --> 00:13:22,910 わしは お前が・ 173 00:13:22,910 --> 00:13:27,240 居ねんで…・ 174 00:13:27,240 --> 00:13:33,920 だれも… しかる者が居ねんで…・ 175 00:13:33,920 --> 00:13:38,250 のうのうと してるからな…。・ 176 00:13:38,250 --> 00:13:41,590 案ずるなよ…。 177 00:13:41,590 --> 00:13:51,600 ・~ 178 00:13:58,040 --> 00:14:00,540 夫婦か…。 179 00:14:05,210 --> 00:14:10,420 ああいう夫婦に なれるかな…。 180 00:14:15,860 --> 00:14:18,060 なろうな。 181 00:14:21,230 --> 00:14:24,100 …なる。 182 00:14:24,100 --> 00:14:36,610 (虫の鳴き声)