1 00:00:02,210 --> 00:00:21,120 ・~ (テーマ音楽) 2 00:00:21,120 --> 00:00:59,830 ・~ 3 00:00:59,830 --> 00:01:08,270 (みどり)鶴次先生は 旅順で 本当に あの人に会ったんですね? 4 00:01:08,270 --> 00:01:11,610 嘉助さんに 本当に 会ったんですね!? 5 00:01:11,610 --> 00:01:14,510 (源造)ええ 本当です。 6 00:01:14,510 --> 00:01:18,950 やっぱり… やっぱり生きてたんだわ あの人! 7 00:01:18,950 --> 00:01:22,120 よかった~! みどりさん…。 8 00:01:30,290 --> 00:01:36,470 <従軍牧師として 戦地に赴いた 鶴次先生が 帰ってきたのです。・ 9 00:01:36,470 --> 00:01:40,640 しかも 嘉助についての 確かな知らせを携えて…> 10 00:01:40,640 --> 00:01:43,970 あの… うちの人とは どこで? 11 00:01:43,970 --> 00:01:49,310 (鶴次)はい 旅順の近くで 従軍牧師や従軍の僧侶が・ 12 00:01:49,310 --> 00:01:51,650 戦没者の霊を 弔っておりますところを・ 13 00:01:51,650 --> 00:01:55,520 やはり 従軍の写真班が 写真に収めておりまして。 14 00:01:55,520 --> 00:01:59,520 そこへ 活動写真班も やってまいりまして。 15 00:01:59,520 --> 00:02:02,590 その中に あの人が? はい。 16 00:02:02,590 --> 00:02:06,260 その中に 嘉助さんも いらっしゃいました。 17 00:02:06,260 --> 00:02:09,930 どんな様子でした あの人? 元気でしたんでしょ? 18 00:02:09,930 --> 00:02:12,970 私 あんなに生き生きとした 嘉助さん・ 19 00:02:12,970 --> 00:02:17,110 拝見したのは 初めてでした。 20 00:02:17,110 --> 00:02:20,140 零下何十度という寒さの中で・ 21 00:02:20,140 --> 00:02:23,780 鼻や ほほに 霜焼けを作りながら・ 22 00:02:23,780 --> 00:02:28,450 それでも 嘉助さんは とっても お元気でした。 23 00:02:28,450 --> 00:02:31,350 この霜焼けで せっかくのいい顔が 台なしになるって・ 24 00:02:31,350 --> 00:02:34,120 心配はしておられましたが。 25 00:02:34,120 --> 00:02:40,460 「みどりは面食いだから 変な顔は 嫌いなんだよ」なんて…。 26 00:02:40,460 --> 00:02:42,400 あの人ったら…。 27 00:02:42,400 --> 00:02:47,640 (やえ)あの子は 寒さに弱かったんだげんと・ 28 00:02:47,640 --> 00:02:50,970 そだに 元気に しておりやしたか…。 29 00:02:50,970 --> 00:02:55,480 また ゲホゲホ 咳したり 腹ピリ 起こしたりしてるんでねえかと・ 30 00:02:55,480 --> 00:02:57,980 そればあし 心配しておりやしたが・ 31 00:02:57,980 --> 00:03:03,590 そだに元気に 楽しそうに…。 それは いがったなぇ…。 32 00:03:03,590 --> 00:03:07,760 お母さん。 私 あの人に 綿入れの あったかい半てん・ 33 00:03:07,760 --> 00:03:10,260 縫ったんですよ。 34 00:03:10,260 --> 00:03:13,600 真綿を いっぱい入れた 軽い あったかい半てん。 35 00:03:13,600 --> 00:03:16,100 ほら あったかそうでしょ? 36 00:03:16,100 --> 00:03:18,600 今度 手紙が来たら 送ろうと思って・ 37 00:03:18,600 --> 00:03:21,640 冬に間に合うように 一生懸命 縫ったんですよ。・ 38 00:03:21,640 --> 00:03:26,340 寒がりの あの人が これなら きっと喜んでくれると思って。・ 39 00:03:26,340 --> 00:03:30,310 寒い北支で 着てもらおうと 思ったんだけど・ 40 00:03:30,310 --> 00:03:34,150 日本で着るんじゃ もう少し 綿を抜いた方が いいかしら? 41 00:03:34,150 --> 00:03:36,150 ねえ? お母さん。 42 00:03:36,150 --> 00:03:40,290 そだなぇ…。 その方が いいかしんねえなぇ…。 43 00:03:40,290 --> 00:03:42,630 (りん)母ちゃん…。 (みどり)鶴次先生・ 44 00:03:42,630 --> 00:03:45,960 今 どこにいるんでしょうねぇ? あの人。 45 00:03:45,960 --> 00:03:48,000 みどりさん。 46 00:03:48,000 --> 00:03:51,300 嘉助さんは 神に召されて・ 47 00:03:51,300 --> 00:03:55,470 今 安らかに 天国に いらっしゃいますよ。 48 00:04:00,980 --> 00:04:04,580 これは…・ 49 00:04:04,580 --> 00:04:09,920 嘉助さんが撮られた 活動写真のフィルムです。 50 00:04:09,920 --> 00:04:13,260 それから これが…・ 51 00:04:13,260 --> 00:04:16,590 嘉助さんが 現地の様子や 仕事の進み具合を・ 52 00:04:16,590 --> 00:04:19,260 書き留められたノートです。 53 00:04:23,270 --> 00:04:29,440 (鶴次)嘉助さんの ご遺品です。 おあらため下さい。 54 00:04:44,120 --> 00:04:49,990 (弘次郎)お忙しい中 お手間をかけ ありがとうござりやした。 55 00:04:49,990 --> 00:04:53,630 確かに 嘉助を受け取りやした。・ 56 00:04:53,630 --> 00:04:57,470 嘉助も さぞかし 喜んでおりましょう。・ 57 00:04:57,470 --> 00:05:01,900 父親として 厚く 御礼 申し上げやす。 58 00:05:01,900 --> 00:05:04,940 (徳右衛門) ありがとうござりやした。 59 00:05:04,940 --> 00:05:10,080 いえ。 こんな形でしか お役に立てなかったことが・ 60 00:05:10,080 --> 00:05:12,920 残念です…。 61 00:05:12,920 --> 00:05:16,590 嘉助 いがったなぇ。 62 00:05:16,590 --> 00:05:21,260 家さ帰ってこれて いがったなぇ。 63 00:05:24,930 --> 00:05:30,100 もう 分がったなぇ? もう 待つんでねえぞぇ? 64 00:05:36,270 --> 00:05:39,310 こんなに なっちゃって…。 65 00:05:39,310 --> 00:05:41,780 駄目ねぇ…。 66 00:05:41,780 --> 00:05:44,810 みどりさん…。 67 00:05:44,810 --> 00:05:47,480 寒かったでしょう? 68 00:05:50,450 --> 00:05:53,790 寒かったでしょう? 69 00:05:53,790 --> 00:06:14,580 ・~ 70 00:06:14,580 --> 00:06:16,550 お母さん…! 71 00:06:20,920 --> 00:06:36,400 (みどりの泣き声) 72 00:06:36,400 --> 00:07:03,590 ・~ 73 00:07:06,430 --> 00:07:10,900 ほんとに 死んでしまったのね 兄ちゃん。 74 00:07:14,270 --> 00:07:17,570 兄ちゃん…。 75 00:07:17,570 --> 00:07:19,740 おりん。 76 00:07:23,450 --> 00:07:27,920 兄さん このまま死なしては いけないよ。 77 00:07:27,920 --> 00:07:30,590 兄さんを生かすんだ おりん。 78 00:07:33,720 --> 00:07:37,260 生かすって? 79 00:07:37,260 --> 00:07:41,760 兄さんの志を 生かすんだよ。 80 00:07:41,760 --> 00:07:45,270 活動写真に あんなに夢をかけて・ 81 00:07:45,270 --> 00:07:49,770 命がけで その夢を 実現しようとした 兄さんの志を・ 82 00:07:49,770 --> 00:07:55,110 このまま眠らせてしまっては あまりに無念じゃないか。 83 00:07:55,110 --> 00:07:58,950 俺は さっきから 考えてたんだけど・ 84 00:07:58,950 --> 00:08:02,390 ああして 兄さんの撮ったフィルムが・ 85 00:08:02,390 --> 00:08:06,560 鶴次先生の手で 我々の所に 戻ってきたっていうのは・ 86 00:08:06,560 --> 00:08:11,060 きっと 兄さんの思いが そうさせたと思うんだ。 87 00:08:11,060 --> 00:08:14,560 あのフィルムには・ 88 00:08:14,560 --> 00:08:18,400 兄さんの思いの すべてが 込められて・ 89 00:08:18,400 --> 00:08:21,240 我々の所に戻ってきたんだと 思うんだ。 90 00:08:21,240 --> 00:08:24,270 あのフィルムを眠らしては・ 91 00:08:24,270 --> 00:08:29,110 せっかくの兄さんの志まで そのまま眠ってしまう。 92 00:08:29,110 --> 00:08:31,580 あれを 生かすんだ。 93 00:08:31,580 --> 00:08:37,920 あのフィルムを現像して 兄さんが望んでいたように・ 94 00:08:37,920 --> 00:08:41,760 どこかの劇場で映して 大勢の人に 見てもらうんだ。 95 00:08:41,760 --> 00:08:44,590 兄さんが 命がけで みんなに伝えようとした・ 96 00:08:44,590 --> 00:08:50,270 戦争っていうものの 生の姿を 大勢の人に 知ってもらうんだ。 97 00:08:50,270 --> 00:08:52,770 その時に 兄さんは生きるんだ。 98 00:08:52,770 --> 00:08:57,270 生きて また 我々の所に 戻ってきてくれるんだよ! 99 00:08:57,270 --> 00:08:59,540 そう思わないか? おりん。 100 00:09:03,550 --> 00:09:05,480 寒い中で保管していたので・ 101 00:09:05,480 --> 00:09:08,380 どういうものが映っているか 分かりませんけれども・ 102 00:09:08,380 --> 00:09:11,420 きっと 兄のことですから ちょっと変わった目で・ 103 00:09:11,420 --> 00:09:15,560 戦争や現地の様子を 写し取って いるんじゃないかと思います。 104 00:09:15,560 --> 00:09:21,060 そのノートに書いてあることを見ても そのことが察しられるんです。 105 00:09:21,060 --> 00:09:23,100 主人の申しますように・ 106 00:09:23,100 --> 00:09:28,740 私も 兄の志を このまま 死なせてしまうのは 残念です。 107 00:09:28,740 --> 00:09:32,910 なんとかして この志を 生かしてやりたいと思います。 108 00:09:32,910 --> 00:09:37,680 そして 生き返った兄に 私 もう一度 会いたいと思います。 109 00:09:39,420 --> 00:09:42,250 このフィルムを生かすには どうすれば よいか・ 110 00:09:42,250 --> 00:09:46,120 そのお知恵を 貸していただければと思いまして。 111 00:09:46,120 --> 00:09:48,920 どういうふうに すればいいか その手だてを・ 112 00:09:48,920 --> 00:09:51,760 教えていただければと 思いまして。 113 00:09:51,760 --> 00:09:55,260 (津村) 生かすのは このフィルムだけかい? 114 00:09:55,260 --> 00:09:58,300 え? このノートも 生かしていいだろう? 115 00:09:58,300 --> 00:10:01,440 いや 是非 生かさしてもらいたいな。 116 00:10:01,440 --> 00:10:04,770 編集長…。 君 これはね・ 117 00:10:04,770 --> 00:10:08,280 今度の戦争の貴重な記録だよ。 118 00:10:08,280 --> 00:10:11,780 ここには 兵隊ではない 普通の人間の目で見つめた・ 119 00:10:11,780 --> 00:10:16,120 戦争の実態が 実に生き生きと 生々しく記録してある。 120 00:10:16,120 --> 00:10:19,960 軍隊というものへの観察も 将軍や将校よりも・ 121 00:10:19,960 --> 00:10:23,460 一兵卒の働きや悲しみを 正直に見つめている。 122 00:10:23,460 --> 00:10:26,300 これは このまま記事になるよ。 123 00:10:26,300 --> 00:10:30,170 妙な武勇談より この方が はるかに戦争の実態を語っている。 124 00:10:30,170 --> 00:10:33,640 このノート 記事に頂戴していいね? 125 00:10:33,640 --> 00:10:37,310 もちろん 転載料は お払いするが。 どうぞ! 126 00:10:37,310 --> 00:10:40,210 そうしていただけたら 兄が どんなに喜ぶでしょう! 127 00:10:40,210 --> 00:10:45,820 兄だけじゃありません。 義姉も 父も母も 私の主人も・ 128 00:10:45,820 --> 00:10:48,650 みんな どんなに喜ぶでしょう! 129 00:10:48,650 --> 00:10:51,550 君も? もちろん 私も! 130 00:10:51,550 --> 00:10:54,520 私が 今 どんなに うれしいか…。 131 00:10:54,520 --> 00:10:58,360 どうやったら 私の気持ち お伝えできるのか…。 132 00:10:58,360 --> 00:11:02,300 ああ… どんなふうに言ったら いいんでしょう。 133 00:11:02,300 --> 00:11:05,100 何も言わなくていい。 分かっている。 134 00:11:05,100 --> 00:11:08,000 編集長… ありがとうございます! 135 00:11:08,000 --> 00:11:11,440 いやいやいや お礼を言うのは こっちの方だよ。 136 00:11:11,440 --> 00:11:15,610 こんな貴重な戦争の記録を 我が社の新聞が独占するんだから。 137 00:11:15,610 --> 00:11:19,780 どうも ありがとう。 編集長…。 138 00:11:19,780 --> 00:11:23,620 このフィルムの方も お兄さんの遺志が生かせるよう・ 139 00:11:23,620 --> 00:11:25,650 しかるべく 手を打とう。 140 00:11:25,650 --> 00:11:30,390 ありがとうございます。 よろしくお願いします。 141 00:11:30,390 --> 00:11:32,960 うん。・ 142 00:11:32,960 --> 00:11:38,230 おい みんな! これをよく読んで 全部 写してくれ。 143 00:11:39,840 --> 00:11:45,470 <編集長の口利きと 源造の奔走で 嘉助の遺品のフィルムは・ 144 00:11:45,470 --> 00:11:49,140 活動写真として 劇場に かけられることになり・ 145 00:11:49,140 --> 00:11:51,650 その試写が ありました> 146 00:11:51,650 --> 00:12:08,430 (映写機の回る音) 147 00:12:08,430 --> 00:12:11,930 あ… 止めて! 148 00:12:11,930 --> 00:12:14,770 すみません。 ちょっと戻してください。 149 00:12:14,770 --> 00:12:16,940 (津村)ちょっと戻して! 150 00:12:21,110 --> 00:12:24,280 (映写機の回る音) 止めて! 151 00:12:35,620 --> 00:12:37,890 嘉助…! 152 00:12:48,970 --> 00:12:52,810 ありがとうございました。 153 00:12:52,810 --> 00:12:55,710 君が いれたのか? ええ。 154 00:12:55,710 --> 00:12:59,680 おとっつぁんの いれたのより 少し味が落ちるかもしれないけど。 155 00:13:10,930 --> 00:13:12,960 うみゃあ。 156 00:13:12,960 --> 00:13:16,730 そう? いがった。 157 00:13:24,270 --> 00:13:28,610 久しぶりだな。 何が? 158 00:13:28,610 --> 00:13:33,280 夫婦で 一つのことに 何か 力を合わせて やったのがさ。 159 00:13:33,280 --> 00:13:38,950 そう言えば… そうね。 160 00:13:38,950 --> 00:13:41,220 そうだよ。 161 00:13:42,830 --> 00:13:47,660 このところ 自分のことばっかりに夢中で…。 162 00:13:47,660 --> 00:13:49,970 ごめんなさい。 163 00:13:49,970 --> 00:13:53,470 お互いさまだ。 164 00:13:53,470 --> 00:14:00,140 しかし… たまには こういうのも いいね。 165 00:14:00,140 --> 00:14:02,750 そうね。 166 00:14:02,750 --> 00:14:06,250 これも 私たちに 少し気を付けろって・ 167 00:14:06,250 --> 00:14:09,750 兄ちゃんが言ってくれたのかしら。 168 00:14:09,750 --> 00:14:12,590 きっと そうね。 169 00:14:12,590 --> 00:14:15,360 いい兄さんだったね…。 170 00:14:17,460 --> 00:14:26,140 ・~ 171 00:14:26,140 --> 00:14:29,140 源造さん…。 172 00:14:29,140 --> 00:14:53,930 ・~