1 00:02:12,105 --> 00:02:15,108 (観音寺)やあ… (しの)ああ 観音寺様 2 00:02:15,108 --> 00:02:17,110 (観音寺)お早いですな 3 00:02:17,110 --> 00:02:20,113 (しの)観音寺様こそ 4 00:02:20,113 --> 00:02:22,115 (観音寺) 今日は勤めがありますんでね➡ 5 00:02:22,115 --> 00:02:28,121 その前にと思って やあ お会いできてよかった 6 00:02:28,121 --> 00:02:31,124 (観音寺)お互いの連れ合いの 命日が一緒というのも➡ 7 00:02:31,124 --> 00:02:37,130 どうも不思議な御縁ですな (しの)本当に 8 00:02:37,130 --> 00:02:42,135 おかげで… いや と申しちゃ 死んだ女房に申し訳ないが➡ 9 00:02:42,135 --> 00:02:47,140 あなたのような方と 知り合いになれた 喜んでます 10 00:02:47,140 --> 00:02:51,144 私こそ 観音寺様のような方と お近づきになれて➡ 11 00:02:51,144 --> 00:02:57,083 心丈夫でございます (観音寺)はい ああ いや… 12 00:02:57,083 --> 00:03:01,087 御子息は お元気ですか? (しの)はい おかげさまで 13 00:03:01,087 --> 00:03:04,090 いや 男のお子さんが いらっしゃるというのは 羨ましいな 14 00:03:04,090 --> 00:03:07,093 将来が楽しみでしょう 15 00:03:07,093 --> 00:03:12,098 はい… でも 苦労も多うございます 16 00:03:12,098 --> 00:03:15,098 ああ はい 17 00:03:17,103 --> 00:03:21,107 あ… いや こういうことを 申し上げて いいやら悪いやら➡ 18 00:03:21,107 --> 00:03:26,112 あの… 今度 非番の日にですね 一緒に食事でも行きませんか? 19 00:03:26,112 --> 00:03:29,112 はい 喜んで 20 00:03:33,119 --> 00:03:35,121 (八田)お前が見つけたのかい? 21 00:03:35,121 --> 00:03:38,124 (加助) はい 通い番頭の加助でございます 22 00:03:38,124 --> 00:03:41,124 今朝早く来てみると… 23 00:03:44,130 --> 00:04:04,083 ♬~ 24 00:04:04,083 --> 00:04:08,083 (八田)こんな年寄りが心中か 25 00:04:11,090 --> 00:04:15,094 奉公人たちが 昨日からの藪入りで 帰っていた間の出来事で➡ 26 00:04:15,094 --> 00:04:18,097 通い番頭の加助が 2人の死体を見つけて仰天し➡ 27 00:04:18,097 --> 00:04:21,100 番屋へ駆け込んだという次第です 28 00:04:21,100 --> 00:04:24,103 遅くなりました (八田)あっ… 29 00:04:24,103 --> 00:04:27,106 何かあったのか? (八田)はあ 30 00:04:27,106 --> 00:04:29,108 (榊原)夫婦心中らしい 夫婦心中? 31 00:04:29,108 --> 00:04:31,110 うむ (観音寺)どこだ? 32 00:04:31,110 --> 00:04:35,114 三崎町の升屋という醤油屋です 56歳になる女房の民が➡ 33 00:04:35,114 --> 00:04:38,117 58歳の亭主の与兵衛を 出刃包丁で刺し殺して➡ 34 00:04:38,117 --> 00:04:41,120 自分は首を吊ったんですよ 35 00:04:41,120 --> 00:04:45,124 まあ 2人とも とうに分別盛りを過ぎた年頃だ 36 00:04:45,124 --> 00:04:48,127 何を血迷ったのだ? 37 00:04:48,127 --> 00:04:52,131 番頭の加助の話ですと 近頃 亭主の与兵衛に女ができて➡ 38 00:04:52,131 --> 00:04:55,134 争い事が 絶えなかったらしいんです 39 00:04:55,134 --> 00:04:58,071 58歳で 女が… 40 00:04:58,071 --> 00:05:02,075 つまりは 古女房の悋気の果ての 無理心中ということか 41 00:05:02,075 --> 00:05:04,077 (八田)はい 42 00:05:04,077 --> 00:05:10,083 しかし 心中は きつい御法度だ 升屋の取り潰しは免れまい 43 00:05:10,083 --> 00:05:15,088 いや まあ それにしても げに慎むべきは色の道ですよね 44 00:05:15,088 --> 00:05:17,090 大体 50過ぎてから 女に惚れるってのが➡ 45 00:05:17,090 --> 00:05:19,092 間違ってるんですよね 46 00:05:19,092 --> 00:05:21,094 利いたふうな口を 利くんじゃない! 47 00:05:21,094 --> 00:05:23,096 年取って女に惚れて 何が悪いんだ 48 00:05:23,096 --> 00:05:26,099 いや なにも観音寺様が そんなに怒んなくても➡ 49 00:05:26,099 --> 00:05:28,101 いいんじゃありませんか (観音寺)いや しかしな お前な 50 00:05:28,101 --> 00:05:30,103 あれ? もしかすると 観音寺様➡ 51 00:05:30,103 --> 00:05:33,106 何か身につまされることでも おありなんですか? 52 00:05:33,106 --> 00:05:37,110 ばかなことを申すでない! 八田 (八田)はっ 53 00:05:37,110 --> 00:05:40,113 ひとつ もんでやるから 来い (八田)いえ 遠慮しときます 54 00:05:40,113 --> 00:05:43,113 来い いや 来い よし (八田)いや ちょっ ちょっ… あたた 55 00:05:47,120 --> 00:05:51,124 <天保年間 1830年代➡ 56 00:05:51,124 --> 00:05:56,129 世にはびこる悪に向かって 2人の男が挑戦状をたたきつけた> 57 00:05:56,129 --> 00:06:00,066 <時の北町奉行 榊原主計頭忠之と➡ 58 00:06:00,066 --> 00:06:06,066 榊原の手で処刑されたはずの ねずみ小僧次郎吉である> 59 00:06:19,085 --> 00:06:39,105 ♬~ 60 00:06:39,105 --> 00:06:59,058 ♬~ 61 00:06:59,058 --> 00:07:03,058 ♬~ 62 00:07:09,102 --> 00:07:11,104 (髪結) どうもありがとうございました 63 00:07:11,104 --> 00:07:14,107 (観音寺)ああ… どうだ? 64 00:07:14,107 --> 00:07:19,112 (髪結)よくお似合いですよ (観音寺)そうか ヘヘッ 65 00:07:19,112 --> 00:07:23,112 (髪結)あっ すいません (観音寺のせきばらい) 66 00:07:46,139 --> 00:07:51,144 しのさん! やあ 遅くなってすまん➡ 67 00:07:51,144 --> 00:07:58,144 いやぁ どうも… おい お茶くれ (店主)いらっしゃいませ 68 00:08:03,089 --> 00:08:08,094 どうかなすったか? (しの)えっ? 69 00:08:08,094 --> 00:08:15,101 お顔の色が沈んでるようだが… お誘いして迷惑だったかな? 70 00:08:15,101 --> 00:08:18,104 いいえ そんな… 71 00:08:18,104 --> 00:08:23,104 一人でいると 暗いことばかり考えてしまって 72 00:08:28,114 --> 00:08:32,118 フッ… でも 観音寺様にお会いしたから➡ 73 00:08:32,118 --> 00:08:35,121 もう大丈夫ですわ (観音寺)はい 74 00:08:35,121 --> 00:08:38,124 (しの)今日は どこに 連れてってくださるのかしら 75 00:08:38,124 --> 00:08:41,127 任しといてください おいしい物を食べて➡ 76 00:08:41,127 --> 00:08:43,129 楽しくやりましょう (しの)ええ 77 00:08:43,129 --> 00:08:46,132 さあ さあ… 78 00:08:46,132 --> 00:08:48,134 (店主)あの… 79 00:08:48,134 --> 00:08:52,138 あの… 嫌いな物はないですか? (しの)別に 80 00:08:52,138 --> 00:08:56,075 そうですか 食事をする前に お芝居と考えておるんですが 81 00:08:56,075 --> 00:09:01,080 あらま どうなってんだ? こりゃ 82 00:09:01,080 --> 00:09:05,084 それが なんと 年の頃なら30半ばの➡ 83 00:09:05,084 --> 00:09:10,089 しっとりとした いい女なんだよ さすがの俺も 目ぇ疑ったね うん 84 00:09:10,089 --> 00:09:13,092 (おつや)あの観音寺さんが? (次郎吉)本当ですかい? 85 00:09:13,092 --> 00:09:17,096 本当だよ 確かにな ここんとこ ちょーっと➡ 86 00:09:17,096 --> 00:09:20,099 様子が おかしいとは 思ってたんだよ 87 00:09:20,099 --> 00:09:22,101 鬢付油に気ぃ遣ったりな➡ 88 00:09:22,101 --> 00:09:25,104 懐に お前 匂い袋 忍ばしたりしてんだぜ 89 00:09:25,104 --> 00:09:28,107 ふーん 人は見かけによらねえって よく言ったもんだ 90 00:09:28,107 --> 00:09:31,110 (お杉)誰の話ですか? (おつや)ううん 大人の話➡ 91 00:09:31,110 --> 00:09:33,112 いいから お杉ちゃんは あちらに気ぃ配っといで 92 00:09:33,112 --> 00:09:36,115 ああ そうですか どうも お邪魔さまでした 93 00:09:36,115 --> 00:09:39,118 はい はい はい あの子 おしゃべりだからね 94 00:09:39,118 --> 00:09:43,122 それにしてもよ 40過ぎの色恋と 七つ下がりの雨は➡ 95 00:09:43,122 --> 00:09:47,126 なかなか やまねえっていうからよ 深みにはまるかもよ 96 00:09:47,126 --> 00:09:50,129 女に騙されてるんじゃなきゃ いいけど 97 00:09:50,129 --> 00:09:52,131 (五郎八)誰が 騙されてるんですかい へい これ 98 00:09:52,131 --> 00:09:55,067 観音寺さんよ (五郎八)ほう 99 00:09:55,067 --> 00:09:57,069 きれいな女の人と つきあってんだって 100 00:09:57,069 --> 00:09:59,071 へえー 観音寺さんがねえ 101 00:09:59,071 --> 00:10:02,074 結構じゃねえですかい 独り身なんだしよ 102 00:10:02,074 --> 00:10:05,077 よかねえよ 騙されてるに決まってんだからさ 103 00:10:05,077 --> 00:10:07,079 どうしてですい? 104 00:10:07,079 --> 00:10:10,082 よく考えてみろよ 女盛りの別嬪がだよ➡ 105 00:10:10,082 --> 00:10:13,085 白髪交じりの とっつぁんに 惚れるわけねえだろう 106 00:10:13,085 --> 00:10:16,088 白髪交じりで 悪うござんしたね 言っときやすがね➡ 107 00:10:16,088 --> 00:10:18,090 娘っ子なら ともかく 世間を知った年増ってえのは➡ 108 00:10:18,090 --> 00:10:21,093 男の年や見てくれに 惚れるんじゃねえんだよ 109 00:10:21,093 --> 00:10:24,096 ここに惚れるんですよ ここにね 110 00:10:24,096 --> 00:10:26,098 とっつぁん いやに自信たっぷりじゃねえかよ 111 00:10:26,098 --> 00:10:28,100 おとっつぁん 誰かいるの? 112 00:10:28,100 --> 00:10:30,102 ばか言っちゃいけねえや お前 そんな… 113 00:10:30,102 --> 00:10:32,104 あっ おい それより旦那 (八田)うん? 114 00:10:32,104 --> 00:10:34,106 ちょいと気になることが あるんですがね 115 00:10:34,106 --> 00:10:36,108 何だい? (五郎八)うちじゃ 店の醤油を➡ 116 00:10:36,108 --> 00:10:39,111 升屋さんから取ってる 間柄なんですけどね 117 00:10:39,111 --> 00:10:42,114 今日 御夫婦の初七日だってんで 線香上げに行ったんでさ 118 00:10:42,114 --> 00:10:44,116 そうしますとね… 119 00:10:44,116 --> 00:10:46,118 《そりゃ いくら何でも あんまりじゃありませんか!》 120 00:10:46,118 --> 00:10:49,121 (彦右衛門)《あんまりってことは ないでしょう》➡ 121 00:10:49,121 --> 00:10:52,124 《いいかい 番頭さん 私の持ってるのは➡ 122 00:10:52,124 --> 00:10:56,062 ただの 借金の証文じゃないんだよ》 123 00:10:56,062 --> 00:11:00,066 (彦右衛門)《このとおり 沽券だ》 (加助)《沽券?》 124 00:11:00,066 --> 00:11:03,069 《そうさ 土地家屋屋敷一切を➡ 125 00:11:03,069 --> 00:11:07,073 譲り渡すという譲り証文だ よく御覧》 126 00:11:07,073 --> 00:11:10,076 《こんな物まで 旦那様は…》 127 00:11:10,076 --> 00:11:13,079 (源次)《今日中に みんな 立ち退いておくんなはいよ》 128 00:11:13,079 --> 00:11:16,082 《ごたごたは嫌ですぜ》 129 00:11:16,082 --> 00:11:26,092 ♬~ 130 00:11:26,092 --> 00:11:29,095 日本橋 富沢町の古着屋が 沽券をか? 131 00:11:29,095 --> 00:11:33,099 はっ 丸子屋彦右衛門とかいう 商人です 132 00:11:33,099 --> 00:11:37,103 ただの古着屋が 升屋の沽券を買うほどの金を➡ 133 00:11:37,103 --> 00:11:40,106 よく持っていたな (八田)それなんですよ 134 00:11:40,106 --> 00:11:45,111 私はですね 升屋のあるじが 女に騙し取られたと思うんです 135 00:11:45,111 --> 00:11:49,115 升屋のあるじがですね 女に ぞっこん惚れちまって➡ 136 00:11:49,115 --> 00:11:52,118 「古女房なんぞは たたき出して お前を家に入れるつもりだ」と➡ 137 00:11:52,118 --> 00:11:55,121 こう口説いたとします すると女は… 138 00:11:55,121 --> 00:11:58,124 「また そんな うまいことをおっしゃって➡ 139 00:11:58,124 --> 00:12:00,126 さんざ 私を おもちゃにしたあげくに➡ 140 00:12:00,126 --> 00:12:02,128 約束なんざ反故にして ポイと お捨てになるつもりなんでしょ」 141 00:12:02,128 --> 00:12:04,130 「ばかなことを お言いでないよ」 142 00:12:04,130 --> 00:12:07,133 「あたしゃ お前なしじゃ 生きていかれないんだ」 143 00:12:07,133 --> 00:12:10,136 「何で 私の気持ちが分からないんだよ」 144 00:12:10,136 --> 00:12:12,138 「口では何とでも言えますものね」 145 00:12:12,138 --> 00:12:15,141 「よし 分かった それじゃあ こうしよう」 146 00:12:15,141 --> 00:12:19,145 「私の心の証しに うちの沽券を お前に預けようじゃないか」 147 00:12:19,145 --> 00:12:22,148 「もし私が 約束を 守らないようなことがあったら➡ 148 00:12:22,148 --> 00:12:25,151 その沽券を お前さんの好きにするがいい」 149 00:12:25,151 --> 00:12:29,155 「まあ 旦那様 私のような者のために➡ 150 00:12:29,155 --> 00:12:34,160 それほどまでに… うれしゅうござんす」 151 00:12:34,160 --> 00:12:36,162 フフフ… いいかげんにいたせ! 152 00:12:36,162 --> 00:12:39,165 まあまあ… そういう仕掛けで 手に入れた沽券を➡ 153 00:12:39,165 --> 00:12:42,168 女が丸子屋に渡したに 違いありません 154 00:12:42,168 --> 00:12:46,172 色仕掛けの詐欺だというのか (八田)はい 155 00:12:46,172 --> 00:12:49,175 心中に見せかけた殺しとは 考えられんか? 156 00:12:49,175 --> 00:12:53,179 はあ? いや そう言われますと… 157 00:12:53,179 --> 00:12:56,115 何だ お前 ちゃんと検視したのか? おい 158 00:12:56,115 --> 00:12:59,118 無論 しましたよ お民の首の痕から見ても➡ 159 00:12:59,118 --> 00:13:02,121 絞め殺してから吊ったとは 考えられません 160 00:13:02,121 --> 00:13:07,126 だがな 八田 出刃包丁で心の臓を一突き➡ 161 00:13:07,126 --> 00:13:12,131 その女房がやったとしたら 手際が良すぎるな 162 00:13:12,131 --> 00:13:15,131 おう 遠慮しねえで食ってくれよ (加助)あっ いただきます 163 00:13:17,136 --> 00:13:20,139 升屋のあるじが入れ込んでた 女のことなんだけどな➡ 164 00:13:20,139 --> 00:13:23,142 ありゃ一体 どこの何者なんだい? 165 00:13:23,142 --> 00:13:27,146 それが… 名前も素性も 全く知りませんので 166 00:13:27,146 --> 00:13:29,148 そんなこたぁねえだろう 167 00:13:29,148 --> 00:13:33,152 いや それが 恥になると お思いになったのか➡ 168 00:13:33,152 --> 00:13:36,155 手前どもには何も おっしゃいませんでしたので 169 00:13:36,155 --> 00:13:38,157 何だ お前 本当に何にも知らねえのか? 170 00:13:38,157 --> 00:13:40,159 はい (八田)何でもいいんだよ 171 00:13:40,159 --> 00:13:43,162 芸者だとか 花魁だとか 172 00:13:43,162 --> 00:13:47,166 そういえば 女将さんが一度 「女師匠」とか… 173 00:13:47,166 --> 00:13:52,171 女師匠? 浄瑠璃か 常磐津か それとも 茶の湯か? 174 00:13:52,171 --> 00:13:56,108 (お杉)いらっしゃい! 女将さん 誠心館の皆さんですよ 175 00:13:56,108 --> 00:14:00,112 (おつや)まあ 今日は おそろいで 何か いいことでもあったのかしら 176 00:14:00,112 --> 00:14:04,116 (学生)実は こいつの長崎留学が 決まったのです 177 00:14:04,116 --> 00:14:07,119 (おつや)あら 小太郎さんが? おめでとうございます 178 00:14:07,119 --> 00:14:09,121 (小太郎)運が良かっただけです 179 00:14:09,121 --> 00:14:12,124 (学生)謙遜するな 寮生で一番年下のお前が➡ 180 00:14:12,124 --> 00:14:15,127 3年に1人送り出す 留学生に選ばれるなんて➡ 181 00:14:15,127 --> 00:14:18,130 よほどの秀才ということだぞ (おつや)そうですとも➡ 182 00:14:18,130 --> 00:14:20,132 御両親は さぞ お喜びでございましょうね 183 00:14:20,132 --> 00:14:23,135 (学生) 小太郎は母一人子一人なんです 184 00:14:23,135 --> 00:14:29,141 そうですか でも 女手一つで よく… 185 00:14:29,141 --> 00:14:32,144 (小太郎)母には 早く一人前の医者になって➡ 186 00:14:32,144 --> 00:14:34,146 安心させてやりたいと 思っています 187 00:14:34,146 --> 00:14:38,150 (おつや)で… いつ長崎へ? (小太郎)まだ先のことです 188 00:14:38,150 --> 00:14:41,153 じゃ 今日は皆さんで お祝いにいらっしゃったのね 189 00:14:41,153 --> 00:14:44,156 はい すいませんが 何か おいしい物をお願いします 190 00:14:44,156 --> 00:14:48,160 ああ どうぞ どうぞ 御心配なく いつも来てくださった お礼に➡ 191 00:14:48,160 --> 00:14:52,164 私に お祝いさせてくださいな おとっつぁん! おいしい物➡ 192 00:14:52,164 --> 00:14:55,100 たくさん出してちょうだい (五郎八)あいよ 193 00:14:55,100 --> 00:14:58,103 八田の話だと 古着屋の丸子屋彦右衛門は➡ 194 00:14:58,103 --> 00:15:01,106 1年ほど前に あそこに 店を出したというんだが➡ 195 00:15:01,106 --> 00:15:04,109 以前のことは 誰も知らんと言う 196 00:15:04,109 --> 00:15:06,111 怪しげな話ですね うん 197 00:15:06,111 --> 00:15:10,115 その丸子屋が女を使って 升屋さんの沽券を➡ 198 00:15:10,115 --> 00:15:14,119 取り上げたっていうんですか? 八田は そうみてる 199 00:15:14,119 --> 00:15:17,122 よっぽど したたかな女なんでしょうな 200 00:15:17,122 --> 00:15:21,126 そうらしい だが… 名前も素性も分からん 201 00:15:21,126 --> 00:15:25,130 そこで 2人に頼みがある 202 00:15:25,130 --> 00:15:35,140 ♬~ 203 00:15:35,140 --> 00:15:38,143 (おつや)御免なさいよ (源次)これは いらっしゃいませ 204 00:15:38,143 --> 00:15:42,147 ねえ お座敷に着ていけるような 着物あるかしら? 205 00:15:42,147 --> 00:15:44,149 姉さんがですか? 206 00:15:44,149 --> 00:15:47,152 不景気でさ 衣装代まで手が回んないのよ 207 00:15:47,152 --> 00:15:52,152 へい 分かりました じゃ どうぞ こちらへ 208 00:15:54,093 --> 00:15:56,095 (源次)えーっと➡ 209 00:15:56,095 --> 00:16:01,100 あっ これなんざ いかがです? 京友禅でございますが 210 00:16:01,100 --> 00:16:03,102 高いんでしょう? 211 00:16:03,102 --> 00:16:05,104 (源次) せいぜい お安くしておきます➡ 212 00:16:05,104 --> 00:16:08,107 まあ それにしても 姉さんの器量なら➡ 213 00:16:08,107 --> 00:16:11,110 ごひいきの旦那衆も いなさるだろうに どうしてまた? 214 00:16:11,110 --> 00:16:15,114 ああ それなのよ ある大店の旦那で➡ 215 00:16:15,114 --> 00:16:18,117 私のことを ごひいきにして くださってたんだけど➡ 216 00:16:18,117 --> 00:16:21,120 ここんとこ とーんと お見限りでさ 217 00:16:21,120 --> 00:16:25,124 何かあったんでございますか? (おつや)大ありさ 218 00:16:25,124 --> 00:16:29,128 何でもね 醤油屋の升屋さんのお誘いで➡ 219 00:16:29,128 --> 00:16:34,133 どっかの女師匠に ぞっこんだって もう 頭にくるじゃないか! 220 00:16:34,133 --> 00:16:39,138 その女の居場所を 升屋さんに聞こうと思ったら➡ 221 00:16:39,138 --> 00:16:42,141 心中だろう? 222 00:16:42,141 --> 00:16:48,147 ここの旦那も 升屋さんと 親しいって聞いたんだけど➡ 223 00:16:48,147 --> 00:16:51,150 その女の居場所を 御存じじゃないのかねえ 224 00:16:51,150 --> 00:16:54,086 知ってたら 教えてほしいんだけどさ 225 00:16:54,086 --> 00:16:59,091 そんなことまで うちの旦那が 知っていなさるもんですかね 226 00:16:59,091 --> 00:17:04,096 おや そうかい 私のにらんだところじゃ➡ 227 00:17:04,096 --> 00:17:10,102 こちらの旦那が一枚かんでる そう思ったんだけど➡ 228 00:17:10,102 --> 00:17:14,106 知らないんじゃ しかたないね また来るよ 229 00:17:14,106 --> 00:17:17,106 ありがとうございます 230 00:17:23,115 --> 00:17:25,117 源次 (源次)へい 231 00:17:25,117 --> 00:17:29,121 その女 まさか 町方の手先じゃあるめえな? 232 00:17:29,121 --> 00:17:32,124 (源次)へい まさかとは思いますが 233 00:17:32,124 --> 00:17:37,129 (鬼塚)蟻の一穴ということもある もしものときは➡ 234 00:17:37,129 --> 00:17:42,134 町方に踏み込まれる前に お前たちの命はないものと思え 235 00:17:42,134 --> 00:17:45,137 (源次)と… 殿様 236 00:17:45,137 --> 00:17:49,141 それが嫌なら しのにも 用心するように言っておけ 237 00:17:49,141 --> 00:17:51,141 (源次)へい 238 00:17:53,145 --> 00:17:56,081 (店員)いってらっしゃいませ (源次)はい 239 00:17:56,081 --> 00:18:16,101 ♬~ 240 00:18:16,101 --> 00:18:36,121 ♬~ 241 00:18:36,121 --> 00:18:42,127 ♬~ 242 00:18:42,127 --> 00:18:45,130 約束どおり やってもらわねえと➡ 243 00:18:45,130 --> 00:18:48,133 取り返しのつかねえことに なりますぜ 244 00:18:48,133 --> 00:18:50,135 (しの)分かってます 245 00:18:50,135 --> 00:19:00,079 ♬~ 246 00:19:00,079 --> 00:19:06,085 ≪(観音寺)♬ 松風蘿月に 247 00:19:06,085 --> 00:19:08,087 《観音寺の旦那?》 248 00:19:08,087 --> 00:19:17,096 ≪(観音寺) ♬ 言葉を交わす賓客も➡ 249 00:19:17,096 --> 00:19:28,107 ♬ 去って来る事もなく 250 00:19:28,107 --> 00:19:37,116 (しの)♬ 翠帳紅閨に 251 00:19:37,116 --> 00:19:48,127 ♬ 枕を並べし妹背も 252 00:19:48,127 --> 00:20:01,127 ♬ いつの間にかは隔つらん 253 00:20:08,080 --> 00:20:13,085 江口の君とは 淀川の船着き場の遊女たちの長➡ 254 00:20:13,085 --> 00:20:18,090 その昔 雨に降り込められた 西行法師が➡ 255 00:20:18,090 --> 00:20:25,097 一夜の宿を請うて断られ 「仮の宿りを惜しむ君かな」と➡ 256 00:20:25,097 --> 00:20:30,102 歌を残して去っていったと いわれています 257 00:20:30,102 --> 00:20:46,118 ♬~ 258 00:20:46,118 --> 00:20:53,125 でも 本当の江口の心は 「出家の身が 遊女の宿などに➡ 259 00:20:53,125 --> 00:20:57,062 心をお留めになっては いけません」と お諫めしたのです 260 00:20:57,062 --> 00:21:00,065 なるほど 261 00:21:00,065 --> 00:21:05,070 川面に舟を浮かべ 男たちと一夜の契りを結ぶ➡ 262 00:21:05,070 --> 00:21:09,074 浮いた暮らしのはかなさ➡ 263 00:21:09,074 --> 00:21:14,074 愛と煩悩の暗い淵に沈む 遊女の悲しさ… 264 00:21:18,083 --> 00:21:22,083 女は業の深いものでございます 265 00:21:24,089 --> 00:21:27,092 (障子の開く音) (しの)近江屋さん! 266 00:21:27,092 --> 00:21:32,097 (近江屋)しのさん これは一体 どういうことですか? 267 00:21:32,097 --> 00:21:35,100 今日は私が お稽古を頂く日 268 00:21:35,100 --> 00:21:37,102 それを体の具合が悪いと 断ってこられ➡ 269 00:21:37,102 --> 00:21:40,105 案じて立ち寄ってみれば… (観音寺のせきばらい) 270 00:21:40,105 --> 00:21:44,105 しのさん それでは私は これで 271 00:21:48,113 --> 00:21:54,119 観音寺がな そうだったのか 272 00:21:54,119 --> 00:21:57,122 升屋の主人が 手玉に取られたのも無理はねえ 273 00:21:57,122 --> 00:22:00,125 なかなかの いい女でさ 274 00:22:00,125 --> 00:22:02,127 (おつや) 観音寺さんを たぶらかして➡ 275 00:22:02,127 --> 00:22:05,130 お奉行の動きを 探ろうってのかしら? 276 00:22:05,130 --> 00:22:10,135 観音寺さんは 本気で惚れてますぜ 見ていて いじらしいくれえだ 277 00:22:10,135 --> 00:22:13,138 困りましたねえ 278 00:22:13,138 --> 00:22:17,142 五郎八 へい 279 00:22:17,142 --> 00:22:21,146 観音寺に話す役目は お前しかいねえ 280 00:22:21,146 --> 00:22:26,151 つれえだろうが 頼む 分かりやした 281 00:22:26,151 --> 00:22:29,154 ところで 丸子屋の正体ですがね➡ 282 00:22:29,154 --> 00:22:32,157 どうやら ただの古着屋じゃなさそうです 283 00:22:32,157 --> 00:22:34,159 そうかい 284 00:22:34,159 --> 00:22:38,159 そっちの方は お前に任すぜ へい 285 00:22:44,102 --> 00:22:48,106 (観音寺)こんなとこへ連れてきて 何の話だ? 286 00:22:48,106 --> 00:22:51,043 (五郎八) 旦那が つきあっていなさる➡ 287 00:22:51,043 --> 00:22:55,047 謡の女師匠のことです 288 00:22:55,047 --> 00:23:00,052 (観音寺) ハハハ そうか 知ってたか 289 00:23:00,052 --> 00:23:07,059 (五郎八)旦那 あの女 およしになった方がいい 290 00:23:07,059 --> 00:23:09,059 (観音寺)何っ? 291 00:23:13,065 --> 00:23:20,072 (五郎八)あっしは 旦那の気持ちが よーく分かるつもりでいやす 292 00:23:20,072 --> 00:23:22,074 御新造さんを お亡くしになってから➡ 293 00:23:22,074 --> 00:23:27,079 ずーっと長え間 独り身をお通しなすったんだ 294 00:23:27,079 --> 00:23:35,087 心の通い合う女がいたら そりゃあ どんなに幸せだろうと➡ 295 00:23:35,087 --> 00:23:39,091 そんな女がいたら どんなことでもしてあげてえと➡ 296 00:23:39,091 --> 00:23:41,093 そう思いなさるのも無理はねえ 297 00:23:41,093 --> 00:23:44,096 貴様 一体 何が言いたいんだ? 298 00:23:44,096 --> 00:23:51,036 はっきり申し上げます あの しのって女は良くねえ女です 299 00:23:51,036 --> 00:23:54,039 今度の升屋の一件に 深く関わっているんです 300 00:23:54,039 --> 00:23:56,041 関わるって どういうことなんだ? 301 00:23:56,041 --> 00:24:03,041 つまり あの女 升屋乗っ取りに 一役買ってるらしいんです 302 00:24:05,050 --> 00:24:07,050 そんな ばかな! 303 00:24:09,054 --> 00:24:19,054 夢の旦那も 心配していなさります 手を切るんなら今のうちです 304 00:24:21,066 --> 00:24:28,073 旦那 どうか ひとつ よーく思案なすってくだせえ 305 00:24:28,073 --> 00:24:31,076 お願えいたしやす 306 00:24:31,076 --> 00:24:48,093 ♬~ 307 00:24:48,093 --> 00:24:52,093 (しの)《女は 業の深いものでございます》 308 00:24:56,034 --> 00:25:01,039 愚かだと お思いでしょうが 私には あの しのが➡ 309 00:25:01,039 --> 00:25:04,042 そんな悪女だとは どうしても思えんのです 310 00:25:04,042 --> 00:25:09,047 もしも… もしも本当に 悪事に加担したとすれば➡ 311 00:25:09,047 --> 00:25:15,053 それは よっぽど のっぴきならない 事情があったせいだと思われます 312 00:25:15,053 --> 00:25:18,056 あの女には息子がおります 313 00:25:18,056 --> 00:25:22,060 前途を約束された有望な 誠心館の学生です 314 00:25:22,060 --> 00:25:25,063 誠心館? はい 315 00:25:25,063 --> 00:25:30,068 私は その息子のためにも 真相を 突き止めてやりたいと思います 316 00:25:30,068 --> 00:25:32,070 その子の名は何という? 317 00:25:32,070 --> 00:25:36,070 小太郎と申します 小太郎? 318 00:25:38,076 --> 00:25:41,079 《母には 早く一人前の医者になって➡ 319 00:25:41,079 --> 00:25:44,082 安心させてやりたいと 思っています》 320 00:25:44,082 --> 00:25:48,086 その子は今度 長崎に留学するという子だな? 321 00:25:48,086 --> 00:25:52,086 はっ お奉行は どうして それを? 322 00:25:54,025 --> 00:26:01,032 そうか あの子の母親だったのか お奉行… 323 00:26:01,032 --> 00:26:06,037 分かった 気の済むようにするがいい 324 00:26:06,037 --> 00:26:09,037 はっ はい 325 00:26:16,047 --> 00:26:19,050 (彦右衛門) 一時たったら 迎えに来ておくれ 326 00:26:19,050 --> 00:26:22,053 (かごかき)へい (女性)いらっしゃいませ 327 00:26:22,053 --> 00:26:27,058 ≪(三味線) 328 00:26:27,058 --> 00:26:43,074 ♬~ 329 00:26:43,074 --> 00:26:45,074 ≪(彦右衛門)遅くなりやした 330 00:26:47,078 --> 00:26:50,081 ≪(鬼塚) 升屋の沽券は まだ売れぬのか? 331 00:26:50,081 --> 00:26:53,018 ≪(彦右衛門)申し訳ありやせん➡ 332 00:26:53,018 --> 00:26:56,021 何しろ 心中に見せかけて ばらしたもんで➡ 333 00:26:56,021 --> 00:26:59,024 縁起が悪いと 買い手に たたかれやして 334 00:26:59,024 --> 00:27:01,026 ≪(鬼塚)その殺しのことだが➡ 335 00:27:01,026 --> 00:27:05,030 しのは気付いてはおるまいな? (彦右衛門)へい 336 00:27:05,030 --> 00:27:10,035 自分が亭主を迷わせたばっかりに 夫婦心中になったと➡ 337 00:27:10,035 --> 00:27:14,039 そう信じ込んでおりやす (鬼塚)それでよい 338 00:27:14,039 --> 00:27:18,043 升屋は一日も早く売れ 急いで金が要るのだ 339 00:27:18,043 --> 00:27:21,046 へい ですが… 340 00:27:21,046 --> 00:27:27,052 本来なら 八丈島で骨になるはずの むささびの彦蔵が➡ 341 00:27:27,052 --> 00:27:30,055 御赦免になって 江戸にいられるのは➡ 342 00:27:30,055 --> 00:27:32,057 誰のおかげだと思っておる? 343 00:27:32,057 --> 00:27:36,061 そりゃあ もう 火盗改めだった お殿様➡ 344 00:27:36,061 --> 00:27:39,064 鬼塚様のおかげだと重々… 345 00:27:39,064 --> 00:27:43,068 (鬼塚) ふむ だったら ぐずぐずするな➡ 346 00:27:43,068 --> 00:27:46,071 次の獲物は 決まっておるのだろうな? 347 00:27:46,071 --> 00:27:50,075 へい 間もなく落ちるはずで 348 00:27:50,075 --> 00:27:53,011 ≪(鬼塚) 誰だ? その鼻の下の長い男は 349 00:27:53,011 --> 00:27:58,016 ≪(彦右衛門)日本橋の油問屋 近江屋でございます 350 00:27:58,016 --> 00:28:01,016 ≪(鬼塚)うむ ≪(鬼塚・彦右衛門の笑い声) 351 00:28:03,021 --> 00:28:07,025 (鐘の音) 352 00:28:07,025 --> 00:28:10,028 おめでとう 小太郎 353 00:28:10,028 --> 00:28:14,032 お父様も あの世で どんなに喜んでらっしゃることか 354 00:28:14,032 --> 00:28:17,035 (小太郎)母上のおかげです 355 00:28:17,035 --> 00:28:24,035 いいえ お前の努力が実ったのです さあ これを 356 00:28:26,044 --> 00:28:30,048 50両あります 長崎へ持っていきなさい 357 00:28:30,048 --> 00:28:33,051 (小太郎) 母上 こんな大金を どうして? 358 00:28:33,051 --> 00:28:36,054 このときのために 用意しておいたんです 359 00:28:36,054 --> 00:28:38,056 心配しなくてもいいの 360 00:28:38,056 --> 00:28:58,009 ♬~ 361 00:28:58,009 --> 00:29:00,011 ♬~ 362 00:29:00,011 --> 00:29:04,015 (住職) まさか あの しのさんが悪事に? 363 00:29:04,015 --> 00:29:09,020 よほど のっぴきならぬ訳があるに 違いないと思いましてな 364 00:29:09,020 --> 00:29:15,026 決して悪いようにはいたさん 私を信じて話していただけぬか? 365 00:29:15,026 --> 00:29:19,030 (住職)親子の一生に関わることと 申されましたな 366 00:29:19,030 --> 00:29:23,030 さよう 誓って他言はいたさん 367 00:29:27,038 --> 00:29:33,044 (住職)では申し上げよう 小太郎の父親はのう➡ 368 00:29:33,044 --> 00:29:39,050 津田省吾と申される御仁じゃ 津田省吾? 369 00:29:39,050 --> 00:29:46,057 ああ 寛政異学の禁に触れて 遠島になった蘭学者でしたな 370 00:29:46,057 --> 00:29:50,995 そのとおり 省吾殿は流された八丈島で➡ 371 00:29:50,995 --> 00:29:58,995 島長の娘 しのさんと懇ろになり 子をもうけた それが小太郎じゃ 372 00:30:01,005 --> 00:30:04,005 《小太郎は流人の子だったのか》 373 00:30:07,011 --> 00:30:11,015 母上 では寮へ帰ります 374 00:30:11,015 --> 00:30:16,020 小太郎 10日もすれば長崎へ行く身 体にだけは気を付けて 375 00:30:16,020 --> 00:30:20,020 はい 母上も お達者で 376 00:30:22,026 --> 00:30:24,026 さあ 早くお行き 377 00:30:27,031 --> 00:30:30,034 (しの)小太郎 378 00:30:30,034 --> 00:30:39,034 ♬~ 379 00:30:46,050 --> 00:30:49,053 本当だね? 本当に あしたは➡ 380 00:30:49,053 --> 00:30:51,990 私の言うことを 聞いてくれるんだね? 381 00:30:51,990 --> 00:30:58,990 本当です お約束します (近江屋)じゃあ あしたを楽しみに 382 00:31:07,005 --> 00:31:09,005 しの殿! 383 00:31:13,011 --> 00:31:18,016 ハァ… どうして こんなことをするんだ! 384 00:31:18,016 --> 00:31:25,023 ハッ… 人生の盛りを過ぎた わびしい男の心を弄んで➡ 385 00:31:25,023 --> 00:31:28,023 それが面白いか!? 386 00:31:31,029 --> 00:31:37,035 私は… 私は この年になって初めて… 387 00:31:37,035 --> 00:31:44,042 観音寺様 「女は業の深いもの」と そう申し上げたはずです 388 00:31:44,042 --> 00:31:47,045 (観音寺)何っ? 389 00:31:47,045 --> 00:31:53,051 お腹立ちなら 斬るなと 引っ立てるなとなさいませ! 390 00:31:53,051 --> 00:32:13,071 ♬~ 391 00:32:13,071 --> 00:32:21,079 ♬~ 392 00:32:21,079 --> 00:32:24,079 (客)へい ありがとう (おつや)はい いらっしゃい… 393 00:32:28,086 --> 00:32:34,086 どうなさっ… (観音寺)酒くれ! 大きいのでくれ 394 00:32:36,094 --> 00:32:41,094 どうする? (五郎八)冷やでいいだろう 395 00:32:45,103 --> 00:32:48,106 お待ち遠さまでした 396 00:32:48,106 --> 00:32:53,106 ただいま! あーら 久しぶ… 397 00:33:23,107 --> 00:33:43,127 ♬~ 398 00:33:43,127 --> 00:33:47,131 ♬~ 399 00:33:47,131 --> 00:33:50,131 ≪(小判を積む音) 400 00:33:53,071 --> 00:33:57,075 升屋の店が たったの1, 200両か 401 00:33:57,075 --> 00:33:59,077 申し訳ござんせん 402 00:33:59,077 --> 00:34:05,083 彦蔵 実はな 幕閣の有力な人物と 渡りがついてな➡ 403 00:34:05,083 --> 00:34:12,090 とりあえず 3, 000両あれば 復職は可能だ 早急に何とかしろ 404 00:34:12,090 --> 00:34:15,093 (彦右衛門) へい 分かっておりやす 必ず 405 00:34:15,093 --> 00:34:26,104 ♬~ 406 00:34:26,104 --> 00:34:29,107 (鬼塚)くせ者だ! 出合え! (源次)待て! 407 00:34:29,107 --> 00:34:32,107 (浪人たち) 待て! 待て! 待てい! 408 00:34:34,112 --> 00:34:39,112 (浪人)おのれ! (浪人)くそ! おのれ ああっ… 409 00:34:44,122 --> 00:34:46,124 どきやがれ! 410 00:34:46,124 --> 00:34:48,124 (斬る音) わあっ! 411 00:34:53,064 --> 00:34:58,069 腕は こんなもんだ そこで頼みがある 412 00:34:58,069 --> 00:35:00,071 な… 何でい? 413 00:35:00,071 --> 00:35:04,075 丸子屋の旦那に この腕を買ってもらいてえんだ 414 00:35:04,075 --> 00:35:10,081 おしの どうした? 近江屋の沽券は いつ手に入るのだ 415 00:35:10,081 --> 00:35:14,085 あした… あしたまで待ってください 416 00:35:14,085 --> 00:35:18,089 本当だろうね (しの)はい 417 00:35:18,089 --> 00:35:22,093 近江屋さんは そのときに 私に沽券を預けてくださると➡ 418 00:35:22,093 --> 00:35:24,095 約束なさいました 419 00:35:24,095 --> 00:35:26,097 もし うまくいかないときは➡ 420 00:35:26,097 --> 00:35:31,102 伜が流人の子だってことを 世間にばらすよ 分かってるね 421 00:35:31,102 --> 00:35:34,105 分かってます 422 00:35:34,105 --> 00:35:38,109 殿様… (彦右衛門)何者だ? 貴様 423 00:35:38,109 --> 00:35:42,113 さっきの怪しいやつを 片づけてくだすった浪人さんで 424 00:35:42,113 --> 00:35:44,115 (彦右衛門)そうかい ありがとよ➡ 425 00:35:44,115 --> 00:35:48,052 後で礼をするから 向こう行ってておくれ 426 00:35:48,052 --> 00:35:53,057 ほう こいつは大した金子だな 427 00:35:53,057 --> 00:36:01,065 へえー これが 女を使って 升屋から騙し取った金子かい 428 00:36:01,065 --> 00:36:04,068 何ぃ? おっ 429 00:36:04,068 --> 00:36:08,072 こちらの殿様は どっかで見覚えがあるな 430 00:36:08,072 --> 00:36:12,076 ああ ハハッ 知ってる 知ってる 431 00:36:12,076 --> 00:36:15,079 (彦右衛門)てめえ 町方の犬か!?➡ 432 00:36:15,079 --> 00:36:19,083 うっ! フフフ… とんでもねえ 433 00:36:19,083 --> 00:36:25,089 俺は見たとおりの痩せ浪人 名は夢之介 434 00:36:25,089 --> 00:36:28,092 夢之介だと? 435 00:36:28,092 --> 00:36:31,095 もっとも俺は お前さんたちみてえに➡ 436 00:36:31,095 --> 00:36:34,098 血まみれの夢は見ねえがね 437 00:36:34,098 --> 00:36:53,050 ♬~ 438 00:36:53,050 --> 00:36:55,050 あばよ 439 00:36:57,054 --> 00:37:02,054 野郎… (鬼塚)えたいの知れぬやつ 440 00:37:04,061 --> 00:37:06,061 待ちなさい 441 00:37:08,065 --> 00:37:11,068 (しの)あなたは夢之介… 442 00:37:11,068 --> 00:37:15,068 俺は観音寺の友人だ 443 00:37:17,074 --> 00:37:20,077 一つだけ聞きたい 444 00:37:20,077 --> 00:37:26,083 むささびの彦蔵と会ったのは 八丈島でのことだな? 445 00:37:26,083 --> 00:37:30,087 私が島育ちだと どうして? 446 00:37:30,087 --> 00:37:33,087 光明寺の住職から聞いた 447 00:37:36,093 --> 00:37:39,096 そうでしたか… 448 00:37:39,096 --> 00:37:44,101 そのとおりです 江戸に出て10年➡ 449 00:37:44,101 --> 00:37:48,039 島の親から 時々 お金は届きましたが➡ 450 00:37:48,039 --> 00:37:51,042 子供の勉学のためには とても足らず➡ 451 00:37:51,042 --> 00:37:56,047 困っていたとき ばったり 彦蔵に会ったのです 452 00:37:56,047 --> 00:37:59,047 《おしのさん?》 453 00:38:02,053 --> 00:38:05,056 (しの)《彦蔵さん》 454 00:38:05,056 --> 00:38:08,059 こうして 謡の師匠で➡ 455 00:38:08,059 --> 00:38:12,063 生計を立てるように してくれたのも 彦蔵でした 456 00:38:12,063 --> 00:38:17,068 それが いつの間にか… 457 00:38:17,068 --> 00:38:22,073 素性をばらすと脅して あんたを利用するようになった 458 00:38:22,073 --> 00:38:24,075 はい 459 00:38:24,075 --> 00:38:29,080 小太郎は あんたの命だ あんたは小太郎を守るために➡ 460 00:38:29,080 --> 00:38:36,080 目をつぶって 彦蔵の言うままに 男を手玉に取った 461 00:38:39,090 --> 00:38:45,096 我が子を守るためとはいえ 決して許されることではない 462 00:38:45,096 --> 00:38:49,033 まして 観音寺のことだけは… 夢之介様 463 00:38:49,033 --> 00:38:52,036 観音寺様に お伝えくださいませ 464 00:38:52,036 --> 00:38:56,036 「もう二度と 観音寺様には お会いしません」と 465 00:39:00,044 --> 00:39:13,057 ♬ 松風蘿月に言葉を交わす賓客も 466 00:39:13,057 --> 00:39:22,057 ♬ 去って来る事もなく 467 00:39:27,071 --> 00:39:31,071 いっときの幻か… 468 00:39:39,083 --> 00:39:41,085 (おつや)三の字! 469 00:39:41,085 --> 00:39:43,087 旦那 起きてくだせえ! (観音寺)うん? 470 00:39:43,087 --> 00:39:46,023 旦那! (観音寺)だ… 誰だ うるさいな 471 00:39:46,023 --> 00:39:49,026 あっ? 三郎三か 472 00:39:49,026 --> 00:39:52,029 旦那 早く しのさんの所へ お行きなせえ 473 00:39:52,029 --> 00:39:59,036 しのだと? ほっとけ! いいんだ あんな女 474 00:39:59,036 --> 00:40:03,036 旦那 早く行かねえと しのさん とんでもねえことになりますぜ 475 00:40:05,042 --> 00:40:23,060 ♬~ 476 00:40:23,060 --> 00:40:27,064 しのさん! やめろ! 477 00:40:27,064 --> 00:40:34,064 やめろ 死ぬな! 頼む 死なんでくれ! 478 00:40:37,074 --> 00:40:41,078 あなた一人の体ではない! 479 00:40:41,078 --> 00:40:47,018 息子さんのためにも ばかなまねをするんじゃない! 480 00:40:47,018 --> 00:41:07,038 ♬~ 481 00:41:07,038 --> 00:41:18,049 ♬~ 482 00:41:18,049 --> 00:41:28,049 (しのの泣き声) 483 00:41:31,062 --> 00:41:35,066 夢之介とかいう えたいの知れぬ男が 現れた以上➡ 484 00:41:35,066 --> 00:41:38,069 お前の寮には 置いてはおけんからな 485 00:41:38,069 --> 00:41:42,073 殿様のお屋敷なら 何が来たって びくともしませんや 486 00:41:42,073 --> 00:41:45,076 しのが近江屋の沽券を 手に入れたら➡ 487 00:41:45,076 --> 00:41:49,080 右から左に金にしろ (彦右衛門)へい 488 00:41:49,080 --> 00:41:53,084 今ちょうど お先手頭が1人 空いておるのだ 489 00:41:53,084 --> 00:41:58,089 その席に着いたら また火盗改めに戻れよう 490 00:41:58,089 --> 00:42:02,093 そうなっていただけりゃ 鬼に金棒で 491 00:42:02,093 --> 00:42:06,093 (鬼塚・彦右衛門の笑い声) ≪ そうは問屋が卸さん! 492 00:42:08,099 --> 00:42:11,102 (鬼塚)何者だ! 493 00:42:11,102 --> 00:42:16,102 北町奉行 榊原主計頭忠之 494 00:42:18,109 --> 00:42:20,111 北町奉行だと? 495 00:42:20,111 --> 00:42:27,118 元火付盗賊改方 鬼塚権十郎 盗賊 むささびの彦蔵 496 00:42:27,118 --> 00:42:31,122 子供を枷に女を脅し 升屋をはじめ➡ 497 00:42:31,122 --> 00:42:34,125 あまたの商人たちから 沽券を奪い➡ 498 00:42:34,125 --> 00:42:38,129 死に至らしめるとは言語道断 黙れ! 499 00:42:38,129 --> 00:42:44,135 町方が旗本屋敷に乗り込むなど 筋違いも甚だしい 500 00:42:44,135 --> 00:42:47,071 ヘヘヘ… それに お奉行さん➡ 501 00:42:47,071 --> 00:42:52,076 沽券を騙し取ったってえ証拠が どこにあるんですい? 502 00:42:52,076 --> 00:42:55,076 いいかげんにしねえか 悪党ども! 503 00:42:58,082 --> 00:43:00,082 うわっ! 504 00:43:02,086 --> 00:43:05,086 あっ? くっ… 505 00:43:10,094 --> 00:43:12,096 《あばよ》 506 00:43:12,096 --> 00:43:15,099 貴様… (彦右衛門)夢之介? 507 00:43:15,099 --> 00:43:20,104 人の命を弄んだ貴様らに もはや 見る夢はないのだ 508 00:43:20,104 --> 00:43:23,104 潔く縛に就け! 509 00:43:25,109 --> 00:43:28,109 (鬼塚)出合え! 出合え 出合え! 510 00:43:33,117 --> 00:43:36,117 (鬼塚)この者を斬れ 斬り捨てい! 511 00:43:40,124 --> 00:43:45,124 関わりなき者は去れ! さもなくば… 512 00:43:49,066 --> 00:43:52,069 斬る! (浪人)おのれ! 513 00:43:52,069 --> 00:44:12,089 ♬~ 514 00:44:12,089 --> 00:44:31,108 ♬~ 515 00:44:31,108 --> 00:44:33,110 ♬~ 516 00:44:33,110 --> 00:44:36,113 (鬼塚)待て! 待て ひるむな! 517 00:44:36,113 --> 00:44:56,066 ♬~ 518 00:44:56,066 --> 00:45:08,066 ♬~ 519 00:45:17,087 --> 00:45:34,104 ♬~ 520 00:45:34,104 --> 00:45:37,107 せっかく 思いが通じたってのに➡ 521 00:45:37,107 --> 00:45:41,111 別れなきゃならねえとは 観音寺さんも気の毒に 522 00:45:41,111 --> 00:45:47,051 なぁに あれでいいのさ もし 2人が一緒になってみろ➡ 523 00:45:47,051 --> 00:45:51,055 五郎八が 妬けて妬けて 真っ黒焦げだ 524 00:45:51,055 --> 00:45:55,059 そ… そりゃねえでしょう (一同の笑い声) 525 00:45:55,059 --> 00:45:59,063 <榊原の情けある裁きで しのは江戸お構いとなり➡ 526 00:45:59,063 --> 00:46:03,067 小太郎と共に長崎に旅立った> 527 00:46:03,067 --> 00:46:07,071 <咲いて散った観音寺の恋を かいま見て➡ 528 00:46:07,071 --> 00:46:12,076 人を愛するということの美しさは いくつになっても➡ 529 00:46:12,076 --> 00:46:17,081 変わりはないものだと思う 夢之介であった> 530 00:46:17,081 --> 00:46:37,101 ♬~ 531 00:46:37,101 --> 00:46:57,054 ♬~ 532 00:46:57,054 --> 00:47:17,074 ♬~ 533 00:47:17,074 --> 00:47:37,094 ♬~ 534 00:47:37,094 --> 00:47:51,094 ♬~ 535 00:47:56,079 --> 00:47:59,082 <殺人の嫌疑で捕らえられた お久は➡ 536 00:47:59,082 --> 00:48:03,086 過去 次郎吉の恵んだ金で 目が見えるようになった女> 537 00:48:03,086 --> 00:48:08,091 <その お久の弟 宗吉が 次郎吉からの金を 汚い金と罵り➡ 538 00:48:08,091 --> 00:48:10,093 今は医者の我が身を悔やむが➡ 539 00:48:10,093 --> 00:48:13,096 次郎吉の真の心に触れたとき➡ 540 00:48:13,096 --> 00:48:17,100 2人のきょうだいに 明るい希望が訪れた> 541 00:48:17,100 --> 00:48:20,100 <次回 「八百八町夢日記」…>