1 00:01:35,853 --> 00:01:40,257 (白川)甘粕さん どういうことか もう一度おっしゃってください 2 00:01:40,257 --> 00:01:44,028 (甘粕)ですから チューリップ殺人事件 3 00:01:44,028 --> 00:01:49,828 および先日の真壁真奈美 殺人事件の犯人は 私です 4 00:01:52,736 --> 00:01:54,805 (下日山)ちょっと 大丈夫ですか! 5 00:01:54,805 --> 00:01:56,805 (番頭)女将さん 女将さん! 6 00:01:57,691 --> 00:01:59,693 息してます 7 00:01:59,693 --> 00:02:04,348 私に インタビューなさいますか? 8 00:02:04,348 --> 00:02:06,348 えッ? 9 00:02:19,363 --> 00:02:22,516 甘粕さん 今回最後のインタビュー相手は あなたです 10 00:02:22,516 --> 00:02:28,172 すでに警察には ここにいることは 通報してあります 11 00:02:28,172 --> 00:02:31,008 それまでの時間しかありませんが 12 00:02:31,008 --> 00:02:33,360 結構です 13 00:02:33,360 --> 00:02:40,518 青沼さん あなたは真実には 興味がないとおっしゃっていた 14 00:02:40,518 --> 00:02:43,687 ええ そのとおりです 15 00:02:43,687 --> 00:02:49,026 では なぜ 真実を知ろうとするのか? 16 00:02:49,026 --> 00:02:52,930 真実の先には フェイクがあるからです 17 00:02:52,930 --> 00:02:55,533 真実が極まればフェイクになり 18 00:02:55,533 --> 00:02:59,019 フェイクが極まれば真実になる 19 00:02:59,019 --> 00:03:01,522 なるほど 20 00:03:01,522 --> 00:03:06,043 では お願いします 21 00:03:06,043 --> 00:03:08,846 まず チューリップ殺人事件 22 00:03:08,846 --> 00:03:10,865 事件が起こったのは 23 00:03:10,865 --> 00:03:13,017 1999年 24 00:03:13,017 --> 00:03:16,537 殺されたのは 夷鈴子と阿波島翠 25 00:03:16,537 --> 00:03:20,357 二人はなぜ 殺されたか 26 00:03:20,357 --> 00:03:25,279 三貴子の泉の秘密を 暴こうとしたからです➡ 27 00:03:25,279 --> 00:03:28,182 パワーヒラリストの黒曲が➡ 28 00:03:28,182 --> 00:03:32,353 泉をパワースポットとして 全国的に有名にした➡ 29 00:03:32,353 --> 00:03:37,274 そのおかげで 三貴子の泉は 有名な観光地となり➡ 30 00:03:37,274 --> 00:03:39,360 町は潤った 31 00:03:39,360 --> 00:03:43,847 しかし 三貴子の泉には 仕掛けがあった 32 00:03:43,847 --> 00:03:46,700 ≪(甘粕)ええ 三貴子の泉の水は➡ 33 00:03:46,700 --> 00:03:50,000 ポンプによって 吹き上げられている 34 00:03:51,205 --> 00:03:55,175 ≪(甘粕)あの日 二人は私のところに➡ 35 00:03:55,175 --> 00:03:57,695 話があるといってやってきた 36 00:03:57,695 --> 00:04:03,434 《(夷)だったら こんな泉の秘密を 守る必要なんてないと思う》 37 00:04:03,434 --> 00:04:07,071 ≪(甘粕)それは 泉の秘密と➡ 38 00:04:07,071 --> 00:04:12,509 その陰の部分を 世間に公表するというものでした 39 00:04:12,509 --> 00:04:18,009 《たとえ 「もう一人」でも 止められない》 40 00:04:22,686 --> 00:04:26,357 ≪(甘粕)それは 許しがたい行為でした➡ 41 00:04:26,357 --> 00:04:31,011 私は 二人を泉に誘い出し➡ 42 00:04:31,011 --> 00:04:35,199 順番に首を絞めました 43 00:04:35,199 --> 00:04:39,787 しかし 思わぬ共犯者が現れた 44 00:04:39,787 --> 00:04:42,022 ええ 45 00:04:42,022 --> 00:04:45,192 チューリップ状の遺体を見て 一番驚かれたのは 46 00:04:45,192 --> 00:04:48,345 甘粕さん あなただ 47 00:04:48,345 --> 00:04:52,783 いいえ 驚きはしませんでした なぜです? 48 00:04:52,783 --> 00:04:56,420 誰がチューリップにしたのか 分かっていましたから 49 00:04:56,420 --> 00:04:58,672 そういうことですね 50 00:04:58,672 --> 00:05:00,674 あなたが起こした殺人と 51 00:05:00,674 --> 00:05:03,861 安藤刑事と消防団が起こした 死体損壊 52 00:05:03,861 --> 00:05:08,699 無関係の二つの事件が 一つの事件だと思われた 53 00:05:08,699 --> 00:05:11,835 それが 事件の真相だと? 54 00:05:11,835 --> 00:05:14,872 いえ 真相ではありません 55 00:05:14,872 --> 00:05:18,025 えッ? 事件のあらましですよ 56 00:05:18,025 --> 00:05:22,179 おそらくあなたは 泉に関して 特別な思いがあった 57 00:05:22,179 --> 00:05:24,365 でもそれは表面的なこと 58 00:05:24,365 --> 00:05:27,534 あなたには 別の思いがあったはずです 59 00:05:27,534 --> 00:05:32,189 泉への執着は その代理行為だった 60 00:05:32,189 --> 00:05:34,341 それは 61 00:05:34,341 --> 00:05:38,846 夷鈴子さんへの思いですよね 62 00:05:38,846 --> 00:05:43,017 《私が生涯で愛した女性は ただ一人》 63 00:05:43,017 --> 00:05:45,117 《鈴子だけです》 64 00:05:47,604 --> 00:05:53,193 あの日 泉を発見したとき 65 00:05:53,193 --> 00:05:56,493 私は夷鈴子の 特別な力を見たんです 66 00:05:57,681 --> 00:06:01,352 そう 夷鈴子は 山の中で不思議な光を見て 67 00:06:01,352 --> 00:06:03,354 三貴子の泉を発見する 68 00:06:03,354 --> 00:06:05,672 そのとき一緒にいた もう一人 69 00:06:05,672 --> 00:06:09,343 それが中学生だった甘粕さん あなただ 70 00:06:09,343 --> 00:06:13,781 あなたはあの日から夷鈴子の パワーに魅せられてしまった 71 00:06:13,781 --> 00:06:16,881 《ああ~ッ!》 72 00:06:18,685 --> 00:06:21,355 《うッ うう…》 73 00:06:21,355 --> 00:06:26,026 ≪(甘粕)はい 私の鈴子の パワーに関する畏敬の念は➡ 74 00:06:26,026 --> 00:06:29,179 やがて恋愛感情へと 変わりました➡ 75 00:06:29,179 --> 00:06:32,032 それが 鈴子と黒曲の➡ 76 00:06:32,032 --> 00:06:36,032 ゆがんだ関係を知ることに なっても 変わることはなかった 77 00:06:37,020 --> 00:06:40,007 ≪(甘粕)いや ゆがめられた関係は➡ 78 00:06:40,007 --> 00:06:43,177 かえって私の気持ちを 強くしていった➡ 79 00:06:43,177 --> 00:06:47,014 そして ある日 知ってしまったのです 80 00:06:47,014 --> 00:06:49,199 知る? 81 00:06:49,199 --> 00:06:54,204 関係を求めたのは 黒曲の方ではなかったんです 82 00:06:54,204 --> 00:06:56,504 そんな 83 00:07:00,360 --> 00:07:04,681 ≪(甘粕)誘惑したのは 鈴子の方でした 84 00:07:04,681 --> 00:07:06,867 なんで そんなことを? 85 00:07:06,867 --> 00:07:11,004 ≪(甘粕)恐らく 父親を殺した 「もう一人」に復讐するために➡ 86 00:07:11,004 --> 00:07:14,804 黒曲の力を利用しようとした 87 00:07:17,845 --> 00:07:19,847 どういうことですか? 88 00:07:19,847 --> 00:07:22,766 ダムの開発を推進して 89 00:07:22,766 --> 00:07:25,366 「もう一人」に殺されたのは 90 00:07:29,206 --> 00:07:32,006 ≪(甘粕)鈴子の父親です 91 00:07:35,245 --> 00:07:40,434 あなたは 全てを知っても なお鈴子さんのことを愛していた 92 00:07:40,434 --> 00:07:42,669 なぜ そんなにも愛していた 鈴子さんを 93 00:07:42,669 --> 00:07:47,024 あなたは 手にかけてしまったのか? 94 00:07:47,024 --> 00:07:50,694 分かりません 95 00:07:50,694 --> 00:07:54,081 誰かに命じられるというか… 96 00:07:54,081 --> 00:07:57,017 そうしなければならない 97 00:07:57,017 --> 00:07:59,520 そんな気がしてしまって 98 00:07:59,520 --> 00:08:05,042 それが あなたの中にいる 「もう一人」 99 00:08:05,042 --> 00:08:08,362 あなたは自分の中にいる 「もう一人」を 100 00:08:08,362 --> 00:08:11,162 抑えることができなかった 101 00:08:12,683 --> 00:08:17,104 だから真実はおもしろくない 何て陳腐な結末なんだ 102 00:08:17,104 --> 00:08:22,025 だが そのことを僕が認めていれば 真奈美さんは死なずにすんだ 103 00:08:22,025 --> 00:08:24,678 僕自身が道化を演じるべきだった 104 00:08:24,678 --> 00:08:26,847 真奈美さんは分かってた 105 00:08:26,847 --> 00:08:31,518 たとえ結婚しても あなたの瞳には 彼女は映っていない 106 00:08:31,518 --> 00:08:35,672 だから黒曲に関係を強要されても 受け入れた 107 00:08:35,672 --> 00:08:40,360 そして すべての秘密を抱え込んだまま 108 00:08:40,360 --> 00:08:42,860 姿を消したんです 109 00:08:44,798 --> 00:08:46,798 そのとおりです 110 00:08:48,435 --> 00:08:52,235 しかし 彼女は戻ってきた 111 00:08:56,009 --> 00:08:59,029 すべてを語るために 112 00:08:59,029 --> 00:09:03,329 そして そのことを知った あなたによって 113 00:09:04,568 --> 00:09:08,021 ≪(甘粕)不思議なことに➡ 114 00:09:08,021 --> 00:09:11,321 彼女は抵抗しませんでした 115 00:09:13,527 --> 00:09:17,364 真奈美さんは あなたのことを愛していた 116 00:09:17,364 --> 00:09:21,518 一見 誰とでも関係を持つ女に 見えますが違います 117 00:09:21,518 --> 00:09:23,887 もっと純粋な人だった 118 00:09:23,887 --> 00:09:27,040 あなただって そのことは知っていたはずだ 119 00:09:27,040 --> 00:09:29,593 ええ じゃあ どうして? 120 00:09:29,593 --> 00:09:32,713 真奈美のためです それは嘘だ 121 00:09:32,713 --> 00:09:35,182 そもそも鈴子さんを葬ったのは あなたですよ 122 00:09:35,182 --> 00:09:37,851 甘粕さん 真実を話してくださいよ 123 00:09:37,851 --> 00:09:40,354 あなたはそうやって 真実を抱え込んだまま 124 00:09:40,354 --> 00:09:42,339 すべてを葬ろうとしてるんですよ 125 00:09:42,339 --> 00:09:47,177 でも青沼さん 真実には興味がない んですよね さっきそう言った! 126 00:09:47,177 --> 00:09:59,389 (パトカーのサイレン) 127 00:09:59,389 --> 00:10:03,343 甘粕さん 最後に一つだけ 128 00:10:03,343 --> 00:10:05,345 何でしょう 129 00:10:05,345 --> 00:10:09,700 「もう一人いる」って どういうことですか? 130 00:10:09,700 --> 00:10:13,704 「もう一人」は私ですよ いや だったらなぜ 131 00:10:13,704 --> 00:10:17,741 町の人が「もう一人いる」って 言ったんですか おかしいでしょ 132 00:10:17,741 --> 00:10:20,027 だったら 町の人みんなが 133 00:10:20,027 --> 00:10:23,030 あなたが犯人だって 知っていたことになる 134 00:10:23,030 --> 00:10:26,030 ええ そのとおりです 135 00:10:27,701 --> 00:10:30,354 町のおおよその人は 136 00:10:30,354 --> 00:10:33,307 私が犯人だって 知ってたと思いますよ 137 00:10:33,307 --> 00:10:35,392 えッ!? 138 00:10:35,392 --> 00:10:37,692 そんなバカな 139 00:10:45,769 --> 00:10:50,190 だったら 今まで私がインタビューしてきたことは 140 00:10:50,190 --> 00:10:54,194 とんだ茶番だったってわけですか そのとおりです 141 00:10:54,194 --> 00:10:56,697 町の人達は ずっと 142 00:10:56,697 --> 00:10:59,800 あなたに対して お芝居をしてきたんだと思います 143 00:10:59,800 --> 00:11:03,437 おかしいでしょう いくら閉鎖された町だって 144 00:11:03,437 --> 00:11:07,574 町の人全員が 殺人の真実を 隠し通すなんてありえない 145 00:11:07,574 --> 00:11:09,860 ありえませんよ 僕は納得できない 146 00:11:09,860 --> 00:11:16,933 でも あなたは真実が 嫌いなんですよね 147 00:11:16,933 --> 00:11:19,202 フェイクしか愛せない あなたに 148 00:11:19,202 --> 00:11:22,302 ふさわしい幕切れだと 思いますけど 149 00:11:24,758 --> 00:11:26,758 そんな… 150 00:11:29,696 --> 00:11:31,696 そうだ 151 00:11:33,066 --> 00:11:35,066 最後に 152 00:11:38,038 --> 00:11:41,538 僕の真実の姿を ご覧いただきましょう 153 00:11:44,027 --> 00:11:47,130 フェイクを愛してくれた あなたへの 154 00:11:47,130 --> 00:11:49,630 せめてもの お礼です 155 00:12:02,045 --> 00:12:04,045 キャッ! それは? 156 00:13:56,810 --> 00:13:59,963 キャッ! それは? 157 00:13:59,963 --> 00:14:04,885 ええ あの泉を発見したとき 158 00:14:04,885 --> 00:14:07,985 鈴子のパワーに打たれた傷です 159 00:14:09,039 --> 00:14:11,641 鈴子の不思議な力は 160 00:14:11,641 --> 00:14:15,941 私の体に焼きついている 161 00:14:19,466 --> 00:14:23,136 青沼さん➡ 162 00:14:23,136 --> 00:14:29,136 仮面をかぶって生きる 人間の気持ちが 分かりますか? 163 00:14:37,651 --> 00:14:40,751 もう一人います 164 00:14:43,139 --> 00:14:45,139 あの… 165 00:14:50,964 --> 00:14:53,964 (安藤)連絡するから いつでも どうぞ 166 00:15:29,986 --> 00:15:33,286 何か 終わってしまいましたね 167 00:15:34,407 --> 00:15:36,326 ゲビヤマ君 ちょっといいかな 168 00:15:36,326 --> 00:15:38,426 はい 何でしょう? 169 00:15:45,969 --> 00:15:48,555 これだ! 何ですか? これ 170 00:15:48,555 --> 00:15:51,308 これが 白川次郎の100作目だよ 171 00:15:51,308 --> 00:15:53,308 ええ~ッ! 172 00:15:55,812 --> 00:15:59,482 「チューリップ殺人事件」 それじゃあ 今回の事件を? 173 00:15:59,482 --> 00:16:01,635 決まってるじゃないか ええ~ 嘘 174 00:16:01,635 --> 00:16:04,654 いつ書いたんですか? 昨日だよ 175 00:16:04,654 --> 00:16:07,641 えッ 一晩で それで青沼さんのまま? 176 00:16:07,641 --> 00:16:11,011 そうだよ 嘘~ 177 00:16:11,011 --> 00:16:14,314 嘘じゃない 読んでみろ そして感じろ 178 00:16:14,314 --> 00:16:18,802 これこそ 白川次郎の100作目に ふさわしい リアルなフェイクだよ 179 00:16:18,802 --> 00:16:21,905 やった~! うれしいか? ゲビヤマ 180 00:16:21,905 --> 00:16:24,641 はい~ 見直したか? 白川次郎を 181 00:16:24,641 --> 00:16:26,643 はい~ 182 00:16:26,643 --> 00:16:32,832 へえ~ へえ~ 183 00:16:32,832 --> 00:16:34,901 ≪(女将)失礼します 184 00:16:34,901 --> 00:16:36,803 はい げッ いない 185 00:16:36,803 --> 00:16:38,803 あッ いた 186 00:16:40,306 --> 00:16:42,308 ゆ… 郵便です えッ 朝っぱらから? 187 00:16:42,308 --> 00:16:44,361 だから それが書留なんだよ はッ 188 00:16:44,361 --> 00:16:47,330 青沼に書留なんだよ あれ 呼び捨て? 189 00:16:47,330 --> 00:16:50,830 呼び捨てでもいいんだ とにかく差出人を見ろ 190 00:16:56,806 --> 00:16:59,476 ちょっと青沼さん どこ行くんですか? 191 00:16:59,476 --> 00:17:01,478 東京だよ 東京 192 00:17:01,478 --> 00:17:03,646 「もう一人いる」それが誰だか 分かるかもしれない 193 00:17:03,646 --> 00:17:05,982 甘粕さんのことじゃ ないんですか? 194 00:17:05,982 --> 00:17:08,301 違うんだよ 195 00:17:08,301 --> 00:17:11,821 町の人達は「もう一人」の存在を 認識していた 196 00:17:11,821 --> 00:17:15,125 今回の事件が起こる ずっと前からね 197 00:17:15,125 --> 00:17:17,994 いいか ゲビヤマ君 この旅館を離れるな 198 00:17:17,994 --> 00:17:20,063 えッ? 199 00:17:20,063 --> 00:17:24,300 この旅館にいて 僕の新作を 読んでてくれ 分かったね 200 00:17:24,300 --> 00:17:27,470 はあ… とにかく旅館にいろ 201 00:17:27,470 --> 00:17:29,973 もお~ どした? 202 00:17:29,973 --> 00:17:33,073 スリッパで お外に ああッ 203 00:19:39,402 --> 00:19:43,706 真壁真奈美の手紙には こうあった 犯人は甘粕さんではない 204 00:19:43,706 --> 00:19:48,545 10年前のチューリップ殺人事件も 実行犯は甘粕さんかもしれないが 205 00:19:48,545 --> 00:19:51,531 彼にそうさせた「もう一人」がいる 206 00:19:51,531 --> 00:19:54,717 どうか その「もう一人」を 暴いてほしいと 207 00:19:54,717 --> 00:19:57,220 「もう一人」に 会わなくてはならない 208 00:19:57,220 --> 00:20:02,220 しゅん巡するうちに記憶の底から ある言葉を たぐり寄せていた 209 00:20:07,046 --> 00:20:10,383 それは 私の28作目の小説 210 00:20:10,383 --> 00:20:13,253 「期待させる殺人」の中で 引用された 211 00:20:13,253 --> 00:20:17,040 心理学上の言葉 「受容人格」であった 212 00:20:17,040 --> 00:20:20,727 受容人格はまだ 未確定の研究であり 213 00:20:20,727 --> 00:20:24,027 完璧な実証が されているわけではない 214 00:20:33,706 --> 00:20:39,045 受容人格とは 簡単に言うと 民意を具現化する性格 215 00:20:39,045 --> 00:20:41,531 受容人格となった人は 無意識のうちに 216 00:20:41,531 --> 00:20:45,368 集団の潜在的な希望を察知し それを実行してしまう 217 00:20:45,368 --> 00:20:49,872 その代表的な例が 1940年代にドイツで起こった 218 00:20:49,872 --> 00:20:52,392 アルゲリヒト事件 219 00:20:52,392 --> 00:20:54,544 村人の中の ある女性が 220 00:20:54,544 --> 00:20:57,196 複数の男性と関係を持った 221 00:20:57,196 --> 00:21:00,717 それが 村全体の 不協和音を生み出した 222 00:21:00,717 --> 00:21:05,538 すると 村人の中の一人が 女性を殺害してしまった 223 00:21:05,538 --> 00:21:11,210 しかし 犯人の男は その女性とは無関係だった 224 00:21:11,210 --> 00:21:14,731 記録によると「みなが女性の死を 望んだからだ」と 225 00:21:14,731 --> 00:21:16,816 殺人の動機を述べている 226 00:21:16,816 --> 00:21:18,701 要するに 受容人格者は 227 00:21:18,701 --> 00:21:22,722 無意識のうちに集団のリクエストに 応えてしまう 228 00:21:22,722 --> 00:21:26,322 甘粕さんは… やはり 229 00:21:27,543 --> 00:21:30,343 なるほど 230 00:21:38,071 --> 00:21:40,071 あれ? 231 00:21:41,991 --> 00:21:43,991 およ? 232 00:21:45,111 --> 00:21:48,111 そういや このネジは… 233 00:21:51,534 --> 00:21:53,553 あッ 234 00:21:53,553 --> 00:21:55,653 《ちょっと洗ってきます》 235 00:21:57,056 --> 00:22:00,056 《あわわわわ…》 236 00:22:01,227 --> 00:22:03,727 おっと 237 00:22:07,050 --> 00:22:09,385 ちょっと出てきます どちらへ? 238 00:22:09,385 --> 00:22:11,721 消ノ原町へ 239 00:22:11,721 --> 00:22:13,790 思い出したんですよ 何を? 240 00:22:13,790 --> 00:22:15,790 青いネジ 241 00:22:17,043 --> 00:22:19,729 まあいいや いいし 242 00:22:19,729 --> 00:22:23,383 受容人格は 誰かに引き継がれることはない 243 00:22:23,383 --> 00:22:28,054 ただ 受容人格を生み出した 人間関係が変わらない限り 244 00:22:28,054 --> 00:22:32,475 同じような人格を 再び生み出す可能性はある 245 00:22:32,475 --> 00:22:35,695 アルゲリヒト事件の場合も 数年後 同様に 246 00:22:35,695 --> 00:22:38,398 受容人格となる エヴァという女性が 247 00:22:38,398 --> 00:22:41,868 殺人未遂事件を起こしている 248 00:22:41,868 --> 00:22:45,705 事件を調べていた新聞記者を 殺そうとした 249 00:22:45,705 --> 00:22:51,210 その女性は 供述の中で 「誰かに命じられた」と述べている 250 00:22:51,210 --> 00:22:55,882 さらに追求すると 村人以外に 「もう一人」いると 251 00:22:55,882 --> 00:23:00,219 「もう一人いる」 恐らく村人の総意を人格化して 252 00:23:00,219 --> 00:23:04,157 その人物に命令されたと認識した 253 00:23:04,157 --> 00:23:06,376 「もう一人いる」 254 00:23:06,376 --> 00:23:10,897 消ノ原町の人達が言っていたのは このことなのか 255 00:23:10,897 --> 00:23:12,897 だとしたら… 256 00:23:26,479 --> 00:23:28,714 (川島)調べたいことって何? 257 00:23:28,714 --> 00:23:33,014 いえ 大したことじゃないんです ふ~ん 258 00:23:35,555 --> 00:23:37,655 やっぱりそうか 259 00:23:41,043 --> 00:23:43,643 青いネジ 260 00:25:47,904 --> 00:25:49,904 青いネジ 261 00:25:55,861 --> 00:25:57,861 ゲビヤマ君 262 00:25:59,031 --> 00:26:02,034 ああッ 先生 263 00:26:02,034 --> 00:26:04,854 何やってんだ こんなところで 264 00:26:04,854 --> 00:26:09,854 どうしたんですか? あのさ 旅館を離れるなって 265 00:26:11,877 --> 00:26:13,877 まあいいや 266 00:26:21,220 --> 00:26:26,042 またラムネですか? 歯悪くなりますよ 267 00:26:26,042 --> 00:26:29,042 息さわやかがインタビュアーの基本 268 00:26:31,380 --> 00:26:34,033 あれ その格好で帰るんですか? 269 00:26:34,033 --> 00:26:36,052 (ヴィブラスラップの音) 270 00:26:36,052 --> 00:26:38,052 どうぞ 271 00:26:44,710 --> 00:26:50,049 やっぱり お帰りになりますね そうですね 272 00:26:50,049 --> 00:26:54,704 何この人はいつも お客が帰る時に 寂しいなんて申しましてね 273 00:26:54,704 --> 00:26:58,708 その話は なしにしてください いいんですけど 274 00:26:58,708 --> 00:27:01,877 あれ もうお一人の さわやかな方は? 275 00:27:01,877 --> 00:27:05,477 ああ それは… 今 呼んできますよ 276 00:27:07,700 --> 00:27:10,700 ねえ ゲビヤマ君 はい 277 00:27:52,028 --> 00:27:54,046 ゲビヤマ君 お待たせ 278 00:27:54,046 --> 00:27:58,034 あッ やっぱりこっちの方のほうが ですよね~ 279 00:27:58,034 --> 00:28:00,634 では お別れの記念に 280 00:28:01,687 --> 00:28:06,042 ♬~お目めが痛いよ 281 00:28:06,042 --> 00:28:10,212 ♬~お目めが泣いてるよ 282 00:28:10,212 --> 00:28:14,116 ♬~猫のお目めは くるくる変わる 283 00:28:14,116 --> 00:28:19,822 ♬~だから お目めの ニュース ニュース 284 00:28:19,822 --> 00:28:22,922 じゃあ お世話になりました 285 00:28:43,028 --> 00:28:46,031 やっぱり すごい迫力で 引き込まれましたよ 286 00:28:46,031 --> 00:28:50,569 何が? 先生の100作目 「チューリップ殺人事件」 287 00:28:50,569 --> 00:28:53,539 おもしろかった? おもしろいですよ 288 00:28:53,539 --> 00:28:56,909 一つ 聞いてもいいですか? 何? 289 00:28:56,909 --> 00:29:01,380 先生は 鈴子さんの手に握られた 青い水道のネジについて 290 00:29:01,380 --> 00:29:05,050 何も書いてませんよね ああ 291 00:29:05,050 --> 00:29:07,386 何でですか? 292 00:29:07,386 --> 00:29:11,707 もしかして あの青いネジの謎は 解けてないとか 293 00:29:11,707 --> 00:29:15,528 いや あれは甘粕さんの 本当の思いだよ 294 00:29:15,528 --> 00:29:17,530 ネジが? 295 00:29:17,530 --> 00:29:21,183 甘粕さんは受容人格として 「もう一人」の命令に従い 296 00:29:21,183 --> 00:29:24,370 愛する鈴子さんを殺してしまった 297 00:29:24,370 --> 00:29:28,970 でも ほんのいっとき 本来の甘粕真一に戻った 298 00:29:33,045 --> 00:29:37,867 そして 泉の秘密を告発したい という鈴子さんの思いを 299 00:29:37,867 --> 00:29:40,269 このネジに込めた 300 00:29:40,269 --> 00:29:45,769 誰かに三貴子の泉が まがい物で あることを気づかせたかった 301 00:29:53,249 --> 00:29:55,184 そうか 302 00:29:55,184 --> 00:29:57,186 でも これが発表されたら 303 00:29:57,186 --> 00:30:01,707 黒曲や安藤刑事達に 新たに 警察の捜査の手が伸びますよね 304 00:30:01,707 --> 00:30:03,759 恐らく そうだな 305 00:30:03,759 --> 00:30:05,861 事件も あのままでいいってことはない 306 00:30:05,861 --> 00:30:09,682 白川次郎の100作目は 一種の告発小説でもあると 307 00:30:09,682 --> 00:30:12,051 あのさ ゲビヤマ君 308 00:30:12,051 --> 00:30:16,355 残念ながらこれは 白川次郎の 100作目の小説にはならない 309 00:30:16,355 --> 00:30:18,691 どういうことですか? 310 00:30:18,691 --> 00:30:24,380 これは 青沼霧生の デビュー小説として世に出るんだ 311 00:30:24,380 --> 00:30:26,380 えッ? 312 00:30:33,189 --> 00:30:35,357 ゲビヤマ君 313 00:30:35,357 --> 00:30:38,544 一つ 言い忘れてたことがあるんだ 何ですか? 314 00:30:38,544 --> 00:30:42,044 青沼霧生は 今日で消えることにするよ 315 00:32:30,339 --> 00:32:33,459 ゲビヤマ君 一つ 言い忘れてたことがあるんだ 316 00:32:33,459 --> 00:32:35,344 何ですか? 317 00:32:35,344 --> 00:32:40,499 君は このまま東京に帰りなさい えッ 先生は? 318 00:32:40,499 --> 00:32:43,185 僕は 反対のバスに乗る 319 00:32:43,185 --> 00:32:48,524 そして 青沼霧生は 今日で消えることにするよ 320 00:32:48,524 --> 00:32:50,524 えッ? 321 00:32:51,660 --> 00:32:56,348 消ノ原町の人達の意思が 受容人格だった甘粕さんに伝わり 322 00:32:56,348 --> 00:33:01,353 甘粕さんは みんなの意思として 三人の女性を殺してしまった 323 00:33:01,353 --> 00:33:03,656 ええ だからって… 324 00:33:03,656 --> 00:33:08,060 ということは 事件の真相を 知っている君と僕に 325 00:33:08,060 --> 00:33:10,829 危害がおよぶ可能性がある 326 00:33:10,829 --> 00:33:15,517 幸い 君は僕ほど 核心に近い印象がない 327 00:33:15,517 --> 00:33:19,817 しかも 下日山でなく ゲビヤマとしか呼ばれてない 328 00:33:21,840 --> 00:33:25,244 だが これ以上一緒にいたら 329 00:33:25,244 --> 00:33:27,744 いつか君も標的にされる 330 00:33:29,515 --> 00:33:33,652 だから 青沼霧生は 331 00:33:33,652 --> 00:33:36,171 全ての敵意を一身に受けたまま 332 00:33:36,171 --> 00:33:39,825 この世から消えるのが一番なんだ 333 00:33:39,825 --> 00:33:43,012 私 イヤです 334 00:33:43,012 --> 00:33:48,612 私… 私 青沼さんのことが好きです 335 00:33:50,352 --> 00:33:52,354 そうか 336 00:33:52,354 --> 00:33:56,508 ずっと一緒じゃなくても いいんです 337 00:33:56,508 --> 00:34:01,080 時々 現れてくれたら それだけでいいんです 338 00:34:01,080 --> 00:34:03,332 それは危険すぎる 339 00:34:03,332 --> 00:34:07,336 もし僕が 君のそばにいることが知れたら 340 00:34:07,336 --> 00:34:09,688 リスクが高すぎるんだよ 341 00:34:09,688 --> 00:34:11,840 そんな… 342 00:34:11,840 --> 00:34:14,343 君を守るためなんだ 343 00:34:14,343 --> 00:34:16,795 君のことがいとおしい 344 00:34:16,795 --> 00:34:22,895 だから なおさら君を守りたい 分かるね 345 00:34:35,681 --> 00:34:40,181 分かりました もう行ってください 346 00:34:58,353 --> 00:35:01,453 お別れだ ゲビヤマ君 347 00:35:34,690 --> 00:35:38,990 青沼霧生のこと 忘れないでほしい 348 00:35:41,163 --> 00:35:43,866 いつか安心できる時がきたら 349 00:35:43,866 --> 00:35:46,466 また帰ってくるかもしれない 350 00:36:08,040 --> 00:36:13,040 うん… 待ってます ずっと 351 00:36:43,008 --> 00:36:47,679 編集長 ええ 大丈夫です 352 00:36:47,679 --> 00:36:52,501 はい 記念すべき100作目ですから 353 00:36:52,501 --> 00:36:54,670 はい 354 00:36:54,670 --> 00:36:57,856 ようやく上がりましたよ 355 00:36:57,856 --> 00:37:00,359 ええ 356 00:37:00,359 --> 00:37:03,359 ゲビヤマ君がきたら渡します 357 00:37:05,397 --> 00:37:08,700 メールで送るなんて 僕はね 358 00:37:08,700 --> 00:37:15,000 ネットって 信用してないんですよ それじゃあ 359 00:37:44,369 --> 00:37:47,669 やっとできたよ ゲビヤマ君 360 00:38:18,086 --> 00:38:20,086 <みんな 聞いて> 361 00:38:27,179 --> 00:38:29,279 どしどし 応募してください