1 00:00:39,325 --> 00:00:44,163 (宮の宣旨)宮の宣旨と申す。 そなたは 藤原。 2 00:00:44,163 --> 00:00:49,001 今日より そなたを 藤式部と 呼ぶことにいたす。 (まひろ)は…。 3 00:00:49,001 --> 00:00:53,339 そなたの父は かつて 式部丞 蔵人であったであろう。 4 00:00:53,339 --> 00:00:55,675 さようでございます。 5 00:00:55,675 --> 00:01:02,014 藤式部 中宮様の御ために 共に尽くしましょうぞ。 6 00:01:02,014 --> 00:01:05,351 仰せの旨 かしこまりました。 7 00:01:05,351 --> 00:01:08,020 心して相務めます。 8 00:01:08,020 --> 00:01:13,320 どうか よしなにお導きくださいませ。 9 00:01:29,308 --> 00:04:14,308 ♬~ 10 00:04:30,022 --> 00:04:34,322 ここが そなたの務めの場である。 11 00:04:37,763 --> 00:04:41,967 (宮の宣旨) 左大臣様と北の方様のお計らいと心得よ。 12 00:04:41,967 --> 00:04:45,304 まことに恐れ入ります。 13 00:04:45,304 --> 00:04:49,975 そなたは 専ら物語を書く務めであるゆえ 関わりないことではあるが➡ 14 00:04:49,975 --> 00:04:52,478 そもそも女房の仕事は➡ 15 00:04:52,478 --> 00:04:56,148 中宮様のお食事のお世話 身の回りのお世話➡ 16 00:04:56,148 --> 00:05:01,320 お話し相手 内裏の公卿方との取り次ぎ役などである。 17 00:05:01,320 --> 00:05:06,659 私もお手伝いしとう存じます。 18 00:05:06,659 --> 00:05:09,328 (左衛門の内侍)お手伝い…。 19 00:05:09,328 --> 00:05:11,363 (宮の宣旨)それでは。 20 00:05:11,363 --> 00:05:14,163 あとは よろしゅう。 21 00:05:16,201 --> 00:05:19,201 ここでいいわ。 22 00:06:07,519 --> 00:06:10,990 ≪(物音) 23 00:06:10,990 --> 00:06:13,325 慌てるでない! 24 00:06:13,325 --> 00:06:16,625 (ため息) 25 00:06:19,999 --> 00:06:23,335 (藤原公任) 藤式部と呼ばれておるそうだな。 26 00:06:23,335 --> 00:06:26,238 中納言様。 27 00:06:26,238 --> 00:06:29,208 (公任)藤壺に上がれてよかったな。 28 00:06:29,208 --> 00:06:32,945 うちの者は お前が来なくなって さみしがっておるが。 ハハ。 29 00:06:32,945 --> 00:06:37,116 (藤原斉信)左大臣様に そなたを推挙したのは 中納言殿であるぞ。 30 00:06:37,116 --> 00:06:40,152 知っておるか。 左大臣様に伺っております。 31 00:06:40,152 --> 00:06:42,921 ありがとうございました。 32 00:06:42,921 --> 00:06:45,824 己の才を存分に生かせ。 33 00:06:45,824 --> 00:06:49,828 何かあれば 中宮大夫の俺に申し出るがよい。 34 00:06:49,828 --> 00:06:52,464 何かありそうなのでございますか? 35 00:06:52,464 --> 00:06:56,301 ここの女房たちは 高貴な姫ばかりなのだが➡ 36 00:06:56,301 --> 00:07:00,472 頼りにならぬ。 頼りにならぬとは…。 37 00:07:00,472 --> 00:07:03,976 中宮様と同じような育ちの姫ばかりゆえ➡ 38 00:07:03,976 --> 00:07:07,479 中宮様の御ために働くという気持ちが 薄い。 39 00:07:07,479 --> 00:07:11,350 中宮様にお伝え申せと言うても伝わらぬし 言ったことはやらぬ。 40 00:07:11,350 --> 00:07:13,986 (公任)要するに世間知らずなのだな。 41 00:07:13,986 --> 00:07:16,789 (斉信)世間知らずというか 鈍いのだ。 42 00:07:16,789 --> 00:07:20,659 見栄えはしても 鈍いのは困るな。 (斉信)全くだ。 43 00:07:20,659 --> 00:07:23,996 (笑い声) 44 00:07:23,996 --> 00:07:27,866 私のような地味でつまらぬ女は➡ 45 00:07:27,866 --> 00:07:32,604 己の才を頼みとするしかございませぬ。 46 00:07:32,604 --> 00:07:39,404 左大臣様のお心にかなうよう 精いっぱい励みます。 フフフ。 47 00:07:42,614 --> 00:07:47,119 地味でつまらぬ女って お前 前に言ってなかったか? 48 00:07:47,119 --> 00:07:50,119 そうか? うん…。 49 00:08:32,931 --> 00:08:38,270 (斉信)室礼 座次 その他 一切 抜かりなきように支度せよ。➡ 50 00:08:38,270 --> 00:08:42,941 整い次第 また確かめに参る。➡ 51 00:08:42,941 --> 00:08:46,241 何か聞きたいことはないか? 52 00:08:49,281 --> 00:08:54,153 あるのかないのか 返事をせよ。 ございませぬ。 53 00:08:54,153 --> 00:08:56,155 (ため息) 54 00:08:56,155 --> 00:09:01,855 年明け早々の中宮大饗 抜かりなきように。 55 00:09:08,634 --> 00:09:13,305 聞きたいことなど ありませんわよね。 56 00:09:13,305 --> 00:09:16,975 もう 毎年 同じようにやっておりますのに。 57 00:09:16,975 --> 00:09:21,313 (馬中将の君)中宮大夫様は 何につけ偉そうになさりたいだけよ。 58 00:09:21,313 --> 00:09:23,782 フフフ…。 59 00:09:23,782 --> 00:09:28,620 それより 藤式部の父上は 従五位下ですわよね。 60 00:09:28,620 --> 00:09:31,924 それなのに中納言様方とお親しいの? 61 00:09:31,924 --> 00:09:35,727 (大納言の君)四条宮で 歌を教えておられたそうですわ。 62 00:09:35,727 --> 00:09:38,597 (小少将の君)まあ 学がおありなのね。 63 00:09:38,597 --> 00:09:42,467 (宰相の君)衛門様は 藤式部を昔からご存じなのでしょ? 64 00:09:42,467 --> 00:09:47,105 (赤染衛門) ええ。 中宮様の御母君がお若い頃➡ 65 00:09:47,105 --> 00:09:51,944 お屋敷での学びの会に 藤式部も参っておりました。 66 00:09:51,944 --> 00:09:55,244 (一同)へえ~…。 67 00:10:31,316 --> 00:10:43,328 ≪(いびき) 68 00:10:43,328 --> 00:10:45,998 ≪(物音) 69 00:10:45,998 --> 00:11:15,994 ♬~ 70 00:11:15,994 --> 00:11:20,699 (小少将の君・寝言で) 豆 食べたでしょう…。➡ 71 00:11:20,699 --> 00:11:23,699 泥棒! 72 00:11:30,375 --> 00:11:32,978 お目覚めあれ! 73 00:11:32,978 --> 00:11:35,480 ≪お目覚めあれ! 74 00:11:35,480 --> 00:11:38,317 ≪お目覚めあれ! 75 00:11:38,317 --> 00:11:55,334 ♬~ 76 00:11:55,334 --> 00:11:57,669 藤式部。➡ 77 00:11:57,669 --> 00:12:00,572 藤式部! 78 00:12:00,572 --> 00:12:03,475 えっ。 お支度を。 79 00:12:03,475 --> 00:12:07,813 急ぎなされ。 誰か! ≪はい ただいま! 80 00:12:07,813 --> 00:12:14,019 藤式部の務めは 物語 私の務めは 学び事の指南。 81 00:12:14,019 --> 00:12:19,891 役目は 皆 違えども 朝は ちゃんと起きなければなりませんよ。 82 00:12:19,891 --> 00:12:21,893 はい…。 83 00:12:21,893 --> 00:12:24,029 あれ? 84 00:12:24,029 --> 00:12:26,531 (宮の宣旨)今日は 一層せわしなくなる。➡ 85 00:12:26,531 --> 00:12:30,702 何か分からぬこと 気がかりなことはないな。 86 00:12:30,702 --> 00:12:32,637 申し訳ございませぬ。 87 00:12:32,637 --> 00:12:36,975 藤式部ったら 昨夜は 遅くまで何をしていらしたの? 88 00:12:36,975 --> 00:12:40,312 誰ぞのおみ足でも おもみにいらしたのではないの? 89 00:12:40,312 --> 00:12:43,215 フフフ。 (宮の宣旨)静かに。 90 00:12:43,215 --> 00:12:47,652 今日の大饗は 皆々 心して務めよ。 91 00:12:47,652 --> 00:12:50,652 (一同)ははっ。 はっ…。 92 00:12:54,326 --> 00:12:56,995 あの…。 93 00:12:56,995 --> 00:13:02,167 誰ぞの足をもみに行くとは 何のことでございますか? 94 00:13:02,167 --> 00:13:06,367 やだ… おとぼけになって。 95 00:13:08,340 --> 00:13:11,676 足をもみに行くとは…➡ 96 00:13:11,676 --> 00:13:15,976 夜とぎに召されるということですの。 97 00:13:23,688 --> 00:13:31,496 中宮大饗では 公卿らが中宮に拝礼し うたげが行われる。 98 00:13:31,496 --> 00:13:33,498 中納言様です。 99 00:13:33,498 --> 00:13:40,972 下賜する禄の用意や うたげの準備で 女房たちは大忙しである。 100 00:13:40,972 --> 00:14:17,672 ♬~ 101 00:14:42,300 --> 00:14:48,000 過分に賜り 恐悦至極に存じます。 102 00:14:55,313 --> 00:14:58,013 (宮の宣旨)藤式部。 103 00:15:10,862 --> 00:15:13,562 はあ…。 104 00:15:30,682 --> 00:15:35,520 (左衛門の内侍) 誰が このような あさぎ色のものを。 105 00:15:35,520 --> 00:15:39,291 中宮様は 薄紅色がお好きだと申したであろう。 106 00:15:39,291 --> 00:15:42,591 ただいま持ってまいらせます。 107 00:15:50,902 --> 00:15:54,839 ハハハ… お上手。 108 00:15:54,839 --> 00:15:57,839 お次は 中宮様。 109 00:16:04,983 --> 00:16:07,683 (藤原彰子)親王様。 110 00:16:09,854 --> 00:16:12,657 ないしょ。 111 00:16:12,657 --> 00:16:22,857 ♬~ 112 00:16:26,004 --> 00:16:30,704 (藤原行成) 敦康親王様にかかる費えにございます。 113 00:16:33,612 --> 00:16:38,483 (行成)室礼と装束のかかりは おおよそ これほどかと存じます。 114 00:16:38,483 --> 00:16:42,954 (藤原道長)親王家別当の行成が これで よしと思うなら これでよい。 115 00:16:42,954 --> 00:16:45,290 はっ。 116 00:16:45,290 --> 00:16:50,161 中宮様と親王様は 仲むつまじくおわすのか? 117 00:16:50,161 --> 00:16:53,632 はい。 そのようにお見受けいたします。 118 00:16:53,632 --> 00:16:59,932 親王様は 中宮様を いたくお慕いでございます。 うむ。 119 00:17:02,974 --> 00:17:07,846 藤壺に 伊周が訪ねてくることはないのか? 120 00:17:07,846 --> 00:17:12,984 伊周殿は 目立った動きは 控えておられるやに思えます。 121 00:17:12,984 --> 00:17:16,655 藤壺に出入りなされば ほかの者の目にも留まりますゆえ。 122 00:17:16,655 --> 00:17:18,990 そうか…。 123 00:17:18,990 --> 00:17:21,793 されど 伊周の位を元に戻したのは➡ 124 00:17:21,793 --> 00:17:27,332 敦康親王様の後見を 見据えてのことであろう。 125 00:17:27,332 --> 00:17:37,142 このまま中宮様にお子ができねば 伊周の力は 大きくなるやもしれぬ。 126 00:17:37,142 --> 00:17:40,278 気は抜けぬな。 127 00:17:40,278 --> 00:17:45,150 親王様を 伊周殿の手に 渡すようなことはいたしませぬ。 128 00:17:45,150 --> 00:17:49,287 この身を賭して お守りいたします。 129 00:17:49,287 --> 00:17:51,587 頼んだぞ。 130 00:17:56,961 --> 00:18:04,961 え? アハハハ! 131 00:18:19,217 --> 00:18:22,017 無理…。 132 00:18:24,989 --> 00:18:31,596 ここでは 落ち着いて物語を書くことができませぬ。 133 00:18:31,596 --> 00:18:36,434 里に戻って書きとうございます。 どうかお許しくださいませ。 134 00:18:36,434 --> 00:18:40,939 つぼねまで与えたのに なぜ書けぬのだ。 135 00:18:40,939 --> 00:18:44,609 皆様 忙しく立ち働いておられますのに➡ 136 00:18:44,609 --> 00:18:49,447 私だけ のんびりと 筆を弄んでいるのが何だか…。 137 00:18:49,447 --> 00:18:52,283 書くことが己の使命であると 申したではないか。 138 00:18:52,283 --> 00:18:54,219 そうなのでございますが…。 139 00:18:54,219 --> 00:18:59,157 内裏で さまざまなことを見聞きし 物語の糧にするとも申しておった。 140 00:18:59,157 --> 00:19:05,764 そうなのでございますが ここは 気が散りますし 夜も眠れませぬ。 141 00:19:05,764 --> 00:19:08,264 なぜ眠れぬ。 142 00:19:11,569 --> 00:19:14,973 ならば 別に寝所を用意してやろう。 143 00:19:14,973 --> 00:19:19,310 それは 皆様のお気持ちもありますので お許しくださいませ。 144 00:19:19,310 --> 00:19:22,610 どうか里に。 ならぬ! 145 00:19:31,322 --> 00:19:38,129 帝は 続きが出来たら お前に会いたいと仰せだ。 146 00:19:38,129 --> 00:19:42,734 お前の才で 帝を藤壺に…。 147 00:19:42,734 --> 00:19:44,934 頼む。 148 00:19:52,277 --> 00:19:55,947 これは 帝にお渡ししたものを手直しし➡ 149 00:19:55,947 --> 00:19:59,818 続きを書き足したものにございます。 150 00:19:59,818 --> 00:20:03,621 この巻は これで終わりでございます。 151 00:20:03,621 --> 00:20:08,760 この先の巻は 里に帰って 書きたく思います。 152 00:20:08,760 --> 00:20:11,129 もう頭の中では 出来ておりますので。 153 00:20:11,129 --> 00:20:14,632 帰ることは許さぬ。 154 00:20:14,632 --> 00:20:22,307 お前は 我が最後の一手なのだ。 155 00:20:22,307 --> 00:20:26,978 物語は書きたい気持ちの時に書かねば 勢いを失います。 156 00:20:26,978 --> 00:20:28,913 私は 今すぐ書きたいのでございます。 157 00:20:28,913 --> 00:20:31,213 藤壺で書け! 158 00:20:34,652 --> 00:20:37,652 書いてくれ。 159 00:20:40,325 --> 00:20:43,025 このとおりだ。 160 00:20:44,996 --> 00:20:48,696 道長様…。 161 00:20:52,871 --> 00:21:02,571 私が書くものに まことに そのような力が あるのでございましょうか? 162 00:21:05,016 --> 00:21:10,889 これが まことに 帝のお心をお引き付けできると➡ 163 00:21:10,889 --> 00:21:15,360 道長様は お思いですの? 164 00:21:15,360 --> 00:21:17,295 分からぬ。 165 00:21:17,295 --> 00:21:25,995 されど… 俺には これしかないのだ。 166 00:21:30,375 --> 00:21:33,075 賭けなのだ。 167 00:21:36,180 --> 00:21:40,480 賭けに負けたら どうなさいますの? 168 00:21:43,321 --> 00:21:46,991 私は どうなりますの? 169 00:21:46,991 --> 00:21:54,332 お役御免 無用の身となりましょうか。 そのようなことはない。 170 00:21:54,332 --> 00:21:59,032 まことでございますか。 ああ。 171 00:22:07,345 --> 00:22:12,216 物語を書きたいという気持ちに 偽りはございませぬ。 172 00:22:12,216 --> 00:22:14,819 里で続きは書きます。 173 00:22:14,819 --> 00:22:19,619 そして 必ずお持ちいたします。 174 00:22:51,322 --> 00:22:54,993 中宮様。 175 00:22:54,993 --> 00:22:58,693 藤式部にございます。 176 00:23:08,006 --> 00:23:12,006 お寒くはございませぬか? 177 00:23:17,348 --> 00:23:21,019 炭を持ってこさせましょう。 178 00:23:21,019 --> 00:23:25,719 (彰子)私は 冬が好き。 179 00:23:27,358 --> 00:23:31,629 空の色も好き。 180 00:23:31,629 --> 00:23:35,500 中宮様は お召しになっておられる➡ 181 00:23:35,500 --> 00:23:41,305 薄紅色がお好きなのかと 思っておりました。 182 00:23:41,305 --> 00:23:45,176 私が好きなのは 青。 183 00:23:45,176 --> 00:23:48,176 空のような。 184 00:23:51,949 --> 00:23:57,488 (左衛門の内侍)中宮様 このような所で お風邪を召したら どうなさいます。 185 00:23:57,488 --> 00:24:00,525 御簾を下ろせ。 186 00:24:00,525 --> 00:24:02,994 中宮様 こちらへ。 187 00:24:02,994 --> 00:24:06,294 そこは 寒うございますゆえ。 188 00:24:09,667 --> 00:24:13,367 藤式部は 何をしているの? 189 00:24:15,540 --> 00:24:18,676 里に下がるご挨拶を。 190 00:24:18,676 --> 00:24:23,181 えっ… この間 藤壺に上がったばかりではないの。 191 00:24:23,181 --> 00:24:28,686 里に下がり お役目を果たそうと存じます。 192 00:24:28,686 --> 00:24:53,644 ♬~ 193 00:24:53,644 --> 00:24:58,516 (いと)冷たっ! (福丸)ほら 俺がやるから いいよ。 194 00:24:58,516 --> 00:25:03,354 (きぬ)あんたは 気にしなくていいよ。 私は 冬の海にも潜るんだから。 195 00:25:03,354 --> 00:25:05,790 (乙丸)ハハハ…。 196 00:25:05,790 --> 00:25:07,725 ん~!? 197 00:25:07,725 --> 00:25:12,330 (藤原惟規)姉上! どうしたの? 198 00:25:12,330 --> 00:25:15,166 帰りたくなってしまったの。 199 00:25:15,166 --> 00:25:18,503 はっ! 追い出されたのでございますね! 200 00:25:18,503 --> 00:25:22,173 家で書いた方が はかどるからよ。 201 00:25:22,173 --> 00:25:24,108 ああ… 賢子と父上は? 202 00:25:24,108 --> 00:25:26,677 お二人でお出かけにございます。 203 00:25:26,677 --> 00:25:30,014 涙で別れて まだ8日目だよ。 204 00:25:30,014 --> 00:25:34,752 8日もご苦労なさったのですね。 おいたわしい…。 205 00:25:34,752 --> 00:25:36,687 ああ… 心配しないで。 206 00:25:36,687 --> 00:25:41,487 帰ってきたら 晴れ晴れしたわ。 大根おいしそう。 207 00:26:07,652 --> 00:26:09,952 (惟規)姉上。 208 00:26:11,522 --> 00:26:14,325 いじめられたの? 209 00:26:14,325 --> 00:26:17,795 高貴な姫様ばかりで そんな意地悪な人いないわよ。 210 00:26:17,795 --> 00:26:19,730 でも 帰ってきたんでしょ。 211 00:26:19,730 --> 00:26:21,999 また戻るかも。 えっ? 212 00:26:21,999 --> 00:26:23,935 まだ分からないけど…。 213 00:26:23,935 --> 00:26:27,672 はあ… 分かりにくい女だね。 214 00:26:27,672 --> 00:26:29,607 まあ いいけど。 215 00:26:29,607 --> 00:26:31,943 俺は 姉上みたいな女子には ほれないから。 216 00:26:31,943 --> 00:26:35,446 私も 惟規みたいな殿御には ほれないです。 217 00:26:35,446 --> 00:26:39,283 ハハハ… だよね~。 218 00:26:39,283 --> 00:27:14,283 ♬~ 219 00:27:18,789 --> 00:27:25,162 伊勢守に 平 維衡を任じるなど もっての外に存ずる。 220 00:27:25,162 --> 00:27:30,334 維衡は かの国の支配を巡り 一族の平 致頼と➡ 221 00:27:30,334 --> 00:27:33,604 幾度も合戦を起こした者。 222 00:27:33,604 --> 00:27:40,945 武力による力争いを許しては 瞬く間に戦乱の世となってしまう。 223 00:27:40,945 --> 00:27:47,945 (藤原顕光) されど 帝が そうお望みなのですぞ。 224 00:27:53,524 --> 00:27:56,961 そういう者を国守とすれば➡ 225 00:27:56,961 --> 00:28:04,835 どの国の国守も やがては 武力に ものを言わせようといたします。 226 00:28:04,835 --> 00:28:10,975 右大臣殿は それで よいとお考えなのだな。 227 00:28:10,975 --> 00:28:14,645 フッ… 維衡一人ぐらいで そのような。 228 00:28:14,645 --> 00:28:21,986 全ては ささいなことから始まるのだ。 229 00:28:21,986 --> 00:28:25,656 (藤原公季)まあまあまあ…。 230 00:28:25,656 --> 00:28:33,264 除目の大間書には 伊勢守の名を入れずにおく。 231 00:28:33,264 --> 00:28:37,264 本日の除目の儀は これまで。 232 00:28:56,954 --> 00:28:59,954 お先に。 233 00:29:08,566 --> 00:29:13,971 (藤原道綱)左大臣殿の言うことは なるほどと思ったが。 ねっ。 234 00:29:13,971 --> 00:29:17,842 されど 左大臣様らしからぬ怒り方であったな。 235 00:29:17,842 --> 00:29:21,645 平 維衡殿は もともと右大臣様の家人。 236 00:29:21,645 --> 00:29:25,516 なので 右大臣様が推挙されたのかと。 237 00:29:25,516 --> 00:29:31,455 そこまで知っておって なぜ そなたは 帝の仰せのままにと言ったのだ。 238 00:29:31,455 --> 00:29:35,593 帝が仰せなら 致し方ございますまい。 239 00:29:35,593 --> 00:29:38,496 (藤原実資)わしも そう思った。➡ 240 00:29:38,496 --> 00:29:42,933 されど 左大臣様は流されなかった。 さすがである。 241 00:29:42,933 --> 00:29:46,270 わしは 今 激しく己を恥じておる。 242 00:29:46,270 --> 00:29:53,044 (藤原隆家)恐れながら 帝には 朝廷も武力を持つべきというお考えは➡ 243 00:29:53,044 --> 00:29:56,914 おありにならないのでございましょうか。 (藤原伊周)やめておけ。 244 00:29:56,914 --> 00:30:00,618 (隆家)ご無礼いたしました。 されど これから先は➡ 245 00:30:00,618 --> 00:30:06,290 そういう道を選ぶことが あるいは 肝要となるやもしれませぬ。 246 00:30:06,290 --> 00:30:09,590 よくよく考えるべきと存じます。 247 00:30:12,963 --> 00:30:16,300 空欄にしたはずの伊勢守の欄に➡ 248 00:30:16,300 --> 00:30:23,641 いつの間にか 何者かによって 平 維衡の名が書き加えられていた。 249 00:30:23,641 --> 00:30:27,311 帝の裁可を得たということになるため➡ 250 00:30:27,311 --> 00:30:32,183 道長は それ以上 手出しできなかった。 251 00:30:32,183 --> 00:30:36,654 「心は 他の女の方にあったとしても➡ 252 00:30:36,654 --> 00:30:41,792 見初めたころのままに いとおしく思われているのであれば➡ 253 00:30:41,792 --> 00:30:44,995 それを よすがに思っていればいいものを➡ 254 00:30:44,995 --> 00:30:51,995 そうはならずに たじろぐから 縁は絶えてしまうものなのです」。 255 00:30:58,008 --> 00:31:01,679 面白いよ それ。 256 00:31:01,679 --> 00:31:06,550 大勢の男と むつんだわけでもないくせに よく書けるね そんなの。 257 00:31:06,550 --> 00:31:10,354 むつまなくても書けるのよ。 258 00:31:10,354 --> 00:31:12,690 (いと)あの…。 ん? 259 00:31:12,690 --> 00:31:20,364 そのような下品な殿御たちのお話 帝が お喜びになりますでしょうか。 260 00:31:20,364 --> 00:31:26,237 中宮様って うつけなの? は? 261 00:31:26,237 --> 00:31:28,239 みんな言ってるよ。 262 00:31:28,239 --> 00:31:34,879 亡き皇后 定子様は 聡明だったけれど 中宮 彰子様は うつけだって。 263 00:31:34,879 --> 00:31:39,650 うつけでは ありません。 奥ゆかしいだけ。 264 00:31:39,650 --> 00:31:44,650 ご意志は しっかり おありになるわ。 (惟規)そんな怒るなよ。 265 00:31:48,325 --> 00:31:53,998 除目での伊勢守の件 叡意により➡ 266 00:31:53,998 --> 00:31:58,335 平 維衡を これに任じることといたします。 267 00:31:58,335 --> 00:32:05,035 されど 速やかに交代させたく存じます。 268 00:32:06,677 --> 00:32:13,551 恐れながら お身内にも 厳しく接してこられた お上とも思えぬ➡ 269 00:32:13,551 --> 00:32:17,021 こたびのご判断。 270 00:32:17,021 --> 00:32:21,721 政に傷がつかぬうちに 取り消さねばなりませぬ。 271 00:32:23,894 --> 00:32:29,194 (一条天皇)さほどの ゆゆしき過ちを 犯したとは思えぬが…。 272 00:32:31,035 --> 00:32:36,640 お上に 初めて申し上げます。 273 00:32:36,640 --> 00:32:40,644 今は 寺や神社すらも武具を蓄え➡ 274 00:32:40,644 --> 00:32:43,981 武力で土地を取り合う世と なりつつあるのでございます。 275 00:32:43,981 --> 00:32:47,785 加えて この先 国司となるような者たちが➡ 276 00:32:47,785 --> 00:32:54,158 弓矢を専らとするようになれば いかが相成りましょうか。 277 00:32:54,158 --> 00:33:01,665 やがては 朝廷をないがしろにする者が 出てまいらぬとも限りませぬ。 278 00:33:01,665 --> 00:33:06,503 そうなれば 血で血を洗う世となりましょう。 279 00:33:06,503 --> 00:33:14,011 そうならぬように世を導くのが 正しき政。 280 00:33:14,011 --> 00:33:26,011 お上の御ため この国のためを思えばこそ あえて申し上げております。 281 00:33:32,963 --> 00:33:36,634 分かった…。 282 00:33:36,634 --> 00:33:39,303 伊勢守は 交代させよ。 283 00:33:39,303 --> 00:33:44,603 ありがたき えい慮 恐れ入り奉りましてございます。 284 00:33:54,852 --> 00:33:58,989 やめたんじゃないの? 遊びに来ただけじゃない? 285 00:33:58,989 --> 00:34:00,989 え~? 286 00:34:05,663 --> 00:34:10,534 帝にお見せする物語が 少し進みましたので➡ 287 00:34:10,534 --> 00:34:14,834 左大臣様にお渡しに参りました。 288 00:34:17,675 --> 00:34:24,348 帝がお読みになるもの 私も読みたい。 えっ。 289 00:34:24,348 --> 00:34:28,648 帝が お気に召された物語を知りたい。 290 00:34:30,688 --> 00:34:37,294 これは 続きでございますので…➡ 291 00:34:37,294 --> 00:34:42,294 では これまでのところを 手短にお話しいたします。 292 00:34:43,967 --> 00:34:51,308 帝は 忘れ形見の皇子を 宮中に呼び寄せて かわいがられますが➡ 293 00:34:51,308 --> 00:34:57,181 この皇子が 物語の主となります。 294 00:34:57,181 --> 00:35:08,325 皇子は それは美しく 賢く 笛も ご堪能でした。 295 00:35:08,325 --> 00:35:13,664 帝みたい。 まことに。 296 00:35:13,664 --> 00:35:16,567 その皇子の名は? 297 00:35:16,567 --> 00:35:22,339 あまりにも美しかったので 光る君と呼ばれました。 298 00:35:22,339 --> 00:35:25,242 光る君…。 299 00:35:25,242 --> 00:35:28,242 その皇子は 何をするの? 300 00:35:30,013 --> 00:35:36,313 何をさせてあげましょう。 ん~…。 301 00:35:38,455 --> 00:35:41,959 続きにございます。 302 00:35:41,959 --> 00:35:44,959 大儀であった。 303 00:35:50,634 --> 00:35:56,334 これで終わりか? いえ まだまだ続きます。 304 00:35:58,509 --> 00:36:01,779 これまで わがままを申しましたが➡ 305 00:36:01,779 --> 00:36:05,983 お許しいただけるなら 改めて 藤壺で➡ 306 00:36:05,983 --> 00:36:09,853 中宮様の御ために 力を尽くしたいと存じます。 307 00:36:09,853 --> 00:36:12,322 まことか! 308 00:36:12,322 --> 00:36:21,022 ありがたいことだが… どうしたのだ? よく気の変わる女子だな。 309 00:36:25,869 --> 00:36:33,277 中宮様のお好きな色は 空の青らしゅうございます。 310 00:36:33,277 --> 00:36:36,277 青? はい。 311 00:36:37,948 --> 00:36:41,819 中宮様のお心の中には➡ 312 00:36:41,819 --> 00:36:48,959 表に出てこないお言葉が たくさん潜んでおるのやもしれませぬ。 313 00:36:48,959 --> 00:36:54,659 中宮様と もっとお話ししたいと存じました。 314 00:36:56,834 --> 00:37:01,305 お上のお渡りにございます。 315 00:37:01,305 --> 00:37:05,175 帝が 藤式部に会いにいらっしゃるの? 316 00:37:05,175 --> 00:37:09,175 中宮様には ご興味ないもの。 317 00:37:35,939 --> 00:37:40,639 彰子 変わりはないか? 318 00:37:48,285 --> 00:37:55,585 藤原為時の娘 まひろであったか? 久しいのう。 319 00:37:57,961 --> 00:38:10,974 「高者 未だ必ずしも賢ならず 下者 未だ必ずしも愚ならず」。 320 00:38:10,974 --> 00:38:15,846 朕の政に 堂々と考えを述べたてる女子は➡ 321 00:38:15,846 --> 00:38:20,317 亡き女院様以外には おらなんだゆえ よく覚えておる。 322 00:38:20,317 --> 00:38:22,986 恐れ多いことにございます。 323 00:38:22,986 --> 00:38:29,326 光る君とは 敦康か? 324 00:38:29,326 --> 00:38:32,596 ないしょにございます。 325 00:38:32,596 --> 00:38:38,296 あの書きぶりは 朕を難じておると思い 腹が立った。 326 00:38:43,941 --> 00:38:52,282 されど次第に そなたの物語が 朕の心に しみいってきた。 327 00:38:52,282 --> 00:38:58,582 まことに不思議なことであった。 は…。 328 00:39:00,624 --> 00:39:03,961 朕のみが読むには惜しい。 329 00:39:03,961 --> 00:39:06,630 皆に読ませたい。 330 00:39:06,630 --> 00:39:12,630 はい。 物語は 女子供だけのものではございませぬ。 331 00:39:18,976 --> 00:39:26,850 中宮様にも お読みいただければ この上なき誉れに存じます。 332 00:39:26,850 --> 00:39:43,166 ♬~ 333 00:39:43,166 --> 00:39:46,136 褒美である。 334 00:39:46,136 --> 00:39:49,136 は…。 フッ…。 335 00:39:50,907 --> 00:39:57,280 これからも よろしく頼む。 336 00:39:57,280 --> 00:40:49,499 ♬~ 337 00:40:49,499 --> 00:40:54,004 鳥が逃げてしまったの 大切に飼っていた鳥が。 338 00:40:54,004 --> 00:40:56,807 鳥を鳥籠で飼うのが間違いだ。 339 00:40:56,807 --> 00:40:59,676 自在に空を飛んでこそ鳥だ。 340 00:40:59,676 --> 00:41:33,143 ♬~ 341 00:41:33,143 --> 00:41:35,078 (錫杖の音) 342 00:41:35,078 --> 00:41:39,916 (祈とう) 343 00:41:39,916 --> 00:41:46,323 大和から 京の都を揺るがす一団が 向かっていた。 344 00:41:46,323 --> 00:41:50,193 (祈とう) 345 00:41:50,193 --> 00:41:56,893 (錫杖の音) 346 00:42:07,611 --> 00:42:13,911 左大臣 藤原道長である。 何事だ。 347 00:42:15,685 --> 00:42:20,685 (定澄)興福寺別当の定澄にございます。 348 00:42:23,827 --> 00:42:26,363 (慶理)興福寺の僧ら 3, 000は➡ 349 00:42:26,363 --> 00:42:29,199 既に木幡山に集まっております。 350 00:42:29,199 --> 00:42:31,635 (錫杖の音) 351 00:42:31,635 --> 00:42:34,538 (祈とう) 352 00:42:34,538 --> 00:42:39,376 (定澄)我らの訴えを 直ちに 陣定におかけくださいませ。 353 00:42:39,376 --> 00:42:49,176 それがならねば この屋敷を取り囲み 焼き払い奉ります。 354 00:42:53,657 --> 00:42:56,657 やってみよ。 355 00:43:01,531 --> 00:43:05,268 大極殿前の朝堂院に 興福寺の僧たちが 押し寄せております! 356 00:43:05,268 --> 00:43:07,504 中宮様を 奥の間に お隠しまいらせよ。 357 00:43:07,504 --> 00:43:10,173 帝の御身にまでは 危害は及ぼしますまい。 358 00:43:10,173 --> 00:43:12,108 お供いたしたく存じます。 359 00:43:12,108 --> 00:43:15,812 えっ。 今はやりの物語を書いている女房か? 360 00:43:15,812 --> 00:43:19,683 我が生涯 最初で最後の 御嶽詣である。 361 00:43:19,683 --> 00:43:23,186 光る君が 何をしたいのかも分からぬ。 362 00:43:23,186 --> 00:43:26,686 殿御は 皆 かわいいものでございます。 363 00:43:33,597 --> 00:43:38,335 紫式部が記した「源氏物語」。 364 00:43:38,335 --> 00:43:44,207 その原本は 今は残されていません。 365 00:43:44,207 --> 00:43:47,344 現存する最古の写本は➡ 366 00:43:47,344 --> 00:43:54,217 鎌倉時代に藤原定家が残したものであると いわれています。 367 00:43:54,217 --> 00:43:59,356 失われつつある 公家社会の文化や華やかさを➡ 368 00:43:59,356 --> 00:44:05,028 後世に残そうと写本作りに尽力した定家。 369 00:44:05,028 --> 00:44:12,702 定家の写本は 以後 「源氏物語」の 主流となり 広がっていきました。 370 00:44:12,702 --> 00:44:21,378 藤原定家は 小倉百人一首を 編さんした人物としても知られています。 371 00:44:21,378 --> 00:44:25,715 小倉山の麓で選定を行ったことに ちなみ➡ 372 00:44:25,715 --> 00:44:31,388 その周辺には 100基の歌碑が築かれました。 373 00:44:31,388 --> 00:44:34,991 飛鳥時代から鎌倉時代にかけて➡ 374 00:44:34,991 --> 00:44:40,864 さまざまな詠み手から 1人1首ずつ選び抜いた百人一首。 375 00:44:40,864 --> 00:44:47,570 その中には 紫式部の歌も選ばれています。 376 00:44:47,570 --> 00:44:53,677 藤原定家は 「源氏物語」や百人一首を通して➡ 377 00:44:53,677 --> 00:44:58,677 紫式部の思いを 今の世に伝えたのです。