1 00:00:03,604 --> 00:00:09,943 (安倍晴明)決行は 6月23日。 2 00:00:09,943 --> 00:00:14,281 (藤原兼家)すぐではないか! 支度が間に合わぬ。 3 00:00:14,281 --> 00:00:19,620 23日は 歳星が二十八宿の➡ 4 00:00:19,620 --> 00:00:23,290 氐宿を犯す日。 5 00:00:23,290 --> 00:00:26,193 12年に一度の犯か。 6 00:00:26,193 --> 00:00:32,299 この日は 全ての者にとって よき日にございますが➡ 7 00:00:32,299 --> 00:00:39,172 丑の刻から寅の刻までが 右大臣様にとって➡ 8 00:00:39,172 --> 00:00:42,643 最も 運気隆成の時。 9 00:00:42,643 --> 00:00:47,814 その日を逃せば もはや 事は ならぬのか。 10 00:00:47,814 --> 00:00:49,750 (晴明)さようにございまする。 11 00:00:49,750 --> 00:00:55,322 この日を逃せば はかりごとは成し遂げられず➡ 12 00:00:55,322 --> 00:00:59,192 右大臣様には 災いが降りかかりましょう。 13 00:00:59,192 --> 00:01:03,597 そして 帝は この後も ずっと➡ 14 00:01:03,597 --> 00:01:06,400 御位に とどまることとなりましょう。 15 00:01:06,400 --> 00:01:13,173 分かった。 23日 丑の刻だな。 16 00:01:13,173 --> 00:01:19,279 兼家は その夜 一同を集め 帝を内裏から連れ出し➡ 17 00:01:19,279 --> 00:01:23,150 出家させるたくらみの全貌を明かした。 18 00:01:23,150 --> 00:01:30,624 道兼 23日は 丑の刻までに 帝を内裏から連れ出す。➡ 19 00:01:30,624 --> 00:01:36,296 清涼殿より 玄輝門を抜け➡ 20 00:01:36,296 --> 00:01:40,167 内裏の朔平門に向かえ。 (藤原道兼)はっ。 21 00:01:40,167 --> 00:01:47,641 万が一 人目についた時のために 帝には 女の袿を羽織っていただけ。 22 00:01:47,641 --> 00:01:51,511 そなたが手なずけた女官に支度させよ。 23 00:01:51,511 --> 00:01:55,315 承知いたしました。 24 00:01:55,315 --> 00:02:03,123 道隆 朔平門の外に 牛車を用意しておけ。 女車だ。 25 00:02:03,123 --> 00:02:05,926 (藤原道隆)はっ。 26 00:02:05,926 --> 00:02:10,263 丑の刻までに 朔平門を出よ。 27 00:02:10,263 --> 00:02:17,137 時申の時を告げる声を合図に 内裏の全ての門を閉じる。 28 00:02:17,137 --> 00:02:23,276 道兼は 帝と共に 土御門大路を東に向かい➡ 29 00:02:23,276 --> 00:02:26,947 元慶寺を目指せ。 はっ。 30 00:02:26,947 --> 00:02:35,288 (兼家)時を同じくして 剣璽を典侍が 夜御殿から運び出すゆえ➡ 31 00:02:35,288 --> 00:02:41,962 道隆と道綱で 梅壺の東宮のもとに運べ。 32 00:02:41,962 --> 00:02:44,264 ははっ。 (藤原道綱)はっ。 33 00:02:45,832 --> 00:02:54,307 道綱 命懸けで務めを果たせよ。 ははっ! 34 00:02:54,307 --> 00:03:00,580 万が一 剣璽を移しまいらせるのを 見た者があれば➡ 35 00:03:00,580 --> 00:03:04,251 お前が 後で始末せよ。 36 00:03:04,251 --> 00:03:08,922 え… あっ え? 37 00:03:08,922 --> 00:03:13,260 (兼家)道長。 (藤原道長)はっ。 38 00:03:13,260 --> 00:03:17,931 梅壺に剣璽が運び込まれるのを 見届けたなら➡ 39 00:03:17,931 --> 00:03:24,805 関白の屋敷に 帝ご譲位の旨を伝えに走れ。 はっ。 40 00:03:24,805 --> 00:03:30,277 我らに許された時は 丑の刻から寅の刻までだ。 41 00:03:30,277 --> 00:03:39,286 何があろうとも 寅の刻までに 帝に御髪を下ろしていただかねばならぬ。 42 00:03:39,286 --> 00:03:41,221 頼んだぞ 道兼。 43 00:03:41,221 --> 00:03:46,159 必ず 成し遂げます。 44 00:03:46,159 --> 00:03:53,133 このことが頓挫すれば 我が一族は滅びる。 45 00:03:53,133 --> 00:03:59,306 兄弟 力を合わせて 必ず成し遂げよ。 46 00:03:59,306 --> 00:04:01,241 (4人)はっ。 47 00:04:01,241 --> 00:04:06,580 僅か2時間で帝を出家させ 神器である剣璽を手に入れる。 48 00:04:06,580 --> 00:04:10,250 途方もない陰謀であった。 49 00:04:10,250 --> 00:06:04,431 ♬~ 50 00:06:04,431 --> 00:06:07,434 ♬~ 51 00:06:07,434 --> 00:06:54,447 ♬~ 52 00:06:56,283 --> 00:07:03,890 (花山天皇) 忯子の霊を鎮めるために 出家しようと思う。 53 00:07:03,890 --> 00:07:05,925 (藤原義懐)よくお考えくださいませ。 54 00:07:05,925 --> 00:07:08,061 お上は 即位されて 僅か2年。 55 00:07:08,061 --> 00:07:09,996 僅か2年でございますよ! 56 00:07:09,996 --> 00:07:11,932 全ては これからではございませぬか! 57 00:07:11,932 --> 00:07:14,234 それは そうじゃが…。 58 00:07:14,234 --> 00:07:19,572 まず何より  忯子を救ってやらねばならぬ。 59 00:07:19,572 --> 00:07:21,608 それも 朕の務めなのだ。 60 00:07:21,608 --> 00:07:23,910 お心をお改めくださいませ! 61 00:07:23,910 --> 00:07:25,945 女御様も 大勢おいでですし➡ 62 00:07:25,945 --> 00:07:29,783 新しい女子も いくらでも ご用意いたします。 63 00:07:29,783 --> 00:07:32,085 皇子を もうけられませ。➡ 64 00:07:32,085 --> 00:07:34,020 そうすれば 気持ちも明るくなられ➡ 65 00:07:34,020 --> 00:07:36,256 政へ向かうご気力も湧き出ましょう。 66 00:07:36,256 --> 00:07:38,191 やめてくれ! 67 00:07:38,191 --> 00:07:42,595 お前が そのようなことを言うと また 忯子の霊が 嘆くではないか! 68 00:07:42,595 --> 00:07:46,466 大体 お前は 女子 女子と そればかり。 69 00:07:46,466 --> 00:07:49,469 朕は 義懐とは違うのじゃ。 70 00:07:49,469 --> 00:07:52,172 下がれ! 71 00:07:58,945 --> 00:08:03,783 あ~あ… あいつらにも嫌われてしまった。 72 00:08:03,783 --> 00:08:11,224 恐れながら お上がご出家なさいますなら 私も ご一緒いたします。 73 00:08:11,224 --> 00:08:16,096 お前だけだな 朕の気持ちが分かるのは。 74 00:08:16,096 --> 00:08:19,566 どこまでも お供いたしまする。 75 00:08:19,566 --> 00:08:24,270 まことか…。 お上…。 76 00:08:29,909 --> 00:08:34,581 忯子は 喜んでくれるかのう。 それは もう。 77 00:08:34,581 --> 00:08:41,254 お上がご出家なされば 安心して浄土へと旅立たれましょう。 78 00:08:41,254 --> 00:08:46,126 忯子様のことを考えますと 23日が よろしいかと。 79 00:08:46,126 --> 00:08:49,396 23日… すぐではないか。 80 00:08:49,396 --> 00:08:53,600 23日は 歳星が二十八宿の氐宿を犯す日➡ 81 00:08:53,600 --> 00:08:59,272 お上にとっても 亡き 忯子様にとっても 最良の日にございます。 82 00:08:59,272 --> 00:09:07,881 23日か…  忯子のためにも 早い方がよいわな。 83 00:09:07,881 --> 00:09:13,186 はい。 お供いたしまする。 84 00:09:29,169 --> 00:09:32,172 (兼家)よい月じゃのう…。 85 00:09:36,576 --> 00:09:43,450 関白に知らせに走るだけでは 物足りぬか? 86 00:09:43,450 --> 00:09:45,585 そのようなことはございません。 87 00:09:45,585 --> 00:09:54,594 事をしくじった折には お前は 何も知らなかったことにして 家を守れ。 88 00:09:54,594 --> 00:10:00,266 は? 私も内裏へ行くのですよね その夜は。 89 00:10:00,266 --> 00:10:08,141 父に呼ばれたが 一切存ぜぬ 我が身とは関わりなきことと言い張れ。 90 00:10:08,141 --> 00:10:15,281 しくじった折は 父のはかりごとを 関白に知らせに走るのだ。 91 00:10:15,281 --> 00:10:22,956 さすれば お前だけは生き残れる。 92 00:10:22,956 --> 00:10:25,658 そういう意味じゃ。 93 00:10:27,293 --> 00:10:31,164 あの…。 何だ? 94 00:10:31,164 --> 00:10:37,937 そのお役目は 道隆兄上なのでは…。 95 00:10:37,937 --> 00:10:44,711 このはかりごとがなれば 手柄は 道隆のものとなる。 96 00:10:44,711 --> 00:10:48,214 道隆は そちら側だ。 97 00:11:08,601 --> 00:11:36,596 〽 98 00:11:51,177 --> 00:11:55,648 (まひろ) 父上は 今日もお戻りではないのね。 99 00:11:55,648 --> 00:12:01,354 (いと)もう 高倉の女のもとから 帰らぬおつもりかもしれません。 100 00:12:02,922 --> 00:12:10,230 今宵の姫様の琵琶の音が ひときわ悲しく聞こえて… つい…。 101 00:12:11,931 --> 00:12:16,236 何か 悲しいことが おありになったのですか? 102 00:12:17,804 --> 00:12:21,941 生きてることは 悲しいことばかりよ。 103 00:12:21,941 --> 00:12:28,815 殿様が お戻りになられず 若様も どこぞの姫に婿入りされたら➡ 104 00:12:28,815 --> 00:12:32,952 私は 用なしとなり 生きる場所も失います。 105 00:12:32,952 --> 00:12:39,826 そうなったら 姫様 この家に 私を ずっと置いてくださいましね。 106 00:12:39,826 --> 00:12:42,295 もちろんよ。 107 00:12:42,295 --> 00:12:46,165 でも 惟規が婿入りする時➡ 108 00:12:46,165 --> 00:12:49,168 いとも 一緒についていったら いいんじゃない? 109 00:12:50,970 --> 00:12:53,306 まことでございますか!? 110 00:12:53,306 --> 00:12:57,644 生涯 若様と一緒にいられますなら 殿様は諦めます。 111 00:12:57,644 --> 00:12:59,579 高倉にくれてやります。 112 00:12:59,579 --> 00:13:02,882 くれてやらなくても…。 113 00:13:05,918 --> 00:13:11,624 父上は いとのことも大切に思っているわよ。 114 00:13:14,927 --> 00:13:19,098 高倉の人 どんな人なんだろう。 115 00:13:19,098 --> 00:13:25,605 そんなに父上の心を とらえる人って…。 116 00:13:31,277 --> 00:13:37,150 (乙丸)貧しい家ばかりでございますね。 うん…。 117 00:13:37,150 --> 00:14:12,852 ♬~ 118 00:14:20,626 --> 00:14:22,628 はっ…。 119 00:14:22,628 --> 00:14:27,133 (藤原為時)長く家を空けてすまない。 120 00:14:29,936 --> 00:14:36,275 身寄りもなく 一人で食事もとれぬゆえ 見捨てられぬ。 121 00:14:36,275 --> 00:14:39,178 間もなく命も尽きるであろう…。 122 00:14:39,178 --> 00:14:42,148 一人で死なせるのは忍びない。 123 00:14:42,148 --> 00:14:44,784 見送ってやりたいのだ。 124 00:14:44,784 --> 00:14:48,955 言ってくださればよかったのに。 すまない。 125 00:14:48,955 --> 00:14:51,290 そうではありません。 126 00:14:51,290 --> 00:14:59,165 父上が 内裏に上がっておられる間 私が看病してもいいと思ったのです。 127 00:14:59,165 --> 00:15:05,238 父上のお姿を見て 胸が熱くなりました。 128 00:15:05,238 --> 00:15:08,941 父上は ご立派でございます。 129 00:15:10,910 --> 00:15:14,914 まひろに褒められるとはな…。 130 00:15:16,582 --> 00:15:21,454 気持ちはうれしいが それは できぬ。 131 00:15:21,454 --> 00:15:25,758 わしの娘に世話になるのは 気詰まりであろう。 132 00:15:25,758 --> 00:15:30,263 ならば 時々 乙丸に 父上のお着替えを届けさせます。 133 00:15:30,263 --> 00:15:35,134 その時 私にできることがあれば おっしゃってください。 134 00:15:35,134 --> 00:15:37,937 ああ。 135 00:15:37,937 --> 00:15:44,944 では 戻るゆえ。 はい お大事に。 136 00:16:04,096 --> 00:16:08,901 (百舌彦) 藤原道長様の従者 百舌彦でございます。➡ 137 00:16:08,901 --> 00:16:11,204 こちらを。 138 00:16:16,242 --> 00:16:18,945 いかがでございました? 今…。 139 00:16:24,584 --> 00:16:29,288 「古今和歌集」 何で…。 140 00:16:30,923 --> 00:16:35,761 「そなたを恋しいと思う気持ちを 隠そうとしたが➡ 141 00:16:35,761 --> 00:16:38,564 俺にはできない」。 142 00:16:42,268 --> 00:16:47,607 (カラスの鳴き声) 143 00:16:47,607 --> 00:16:53,479  心の声 あの人の心は まだ そこに…。 144 00:16:53,479 --> 00:17:23,242 ♬~ 145 00:17:23,242 --> 00:17:26,245 陶淵明の詩か…。 146 00:17:27,914 --> 00:17:33,786 「これまで 心を体のしもべとしていたのだから➡ 147 00:17:33,786 --> 00:17:39,492 どうして 一人 くよくよ嘆き悲しむことがあろうか」。 148 00:17:42,261 --> 00:17:46,098 「そなたが恋しくて死にそうな俺の命。➡ 149 00:17:46,098 --> 00:17:52,605 そなたが少しでも会おうと言ってくれたら 生き返るかもしれない」。 150 00:18:01,213 --> 00:18:03,883 ん? 151 00:18:03,883 --> 00:18:09,755 「過ぎ去ったことは 悔やんでも しかたがないけれど➡ 152 00:18:09,755 --> 00:18:15,061 これから先のことは いかようにもなる」。 153 00:18:19,432 --> 00:18:23,903 「命とは はかない露のようなものだ。➡ 154 00:18:23,903 --> 00:18:30,209 そなたに会うことができるなら 命なんて少しも惜しくはない」。 155 00:18:34,547 --> 00:18:41,253 「道に迷っていたとしても それほど遠くまで来てはいない。➡ 156 00:18:41,253 --> 00:18:48,561 今が正しくて 昨日までの自分が 間違っていたと 気付いたのだから」。 157 00:18:54,266 --> 00:19:00,539 女子に歌を送ったら 漢詩が返ってきた。 158 00:19:00,539 --> 00:19:05,878 (藤原行成)ああ それは 随分と 珍しきことでございますね。 159 00:19:05,878 --> 00:19:09,548 そうだよな。 ええ。 160 00:19:09,548 --> 00:19:15,221 どういう歌をお送りになり どういう漢詩が戻ってきたのですか? 161 00:19:15,221 --> 00:19:20,092 それは… 言えぬ。 162 00:19:20,092 --> 00:19:23,095 それが分からないと…。 163 00:19:23,095 --> 00:19:28,367 でも 道長様には 好きな女子がおいでなのですね。 164 00:19:28,367 --> 00:19:32,872 それも… 言えぬ。 165 00:19:35,574 --> 00:19:39,078 そもそも 和歌は 人の心を➡ 166 00:19:39,078 --> 00:19:42,581 見るもの聞くものに託して 言葉で表しています。 167 00:19:42,581 --> 00:19:48,254 翻って漢詩は 志を言葉に表しております。 168 00:19:48,254 --> 00:19:51,157 つまり 漢詩を送るということは➡ 169 00:19:51,157 --> 00:19:56,929 送り手は 何らかの志を 詩に託しているのではないでしょうか。 170 00:19:56,929 --> 00:19:59,265 ふ~ん…。 171 00:19:59,265 --> 00:20:03,969 的外れなことを申しましたでしょうか? いや。 172 00:20:09,975 --> 00:20:13,179 さすが行成だ。 173 00:20:15,281 --> 00:20:18,184 少し分かった。 174 00:20:18,184 --> 00:20:22,488 お役に立てたなら うれしゅうございます。 175 00:20:30,296 --> 00:20:41,307 ♬~ 176 00:20:41,307 --> 00:20:45,177 先ほど ここからお帰りになる姫を見ました。 177 00:20:45,177 --> 00:20:48,981 姉上のお客人でございますか? 178 00:20:48,981 --> 00:20:53,652 (藤原詮子)亡き源 高明殿の姫 明子女王様よ。 179 00:20:53,652 --> 00:20:56,455 え? 言ったでしょ➡ 180 00:20:56,455 --> 00:21:00,326 万が一 父上が失脚されても 懐仁が困らぬように➡ 181 00:21:00,326 --> 00:21:03,929 もう一つの後ろ盾を作っておきたいの。 182 00:21:03,929 --> 00:21:10,803 それが 源の方々… なのでございますか。 そう。 183 00:21:10,803 --> 00:21:15,274 左大臣 源 雅信殿は 宇多の帝の御孫➡ 184 00:21:15,274 --> 00:21:19,145 亡き源 高明殿は 醍醐の帝の皇子。 185 00:21:19,145 --> 00:21:23,949 2つの源氏をつかんでおけば 安心でしょ。 186 00:21:23,949 --> 00:21:27,620 それで 明子女王様と…。 187 00:21:27,620 --> 00:21:32,792 道長が 左大臣 源 雅信殿の一の姫 倫子様と➡ 188 00:21:32,792 --> 00:21:38,964 源 高明殿の一の姫 明子様の 両方を妻にすれば 言うことないわ。 189 00:21:38,964 --> 00:21:42,301 なんということを! 考えておきなさい。 190 00:21:42,301 --> 00:21:46,172 ところで 道長の用事は何なの? 191 00:21:46,172 --> 00:21:49,809 え… あの 妻については…。 192 00:21:49,809 --> 00:21:51,844 そのことは急がぬ。 193 00:21:51,844 --> 00:21:54,847 その方らは 下がっておれ。 194 00:22:10,930 --> 00:22:14,800 人払いせねばならぬ話でしょう。 はい。 195 00:22:14,800 --> 00:22:20,940 23日は 内裏からお出にならぬようにと 父上からの伝言にございます。 196 00:22:20,940 --> 00:22:22,875 何があるの? 197 00:22:22,875 --> 00:22:24,810 その日になれば分かります。 198 00:22:24,810 --> 00:22:29,281 さっきから言ってるでしょ 私は 父上のやり方が嫌いだって。 199 00:22:29,281 --> 00:22:37,957 されど 今回のことは 姉上と東宮様に 悪い話では ございませぬ。 200 00:22:37,957 --> 00:22:44,296 へえ~ お前が そう言うなら 信じてもいいわ。 201 00:22:44,296 --> 00:22:46,232 ありがとうございます。 202 00:22:46,232 --> 00:22:50,102 でも 寝ずに心配する子供らさえ偽って➡ 203 00:22:50,102 --> 00:22:53,639 気を失ったふりをし続けるって 恐ろしすぎない? 204 00:22:53,639 --> 00:22:57,309 父上のやり方を疑わない道隆兄上も➡ 205 00:22:57,309 --> 00:23:02,581 父上の手先になって うれしそうな道兼兄上も最悪ね。 206 00:23:02,581 --> 00:23:06,252 懐仁を託せるのは お前だけよ。 分かっているわね。 207 00:23:06,252 --> 00:23:08,187 おやめくださいませ。 208 00:23:08,187 --> 00:23:13,592 まあよい。 いずれ分かるであろう 己の宿命が。 209 00:23:13,592 --> 00:23:18,264 なんて 父上のような言い方をしてしまったわ。 210 00:23:18,264 --> 00:23:20,599 フフフ… いけない いけない。 211 00:23:20,599 --> 00:23:22,601 フフフ…。 212 00:23:26,272 --> 00:23:30,976 己が宿命か…。 213 00:23:58,971 --> 00:24:05,244 「我も また 君と相まみえぬと欲す」。 214 00:24:05,244 --> 00:24:47,820 ♬~ 215 00:24:47,820 --> 00:24:49,822 まひろ。 216 00:24:51,623 --> 00:24:54,526 会いたかった。 217 00:24:54,526 --> 00:25:10,843 ♬~ 218 00:25:19,585 --> 00:25:22,888 一緒に都を出よう。 219 00:25:24,456 --> 00:25:28,594 海の見える遠くの国へ 行こう。 220 00:25:28,594 --> 00:25:33,766 俺たちが寄り添って生きるには それしかない。どうしたの? 221 00:25:33,766 --> 00:25:39,571 もっと早く決心するべきであった。 許せ。 そんな…。 222 00:25:39,571 --> 00:25:42,274 藤原を捨てる。 223 00:25:42,274 --> 00:25:46,612 お前の母の敵である男の 弟であることをやめる。 224 00:25:46,612 --> 00:25:52,785 右大臣の息子であることも 東宮様の叔父であることもやめる。 225 00:25:52,785 --> 00:25:55,587 だから 一緒に来てくれ。 226 00:25:57,623 --> 00:26:01,226 道長様…。 227 00:26:01,226 --> 00:26:04,129 うれしゅうございます。 228 00:26:04,129 --> 00:26:07,132 まひろ。 229 00:26:09,101 --> 00:26:17,075 うれしいけど… どうしていいか分からない。 230 00:26:17,075 --> 00:26:20,112 分からない? 231 00:26:20,112 --> 00:26:24,116 父や弟に別れを告げたいのか? 232 00:26:26,785 --> 00:26:30,255 そのために家に帰れば➡ 233 00:26:30,255 --> 00:26:35,127 まひろは あれこれ考え過ぎて きっと 俺とは 一緒に来ない。 234 00:26:35,127 --> 00:26:38,430 だから このまま行こう。 235 00:26:40,265 --> 00:26:45,604 お前も同じ思いであろう? 心を決めてくれ。 236 00:26:45,604 --> 00:26:51,610 まひろも 父と弟を捨ててくれ。 237 00:26:54,947 --> 00:27:02,554 大臣や摂政や関白になる道を 本当に捨てるの? 238 00:27:02,554 --> 00:27:05,224 捨てる。 239 00:27:05,224 --> 00:27:09,561 まひろと生きてゆくこと それ以外に望みはない。 240 00:27:09,561 --> 00:27:11,897 でも あなたが偉くならなければ➡ 241 00:27:11,897 --> 00:27:16,902 直秀のような無残な死に方をする人は なくならないわ。 242 00:27:19,238 --> 00:27:27,112 鳥辺野で 泥まみれで泣いている姿を見て➡ 243 00:27:27,112 --> 00:27:32,584 以前にも増して 道長様のこと好きになった。 244 00:27:32,584 --> 00:27:37,923 前より ずっとずっと ずっとずっと 好きになった。 245 00:27:37,923 --> 00:27:42,594 だから 帰り道 私も➡ 246 00:27:42,594 --> 00:27:46,265 このまま遠くに行こうと 言いそうになった。 247 00:27:46,265 --> 00:27:48,600 でも言えなかった。 248 00:27:48,600 --> 00:27:54,940 なぜ言えなかったのか あの時は よく分からなかった。 249 00:27:54,940 --> 00:27:58,243 でも 後で気付いたわ。 250 00:28:00,212 --> 00:28:06,084 2人で 都を出ても 世の中は変わらないから。 251 00:28:06,084 --> 00:28:09,555 道長様は 偉い人になって➡ 252 00:28:09,555 --> 00:28:14,226 直秀のような理不尽な殺され方をする人が 出ないような➡ 253 00:28:14,226 --> 00:28:17,563 よりよき政をする使命があるのよ。 254 00:28:17,563 --> 00:28:22,434 それ 道長様も 本当は どこかで気付いてるでしょう? 255 00:28:22,434 --> 00:28:24,903 俺は まひろに会うために 生まれてきたんだ。 256 00:28:24,903 --> 00:28:26,838 それが分かったから 今 ここにいるんだ! 257 00:28:26,838 --> 00:28:32,244 この国を変えるために 道長様は 高貴な家に生まれてきた。 258 00:28:32,244 --> 00:28:37,916 私と ひっそり幸せになるためじゃないわ。 259 00:28:37,916 --> 00:28:42,788 俺の願いを断るのか。 260 00:28:42,788 --> 00:28:47,259 道長様が好きです。 261 00:28:47,259 --> 00:28:51,597 とても好きです。 262 00:28:51,597 --> 00:28:57,469 でも あなたの使命は 違う場所にあると思います。 263 00:28:57,469 --> 00:29:01,206 偽りを言うな。 264 00:29:01,206 --> 00:29:06,878 まひろは 子供の頃から 作り話が得意であった。 265 00:29:06,878 --> 00:29:11,350 今言ったことも偽りであろう。 266 00:29:11,350 --> 00:29:16,188 幼い頃から思い続けた あなたと➡ 267 00:29:16,188 --> 00:29:21,560 遠くの国で ひっそり生きていくの 私は幸せかもしれない。 268 00:29:21,560 --> 00:29:25,430 ならば…。 けれど…➡ 269 00:29:25,430 --> 00:29:31,903 そんな道長様 全然思い浮かばない。 270 00:29:31,903 --> 00:29:37,576 ひもじい思いもしたこともない 高貴な育ちのあなたが➡ 271 00:29:37,576 --> 00:29:46,585 生きてくために魚を取ったり 木を切ったり 畑を耕している姿➡ 272 00:29:46,585 --> 00:29:48,920 全然思い浮かばない。 273 00:29:48,920 --> 00:29:52,791 まひろと一緒ならやっていける。 274 00:29:52,791 --> 00:29:56,595 己の使命を果たしてください。 275 00:29:56,595 --> 00:29:58,930 直秀も それを望んでいるわ。 276 00:29:58,930 --> 00:30:01,600 偽りを申すな。 277 00:30:01,600 --> 00:30:05,270 一緒に遠くの国には行かない。 278 00:30:05,270 --> 00:30:12,611 でも私は 都で あなたのことを見つめ続けます。 279 00:30:12,611 --> 00:30:18,116 片ときも目を離さず 誰よりも いとおしい道長様が➡ 280 00:30:18,116 --> 00:30:25,323 政によって この国を変えていく様を 死ぬまで見つめ続けます。 281 00:30:26,825 --> 00:30:29,828 一緒に行こう。 282 00:30:29,828 --> 00:31:16,608 ♬~ 283 00:31:16,608 --> 00:31:19,911 振ったのは お前だぞ。 284 00:31:23,281 --> 00:31:29,621 人は 幸せでも泣くし➡ 285 00:31:29,621 --> 00:31:33,325 悲しくても泣くのよ。 286 00:31:44,636 --> 00:31:47,339 これは どっちなんだ? 287 00:31:49,508 --> 00:31:52,210 どっちも。 288 00:31:57,649 --> 00:32:01,353 幸せで悲しい。 289 00:32:05,257 --> 00:32:08,260 送っていこう。 290 00:32:15,600 --> 00:32:18,303 また会おう。 291 00:32:25,944 --> 00:32:29,614 これで会えなくなるのは嫌だ。 292 00:32:29,614 --> 00:32:41,626 ♬~ 293 00:32:48,967 --> 00:32:51,970 お呼びでございましょうか。 294 00:32:53,638 --> 00:32:58,143 今宵のこと 義懐らに言うておいた方が よいであろうか? 295 00:32:58,143 --> 00:33:02,113 それは… おやめになった方が よろしいかと存じまする。 296 00:33:02,113 --> 00:33:04,583 そうかな…。 297 00:33:04,583 --> 00:33:08,753 もしお告げになれば お上のご決心は 妨げられましょう。 298 00:33:08,753 --> 00:33:14,559 それは すなわち  忯子様の浄土への道が 阻まれるということでございます。 299 00:33:14,559 --> 00:33:22,267 ああ そうだな… 言うのは よそう。 300 00:33:24,236 --> 00:33:56,968 ♬~ 301 00:33:56,968 --> 00:33:59,304 見えぬ。 302 00:33:59,304 --> 00:34:04,309 私は 夜目が利きますので 私に おつかまりくださいませ。 303 00:34:16,254 --> 00:34:20,592 あっ  忯子の文を持ってまいるのを忘れた。 304 00:34:20,592 --> 00:34:23,261 取りに戻る。 お文は➡ 305 00:34:23,261 --> 00:34:28,133 全て元慶寺にお移しいたしました。 そうなのか? 306 00:34:28,133 --> 00:34:30,602 お前が 文箱を開けたのか? 307 00:34:30,602 --> 00:34:35,473 いや… 急ぎませぬと…。➡ 308 00:34:35,473 --> 00:34:37,943 さあ。 309 00:34:37,943 --> 00:34:58,263 ♬~ 310 00:34:58,263 --> 00:35:00,899 外は 明るいのう。 311 00:35:00,899 --> 00:35:02,834 月明かりでございます。 312 00:35:02,834 --> 00:35:05,070 これでは 誰かに見られそうじゃ。 313 00:35:05,070 --> 00:35:07,906 別の日にいたそうか。 314 00:35:07,906 --> 00:35:25,256 ♬~ 315 00:35:25,256 --> 00:35:29,127 お許しくださいませ。 316 00:35:29,127 --> 00:35:31,396 さあ。 317 00:35:31,396 --> 00:35:53,184 ♬~ 318 00:36:00,892 --> 00:36:04,896 ⚟丑の一刻でございます。 319 00:36:16,441 --> 00:36:21,746 これより 全ての門を閉める。 320 00:36:39,597 --> 00:36:42,934 揺れるのう。 321 00:36:42,934 --> 00:36:48,807 夜明けまでに てい髪なさらねば 忯子様は救われませぬ。 322 00:36:48,807 --> 00:37:12,564 ♬~ 323 00:37:12,564 --> 00:37:15,233 おおっ! 324 00:37:15,233 --> 00:37:18,136 相すみませぬ。 声を出すな。 325 00:37:18,136 --> 00:37:33,585 ♬~ 326 00:37:33,585 --> 00:37:36,254 行ってまいります。 327 00:37:36,254 --> 00:37:50,802 ♬~ 328 00:37:50,802 --> 00:37:52,804 (藤原頼忠)何事じゃ。 329 00:37:52,804 --> 00:37:55,940 ただいま 帝がご退位され 剣璽は 梅壺に移り➡ 330 00:37:55,940 --> 00:38:01,212 東宮が 践祚あそばされました。 331 00:38:01,212 --> 00:38:03,148 なんと…。 332 00:38:03,148 --> 00:38:07,552 関白様も 急ぎ内裏へ。 333 00:38:07,552 --> 00:38:09,554 ああ…。 334 00:38:17,562 --> 00:38:22,267 (須麻流)ただいま 牛車が屋敷の前を 通り過ぎてゆきました。 335 00:38:29,741 --> 00:38:38,449 ⚟(牛車の走行音) 336 00:38:38,449 --> 00:38:52,597 (読経) 337 00:38:52,597 --> 00:39:00,405 おめでとうございます。 ごてい髪 相成りましてございます。 338 00:39:00,405 --> 00:39:05,176 道兼 次は お前の番だ。 339 00:39:05,176 --> 00:39:10,548 私は これにて失礼いたします。 340 00:39:10,548 --> 00:39:12,584 お前も 出家するのであろう。 341 00:39:12,584 --> 00:39:16,221 御坊 あとはお頼み申す。 342 00:39:16,221 --> 00:39:19,524 おい… 待て 道兼! 343 00:39:22,894 --> 00:39:28,900 おそばに お仕えできて 楽しゅうございました。 344 00:39:31,236 --> 00:39:34,572 お前は 朕を たばかったのか! 345 00:39:34,572 --> 00:39:37,242 おい… 待て! 道兼! 346 00:39:37,242 --> 00:39:40,745 おい 裏切り者! 347 00:39:40,745 --> 00:39:43,581 道兼! 戻ってこい! 道兼! 348 00:39:43,581 --> 00:39:55,193 (笑い声) 349 00:39:55,193 --> 00:39:58,930 殿様! あ? 何だ お前 こんなところまで。 350 00:39:58,930 --> 00:40:01,599 ただいま 内裏より知らせが参り➡ 351 00:40:01,599 --> 00:40:07,605 帝がご退位され 元慶寺で ご出家されたとのことでございます。 352 00:40:11,943 --> 00:40:16,614 寅の一刻でございます。 353 00:40:16,614 --> 00:40:41,906 ハハハハハハハハ! 354 00:40:51,316 --> 00:40:56,621 おはようございます。 おはようございます。 355 00:40:58,189 --> 00:41:00,591 おはようございます。 おはようございます。 356 00:41:00,591 --> 00:41:03,294 おはようございます。 357 00:41:10,935 --> 00:41:19,944 昨夜 帝が にわかにご退位 そして 東宮が 践祚あそばされた。 358 00:41:22,280 --> 00:41:27,151 新しき帝の摂政は この兼家である。 359 00:41:27,151 --> 00:41:32,623 更に ここに集いたる さきの帝の蔵人は全て➡ 360 00:41:32,623 --> 00:41:36,494 習いにより その任を解く。 361 00:41:36,494 --> 00:41:44,235 そして 新しき蔵人頭は 藤原道兼である。➡ 362 00:41:44,235 --> 00:41:48,940 皆々 よしなに頼むぞ。 363 00:41:54,879 --> 00:42:00,585 蔵人頭 藤原道兼である。 364 00:42:00,585 --> 00:42:05,256 ほか 新しき蔵人の名は 以下のごとし。 365 00:42:05,256 --> 00:42:07,925 (藤原実資)このようなことは おかしい! 366 00:42:07,925 --> 00:42:13,731 道兼殿 昨夜 一体 何があったか お聞かせいただかねば 筋が通らぬ! 367 00:42:13,731 --> 00:42:15,800 静まりませい! 368 00:42:15,800 --> 00:42:30,181 ♬~ 369 00:42:30,181 --> 00:42:33,951 誰か心当たりは おらぬのか? おりませぬ。 370 00:42:33,951 --> 00:42:35,887 このうたげは 何事でございますか? 371 00:42:35,887 --> 00:42:37,822 父のことで お願いに上がりました。 372 00:42:37,822 --> 00:42:39,824 やいばを隠し持っておりますぞ。 373 00:42:41,626 --> 00:42:43,961 (読経) 374 00:42:43,961 --> 00:42:45,897 (悲鳴) 375 00:42:45,897 --> 00:42:48,299 あなたが お会いできるような方ではありません。 376 00:42:48,299 --> 00:42:50,802 虫けらが 迷い込んだだけじゃ。 377 00:42:50,802 --> 00:42:53,004 妻になってくれ。