1 00:00:02,202 --> 00:00:13,413 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:13,413 --> 00:01:12,706 ♬~ 3 00:01:16,777 --> 00:01:21,648 元子は 懸賞手記 「私の八月十五日」に向かって➡ 4 00:01:21,648 --> 00:01:24,651 執筆を開始していました。 5 00:01:24,651 --> 00:02:13,400 ♬~ 6 00:02:13,400 --> 00:02:15,936 (元子)暑かったのよ…。 7 00:02:15,936 --> 00:02:19,139 とにかく あの日は暑かった…。 8 00:02:25,612 --> 00:02:31,485 そうです。 あの日は 朝から暑い日でした。 9 00:02:31,485 --> 00:02:36,790 当時 日本放送協会の 女子放送員だった元子たちは➡ 10 00:02:36,790 --> 00:02:43,296 終戦の玉音放送を巡って 心臓の凍るような体験をしたのです。 11 00:02:43,296 --> 00:02:45,232 芦田さん! 12 00:02:45,232 --> 00:02:47,300 (芦田)大丈夫 本日も晴天なり。 13 00:02:47,300 --> 00:02:57,511 ♬~ 14 00:03:01,381 --> 00:03:04,284 本日も晴天なり…。 15 00:03:04,284 --> 00:03:09,589 あれは 陛下のお声が 無事 録音できたのサインだったんだわ。 16 00:03:09,589 --> 00:03:11,625 そして…。 17 00:03:11,625 --> 00:03:17,931 (玉音放送)「朕深く世界の大勢と 帝国の現状とに鑑み➡ 18 00:03:17,931 --> 00:03:24,404 非常の措置を以て 時局を収拾せむと欲し➡ 19 00:03:24,404 --> 00:03:29,276 茲に忠良なる爾臣民に告ぐ」。 20 00:03:29,276 --> 00:03:38,785 ♬~ 21 00:03:38,785 --> 00:03:43,423 (立花)これで 全ては終わった。➡ 22 00:03:43,423 --> 00:03:50,197 明日から 何が始まるか分からないが とにかく戦争は終わったんだ。 23 00:03:50,197 --> 00:03:55,435 まあ いろんなことがあったが… いや ありすぎたが➡ 24 00:03:55,435 --> 00:03:59,306 みんな よく 放送員として頑張ってくれた。 25 00:03:59,306 --> 00:04:04,611 放送員室長として みんなに感謝します。 26 00:04:12,252 --> 00:04:15,756 「その前夜から 私たち放送員は➡ 27 00:04:15,756 --> 00:04:19,593 この終戦の玉音放送を 無事終了させるまで➡ 28 00:04:19,593 --> 00:04:22,929 命を懸けたといっていいだろう。➡ 29 00:04:22,929 --> 00:04:28,401 それは 忘れられない 青春の日の鮮烈な思い出である」。 30 00:04:28,401 --> 00:04:30,470 (宗俊)冗談じゃねえよ!➡ 31 00:04:30,470 --> 00:04:35,609 ここまで来て 戦争やめられてたまるかってんだ! 32 00:04:35,609 --> 00:04:37,544 (彦造)ああ そうだとも。➡ 33 00:04:37,544 --> 00:04:40,113 みんな 天皇陛下万歳って 死んでったんだ。➡ 34 00:04:40,113 --> 00:04:43,416 陛下だって そうやって死んでった 兵隊さんたちに➡ 35 00:04:43,416 --> 00:04:50,624 顔向けできねえはずじゃねえですかい。 こりゃ 絶対に謀略です。➡ 36 00:04:50,624 --> 00:04:55,796 せめて ソ連が攻めてくる前にやめてりゃ➡ 37 00:04:55,796 --> 00:05:00,233 正大若旦那だって すぐに帰れたはずだ。➡ 38 00:05:00,233 --> 00:05:04,070 せめて去年中にやめてくれたら あんた➡ 39 00:05:04,070 --> 00:05:06,973 金太郎ねえさんだって どこで 骨になったか分かんねえみたいな➡ 40 00:05:06,973 --> 00:05:10,377 死にざましねえで済んだんですぜ。 41 00:05:10,377 --> 00:05:14,881 この責任 一体 誰が取ってくれんですよ チキショー! 42 00:05:16,917 --> 00:05:19,252 金太郎ねえさん…。 43 00:05:19,252 --> 00:05:26,593 ♬~ 44 00:05:26,593 --> 00:05:30,263 わしゃ嫌だよ。 わしゃ勘弁できねえよ。 45 00:05:30,263 --> 00:05:35,135 あの大空襲の時だって 赤ん坊をしっかり抱いたまんま➡ 46 00:05:35,135 --> 00:05:40,407 黒焦げになった仏を この手で片づけながら➡ 47 00:05:40,407 --> 00:05:44,277 お国のためだ 成仏してくれって 俺は言ったんだ。➡ 48 00:05:44,277 --> 00:05:49,616 それが今 ここで戦争終わったなんて 涼しい顔して言ったなら➡ 49 00:05:49,616 --> 00:05:55,288 わしゃ あの仏さんに 何て言い訳したらいいんだね。➡ 50 00:05:55,288 --> 00:05:59,626 え どうなんですよ! (宗俊)彦さん! 51 00:05:59,626 --> 00:06:05,432 ♬~ 52 00:06:05,432 --> 00:06:08,902 「私の八月十五日」➡ 53 00:06:08,902 --> 00:06:12,739 それを 絶対に書こうと 思い立ったものの➡ 54 00:06:12,739 --> 00:06:17,077 湧き上がってくるさまざまな思いに 元子の筆は乱れて➡ 55 00:06:17,077 --> 00:06:20,880 思うようには進みませんでした。 56 00:06:23,750 --> 00:06:26,086 (大介 道子)ただいま。 お帰り。 57 00:06:26,086 --> 00:06:28,388 (大介)おなかすいてるんだ。 ごはん まだ出来ないの? 58 00:06:28,388 --> 00:06:32,192 出来てるわよ。 すぐ食べれるからね 手ぇ洗ってらっしゃい。 59 00:06:46,273 --> 00:06:48,275 よいしょ。 60 00:07:06,226 --> 00:07:09,529 さあ ペコペコなんでしょう。 頂きましょう。 61 00:07:11,364 --> 00:07:13,300 これだけ? そうよ。 62 00:07:13,300 --> 00:07:15,735 どうして? どうしてって? 63 00:07:15,735 --> 00:07:17,671 いいよ 少しぐらいなら待つから。 64 00:07:17,671 --> 00:07:20,240 待つって何を? おかずだよ。 65 00:07:20,240 --> 00:07:23,243 ああ おかずは ないのよ。 これ すいとんなんですもの。 66 00:07:23,243 --> 00:07:25,378 (道子)すいとん? うん。 67 00:07:25,378 --> 00:07:28,748 戦争中はね みんな こんなふうだったの。 ふ~ん。 68 00:07:28,748 --> 00:07:31,751 さあ 食べてごらんなさい。 おいしいんだから。 69 00:07:34,921 --> 00:07:40,393 大丈夫よ お肉も入ってるし お野菜だって たっぷり入ってるんだから。 70 00:07:40,393 --> 00:07:44,097 でもね 戦争中はね こんなぜいたくな すいとんなんて なかったのよ。 71 00:07:44,097 --> 00:07:47,133 (道子)ふ~ん。 ほら このおだんごだってね➡ 72 00:07:47,133 --> 00:07:51,771 こんな真っ白い粉なんかなくて ふすまとか代用粉とかいってね➡ 73 00:07:51,771 --> 00:07:54,607 黒くて パサパサしてたし おつゆの味なんか➡ 74 00:07:54,607 --> 00:07:58,411 さつまいものつるだったり 雑草だったり したことだってあるんだから。 75 00:07:58,411 --> 00:08:01,414 だけど 何で今 僕は こんなもの 食べなきゃならないんですか。 76 00:08:01,414 --> 00:08:05,051 こんなもの? うちじゃ お母さんが勉強するの➡ 77 00:08:05,051 --> 00:08:09,556 お父さんが賛成なんだから 僕たちだって ひと言も文句言ったことないし➡ 78 00:08:09,556 --> 00:08:11,891 道子だって お手伝いに 協力してたつもりだよ。 79 00:08:11,891 --> 00:08:15,362 分かってるわよ。 だったら これからのこと あるんだから➡ 80 00:08:15,362 --> 00:08:18,064 変な言い訳しないでよ。 何怒ってんの 大介は。 81 00:08:18,064 --> 00:08:21,935 書き物で時間がなかったら なかったと 言ってくれればいいじゃないか。 82 00:08:21,935 --> 00:08:25,805 それを なにも 急に 戦争中のまねなんかして やり方が汚いよ。 83 00:08:25,805 --> 00:08:29,676 バカ言いなさい。 お母さん なにも まねなんかしてないわよ。 84 00:08:29,676 --> 00:08:31,611 ただ 戦争中のことを思っただけよ。 85 00:08:31,611 --> 00:08:35,382 だから どうしてさ。 86 00:08:35,382 --> 00:08:39,085 ごめんね。 お母さん 説明不足だったみたい。 87 00:08:39,085 --> 00:08:41,921 弁解なんか聞きたくない。 でも 聞いてほしいのよ。 88 00:08:41,921 --> 00:08:46,760 お母さんね 今 8月15日のこと 書いてるのよ。 それでね…。 89 00:08:46,760 --> 00:08:49,662 大介。 僕の夜食用のインスタントラーメン➡ 90 00:08:49,662 --> 00:08:52,399 自分で作って食べるから。 ちょっと待ちなさいよ。 91 00:08:52,399 --> 00:08:55,602 おかずなら 冷蔵庫に ソーセージだってあるのよ。 でもね…。 92 00:08:55,602 --> 00:08:59,272 箸が入ってなかったんだよ 今日の弁当に。 えっ。 93 00:08:59,272 --> 00:09:01,875 僕は まずいものが嫌だとか 言ってるんじゃないんだ。 94 00:09:01,875 --> 00:09:03,810 けど お母さんでしょ。 95 00:09:03,810 --> 00:09:06,713 僕たちだって ちゃんと学校へ行って ちゃんと勉強してるんだから➡ 96 00:09:06,713 --> 00:09:10,016 お母さんだって やること ちゃんとやってほしいな。 97 00:09:13,219 --> 00:09:15,422 大介…。 98 00:09:25,932 --> 00:09:28,568 (正道)さあ。 99 00:09:28,568 --> 00:09:31,471 大介には よく話しといたよ。 100 00:09:31,471 --> 00:09:33,907 ごめんなさい。 101 00:09:33,907 --> 00:09:37,243 お母さんも お箸忘れたのごめんなさい。 102 00:09:37,243 --> 00:09:39,579 それじゃ。 103 00:09:39,579 --> 00:09:42,082 うん。 104 00:09:45,251 --> 00:09:48,588 あ~。 105 00:09:48,588 --> 00:09:51,091 どうも すいません。 106 00:09:51,091 --> 00:09:53,927 君の気持ちも分かるけどね➡ 107 00:09:53,927 --> 00:09:57,597 いきなり すいとんってのは ちょっと時代錯誤じゃないか? 108 00:09:57,597 --> 00:09:59,532 時代錯誤…? 109 00:09:59,532 --> 00:10:01,468 子供たちにとってという意味だけどね。 110 00:10:01,468 --> 00:10:04,771 でも 私 分かってもらいたかったの。 111 00:10:04,771 --> 00:10:07,807 私が これからは 地道に ものを書いていくって言った時➡ 112 00:10:07,807 --> 00:10:10,110 あなただって おっしゃってくれたわ。 113 00:10:10,110 --> 00:10:12,045 親たちは どう生きてきたのか➡ 114 00:10:12,045 --> 00:10:14,981 私たち2人の記録も 書いてもらいたいって。 115 00:10:14,981 --> 00:10:17,283 言ったよ。 だったら…➡ 116 00:10:17,283 --> 00:10:22,121 今度の手記は まさに 私たち夫婦の 出発の記録でもあるわけだわ。 117 00:10:22,121 --> 00:10:25,625 だから 私たちは あの時代 どんな暮らしをしてきたのか➡ 118 00:10:25,625 --> 00:10:28,128 それも分かってもらいたかったの。 119 00:10:28,128 --> 00:10:31,631 大介たち中学生は 学校の勉強もできず➡ 120 00:10:31,631 --> 00:10:33,967 工場へ行って 兵器をつくらされていたこと➡ 121 00:10:33,967 --> 00:10:38,838 それも みんな… みんな分かってもらいたかったのよ。 122 00:10:38,838 --> 00:10:42,642 うん…。 お茶いれようか。 コーヒーがいいか。 123 00:10:42,642 --> 00:10:45,144 あなた。 124 00:10:46,980 --> 00:10:51,451 ちょっと 思い詰めすぎてるようだな。 だって 私…。 125 00:10:51,451 --> 00:10:54,988 うん… いかに書き表そうかっていう 思い詰めと➡ 126 00:10:54,988 --> 00:10:57,457 あのころ いやおうなく体験した 思いの熱さとが➡ 127 00:10:57,457 --> 00:11:00,460 こんがらがってるんだ。 君らしくないぞ。 128 00:11:03,763 --> 00:11:07,100 そりゃ 時には カ~ッとした勢いで書いた方が➡ 129 00:11:07,100 --> 00:11:09,402 迫力があるかも分からんけれども➡ 130 00:11:09,402 --> 00:11:13,273 今度の場合は あのころの自分を 突き放してみたらどうだ。 131 00:11:13,273 --> 00:11:16,109 そりゃ あれもこれも 全部 書きたいんだろうけれども➡ 132 00:11:16,109 --> 00:11:18,044 枚数制限だってあるんだろ。 133 00:11:18,044 --> 00:11:21,981 としたら 自分が一番書きたいことだけを書けよ。 134 00:11:21,981 --> 00:11:24,817 あとは 自分の記録として 残しておけばいいじゃないか。 135 00:11:24,817 --> 00:11:26,819 まして 賞金目当てで やってるわけじゃないんだし。 136 00:11:26,819 --> 00:11:30,123 そうよ。 賞金目当てなんかじゃないけど➡ 137 00:11:30,123 --> 00:11:35,628 でも あの8月15日 少なくとも 私たち放送員は➡ 138 00:11:35,628 --> 00:11:37,564 既に 敗戦を知っていたし➡ 139 00:11:37,564 --> 00:11:42,502 それを いかに全国民に告げるか ということに 全生命を懸けたか➡ 140 00:11:42,502 --> 00:11:45,972 18年前のあのことを 知ってもらいたいと思うんです。 141 00:11:45,972 --> 00:11:50,310 だったら そのことを書けよ。 142 00:11:50,310 --> 00:11:55,448 終戦放送の瞬間に凝縮した自分自身を 書けばいいじゃないか。 143 00:11:55,448 --> 00:11:58,651 まあ 金太郎さんのこととか 正大君のことは➡ 144 00:11:58,651 --> 00:12:02,088 折を見て 子供たちに話せばいいし➡ 145 00:12:02,088 --> 00:12:06,259 あとは 自分の歴史として 書き記しておけばいいじゃないか。 146 00:12:06,259 --> 00:12:10,096 ♬~ 147 00:12:10,096 --> 00:12:15,969 書きたいという一心だけで 思うように書けず焦っていた元子は➡ 148 00:12:15,969 --> 00:12:23,109 正道の言葉に ある方向が ぼんやりと 分かってきたような気がしました。 149 00:12:23,109 --> 00:12:28,314 ♬~ 150 00:12:30,984 --> 00:12:34,721 (恭子)私はね あの日のこともだけれど➡ 151 00:12:34,721 --> 00:12:40,126 その前の日 立花室長が 私たちを集めて➡ 152 00:12:40,126 --> 00:12:42,428 反乱軍が もし ピストルを突きつけて➡ 153 00:12:42,428 --> 00:12:45,798 あくまで戦うという原稿を 読めと言ったら➡ 154 00:12:45,798 --> 00:12:50,003 その時は読みなさいって おっしゃったことが強烈だった。 155 00:12:51,671 --> 00:12:56,976 あの時 私たちは 死んでも読まないって言ったけれど➡ 156 00:12:56,976 --> 00:13:04,250 室長は 自分を大切にしろ そうおっしゃったのよね。 157 00:13:04,250 --> 00:13:07,253 (悦子)そうね。 158 00:13:07,253 --> 00:13:11,991 あの時代 初めて聞いたような 言葉だったものね。 159 00:13:11,991 --> 00:13:17,764 (のぼる)うん。 だから私は 自分を大切に生きなければって➡ 160 00:13:17,764 --> 00:13:20,600 今日まで生きてきたような気がする。 161 00:13:20,600 --> 00:13:24,771 だって 人間は 一人では生きられないんですもの。 162 00:13:24,771 --> 00:13:27,674 自分を大切にするっていうことは➡ 163 00:13:27,674 --> 00:13:33,980 一緒に生きていく相手をも 大切にするっていうことですものね。 164 00:13:38,284 --> 00:13:40,620 (洋三)書きなさいよ ガンコ。 165 00:13:40,620 --> 00:13:43,656 時間切れまで 幾とおり書いたっていいじゃないか。 166 00:13:43,656 --> 00:13:48,127 そのうち必ず これだけはってものが 洗い出されてくるはずだよ。 167 00:13:48,127 --> 00:13:50,963 そうよ。 頑張ってよ ガンコ。 168 00:13:50,963 --> 00:13:54,300 納得するまで。 今月いっぱいなんでしょう? 169 00:13:54,300 --> 00:13:56,803 締め切りの朝まで かかったって いいじゃない。 170 00:13:56,803 --> 00:14:00,573 私が お清書に駆けつけるわよ。 171 00:14:00,573 --> 00:14:02,875 ありがとう。 172 00:14:05,244 --> 00:14:08,448 私 書くわ。 173 00:14:10,750 --> 00:14:27,266 ♬~ 174 00:14:27,266 --> 00:14:36,275 あの8月15日の放送員室のことを 元子は ひたすらに書いていきました。 175 00:14:36,275 --> 00:14:50,289 ♬~