1 00:00:01,935 --> 00:00:13,413 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:13,413 --> 00:01:12,472 ♬~ 3 00:01:12,472 --> 00:01:17,110 (巳代子)へ~え。 出版とは すごいじゃないの。 4 00:01:17,110 --> 00:01:20,147 すると お母さんも いよいよ作家の仲間入りね。 5 00:01:20,147 --> 00:01:23,984 (道子)さあ それはどうか知らないけど ところてん式に押し出されちゃ大変って➡ 6 00:01:23,984 --> 00:01:27,421 もう このごろ またまた うちのお母さんの顔色一つで➡ 7 00:01:27,421 --> 00:01:29,356 うちの中がピリピリしてるの。 (トシ江)まあ。 8 00:01:29,356 --> 00:01:32,125 でも 新人のライターさんに お尻つっつかれているんじゃ➡ 9 00:01:32,125 --> 00:01:34,962 作家になるかどうかの瀬戸際なんでしょ。 10 00:01:34,962 --> 00:01:38,632 まあ じゃあ 当分は 大介のこと考えないで済むわね。 11 00:01:38,632 --> 00:01:41,969 そうか。 それでお母さん あんなに夢中になってるのね。 12 00:01:41,969 --> 00:01:46,139 けど 夢中になるとね 周りのことに 気が いかなくなるっていうのが➡ 13 00:01:46,139 --> 00:01:48,642 あんたのお母さんの まあ 悪い癖だから。 14 00:01:48,642 --> 00:01:52,813 大丈夫よ。 そういうことならね こっちも 小さい時から鍛えられてるから。 15 00:01:52,813 --> 00:01:54,748 そいじゃあね そのうち叔母さんが➡ 16 00:01:54,748 --> 00:01:56,683 穴埋めに おいしいお料理 作りに行ってあげるから。 17 00:01:56,683 --> 00:02:00,487 うわぁ 期待してます! (笑い声) 18 00:02:11,598 --> 00:02:18,372 ☎ 19 00:02:18,372 --> 00:02:20,774 (元子)はい もしもし 大原でございます。 20 00:02:20,774 --> 00:02:24,611 ☎(絹子)あっ もっちゃん? 私。 ああ 叔母さん。 21 00:02:24,611 --> 00:02:29,116 (絹子)聞いたわよ。 いよいよ 本を出すんですってね。 おめでとう。 22 00:02:29,116 --> 00:02:31,785 ☎でも ちゃんと書けたらの話なんですよ。 23 00:02:31,785 --> 00:02:34,621 いえ ちゃんと書けるに決まってますよ。➡ 24 00:02:34,621 --> 00:02:37,657 一体 下積みで何年修業してきたのさ。➡ 25 00:02:37,657 --> 00:02:41,495 大丈夫。 叔母さんが太鼓判押してあげますからね。 26 00:02:41,495 --> 00:02:43,964 それでね 今日は ちょっとお願いがあるのよ。 27 00:02:43,964 --> 00:02:46,433 (洋三)よしなさいよ。 もっちゃんだって迷惑しとるよ。 28 00:02:46,433 --> 00:02:48,368 そんなことありませんよ。 29 00:02:48,368 --> 00:02:50,303 あんた このごろね 押しつけがましいんだから。 30 00:02:50,303 --> 00:02:54,141 いや 大丈夫 大丈夫。 もしもし叔母さん? もしもし? 31 00:02:54,141 --> 00:02:57,644 あっ ごめんなさいね。 隣で叔父さんが ゴチャゴチャ言うもんだから。 32 00:02:57,644 --> 00:02:59,579 いや それはだね もっちゃん。 33 00:02:59,579 --> 00:03:03,383 叔父さんにね 本の装丁をやらしてほしいのよ。 34 00:03:03,383 --> 00:03:06,753 えっ。 私たちね このご近所で➡ 35 00:03:06,753 --> 00:03:09,389 元 絵の先生に 絵を習ってるの。 36 00:03:09,389 --> 00:03:12,759 習ってるったって まだ油に入ったばっかりだよ。 37 00:03:12,759 --> 00:03:16,930 けど 筋がいいって 言ってくださってるじゃありませんか。 38 00:03:16,930 --> 00:03:20,400 悔しいけどね 私より才能はあるみたいなのよ。➡ 39 00:03:20,400 --> 00:03:23,303 だから 私は せめて バックの空の色だけでも➡ 40 00:03:23,303 --> 00:03:25,772 塗らしてもらえれば それで大満足なのよ。 41 00:03:25,772 --> 00:03:28,275 お前さん 何を言いだすんだよ。 42 00:03:28,275 --> 00:03:34,147 ねっ お願い。 それを私たちの 心ばかりのお祝いにさせてほしいのよ。 43 00:03:34,147 --> 00:03:36,650 ねっ 頑張るわ。 44 00:03:38,618 --> 00:03:40,554 (正道)えっ 装丁を? 45 00:03:40,554 --> 00:03:44,291 そうなのよ。 お気持ちはありがたいんだけど➡ 46 00:03:44,291 --> 00:03:46,293 まだ肝心の原稿が どんなふうにまとまるか➡ 47 00:03:46,293 --> 00:03:49,796 分からないんですもの。 返事のしようがなくて困っちゃったわ。 48 00:03:49,796 --> 00:03:51,732 駄目よ そんなの。 49 00:03:51,732 --> 00:03:55,602 うん できればね 僕にやらせてもらおうと思ってたんだよ。 50 00:03:55,602 --> 00:03:58,438 あなたが!? やだ 弘美ちゃんもやらせてほしいって➡ 51 00:03:58,438 --> 00:04:01,441 張り切ってたわよ。 冗談じゃないわ。 52 00:04:01,441 --> 00:04:03,910 私の方が 全然進んでないのに➡ 53 00:04:03,910 --> 00:04:06,813 そんな 今から装丁のことなんか 勝手に騒がれたんじゃ➡ 54 00:04:06,813 --> 00:04:08,782 母さん 頭がおかしくなっちゃうわ。 55 00:04:08,782 --> 00:04:11,084 情けないこと言わないでよ。 56 00:04:11,084 --> 00:04:14,755 だってね 雑誌と単行本じゃ違うのよ。 57 00:04:14,755 --> 00:04:18,925 今度は 本の背中に 「大原元子」って 名前が出て➡ 58 00:04:18,925 --> 00:04:22,762 お客は その人が書いたものを 読んでみようって買うんですもの。 59 00:04:22,762 --> 00:04:26,399 責任重大だわ。 え~ ちょっと自意識過剰だぞ。 60 00:04:26,399 --> 00:04:28,335 うん その気は多分にある。 61 00:04:28,335 --> 00:04:30,771 道子まで 一緒になって言うことないでしょう。 62 00:04:30,771 --> 00:04:35,642 は~い。 それじゃ私は この辺で失礼します。 63 00:04:35,642 --> 00:04:37,944 ハハ…。 全く。 64 00:04:37,944 --> 00:04:46,119 ☎ 65 00:04:46,119 --> 00:04:48,054 はい 大原でございます。 66 00:04:48,054 --> 00:04:51,625 ☎(恭子)私 ブルース。 ねえ 明日出てこない? 67 00:04:51,625 --> 00:04:54,127 出てこないって…。 ☎(恭子)実はね➡ 68 00:04:54,127 --> 00:04:57,430 立花室長とお会いするのよ。 室長と…? 69 00:04:57,430 --> 00:05:00,901 ☎(恭子)ええ。 案外 あなたの筆が 進むんじゃないかと思って。 70 00:05:00,901 --> 00:05:04,371 ええ 本当。 ☎(恭子)2時にモンパリでだけど どう? 71 00:05:04,371 --> 00:05:06,907 そうねえ うん…。 72 00:05:06,907 --> 00:05:11,745 そういえば あの時 一緒に 辞表をたたきつけた相棒が➡ 73 00:05:11,745 --> 00:05:15,248 ブルースこと向井恭子でした。 74 00:05:15,248 --> 00:05:18,451 (恭子)長い間 お世話になりました。 75 00:05:21,054 --> 00:05:22,989 (立花)何だね? これは。 76 00:05:22,989 --> 00:05:26,259 私たちの辞表です。 辞表!? 77 00:05:26,259 --> 00:05:29,262 第16期生 東京組 9人の意見一致を見ましたので➡ 78 00:05:29,262 --> 00:05:33,600 全員 辞表を提出いたします。 意見一致とは そりゃ何のことだ? 79 00:05:33,600 --> 00:05:37,404 ご自分の胸に 手を当てていただければ お分かりのことと思いますが。 80 00:05:37,404 --> 00:05:39,339 おいおいおい ちょっと待てよ。 81 00:05:39,339 --> 00:05:42,242 いえ いろいろと 教えていただくことばかり多く➡ 82 00:05:42,242 --> 00:05:45,946 ふがいない生徒たちでございましたが 最後に せめて➡ 83 00:05:45,946 --> 00:05:48,982 皆様の解雇の防波堤に 私たちがなれますことで➡ 84 00:05:48,982 --> 00:05:51,818 お世話になりました感謝のしるしに させていただきます。 85 00:05:51,818 --> 00:05:57,424 ハハハハハ… 何が驚いたって あれほど驚いたことはなかったな。 86 00:05:57,424 --> 00:06:01,228 ハハハハハハ…。 私たち 本当に向こうっ気が強かったから。 87 00:06:01,228 --> 00:06:03,163 (のぼる) ああ これが江戸っ子なんだなって➡ 88 00:06:03,163 --> 00:06:06,099 私 あの時 本当に感心したのよ。 もう やめてよ。 89 00:06:06,099 --> 00:06:09,569 思い出しただけでも冷や汗が出てくるわ。 (笑い声) 90 00:06:09,569 --> 00:06:12,239 そうよ 私たちだって 一致団結してしまったんですもの。 91 00:06:12,239 --> 00:06:14,174 何にも言えないわね。 92 00:06:14,174 --> 00:06:16,109 若かったんですね 私たちも。 93 00:06:16,109 --> 00:06:19,379 ああ。 それに 混乱期だったからねえ。 94 00:06:19,379 --> 00:06:22,249 この前の集まりの時にも 私は言ったが➡ 95 00:06:22,249 --> 00:06:26,119 それからの君たちは 本当に 自分たちの道を切り開いて➡ 96 00:06:26,119 --> 00:06:29,122 たくましく生きてくれた。 97 00:06:29,122 --> 00:06:32,759 16期生は 私の誇りだよ。 98 00:06:32,759 --> 00:06:35,662 室長。 まあ 近頃は➡ 99 00:06:35,662 --> 00:06:41,268 世の中が忙しくなって あのころのことを 問題にはしなくなってきたが➡ 100 00:06:41,268 --> 00:06:46,773 いや だからこそ 立山君の その 空襲を記録する会も➡ 101 00:06:46,773 --> 00:06:53,413 大原君の我が来りし道も 書くべき意義があると思うんだ。 102 00:06:53,413 --> 00:06:59,219 やはり それが 新しい日本の そして 君たちの出発点だったんだからね。 103 00:06:59,219 --> 00:07:01,154 はい。 104 00:07:01,154 --> 00:07:07,560 何か 私で役に立つことがあったら いつでも声をかけてくれて結構だよ。 105 00:07:07,560 --> 00:07:09,596 ありがとうございます。 ハハハハハ…。 106 00:07:09,596 --> 00:07:14,234 いやぁ あの江戸前のたんかは 今でも忘れられないからな。 107 00:07:14,234 --> 00:07:18,238 また それを。 (笑い声) 108 00:07:34,621 --> 00:07:42,762 立花に会って あの敗戦の日から 既に 四半世紀を過ぎた現実をかみしめ➡ 109 00:07:42,762 --> 00:07:49,936 苦しかったこと 楽しかったこと 元子は さまざまな思い出に包まれて➡ 110 00:07:49,936 --> 00:07:52,772 ひたすら筆を進めました。 111 00:07:52,772 --> 00:08:19,866 ♬~ 112 00:08:19,866 --> 00:08:25,572 思い出のどれもこれもが 元子の歩いてきた道だったのです。 113 00:08:25,572 --> 00:08:31,911 ♬~ 114 00:08:31,911 --> 00:08:36,082 そして それは 元子自身の歴史であり➡ 115 00:08:36,082 --> 00:08:41,388 戦後を一緒に歩いてきた人たちの 歴史でした。 116 00:08:41,388 --> 00:08:59,873 ♬~ 117 00:09:01,708 --> 00:09:08,214 元子の処女作は 編集長からの意見で 手直しを重ねた上に➡ 118 00:09:08,214 --> 00:09:11,551 相変わらず ルポの仕事に中断されて➡ 119 00:09:11,551 --> 00:09:15,054 ようやく ゲラの校正まで こぎ着けた時は➡ 120 00:09:15,054 --> 00:09:19,759 既に 秋の声を聞いておりました。 121 00:09:23,563 --> 00:09:26,900 ⚟お~い 元子。 は~い。 122 00:09:26,900 --> 00:09:31,604 ⚟ちょっと来てくれないか。 はい ただいま。 123 00:09:41,748 --> 00:09:44,751 う~ん…。 124 00:09:48,254 --> 00:09:51,758 はい あなた。 どうぞ。 125 00:09:51,758 --> 00:09:54,260 うん? お茶なんでしょう? 126 00:09:54,260 --> 00:09:56,196 いや。 えっ? 127 00:09:56,196 --> 00:09:59,132 今日な ゲラを持ってく時に➡ 128 00:09:59,132 --> 00:10:01,768 ついでに この絵を 持ってってもらおうと思ってね。 129 00:10:01,768 --> 00:10:03,703 この絵をですか? 130 00:10:03,703 --> 00:10:06,606 ほら 装丁は 僕にやらせてくれって言っただろ。 131 00:10:06,606 --> 00:10:08,808 あなた…。 132 00:10:13,112 --> 00:10:15,615 ほら。 133 00:10:15,615 --> 00:10:18,117 「明るい窓に向かって」…。 134 00:10:18,117 --> 00:10:20,787 うん。 本のタイトルだよ。 135 00:10:20,787 --> 00:10:24,657 どうかな? どうかなって…。 136 00:10:24,657 --> 00:10:26,659 ゆうべね ゲラ読んだんだけど➡ 137 00:10:26,659 --> 00:10:29,429 タイトルは やっぱ これがいいな。 これにしなさい。 138 00:10:29,429 --> 00:10:32,332 驚いたわ。 あなたが こんな強引に➡ 139 00:10:32,332 --> 00:10:34,634 人の仕事に割り込んでくる人だなんて➡ 140 00:10:34,634 --> 00:10:37,136 私 今の今まで知らなかったわ。 141 00:10:37,136 --> 00:10:39,439 君がね あんまり迷ってるからさ。 142 00:10:39,439 --> 00:10:42,976 だって それは…。 決して強制はしないけどな➡ 143 00:10:42,976 --> 00:10:46,446 ゲラと一緒に 持ち込んでくれるだけでいいんだから。 144 00:10:46,446 --> 00:10:51,651 うん けど… 編集長には 編集長のお考えがあるでしょうし。 145 00:10:51,651 --> 00:10:54,988 だから ボツならボツでも構わんさ。 146 00:10:54,988 --> 00:11:00,260 しかしな 元子 どう思う? この絵。 147 00:11:00,260 --> 00:11:02,262 ええ…。 148 00:11:04,597 --> 00:11:08,468 窓はな 開くためにあるんだよ。 149 00:11:08,468 --> 00:11:11,104 僕はね 元子を見てると➡ 150 00:11:11,104 --> 00:11:13,039 明日という窓に向かって➡ 151 00:11:13,039 --> 00:11:16,276 まっすぐに歩いていく姿が見えるんだよ。 152 00:11:16,276 --> 00:11:18,211 一生懸命にね。 153 00:11:18,211 --> 00:11:21,781 ええ…。 154 00:11:21,781 --> 00:11:24,784 ん? どうかな? 155 00:11:30,423 --> 00:11:34,127 いいわ。 とてもいい。 156 00:11:34,127 --> 00:11:36,129 うん。 157 00:11:38,431 --> 00:11:41,301 ⚟ごめんください。 はい! 158 00:11:41,301 --> 00:11:43,636 圭子さんかな? ええ…。 159 00:11:43,636 --> 00:11:47,507 まあ いらっしゃい。 (圭子)大ちゃんから手紙が来たんです。 160 00:11:47,507 --> 00:11:49,509 まあ。 (圭子)そしたら おかみさんが➡ 161 00:11:49,509 --> 00:11:52,979 今日は休みにしてやるから 大原さんに手紙を見せてあげなさいって➡ 162 00:11:52,979 --> 00:11:55,315 言ってくれたもんですから…。ああ。 どうも。 163 00:11:55,315 --> 00:11:57,817 あ~ それはそれは。 さあさあ 上がんなさい。 164 00:11:57,817 --> 00:12:00,587 あっ でも困ったわね。 私 これから 出かけなきゃならないんですよ。 165 00:12:00,587 --> 00:12:02,922 いやぁ 構わん構わん。 僕 休みなんだからな➡ 166 00:12:02,922 --> 00:12:04,857 冬彦ちゃんの相手は 僕がしてあげる。 167 00:12:04,857 --> 00:12:07,093 そう? じゃあ ゆっくりしてってくださいね。 168 00:12:07,093 --> 00:12:11,598 私 すぐ帰ってきますから。 はい。 じゃ これが手紙です。 169 00:12:11,598 --> 00:12:14,400 おなかも壊さずに 元気ですって。 そう…。 170 00:12:14,400 --> 00:12:17,203 じゃあ ほら さあ 冬彦ちゃん…。 あっ はい。はいはい は~い。 171 00:12:18,938 --> 00:12:22,408 (野村) へえ~ いいじゃないですか なかなか。 172 00:12:22,408 --> 00:12:24,944 (福井)うん。 (冬木)しかし 装丁は➡ 173 00:12:24,944 --> 00:12:27,413 岸井先生に もう発注してしまったんでしょう。 174 00:12:27,413 --> 00:12:30,283 うん…。 (野村)けど あの先生も結構忙しいし➡ 175 00:12:30,283 --> 00:12:32,218 まだ手をつけちゃいませんよ。 176 00:12:32,218 --> 00:12:36,956 いえ いいんです。 ただ 主人が 私のために描いてくれたものですから➡ 177 00:12:36,956 --> 00:12:39,425 一応 見ていただければと思いまして。 178 00:12:39,425 --> 00:12:42,295 じゃあ野村君 岸井先生のキャンセル あなた やってくれる? 179 00:12:42,295 --> 00:12:45,131 (野村)えっ… ええ いいですよ。 でも そんな。 180 00:12:45,131 --> 00:12:47,066 うん 一応発注してしまったから➡ 181 00:12:47,066 --> 00:12:50,003 もう かかってるって言われたら どうしようもないけれども➡ 182 00:12:50,003 --> 00:12:54,807 私は この本には これがピタリだと思う。 さすがにご夫婦ですよ。 183 00:12:54,807 --> 00:12:57,143 はい。 けど 大原さんのご主人に➡ 184 00:12:57,143 --> 00:13:00,046 こういった才能がおありだったとは 知らなかったな。 185 00:13:00,046 --> 00:13:03,383 昔々なんですけどね ちょっとの間 お友達と一緒に➡ 186 00:13:03,383 --> 00:13:05,918 小さな出版社を やってたことがあるんです。 187 00:13:05,918 --> 00:13:08,755 へえ~。 終戦のよくとし辺りで➡ 188 00:13:08,755 --> 00:13:12,091 廃物利用のおもちゃの作り方なんて本 出してたんですよ。 189 00:13:12,091 --> 00:13:14,761 廃物利用のおもちゃ? ええ。 190 00:13:14,761 --> 00:13:16,696 まだ何にもない頃でしたから➡ 191 00:13:16,696 --> 00:13:20,566 進駐軍の缶詰の空き缶とか 板っ切れなんかを材料にして。 192 00:13:20,566 --> 00:13:24,771 まあ 今風に言えば 手作りの おもちゃ読本みたいなものでしょうか。 193 00:13:24,771 --> 00:13:30,109 知ってるわ。 装丁がブルーで 中に 絵がたくさん入ってる本じゃない? 194 00:13:30,109 --> 00:13:32,779 ええ。 あれも主人が装丁したものなんです。 195 00:13:32,779 --> 00:13:36,616 はあ~ 世間は狭いわねえ。 196 00:13:36,616 --> 00:13:39,952 私ね この会社に入社したてで➡ 197 00:13:39,952 --> 00:13:43,823 こういう本を作りたいって 先輩に意見具申したら➡ 198 00:13:43,823 --> 00:13:46,426 生意気だって叱られたことがあるの。 199 00:13:46,426 --> 00:13:48,795 だから はっきり記憶してるのよ。 200 00:13:48,795 --> 00:13:51,698 そう。 あれ ご主人がお作りになったの。 201 00:13:51,698 --> 00:13:55,435 ええ。 でも 今は 家具のデザインをしていますので➡ 202 00:13:55,435 --> 00:13:57,370 こういうのは あれ以来じゃないでしょうか。 203 00:13:57,370 --> 00:13:59,305 あっ ちょい待ち。 えっ? 204 00:13:59,305 --> 00:14:02,075 そのお仕事で 去年 受賞なすったんだよね? 205 00:14:02,075 --> 00:14:04,911 ええ。 いけるじゃないですか 編集長。 206 00:14:04,911 --> 00:14:07,747 デザイン賞受賞者の装丁となれば パンチも効くし➡ 207 00:14:07,747 --> 00:14:11,384 宣伝文にしても 夫婦合作をキャッチフレーズにすれば➡ 208 00:14:11,384 --> 00:14:13,753 これは 主婦層には断然ウケますよ。 209 00:14:13,753 --> 00:14:16,255 頭の回転は悪くないのね。 210 00:14:16,255 --> 00:14:20,093 分かったわよ。 その切れる頭で 岸井先生のキャンセル頼むわ。 211 00:14:20,093 --> 00:14:23,930 任せてください。 まとめるのは下手だけど ぶち壊すのは得意なんだから。 212 00:14:23,930 --> 00:14:28,601 変な編集者。 (笑い声) 213 00:14:28,601 --> 00:14:31,104 どうも ありがとうございます。 214 00:14:31,104 --> 00:14:35,608 本当に ありがとうございました。 215 00:14:35,608 --> 00:14:39,412 かくして 元子の初めての本は➡ 216 00:14:39,412 --> 00:14:45,218 正道の装丁に包まれて 店頭へ並ぶことになりました。 217 00:14:48,154 --> 00:14:52,658 昭和48年10月です。