1 00:00:10,277 --> 00:00:13,614 (荒い息遣い) 2 00:00:13,614 --> 00:00:18,285 <僕は 順風満帆な人生ではなかった。➡ 3 00:00:18,285 --> 00:00:21,288 仕事やプライベートでも うまくいかず➡ 4 00:00:21,288 --> 00:00:26,159 自殺を考えたことも 一度や二度では済まない。➡ 5 00:00:26,159 --> 00:00:34,301 つまり 生きていく価値のない どうしようもない人間だった。➡ 6 00:00:34,301 --> 00:00:37,004 あの時までは> 7 00:00:56,556 --> 00:01:00,928 あなた 何か元気がないようですね。 8 00:01:00,928 --> 00:01:02,863 ええ…。 9 00:01:02,863 --> 00:01:06,099 しっかりしなさいよ… 若いくせに。 10 00:01:06,099 --> 00:01:11,605 ここは 私が おごりますよ。 遠慮はいりませんから。 11 00:01:11,605 --> 00:01:15,475 …で 一体 何があったんですか? 12 00:01:15,475 --> 00:01:21,114 僕はですね… いつも 仕事で失敗して 上司に怒られてばっかり。 13 00:01:21,114 --> 00:01:24,418 気晴らしにお酒を飲む毎日なんですが…。 14 00:01:24,418 --> 00:01:26,787 だから いつも お金がありません。 15 00:01:26,787 --> 00:01:31,124 その上 美男子でもなければ 男らしくもない。 16 00:01:31,124 --> 00:01:35,929 いい経験をした記憶なんて ほとんどないんです。 17 00:01:39,433 --> 00:01:41,501 なるほど…。 18 00:01:41,501 --> 00:01:46,640 あなた 「ブルギさん」に なってみませんか? 19 00:01:46,640 --> 00:01:48,942 ブルギさん? 20 00:01:53,413 --> 00:01:55,716 これを差し上げます。 21 00:01:57,651 --> 00:02:01,621 その… ブルギさんって 一体 どういうことなんでしょうか? 22 00:02:01,621 --> 00:02:04,758 いいことずくめであることは 間違いない。 23 00:02:04,758 --> 00:02:08,395 ですが… いまだに分からないんです。 24 00:02:08,395 --> 00:02:11,598 不可解なことは不愉快なので➡ 25 00:02:11,598 --> 00:02:14,935 それで あなたに譲ろうと思いまして。 26 00:02:14,935 --> 00:02:19,406 さあ… 早くバッジをつけて。 ああ…。 27 00:02:19,406 --> 00:02:23,210 今日は 私に おごらせてください。 28 00:02:26,613 --> 00:02:30,484 これで 今日から あなたは ブルギさんです。 29 00:02:30,484 --> 00:02:35,188 いずれにせよ おごっていただき ありがとうございます。 30 00:03:08,221 --> 00:03:11,591 失礼ですが あなた ひょっとして ブルギさんでは? 31 00:03:11,591 --> 00:03:13,527 ええ… まあ…。 32 00:03:13,527 --> 00:03:16,463 あの… どうして 僕が ブルギさんだと? 33 00:03:16,463 --> 00:03:20,300 よかった… 通りがかりに 胸のバッジが目に入りました。 34 00:03:20,300 --> 00:03:22,602 そうじゃないかと確かめに 車を戻らしたのです。 35 00:03:22,602 --> 00:03:24,538 …で 行きたい所は? 36 00:03:24,538 --> 00:03:27,274 か… 会社です。 ああ じゃあ 乗っちゃってください。 37 00:03:27,274 --> 00:03:29,976 じゃあ もう 急いで。 はい どうぞ。 あっ はい! 38 00:03:35,949 --> 00:03:38,618 それでは また 見積もらせていただきますので。 39 00:03:38,618 --> 00:03:43,290 <その日 僕は 会社で考え続けだった。➡ 40 00:03:43,290 --> 00:03:47,794 しかし どうにも説明のつけようがなかった> 41 00:03:47,794 --> 00:03:50,430 お前 いつも 何をやってんだ!? なあ? 42 00:03:50,430 --> 00:03:53,300 大事な商談で はっきり 物も言えず! 43 00:03:53,300 --> 00:03:55,602 いいかげんにしてくれよ! 44 00:03:59,639 --> 00:04:04,377 ああ… 今日は飲みたいけど お金がないしな…。 45 00:04:04,377 --> 00:04:07,748 失礼ですが ブルギさんじゃありませんか? 46 00:04:07,748 --> 00:04:10,383 えっ? 47 00:04:10,383 --> 00:04:12,319 あっ… まあ。 48 00:04:12,319 --> 00:04:17,757 あっ もし お食事が まだでしたら おごらせていただけませんか? 49 00:04:17,757 --> 00:04:20,260 えっ? いや… いや そんなわけには…。 50 00:04:20,260 --> 00:04:25,132 たまたま まとまったお金が入ったんです。 51 00:04:25,132 --> 00:04:27,767 こんな日にブルギさんに会えるなんて 私も運がいい。 52 00:04:27,767 --> 00:04:31,638 是非 おごらせてください。 53 00:04:31,638 --> 00:04:33,640 あっ…。 54 00:04:41,948 --> 00:04:47,420 あっ… あの~ 変なこと伺うんですけど➡ 55 00:04:47,420 --> 00:04:50,624 なぜ 「ブルギさん」だと おごっていただけるんでしょうか? 56 00:04:50,624 --> 00:04:53,426 ブルギさんは そんな質問を なさらないものです。 57 00:04:53,426 --> 00:04:58,265 お飲みになり お楽しみになればいいのですよ。 58 00:04:58,265 --> 00:05:03,236 あっ! あの~ あいにく これから 人に会う約束がありまして➡ 59 00:05:03,236 --> 00:05:08,742 ここの勘定は 私のツケにいたしますから 好きなだけ お飲みになってください。 60 00:05:17,250 --> 00:05:21,121 あっ… すいません! すいません…。 61 00:05:21,121 --> 00:05:23,390 えっ? 62 00:05:23,390 --> 00:05:26,593 ここで まだお飲みになりますか? 63 00:05:30,096 --> 00:05:35,902 それとも どこか 静かなホテルのバーでも行きませんか? 64 00:05:35,902 --> 00:05:38,772 あっ… あいにく 僕は 今 お金が…。 65 00:05:38,772 --> 00:05:42,275 ああ ブルギさんが そんなこと おっしゃっては おかしいですよ。 66 00:05:42,275 --> 00:05:48,481 お金なら 私が持ってますので 是非 行きませんか? フフッ。 67 00:05:51,618 --> 00:05:56,957 今日は楽しかったです。 あっ… 僕もです。 68 00:05:56,957 --> 00:05:59,259 フフ…。 69 00:06:00,827 --> 00:06:02,829 あっ。 あっ。 70 00:06:07,567 --> 00:06:09,569 えっ? いや…。 71 00:06:14,241 --> 00:06:26,586 ♬~ 72 00:06:26,586 --> 00:06:30,257 どうしました? 涙ぐんだり…。 73 00:06:30,257 --> 00:06:34,094 すいません… こんなことになってしまって。 74 00:06:34,094 --> 00:06:36,763 何か あげたいんですが 何も持っていない。 75 00:06:36,763 --> 00:06:38,698 このバッジぐらいしか…。 76 00:06:38,698 --> 00:06:44,104 駄目ですよ! そんなこと考えちゃ駄目ですよ。 77 00:06:44,104 --> 00:06:49,809 楽しんで… 「ありがとう」って 言ってあげればいいと思いますよ。 78 00:06:51,411 --> 00:06:54,214 フフッ… フフフ…。 79 00:07:03,356 --> 00:07:08,061 <ブルギさんって 一体 何なんだろうか?> 80 00:07:13,366 --> 00:07:16,569 何だ? これは…。 81 00:07:16,569 --> 00:07:23,343 俺のような特権階級の人間が 89人はいる ということだろうか? 82 00:07:23,343 --> 00:07:27,847 <それ以上は… まるで分からなかった> 83 00:07:30,116 --> 00:07:34,387 <ある日 僕は 会社から出張を命じられた。➡ 84 00:07:34,387 --> 00:07:40,927 うまく注文を取れるかどうか 自信は全くなかった> 85 00:07:40,927 --> 00:07:44,764 これはこれは ブルギさんに おいでいただけたとは! 86 00:07:44,764 --> 00:07:47,801 あっ…。 で 何をお望みですか? 87 00:07:47,801 --> 00:07:50,937 あっ いや えっと…➡ 88 00:07:50,937 --> 00:07:53,773 実は 少しだけ注文していただければと。 89 00:07:53,773 --> 00:07:58,611 「少し」なんて おっしゃらないで ご希望なだけ注文いたしますよ! 90 00:07:58,611 --> 00:08:00,547 えっ いや でも そんなに要らないんじゃ…? 91 00:08:00,547 --> 00:08:04,417 ブルギさんのためでしたら 利益なんか どうでもいいのです。 92 00:08:04,417 --> 00:08:06,720 ハハハハ…。 93 00:08:11,191 --> 00:08:13,126 もしもし 部長! 🖩おう。 94 00:08:13,126 --> 00:08:16,363 あっ あっ… 商談まとまりました! 95 00:08:16,363 --> 00:08:20,233 お お… 大型の取り引き してもらえました! 96 00:08:20,233 --> 00:08:26,373 🖩本当か! お前が商談をまとめるとは…。 いや~ よくやったじゃないか!➡ 97 00:08:26,373 --> 00:08:30,176 すごいことだぞ! あっ ありがとうございます! 98 00:08:41,388 --> 00:08:43,590 よしっ! 99 00:08:45,592 --> 00:08:51,264 <僕は 生きている価値がないと思っていた 自分の人生を➡ 100 00:08:51,264 --> 00:08:56,269 変えられるのではないか… とさえ 思えていた> 101 00:09:02,709 --> 00:09:06,045 持ちますよ! えっ? あっ… すいません。 102 00:09:06,045 --> 00:09:07,981 いえ。 はあ… 助かる。 103 00:09:07,981 --> 00:09:11,551 あそこで大丈夫ですか? はい はい はい。 いや~ ありがとう! 104 00:09:11,551 --> 00:09:15,054 いやいや… 助かりました! 105 00:09:15,054 --> 00:09:17,090 えっ… ブルギさんよね!? 106 00:09:17,090 --> 00:09:19,726 <僕は 至る所でいい目にあった> 107 00:09:19,726 --> 00:09:24,230 これ 今 買ってきたばっかりなんです! 持って 持って。 108 00:09:24,230 --> 00:09:28,067 おい! おとなしく 金出せ。 えっ えっ えっ えっ…。 109 00:09:28,067 --> 00:09:30,103 分かりました! どうか 命だけは! 110 00:09:30,103 --> 00:09:32,572 うるせえ! あっ! ああっ あっ…。 111 00:09:32,572 --> 00:09:35,475 何だ おめえはよ! (殴り合う音) 112 00:09:35,475 --> 00:09:40,447 <僕が希望すれば 何でも かなったのだ> 113 00:09:40,447 --> 00:09:43,583 大丈夫でしたか? 自分のことなど考えませんでしたよ。 114 00:09:43,583 --> 00:09:47,087 もう ブルギさんのためだと思って 頭に思って もう夢中で。 115 00:09:48,755 --> 00:09:52,392 <欲望すら満たしてくれる この状況に➡ 116 00:09:52,392 --> 00:09:57,697 僕は 立ち止まることも 振り返ることもしなかった> 117 00:10:04,604 --> 00:10:11,277 <そして 僕がブルギさんになってから 2か月ほどが たっていた> 118 00:10:11,277 --> 00:10:16,616 ブルギさんですね? 捜していたところでした。 119 00:10:16,616 --> 00:10:19,652 どうぞ お車にお乗りください。 120 00:10:19,652 --> 00:10:23,790 今日は何をしてくれるんですか? 121 00:10:23,790 --> 00:10:27,594 <僕は すっかり慣れていた> 122 00:10:44,978 --> 00:10:46,980 これは…。 123 00:10:48,848 --> 00:11:06,599 ♬~ 124 00:11:06,599 --> 00:11:10,403 今 ブルギさんのために 世界中の信者たちが祈ってるんですよ。 125 00:11:10,403 --> 00:11:12,472 私をですか!? 126 00:11:12,472 --> 00:11:16,209 もし そうだったら うれしいかぎりですが…。 127 00:11:16,209 --> 00:11:21,214 <僕は 促されるまま 液体を飲んだ> 128 00:11:26,286 --> 00:11:29,589 何だか 体が浮くようだ。 129 00:11:31,958 --> 00:11:37,764 そうでしょう。 ちょうど満月が真上に昇っています。 130 00:11:37,764 --> 00:11:40,967 あなたを あそこへお届けするのです。 131 00:11:40,967 --> 00:11:43,436 そ… それは どういうことなんだ? 132 00:11:43,436 --> 00:11:51,311 あなたの心臓を切り取り 月の精霊に 犠牲として ささげるのです。 133 00:11:51,311 --> 00:11:54,447 何だって? 134 00:11:54,447 --> 00:12:00,753 古来より 太陽に いけにえをささげる宗教は存在した。 135 00:12:00,753 --> 00:12:05,391 昼間だけ働いていた頃は それでよかったのです。 136 00:12:05,391 --> 00:12:10,930 だが… 今では 人間は 夜も活動するようになった。 137 00:12:10,930 --> 00:12:17,804 だから 月に対しても それをすべきだと。 そのような考え方から➡ 138 00:12:17,804 --> 00:12:20,640 この宗教は出来たのです。 139 00:12:20,640 --> 00:12:24,277 それが 今から89年前。 140 00:12:24,277 --> 00:12:30,783 すなわち あなたは 89人目の犠牲というわけです。 141 00:12:33,620 --> 00:12:36,422 正気の沙汰じゃない…。 142 00:12:36,422 --> 00:12:44,631 ですから 思い残すことがないよう 普通の人が一生味わう以上に➡ 143 00:12:44,631 --> 00:12:51,304 十分 楽しませてさしあげたのです。 144 00:12:51,304 --> 00:12:54,974 そして 信者は功徳を積もうと➡ 145 00:12:54,974 --> 00:13:00,747 1年間にわたって あなたに尽くしたのです。 146 00:13:00,747 --> 00:13:03,583 何だって? 147 00:13:03,583 --> 00:13:09,789 <まだ2か月だと言おうとしたが… もう声にはならなかった> 148 00:13:14,093 --> 00:13:17,130 た… すけてくれ…。 149 00:13:17,130 --> 00:14:01,908 ♬~ 150 00:14:01,908 --> 00:14:06,746 <僕は 順風満帆な人生ではなかった。➡ 151 00:14:06,746 --> 00:14:09,649 仕事やプライベートでも うまくいかず➡ 152 00:14:09,649 --> 00:14:13,252 自殺を考えたことも 一度や二度では済まない> 153 00:14:13,252 --> 00:14:16,089 (剣を引き抜く音) 154 00:14:16,089 --> 00:14:22,962 <つまり 生きていく価値のない どうしようもない人間だった。➡ 155 00:14:22,962 --> 00:14:25,164 あの時までは> 156 00:14:34,941 --> 00:14:57,230 ♬~