1 00:00:33,252 --> 00:00:43,295 ♬~(テーマ曲) 2 00:00:43,295 --> 00:00:52,295 ♬~ 3 00:01:42,621 --> 00:01:48,227 (マサ)<有森家に斉藤先生という 下宿人が やって来ました。➡ 4 00:01:48,227 --> 00:01:50,963 ちょっと変わった先生です> 5 00:01:50,963 --> 00:01:53,632 (斉藤)私 第二師範で 物理を教えてるんです。 6 00:01:53,632 --> 00:01:57,236 斉藤直道といいます。 まっすぐな道と書いて直道です。 7 00:01:57,236 --> 00:02:01,290 (磯)わ~ ハハハハ! 8 00:02:01,290 --> 00:02:13,953 コギト・エルゴ・スム… コギト・エルゴ・スム コギト・エルゴ・スム…。 9 00:02:13,953 --> 00:02:18,574 (桜子)あっ 先生 大丈夫ですか!? あっ お気遣いなく。 10 00:02:18,574 --> 00:02:21,293 よくある事ですから。 はあ…。 11 00:02:21,293 --> 00:02:24,563 何を読んどらしたんですか? 12 00:02:24,563 --> 00:02:27,566 デカルトです。 デカルト。 13 00:02:27,566 --> 00:02:34,573 「我思う。 故に我あり」。 万物の存在を疑う事は できても➡ 14 00:02:34,573 --> 00:02:37,960 今 その事に思いを巡らせている 自分の存在は➡ 15 00:02:37,960 --> 00:02:39,962 疑えないという事です。➡ 16 00:02:39,962 --> 00:02:42,231 だけど この僕が 今 生きてなければ➡ 17 00:02:42,231 --> 00:02:44,633 思想も へったくれも ありません。 18 00:02:44,633 --> 00:02:48,570 「我あり。 故に 我思う」が 正しいんじゃないでしょうか? 19 00:02:48,570 --> 00:02:51,957 違うでしょうか? どうでしょう? 20 00:02:51,957 --> 00:02:55,657 う~ん。 分からない。 21 00:02:57,630 --> 00:03:02,635 先生。 はい? 足袋に穴が。 22 00:03:02,635 --> 00:03:05,304 ああ。 このくらいだったら 目立たないかな~と➡ 23 00:03:05,304 --> 00:03:08,324 思ったんですが やっぱり目立ちますか? 24 00:03:08,324 --> 00:03:10,326 (磯)あら! 25 00:03:10,326 --> 00:03:14,563 先生 どうなさったんですか? その足袋! はあ。 あの…。 26 00:03:14,563 --> 00:03:17,566 脱いで下さいな。 穴を かがって 洗濯しときますから。 27 00:03:17,566 --> 00:03:19,568 あ それは ちょっと いくら何でも申し訳ない。 28 00:03:19,568 --> 00:03:22,304 ご遠慮なさらないで 水くさい! 29 00:03:22,304 --> 00:03:25,958 あ ほかにもね 洗濯する物が あったらね 出して下さい! 30 00:03:25,958 --> 00:03:29,295 ふんどしでも 何でも! ふ… ふんどしですか!? 31 00:03:29,295 --> 00:03:34,295 はあ… 臭… こっちも…。 32 00:03:38,637 --> 00:03:40,937 はい。 33 00:03:44,243 --> 00:03:46,295 よく触れるね。 34 00:03:46,295 --> 00:03:48,647 何日履いたか分からん 先生の足袋。 35 00:03:48,647 --> 00:03:52,301 何を言うとるの 桜ちゃん。 あんたも結婚したら➡ 36 00:03:52,301 --> 00:03:54,286 亭主の足袋だろうが ふんどしだろうが➡ 37 00:03:54,286 --> 00:03:56,622 何でも洗うのが 当たり前だらあが。 38 00:03:56,622 --> 00:03:58,624 そういう事じゃなくて。 39 00:03:58,624 --> 00:04:01,643 (勇太郎)あの先生 銭湯に行くの 1週間に 一遍らしいよ。 40 00:04:01,643 --> 00:04:03,896 銭湯に行く時間とお金が 惜しいんだって。 41 00:04:03,896 --> 00:04:09,585 やっぱし! 斉藤先生 御飯の直前まで本読んでるだらあ。 42 00:04:09,585 --> 00:04:11,970 この間 後ろから のぞいたら➡ 43 00:04:11,970 --> 00:04:14,957 ページの間に フケが いっぱいたまっとったよ。 44 00:04:14,957 --> 00:04:17,226 (笛子)ふんと それ? ふんと ふんと! 45 00:04:17,226 --> 00:04:19,228 いいじゃんねえ。 46 00:04:19,228 --> 00:04:21,230 学問一筋って感じで 真面目そうで。 47 00:04:21,230 --> 00:04:25,234 あの先生 ああ見えてね 案外 もてるかもしれんよ~。 48 00:04:25,234 --> 00:04:29,988 どっちでも いいじゃん。 あら? ホントに どっちでもええの? 49 00:04:29,988 --> 00:04:33,559 あんな 頼りなさそうな人 好みじゃないよ 私は。 50 00:04:33,559 --> 00:04:37,563 あら! 結婚するんだったら ああいう人が いいのよ。 51 00:04:37,563 --> 00:04:41,900 優しそうだし うちの仕事は 手伝ってくれそうだし。 52 00:04:41,900 --> 00:04:45,621 私は 結婚なんて 勇太郎が大学に入るまでは…。 53 00:04:45,621 --> 00:04:48,290 あっという間に 年 取ってしまうのよ 女は。 54 00:04:48,290 --> 00:04:52,628 あっ! 笛ちゃん あんた もしかしたら 面食いか? 55 00:04:52,628 --> 00:04:55,898 叔母さん! フフッ。 あ 先生に聞いてみようか? 56 00:04:55,898 --> 00:04:58,901 「いい人は おらっしゃるのか」 「許婚は おらっしゃるのか」って。 57 00:04:58,901 --> 00:05:01,236 もう やめてよ もう! え~? ウフフ。 58 00:05:01,236 --> 00:05:04,623 あの~ すいません。 お言葉に甘えて。 59 00:05:04,623 --> 00:05:09,294 これなんですけど 袖の所が 綻びちゃって…。 60 00:05:09,294 --> 00:05:12,231 やっぱりいいです 自分で…。 あ~ 先生 先生! 61 00:05:12,231 --> 00:05:14,299 ほら 笛ちゃん 見てさしあげて。 62 00:05:14,299 --> 00:05:18,303 あ… あ~ あの 綻びって どこですか? 63 00:05:18,303 --> 00:05:21,957 ここなんですけど…。 64 00:05:21,957 --> 00:05:27,296 こんぐらいなら すぐ直りますで。 65 00:05:27,296 --> 00:05:29,314 ホホホホ…。 66 00:05:29,314 --> 00:05:31,633 「好みじゃない」って 言っとったよなあ…。 67 00:05:31,633 --> 00:05:33,933 あ~ ハハハハ! 68 00:05:45,631 --> 00:05:48,300 [ 回想 ] (公麿)東光音楽学校。 69 00:05:48,300 --> 00:05:51,600 僕は そこのピアノ科で 教えています。 70 00:05:55,557 --> 00:05:59,561 <下宿人が来て 家の中は ざわついていましたが➡ 71 00:05:59,561 --> 00:06:04,633 このころの桜子の関心は 一にも 二にも 音楽。➡ 72 00:06:04,633 --> 00:06:07,302 そして ピアノの事でした。➡ 73 00:06:07,302 --> 00:06:10,289 何としても 音楽学校に受かりたい。➡ 74 00:06:10,289 --> 00:06:16,228 笛子の反対にもかかわらず そう思っていたのです> 75 00:06:16,228 --> 00:06:22,251 ♬~(ピアノ) 76 00:06:22,251 --> 00:06:25,237 あっ すみません。 ご迷惑でしたか? 77 00:06:25,237 --> 00:06:28,957 うちで練習しとると 姉が いい顔を しいへんので。 78 00:06:28,957 --> 00:06:31,657 今 片づけます。 79 00:06:38,967 --> 00:06:41,236 (西野)ここのところの左手が遅い。 80 00:06:41,236 --> 00:06:47,960 ドとレの距離を 体に覚え込ませるのよ。 こうよ。 81 00:06:47,960 --> 00:06:51,296 ♬~(ピアノ) 82 00:06:51,296 --> 00:06:55,300 へえ~! それと 強く弾くのはいいけど➡ 83 00:06:55,300 --> 00:06:59,621 もっと注意深く あの…。 自分の音に耳を澄まして。 84 00:06:59,621 --> 00:07:04,893 去年の東光音楽学校の課題曲 ベートーベンのピアノソナタです。 85 00:07:04,893 --> 00:07:07,963 3日後にテストします。 えっ? 86 00:07:07,963 --> 00:07:11,233 模擬試験のつもりで 練習してきなさい。 87 00:07:11,233 --> 00:07:14,953 先生! 88 00:07:14,953 --> 00:07:17,956 指導して下さるんですか? 89 00:07:17,956 --> 00:07:20,559 模擬試験の結果次第です。 90 00:07:20,559 --> 00:07:25,230 合格の見込みのない人は 指導してもしかたありませんから。 91 00:07:25,230 --> 00:07:34,623 ♬~ 92 00:07:34,623 --> 00:07:39,628 <頼みの綱の西野先生から 指導を受けられるかどうかで➡ 93 00:07:39,628 --> 00:07:44,583 憧れの音楽学校に行けるか どうかも 決まってきます> 94 00:07:44,583 --> 00:07:47,636 ♬~ 95 00:07:47,636 --> 00:07:52,908 <初めて弾く ベートーベンのソナタは 桜子にとっては難曲でしたが➡ 96 00:07:52,908 --> 00:07:57,579 ここで諦める訳には いきませんでした> 97 00:07:57,579 --> 00:08:07,289 ♬~ 98 00:08:07,289 --> 00:08:13,629 <そして 試験の日が いよいよ明日に 迫りました> 99 00:08:13,629 --> 00:08:22,287 ♬~(ピアノソナタ) 100 00:08:22,287 --> 00:08:25,557 随分 熱心ですね 桜子さん。 101 00:08:25,557 --> 00:08:29,294 すみませんね。 勉強の邪魔でしょう。 102 00:08:29,294 --> 00:08:33,332 僕は 構いませんけど… この2日間 籠もりきりで➡ 103 00:08:33,332 --> 00:08:35,901 体 壊さないか ちょっと 心配です。 104 00:08:35,901 --> 00:08:41,573 やめさせてきます。 えっ! 105 00:08:41,573 --> 00:08:44,559 ♬~(ピアノソナタ) 106 00:08:44,559 --> 00:08:46,628 あの… いいですよ。 107 00:08:46,628 --> 00:08:48,630 僕は そんなつもりで 言ったんじゃないですから。 108 00:08:48,630 --> 00:08:52,901 桜ちゃん あんたの下手なピアノで みんなが迷惑しとるの。 109 00:08:52,901 --> 00:08:57,956 もう やめてちょうだい! 僕は別に 迷惑してませんから。 110 00:08:57,956 --> 00:09:01,226 いい加減にしなさい! やめてよ! 111 00:09:01,226 --> 00:09:03,962 これ 西野先生の…。 112 00:09:03,962 --> 00:09:06,231 私が 西野先生に 指導 お願いしたで。 113 00:09:06,231 --> 00:09:09,968 課題曲の模擬試験が 明日なんだで。 114 00:09:09,968 --> 00:09:14,239 桜子。 お姉ちゃん 何度も言っとるよね。 115 00:09:14,239 --> 00:09:18,577 「あんたを音楽学校に行かせる 余裕は うちにはない」って。 116 00:09:18,577 --> 00:09:22,297 何で そんなに諦めが悪いの!? 117 00:09:22,297 --> 00:09:27,297 お父さんが応援してくれとるから。 118 00:09:53,228 --> 00:09:58,300 (源一郎)「東京の音楽學校のこと いつか君が 言いだすだらうと➡ 119 00:09:58,300 --> 00:10:00,919 思ってゐました。 しっかりやって下さい。➡ 120 00:10:00,919 --> 00:10:04,239 君なら だいじょうぶ」。 121 00:10:04,239 --> 00:10:07,959 ♬~ 122 00:10:07,959 --> 00:10:13,582 このピアノに向かっとると お父さんが まだ そばにおって➡ 123 00:10:13,582 --> 00:10:16,902 見とってくれるような 気持ちになるで。 124 00:10:16,902 --> 00:10:23,241 だで私は お姉ちゃんに 何て言われても 諦めん! 125 00:10:23,241 --> 00:10:32,250 ♬~ 126 00:10:32,250 --> 00:10:34,970 現実を見なさい。 127 00:10:34,970 --> 00:10:42,577 あんたが諦めたあなくても 無理なものは無理なんだで。 128 00:10:42,577 --> 00:10:45,964 ♬~ 129 00:10:45,964 --> 00:10:48,967 (磯)桜ちゃん どこ行くの! 130 00:10:48,967 --> 00:10:57,626 ♬~ 131 00:10:57,626 --> 00:11:04,232 <その夜 桜子は 家に帰りませんでした> 132 00:11:04,232 --> 00:11:11,232 ♬~ 133 00:11:18,296 --> 00:11:20,996 ≪(物音) 134 00:11:23,301 --> 00:11:37,301 ≪(物音) 135 00:11:39,901 --> 00:11:44,601 タ~! イヤ~! うう… はあ…。 136 00:11:50,896 --> 00:11:55,300 ああ…。 す… すいませんでした。 137 00:11:55,300 --> 00:11:59,971 起きてたら おなか 減っちゃって。 お夕食の残りの御飯…。 138 00:11:59,971 --> 00:12:04,893 あ~ すいません! どんどん 召し上がって下さい。 139 00:12:04,893 --> 00:12:09,193 夏は 物が腐るのが早いで 気を付けて。 140 00:12:12,901 --> 00:12:16,905 桜子さん 帰ってこないですね。 141 00:12:16,905 --> 00:12:21,605 ほっといて下さい。 あんな わがままな子。 142 00:12:25,297 --> 00:12:29,597 すいません。 ごゆっくり…。 143 00:12:46,635 --> 00:12:49,955 <そのころ 桜子は➡ 144 00:12:49,955 --> 00:12:56,661 夜の学校で ベートーベンのピアノソナタを 必死に 練習していました> 145 00:12:56,661 --> 00:13:00,961 ♬~(ピアノソナタ) 146 00:13:04,236 --> 00:13:07,622 ≪(物音) 147 00:13:07,622 --> 00:13:12,227 先生! 差し入れ 持ってきました。 148 00:13:12,227 --> 00:13:15,964 台所の余り物で 作ってみました。 149 00:13:15,964 --> 00:13:21,570 わあ… ありがとうございます! いつも おいしい お食事を➡ 150 00:13:21,570 --> 00:13:24,956 作って頂いてるので そのお礼です。 151 00:13:24,956 --> 00:13:28,293 ホントに おいしいですか? うちの御飯。 はっ? 152 00:13:28,293 --> 00:13:32,297 いや 私も笛姉ちゃんも 料理 あんまし得意じゃないで➡ 153 00:13:32,297 --> 00:13:34,566 お口に合うかなって いつも 思っとったんです。 154 00:13:34,566 --> 00:13:36,635 おいしいですよ。 155 00:13:36,635 --> 00:13:38,987 もったいないような ぜいたくな献立だし。 156 00:13:38,987 --> 00:13:42,290 うちの実家なんて 漬物に味噌汁だけの夕食が➡ 157 00:13:42,290 --> 00:13:44,559 しょっちゅうでしたから。 そうですか。 158 00:13:44,559 --> 00:13:49,247 うちは早くに父が死んで 母が お針子をしながら➡ 159 00:13:49,247 --> 00:13:51,967 僕を 大学まで行かせてくれたんです。 160 00:13:51,967 --> 00:13:55,236 親子で ホントに 切り詰めた生活をしてました。 161 00:13:55,236 --> 00:13:58,573 ですから 今も 少しでも ぜいたくすると➡ 162 00:13:58,573 --> 00:14:00,959 母に 悪いような気分に なるんです。 163 00:14:00,959 --> 00:14:04,963 それで 銭湯は7日に1回? えっ? 164 00:14:04,963 --> 00:14:08,300 あっ 何でもないです! 165 00:14:08,300 --> 00:14:11,600 頂きます。 166 00:14:13,305 --> 00:14:18,560 う~ん! おいしい! タラコですね。 167 00:14:18,560 --> 00:14:21,896 タラコは 好きですか? はい! 168 00:14:21,896 --> 00:14:26,568 音楽学校 行きたいんですって? はい。 169 00:14:26,568 --> 00:14:28,637 いいですね。 170 00:14:28,637 --> 00:14:31,957 人間 志があれば なんとかなるもんですよ。 171 00:14:31,957 --> 00:14:35,577 頑張って下さい! はい! 172 00:14:35,577 --> 00:15:06,624 ♬~ 173 00:15:06,624 --> 00:15:13,631 <西野先生の試験は あと数時間後に迫っていました> 174 00:15:13,631 --> 00:15:24,931 ♬~ 175 00:15:33,218 --> 00:15:38,990 ♬~ 176 00:15:38,990 --> 00:15:41,893 (大吉)はい駄目 それ駄目! 盗んじゃ駄目! 177 00:15:41,893 --> 00:15:43,912 はい返して。 すいません。 178 00:15:43,912 --> 00:15:46,114 (夏)<ミス北鉄の ユイちゃんのおかげで➡ 179 00:15:46,114 --> 00:15:51,519 観光客が 一気に増えました> 180 00:15:51,519 --> 00:15:54,255 はい いらっしゃいませ! いらっしゃいませ! 181 00:15:54,255 --> 00:15:59,444 <その人気は 袖が浜にも 飛び火して➡