1 00:00:34,081 --> 00:00:44,074 ♬~(テーマ曲) 2 00:00:44,074 --> 00:00:53,074 ♬~ 3 00:01:44,418 --> 00:01:47,118 (杏子)ごゆっくり。 4 00:01:54,411 --> 00:01:57,711 お父ちゃんの仕事場 行ってようね さっちゃん。 5 00:02:07,758 --> 00:02:14,081 (達彦)あのな。 (桜子)うん。 6 00:02:14,081 --> 00:02:18,085 考えてみれば こうやって ゆっくり 向かい合って話す間➡ 7 00:02:18,085 --> 00:02:25,359 なかったよな? 今まで。 ほだね。 ほうかもしれんね。 8 00:02:25,359 --> 00:02:30,080 今更だけど 本当に ありがとう。 おふくろの事。 9 00:02:30,080 --> 00:02:35,018 私にとっても 大事なお母さんだった。 10 00:02:35,018 --> 00:02:38,756 この年になって お母さんって 呼べる人が できた事➡ 11 00:02:38,756 --> 00:02:41,408 うれしかった。 12 00:02:41,408 --> 00:02:43,708 ありがとう。 13 00:02:46,029 --> 00:02:49,750 6年っていえば 大変な歳月だもんな。 14 00:02:49,750 --> 00:02:56,073 それまで ずっと 音信不通で 一度は 遺書まで届いたんだ。 15 00:02:56,073 --> 00:02:58,408 気持ちが ぐらついたり➡ 16 00:02:58,408 --> 00:03:01,108 変わったりしても 不思議じゃないのに…。 17 00:03:02,679 --> 00:03:07,367 お前は ずっと 俺の事を思って 耐えてきてくれたんだな。 18 00:03:07,367 --> 00:03:09,753 ♬~ 19 00:03:09,753 --> 00:03:15,025 有森… 俺…。 ちょっと待って。 20 00:03:15,025 --> 00:03:17,744 ♬~ 21 00:03:17,744 --> 00:03:22,349 達彦さん。 見せたいものがあるの。 22 00:03:22,349 --> 00:03:25,035 ちょっと 来てもらえる? 23 00:03:25,035 --> 00:03:39,750 ♬~ 24 00:03:39,750 --> 00:03:43,687 これ書いたの 覚えとる? 25 00:03:43,687 --> 00:03:48,408 ♬~ 26 00:03:48,408 --> 00:03:56,416 覚えとるよ。 激戦で負傷して 死を覚悟した時に 書いたもんだ。 27 00:03:56,416 --> 00:04:04,441 「君が音楽を忘れない限り 僕は 君の中に生き続ける。➡ 28 00:04:04,441 --> 00:04:06,693 そう信じている」。 29 00:04:06,693 --> 00:04:09,079 ♬~ 30 00:04:09,079 --> 00:04:12,749 私 何度も読み返した。 31 00:04:12,749 --> 00:04:17,087 音楽を忘れないように しようと思って頑張った。 32 00:04:17,087 --> 00:04:20,424 出征する時にも 達彦さん 言っとったもんね。 33 00:04:20,424 --> 00:04:24,027 「音楽を忘れるな」って。 34 00:04:24,027 --> 00:04:26,363 ああ。 35 00:04:26,363 --> 00:04:28,415 ♬~ 36 00:04:28,415 --> 00:04:33,420 秋山さんに教わって 編曲の勉強もした。 37 00:04:33,420 --> 00:04:36,757 作曲もしてみた。 38 00:04:36,757 --> 00:04:46,016 少ししかないけど 一つ一つが 思い出の染み込んだ曲なんだ。 39 00:04:46,016 --> 00:04:53,016 ♬~ 40 00:04:59,012 --> 00:05:01,682 達彦さん。 41 00:05:01,682 --> 00:05:06,687 私 達彦さんの前では 正直でおりたい。 42 00:05:06,687 --> 00:05:09,089 うん。 43 00:05:09,089 --> 00:05:13,026 その曲はね…。 44 00:05:13,026 --> 00:05:16,697 ≪(笛子)桜子! 桜子 おる?➡ 45 00:05:16,697 --> 00:05:19,349 桜子? 早く 出てきなさい! 46 00:05:19,349 --> 00:05:21,752 笛姉ちゃんだ。 47 00:05:21,752 --> 00:05:25,756 (浩樹)お姉さん お久しぶりです。 どうしたの? お姉ちゃん。 48 00:05:25,756 --> 00:05:30,027 お姉ちゃん。 冬吾を出しなさい。 49 00:05:30,027 --> 00:05:32,412 えっ? 50 00:05:32,412 --> 00:05:36,416 あんたが かくまっとるだら? 分かっとるよ!➡ 51 00:05:36,416 --> 00:05:40,420 画商の吉田さんから 連絡もらって 飛んできたんだ。 52 00:05:40,420 --> 00:05:43,357 冬吾がいなくなったら 困るのは 分かっとるだら? 53 00:05:43,357 --> 00:05:46,410 何で ひと言 連絡よこさんの? 54 00:05:46,410 --> 00:05:51,415 冬吾さんに 口止めされたで。 口止め? 55 00:05:51,415 --> 00:05:54,017 まあ お姉ちゃん とりあえず 座ってよ。 56 00:05:54,017 --> 00:05:56,370 ≪(冬吾)ただいま~。 57 00:05:56,370 --> 00:06:07,014 ♬~ 58 00:06:07,014 --> 00:06:10,751 冬吾。 59 00:06:10,751 --> 00:06:13,353 冬吾! 60 00:06:13,353 --> 00:06:25,353 ♬~ 61 00:06:28,752 --> 00:06:32,052 ごめんね。 待っとって。 62 00:06:43,083 --> 00:06:46,083 ≪(杏子)まあ お茶でも どうぞ。 63 00:06:48,422 --> 00:06:51,742 ≪(浩樹)俺は 幸の様子 見に行ってくるわ。 64 00:06:51,742 --> 00:06:54,042 (杏子)ほうして下さい。 65 00:07:04,688 --> 00:07:07,688 何で 逃げたんですか? 66 00:07:14,014 --> 00:07:18,351 何で よりによって ここに隠れとるんですか! 67 00:07:18,351 --> 00:07:21,755 んだから お前は すぐに そうやって ケンカ腰になるから➡ 68 00:07:21,755 --> 00:07:23,774 しゃべろうとしたって しゃべれねえべ。 69 00:07:23,774 --> 00:07:28,011 私が悪いって 言うんですか? 逃げたのは 俺が悪い。 70 00:07:28,011 --> 00:07:32,082 んだども 笛子。 もう少し 俺の身になって 考えてけれじゃ。 71 00:07:32,082 --> 00:07:35,085 私は いつだって 考えとるじゃないですか。 72 00:07:35,085 --> 00:07:38,355 あなたの事や あなたの絵の事を! 73 00:07:38,355 --> 00:07:41,358 嘘こけ! 俺の絵の事を お前が どう考えてるっつうんだ? 74 00:07:41,358 --> 00:07:46,346 考えてますよ! んでねえ。 ちっとも考えてねえ! 75 00:07:46,346 --> 00:07:49,082 今 俺の絵に 群がってくる連中➡ 76 00:07:49,082 --> 00:07:52,352 あの連中は 俺の絵に 興味なんかねえんだ! 77 00:07:52,352 --> 00:07:55,355 訳の分からねえ 今どきの時流に乗って➡ 78 00:07:55,355 --> 00:07:58,358 俺の絵の値段が たまたま 上がったはんで➡ 79 00:07:58,358 --> 00:08:02,345 あいつら もうけるために 俺に 群がってくるだけだ。 80 00:08:02,345 --> 00:08:04,514 杉 冬吾の署名さえ ついてれば➡ 81 00:08:04,514 --> 00:08:07,084 描いてあるのが 鍋だろうが ヤカンだろうが➡ 82 00:08:07,084 --> 00:08:09,086 あいつらには 同じなんだ! 83 00:08:09,086 --> 00:08:11,421 あの人達は あんたの事 「天才だ」って 言っとるわ。 84 00:08:11,421 --> 00:08:16,076 あんたの才能を認めとる ありがたい人達だよ。 85 00:08:16,076 --> 00:08:18,411 そうしゃべれば 俺が あいつらのために➡ 86 00:08:18,411 --> 00:08:20,413 絵を描くと思うから そう しゃべるんだ。 87 00:08:20,413 --> 00:08:23,413 何で お前には その事が 分からねえんだ!? 88 00:08:25,085 --> 00:08:30,690 お前は もう 絵の注文 取ってくるのは やめれ。 89 00:08:30,690 --> 00:08:33,677 俺は 描きたいように描ぐはんで。 90 00:08:33,677 --> 00:08:36,113 駄目です。 91 00:08:36,113 --> 00:08:39,116 だって あんた ほっといたら➡ 92 00:08:39,116 --> 00:08:42,752 私らの生活の事 ちっとも 考えてくれとらんじゃん。➡ 93 00:08:42,752 --> 00:08:45,689 私が 窓口になっとるからこそ➡ 94 00:08:45,689 --> 00:08:49,075 あんたの絵が売れて 家計が回っとるんだよ。 95 00:08:49,075 --> 00:08:53,013 んだば もう少し 手加減してけれじゃ。 96 00:08:53,013 --> 00:08:59,313 俺は もう 疲れた。 限界だはんで。 97 00:09:03,690 --> 00:09:10,030 笛姉ちゃん。 冬吾さんの気持ちも 分かってあげて。 98 00:09:10,030 --> 00:09:12,082 いっくら 絵が好きでも➡ 99 00:09:12,082 --> 00:09:14,084 自分の絵のよしあしも 分からん人のために➡ 100 00:09:14,084 --> 00:09:18,084 次々に 描かされるのは 芸術家として きついと思う。 101 00:09:20,690 --> 00:09:25,011 絵のよしあしが分からん人? 102 00:09:25,011 --> 00:09:28,415 ほうだよね。 103 00:09:28,415 --> 00:09:36,072 世の中には 芸術の分からん バカな人が いっぱい おるもんね。 104 00:09:36,072 --> 00:09:40,410 桜子。 あんたは 私も その一人だと思っとるだら? 105 00:09:40,410 --> 00:09:42,412 そんな事 思っとらんよ。 106 00:09:42,412 --> 00:09:47,033 私は 私なりに ちょっとでも 冬吾の役に立とうと思って➡ 107 00:09:47,033 --> 00:09:49,419 がむしゃらに 頑張ってきたんだ。 108 00:09:49,419 --> 00:09:54,407 だのに 何よ。 冬吾。 あんただって そうだ。 109 00:09:54,407 --> 00:09:58,345 あんたも 胸の中じゃ 思っとるだら? 110 00:09:58,345 --> 00:10:01,014 「自分の絵の価値は 笛子には 分からん。➡ 111 00:10:01,014 --> 00:10:04,017 何よりも 自分の事が分かるのは 桜子だ」って。 112 00:10:04,017 --> 00:10:07,017 お姉ちゃん。 (冬吾)笛子。 113 00:10:08,688 --> 00:10:10,988 知っとったよ。 114 00:10:12,692 --> 00:10:20,033 あんたら 心の奥底では 通じ合っとるもんね。 115 00:10:20,033 --> 00:10:23,420 私の分からない 冬吾の心の中も➡ 116 00:10:23,420 --> 00:10:27,374 桜子 あんたには 分かっとるだら!? 117 00:10:27,374 --> 00:10:29,743 ♬~ 118 00:10:29,743 --> 00:10:33,680 ≪大体 あんた 私が冬吾と知り合う前から➡ 119 00:10:33,680 --> 00:10:36,750 大の仲良しだったもんね。 120 00:10:36,750 --> 00:10:41,087 私と冬吾 結婚するのも あんなに 賛成したのも➡ 121 00:10:41,087 --> 00:10:46,092 大好きな冬吾と 家族になるのが うれしかったからだら? 122 00:10:46,092 --> 00:10:51,364 そんぐらいなら 何で あんたが この人と結婚しなかったの!? 123 00:10:51,364 --> 00:10:54,417 冬吾 あんただって そうだ。 124 00:10:54,417 --> 00:10:57,420 2人とも いっそ そうしたら よかったじゃんね。 お姉ちゃん。 125 00:10:57,420 --> 00:10:59,406 お姉ちゃん。 いくら何でも 言い過ぎだよ。 126 00:10:59,406 --> 00:11:04,411 そんな昔の話 言いださんでも。 昔の事じゃないよ。➡ 127 00:11:04,411 --> 00:11:09,015 ちっとも 昔の事なんかじゃない! 128 00:11:09,015 --> 00:11:11,685 私は 知っとる。 129 00:11:11,685 --> 00:11:16,072 桜子。 私らが 去年 津軽に行く前に➡ 130 00:11:16,072 --> 00:11:22,012 「Tに捧ぐ」っちゅう曲 書いとっただら?➡ 131 00:11:22,012 --> 00:11:28,685 私には 分かっとる。 あれが 誰のために書いた曲か。 132 00:11:28,685 --> 00:11:33,690 あの 「T」っちゅうのが 誰の事かもね。 133 00:11:33,690 --> 00:11:36,076 ♬~ 134 00:11:36,076 --> 00:11:40,030 今 持ってきてやるから。 お姉ちゃん。 135 00:11:40,030 --> 00:11:45,030 ♬~ 136 00:11:52,042 --> 00:11:55,028 達彦さん…。 137 00:11:55,028 --> 00:11:57,080 すみません。 138 00:11:57,080 --> 00:12:01,685 何か 話 聞いてるうちに 出ていきそびれちゃって…。 139 00:12:01,685 --> 00:12:07,374 生きて… 帰っとられたんですか? 140 00:12:07,374 --> 00:12:12,412 はい。 あの…。 141 00:12:12,412 --> 00:12:17,083 ごめんなさい。 私 ちっとも 知らなかったもんで…。 142 00:12:17,083 --> 00:12:22,383 いえ。 あの… これ。 143 00:12:48,748 --> 00:12:51,017 (ため息) 144 00:12:51,017 --> 00:12:56,356 「T」。 「T」って 達彦さんの事だわよね? 145 00:12:56,356 --> 00:13:03,747 あっ! 「T」って… ああ 徳治郎! おじいちゃんの事かもしれんね。➡ 146 00:13:03,747 --> 00:13:07,517 ああ! 亨も おるわ。 うちの家族って 「T」が多いね。 147 00:13:07,517 --> 00:13:11,317 きっと 全員の事かもね。 違うよ。 148 00:13:15,742 --> 00:13:18,742 冬吾さんの事だよ。 149 00:13:21,114 --> 00:13:25,351 達彦さんに 隠すつもりは なかった。 150 00:13:25,351 --> 00:13:29,355 さっき 「この6年間 どんなふうに➡ 151 00:13:29,355 --> 00:13:31,741 暮らしてきたんだ?」って 聞かれて➡ 152 00:13:31,741 --> 00:13:35,745 私 この事は 話しとかんと いかんって思った。 153 00:13:35,745 --> 00:13:41,017 ちゃんと話して 分かってもらおうと思った。 154 00:13:41,017 --> 00:13:44,020 そうか…。 155 00:13:44,020 --> 00:13:46,022 ちょうど1年前➡ 156 00:13:46,022 --> 00:13:50,693 付きっきりで看病しとった 達彦さんのお母さんが亡くなった。 157 00:13:50,693 --> 00:13:56,082 達彦さんの事も あの遺書が届いて➡ 158 00:13:56,082 --> 00:14:00,086 私 一度は 「もう駄目かもしれん」って思った。 159 00:14:00,086 --> 00:14:04,424 大好きなピアノにも 触りたくないくらい➡ 160 00:14:04,424 --> 00:14:13,399 寂しくて きつくて 心の支えが 欲しくて たまらん時に…。 161 00:14:13,399 --> 00:14:16,085 ♬~ 162 00:14:16,085 --> 00:14:20,039 冬吾さんが そばに おってくれた。 163 00:14:20,039 --> 00:14:23,443 ♬~ 164 00:14:23,443 --> 00:14:30,350 冬吾さんは… どん底にいた私を 支えてくれた。 165 00:14:30,350 --> 00:14:37,090 ♬~ 166 00:14:37,090 --> 00:14:40,076 [ 回想 ] (冬吾)「私の人生は どこにある?」って➡ 167 00:14:40,076 --> 00:14:44,080 ちゃ~んと ここにあるんでねえか? 168 00:14:44,080 --> 00:14:47,350 もし あの時 冬吾さんが そばにおらんかったら➡ 169 00:14:47,350 --> 00:14:51,020 私は 前を向いて 生きていけただろうか? 170 00:14:51,020 --> 00:14:54,691 音楽を続けていけただろうか? 171 00:14:54,691 --> 00:14:59,078 ♬~ 172 00:14:59,078 --> 00:15:03,032 生きてけなかったじゃないかと 思う。 173 00:15:03,032 --> 00:15:06,753 ♬~ 174 00:15:06,753 --> 00:15:14,077 冬吾さんに 私は 助けられた。 175 00:15:14,077 --> 00:15:17,413 (マサ)<桜子と達彦。➡ 176 00:15:17,413 --> 00:15:23,713 離れ離れの長い年月を埋めようと 向き合っていました> 177 00:15:34,013 --> 00:15:36,516 (春子)<2012年3月。➡ 178 00:15:36,516 --> 00:15:40,016 あの日から 1年がたちました> 179 00:15:44,290 --> 00:15:48,177 (アキ)あれ!? (夏)何だ? アキ。 朝御飯だぞ。 180 00:15:48,177 --> 00:15:51,681 じいちゃんって いつから帰ってきてねえ? 181 00:15:51,681 --> 00:15:55,184 なあ なあ ばっぱ 震災のあと 帰ってきた? 182 00:15:55,184 --> 00:15:57,687 来てねえべ? 遺影は? 183 00:15:57,687 --> 00:15:59,689 ねえべ! どういう事?