1 00:00:33,505 --> 00:00:42,581 (小鳥の鳴き声) 2 00:00:42,581 --> 00:00:44,516 ♬~ 3 00:00:44,516 --> 00:00:47,216 [ 回想 ] (由蔵)おこんさん 坂崎様が けがを! 4 00:00:49,454 --> 00:00:52,591 (磐音)迷惑をかける。 5 00:00:52,591 --> 00:00:54,526 (おこん)坂崎さん 坂崎さん! 6 00:00:54,526 --> 00:01:12,277 ♬~ 7 00:01:12,277 --> 00:01:17,149 (四出)志乃 遅くなった。 今 行く。 8 00:01:17,149 --> 00:01:27,626 ♬~ 9 00:01:27,626 --> 00:01:31,897 (お佐紀)おこんさん。 …あ あ はい。 10 00:01:31,897 --> 00:01:35,567 どうしたのですか? ぼんやりとして。 11 00:01:35,567 --> 00:01:38,470 申し訳ございません。 何か? 12 00:01:38,470 --> 00:01:42,240 お客様に 鶴屋の米饅頭を頂いたのです。 13 00:01:42,240 --> 00:01:45,143 金兵衛さんに持っていって さしあげて下さいな。 14 00:01:45,143 --> 00:01:49,581 とんでもない 私の父のことなんか お気になさらないで下さい。 15 00:01:49,581 --> 00:01:54,453 ついでと言っては何ですが 坂崎様の様子を 見てきて下さい。 16 00:01:54,453 --> 00:01:58,453 まだ 傷が癒えたばかりです。 お佐紀様…。 17 00:02:00,926 --> 00:02:07,599 ♬~(金兵衛の歌声) 18 00:02:07,599 --> 00:02:12,471 ♬~ 19 00:02:12,471 --> 00:02:16,771 (金兵衛)そこのお人。 坂崎さんに 何か 御用ですかい? 20 00:02:18,944 --> 00:02:21,613 (鶴吉)へい。 ちょいと。 21 00:02:21,613 --> 00:02:25,951 ちょいとじゃ 分からねえ。 こっちは この長屋の大家だ。 22 00:02:25,951 --> 00:02:31,757 何の用があって 長屋に入って きたのかって 聞いてんですがね。 23 00:02:31,757 --> 00:02:35,560 ♬~ 24 00:02:35,560 --> 00:02:37,496 鶴吉殿…。 25 00:02:37,496 --> 00:02:42,234 お久しぶりでございやす。 坂崎の旦那。 26 00:02:42,234 --> 00:02:45,904 え? お知り合いだったんで? はい。 27 00:02:45,904 --> 00:02:50,904 磐音と鶴吉 久方ぶりの再会である。 28 00:02:52,577 --> 00:03:02,577 ♬~(テーマ音楽) 29 00:03:04,189 --> 00:03:07,926 ♬~ 30 00:03:07,926 --> 00:03:13,598 鶴吉は 三味線作りで名高い三味芳 四代目の次男坊であったが➡ 31 00:03:13,598 --> 00:03:19,271 2年前 磐音の助けを借りて 殺された父親の敵をとり➡ 32 00:03:19,271 --> 00:03:22,971 笹塚の配慮で 江戸から 姿を晦ましていた。 33 00:03:25,610 --> 00:03:28,513 すまぬ。 このようなものしかない。 34 00:03:28,513 --> 00:03:33,418 しかし 驚きやした。 旦那が おけがをなすったって。 35 00:03:33,418 --> 00:03:38,190 不覚でござった。 お天道様が 西から昇ったって➡ 36 00:03:38,190 --> 00:03:41,093 ありえねえことが 起きちまったんですから➡ 37 00:03:41,093 --> 00:03:43,895 そりゃ 大家さんだって こんなあっしを見りゃあ➡ 38 00:03:43,895 --> 00:03:47,232 つい 疑いたくなるってもんだ。 39 00:03:47,232 --> 00:03:50,569 お元気になられてよかったと 言いたいとこなんですが…。 40 00:03:50,569 --> 00:03:53,238 あっしが来るのが もう少し早かったら➡ 41 00:03:53,238 --> 00:03:58,110 そんなことは 起こらなかったかもしれねえや。 42 00:03:58,110 --> 00:04:08,587 (盆栽を切る音) 43 00:04:08,587 --> 00:04:13,458 (鳥の鳴き声) 44 00:04:13,458 --> 00:04:15,460 お父っつぁん。 45 00:04:15,460 --> 00:04:37,549 ♬~ 46 00:04:37,549 --> 00:04:40,218 お父っつぁん。 お~ 来たかあ。 47 00:04:40,218 --> 00:04:43,555 はい 鶴屋の米饅頭 お佐紀様から。 48 00:04:43,555 --> 00:04:45,490 お~ ありがとよ。 49 00:04:45,490 --> 00:04:49,190 あっ 坂崎さんなら お客さんだぜ。 誰? 50 00:04:50,896 --> 00:04:54,232 遠州相良…? へえ。 51 00:04:54,232 --> 00:04:57,903 そこに 三味線作りの名人が 隠居してたんで➡ 52 00:04:57,903 --> 00:05:02,774 腰を据えてたんですが… やっぱり 心当たりがおありで。 53 00:05:02,774 --> 00:05:08,246 遠州相良は 老中 田沼意次の城下であった。 54 00:05:08,246 --> 00:05:10,582 ≪ちょうど 1か月前になりやす。➡ 55 00:05:10,582 --> 00:05:14,920 そのご城下で 旦那の名前を 小耳にはさみましてね。 56 00:05:14,920 --> 00:05:17,620 某の…。 へえ…。 57 00:05:19,591 --> 00:05:23,261 その夜は 三味線作りが うまくいかず➡ 58 00:05:23,261 --> 00:05:26,932 海辺で ひっくり返っていたんです。 59 00:05:26,932 --> 00:05:29,835 ≪(竜間)坂崎磐音を葬る? 60 00:05:29,835 --> 00:05:36,541 (風の音) 61 00:05:36,541 --> 00:05:40,879 ≪(雑賀)さよう。 雇った剣客達を 刺客として➡ 62 00:05:40,879 --> 00:05:44,879 江戸に送り込む 手はずをつけておるところ。 63 00:05:46,551 --> 00:05:48,551 刺客は この4人…。 64 00:05:51,223 --> 00:05:56,561 「無外流 四出縄綱 東軍流 木幡闇斎➡ 65 00:05:56,561 --> 00:06:03,435 タイ捨流 河西勝助 二天一流 橘 右馬介」。 66 00:06:03,435 --> 00:06:08,573 坂崎磐音を生かしておくこと 後々 田沼家のためならず。 67 00:06:08,573 --> 00:06:14,446 殿が そう仰せられ この雑賀に 全ての支度を任されたのだ。➡ 68 00:06:14,446 --> 00:06:18,917 この者達の宿の手配 他にも 支度金5百両。 69 00:06:18,917 --> 00:06:24,589 だが 坂崎磐音なる男 一介の浪人者であろう。 70 00:06:24,589 --> 00:06:28,460 そこまでせねばならぬものかのう。 71 00:06:28,460 --> 00:06:30,760 某が 申しておるのではない! 72 00:06:33,398 --> 00:06:35,533 殿の命である。 73 00:06:35,533 --> 00:06:40,205 い… い… 委細承知。 74 00:06:40,205 --> 00:06:45,076 ♬~ 75 00:06:45,076 --> 00:06:49,214 (鶴吉)これが どういうことなのか あっしには 分からねえ。 76 00:06:49,214 --> 00:06:53,551 ただ 旦那の一大事だと思って 江戸に戻ってきたんです。 77 00:06:53,551 --> 00:06:57,889 某を斬ったのは 四出縄綱という浪人でござった。 78 00:06:57,889 --> 00:07:02,589 やっぱり… 4人の刺客のうちの1人ですぜ。 79 00:07:08,233 --> 00:07:11,903 おこんさん。 立ち聞きして すいません。 80 00:07:11,903 --> 00:07:16,775 両替商 今津屋の奥向きを束ねる おこんさんです。 81 00:07:16,775 --> 00:07:21,579 こんでございます。 坂崎さんが お世話になります。 82 00:07:21,579 --> 00:07:25,279 こいつは どうも ご丁寧に。 鶴吉と申しやす。 83 00:07:27,452 --> 00:07:32,524 旦那も 隅に置けねえや。 それじゃ 旦那 あっしはこれで。 84 00:07:32,524 --> 00:07:35,860 あ~ あの 私は すぐ退散しますから。 85 00:07:35,860 --> 00:07:39,731 こちらも ちょいと 旅籠に 人を 待たせてるもんですから はい。 86 00:07:39,731 --> 00:07:43,735 どちらの旅籠ですか? 厩新道の瓢って旅籠で。 87 00:07:43,735 --> 00:07:48,206 もっとも あっしには 三味線作りしか➡ 88 00:07:48,206 --> 00:07:51,109 生きる道はねえってことに つくづく 気づかされましたから。 89 00:07:51,109 --> 00:07:53,878 この江戸でやっていくには いつまでも➡ 90 00:07:53,878 --> 00:07:56,214 旅籠住まいってわけには いかねえや。 91 00:07:56,214 --> 00:08:00,885 三味芳を継ぎますか? さあ どうなることやら。 92 00:08:00,885 --> 00:08:03,185 それじゃ ごめんなすって。 93 00:08:07,559 --> 00:08:11,559 涼しげな人ですね~。 はい。 94 00:08:13,431 --> 00:08:17,131 おこんさん 今の話…? 95 00:08:22,907 --> 00:08:27,907 さっき そういえば そこで 見知らぬお侍を見かけたんだけど。 96 00:08:29,781 --> 00:08:34,185 あっ ううん! なんて顔してるんですか。 97 00:08:34,185 --> 00:08:36,121 私は 平気ですからね。 98 00:08:36,121 --> 00:08:39,057 こんくらいのことで いちいち 驚いてちゃ➡ 99 00:08:39,057 --> 00:08:43,528 坂崎磐音のおそばにいるのは 務まりっこありませんから。 100 00:08:43,528 --> 00:08:45,828 そうでしょ? はい。 101 00:08:48,400 --> 00:08:50,402 ただ…。 102 00:08:50,402 --> 00:08:56,875 ♬~ 103 00:08:56,875 --> 00:09:01,746 私を置いて 死んだりしたら 承知しませんから。 104 00:09:01,746 --> 00:09:04,749 おこんさんを 一人にはしません。 105 00:09:04,749 --> 00:09:06,885 はい 信じてます。 106 00:09:06,885 --> 00:09:26,571 ♬~ 107 00:09:26,571 --> 00:09:34,571 神様… どうぞ 坂崎さんを お守り下さい。 108 00:09:36,181 --> 00:09:38,116 坂崎さんを…。 109 00:09:38,116 --> 00:09:41,519 ♬~ 110 00:09:41,519 --> 00:09:48,393 (泣き声) 111 00:09:48,393 --> 00:09:53,531 どうして こうなるのですか。 どうして? 112 00:09:53,531 --> 00:09:56,831 嫌です。 私 こんなの。 113 00:09:58,403 --> 00:10:03,103 お助け下さいまし。 お願いします。 114 00:10:05,143 --> 00:10:10,882 その頃 磐音の故郷 豊後関前でも ちょっとした騒ぎが起こっていた。 115 00:10:10,882 --> 00:10:15,220 (照埜)どう考えても このお話 私は 不承知でございます。 116 00:10:15,220 --> 00:10:19,090 磐音が 町道場の養子になるなど とんでもないこと。 117 00:10:19,090 --> 00:10:21,090 (正睦)落ち着きなさい。 118 00:10:23,094 --> 00:10:25,563 伊代も 源太郎殿も いかがした。 119 00:10:25,563 --> 00:10:27,499 (伊代) いかがしたでは ありませぬ。 120 00:10:27,499 --> 00:10:29,901 兄上のことを 源太郎様から お聞きし➡ 121 00:10:29,901 --> 00:10:33,571 こうして 参上したのでございます。 122 00:10:33,571 --> 00:10:35,907 (源太郎)お義父上 申し訳ございませぬ。 123 00:10:35,907 --> 00:10:38,576 つい 義兄上からの手紙のことを…。 124 00:10:38,576 --> 00:10:41,479 謝ることなど ございませぬ。 源太郎殿。 125 00:10:41,479 --> 00:10:44,249 磐音が お家のために いかに働いてきたか➡ 126 00:10:44,249 --> 00:10:46,918 家中のどなたもが 存じております。 127 00:10:46,918 --> 00:10:49,587 そうでございましょう? はい。 128 00:10:49,587 --> 00:10:54,259 であるならば いつか いつか この地に戻ってきて➡ 129 00:10:54,259 --> 00:10:58,596 坂崎家を継いでくれるものと 私は思うておりました。 130 00:10:58,596 --> 00:11:03,468 それが こともあろうに 江戸で 町道場の養子になるなぞと…。 131 00:11:03,468 --> 00:11:08,273 嘆かわしい…。 母上…。 132 00:11:08,273 --> 00:11:12,610 そういう話がある というだけのことじゃ。 133 00:11:12,610 --> 00:11:16,481 磐音も 我が家のことを 気にかけてくれておる。 134 00:11:16,481 --> 00:11:20,285 当たり前でございます。 磐音は 坂崎家の嫡男。 135 00:11:20,285 --> 00:11:22,620 坂崎家を継がずして どうするのです! 136 00:11:22,620 --> 00:11:26,491 お気を静めなされませ。 お体に障ります。 137 00:11:26,491 --> 00:11:30,962 磐音は そのような 薄情な男子では なかったはず。 138 00:11:30,962 --> 00:11:35,567 江戸に行って 変わって しまったのでありますまいか。 139 00:11:35,567 --> 00:11:40,238 おこん殿と申されましたか。 何をしておられるのでしょう。 140 00:11:40,238 --> 00:11:42,574 それでよいと 思うておるのでしょうか? 141 00:11:42,574 --> 00:11:45,476 おこんさんに 何ができると申すのじゃ。 142 00:11:45,476 --> 00:11:47,445 (泣き声) 143 00:11:47,445 --> 00:11:49,447 母上…。 144 00:11:49,447 --> 00:12:03,261 ♬~ 145 00:12:03,261 --> 00:12:07,131 照埜の気持ちも 分からぬではないが…。 146 00:12:07,131 --> 00:12:10,935 ♬~ 147 00:12:10,935 --> 00:12:14,935 母親とは そういうものなのであろう。 148 00:12:16,808 --> 00:12:20,612 それで いかがなさいます。 149 00:12:20,612 --> 00:12:23,514 うん 磐音には 手紙をしたためた。 150 00:12:23,514 --> 00:12:28,286 どのような返事が 戻ってくるかじゃが…。 151 00:12:28,286 --> 00:12:31,586 ♬~ 152 00:12:39,897 --> 00:12:41,833 (柳次郎)あっ…? 153 00:12:41,833 --> 00:12:43,768 (お有) どうしたので ございますか? 154 00:12:43,768 --> 00:12:45,768 あの人は…。 155 00:12:48,239 --> 00:12:51,576 はい。 鶴吉殿は 江戸に戻っています。 156 00:12:51,576 --> 00:12:54,479 やはり あれは 鶴吉さんでしたか。 157 00:12:54,479 --> 00:12:57,448 若い娘さんと ご一緒でした。 娘? 158 00:12:57,448 --> 00:13:01,252 ええ。 仲むつまじそうに しておりました。 159 00:13:01,252 --> 00:13:04,589 そうだ。 これ 坂崎さんに おすそ分けです。 160 00:13:04,589 --> 00:13:09,260 お有殿が作ってくれた弁当です。 坂崎さんは 1人暮らしだからと。 161 00:13:09,260 --> 00:13:13,598 これは ありがたい。 お口に合いますかどうか。 162 00:13:13,598 --> 00:13:15,933 それよりも 柳次郎様から お聞きしました。 163 00:13:15,933 --> 00:13:18,836 坂崎様には 江戸一と誉れの高い➡ 164 00:13:18,836 --> 00:13:22,607 佐々木道場への ご養子のお話があるとか。 165 00:13:22,607 --> 00:13:26,277 坂崎さんよ。 ちょいと 聞きてえことがあるんですがね。 166 00:13:26,277 --> 00:13:30,148 はい。 い い… 今の話ですよ。 こちとら➡ 167 00:13:30,148 --> 00:13:32,884 これっぽっちも こんな話 聞いたことがねえんだ。 168 00:13:32,884 --> 00:13:36,220 おこんの口からだって。 一体 どうなってるんですよ? 169 00:13:36,220 --> 00:13:38,156 (武左衛門) いかんなあ 坂崎さん。 170 00:13:38,156 --> 00:13:42,894 大家殿は おこんさんの父親だ。 独り かやの外はあるまい。 171 00:13:42,894 --> 00:13:47,231 旦那 あんたは 口がすぎる。 何だと? 172 00:13:47,231 --> 00:13:52,103 よいのです。 金兵衛殿。 この話 まだ 決まったわけではござらぬ。 173 00:13:52,103 --> 00:13:55,106 某にも 関前に 父と母がござれば➡ 174 00:13:55,106 --> 00:13:57,875 そう やすやすと 決められることではありません。 175 00:13:57,875 --> 00:14:03,781 だとしてもだねえ…。 おこんは その話は 知ってんかい? はい。 176 00:14:03,781 --> 00:14:08,920 何でぇ 水臭えじゃねえか。 2人して 黙ってるなんてよぉ。 177 00:14:08,920 --> 00:14:12,256 さもありなんだ。 だがのう 大家殿。 178 00:14:12,256 --> 00:14:15,927 父親というのは そういうものだ。 ましてや 一人娘だ。 179 00:14:15,927 --> 00:14:17,862 嫁に行ったら それっきりということは➡ 180 00:14:17,862 --> 00:14:20,798 端から 分かっておることでは ないか。 ハッハッハ…。 181 00:14:20,798 --> 00:14:23,798 え~ さいですかぁ。 へっ。 182 00:14:25,603 --> 00:14:27,538 いいんだ いいんだぁ~。 183 00:14:27,538 --> 00:14:31,275 怒らせてしまったではないか。 旦那。 ふん! 184 00:14:31,275 --> 00:14:34,879 それより 柳次郎。 お前も 腹をくくったら どうだ? 185 00:14:34,879 --> 00:14:38,549 お有さんは よい嫁御になるぞ。 のう? 186 00:14:38,549 --> 00:14:41,886 …ですが 柳次郎様が。 187 00:14:41,886 --> 00:14:45,757 はっきりせんのか。 チェッ どいつもこいつも 情けない。 188 00:14:45,757 --> 00:14:48,757 旦那! あんたには 関わりないことだ! 189 00:14:50,561 --> 00:14:55,261 お~ そうでござろう。 若い人達の行く末は 万々歳だ。 190 00:14:56,901 --> 00:15:00,238 こっちは もっこ担いで 日が暮れるだ。 191 00:15:00,238 --> 00:15:02,573 おい 勢津。 勢津! 192 00:15:02,573 --> 00:15:04,909 竹村様…。 ちょっと…。 193 00:15:04,909 --> 00:15:10,581 ♬~ 194 00:15:10,581 --> 00:15:15,253 翌日 磐音は 吉原の四郎兵衛を訪ねていた。 195 00:15:15,253 --> 00:15:21,125 (四郎兵衛)そうですか。 三味芳の 鶴吉を ご存じでしたか。 196 00:15:21,125 --> 00:15:23,594 はい。 ひょんなことから。 197 00:15:23,594 --> 00:15:27,932 四代目の親父を凌ぐ腕前と 言われながら➡ 198 00:15:27,932 --> 00:15:34,205 兄貴が 五代目を継いだせいで あの三味芳も つぶれちまったあ。 199 00:15:34,205 --> 00:15:41,505 確か 店があったのは 花川戸辺りだったと思いますが。 200 00:15:44,549 --> 00:15:49,887 鶴吉に… 店でも持たせる おつもりですか? 201 00:15:49,887 --> 00:15:54,759 できれば 三味芳を継いで 貰いたいと 願っております。 202 00:15:54,759 --> 00:16:00,531 そいつは うれしいお話で。 三味芳の音色が よみがえるなら➡ 203 00:16:00,531 --> 00:16:05,436 会所をあげて お手伝いさせて頂きます。 204 00:16:05,436 --> 00:16:13,911 しかし お武家の坂崎様が 口火を切るとは。 ハハハハ…。 205 00:16:13,911 --> 00:16:18,911 相変わらず お人がよすぎる。 フフフフフ…。 206 00:16:24,255 --> 00:16:26,255 (男)や~! 207 00:16:27,925 --> 00:16:29,925 次! 208 00:16:34,532 --> 00:16:41,832 (竹刀を打ち交わす音) 209 00:16:49,547 --> 00:17:23,847 ♬~ 210 00:17:25,449 --> 00:17:27,585 次! 211 00:17:27,585 --> 00:17:29,520 ≪(速水)坂崎殿が 稽古をつけると➡ 212 00:17:29,520 --> 00:17:32,423 道場も活気が出て ようございますな。 213 00:17:32,423 --> 00:17:36,193 それにしても 坂崎殿を襲った あの浪人どもが➡ 214 00:17:36,193 --> 00:17:39,096 田沼様の放った 刺客だったとは。 215 00:17:39,096 --> 00:17:44,535 (玲圓)残りは3人。 さらに 雑賀泰造が残っております。 216 00:17:44,535 --> 00:17:50,408 某が 坂崎殿を引きずり込んだ ようなもの。 申し訳ござらぬ。 217 00:17:50,408 --> 00:17:57,548 何の。 磐音とて 覚悟の上のこと。 お気遣い召されるな。 218 00:17:57,548 --> 00:18:03,421 この上は 坂崎殿には この道場を 継いで頂き 名実ともに➡ 219 00:18:03,421 --> 00:18:07,558 玲圓先生の跡継ぎとして 名乗りをあげて頂きたい。 220 00:18:07,558 --> 00:18:09,493 そのためなら この速水➡ 221 00:18:09,493 --> 00:18:13,230 どのようなことでも お力になり申す。 222 00:18:13,230 --> 00:18:17,902 ですが そう おいそれと 事は運びそうもありませぬ。 223 00:18:17,902 --> 00:18:23,574 まず 磐音の国許の二親が どう思うか。 それに…。 224 00:18:23,574 --> 00:18:26,243 おこんさんと申されたか。 225 00:18:26,243 --> 00:18:30,915 今津屋の奥向きを預かる 娘御のことでござるな。 226 00:18:30,915 --> 00:18:35,519 磐音と 行く末を誓い合った仲だとか。 227 00:18:35,519 --> 00:18:38,422 ま それは めでたいことなのだが➡ 228 00:18:38,422 --> 00:18:43,394 今津屋が そう やすやすと 首を縦に振りそうもござらぬ。 229 00:18:43,394 --> 00:18:50,067 う~ん… まずもって厄介なのは 坂崎殿は武家。 230 00:18:50,067 --> 00:18:53,871 おこんさんは 町人の娘であること。 231 00:18:53,871 --> 00:19:00,211 武家の然るべき お方を 間に立て おこんさんを養女にした後➡ 232 00:19:00,211 --> 00:19:03,547 嫁がせる手が一番かと 思うのですが…。 233 00:19:03,547 --> 00:19:07,547 う~ん… そうですなぁ~。 234 00:19:23,567 --> 00:19:27,567 (宮松)おこんさん お手紙です。 私に? 235 00:19:32,376 --> 00:19:34,512 奈緒様…? 236 00:19:34,512 --> 00:19:37,512 ちょっと ここ お願い。 (女中)あ はい。 237 00:19:56,200 --> 00:19:58,536 (奈緒)「おこんさん➡ 238 00:19:58,536 --> 00:20:05,409 その節は ご迷惑をおかけいたし 申し訳ございませんでした。➡ 239 00:20:05,409 --> 00:20:08,212 思えば 奇妙なご縁。➡ 240 00:20:08,212 --> 00:20:12,083 磐音様がおられなければ このような手紙を➡ 241 00:20:12,083 --> 00:20:17,555 おこんさんに書くことは ございませんでした。➡ 242 00:20:17,555 --> 00:20:20,458 あの夜 磐音様の家で➡ 243 00:20:20,458 --> 00:20:24,428 1晩 おこんさんとともに 過ごしたこと➡ 244 00:20:24,428 --> 00:20:27,898 『宮戸川』の蒲焼きの おいしかったこと➡ 245 00:20:27,898 --> 00:20:30,568 一生の思い出となりました」。 246 00:20:30,568 --> 00:20:33,237 ♬~ 247 00:20:33,237 --> 00:20:40,111 (奈緒)「私も女 待つ身の辛さは 十分 承知しております。➡ 248 00:20:40,111 --> 00:20:44,582 ですが 武家の娘として育った私は➡ 249 00:20:44,582 --> 00:20:49,453 一たび 添い遂げたなら ただひたすら 夫を信じ➡ 250 00:20:49,453 --> 00:20:56,594 りんと 胸を張って生き続けねば ならぬと 教わりました。➡ 251 00:20:56,594 --> 00:21:02,466 おこんさん 何が起ころうとも 磐音様のおそばから離れず➡ 252 00:21:02,466 --> 00:21:06,604 磐音様を 信じてあげて下さいませ。➡ 253 00:21:06,604 --> 00:21:09,507 辛いことがあろうとも➡ 254 00:21:09,507 --> 00:21:14,945 共に りんと胸を張って 生きていきましょう。➡ 255 00:21:14,945 --> 00:21:18,816 遠い空の下… 奈緒」。 256 00:21:18,816 --> 00:21:31,428 ♬~ 257 00:21:31,428 --> 00:21:36,233 (由蔵)何です? おこんさんの 姿が見えない? (女中)はい。 258 00:21:36,233 --> 00:21:39,933 いつからですか? (女中)暫く 見てないんです。 259 00:21:42,907 --> 00:21:46,577 あ お佐紀様。 どうしたのですか 由蔵殿。 260 00:21:46,577 --> 00:21:50,247 おこんさんの姿が 見えないのですよ。 え? 261 00:21:50,247 --> 00:21:52,917 おい 宮松 見なかったか? 262 00:21:52,917 --> 00:21:56,253 さっき おこんさんに 手紙が来てましたけど…。 263 00:21:56,253 --> 00:21:58,189 手紙? どなたからですか? 264 00:21:58,189 --> 00:22:00,124 確か 奈緒様とか。 265 00:22:00,124 --> 00:22:05,596 奈緒様? な… 奈緒様…。 266 00:22:05,596 --> 00:22:13,470 (鐘の音) 267 00:22:13,470 --> 00:22:17,208 (奈緒)「おこんさん 辛いことがあろうとも➡ 268 00:22:17,208 --> 00:22:21,612 共に りんと胸を張って 生きていきましょう」。 269 00:22:21,612 --> 00:22:25,612 (鐘の音) 270 00:22:29,286 --> 00:22:32,286 今津屋の おこんさんではないか? 271 00:22:36,093 --> 00:22:39,563 あの~…。 いつぞや 両国の広小路で➡ 272 00:22:39,563 --> 00:22:42,900 坂崎殿と ご一緒しておられたはず。 273 00:22:42,900 --> 00:22:47,571 速水左近である。 あっ! 速水様! 274 00:22:47,571 --> 00:22:51,442 あの時の啖呵 なかなかのものであった。 275 00:22:51,442 --> 00:22:53,911 [ 回想 ] 子どもだとて 容赦はせん! 276 00:22:53,911 --> 00:22:57,781 性根を叩き直してくれるわ。 わっぱめが…。 うわぁ! 277 00:22:57,781 --> 00:23:01,252 そっちこそ 幼気な子どもに 何しようってんですか? 278 00:23:01,252 --> 00:23:03,587 ここは 天下の往来ですよ! 279 00:23:03,587 --> 00:23:06,490 (ため息) ご勘弁下さいませ。 280 00:23:06,490 --> 00:23:09,190 ハッハハハハハ…。 281 00:23:11,262 --> 00:23:16,133 あの後 坂崎殿とは 玲圓先生の 道場で会う機会がござってな。 282 00:23:16,133 --> 00:23:18,936 以来 親しくさせて貰っておる。 283 00:23:18,936 --> 00:23:22,273 はい。 坂崎さんから 聞いております。 284 00:23:22,273 --> 00:23:25,175 だが いかがした? このような刻限に。 285 00:23:25,175 --> 00:23:29,175 お店の方は よろしいのか? はぁ…。 286 00:23:32,549 --> 00:23:37,888 何かあったかな? 差し支えなければ 話してみぬか。 287 00:23:37,888 --> 00:23:42,226 坂崎殿の大事なお人が 悩んでいるのを➡ 288 00:23:42,226 --> 00:23:45,562 見過ごして 立ち去るわけには いかぬでな。 289 00:23:45,562 --> 00:23:49,900 ♬~ 290 00:23:49,900 --> 00:23:54,571 「共に りんとして 胸を張って」…。 291 00:23:54,571 --> 00:23:57,908 この奈緒殿のことは 聞いておる。 292 00:23:57,908 --> 00:24:02,780 流浪の果て 遊女となっても 気高くあった お人とか。 293 00:24:02,780 --> 00:24:06,583 奈緒様には かなわないと思いました。 294 00:24:06,583 --> 00:24:11,455 とても 私には 奈緒様のような 強い気持ちは➡ 295 00:24:11,455 --> 00:24:15,592 持ち合わせてない。 だめだ 私って。 296 00:24:15,592 --> 00:24:19,463 ♬~ 297 00:24:19,463 --> 00:24:23,267 坂崎さんが襲われて 血だらけになってしまって➡ 298 00:24:23,267 --> 00:24:25,602 もう 死んでしまうんじゃないかって➡ 299 00:24:25,602 --> 00:24:28,505 心の臓が 凍りついてしまうんじゃ ないかって思うほど➡ 300 00:24:28,505 --> 00:24:32,409 気が動転して しまったんです。 こんな私じゃ➡ 301 00:24:32,409 --> 00:24:36,547 坂崎さんのおそばになんか いられっこないって…。 302 00:24:36,547 --> 00:24:38,482 お気持ちは よく分かる。 303 00:24:38,482 --> 00:24:44,421 そなたは 武家の娘ではない。 町家の娘だからな。 304 00:24:44,421 --> 00:24:50,421 だが 今まで 坂崎殿を支えて きたのは おこんさんであろう。 305 00:24:53,097 --> 00:24:56,097 支えてきただなんて そんな…。 306 00:24:58,569 --> 00:25:02,439 ただ… 坂崎さんのおそばにいると➡ 307 00:25:02,439 --> 00:25:04,908 いつも 日だまりの中にいるような➡ 308 00:25:04,908 --> 00:25:08,779 ポカポカした気持ちになって 心地いいんです。 309 00:25:08,779 --> 00:25:10,779 だから 私…。 310 00:25:13,250 --> 00:25:17,588 私は 坂崎さんのおそばに いたいんです。 311 00:25:17,588 --> 00:25:21,458 そのためには 奈緒様のお手紙にあるとおり➡ 312 00:25:21,458 --> 00:25:25,929 もっと 強くならなきゃ いけないんです。 313 00:25:25,929 --> 00:25:33,537 そうです…。 今の坂崎さんの おそばにいたいんなら…➡ 314 00:25:33,537 --> 00:25:39,877 もっともっと…。 そうなんです 奈緒様の言うとおり➡ 315 00:25:39,877 --> 00:25:44,548 りんとして 胸を張って 生きなきゃ いけないんです。 316 00:25:44,548 --> 00:25:52,423 ♬~ 317 00:25:52,423 --> 00:25:57,127 はっ… 申し訳ありません。 私ったら。 318 00:25:57,127 --> 00:25:59,563 おこんさん…。 319 00:25:59,563 --> 00:26:04,435 この速水左近 坂崎殿と おこんさんのためならば➡ 320 00:26:04,435 --> 00:26:08,572 一肌も ふた肌も 脱ぎますぞ。 321 00:26:08,572 --> 00:26:14,572 アハハハハ… アハハハハ…。 322 00:26:22,586 --> 00:26:26,256 坂崎様 どちらへ いらしてました? 323 00:26:26,256 --> 00:26:28,592 吉原会所から 道場へ。 324 00:26:28,592 --> 00:26:32,196 坂崎様 おこんさんの姿が 見えないのです。 325 00:26:32,196 --> 00:26:35,532 おこんさんが 何も言わずに 出ていくなんてことは➡ 326 00:26:35,532 --> 00:26:38,435 今まで ありませんでしたからね。 327 00:26:38,435 --> 00:26:43,874 坂崎様…。 奈緒様から 手紙が 来ていたそうでございますよ。 328 00:26:43,874 --> 00:26:45,809 奈緒殿から…。 329 00:26:45,809 --> 00:26:51,748 坂崎様…。 坂崎様が おけがをなされたり➡ 330 00:26:51,748 --> 00:26:56,887 玲圓先生のご養子話があったりと 思いがけないことが続き➡ 331 00:26:56,887 --> 00:27:00,224 心穏やかではなかったのでは ありませんか? 332 00:27:00,224 --> 00:27:04,895 気丈なようでいても おこんさんは 女です。 333 00:27:04,895 --> 00:27:09,895 女の気持ちというものは 揺れ続けるものでございます。 334 00:27:11,568 --> 00:27:16,440 坂崎様 人のために動かれるのも 結構でございます。 335 00:27:16,440 --> 00:27:19,443 ですが 今 大切にせねばならぬのは➡ 336 00:27:19,443 --> 00:27:22,579 おこんさんなのでは ありませんか。 337 00:27:22,579 --> 00:27:24,915 ♬~ 338 00:27:24,915 --> 00:27:28,785 [ 回想 ] 私を置いて死んだりしたら 承知しませんから。 339 00:27:28,785 --> 00:27:31,722 ♬~ 340 00:27:31,722 --> 00:27:35,192 心当たりを捜してみます。 ごめん。 341 00:27:35,192 --> 00:28:51,535 ♬~ 342 00:28:51,535 --> 00:28:53,835 [ 心の声 ] おこん! 343 00:28:58,408 --> 00:29:01,211 国許の父から 返事が来たのです。 344 00:29:01,211 --> 00:29:03,880 おこんさんを 関前に 同道して貰えぬかと。 345 00:29:03,880 --> 00:29:06,550 坂崎さんと ご一緒に 関前へ参り➡ 346 00:29:06,550 --> 00:29:09,453 お母上様に 直々 許しを 請いたいと思っています。 347 00:29:09,453 --> 00:29:12,889 (吉右衛門)その時は この今津屋を辞める時ですぞ。 348 00:29:12,889 --> 00:29:17,561 あっ! あんただけなんだよ。 あんただけが 頼りなんだよ。 349 00:29:17,561 --> 00:29:20,897 舅殿 おこんさんは 必ずこの手で。 350 00:29:20,897 --> 00:30:26,597 ♬~ 351 00:30:33,503 --> 00:30:44,147 ♬~ 352 00:30:44,147 --> 00:30:50,847 この国には こんな光と色があったんだ。