1 00:00:33,601 --> 00:00:37,605 (ジュン)<俺は 落ち目のSF小説家 橋本ジュン> 2 00:00:37,605 --> 00:00:41,609 <作風に行き詰まった俺に 恋愛小説の依頼が来た> 3 00:00:41,609 --> 00:00:44,612 <しかし 書けずに 煮詰まりまくった そんなとき…> 4 00:00:44,612 --> 00:00:46,614 (男性)ジュンちゃん 久しぶり。 5 00:00:46,614 --> 00:00:49,617 <突然 訪ねてきたのが 俺の幼なじみ> 6 00:00:49,617 --> 00:00:51,619 (男性)そういえば 昔 ジュンちゃんのごみが➡ 7 00:00:51,619 --> 00:00:53,621 よく なくなるっていう事件 あったよね? 8 00:00:53,621 --> 00:00:58,626 <そいつの言葉に ひらめいて 一気に書き上げた小説は…> 9 00:00:58,626 --> 00:01:00,628 (館山)これ 没ね。 10 00:01:00,628 --> 00:01:02,630 <締め切りは 迫る> 11 00:01:02,630 --> 00:01:05,630 <どうする? 俺!> 12 00:01:09,637 --> 00:01:15,643 <「雨 降って 地 固まる」という ことわざが 嫌いだ> 13 00:01:15,643 --> 00:01:21,643 <そう。 うまくいかないのが 世の常なのだ> 14 00:01:24,652 --> 00:01:26,654 ≪(男性)「『恋愛小説』」 15 00:01:26,654 --> 00:01:28,656 (ジュン)うわ… 何だよ 驚かせんなよ。 16 00:01:28,656 --> 00:01:31,675 また えらく ど直球なタイトルだね。 17 00:01:31,675 --> 00:01:34,595 「(仮)」って 書いてあんだろ? ふ~ん。 18 00:01:34,595 --> 00:01:36,597 だって オーダーが➡ 19 00:01:36,597 --> 00:01:40,601 『ノルウェイの森』みたいな 胸きゅんの恋愛小説なんだもんよ。 20 00:01:40,601 --> 00:01:45,606 ん~ まあ いつの時代にも 恋愛に胸きゅんは 大切だよね。 21 00:01:45,606 --> 00:01:50,611 そもそも 胸きゅんの恋愛って どんなんだったかな~。 22 00:01:50,611 --> 00:01:53,614 ほら 例えば 夏祭りに➡ 23 00:01:53,614 --> 00:01:57,618 花火の下でキスするとか。 べただな~。 24 00:01:57,618 --> 00:02:01,622 図書室で 手の届かないヒロインに 脇から現れて➡ 25 00:02:01,622 --> 00:02:05,626 すっと 本を取ってあげるとか。 いつの時代の少女漫画だよ! 26 00:02:05,626 --> 00:02:08,629 エリートドクターが 捨て猫を拾って➡ 27 00:02:08,629 --> 00:02:12,633 抱っこして 頬ずりして ギャップをアピールとか。 28 00:02:12,633 --> 00:02:15,636 そんなの しらふで書けるかよ! 29 00:02:15,636 --> 00:02:17,636 じゃあ 息抜きに飲もうか。 30 00:02:21,642 --> 00:02:25,646 ん~ うま! 31 00:02:25,646 --> 00:02:28,649 あん肝 食べると 根津爺 思い出すな~。 32 00:02:28,649 --> 00:02:31,618 うん。 元気なの? 33 00:02:31,618 --> 00:02:33,487 うん。 元気だよ。 34 00:02:33,487 --> 00:02:36,490 ふ~ん。 もう 漁には出てないけどね。 35 00:02:36,490 --> 00:02:39,493 そっか。 もう年だもんな。 36 00:02:39,493 --> 00:02:41,495 こっち行くって言ったらさ➡ 37 00:02:41,495 --> 00:02:44,498 よそのは 食えたもんじゃないから これ 持ってけ。 38 00:02:44,498 --> 00:02:47,501 ハッ! 相変わらず 口の減らない じいさんだよな。 39 00:02:47,501 --> 00:02:49,503 うん。 40 00:02:49,503 --> 00:02:56,510 あ~ どうしようかな~ 胸きゅん小説。 41 00:02:56,510 --> 00:03:00,514 締め切りまで あと5日しかねえし。 42 00:03:00,514 --> 00:03:03,517 ん~ 例えば➡ 43 00:03:03,517 --> 00:03:05,519 好きな人を書いてみるってのは どう? 44 00:03:05,519 --> 00:03:07,521 彼女のこととか。 45 00:03:07,521 --> 00:03:09,523 でも 今 彼女いねえしな。 46 00:03:09,523 --> 00:03:13,523 じゃあ 理想の人を書いてみるとか。 47 00:03:15,529 --> 00:03:18,529 理想の人ねえ…。 48 00:03:20,534 --> 00:03:24,538 《「その瞳は 琥珀のように透明だった」》 49 00:03:24,538 --> 00:03:27,541 《「首元で切り揃えられた黒髪が 揺れるたび➡ 50 00:03:27,541 --> 00:03:32,541 細い首にある ホクロが現れ 妙に 艶かしかった」》 51 00:03:41,588 --> 00:03:43,590 うん…。 52 00:03:43,590 --> 00:03:46,593 あ~… もう! 53 00:03:46,593 --> 00:03:48,595 あ~ 分かんない! あ~。 54 00:03:48,595 --> 00:03:53,600 タイプ… 理想… 心理学…。 55 00:03:53,600 --> 00:03:55,600 あ~。 56 00:04:17,624 --> 00:04:19,626 すげえ美人なんだ。 57 00:04:19,626 --> 00:04:22,629 俺のどんぴしゃの 理想のタイプなんだよ。 58 00:04:22,629 --> 00:04:25,632 (男性)今まで 会ったことあんの? それが ないんだ。 59 00:04:25,632 --> 00:04:27,634 夢の中が 初対面。 60 00:04:27,634 --> 00:04:30,637 (男性)へ~ 現実には いない人なんだ。 61 00:04:30,637 --> 00:04:32,573 うん。 62 00:04:32,573 --> 00:04:36,577 いや~ 現実で あんな美人と出会えたらな~。 63 00:04:36,577 --> 00:04:40,581 胸きゅん小説でも 何でも書けちゃうよ。 64 00:04:40,581 --> 00:04:44,585 あ~ もう1回 会いたいな~。 65 00:04:44,585 --> 00:04:47,588 でも 夢の中の人なんだろ? 66 00:04:47,588 --> 00:04:49,590 あっ そうだ。 67 00:04:49,590 --> 00:04:51,592 んっ? もう1回 寝ればいいんだよ。 68 00:04:51,592 --> 00:04:53,594 そしたら また 夢に出てくるかも。 69 00:04:53,594 --> 00:04:56,597 いや 夢の続きって そんな簡単に見られるわけ? 70 00:04:56,597 --> 00:04:58,599 物は試しだ。 71 00:04:58,599 --> 00:05:01,599 よし。 昼寝だ 昼寝。 72 00:05:03,604 --> 00:05:05,604 邪魔すんなよ? 73 00:05:12,613 --> 00:05:14,615 会えた。 74 00:05:14,615 --> 00:05:16,617 あ~。 75 00:05:16,617 --> 00:05:20,617 あ~ もっと 夢の中いられたらな~。 76 00:05:22,623 --> 00:05:25,626 よし。 もう1回 寝るぞ。 77 00:05:25,626 --> 00:05:28,629 会える。 また きっと会える。 78 00:05:28,629 --> 00:05:30,629 会える 会える 会える 会える。 79 00:05:33,567 --> 00:05:35,569 3回も出てきたんだ! 80 00:05:35,569 --> 00:05:37,571 まったく おんなじ 女の人なんだよ? 81 00:05:37,571 --> 00:05:40,574 (男性)へ~ すごいね。 82 00:05:40,574 --> 00:05:45,579 3回も出てくるなんて これは 何かの啓示かもな。 83 00:05:45,579 --> 00:05:49,583 あっ じゃあ その彼女のこと 書けばいいんじゃない? 84 00:05:49,583 --> 00:05:51,585 えっ? ほら➡ 85 00:05:51,585 --> 00:05:53,587 見た夢を映画にしてる 監督もいるし。 86 00:05:53,587 --> 00:05:58,592 うん。 ジュンちゃんに 小説の神様が降りてきたんだよ。 87 00:05:58,592 --> 00:06:01,595 そうかもな。 88 00:06:01,595 --> 00:06:04,598 よし。 じゃあ あと4日で書き上げる。 89 00:06:04,598 --> 00:06:07,598 ホント? じゃあ 楽しみにしてる。 90 00:07:22,642 --> 00:07:26,642 よし…。 91 00:07:29,649 --> 00:07:31,649 んっ? 92 00:07:33,653 --> 00:07:40,660 《「その瞳は 琥珀のように透明だった」》 93 00:07:40,660 --> 00:07:44,664 《「首元で切り揃えられた黒髪が 揺れるたび➡ 94 00:07:44,664 --> 00:07:50,664 細い首にある ホクロが現れ 妙に 艶かしかった」》 95 00:07:52,672 --> 00:07:55,672 まさか…。 偶然? 96 00:07:58,678 --> 00:08:00,678 いや でもな…。 97 00:08:05,685 --> 00:08:10,690 《「その瞳は サファイアのようなブルーで➡ 98 00:08:10,690 --> 00:08:13,693 ブロンドのロングヘアが 揺れるたび➡ 99 00:08:13,693 --> 00:08:18,693 細い首にある ホクロが現れ 妙に 艶かしかった」》 100 00:08:22,636 --> 00:08:25,636 やっぱり…。 101 00:08:28,642 --> 00:08:32,646 よ~し。 102 00:08:32,646 --> 00:08:38,652 《「ゆっくりと振り向いた彼女は 首元で揺れる黒髪を 耳にかけ➡ 103 00:08:38,652 --> 00:08:43,657 琥珀色の瞳を潤ませ 微笑を浮かべた」》 104 00:08:43,657 --> 00:08:47,661 《「彼女は 楽しそうに縄跳びをした」》 105 00:08:47,661 --> 00:08:52,666 《「胸元が無防備に揺れ 僕は 目のやり場に困った」》 106 00:08:52,666 --> 00:08:54,668 《「そして 手を大きく振り➡ 107 00:08:54,668 --> 00:08:59,673 僕の元に まるで子犬のように 走ってきた……」》 108 00:08:59,673 --> 00:09:03,677 《「やはり 胸元が無防備に揺れた」》 109 00:09:03,677 --> 00:09:05,679 《「上目使いでみつめ➡ 110 00:09:05,679 --> 00:09:10,684 僕の体に 細い両腕をまわしてきて ギュッと抱きしめてきた」》 111 00:09:10,684 --> 00:09:12,686 ハッ…。 112 00:09:12,686 --> 00:09:16,690 《「彼女の柔らかな胸の膨らみを 背中に感じた」》 113 00:09:16,690 --> 00:09:18,690 あれ? 114 00:09:20,627 --> 00:09:22,627 あれ? 115 00:09:25,632 --> 00:09:28,632 何で 後ろから むぎゅがないわけ? 116 00:09:38,645 --> 00:09:40,645 ひょっとして…。 117 00:09:44,651 --> 00:09:48,655 よし。 118 00:09:48,655 --> 00:09:51,658 《「僕の体に 細い両腕をまわしてきて➡ 119 00:09:51,658 --> 00:09:55,662 ギュッと抱きしめてきた。 彼女の柔らかな胸の膨らみを➡ 120 00:09:55,662 --> 00:09:57,664 背中に感じた」》 121 00:09:57,664 --> 00:10:00,667 すごいんだよ! 122 00:10:00,667 --> 00:10:03,670 この 1ページ目に 書いたとおりの内容が➡ 123 00:10:03,670 --> 00:10:07,674 夢の中で起きるんだよ。 (男性)へ~ この内容がねえ…。 124 00:10:07,674 --> 00:10:10,677 書くことで 潜在意識に働き掛けたってやつ? 125 00:10:10,677 --> 00:10:13,680 いや… は~。 126 00:10:13,680 --> 00:10:18,685 あの むぎゅ~は よかったな~。 127 00:10:18,685 --> 00:10:20,620 次は 何させよう? 128 00:10:20,620 --> 00:10:24,624 恋愛小説は 作家の願望が 書かれるって 本当なんだね。 129 00:10:24,624 --> 00:10:28,628 うん。 それは 否定できないかな。 130 00:10:28,628 --> 00:10:31,631 でもさ これ 大丈夫? 131 00:10:31,631 --> 00:10:36,636 何が? 何か 企画物のAVみたい。 132 00:10:36,636 --> 00:10:39,639 うん…。 それに➡ 133 00:10:39,639 --> 00:10:43,643 酒 飲みながら 書いてるだろ? えっ? だって 書いたら➡ 134 00:10:43,643 --> 00:10:46,646 すぐ寝て 確かめたかったからさ。 体に悪いよ。 135 00:10:46,646 --> 00:10:49,649 ちゃんと ご飯 食べて 決まった時間に寝て➡ 136 00:10:49,649 --> 00:10:52,652 規則正しい生活しないと。 137 00:10:52,652 --> 00:10:55,655 ほら あら汁 作ったし。 138 00:10:55,655 --> 00:10:58,658 ジュンちゃん好物だろ? お前は お母さんか! 139 00:10:58,658 --> 00:11:02,658 こっちは 締め切りに追われてて そんな余裕ないんだよ。 140 00:12:39,559 --> 00:12:42,562 《「僕の目の前に ある日 突然 現れた 彼女は➡ 141 00:12:42,562 --> 00:12:45,565 ユキエと名乗った」》 (ユキエ)私 ユキエといいます。 142 00:12:45,565 --> 00:12:49,569 ピヨピヨ。 《「彼女の声は 美しく➡ 143 00:12:49,569 --> 00:12:51,571 どこか悲しげだった」》 144 00:12:51,571 --> 00:12:54,574 《「まるで カナリアのように」》 145 00:12:54,574 --> 00:12:59,579 《「ユキエの細い肢体が 蛇のように巻きついた瞬間➡ 146 00:12:59,579 --> 00:13:01,581 全身に電流が走った」》 147 00:13:01,581 --> 00:13:03,583 あっ…。 148 00:13:03,583 --> 00:13:06,586 《「木漏れ日の暖かさを持つ 母犬のように➡ 149 00:13:06,586 --> 00:13:09,589 僕の身の回りを世話を 献身的にしてくれた」》 150 00:13:09,589 --> 00:13:12,592 あなたに耳かきする 運命だったのね。 151 00:13:12,592 --> 00:13:15,595 《「それも運命だと言って」》 152 00:13:15,595 --> 00:13:19,599 ああ そうさ。 運命さ。 153 00:13:19,599 --> 00:13:22,602 《「ユキエと 手をつないで歩くとき➡ 154 00:13:22,602 --> 00:13:24,604 僕は 井戸水に触れた ヘレン・ケラーのように➡ 155 00:13:24,604 --> 00:13:26,606 理解した」》 156 00:13:26,606 --> 00:13:30,610 《「洗剤のCMのような 何げない日常が➡ 157 00:13:30,610 --> 00:13:34,614 僕にとって どれほど尊いことかを」》 158 00:13:34,614 --> 00:13:38,551 《「いとおしいユキエに 僕は 聞いた」》 159 00:13:38,551 --> 00:13:43,556 ユキエは 何かしたいことはないの? 160 00:13:43,556 --> 00:13:46,559 あなたのしたいこと。 161 00:13:46,559 --> 00:13:48,561 えっ… え~? 162 00:13:48,561 --> 00:13:53,566 あなたになら 何されてもいいわ。 163 00:13:53,566 --> 00:14:05,578 ♬~ 164 00:14:05,578 --> 00:14:07,580 (男性)ハマグリ グリグリ グ~リグリ!➡ 165 00:14:07,580 --> 00:14:09,582 グ~リグリったら グ~リグリ~! 166 00:14:09,582 --> 00:14:13,586 あっ 痛ててて… 邪魔すんなよ! 167 00:14:13,586 --> 00:14:18,591 あ~! もう いいとこだったのに~。 168 00:14:18,591 --> 00:14:20,593 ハァ~。 昨日も おとといも➡ 169 00:14:20,593 --> 00:14:22,595 デスクの前に 座りっぱなしだったろ? 170 00:14:22,595 --> 00:14:24,597 顔色 悪いよ。 171 00:14:24,597 --> 00:14:27,600 フッ 大丈夫だって。 172 00:14:27,600 --> 00:14:31,604 大好きなユキエちゃんと いろんなことやって➡ 173 00:14:31,604 --> 00:14:33,606 いろんなことしてもらって➡ 174 00:14:33,606 --> 00:14:36,609 楽しくやってるからさ。 175 00:14:36,609 --> 00:14:40,547 もう 自分が 神様になったような気分だよ。 176 00:14:40,547 --> 00:14:43,547 最高の恋愛小説ができそうだ。 177 00:14:45,552 --> 00:14:49,556 でもさ それって 全部➡ 178 00:14:49,556 --> 00:14:52,559 ジュンちゃんの 都合のいい妄想だろ? 179 00:14:52,559 --> 00:14:55,562 えっ? 180 00:14:55,562 --> 00:14:59,566 そんな恋愛小説 面白いかな? 181 00:14:59,566 --> 00:15:02,569 独り善がりじゃないかな? 182 00:15:02,569 --> 00:15:05,572 何だよ さっきから。 183 00:15:05,572 --> 00:15:07,574 お前は 評論家かよ! 184 00:15:07,574 --> 00:15:10,577 ごめん。 185 00:15:10,577 --> 00:15:12,579 でも 俺は➡ 186 00:15:12,579 --> 00:15:15,579 ジュンちゃんが本気で書いた 恋愛小説が 読みたいんだ。 187 00:15:18,585 --> 00:15:22,589 そんなこと言われたって 分かんねえよ。 188 00:15:22,589 --> 00:15:24,591 えっ? 189 00:15:24,591 --> 00:15:26,593 恋愛なんてさ➡ 190 00:15:26,593 --> 00:15:30,597 今まで 長く付き合った彼女いねえし➡ 191 00:15:30,597 --> 00:15:33,600 ろくな思い出ねえよ。 192 00:15:33,600 --> 00:15:36,600 痛くて悲しい思い出ばかりでさ。 193 00:15:38,538 --> 00:15:42,538 そんなの書いたって しょうがないだろ。 194 00:15:45,545 --> 00:15:49,545 悲しいから 切ないんじゃないの? 195 00:15:51,551 --> 00:15:54,551 痛いから 胸きゅんなんじゃないの? 196 00:15:56,556 --> 00:16:00,560 もういいよ もう 説教は。 197 00:16:00,560 --> 00:16:04,564 もう 正直 今までの現実に疲れちゃって➡ 198 00:16:04,564 --> 00:16:08,568 もう どっちが 夢でも 現実でも 俺は いいんだよ。 199 00:16:08,568 --> 00:16:11,571 幸せなら それが嘘でもいい。 200 00:16:11,571 --> 00:16:14,571 だから 邪魔すんなよ。 201 00:16:19,579 --> 00:16:21,581 (ユキエ)やだ エッチ。 202 00:16:21,581 --> 00:16:26,586 《「僕とユキエは シーツの中で 泳ぐように抱き合った」》 203 00:16:26,586 --> 00:16:29,589 《「ユキエの サルスベリのような白い肌が➡ 204 00:16:29,589 --> 00:16:32,592 いとおしかった」》 あ~! 205 00:16:32,592 --> 00:16:34,594 《「僕は➡ 206 00:16:34,594 --> 00:16:38,531 荒れた日本海を泳いでいく シラウオのような ユキエの指に➡ 207 00:16:38,531 --> 00:16:40,531 指輪をはめた」》 208 00:16:43,536 --> 00:16:46,536 結婚しようか。 209 00:16:48,541 --> 00:16:51,544 うん。 210 00:16:51,544 --> 00:16:56,549 《「結婚式の日 ユキエは 純白のドレスに身を包み➡ 211 00:16:56,549 --> 00:17:00,549 天使のように美しい姿で 僕を待っていた」》 212 00:17:05,558 --> 00:17:08,561 (男性)ジュンちゃん! 213 00:17:08,561 --> 00:17:10,561 ユキエ~。 (男性)ジュンちゃん! 214 00:17:15,568 --> 00:17:17,570 あ~! (男性)ジュンちゃん!➡ 215 00:17:17,570 --> 00:17:21,574 ジュンちゃん…! ジュンちゃん! ジュンちゃん! 216 00:17:21,574 --> 00:17:24,577 あ~。 うわ…。 217 00:17:24,577 --> 00:17:28,581 ジュンちゃん? ジュンちゃん? しっかりしろよ ジュンちゃん。 218 00:17:28,581 --> 00:17:32,585 ジュンちゃん? ジュンちゃん? 219 00:17:32,585 --> 00:17:34,587 ジュンちゃん? 220 00:17:34,587 --> 00:17:36,587 あれ? 221 00:17:39,525 --> 00:17:41,527 ごめん。 222 00:17:41,527 --> 00:17:43,527 俺のせいで こんな…。 223 00:20:00,600 --> 00:20:02,602 (館山)書いたことを 夢に見る?➡ 224 00:20:02,602 --> 00:20:05,605 フッ フフフ…。➡ 225 00:20:05,605 --> 00:20:09,609 えっ? 何 何? 何よ それ。 226 00:20:09,609 --> 00:20:13,613 いや… ん~ 例えば➡ 227 00:20:13,613 --> 00:20:17,617 「女性と同棲した」って書くと ホントに 同棲する夢 見たり。 228 00:20:17,617 --> 00:20:19,619 夢の中で。 229 00:20:19,619 --> 00:20:23,623 あっ 夢に見るのは 最初の 1ページだけなんですけど➡ 230 00:20:23,623 --> 00:20:25,625 それで 書いてるうちに➡ 231 00:20:25,625 --> 00:20:27,627 どっちが夢か現実か 分からなく…。 232 00:20:27,627 --> 00:20:30,630 (館山)いや 分かった。 もういいや。 233 00:20:30,630 --> 00:20:32,632 えっ? 234 00:20:32,632 --> 00:20:35,635 いやいや いやいや…。 235 00:20:35,635 --> 00:20:39,639 俺も 四半世紀? うん。 この仕事やってきて➡ 236 00:20:39,639 --> 00:20:43,643 締め切り延ばす作家の言い訳 色々 聞いたけど➡ 237 00:20:43,643 --> 00:20:45,645 斬新だよね~。 238 00:20:45,645 --> 00:20:48,648 いや 嘘くさいけど 本当なんです。 239 00:20:48,648 --> 00:20:53,653 俺 このままいくと ヤバいっていうか➡ 240 00:20:53,653 --> 00:20:55,655 怖くなってきて…。 241 00:20:55,655 --> 00:20:57,657 こんなこと言うの情けないし➡ 242 00:20:57,657 --> 00:21:01,594 館山さんには ホントに 申し訳ないんですけど➡ 243 00:21:01,594 --> 00:21:04,597 俺… 書けません。 244 00:21:04,597 --> 00:21:06,599 あいや~。 245 00:21:06,599 --> 00:21:11,604 その言葉 言っちゃうか…。 246 00:21:11,604 --> 00:21:13,604 ごめんなさい。 247 00:21:15,608 --> 00:21:18,611 もういいよ。 248 00:21:18,611 --> 00:21:21,614 編集者として 橋本君に期待しちゃった➡ 249 00:21:21,614 --> 00:21:24,617 俺の責任もあるからね。 250 00:21:24,617 --> 00:21:26,619 しばらく休んだらいいよ。 251 00:21:26,619 --> 00:21:28,621 あっ そうだ。 その前に➡ 252 00:21:28,621 --> 00:21:30,621 病院に行った方が いいかもしれないね。 253 00:21:32,625 --> 00:21:34,625 お大事に。 254 00:21:38,631 --> 00:21:43,636 あ~ もう 終わった~! 255 00:21:43,636 --> 00:21:46,636 俺は もう 終わりだ~! 256 00:21:48,641 --> 00:21:50,643 あっ…。 257 00:21:50,643 --> 00:21:52,643 終わってなんかないよ ジュンちゃんは。 258 00:21:54,647 --> 00:21:57,650 書けない者は 用なし。 259 00:21:57,650 --> 00:22:02,650 これが この業界の おきてですからね~! 260 00:22:04,590 --> 00:22:07,590 終わりですよ 終わり。 261 00:22:09,595 --> 00:22:12,595 だったら また始めればいいじゃない。 262 00:22:14,600 --> 00:22:16,602 負けちゃ駄目だよ。 263 00:22:16,602 --> 00:22:19,605 ジュンちゃんなら 絶対 書けるって。 264 00:22:19,605 --> 00:22:21,607 苦しいかもしんないけど これ 乗り越えたら…。 265 00:22:21,607 --> 00:22:24,610 知ったふうなこと言うなよ!! 266 00:22:24,610 --> 00:22:26,612 何とでも言えんだよ! 267 00:22:26,612 --> 00:22:29,615 書いたことない人間は! 268 00:22:29,615 --> 00:22:33,615 ホントに 簡単に言うんだよ…。 269 00:22:37,623 --> 00:22:40,626 もう 出てけよ! 270 00:22:40,626 --> 00:22:43,626 説教は うんざりなんだよ。 271 00:22:46,632 --> 00:22:48,632 ごめん。 272 00:22:50,636 --> 00:22:55,636 俺 読みたかったんだよ ジュンちゃんの恋愛小説。 273 00:22:59,578 --> 00:23:05,584 でも… 俺 もう 行かなきゃ。 274 00:23:05,584 --> 00:23:09,584 ああ。 もう 出てけ 出てけ。 275 00:23:17,596 --> 00:23:21,596 でも 辞めるなよ。 276 00:23:25,604 --> 00:23:28,607 また書けよ。 277 00:23:28,607 --> 00:23:32,611 絶対 書けよな。 278 00:23:32,611 --> 00:23:45,624 ♬~ 279 00:23:45,624 --> 00:23:50,624 (ドアの開閉音) 280 00:23:54,633 --> 00:23:59,572 <やむどころか 次第に強くなる雨は➡ 281 00:23:59,572 --> 00:24:04,572 悲しさや苦しさを 洗い流してくれるわけではない> 282 00:24:27,600 --> 00:24:29,600 <奮って ご応募ください>