1 00:00:37,754 --> 00:00:41,725 六代尾張藩主 継友の急死により 2 00:00:41,725 --> 00:00:44,694 その跡を継いだ弟の道春が 3 00:00:44,694 --> 00:00:48,231 七代就任挨拶のため登城 4 00:00:48,231 --> 00:00:52,431 将軍吉宗への謁見を仰いだ 5 00:00:55,672 --> 00:00:58,208 よう やあ ハハッ 6 00:00:58,208 --> 00:01:01,678 よう参られた 何はともあれ祝着に存ずる 7 00:01:01,678 --> 00:01:03,914 もったいないお言葉 痛み入ります 8 00:01:03,914 --> 00:01:06,716 うん 世上では 9 00:01:06,716 --> 00:01:09,553 将軍家と我が尾州家の 確執について 10 00:01:09,553 --> 00:01:14,124 何かと取りざたされておりますが 心外この上もございません 11 00:01:14,124 --> 00:01:17,294 あくまでも将軍家あっての御三家 12 00:01:17,294 --> 00:01:20,597 その筆頭たるは我が尾州家 13 00:01:20,597 --> 00:01:23,500 この道春 上様第一の臣下として 14 00:01:23,500 --> 00:01:27,971 一朝事あらば先陣を切って 馳せ参ずる覚悟に存じます 15 00:01:27,971 --> 00:01:33,143 ンン… それは重畳 余も心強く思うぞ 16 00:01:33,143 --> 00:01:36,179 ははっ 17 00:01:36,179 --> 00:01:38,348 時に上様 18 00:01:38,348 --> 00:01:40,884 折り入って願いの儀がございます 19 00:01:40,884 --> 00:01:44,020 おお 何じゃ 何なりと申してみい 20 00:01:44,020 --> 00:01:48,525 恐れながら我が恭順の意を おくみくださり 21 00:01:48,525 --> 00:01:52,696 上様ご芳名の一字を 賜りとう願いたてまつります 22 00:01:52,696 --> 00:01:55,098 おお それはよいのう うん 23 00:01:55,098 --> 00:01:58,401 ではのう 吉宗の… 24 00:01:58,401 --> 00:02:03,006 「宗」の字を遣わそう 以後「宗春」と名を改めるがよい 25 00:02:03,006 --> 00:02:05,142 ありがたき幸せ 26 00:02:05,142 --> 00:02:10,242 宗春 この名を汚さぬよう 相務めます 27 00:02:33,737 --> 00:02:35,872 聞いておったか しかと 28 00:02:35,872 --> 00:02:40,377 どう思う?尾張には もはや 謀反気はないと見てよかろうの 29 00:02:40,377 --> 00:02:44,147 道春… いや 宗春殿は 30 00:02:44,147 --> 00:02:48,251 武辺一途の先代と異なり 軟弱なお人柄とか 31 00:02:48,251 --> 00:02:52,255 夜ごと吉原の遊里で 春日太夫とか申す花魁に 32 00:02:52,255 --> 00:02:55,592 うつつを抜かしているとの噂も ございます 33 00:02:55,592 --> 00:02:58,028 花魁のう 34 00:02:58,028 --> 00:03:00,697 んー うらやま… んんっ 35 00:03:00,697 --> 00:03:03,366 跡継ぎが腰抜けか ならば ひと安心じゃのう 36 00:03:03,366 --> 00:03:08,505 ん?主丞 速断は禁物でございます 37 00:03:08,505 --> 00:03:13,643 これが まことの姿なれば 申すに及びませんが 38 00:03:13,643 --> 00:03:17,013 もし真意を隠す擬態とすれば 39 00:03:17,013 --> 00:03:19,813 これほど恐ろしきものは ございません 40 00:05:08,058 --> 00:05:11,027 浮舟太夫 41 00:05:11,027 --> 00:05:13,330 夕霧太夫 42 00:05:13,330 --> 00:05:15,532 紫太夫 43 00:05:15,532 --> 00:05:19,102 いずれ菖蒲か杜若 エヘヘヘ… 44 00:05:19,102 --> 00:05:22,605 皆 うちの郭の 売れっ子でございます 45 00:05:22,605 --> 00:05:24,841 大層なもてなしだが 46 00:05:24,841 --> 00:05:27,610 私が何者か存じておろう 47 00:05:27,610 --> 00:05:30,714 え?ええ… エヘヘヘヘ… 48 00:05:30,714 --> 00:05:34,317 ただ尾張様から 丁重におもてなしするよう 49 00:05:34,317 --> 00:05:36,986 申し付けられておりますので 50 00:05:36,986 --> 00:05:41,786 さあさあさあ… 心置きなく おくつろぎくださいませ 51 00:05:56,473 --> 00:05:58,475 なかなかの美酒 52 00:05:58,475 --> 00:06:02,412 灘の名酒でございます あるじ 53 00:06:02,412 --> 00:06:04,881 その方も過ごすがよい あっ いえ 54 00:06:04,881 --> 00:06:08,381 不調法ながら手前はもう… いけぬ口か 55 00:06:11,855 --> 00:06:16,055 遠慮はいらん お前たちもやるがよい 56 00:06:33,309 --> 00:06:36,713 やはり毒入りの酒は 誰も気に召さぬようだ 57 00:06:36,713 --> 00:06:39,849 ご冗談を 58 00:06:39,849 --> 00:06:42,819 毒味唇役 腕下主丞 59 00:06:42,819 --> 00:06:45,288 この私には いかなる毒も効かぬ 60 00:06:45,288 --> 00:06:47,490 それを承知で試してみたか 61 00:06:47,490 --> 00:06:50,490 いや めっそうもございません しかも この女ども 62 00:06:52,495 --> 00:06:54,864 皆 武家の出と見える 63 00:06:54,864 --> 00:06:58,034 立ち居振る舞い そして手には 64 00:06:58,034 --> 00:07:00,534 紛れもなく竹刀だこ 65 00:07:50,220 --> 00:07:54,924 さすがは名にし負う腕下主丞 見事じゃ! 66 00:07:54,924 --> 00:07:58,495 尾張宗春公とお見受けいたす 67 00:07:58,495 --> 00:08:01,464 これは いかなる もてなしでござろうか 68 00:08:01,464 --> 00:08:03,566 フフフフフ… 69 00:08:03,566 --> 00:08:06,866 座興 座興じゃよ 70 00:08:08,938 --> 00:08:12,375 そなたの噂高き腕前のほど 71 00:08:12,375 --> 00:08:15,311 確かめとう思うてな 72 00:08:15,311 --> 00:08:18,811 いや 感服いたした 73 00:08:21,050 --> 00:08:24,721 一度なれば目もつぶるが 74 00:08:24,721 --> 00:08:29,125 二度三度となれば 座興では済まされんぞ 75 00:08:29,125 --> 00:08:31,125 何! 76 00:08:41,137 --> 00:08:45,308 時によっては命取り 77 00:08:45,308 --> 00:08:47,808 心召されい 78 00:08:54,183 --> 00:08:58,583 面目次第もございません 79 00:09:01,591 --> 00:09:03,591 たわけ 80 00:09:09,399 --> 00:09:14,604 主丞の死に顔に会えると 楽しみに来たのに 81 00:09:14,604 --> 00:09:17,307 なんたる不始末 82 00:09:17,307 --> 00:09:20,607 (琵琶の音) 83 00:09:25,081 --> 00:09:32,781 げに恐ろしきは毒味役 84 00:09:34,824 --> 00:09:41,424 腕下主丞が毒気にて 85 00:09:43,533 --> 00:09:51,333 死にゆく者は数知れず 86 00:10:02,018 --> 00:10:04,387 討たねばならん 87 00:10:04,387 --> 00:10:07,624 兄 継友の無念を晴らすためにも 88 00:10:07,624 --> 00:10:10,824 何としても 腕下主丞を討たねばならん 89 00:10:12,895 --> 00:10:15,531 天下を握るために 90 00:10:15,531 --> 00:10:19,435 主丞に討たれし者 54名 91 00:10:19,435 --> 00:10:22,872 使いし金子は5200余両 92 00:10:22,872 --> 00:10:26,175 化け物めが 93 00:10:26,175 --> 00:10:28,344 あやつを葬り去る手立ては ないのか 94 00:10:28,344 --> 00:10:31,244 恐れながら 95 00:10:33,249 --> 00:10:36,119 我ら鬼頭三兄弟 96 00:10:36,119 --> 00:10:39,389 必ずや主丞の首を 97 00:10:39,389 --> 00:10:42,889 (琵琶の音) 98 00:10:45,128 --> 00:10:50,528 江戸の闇夜は 99 00:10:53,202 --> 00:10:58,641 百鬼夜行 100 00:10:58,641 --> 00:11:01,241 よさぬか 蝉丸 101 00:11:03,946 --> 00:11:10,346 魑魅魍魎の飛び交いて 102 00:11:12,789 --> 00:11:17,460 死霊うごめく おどろしさ 103 00:11:17,460 --> 00:11:20,763 これ やめいと申すに 待て 104 00:11:20,763 --> 00:11:23,163 聞こう 105 00:11:28,838 --> 00:11:33,910 人を殺して生業となす 106 00:11:33,910 --> 00:11:40,516 牙枝仁左衛門の物語 107 00:11:40,516 --> 00:11:46,823 邪魔な者消す凄腕は 108 00:11:46,823 --> 00:11:53,823 げにも鬼なり 人の言う 109 00:11:56,632 --> 00:12:00,036 その仁左衛門とやらに 渡りがつくのか 110 00:12:00,036 --> 00:12:02,071 はい 111 00:12:02,071 --> 00:12:06,943 一代ならず 二代 三代と その殺し屋稼業は引き継がれ 112 00:12:06,943 --> 00:12:10,213 当代は五代目かと聞き及びまする 113 00:12:10,213 --> 00:12:13,015 うん その技のすごきこと 114 00:12:13,015 --> 00:12:18,087 闇夜の猫のごとく 忍び寄る音なきは蛇のごとく 115 00:12:18,087 --> 00:12:20,123 頼めるか その者に 116 00:12:20,123 --> 00:12:23,926 心当たりもございますれば 117 00:12:23,926 --> 00:12:26,226 会うてみたい 118 00:12:47,016 --> 00:12:49,352 誰 119 00:12:49,352 --> 00:12:52,952 今宵は誰にも 夜伽を申し付けてはおらんぞ 120 00:13:01,130 --> 00:13:03,533 牙枝仁左衛門 121 00:13:03,533 --> 00:13:08,504 お招きにより 参上つかまつりました 122 00:13:08,504 --> 00:13:10,604 女か 123 00:13:13,676 --> 00:13:16,245 殿様 124 00:13:16,245 --> 00:13:20,550 私をここで お抱きになってくださいませ 125 00:13:20,550 --> 00:13:24,086 私がどんな女か 126 00:13:24,086 --> 00:13:27,123 ご自分で確かめるには 127 00:13:27,123 --> 00:13:30,223 それが一番かと存じますが 128 00:14:35,725 --> 00:14:40,096 あ… いらっしゃいませ あの… 何か? 129 00:14:40,096 --> 00:14:46,602 神田で楊枝を商います 「去るや」のお紋と申します 130 00:14:46,602 --> 00:14:50,439 恐れながら腕下主丞様に 131 00:14:50,439 --> 00:14:55,511 ぜひにもお願いしたきことが ございまして参上いたしました 132 00:14:55,511 --> 00:14:59,315 あ… さようでございますか ではどうぞ 133 00:14:59,315 --> 00:15:01,915 お預かりいたします 134 00:15:04,620 --> 00:15:06,820 こちらに 135 00:15:09,558 --> 00:15:13,763 おい 見たかよ うん きれいな人ね 136 00:15:13,763 --> 00:15:17,733 おめえとは随分 違うな ハッヘヘヘ 137 00:15:17,733 --> 00:15:21,404 しかしなあ 世の中 ままならねえもんだな 138 00:15:21,404 --> 00:15:25,107 一人の男にばっかり 女が寄っていきやがる 139 00:15:25,107 --> 00:15:28,307 おっ えーっと… 140 00:15:38,054 --> 00:15:43,225 私が作りました楊枝にございます 141 00:15:43,225 --> 00:15:45,461 見事だ 142 00:15:45,461 --> 00:15:50,566 かほどに細い物は見たことがない 143 00:15:50,566 --> 00:15:56,639 京の山中より入手いたしました 黒文字の材を用いまして 144 00:15:56,639 --> 00:16:01,210 それよりも細い物を 削りにかかります 145 00:16:01,210 --> 00:16:04,113 つきましては お唇役様に 146 00:16:04,113 --> 00:16:08,017 下噛みをしていただければと 存じまして 147 00:16:08,017 --> 00:16:10,686 下噛みとは? 148 00:16:10,686 --> 00:16:14,323 新しい物を作る時には 名のあるお方に 149 00:16:14,323 --> 00:16:19,228 歯木を噛んでいただく 習わしにございます 150 00:16:19,228 --> 00:16:21,931 「去るや」代々の繁栄のため 151 00:16:21,931 --> 00:16:27,531 主丞様にお成り願えれば この上もございません 152 00:17:16,552 --> 00:17:19,552 お待たせいたしました 153 00:17:46,082 --> 00:17:50,986 肌をお見せいたすご無礼 お許しのほど 154 00:17:50,986 --> 00:17:55,991 極細の楊枝を削ります時 着ている物の重さや 155 00:17:55,991 --> 00:17:59,295 腕や足にまとわりつく感じが ありましては 156 00:17:59,295 --> 00:18:02,395 手先が震えます 157 00:18:16,345 --> 00:18:18,914 黒文字の枝にございます 158 00:18:18,914 --> 00:18:24,453 堅くなく しなりありて その嫩枝は楊枝に最適 159 00:18:24,453 --> 00:18:29,191 さすがは お唇役様 恐れ入ります 160 00:18:29,191 --> 00:18:32,495 口中に香気満ち 161 00:18:32,495 --> 00:18:34,897 不快を消し去る 162 00:18:34,897 --> 00:18:38,197 では削ります 163 00:18:57,052 --> 00:18:59,052 んっ! 164 00:19:04,026 --> 00:19:06,426 主丞の女だな 165 00:19:12,468 --> 00:19:16,568 嫉妬にくるうて さまよい出たか 166 00:20:00,783 --> 00:20:03,183 ん… あっ 167 00:20:09,992 --> 00:20:15,898 楊枝を削るのに 肌をさらすこともあるまい 168 00:20:15,898 --> 00:20:19,034 すべて魂胆あってのこと 169 00:20:19,034 --> 00:20:22,471 私を誘わんがため 170 00:20:22,471 --> 00:20:27,042 はい それほどまでに抱いてほしいか 171 00:20:27,042 --> 00:20:29,044 はい 172 00:20:29,044 --> 00:20:33,344 くるおしいほどに 恋い焦がれております 173 00:20:36,518 --> 00:20:39,622 主丞様 どうぞ 174 00:20:39,622 --> 00:20:44,622 この熱い胸の内を お察しくださいませ 175 00:21:06,382 --> 00:21:08,582 うれしい 176 00:21:31,807 --> 00:21:33,807 あっ 177 00:21:38,113 --> 00:21:40,113 あっ 178 00:21:49,191 --> 00:21:51,191 主丞様 179 00:21:53,562 --> 00:21:59,362 あなたを好きと申したは まことのこと 180 00:22:04,206 --> 00:22:06,806 この世の名残 181 00:22:08,911 --> 00:22:11,411 抱いてくだされ 182 00:22:13,515 --> 00:22:16,452 抱いて… 183 00:22:16,452 --> 00:22:19,888 抱い… 184 00:22:19,888 --> 00:22:21,888 だ… 185 00:22:29,932 --> 00:22:32,468 すざまじき女 186 00:22:32,468 --> 00:22:35,768 (琵琶の音) 187 00:22:46,181 --> 00:22:51,281 甲賀大浄助が娘よのう 188 00:22:53,355 --> 00:22:58,093 甲賀支配 大浄助 189 00:22:58,093 --> 00:23:01,063 腕下主丞の手にかかり 190 00:23:01,063 --> 00:23:05,968 この場に果てて はや幾月 191 00:23:05,968 --> 00:23:10,606 冥府 まどう さまよいて 成仏ならぬは 192 00:23:10,606 --> 00:23:13,306 恨みゆえ 193 00:23:30,092 --> 00:23:35,798 主丞の刃にかかりしは 他にも更に数知れず 194 00:23:35,798 --> 00:23:38,801 その恨みの霊どもが 今 そこかしこ 195 00:23:38,801 --> 00:23:42,401 立ち迷う 196 00:23:44,540 --> 00:23:48,240 (琵琶の音) 197 00:24:34,723 --> 00:24:37,993 主丞に恨みを持つ者の霊が 198 00:24:37,993 --> 00:24:42,531 今 ことごとく この屋敷に集まりおるのじゃ 199 00:24:42,531 --> 00:24:45,534 なんじは その霊を一身に引き受けて 200 00:24:45,534 --> 00:24:48,534 主丞を討たねばならん 201 00:24:51,807 --> 00:24:53,942 されば 202 00:24:53,942 --> 00:24:57,542 その力を授けよう 203 00:25:34,716 --> 00:25:38,186 なんじの敵は主丞 204 00:25:38,186 --> 00:25:42,086 主丞 ただ一人ぞ 205 00:26:09,985 --> 00:26:14,185 あら ふき様 どこへ行ってらしたんですか? 206 00:26:38,747 --> 00:26:42,847 ふき 遅かったな 207 00:26:46,521 --> 00:26:48,521 ふき 208 00:27:00,535 --> 00:27:02,904 我が身は霊なり 209 00:27:02,904 --> 00:27:07,376 腕下主丞の手にかかって死んだ あまたの霊なり 210 00:27:07,376 --> 00:27:10,946 その恨み 受けるがいい 211 00:27:10,946 --> 00:27:15,017 目を覚ませ ふき 目を覚ませ! 212 00:27:15,017 --> 00:27:18,186 やめて ふきさん 213 00:27:18,186 --> 00:27:20,186 ああっ 214 00:27:22,624 --> 00:27:24,724 あーっ! 215 00:27:26,862 --> 00:27:29,731 主丞様 妖術にとらわれている 216 00:27:29,731 --> 00:27:31,731 ええっ 217 00:27:34,336 --> 00:27:36,636 すべて私のためだ 218 00:27:41,510 --> 00:27:44,210 し損じたか 219 00:27:57,426 --> 00:27:59,426 殿様 220 00:28:01,430 --> 00:28:06,334 ほんとに あちきを 引いてくれりゃんすか? 221 00:28:06,334 --> 00:28:09,004 戸山の下屋敷には 222 00:28:09,004 --> 00:28:11,004 既に部屋も用意してある 223 00:28:13,075 --> 00:28:15,077 うれしい 224 00:28:15,077 --> 00:28:17,177 ああ… 225 00:28:23,085 --> 00:28:25,085 何者じゃ! 226 00:28:30,492 --> 00:28:33,428 座興も一度まで 227 00:28:33,428 --> 00:28:36,928 二度あっては命取りと 申し上げたはずだ 228 00:28:39,534 --> 00:28:44,406 先代 継友公同様 この場で斬り捨てるは易い 229 00:28:44,406 --> 00:28:47,309 しかし それでは尾州家の恨み 230 00:28:47,309 --> 00:28:51,780 一層 募らせるのみ そしてまた この身の乾き 231 00:28:51,780 --> 00:28:54,282 いよいよ増すばかりだ 232 00:28:54,282 --> 00:28:57,182 ならば どうする 233 00:29:09,865 --> 00:29:13,368 すべてを決着させるべく 234 00:29:13,368 --> 00:29:15,804 宗春殿と立ち合いとう存ずる 235 00:29:15,804 --> 00:29:17,973 と… なんと 236 00:29:17,973 --> 00:29:23,278 むろん しかるべき者を 代理とするもよし 237 00:29:23,278 --> 00:29:27,883 もし私が敗れたなれば 238 00:29:27,883 --> 00:29:30,018 尾州家の遺恨 ついに晴れ 239 00:29:30,018 --> 00:29:32,487 その後 将軍家を倒して 天下を握ろうが 240 00:29:32,487 --> 00:29:36,358 私には知るよしもない 241 00:29:36,358 --> 00:29:39,027 そなたが勝てば… 242 00:29:39,027 --> 00:29:43,165 宗春公には 潔く隠居なされることを 243 00:29:43,165 --> 00:29:45,965 誓うていただきたい 244 00:29:50,172 --> 00:29:53,275 そして いまひとつ 245 00:29:53,275 --> 00:29:56,945 尾州家に捕らわれておるはずの 女一人 返していただきたい 246 00:29:56,945 --> 00:29:59,247 女とは? 名は風鬼子 247 00:29:59,247 --> 00:30:01,817 私にとって大切な女 248 00:30:01,817 --> 00:30:06,817 二人して尾州家の目の届かぬ地へ 旅立つつもりなれば 249 00:30:08,790 --> 00:30:11,459 よかろう 250 00:30:11,459 --> 00:30:15,297 その時は わしも隠居し 251 00:30:15,297 --> 00:30:19,997 この春日と ひそかに余生を送ろう 252 00:30:23,038 --> 00:30:25,238 殿様 253 00:30:27,375 --> 00:30:30,675 して 勝負の日時は? 254 00:30:32,747 --> 00:30:35,350 明後七日 巳の刻 255 00:30:35,350 --> 00:30:37,850 市ヶ谷の我が屋敷にて 256 00:30:39,821 --> 00:30:42,924 こちらは尾張柳生 257 00:30:42,924 --> 00:30:47,028 鬼頭三兄弟を代人となすが よいな 258 00:30:47,028 --> 00:30:49,728 しかと心得もうした 259 00:30:52,100 --> 00:30:54,100 何? 260 00:30:56,238 --> 00:31:00,308 単身 尾張屋敷へ乗り込むと 申すのか 261 00:31:00,308 --> 00:31:04,546 尋常なる立ち合い ご案じくださいませぬように 262 00:31:04,546 --> 00:31:08,946 しかし三対一の勝負 尋常と申せましょうか 263 00:31:13,455 --> 00:31:18,560 鬼頭三兄弟は三位一体となりて 狙った相手は必ず倒すとか 264 00:31:18,560 --> 00:31:21,563 承知の上だ 265 00:31:21,563 --> 00:31:24,132 無謀には過ぎませぬか 266 00:31:24,132 --> 00:31:27,369 たとえ勝ったとしても 生きて屋敷は出られますまい 267 00:31:27,369 --> 00:31:32,340 かもしれん しかし これは私にとって最後の賭け 268 00:31:32,340 --> 00:31:34,876 どうなろうと後悔はいたさぬ 269 00:31:34,876 --> 00:31:37,779 主丞 270 00:31:37,779 --> 00:31:41,249 そちは何ゆえ そのように死に急ぐ 271 00:31:41,249 --> 00:31:43,251 ん? 272 00:31:43,251 --> 00:31:46,651 このわしへの面当てか? 273 00:31:48,857 --> 00:31:51,526 この身の乾き癒やすため 274 00:31:51,526 --> 00:31:55,126 むなしく あがいていると おくみ取りくだされ 275 00:32:27,162 --> 00:32:30,131 尾張柳生 鬼頭軍内 276 00:32:30,131 --> 00:32:33,501 同じく 仁内 277 00:32:33,501 --> 00:32:35,737 同じく 左内 278 00:32:35,737 --> 00:32:39,337 唇寒流 腕下主丞 279 00:34:11,266 --> 00:34:14,266 (琵琶の音) 280 00:34:30,351 --> 00:34:34,155 見事なり 腕下主丞 281 00:34:34,155 --> 00:34:37,655 だが勝負は まだ終わったわけではない 282 00:34:40,595 --> 00:34:45,495 この女の命を助けたくば 刀を捨てなされ 283 00:34:58,113 --> 00:35:00,213 今だ 斬れい! 284 00:35:02,283 --> 00:35:04,283 待てい! 285 00:35:13,595 --> 00:35:15,595 うわっ 286 00:35:20,768 --> 00:35:23,404 んあっ… うっ 287 00:35:23,404 --> 00:35:25,404 (琵琶の音) 288 00:35:33,481 --> 00:35:36,317 ふき ふき 289 00:35:36,317 --> 00:35:38,617 ふき! 290 00:35:44,192 --> 00:35:46,192 あ… 291 00:35:48,496 --> 00:35:50,496 主丞様 292 00:35:56,371 --> 00:36:00,171 主丞 わしの負けだ 293 00:36:07,448 --> 00:36:12,487 約束どおり わしは隠居して 春日と気ままに暮らそう 294 00:36:12,487 --> 00:36:16,591 そして この目の黒いうちは 尾州家は断じて 295 00:36:16,591 --> 00:36:20,091 将軍家へ弓引くことはない 296 00:36:25,867 --> 00:36:31,067 世間では わしのことを 何と言うかのう 297 00:36:33,141 --> 00:36:37,011 遊女一人のために身を持ち崩し 298 00:36:37,011 --> 00:36:40,211 62万石を失った男 299 00:36:44,352 --> 00:36:47,222 構わん 300 00:36:47,222 --> 00:36:50,922 そういう藩主が 一人ぐらいおってもよかろう 301 00:36:58,933 --> 00:37:02,733 さあ 連れていくがよい 302 00:37:49,550 --> 00:37:51,550 ふき! 303 00:37:57,425 --> 00:38:01,229 私はもう主丞様のそばには 304 00:38:01,229 --> 00:38:04,432 お仕えできない女です 305 00:38:04,432 --> 00:38:06,432 ふき 306 00:38:08,436 --> 00:38:11,336 死ぬ時は一緒のはずだぞ 307 00:38:13,308 --> 00:38:15,476 ふき 308 00:38:15,476 --> 00:38:18,680 私は江戸を去る 309 00:38:18,680 --> 00:38:23,080 この胸の乾きを癒やすために 旅に出ることにした 310 00:38:25,386 --> 00:38:28,786 二人して さまようてみようではないか 311 00:38:31,826 --> 00:38:34,126 来い ふき! 312 00:39:28,216 --> 00:39:32,754 尾張も将軍家に逆らう愚に 気づいたようにございます 313 00:39:32,754 --> 00:39:37,024 そうか んー それは何よりじゃ うん 314 00:39:37,024 --> 00:39:42,196 恨みは残ってございましょうが 尾張にも人はございます 315 00:39:42,196 --> 00:39:44,866 宗春のことか? はい 316 00:39:44,866 --> 00:39:49,203 うん どうやらこれで一段落じゃ 317 00:39:49,203 --> 00:39:52,173 すべては主丞のおかげじゃ いや 318 00:39:52,173 --> 00:39:55,276 亡き母のおかげと 思し召しくだされ 319 00:39:55,276 --> 00:39:58,246 ん? 320 00:39:58,246 --> 00:40:01,649 上様 何じゃ また急に改まって 321 00:40:01,649 --> 00:40:04,919 フフ… お前から 「上様」などと呼ばれると 322 00:40:04,919 --> 00:40:06,921 気色が悪いわ ハハハ… 323 00:40:06,921 --> 00:40:09,690 では父上 何じゃ? 324 00:40:09,690 --> 00:40:13,795 おいとまつかまつりたく 325 00:40:13,795 --> 00:40:19,000 宗春殿は遊女一人のために 62万石を捨てました 326 00:40:19,000 --> 00:40:22,837 わたくしもまた ふきを連れ 327 00:40:22,837 --> 00:40:26,437 気ままな旅に出とう存じまする 328 00:40:33,648 --> 00:40:36,117 うん 329 00:40:36,117 --> 00:40:39,053 しかし… なあ 主丞 330 00:40:39,053 --> 00:40:41,556 わしはのう 死んだ あやのためにも 331 00:40:41,556 --> 00:40:45,356 これから… これから お前のこ… 332 00:40:47,662 --> 00:40:50,765 父上に捨てられた母と 333 00:40:50,765 --> 00:40:54,402 まだ赤子のわたくしが 334 00:40:54,402 --> 00:40:59,002 毒をあおって死のうとした時の 杯にござりまする 335 00:41:08,850 --> 00:41:11,850 (赤ん坊の泣き声) 336 00:41:21,696 --> 00:41:25,633 ゆえに わたくしは毒に強くなり 337 00:41:25,633 --> 00:41:31,239 母は死んだつもりで あなたを将軍職に押し上げました 338 00:41:31,239 --> 00:41:37,239 お別れする時 これを渡してくれと 母の遺言でございました 339 00:42:02,136 --> 00:42:05,339 あや… 340 00:42:05,339 --> 00:42:07,539 あや 341 00:42:09,877 --> 00:42:13,314 許せよ 342 00:42:13,314 --> 00:42:15,714 許せよ あや 343 00:42:37,872 --> 00:42:40,341 母も 344 00:42:40,341 --> 00:42:44,245 さぞ満足していることでしょう 345 00:42:44,245 --> 00:42:49,745 すべては母の思いどおりに 終わったのですから 346 00:43:05,399 --> 00:43:08,035 ふき 下りろ 347 00:43:08,035 --> 00:43:10,371 あれ?これ 主丞 348 00:43:10,371 --> 00:43:14,075 あれ?あっ 349 00:43:14,075 --> 00:43:17,311 主丞 何をする 主丞 350 00:43:17,311 --> 00:43:20,815 これでお別れでございます 351 00:43:20,815 --> 00:43:26,315 忠相 父上のこと しかと頼んだぞ 352 00:44:47,768 --> 00:44:50,468 まだお目覚めにならぬか 353 00:44:53,507 --> 00:44:55,543 主丞! 354 00:44:55,543 --> 00:44:57,878 上様 355 00:44:57,878 --> 00:45:00,915 いかがなされました 356 00:45:00,915 --> 00:45:04,315 ハア ハアー 357 00:45:06,353 --> 00:45:09,190 夢か 358 00:45:09,190 --> 00:45:11,290 ハア… 359 00:45:21,535 --> 00:45:24,235 どうしておるかのう 360 00:45:26,240 --> 00:45:28,240 主丞 361 00:45:31,212 --> 00:45:34,148 八代将軍 吉宗は 362 00:45:34,148 --> 00:45:38,853 その後 享保の改革により 善政を敷き 363 00:45:38,853 --> 00:45:44,158 徳川中興の名君として 末代まで褒め称えられた 364 00:45:44,158 --> 00:45:48,262 だが腕下主丞の消息は 365 00:45:48,262 --> 00:45:52,562 以後 ようとして知れない