1 00:00:43,123 --> 00:00:46,459 尾張継友を斬った腕下主丞は 2 00:00:46,459 --> 00:00:52,098 風鬼子と共に江戸を離れ 旅の空にあった 3 00:00:52,098 --> 00:00:55,035 尾張の刺客どもを一身に引き寄せ 4 00:00:55,035 --> 00:00:59,835 陰ながら父 吉宗の 安泰を図るためである 5 00:01:03,043 --> 00:01:05,645 ウフフッ 楽しそうだな 6 00:01:05,645 --> 00:01:08,715 はい だって 主丞様と一緒ですもの 7 00:01:08,715 --> 00:01:11,451 尾張の刺客が 襲ってくるかもしれんぞ 8 00:01:11,451 --> 00:01:14,621 はい 覚悟しております 9 00:01:14,621 --> 00:01:18,425 不安や恐ろしさはないか ありません 10 00:01:18,425 --> 00:01:20,827 明日という日がないかもしれんぞ 11 00:01:20,827 --> 00:01:23,527 今日が 今がございます 12 00:01:29,803 --> 00:01:32,639 討たねばならぬ 13 00:01:32,639 --> 00:01:36,439 何としても 腕下主丞は討たねばならぬ 14 00:01:38,545 --> 00:01:41,214 しかし これは 15 00:01:41,214 --> 00:01:44,184 主丞めの策ではあるまいか 16 00:01:44,184 --> 00:01:47,320 わざと単身 江戸を離れ 17 00:01:47,320 --> 00:01:51,491 我らが どう出るか見極めんと 18 00:01:51,491 --> 00:01:53,660 かもしれぬ 19 00:01:53,660 --> 00:01:56,329 なれば なおのこと 20 00:01:56,329 --> 00:02:01,968 我が尾州家の面子に懸けても 主丞は捨ておけぬ 21 00:02:01,968 --> 00:02:04,137 よいか 22 00:02:04,137 --> 00:02:06,873 我が殿 継友様の死は 23 00:02:06,873 --> 00:02:12,312 今なお ご病床にあるということで しばらくは伏せおく 24 00:02:12,312 --> 00:02:15,281 主丞の首を御霊前に供え 25 00:02:15,281 --> 00:02:19,552 国表より お世継ぎ 通春様を お迎えいたしたのち 26 00:02:19,552 --> 00:02:22,756 改めて公表いたす 27 00:02:22,756 --> 00:02:27,861 それゆえに 一刻も早く主丞を討たねばならぬ 28 00:02:27,861 --> 00:02:32,132 藩士は元より天下六十余州より 29 00:02:32,132 --> 00:02:35,235 手練れの浪人者どもを 直ちに集めい 30 00:02:35,235 --> 00:02:37,235 いくら金子がかかっても構わぬ 31 00:02:53,720 --> 00:02:56,990 さあさあ お泊まりは こちらへどうぞ 32 00:02:56,990 --> 00:03:02,462 この雨ですから お早めに お宿をお取りになったほうが 33 00:03:02,462 --> 00:03:07,862 さっ どうぞ さっ どうぞ 34 00:03:10,970 --> 00:03:14,674 開けてはくれぬか はっ? 35 00:03:14,674 --> 00:03:17,744 女中が客を 迎えに出ているというのに 36 00:03:17,744 --> 00:03:21,114 入り口を閉め切っておく旅籠も 珍しいな 37 00:03:21,114 --> 00:03:24,250 いかに土砂降りとはもうせ 不自然だ 38 00:03:24,250 --> 00:03:27,954 ゆえに開けてくれと申しておる 39 00:03:27,954 --> 00:03:31,154 あっ あーっ 40 00:03:44,971 --> 00:03:48,971 他には誰も 刺客は4人だけのようです 41 00:03:57,417 --> 00:03:59,686 刺客を斬る度に 42 00:03:59,686 --> 00:04:02,789 父のことが思い出されてならん 43 00:04:02,789 --> 00:04:05,225 何ゆえ 父の災いを 44 00:04:05,225 --> 00:04:08,325 子が背負わねばならんのかと 45 00:05:51,597 --> 00:05:56,169 尾張は一体 何人の刺客を 雇っておるのでしょう 46 00:05:56,169 --> 00:06:00,139 あの者たちの懐中に 10両ずつありました 47 00:06:00,139 --> 00:06:03,176 1000両で人を集めたのなら100人 48 00:06:03,176 --> 00:06:06,546 5000両なら500人 49 00:06:06,546 --> 00:06:09,749 1万両なら… ウフフフ 50 00:06:09,749 --> 00:06:15,054 その刺客の数が多ければ多いほど 私たちの旅は続くのでしょうし 51 00:06:15,054 --> 00:06:18,554 それだけ一緒にいられますものね ンフッ 52 00:06:20,827 --> 00:06:23,527 ごめんくださいまし 53 00:06:28,801 --> 00:06:31,537 問屋場の年寄りでございますが 54 00:06:31,537 --> 00:06:34,674 ご挨拶に参上いたしました 55 00:06:34,674 --> 00:06:39,912 あの4人に脅されまして 手前どもは ただもう恐ろしさに 56 00:06:39,912 --> 00:06:42,749 震えておりましたので はい 57 00:06:42,749 --> 00:06:45,051 このお葉にしましても 58 00:06:45,051 --> 00:06:49,088 決して悪気があったわけでは ございませぬ 59 00:06:49,088 --> 00:06:53,793 身内に病人を抱えておりまして 薬代欲しさに つい… 60 00:06:53,793 --> 00:06:55,895 もうよい 61 00:06:55,895 --> 00:07:00,333 死体はとりあえず 問屋場まで運ばせましたが 62 00:07:00,333 --> 00:07:04,937 4人とも身元を確認できる物は 何一つございませぬ 63 00:07:04,937 --> 00:07:08,041 刺客の身元を確認するなど 無駄なことだ 64 00:07:08,041 --> 00:07:12,345 ただし それぞれ 多額の金子を所持しておるはず 65 00:07:12,345 --> 00:07:15,281 それで埋葬してやるがよい はい 66 00:07:15,281 --> 00:07:19,218 で… 恐れながら あなた様は… 67 00:07:19,218 --> 00:07:21,421 それ以上は何も聞くな はあ 68 00:07:21,421 --> 00:07:24,323 そうはまいらんぞ! 69 00:07:24,323 --> 00:07:26,492 宇都宮戸田山城守が臣 70 00:07:26,492 --> 00:07:29,028 横目付の土屋鬼市と申す 71 00:07:29,028 --> 00:07:31,230 当宿場は我が藩の差配下にある 72 00:07:31,230 --> 00:07:33,232 4人の者たちを 惨殺しておきながら 73 00:07:33,232 --> 00:07:35,268 何もなかったでは済まされん 74 00:07:35,268 --> 00:07:39,338 まずは素性を明かし 事の次第を述べられい 75 00:07:39,338 --> 00:07:43,976 公儀 毒味唇役 並びに御庭番支配 76 00:07:43,976 --> 00:07:46,045 腕下主丞 77 00:07:46,045 --> 00:07:48,545 これなるは従者 風鬼子 78 00:07:50,783 --> 00:07:53,019 上様ご実子と噂の高い… 79 00:07:53,019 --> 00:07:57,323 無礼の段 平に 平にご容赦のほどを 80 00:07:57,323 --> 00:08:00,193 横目付ならば 手の者を連れていよう 81 00:08:00,193 --> 00:08:02,993 この旅籠を警護いたせ 82 00:08:12,605 --> 00:08:16,242 眠れんのか?ふき 83 00:08:16,242 --> 00:08:19,345 どうした さっきから黙り込んで 84 00:08:19,345 --> 00:08:21,347 いいんです 85 00:08:21,347 --> 00:08:23,447 従者と申したからか? 86 00:08:25,418 --> 00:08:27,818 そうであろう 87 00:08:34,260 --> 00:08:37,697 フフフ… そう申したのは 88 00:08:37,697 --> 00:08:42,869 お前を ゆっくり休ませてやろうと 思ったからだ 89 00:08:42,869 --> 00:08:48,074 刺客は従者には目もくれん 90 00:08:48,074 --> 00:08:51,674 それに あの横目付は偽者だ 91 00:08:53,646 --> 00:08:56,149 えっ あれは既に 92 00:08:56,149 --> 00:09:00,253 私たちを知っている者の目だ 93 00:09:00,253 --> 00:09:03,956 襲ってくるでしょうか 94 00:09:03,956 --> 00:09:07,260 明日になれば分かる 95 00:09:07,260 --> 00:09:09,660 フフフフフ… 96 00:09:17,069 --> 00:09:20,406 待って!お願いでございます 私も一緒に連れてってください 97 00:09:20,406 --> 00:09:24,043 これ 何をいたす どうかお願いいたします 98 00:09:24,043 --> 00:09:26,412 後生です お情けを 無礼者! 99 00:09:26,412 --> 00:09:29,081 控えい 放して お願いでございます 100 00:09:29,081 --> 00:09:31,717 静かにいたせ 放してください 101 00:09:31,717 --> 00:09:34,420 無礼者が!控えい 102 00:09:34,420 --> 00:09:37,123 あっ これ 無礼者 103 00:09:37,123 --> 00:09:39,492 下がれと申すに 104 00:09:39,492 --> 00:09:41,627 ああっ お許しを 105 00:09:41,627 --> 00:09:43,863 こら お葉 早く ああっ 106 00:09:43,863 --> 00:09:45,898 早く駕籠を出せ はっ 107 00:09:45,898 --> 00:09:48,601 いやっ 連れてって! 108 00:09:48,601 --> 00:09:51,137 お葉! 連れてって 109 00:09:51,137 --> 00:09:55,141 これ 放して 連れてって 110 00:09:55,141 --> 00:09:58,010 あーっ 111 00:09:58,010 --> 00:10:00,610 いやああーっ! 112 00:10:29,909 --> 00:10:31,909 おおっ おっ 113 00:10:57,703 --> 00:11:00,373 今頃 主丞は 114 00:11:00,373 --> 00:11:03,809 どうしておるかのう 115 00:11:03,809 --> 00:11:07,680 達者でいてくれればよいがのう 116 00:11:07,680 --> 00:11:11,450 ご心中 お察し申します 117 00:11:11,450 --> 00:11:13,653 うん 118 00:11:13,653 --> 00:11:16,422 いずこの旅の空に おられましょうと 119 00:11:16,422 --> 00:11:18,758 上様のご安泰のみを 願っておられると… 120 00:11:18,758 --> 00:11:21,458 もう申すな もう… 121 00:11:24,897 --> 00:11:28,097 なおのこと この胸が痛むわ 122 00:11:31,904 --> 00:11:33,904 以前 123 00:11:36,342 --> 00:11:42,315 紀州を出て 一足先に この江戸へ参る時 124 00:11:42,315 --> 00:11:46,719 主丞が余に言うたことがある 125 00:11:46,719 --> 00:11:51,157 将軍などになるなとな 126 00:11:51,157 --> 00:11:53,759 人間の幸せは 127 00:11:53,759 --> 00:11:56,662 権力の座にはないなどと まあ フフッ 128 00:11:56,662 --> 00:11:59,031 生意気なことを申しおって 129 00:11:59,031 --> 00:12:01,834 ハハハハハハ… 130 00:12:01,834 --> 00:12:06,405 そう言いつつも 主丞様は毒味唇役として 131 00:12:06,405 --> 00:12:09,775 上様のおそばに馳せ参じました 132 00:12:09,775 --> 00:12:13,312 そうよのう そうよのう 133 00:12:13,312 --> 00:12:15,981 そしてまた出ていきおった 134 00:12:15,981 --> 00:12:19,952 おかげで余は安泰 親不孝な… 135 00:12:19,952 --> 00:12:23,489 あっ いや… 136 00:12:23,489 --> 00:12:28,260 子不孝な親と申すべきかのう 137 00:12:28,260 --> 00:12:30,863 上様 ん? 138 00:12:30,863 --> 00:12:35,468 主丞様をお守りするために 護衛の者を差し向けては? 139 00:12:35,468 --> 00:12:40,606 いや そのような心遣い かえって迷惑に思うであろう 140 00:12:40,606 --> 00:12:45,578 主丞はそういう男よ 141 00:12:45,578 --> 00:12:48,914 ゆえに主丞は 142 00:12:48,914 --> 00:12:53,114 いつも乾いて候か 143 00:13:22,481 --> 00:13:26,081 露 よくぞ出てまいった 144 00:13:28,053 --> 00:13:32,053 父の墓には もう詣でたか? 145 00:13:34,093 --> 00:13:36,796 はい 146 00:13:36,796 --> 00:13:40,232 父 庄司兵衛を討ったのは腕下主丞 147 00:13:40,232 --> 00:13:43,432 必ずや かたきを討つのじゃ 148 00:13:45,504 --> 00:13:47,504 はい 149 00:14:11,263 --> 00:14:14,934 いかに兵衛の娘とはいえ 150 00:14:14,934 --> 00:14:18,504 女手で あの化け物 主丞が討てるとは… 151 00:14:18,504 --> 00:14:22,007 ただの娘ではござらぬ 152 00:14:22,007 --> 00:14:25,911 露 久しぶりに 153 00:14:25,911 --> 00:14:29,381 不知火流の技の冴えを 見せてもらおうか 154 00:14:29,381 --> 00:14:31,381 はっ 155 00:14:47,867 --> 00:14:50,669 待てい 156 00:14:50,669 --> 00:14:53,372 闇討ちの技が見たい 157 00:14:53,372 --> 00:14:58,110 主丞がこのように 火をたいてくれると思うか 158 00:14:58,110 --> 00:15:00,510 消せい はっ 159 00:15:32,978 --> 00:15:35,114 おお 160 00:15:35,114 --> 00:15:37,683 見事じゃ 露 161 00:15:37,683 --> 00:15:40,219 腕下主丞を討ち取ってくれば そちを 162 00:15:40,219 --> 00:15:44,123 尾張の砲術指南に取り立てようぞ 163 00:15:44,123 --> 00:15:46,125 ありがたき幸せ 164 00:15:46,125 --> 00:15:50,930 ゆけ 主丞は日光街道にある 165 00:15:50,930 --> 00:15:55,968 わしも いずれ 手の者を引き連れて後を追おう 166 00:15:55,968 --> 00:15:59,068 主丞の死を見届けにな 167 00:17:28,327 --> 00:17:30,429 女か 168 00:17:30,429 --> 00:17:34,929 狙われている だが なぜ襲ってこん 169 00:17:37,002 --> 00:17:40,673 またとない機会だ 170 00:17:40,673 --> 00:17:44,576 だが この雨 171 00:17:44,576 --> 00:17:48,747 少しでも火薬が湿ったら… 172 00:17:48,747 --> 00:17:52,251 やはり もう少し待とう 173 00:17:52,251 --> 00:17:54,520 何をためらい 待っている 174 00:17:54,520 --> 00:17:58,090 雨が上がるのを 待ってでもいるのか 175 00:17:58,090 --> 00:18:01,593 鉄砲か 176 00:18:01,593 --> 00:18:04,129 雨が上がると危ない 177 00:18:04,129 --> 00:18:06,129 えっ? 178 00:18:18,043 --> 00:18:21,143 ふき 着物を脱げ 179 00:18:26,852 --> 00:18:29,252 言うがままになれ 180 00:20:16,695 --> 00:20:19,898 やんだ 181 00:20:19,898 --> 00:20:22,798 必ず仕留めてやる 182 00:20:29,141 --> 00:20:31,541 はっ あっ 183 00:20:34,646 --> 00:20:37,516 何ゆえ私を狙う 184 00:20:37,516 --> 00:20:40,016 尾張の刺客か 185 00:20:42,454 --> 00:20:44,890 私の父を斬った 186 00:20:44,890 --> 00:20:49,228 庄司兵衛 覚えがあろう 187 00:20:49,228 --> 00:20:51,463 そうだったか 188 00:20:51,463 --> 00:20:53,963 光の兵衛の娘か 189 00:20:59,872 --> 00:21:03,508 しかし私は負けた 190 00:21:03,508 --> 00:21:05,544 殺せ 191 00:21:05,544 --> 00:21:08,013 一発も撃たずにか 192 00:21:08,013 --> 00:21:10,913 技も使わずに死にたいか 193 00:21:34,706 --> 00:21:36,806 苦無をくれ 194 00:21:55,227 --> 00:21:58,030 水草が乾けば次第に縮む 195 00:21:58,030 --> 00:22:00,933 苦無を取って縛めを斬れ 196 00:22:00,933 --> 00:22:05,604 それから後は 生きようが死のうが 勝手にするがよい 197 00:22:05,604 --> 00:22:09,574 だが尾張ごときに忠義立てをして 198 00:22:09,574 --> 00:22:13,211 あたら若い命を 絶つこともなかろう 199 00:22:13,211 --> 00:22:16,148 勝負は終わったのだ 200 00:22:16,148 --> 00:22:19,217 そなたは女ゆえに敗れた 201 00:22:19,217 --> 00:22:23,617 されば これから 女として生きる道があるはずだ 202 00:22:28,393 --> 00:22:30,829 ふき 203 00:22:30,829 --> 00:22:32,829 行くぞ 204 00:23:03,462 --> 00:23:06,732 あの方も連れていきましょう 205 00:23:06,732 --> 00:23:10,068 私だって甲賀の刺客だったのです 206 00:23:10,068 --> 00:23:13,271 もし あの方を味方に つけることができたら 207 00:23:13,271 --> 00:23:15,874 私たちはもっと強くなれます 208 00:23:15,874 --> 00:23:18,674 だって単筒の名手ですもの 209 00:24:04,756 --> 00:24:07,159 どけ 210 00:24:07,159 --> 00:24:09,261 ふき 211 00:24:09,261 --> 00:24:11,296 どきなさい 212 00:24:11,296 --> 00:24:13,696 狙いは私1人だ 213 00:24:16,668 --> 00:24:19,504 私は撃たれて死んでも構いません 214 00:24:19,504 --> 00:24:23,604 その代わり これからはあなたが 主丞様を守ってあげなさい 215 00:24:26,378 --> 00:24:29,347 私の命を奪うからには当然のこと 216 00:24:29,347 --> 00:24:32,547 命に代わり得るには 命しかないのです 217 00:24:34,586 --> 00:24:37,989 私も あなた同様 甲賀の刺客として 218 00:24:37,989 --> 00:24:40,759 この主丞様を 狙ったことがあります 219 00:24:40,759 --> 00:24:43,762 何? 父は甲賀大浄助 220 00:24:43,762 --> 00:24:46,465 この主丞様に討たれました 221 00:24:46,465 --> 00:24:50,402 なぜ父のかたきをかばう? 222 00:24:50,402 --> 00:24:54,372 いとおしく思うから 223 00:24:54,372 --> 00:24:58,472 この主丞様のためなら 死んでも悔いはないと思うから 224 00:25:00,545 --> 00:25:03,648 むろん父を討った主丞様は憎い 225 00:25:03,648 --> 00:25:06,651 でも その憎しみより 226 00:25:06,651 --> 00:25:09,851 いとおしく思う心のほうが 強いから 227 00:25:13,792 --> 00:25:17,292 さあ 撃ちなさい 228 00:25:44,523 --> 00:25:49,794 そなたは2度の好機を逃した 229 00:25:49,794 --> 00:25:54,166 疲れてもいよう 気力もなかろう 230 00:25:54,166 --> 00:25:57,936 されば勝負は後日 231 00:25:57,936 --> 00:26:00,872 それで もしそなたが敗れたならば 232 00:26:00,872 --> 00:26:03,272 その心と技をもらい受けたい 233 00:26:05,343 --> 00:26:08,480 敗れる時は死ぬ時 234 00:26:08,480 --> 00:26:14,352 ならば2度の好機を逸しながら なぜ死なん 235 00:26:14,352 --> 00:26:19,352 私が申す勝負とは そなたを殺さずに勝つことだ 236 00:27:00,765 --> 00:27:04,736 その頃 柳生青眼以下 尾張の刺客たちは 237 00:27:04,736 --> 00:27:10,141 宇都宮郊外の瑞泉寺に 集結していた 238 00:27:10,141 --> 00:27:12,143 何! 239 00:27:12,143 --> 00:27:15,313 露が主丞と 行動を共にしておるというのか 240 00:27:15,313 --> 00:27:18,016 はっ 捕らわれてのことでしょうか 241 00:27:18,016 --> 00:27:20,018 それとも我らを寝返って… 242 00:27:20,018 --> 00:27:22,754 捨ておけ 243 00:27:22,754 --> 00:27:26,825 我らの手で主丞を倒せば済むこと 244 00:27:26,825 --> 00:27:28,927 そのために出てきたのじゃ 245 00:27:28,927 --> 00:27:31,763 はっ 246 00:27:31,763 --> 00:27:36,067 日光街道は今市の宿 247 00:27:36,067 --> 00:27:40,739 ここを彼奴らの終わり宿となす 248 00:27:40,739 --> 00:27:44,042 フッハハハハハ 249 00:27:44,042 --> 00:27:49,142 生きて再び 出ることのかなわぬ終わり宿よ 250 00:27:51,616 --> 00:27:55,720 宿場の入り口に火を放って 退路を断ち 251 00:27:55,720 --> 00:27:59,524 北の街道につながる橋を落とせば 252 00:27:59,524 --> 00:28:01,524 袋の中のネズミ 253 00:28:03,561 --> 00:28:07,699 逃げ込める袋小路は全部で8ヵ所 254 00:28:07,699 --> 00:28:12,637 これぞ八門遁甲の陣 255 00:28:12,637 --> 00:28:15,073 八門遁甲? 256 00:28:15,073 --> 00:28:17,909 大坂の陣の折 257 00:28:17,909 --> 00:28:21,613 真田幸村が家康公を苦しめ抜いた 258 00:28:21,613 --> 00:28:24,313 恐るべき殺布陣 259 00:28:26,351 --> 00:28:28,653 8ヵ所に人をふせ 260 00:28:28,653 --> 00:28:31,189 切り開いても 切り開いても 261 00:28:31,189 --> 00:28:36,389 八門を通ることができぬという 鉄壁の布陣じゃ 262 00:28:39,864 --> 00:28:45,470 刺客はバラバラに放つより 全員 ここに集めて 263 00:28:45,470 --> 00:28:49,170 一夜で主丞を葬り去るのじゃ 264 00:28:51,142 --> 00:28:53,311 宿場の者たちはどうなさいます? 265 00:28:53,311 --> 00:28:56,047 そのまま日常のごとく 266 00:28:56,047 --> 00:29:00,352 さすれば敵味方の区別はつかず 267 00:29:00,352 --> 00:29:04,723 更に宿場の者どもを 巻き添えにすればするほど 268 00:29:04,723 --> 00:29:08,426 非難の声は幕府に集まろうぞ 269 00:29:08,426 --> 00:29:13,426 同じ頃 江戸表では 新たな事件が持ち上がっていた 270 00:29:23,942 --> 00:29:26,211 京都所司代よりの早馬で 271 00:29:26,211 --> 00:29:30,281 吉宗の御落胤 徳川天一坊なる者が 名乗り出たという 272 00:29:30,281 --> 00:29:32,881 知らせがもたらされた 273 00:29:40,759 --> 00:29:43,361 おお 水野 274 00:29:43,361 --> 00:29:46,531 天一坊は まこと余の子か? 275 00:29:46,531 --> 00:29:49,401 所司代 板倉須磨の 検分によりますれば 276 00:29:49,401 --> 00:29:52,837 天一坊様のお人柄は元より 証拠の品も完璧 277 00:29:52,837 --> 00:29:56,608 まごうことなく 御落胤とのこと 278 00:29:56,608 --> 00:29:59,244 うん うん! 279 00:29:59,244 --> 00:30:03,281 ともあれ祝着至極に存じます 280 00:30:03,281 --> 00:30:07,285 しかし まあ因縁じゃのう ハッハッハッハッ 281 00:30:07,285 --> 00:30:10,922 主丞が この江戸を去り すぐまた新たに余の子が現れる 282 00:30:10,922 --> 00:30:15,193 のう ハッハハハハ 283 00:30:15,193 --> 00:30:18,263 あれ?どうした 忠相 284 00:30:18,263 --> 00:30:21,433 天一坊に疑いありとでも 言いたいのか? 285 00:30:21,433 --> 00:30:23,601 いえ そうは申しませぬ 286 00:30:23,601 --> 00:30:27,605 ただ 何ぶん昔のことゆえ お考え違いということも 287 00:30:27,605 --> 00:30:30,208 いや そのようなことはない 288 00:30:30,208 --> 00:30:33,077 天一坊が母と申しておる沢野井 289 00:30:33,077 --> 00:30:35,280 更には証拠の2品 290 00:30:35,280 --> 00:30:38,750 墨付きに短刀いずれも 確かに覚えがある 間違いない 291 00:30:38,750 --> 00:30:40,752 しかし上様 292 00:30:40,752 --> 00:30:44,422 お会い召されぬうちに ご結論なさるは いかばかりかと 293 00:30:44,422 --> 00:30:47,592 いやいやいや 会わずとも分かっておる 294 00:30:47,592 --> 00:30:51,492 天一坊こそ まこと余の子じゃ 295 00:30:55,033 --> 00:30:58,236 のう 忠相 296 00:30:58,236 --> 00:31:00,538 この世にまだ1人 297 00:31:00,538 --> 00:31:04,676 余の血肉を分けたる者が 生きておるかと思うと 298 00:31:04,676 --> 00:31:08,246 年がいものう 分別ものう この胸がのう 299 00:31:08,246 --> 00:31:10,548 この胸が高鳴るものよ 300 00:31:10,548 --> 00:31:13,051 んん?ハッハッハハハ 301 00:31:13,051 --> 00:31:16,051 ホホホホホホ… 302 00:31:18,523 --> 00:31:20,823 あっ いらっしゃいませ 303 00:31:26,798 --> 00:31:29,400 まあ 大岡様 304 00:31:29,400 --> 00:31:31,669 いや 一人で飲みたいんだが 305 00:31:31,669 --> 00:31:34,405 はい どうぞどうぞ 306 00:31:34,405 --> 00:31:36,605 さあ おひとつどうぞ 307 00:31:38,676 --> 00:31:43,081 あの 主丞様が 帰ってみえられるんでようか? 308 00:31:43,081 --> 00:31:46,251 なぜじゃ いえ… 309 00:31:46,251 --> 00:31:49,754 ただ何となく 310 00:31:49,754 --> 00:31:53,291 こうやって大岡様が お出かけくださったのは 311 00:31:53,291 --> 00:31:57,695 主丞様と お待ち合わせではないかと 312 00:31:57,695 --> 00:32:01,495 ハア… そうであれば 私もありがたいが 313 00:32:04,335 --> 00:32:07,405 いや… あっ ハハッ 314 00:32:07,405 --> 00:32:11,276 女将には要らぬ期待を抱かせて 悪かったな 315 00:32:11,276 --> 00:32:14,479 あ… いいえ 316 00:32:14,479 --> 00:32:17,348 さあ だがこうやって 317 00:32:17,348 --> 00:32:20,285 主丞殿がおられた部屋で 酒を飲むと 318 00:32:20,285 --> 00:32:22,885 妙に気が休まる 319 00:32:25,757 --> 00:32:28,257 便りはないのか? 320 00:32:31,563 --> 00:32:35,600 日光街道にあるとの噂を聞くが 321 00:32:35,600 --> 00:32:38,400 どうしておられることやら 322 00:33:10,602 --> 00:33:13,705 もう食べんのか 323 00:33:13,705 --> 00:33:15,707 はい 324 00:33:15,707 --> 00:33:20,545 それでは体がもたんぞ 私との勝負にも勝てんぞ 325 00:33:20,545 --> 00:33:23,345 もう休ませていただきます 326 00:34:00,118 --> 00:34:03,788 寝たのか 327 00:34:03,788 --> 00:34:06,257 ゆっくり休め 328 00:34:06,257 --> 00:34:09,260 その上で去るもよし いるもよし 329 00:34:09,260 --> 00:34:11,696 去れば それまでの縁 330 00:34:11,696 --> 00:34:14,496 いれば これからの縁 331 00:34:32,083 --> 00:34:36,621 あの露という女 気を張り詰めて生きてきただけに 332 00:34:36,621 --> 00:34:39,621 疲れ切っているようだ 333 00:34:42,026 --> 00:34:45,326 ふき どうした? 334 00:34:48,800 --> 00:34:52,100 あの雨の日のこと 335 00:34:56,007 --> 00:34:58,976 すまなかった 336 00:34:58,976 --> 00:35:03,848 あれは身を守るための謀 337 00:35:03,848 --> 00:35:06,884 ただひたすら くのいちとして生きてきた露は 338 00:35:06,884 --> 00:35:09,454 いまだ生娘のはず 339 00:35:09,454 --> 00:35:14,625 男と女のあからさまな姿を 初めて目の前にして 340 00:35:14,625 --> 00:35:19,125 わずかによぎった心の隙を 突くことにあった 341 00:35:33,144 --> 00:35:36,414 主丞様 342 00:35:36,414 --> 00:35:39,817 私を抱いてください 343 00:35:39,817 --> 00:35:43,017 あの雨の日のように 344 00:35:58,970 --> 00:36:01,672 露さんて 345 00:36:01,672 --> 00:36:04,909 きれいな方ですね 346 00:36:04,909 --> 00:36:08,246 女として生ききれぬ深い傷がある 347 00:36:08,246 --> 00:36:13,117 それがとりわけ 美しく感じさせるのかもしれぬ 348 00:36:13,117 --> 00:36:16,154 だが 349 00:36:16,154 --> 00:36:19,254 心の中は さぞかし寒かろう 350 00:36:36,574 --> 00:36:38,810 露 351 00:36:38,810 --> 00:36:41,410 腕下主丞は仕留めたのか? 352 00:36:44,916 --> 00:36:48,186 何度も機会はあった 353 00:36:48,186 --> 00:36:51,155 だが討てなかった 354 00:36:51,155 --> 00:36:54,559 そうだな 355 00:36:54,559 --> 00:36:57,328 はい たわけ! 356 00:36:57,328 --> 00:37:01,399 それでも尾張の刺客か 357 00:37:01,399 --> 00:37:03,601 もう一度だけ機会をやろう 358 00:37:03,601 --> 00:37:06,737 それでも できぬとあらば 359 00:37:06,737 --> 00:37:09,937 裏切り者として死んでもらう 360 00:37:15,146 --> 00:37:18,716 まもなく火の手が上がる 361 00:37:18,716 --> 00:37:21,485 混乱に紛れて狙うは 362 00:37:21,485 --> 00:37:24,889 主丞の首 ただ1つ 363 00:37:24,889 --> 00:37:27,358 よいな はっ 364 00:37:27,358 --> 00:37:31,058 (半鐘の音) 365 00:37:56,854 --> 00:37:59,023 主丞様 大変です 366 00:37:59,023 --> 00:38:01,525 来たか 367 00:38:01,525 --> 00:38:05,129 決して私から離れるな 368 00:38:05,129 --> 00:38:07,629 露さんが見当たらないのです 369 00:38:09,700 --> 00:38:11,700 ゆくぞ 370 00:38:19,443 --> 00:38:21,643 火事だ 火事だ 371 00:38:31,088 --> 00:38:33,457 火事だ! 火事だ 372 00:38:33,457 --> 00:38:36,257 早く逃げろ 373 00:39:44,128 --> 00:39:46,728 (女たちの悲鳴) 374 00:40:05,349 --> 00:40:08,753 ケガはないか? はい 主丞様は? 375 00:40:08,753 --> 00:40:12,189 よかった まだ安心はできぬ 376 00:40:12,189 --> 00:40:15,793 敵の包囲の中にある 377 00:40:15,793 --> 00:40:19,293 ここで夜明けを待とう はい 378 00:40:21,532 --> 00:40:24,802 無事 逃げられるでしょうか 379 00:40:24,802 --> 00:40:30,041 ここで果てるも宿命なれば それに従うまでだ 380 00:40:30,041 --> 00:40:32,410 はい その時は私も 381 00:40:32,410 --> 00:40:35,379 御支配様 御支配様 382 00:40:35,379 --> 00:40:37,615 誰だ 公儀 御庭番 383 00:40:37,615 --> 00:40:40,184 伊賀組の風七と申します 384 00:40:40,184 --> 00:40:42,184 入れ はっ 385 00:40:47,858 --> 00:40:52,029 御支配様 江戸表より 火急の知らせにございます 386 00:40:52,029 --> 00:40:55,032 急ぎ お戻りなされますようにとの ご伝言 387 00:40:55,032 --> 00:40:57,201 上様直々にか? いえ 388 00:40:57,201 --> 00:41:00,604 大岡越前守様の御命にて ここに 389 00:41:00,604 --> 00:41:03,004 忠相? はあ 390 00:41:43,047 --> 00:41:45,447 腕下主丞! 391 00:41:48,886 --> 00:41:51,686 最後の時が来たようだな 392 00:41:56,227 --> 00:42:00,227 撃て 露 父の恨みを晴らすがよい 393 00:42:11,342 --> 00:42:15,980 何をしておる 早く撃て 394 00:42:15,980 --> 00:42:18,349 うわーっ 395 00:42:18,349 --> 00:42:21,819 裏切ったな! あうっ 396 00:42:21,819 --> 00:42:23,819 斬れ! 397 00:44:34,818 --> 00:44:36,818 主丞様 398 00:44:38,956 --> 00:44:41,759 私… 399 00:44:41,759 --> 00:44:45,696 やっぱり あなたには 勝つことができなかった 400 00:44:45,696 --> 00:44:48,232 主丞様 401 00:44:48,232 --> 00:44:51,835 何だ 402 00:44:51,835 --> 00:44:53,835 寒い 403 00:45:50,094 --> 00:45:53,330 窮地を脱出した腕下主丞は 404 00:45:53,330 --> 00:45:57,534 風鬼子と共に一路 江戸へ向かった 405 00:45:57,534 --> 00:46:01,605 果たして そこに何が待ち受けているのか 406 00:46:01,605 --> 00:46:04,905 むろん知るよしもない 407 00:46:11,982 --> 00:46:16,520 江戸の町は 将軍家 御落胤 徳川天一坊の噂で 408 00:46:16,520 --> 00:46:18,822 騒然としていた 409 00:46:18,822 --> 00:46:23,527 その まっただ中 主丞と風鬼子が立ち戻った 410 00:46:23,527 --> 00:46:26,897 あまりに 己の境遇と似ている天一坊 411 00:46:26,897 --> 00:46:31,435 主丞の胸は痛むが 果たして まことの御落胤か 412 00:46:31,435 --> 00:46:34,535 そして その陰に潜む者は? 413 00:46:36,607 --> 00:46:38,742 大岡忠相 切腹の儀 414 00:46:38,742 --> 00:46:41,712 いつにござりましょうや 415 00:46:41,712 --> 00:46:43,714 切腹? 416 00:46:43,714 --> 00:46:47,151 「乾いて候 天一坊・疑惑の血脈」に 417 00:46:47,151 --> 00:46:49,151 ご期待ください