1 00:01:35,388 --> 00:01:38,891 (満江)<長男 孫一郎の臨終にも 立ち合わず・ 2 00:01:38,891 --> 00:01:44,397 仕事に奔走した隼太は 認められて 郡奉行助役に昇り・ 3 00:01:44,397 --> 00:01:47,897 後には出世して 代官となります> 4 00:01:54,907 --> 00:01:57,910 ・~(テーマ音楽) 5 00:01:57,910 --> 00:02:04,417 ・~ 6 00:02:04,417 --> 00:02:07,420 ・(蜩の鳴き声) 7 00:02:07,420 --> 00:02:13,426 <代官になって1年余り 寛政元年のことでございます> 8 00:02:13,426 --> 00:02:17,096 (忠兵衛)また よき折に。 はっ。 9 00:02:17,096 --> 00:02:20,096 桑山。 10 00:02:22,101 --> 00:02:24,501 では。 では。 11 00:02:30,376 --> 00:02:33,379 あれが この春 お上の お声がかりで・ 12 00:02:33,379 --> 00:02:36,382 執政入りを果たした 我々の同志 佐治殿だ。 13 00:02:36,382 --> 00:02:39,051 (隼太) お顔は 存じ上げております。 14 00:02:39,051 --> 00:02:41,721 もう一人は 知っているな? むろん。 15 00:02:41,721 --> 00:02:45,391 郡奉行所で 同僚だった 花岡殿ですな。 16 00:02:45,391 --> 00:02:50,691 まだ内々だが 花岡は 郡奉行になることが決まった。 17 00:02:52,398 --> 00:02:54,400 一歩 先を越されたか? 18 00:02:54,400 --> 00:02:59,405 いや。 花岡は 目から鼻に 抜けるような 優れた人物。 19 00:02:59,405 --> 00:03:02,408 当然でしょう。 う~ん…。 20 00:03:02,408 --> 00:03:05,912 ただし いささか淡泊だな。 21 00:03:05,912 --> 00:03:10,416 わしと 佐治が 一席設けると誘ったが 断った。 22 00:03:10,416 --> 00:03:14,420 杉山派にも 小黒派にも つかぬつもりらしいが・ 23 00:03:14,420 --> 00:03:16,422 郡奉行に上がれたのは 誰のおかげか・ 24 00:03:16,422 --> 00:03:19,926 よく分かっておらぬらしい。 25 00:03:19,926 --> 00:03:23,429 おお… 久しぶりに 「小菊」にでも行くか。 26 00:03:23,429 --> 00:03:27,934 いや… そうだ。 「ざくろ屋」でも よいぞ。 27 00:03:27,934 --> 00:03:31,704 庄六に聞いたが 昔の女がいるそうだな。 28 00:03:31,704 --> 00:03:35,208 今夜は 所用がございます。 29 00:03:35,208 --> 00:03:39,045 そうか。 30 00:03:39,045 --> 00:03:42,745 そろそろだ。 その時は 頼むぞ。 31 00:03:54,393 --> 00:03:57,897 ・奥様。 …奥様!・ 32 00:03:57,897 --> 00:04:00,897 お客様でございます。 33 00:04:02,902 --> 00:04:05,002 おいでなさいませ。 34 00:04:07,073 --> 00:04:10,409 私 田口半平と申します。 35 00:04:10,409 --> 00:04:13,412 田口様…? 36 00:04:13,412 --> 00:04:16,916 お上の 御用人の牧原様の お指図で。 37 00:04:16,916 --> 00:04:18,918 あっ! …あっ! 38 00:04:18,918 --> 00:04:21,921 <とうとう 夫が待ち焦がれていた方が・ 39 00:04:21,921 --> 00:04:23,923 お見えになりました> 40 00:04:23,923 --> 00:04:26,926 (ふき)花岡様が 今 郡奉行になったのは・ 41 00:04:26,926 --> 00:04:30,029 よいことか どうか 分かりませんよ。 42 00:04:30,029 --> 00:04:33,199 小黒派に睨まれて 潰されるかもしれませんよ。 43 00:04:33,199 --> 00:04:35,701 そうではない。 はい? 44 00:04:35,701 --> 00:04:39,872 花岡のことではない。 はい…。 45 00:04:39,872 --> 00:04:44,377 杉山様も お友達がいのない お方でございますよね。 46 00:04:44,377 --> 00:04:47,380 違う。 はい? 47 00:04:47,380 --> 00:04:50,883 俺は 器が小さい。 48 00:04:50,883 --> 00:04:55,883 そうですね。 人間が小そうございますね。 49 00:05:00,393 --> 00:05:07,400 忠兵衛に べたっとくっついてれば よいものを それができぬ。 50 00:05:07,400 --> 00:05:10,236 やきもちでは ないのだが…。 51 00:05:10,236 --> 00:05:15,408 負けるものかと。 …そうなのだ。 52 00:05:15,408 --> 00:05:19,412 あいつと 俺は もともと 生まれた家の格が違う。 53 00:05:19,412 --> 00:05:22,748 執政になるために生まれた 忠兵衛と・ 54 00:05:22,748 --> 00:05:24,917 貧乏侍の次男の俺が・ 55 00:05:24,917 --> 00:05:27,917 肩を並べようというのが お笑いぐさだ。 56 00:05:29,855 --> 00:05:33,359 「杉山 俺を頼むぞ。・ 57 00:05:33,359 --> 00:05:38,864 昔の仲間の隼太を お主の力で 引き上げてくれ」と・ 58 00:05:38,864 --> 00:05:41,867 なぜ言えぬのか。 59 00:05:41,867 --> 00:05:45,167 俺は 人間が小さい。 60 00:05:49,875 --> 00:05:55,881 あなた様は 必ず 杉山様より 上に行くお方でございますよ。 61 00:05:55,881 --> 00:06:00,386 かたじけのうござる。 62 00:06:00,386 --> 00:06:04,390 太蔵が原のことは どうなったのでございます? 63 00:06:04,390 --> 00:06:08,394 「水が引けるかもしれぬ」と おっしゃっておりましたけれど。 64 00:06:08,394 --> 00:06:11,397 そんなこと言ったか? 65 00:06:11,397 --> 00:06:14,066 俺は 全く駄目な男だ。 66 00:06:14,066 --> 00:06:18,237 いくら ふきとはいえ そんな 大事を言ってはいかん。 67 00:06:18,237 --> 00:06:22,742 杉山様に 高く売りつけたら いかがでございます? 68 00:06:22,742 --> 00:06:25,911 杉山に…? はい。 69 00:06:25,911 --> 00:06:29,849 今日は 花岡様のことで 痛い目に 遭わされたのでございますから・ 70 00:06:29,849 --> 00:06:32,351 今度は こっちの番でございます。 71 00:06:32,351 --> 00:06:36,856 「太蔵が原に 水路は引けるぞ! どうだ 俺を郡代に推せ」と。 72 00:06:36,856 --> 00:06:38,858 やり返すのか? はい。 73 00:06:38,858 --> 00:06:42,361 それもいい。 ・ちょっと 急な用なのです。 74 00:06:42,361 --> 00:06:45,961 奥様では ございませぬか!? 75 00:06:48,701 --> 00:06:55,374 (妙)ごめんくださりませ。 奥様が お越しになられました。 76 00:06:55,374 --> 00:06:57,376 お客様でございます。 77 00:06:57,376 --> 00:06:59,378 田口殿か? 78 00:06:59,378 --> 00:07:03,049 父上が 相手をしています。 79 00:07:03,049 --> 00:07:06,218 参ったか。 80 00:07:06,218 --> 00:07:10,056 しかし 病人に 客人の相手をさせては いかんな。 81 00:07:10,056 --> 00:07:15,756 でも お客様に会いたいと 言ったのは 父の方ですよ。 82 00:07:17,396 --> 00:07:20,399 あら…。 御無沙汰いたしております。 83 00:07:20,399 --> 00:07:22,902 ふきでございます。 84 00:07:22,902 --> 00:07:26,238 もちろん そんなことは 分かっています。 85 00:07:26,238 --> 00:07:28,741 夫が ふいに亡くなってしまった のでございます。 86 00:07:28,741 --> 00:07:33,441 それで 旦那様にお骨折りいただき ここで 働いております。 87 00:07:35,014 --> 00:07:37,349 あっ それは! あっ! 88 00:07:37,349 --> 00:07:40,352 申し訳ございません。 ただいま お茶を。 89 00:07:40,352 --> 00:07:45,691 かまいませぬ。 でも あの… お召し物に まだ お茶が…。 90 00:07:45,691 --> 00:07:48,891 ごちそうさま。 91 00:07:50,696 --> 00:07:55,367 もう! 「あっ それは」などと 大声など出して! 92 00:07:55,367 --> 00:07:58,537 あっ! びっくり…。 すみません。 申し訳ございません。 93 00:07:58,537 --> 00:08:01,937 かまいませぬ。 かまいませぬから! 94 00:08:04,710 --> 00:08:07,379 <3日後の明け方・ 95 00:08:07,379 --> 00:08:13,179 夫は 田口半平様と 大櫛山に向かいました> 96 00:08:36,675 --> 00:08:41,347 私の友人だ。 腕が立つので 来てもらった。 97 00:08:41,347 --> 00:08:44,350 田口半平と申します。 98 00:08:44,350 --> 00:08:50,850 この若さで 長崎の異人について 測量の術を学んできたそうだ。 99 00:08:54,193 --> 00:08:56,862 「2日で戻る」と 言っておりましたが・ 100 00:08:56,862 --> 00:09:00,699 父上が 10年以上 調べても 見つけられなかった水源を・ 101 00:09:00,699 --> 00:09:03,369 2日で 見つけられるのでしょうか? 102 00:09:03,369 --> 00:09:07,373 (孫助)水源は あるのだ。 あるのですか!? 103 00:09:07,373 --> 00:09:10,042 前山の谷にある。 104 00:09:10,042 --> 00:09:12,378 水を貯める堰もある。 105 00:09:12,378 --> 00:09:17,049 つまりは… 水路を どう引くかなのだ。 106 00:09:17,049 --> 00:09:21,053 小黒の造った水路が 山津波を起こしたのは・ 107 00:09:21,053 --> 00:09:25,391 地盤が もろかったからだ。 108 00:09:25,391 --> 00:09:31,191 「地盤」が… 大事なのだ。 109 00:09:34,333 --> 00:09:39,672 ふきさんは…? どうだったのだ? 110 00:09:39,672 --> 00:09:43,842 御心配 いりませぬ。 111 00:09:43,842 --> 00:09:46,342 そうか。 112 00:09:48,347 --> 00:09:52,851 隼太は 運が向いてきたぞ。 113 00:09:52,851 --> 00:09:58,357 背中を押すのだぞ! 114 00:09:58,357 --> 00:10:14,373 ・~ 115 00:10:14,373 --> 00:10:17,376 (田口)お~い! 116 00:10:17,376 --> 00:10:21,714 野瀬殿 こちらへ! 117 00:10:21,714 --> 00:10:24,049 まだ! 118 00:10:24,049 --> 00:10:26,385 まだまだ! 119 00:10:26,385 --> 00:10:30,823 (市之丞)もう いいか? まだ! もう1歩! 120 00:10:30,823 --> 00:10:33,826 いま1歩! …よ~し! 121 00:10:33,826 --> 00:10:36,829 あの野郎! 122 00:10:36,829 --> 00:10:59,852 ・~ 123 00:10:59,852 --> 00:11:01,852 おい! 124 00:11:08,360 --> 00:11:12,865 先の開墾の時は ずっと ここで 寝泊まりしておったのだ。 125 00:11:12,865 --> 00:11:17,369 ひどいもんだな。 すっかり 朽ち果てておるではないか。 126 00:11:17,369 --> 00:11:57,409 ・~ 127 00:11:57,409 --> 00:12:01,413 もう 半分は歩いたろう。 いや 半分もいくまい。 128 00:12:01,413 --> 00:12:05,417 三分一が いいとこだろう。 129 00:12:05,417 --> 00:12:07,920 誰か来ます。 130 00:12:07,920 --> 00:12:27,940 ・~ 131 00:12:27,940 --> 00:12:30,440 小黒の手の者か…。 132 00:12:37,383 --> 00:12:40,886 さすがなもんだな。 …忠兵衛さ。 133 00:12:40,886 --> 00:12:46,392 さっきの3人は 忠兵衛の手の者だ。 134 00:12:46,392 --> 00:12:54,392 つまり お主の動きは 忠兵衛には もれているということだ。 135 00:12:56,068 --> 00:12:58,404 そうか。 136 00:12:58,404 --> 00:13:03,404 確かに あいつは変わった。 137 00:13:08,414 --> 00:13:11,417 そろそろだの。 138 00:13:11,417 --> 00:13:16,922 あいつが執政になれば …お主も。 139 00:13:16,922 --> 00:13:19,925 いや。 140 00:13:19,925 --> 00:13:21,927 意地っ張りだな。 141 00:13:21,927 --> 00:13:24,930 忠兵衛の引きで 出世をしたくないのだ。 142 00:13:24,930 --> 00:13:27,933 「太蔵が原」か…。 143 00:13:27,933 --> 00:13:31,933 しかし… いかにも 心もとないの。 144 00:13:34,373 --> 00:13:37,373 水は 引けます。 145 00:13:39,378 --> 00:13:42,881 固い地盤があります。・ 146 00:13:42,881 --> 00:13:46,881 水路は… 造れます。 147 00:13:48,887 --> 00:13:51,687 ・(蜩の鳴き声) 148 00:13:53,392 --> 00:13:55,894 気の利かぬ奴だ。 149 00:13:55,894 --> 00:13:57,896 は…? 150 00:13:57,896 --> 00:14:03,402 田口殿が 江戸に帰る前に なぜ わしに会わせぬのだ。 151 00:14:03,402 --> 00:14:08,407 秋の末までに 絵図を送るので 舅殿にはくれぐれもよろしくと・ 152 00:14:08,407 --> 00:14:10,409 そそくさと帰りました。 153 00:14:10,409 --> 00:14:14,913 だから その絵図について 話がしたかったのだ。 154 00:14:14,913 --> 00:14:19,418 はい。 もろい地盤を避けて 水路を造るか・ 155 00:14:19,418 --> 00:14:22,421 隧道を掘るか どちらがよいかを・ 156 00:14:22,421 --> 00:14:25,424 絵図を作ってから 比べてみたいと。 157 00:14:25,424 --> 00:14:29,924 「水路か 隧道」な。 …うん。 158 00:14:32,364 --> 00:14:38,370 わしは なにも この女に惚れて 20年以上・ 159 00:14:38,370 --> 00:14:41,373 ここに通ったのではない。 あら まあ。 160 00:14:41,373 --> 00:14:45,878 (孫助)仕事の毒を吐き出し 静かな気持ちで 家に帰るために・ 161 00:14:45,878 --> 00:14:51,216 ここに寄った。 女房に 仕事の話を したところで 何が分かるのだ。 162 00:14:51,216 --> 00:14:56,388 苦労させるだけのことだ。 お前も 同じであろう? 163 00:14:56,388 --> 00:14:58,390 「同じ」とは? 164 00:14:58,390 --> 00:15:03,395 この人に惚れて 通っておるのか? 165 00:15:03,395 --> 00:15:06,398 いいえ。 そんなことは。 166 00:15:06,398 --> 00:15:09,902 あなた様よりも ずっと品のいい お酒でございますよ。 167 00:15:09,902 --> 00:15:12,905 何だと。 168 00:15:12,905 --> 00:15:18,405 まあ 何をなさいますの。 (孫助の笑い声) 169 00:15:21,413 --> 00:15:24,416 わしの真似をするなよ。・ 170 00:15:24,416 --> 00:15:26,919 出世せんぞ。 171 00:15:26,919 --> 00:15:28,921 はあ。 172 00:15:28,921 --> 00:15:32,858 さて わしは帰る。 173 00:15:32,858 --> 00:15:35,861 だらしないのう。 1本で 酔っ払った。 174 00:15:35,861 --> 00:15:39,361 駕籠を頼む。 女に送ってもらうのだ。 175 00:15:42,868 --> 00:15:46,038 満江に 気を遣うな。 176 00:15:46,038 --> 00:15:50,938 ゆっくりと酒を飲み 威張って帰ってこい! 177 00:15:53,378 --> 00:16:01,386 <年が明けて 父の具合が悪くなり 寝込む日が多くなりました。・ 178 00:16:01,386 --> 00:16:05,390 次男の仲次郎は 数え10歳です> 179 00:16:05,390 --> 00:16:08,393 父上は 字が下手なのですよ。 180 00:16:08,393 --> 00:16:11,396 おじじ様に習いなさい。 181 00:16:11,396 --> 00:16:14,896 (加音)隼太殿。 田口様から。 182 00:16:26,411 --> 00:16:32,351 (田口)「先頃 御依頼の一件 遅延に及び申し訳ござなく候。・ 183 00:16:32,351 --> 00:16:36,355 絵図2枚 ようよう出来候につき・ 184 00:16:36,355 --> 00:16:40,359 御高覧下されたく存じ奉り候」。 185 00:16:40,359 --> 00:17:01,380 ・~ 186 00:17:01,380 --> 00:17:07,880 あの男は 天才らしいな。 187 00:17:10,389 --> 00:17:13,392 いずれの水路を造っても・ 188 00:17:13,392 --> 00:17:17,729 水は 無駄なく 太蔵が原を 潤すことになるでしょう。 189 00:17:17,729 --> 00:17:25,404 ああ…。 普請の費用と 人数を それぞれ 割り出しておけ。 190 00:17:25,404 --> 00:17:27,404 はい。 191 00:17:29,675 --> 00:17:32,344 杉山様から お使いが見えました。 192 00:17:32,344 --> 00:17:38,684 「至急 お屋敷まで来られたい」と 御返事を お待ちでございます。 193 00:17:38,684 --> 00:17:41,884 分かった。 194 00:18:08,714 --> 00:18:11,383 (加藤)これは 桑山様。 195 00:18:11,383 --> 00:18:16,183 加藤か。 …片貝道場の同門だ。 196 00:18:19,391 --> 00:18:26,398 「道を固め みだりに家中の往来を 許すな」と 命じられております。 197 00:18:26,398 --> 00:18:31,670 すべての執政のお屋敷では 人の 出入りが 封じられております。 198 00:18:31,670 --> 00:18:34,339 お上の お指図か? 199 00:18:34,339 --> 00:18:38,343 今日の夕刻 「桐の間の お年寄」5人が・ 200 00:18:38,343 --> 00:18:41,680 「城に登られた」とも 聞いております。 201 00:18:41,680 --> 00:18:44,380 「桐の間の お年寄」が! 202 00:19:01,366 --> 00:19:05,166 (警固)待て! どこへ行く! 203 00:19:06,872 --> 00:19:10,041 何だ…。 204 00:19:10,041 --> 00:19:13,378 これは 隼太様。 小黒家老の屋敷から・ 205 00:19:13,378 --> 00:19:15,714 囲いを破って 逃げた者がおります。・ 206 00:19:15,714 --> 00:19:19,718 杉山様や 桐の間の お年寄衆に 仕返しを狙うものと思われまして。 207 00:19:19,718 --> 00:19:21,887 (加藤)逃げたのは 誰だ! 208 00:19:21,887 --> 00:19:25,887 (警固)不明です。 人数も はっきりしないそうです。 209 00:19:29,995 --> 00:19:34,166 ・(松崎)早くせんか! 何を もたもたしておる。 210 00:19:34,166 --> 00:19:52,184 ・~ 211 00:19:52,184 --> 00:19:55,187 松崎殿。 あの背の高い御仁は? 212 00:19:55,187 --> 00:19:58,356 (松崎)家士の駒井勇次郎だが 何か…? 213 00:19:58,356 --> 00:20:02,656 いや… 頼りになりそうだ。 214 00:20:05,363 --> 00:20:08,867 ・(松崎) お越しになりました。 215 00:20:08,867 --> 00:20:11,369 やあ 来てくれたか。 216 00:20:11,369 --> 00:20:13,705 今夜にも お上の お召しが あるというので・ 217 00:20:13,705 --> 00:20:16,708 来てもらったのだ。 屋敷にも 親戚にも・ 218 00:20:16,708 --> 00:20:18,710 頼りになるほどの者が おらんのでな。 219 00:20:18,710 --> 00:20:22,047 いよいよだな。 ついにだ。 220 00:20:22,047 --> 00:20:25,884 佐治を除き 執政はすべて 職を解かれ 閉門のさたを受けた。 221 00:20:25,884 --> 00:20:28,553 一夜にして お家を動かしていた者たちが・ 222 00:20:28,553 --> 00:20:32,657 消えうせたのだ。 今夜にも 登城の おさたがあろう。 223 00:20:32,657 --> 00:20:36,828 よかったの。 おう。 頼むぞ 桑山。 224 00:20:36,828 --> 00:20:40,332 今夜の おさたは もっぱら お上の お考えだが・ 225 00:20:40,332 --> 00:20:44,669 小黒たちは そうは思わん。 我々の差し金だと思っておる。 226 00:20:44,669 --> 00:20:48,673 御公儀は 田沼様に替わって 松平様の時代となって・ 227 00:20:48,673 --> 00:20:51,343 財政の立て直しを 図っておられる。 228 00:20:51,343 --> 00:20:54,179 お上も それに倣って 「もはや これまで」と・ 229 00:20:54,179 --> 00:20:56,181 小黒に 引導を 渡されたのだろう。 230 00:20:56,181 --> 00:21:00,185 しかし 借金づけの後を 引き継ぐのも容易ではござるまい。 231 00:21:00,185 --> 00:21:03,355 なに 長い間 冷や飯を食わされた おかげで・ 232 00:21:03,355 --> 00:21:06,358 考える時間だけは 十分にあった。 233 00:21:06,358 --> 00:21:10,862 人心を 一新する策は この胸の内に納まっておる。 234 00:21:10,862 --> 00:21:15,367 桑山。 貴公にも 手伝ってもらわねば ならんな。 235 00:21:15,367 --> 00:21:18,870 そうだ。 わしが 執政の席に就いたら・ 236 00:21:18,870 --> 00:21:21,870 貴公を 郡奉行に薦めよう。 237 00:21:23,708 --> 00:21:27,379 いや 今夜の礼の 前渡しという訳ではない。 238 00:21:27,379 --> 00:21:30,215 今夜は 友人として 来てもらったのだ。 239 00:21:30,215 --> 00:21:32,384 公私を混同したりはせぬ! 240 00:21:32,384 --> 00:21:34,886 そう願いたいもので ございますな。 241 00:21:34,886 --> 00:21:38,186 欲のない男だな。 242 00:21:40,392 --> 00:21:45,063 ・(女)かまいませぬか? おう。 243 00:21:45,063 --> 00:21:55,407 ・~ 244 00:21:55,407 --> 00:21:57,742 (千加)桑山様。 245 00:21:57,742 --> 00:22:01,746 <楢岡家の千加様 会いたさに お仲間が通い詰めたのは・ 246 00:22:01,746 --> 00:22:05,917 もう 17年も 昔のことでございます> 247 00:22:05,917 --> 00:22:08,420 御無沙汰をいたしております。 248 00:22:08,420 --> 00:22:10,422 こちらこそ。 249 00:22:10,422 --> 00:22:13,422 今夜は やっかいなお願いを 申し上げまして。 250 00:22:15,927 --> 00:22:18,930 お城から お使いが参りました。 251 00:22:18,930 --> 00:22:20,932 来たか。 252 00:22:20,932 --> 00:22:22,934 では 玄関で お待ち申し上げる。 253 00:22:22,934 --> 00:22:25,434 申し訳ございません。 何のおかまいもせずに。 254 00:22:39,384 --> 00:22:42,387 満江 風邪をひきますよ。 255 00:22:42,387 --> 00:22:46,891 案じるくらいなら 普段もっと 隼太殿に優しく。 256 00:22:46,891 --> 00:22:49,394 違います。 えっ…? 257 00:22:49,394 --> 00:22:54,399 なぜ 昔の友達の出世のために 尽くさねばならないのです。 258 00:22:54,399 --> 00:22:56,901 それは あなた…・ 259 00:22:56,901 --> 00:22:59,904 杉山様が 御出世なされば 隼太殿も。 260 00:22:59,904 --> 00:23:01,906 偉くなってほしくありません。 261 00:23:01,906 --> 00:23:03,908 まあ。 262 00:23:03,908 --> 00:23:08,413 私と子たちと 楽しく暮らして くれたら それで十分なのです。 263 00:23:08,413 --> 00:23:11,413 さっさと 帰ってくればいいのに! 264 00:23:38,043 --> 00:23:45,383 城から 呼び出しが来てな。 杉山の警固を 命ぜられた。 265 00:23:45,383 --> 00:23:50,388 どうやら 忠兵衛は… 首席家老になるらしい。 266 00:23:50,388 --> 00:23:52,891 いきなり 首席家老か? 267 00:23:52,891 --> 00:23:55,894 やっぱり 家柄だな。 268 00:23:55,894 --> 00:23:58,897 37歳の若さで 首席家老だ。 269 00:23:58,897 --> 00:24:01,900 それで お上が 我々に警固を命ぜられた訳だ。 270 00:24:01,900 --> 00:24:06,905 いや お上ではない。 桐の間の年寄連中だ。 271 00:24:06,905 --> 00:24:09,908 お年寄の命か。 ああ。 272 00:24:09,908 --> 00:24:14,913 小黒屋敷から逃げ出した奴らの 行方が まだ つかめておらんのだ。 273 00:24:14,913 --> 00:24:17,916 それで お年寄が 気をもんでいる。 274 00:24:17,916 --> 00:24:20,916 逃げたのは 誰だ? 275 00:24:22,921 --> 00:24:25,924 伜の勝三郎。 276 00:24:25,924 --> 00:24:30,361 勝三郎の叔父の 清太夫。 これは 一刀流の遣い手だ。 277 00:24:30,361 --> 00:24:35,366 ほかに 家士の山岸兵助。 遠藤作之進。 278 00:24:35,366 --> 00:24:38,666 警固の者は 一体 何をやっておったのだ。 279 00:24:41,372 --> 00:24:44,042 破れかぶれだ。 280 00:24:44,042 --> 00:24:47,442 あいつら 何をするか 分からん。 281 00:24:56,387 --> 00:25:00,225 遅くなった。 殿より 格別のお話もあったのでな。 282 00:25:00,225 --> 00:25:04,425 野瀬も 送ってくれるそうだな。 よろしく頼むぞ。 283 00:25:08,399 --> 00:25:11,236 (高橋)御家老。 ただいま 知らせが入り・ 284 00:25:11,236 --> 00:25:13,571 小黒屋敷から逃げ出た 遠藤作之進 一人が・ 285 00:25:13,571 --> 00:25:17,408 吉住町で捕らえられ 残りの3人は いまだ 行方知れずとのことで。・ 286 00:25:17,408 --> 00:25:19,410 では…。 287 00:25:19,410 --> 00:25:35,360 ・~ 288 00:25:35,360 --> 00:25:37,360 (市之丞)おい 待て! 289 00:25:41,366 --> 00:25:44,369 出てくるとすれば この辺りだぞ。 290 00:25:44,369 --> 00:26:11,396 ・~ 291 00:26:11,396 --> 00:26:13,396 ・(猫の鳴き声) 292 00:26:17,402 --> 00:26:19,404 (ため息) 293 00:26:19,404 --> 00:26:22,404 奴ら 出てこんな。 怖気づいたのだ。 294 00:26:25,910 --> 00:26:27,910 ヤア! 295 00:26:34,852 --> 00:26:36,854 ここは任せろ! 296 00:26:36,854 --> 00:26:38,856 忠兵衛の面倒を見ろ。 297 00:26:38,856 --> 00:28:05,376 ・~ 298 00:28:05,376 --> 00:28:07,376 (清太夫)ヤア! 299 00:28:14,385 --> 00:28:17,385 うっ う う…。 300 00:28:19,891 --> 00:28:21,891 (ため息) 301 00:28:32,337 --> 00:28:34,339 よくやったな。 302 00:28:34,339 --> 00:28:36,674 必死だった。 303 00:28:36,674 --> 00:28:46,374 ・~ 304 00:28:55,360 --> 00:28:57,960 刀を抜いたのですか? 305 00:28:59,697 --> 00:29:04,869 いくら友達のためとはいえ 刀を 抜くなどと そのようなことは。 306 00:29:04,869 --> 00:29:06,871 うるさい! 307 00:29:06,871 --> 00:29:09,374 そのような危ないことは おやめ下さい! 308 00:29:09,374 --> 00:29:11,374 黙れ! うるさい! 309 00:29:31,329 --> 00:29:35,666 <政変の後に 夫は 郡奉行に昇りました。・ 310 00:29:35,666 --> 00:29:41,366 杉山忠兵衛様は お約束を果たして下されたのです> 311 00:29:43,341 --> 00:29:45,341 あとはよい。 312 00:29:47,345 --> 00:29:49,347 手土産は? 313 00:29:49,347 --> 00:29:51,847 友吉に 渡してあります。 314 00:29:54,352 --> 00:29:58,856 夫の不徳で。 いや…。 315 00:29:58,856 --> 00:30:03,361 あ… 小黒派の執政の処分が 改めて決まりました。 316 00:30:03,361 --> 00:30:06,864 閉門が3人 謹慎が2人。 317 00:30:06,864 --> 00:30:10,868 小黒は 家禄を取り上げられて 妻と子は 領外追放。 318 00:30:10,868 --> 00:30:14,872 小黒本人は かむろ沢の小屋に 幽閉を命ぜられました。 319 00:30:14,872 --> 00:30:18,876 「鳥も渡らぬ かむろ沢」か。 320 00:30:18,876 --> 00:30:21,879 はい。 息子の勝三郎が・ 321 00:30:21,879 --> 00:30:25,883 お上に任ぜられたばかりの執政 杉山忠兵衛を襲ったことが・ 322 00:30:25,883 --> 00:30:28,883 重く咎められたようです。 323 00:30:32,824 --> 00:30:40,331 では… 郡奉行昇進の お礼に行って参ります。 324 00:30:40,331 --> 00:30:42,333 おい! 325 00:30:42,333 --> 00:30:49,340 忠兵衛殿を… もう 友だとは思うなよ。 326 00:30:49,340 --> 00:30:51,840 心を許すな! 327 00:30:53,845 --> 00:30:55,845 はい。 328 00:31:03,855 --> 00:31:07,358 桑山の執念 恐るべしだな。 329 00:31:07,358 --> 00:31:13,364 わしが 桑山に 太蔵が原の話を したのは もう 十数年も前だろう。 330 00:31:13,364 --> 00:31:16,364 はっ。 祝言の夜でございました。 331 00:31:19,370 --> 00:31:21,706 諦めろ。 332 00:31:21,706 --> 00:31:24,709 太蔵が原の開墾が 金食い虫にすぎぬことは・ 333 00:31:24,709 --> 00:31:28,379 あの 小黒本人が 手本を示した。 334 00:31:28,379 --> 00:31:31,382 おまけに あの時は 死人まで出した。 335 00:31:31,382 --> 00:31:34,719 お上が 我々に望んでおられるのは・ 336 00:31:34,719 --> 00:31:37,388 財政の立て直しと 人心の一新だ。 337 00:31:37,388 --> 00:31:40,892 そのためには やるべき仕事が 山積しておる。 338 00:31:40,892 --> 00:31:45,396 青苧と漆の 植え付けをすすめ 学校をつくり・ 339 00:31:45,396 --> 00:31:48,399 散らばった借金をまとめて 倹約令を見直す。 340 00:31:48,399 --> 00:31:50,902 すべて これからの仕事だが・ 341 00:31:50,902 --> 00:31:53,905 その中に 太蔵が原の開墾は 含まれておらん。 342 00:31:53,905 --> 00:31:57,408 開墾に回す金は 一文もないということで…。 343 00:31:57,408 --> 00:31:59,410 そのとおりだ。 344 00:31:59,410 --> 00:32:04,415 例えば 固い地盤をたどった 水路を掘るだけでも。 345 00:32:04,415 --> 00:32:06,918 いくら かかる? 346 00:32:06,918 --> 00:32:10,922 ざっと… 4千と5百両ほど。 347 00:32:10,922 --> 00:32:15,927 「4千5百両」! ほう… 話にならんな。 348 00:32:15,927 --> 00:32:17,927 (笑い声) 349 00:32:22,433 --> 00:32:28,439 この絵図は 御用人の 牧原喜左衛門様の お志で・ 350 00:32:28,439 --> 00:32:31,042 作ったものでございます。 351 00:32:31,042 --> 00:32:34,378 それが どうしたというのだ? 352 00:32:34,378 --> 00:32:38,049 つまり 太蔵が原の開墾には・ 353 00:32:38,049 --> 00:32:40,384 お上も なみなみならぬ お気持ちを抱いて…。 354 00:32:40,384 --> 00:32:45,389 桑山! 言わずもがなのことだ。 355 00:32:45,389 --> 00:32:49,894 わしが 何も知らぬとでも 思っているのか! 356 00:32:49,894 --> 00:32:54,065 お上が 何と仰せになろうと 今 太蔵が原には触らぬ。 357 00:32:54,065 --> 00:32:56,400 知らぬふりをする。 それが お家のためだ! 358 00:32:56,400 --> 00:32:58,402 掛かりのことでございましたら それがしに 策が…。 359 00:32:58,402 --> 00:33:00,905 黙れ! 360 00:33:00,905 --> 00:33:04,075 言われたとおりにせぬか! 361 00:33:04,075 --> 00:33:07,411 たかだか郡奉行の分際で。 362 00:33:07,411 --> 00:33:31,369 ・~ 363 00:33:31,369 --> 00:33:35,369 (ウグイスの鳴き声) 364 00:33:38,376 --> 00:33:40,378 桑山様。 この度は…。 365 00:33:40,378 --> 00:33:43,381 杉山のために お骨折りをいただき・ 366 00:33:43,381 --> 00:33:45,383 まことに かたじけのうございます。 367 00:33:45,383 --> 00:33:47,383 いや…。 礼など言うことはない。 368 00:33:49,387 --> 00:33:51,387 はい。 369 00:33:53,891 --> 00:33:57,395 昔 お好きだと仰せになった お菓子でございます。 どうぞ。 370 00:33:57,395 --> 00:34:00,395 恐縮でございます。 371 00:34:08,239 --> 00:34:11,409 普請の掛かりを お家に出していただこうとは・ 372 00:34:11,409 --> 00:34:13,411 考えておりません。 373 00:34:13,411 --> 00:34:15,413 桑山。 請け負わせるのでございます。 374 00:34:15,413 --> 00:34:17,415 「請け負わせる」…!? 375 00:34:17,415 --> 00:34:20,751 誰が 請け負うというのだ。 376 00:34:20,751 --> 00:34:23,921 開墾は 即座に 利を生む仕事ではない。 377 00:34:23,921 --> 00:34:28,426 仮に 土地が開けたとしても 10年後の利益は 微々たるものだ。 378 00:34:28,426 --> 00:34:30,695 元手を取って 儲けが出るまでは・ 379 00:34:30,695 --> 00:34:33,864 50年… いや 100年かかるやもしれん。 380 00:34:33,864 --> 00:34:36,701 そんな長丁場を 背負い切れる地主など・ 381 00:34:36,701 --> 00:34:39,704 領内に おる訳がない。 地主ではなく・ 382 00:34:39,704 --> 00:34:42,373 商人なら 金を出すかもしれません。 383 00:34:42,373 --> 00:34:44,873 誰のことを 言っておるのだ? 384 00:34:47,378 --> 00:34:49,378 羽太屋でございます。 385 00:34:51,382 --> 00:34:53,884 羽太屋は商人です。 利を示せば・ 386 00:34:53,884 --> 00:34:56,887 50年先でも 心を動かすかもしれません。 387 00:34:56,887 --> 00:35:00,725 それに 羽太屋は 開墾を請け負うだけの・ 388 00:35:00,725 --> 00:35:03,394 財力を備えております。 389 00:35:03,394 --> 00:35:08,399 あの羽太屋のことだ。 「借金は 金ではなく・ 390 00:35:08,399 --> 00:35:10,901 開いた土地で返してくれ」と 言うやもしれんな。 391 00:35:10,901 --> 00:35:12,903 あるいは。 392 00:35:12,903 --> 00:35:15,740 いえ。 むしろ そう持ちかけるべきです。 393 00:35:15,740 --> 00:35:18,909 「開墾の費用は 開いた土地で支払う」と。 394 00:35:18,909 --> 00:35:21,912 土地は どこかに 持ち出すことはできません。 395 00:35:21,912 --> 00:35:24,012 羽太屋から 年貢が取れます。 396 00:35:26,751 --> 00:35:30,354 うまくいけば 一両の金も費やすこともなく・ 397 00:35:30,354 --> 00:35:33,023 新たな土地が手に入り たとえ 失敗したとしても…。 398 00:35:33,023 --> 00:35:35,523 「お家の損には ならぬ」か。 399 00:35:39,363 --> 00:35:43,363 さすがは 桑山孫助殿の見込んだ婿だな。 400 00:35:46,370 --> 00:35:48,870 千加の気持ちだ。 はっ。 401 00:35:59,383 --> 00:36:02,383 貴公は 伸びたな。 402 00:36:04,388 --> 00:36:09,059 だが 野瀬は… 何の役も つけてやれずに・ 403 00:36:09,059 --> 00:36:12,959 …苦しかった。 404 00:36:15,900 --> 00:36:21,405 市之丞は 無役のままで ございますか? 405 00:36:21,405 --> 00:36:23,407 そう言うな 桑山。 406 00:36:23,407 --> 00:36:25,743 市之丞に扶持を持たせ 野瀬の別家を・ 407 00:36:25,743 --> 00:36:29,443 立てて下さるということは…? 手は尽くしたのだ。 408 00:36:33,350 --> 00:36:39,356 前は 5人で 奥方様のお茶と 菓子を頂いたものでございます。 409 00:36:39,356 --> 00:36:42,856 …昔はな。 410 00:36:52,369 --> 00:36:54,371 よかろう。 411 00:36:54,371 --> 00:36:57,875 太蔵が原のことは 貴公に任せる。 羽太屋に掛け合ってみろ。 412 00:36:57,875 --> 00:37:00,377 郡代には わしから話しておく。 413 00:37:00,377 --> 00:37:02,379 はっ。 414 00:37:02,379 --> 00:37:04,379 かたじけなく存じ上げます。 415 00:37:09,220 --> 00:37:11,555 <郡奉行の仕事に追われ・ 416 00:37:11,555 --> 00:37:16,060 夫が 羽太屋と話をつけたのは 夏のことでした。・ 417 00:37:16,060 --> 00:37:21,460 太蔵が原の開墾は 羽太屋の請け負い となりました> 418 00:37:24,401 --> 00:37:28,401 ・(うめき声) 419 00:37:33,344 --> 00:37:35,346 あなた!? 420 00:37:35,346 --> 00:37:37,346 いや…。 421 00:37:39,350 --> 00:37:41,352 (うめき声) 422 00:37:41,352 --> 00:37:45,352 隼太は… どうした? 423 00:37:47,024 --> 00:37:49,724 (友吉)旦那様の お戻りでございます。 424 00:37:51,362 --> 00:37:53,364 父が…。 425 00:37:53,364 --> 00:37:55,364 えっ!? 426 00:38:01,372 --> 00:38:04,375 庭に 倒れていたのです。・ 427 00:38:04,375 --> 00:38:10,375 医師は 「暑さで 心の臓を痛めたのでは」と。 428 00:38:15,886 --> 00:38:18,889 妹を 呼びましょうか? 429 00:38:18,889 --> 00:38:20,891 …そうですね。 430 00:38:20,891 --> 00:38:22,893 バカ! 431 00:38:22,893 --> 00:38:25,893 ふざけたことを言うな! 親父が 死ぬと言うのか! 432 00:38:31,335 --> 00:38:34,338 ・(蜩の鳴き声) 433 00:38:34,338 --> 00:38:38,842 羽太屋は どうなりました? 434 00:38:38,842 --> 00:38:42,012 うん? 435 00:38:42,012 --> 00:38:48,852 太蔵が原の開墾を 引き受けたのですか? 436 00:38:48,852 --> 00:38:50,854 ああ。 437 00:38:50,854 --> 00:38:54,354 そうですか。 438 00:38:58,362 --> 00:39:01,865 気にしていたのか? 439 00:39:01,865 --> 00:39:03,867 はい。 440 00:39:03,867 --> 00:39:09,867 「どうかな? …どうかな?」と 言っていました。 441 00:39:12,376 --> 00:39:16,376 それを聞かせてあげたら きっと…。 442 00:39:21,385 --> 00:39:24,388 夢を見たそうです。 443 00:39:24,388 --> 00:39:28,392 夢…? はい。 444 00:39:28,392 --> 00:39:32,392 郡代になった夢だそうです。 445 00:39:34,331 --> 00:39:40,331 「太蔵が原の開墾が始まって 郡代になった夢を見た」と。 446 00:39:44,008 --> 00:39:46,010 郡代が何だ! 447 00:39:46,010 --> 00:39:48,012 はっ。 448 00:39:48,012 --> 00:39:53,350 わしは お偉方のために 仕事をしているのではないのだ。 449 00:39:53,350 --> 00:39:56,850 民百姓のために 働いている。 450 00:40:00,357 --> 00:40:03,360 「郡代になって 喜び勇んでいる夢を・ 451 00:40:03,360 --> 00:40:08,032 この期になって見るとは」と 笑いました。 452 00:40:08,032 --> 00:40:12,036 「風のように走ってきた。・ 453 00:40:12,036 --> 00:40:17,374 あらゆる煩悩や 欲を 風のように吹きちぎられ・ 454 00:40:17,374 --> 00:40:20,377 捨て去ったと思ってきたが・ 455 00:40:20,377 --> 00:40:25,377 人というものは まことに悟れぬ」と。 456 00:40:31,321 --> 00:40:36,827 「風のように走ってきたが 悟れぬ」か。 457 00:40:36,827 --> 00:40:44,827 まことに 「風の果て 尚 悟れぬ」と 笑って。 458 00:40:46,837 --> 00:40:52,837 「風の果て 尚 悟れぬ」…。 459 00:40:59,349 --> 00:41:02,019 親父! 460 00:41:02,019 --> 00:41:05,022 親父 分かるか? 461 00:41:05,022 --> 00:41:07,422 あんたの伜の 隼太だ! 462 00:41:15,365 --> 00:41:17,365 えっ? 463 00:41:20,370 --> 00:41:27,370 く… 桑山… 又左衛門。 464 00:41:29,379 --> 00:41:34,379 はや… 隼太…。 465 00:41:36,386 --> 00:41:38,889 「又左衛門」? 466 00:41:38,889 --> 00:41:42,392 又左衛門を継げと言ってるのね。 467 00:41:42,392 --> 00:41:45,395 そうなのね? 468 00:41:45,395 --> 00:42:02,412 ・~ 469 00:42:02,412 --> 00:42:04,912 親父! 470 00:42:08,418 --> 00:42:10,918 親父! 471 00:42:12,923 --> 00:42:18,929 親父! 親父! …親父! 472 00:42:18,929 --> 00:42:23,934 親父! …親父! 473 00:42:23,934 --> 00:42:29,373 (泣き声) 474 00:42:29,373 --> 00:42:38,373 ・~ 475 00:43:04,408 --> 00:44:23,408 ・~ 476 00:50:09,899 --> 00:50:14,904 (満江)<太蔵が原の絵図が届いた夜 城下に政変が起こり・ 477 00:50:14,904 --> 00:50:22,078 小黒派は一掃され 杉山忠兵衛様が 首席家老に任じられます。・ 478 00:50:22,078 --> 00:50:25,915 その夜 護衛役を 頼まれた隼太は・ 479 00:50:25,915 --> 00:50:30,715 郡奉行に出世して 又左衛門を名乗ります> 480 00:50:32,422 --> 00:50:39,022 <そして 羽太屋の助けをかりて 太蔵が原の開墾を始めたのです> 481 00:50:47,270 --> 00:50:50,440 ・~(テーマ音楽) 482 00:50:50,440 --> 00:50:58,114 ・~ 483 00:50:58,114 --> 00:51:00,514 (トビの鳴き声) 484 00:51:02,619 --> 00:51:06,723 (又左衛門)これまでに 拓いた 土地は 3百町歩になります。 485 00:51:06,723 --> 00:51:10,393 いずれ 3千町歩と思われまするが・ 486 00:51:10,393 --> 00:51:13,063 まずは それがしが 郷方におりまする間に・ 487 00:51:13,063 --> 00:51:18,401 2千町歩ほどの土地を拓く道は つけたいと存じます。 488 00:51:18,401 --> 00:51:24,407 (忠盈)2千町歩か。 豪気なものだの。 489 00:51:24,407 --> 00:51:27,911 <又左衛門を名乗って3年目の夏・ 490 00:51:27,911 --> 00:51:31,414 お殿様の 太蔵が原 御視察がありました> 491 00:51:31,414 --> 00:51:34,751 (一同)はは~。 492 00:51:34,751 --> 00:51:37,587 <人の運とは 不思議なもので ございます。・ 493 00:51:37,587 --> 00:51:42,592 この日から 鯉が滝を登るような 出世が始まります> 494 00:51:42,592 --> 00:51:48,098 畑では 赤カブから 豆 青菜を 植えて うまく育っております。 495 00:51:48,098 --> 00:51:52,769 こちらの稲作は 今年より 早稲を試しております。 496 00:51:52,769 --> 00:51:56,106 実りの秋が 楽しみでござりまする。 497 00:51:56,106 --> 00:52:05,715 そうか。 しかし… よくやった。 498 00:52:05,715 --> 00:52:09,052 ・~ 499 00:52:09,052 --> 00:52:13,723 褒美に 煙草代を遣わそう。 500 00:52:13,723 --> 00:52:15,723 は…。 501 00:52:17,894 --> 00:52:21,397 ありがたき幸せに存じまする。 502 00:52:21,397 --> 00:52:25,735 皆 お殿様より 煙草代をいただいたぞ! 503 00:52:25,735 --> 00:52:28,905 (一同)おありがとうございまする。 504 00:52:28,905 --> 00:52:35,078 ・~ 505 00:52:35,078 --> 00:52:37,413 (庄六)ありがとうございまする。 506 00:52:37,413 --> 00:52:40,083 御苦労であった。 507 00:52:40,083 --> 00:52:45,922 <それから数日後に 庄六様のお内儀 幾江さんが…> 508 00:52:45,922 --> 00:52:49,926 ちよに 運ばせますから。 (幾江)これ 重いのです。 509 00:52:49,926 --> 00:52:54,764 (ちよ)しかられますから。 いいえ。 本当に! 510 00:52:54,764 --> 00:52:59,464 あっ あっ…。 申し訳ございません。 511 00:53:02,939 --> 00:53:07,439 夫が 隼太… ごめんなさりませ。 512 00:53:11,881 --> 00:53:15,051 「御主人様は 後光がさしていた。・ 513 00:53:15,051 --> 00:53:19,222 昔の友として 涙が出るほど うれしかった」と。 514 00:53:19,222 --> 00:53:21,891 さようでございますか。 515 00:53:21,891 --> 00:53:25,895 「あれは 必ず出世する。 お殿様が 御主人様を・ 516 00:53:25,895 --> 00:53:29,065 いたく 信用されておられた」と 申しましたので・ 517 00:53:29,065 --> 00:53:33,403 慌てて 賄賂を持って参りました。 518 00:53:33,403 --> 00:53:38,703 ありがとうございます。 さあ どうぞ お茶でも…。 519 00:53:40,910 --> 00:53:45,915 (千加)申し訳ございませぬ。 勝手に入りました。 520 00:53:45,915 --> 00:53:48,084 杉山様…。 521 00:53:48,084 --> 00:53:50,587 遊びに来たんですけれども。 522 00:53:50,587 --> 00:53:55,487 え? 私の所にでございますか? 523 00:53:57,927 --> 00:54:01,764 このお菓子は 長崎から 人が送ってくれましてね。 524 00:54:01,764 --> 00:54:04,701 異国のお菓子だそうです。 525 00:54:04,701 --> 00:54:08,204 甘くて おいしゅうございます。 526 00:54:08,204 --> 00:54:12,709 杉山も私も まことのお友達が いないのです。 527 00:54:12,709 --> 00:54:17,046 人は 沢山参りますが 頼みごとばかりで。 528 00:54:17,046 --> 00:54:19,716 昨日も 杉山と話をしたのですが・ 529 00:54:19,716 --> 00:54:26,389 本当に 心を許せるのは 桑山様だけだと しみじみと。 530 00:54:26,389 --> 00:54:29,726 はい。 時々は 遊びに 寄ってもらいたいものだと・ 531 00:54:29,726 --> 00:54:33,062 言っておりました。 満江様も 御一緒に。 532 00:54:33,062 --> 00:54:36,399 ありがとうございます。 私 そろそろ…。 533 00:54:36,399 --> 00:54:38,401 えっ! 534 00:54:38,401 --> 00:54:42,405 まだ よろしいでは ございませぬか。 はい。 535 00:54:42,405 --> 00:54:48,411 内職の傘を とって帰らなくては なりませぬ。 失礼をいたします。 536 00:54:48,411 --> 00:54:50,711 はい。 537 00:54:56,920 --> 00:54:59,020 (ため息) 538 00:55:01,090 --> 00:55:03,990 茶を…。 いいえ もう。 539 00:55:06,362 --> 00:55:11,367 桑山様は 郡代になられます。 540 00:55:11,367 --> 00:55:13,703 郡代でございますか? 541 00:55:13,703 --> 00:55:17,206 お殿様の覚えめでたく 次の郡代に決まったと・ 542 00:55:17,206 --> 00:55:19,375 夫が申しておりました。 543 00:55:19,375 --> 00:55:25,048 これは まだ 内々のことですから どうぞ 桑山様にも よしなに。 544 00:55:25,048 --> 00:55:28,448 ええ それは もちろん…。 545 00:55:30,053 --> 00:55:32,722 千加殿は 何をしに来たのだ? 546 00:55:32,722 --> 00:55:36,559 お菓子を お持ち下さったのです。 547 00:55:36,559 --> 00:55:38,895 話があったのでは ないのか? 548 00:55:38,895 --> 00:55:40,897 いいえ。 549 00:55:40,897 --> 00:55:42,899 そうか。 550 00:55:42,899 --> 00:55:48,071 (加音)でも 杉山の千加様が 遊びに来られたということは・ 551 00:55:48,071 --> 00:55:50,239 忠兵衛様が あなた様を・ 552 00:55:50,239 --> 00:55:54,911 見込んでらっしゃるってことで ございますね。 553 00:55:54,911 --> 00:56:02,418 もしや 次の郡代…。 郡代になれば 御加増になるのでしょう? 554 00:56:02,418 --> 00:56:05,521 300石以上と決まっております。 555 00:56:05,521 --> 00:56:10,860 当家は 180石ですから 低くみても 120石は…。 556 00:56:10,860 --> 00:56:15,860 しかし 次の郡代は 花岡と決まっております。 557 00:56:23,873 --> 00:56:26,876 ・~ 558 00:56:26,876 --> 00:56:30,476 もしや… 郡代の話か? 559 00:56:32,382 --> 00:56:36,482 あの忠兵衛が 訳もなく 妻女をよこすはずがない。 560 00:56:40,056 --> 00:56:43,456 白状いたします。 561 00:56:45,895 --> 00:56:50,400 次の郡代は あなたに決まったそうです。 562 00:56:50,400 --> 00:56:52,568 なに? 563 00:56:52,568 --> 00:56:58,068 お殿様の覚えめでたく あなたが 郡代に決まったと。 564 00:57:00,076 --> 00:57:03,076 それは まことか! はい。 565 00:57:06,015 --> 00:57:10,353 そうか。 ハハハ…。 566 00:57:10,353 --> 00:57:14,357 忠兵衛め 花岡を推したが お上に ひっくり返されたな。 567 00:57:14,357 --> 00:57:20,363 それで 自分の一派に 引き込もうという訳だ。 ハハハ…。 568 00:57:20,363 --> 00:57:28,204 ・~ 569 00:57:28,204 --> 00:57:32,708 そうか… 郡代か。 570 00:57:32,708 --> 00:57:39,382 <その4年後 御重役の 評定の場に 夫は呼ばれ…> 571 00:57:39,382 --> 00:57:43,052 太蔵が原の開墾地は 千五百町歩に達し・ 572 00:57:43,052 --> 00:57:48,224 ただいまのところ 4百五十町歩が 田畑として 使われております。 573 00:57:48,224 --> 00:57:52,395 (佐治)すると この後 米や畑の取れ高は・ 574 00:57:52,395 --> 00:57:57,066 増え続けるとみてよろしいのだな。 よろしいかと存じます。 575 00:57:57,066 --> 00:58:00,403 (松波)郡代の桑山殿が こう申しております。 576 00:58:00,403 --> 00:58:03,406 よろしいのでは ござりませぬか。 577 00:58:03,406 --> 00:58:09,512 (忠兵衛) 桑山… いや 郡代殿。・ 578 00:58:09,512 --> 00:58:14,350 これまで 家中の者には 家禄を 2割減らしてもらってきた。・ 579 00:58:14,350 --> 00:58:20,857 だが 今年から 僅かだが5石ずつ 家禄を戻そうと思っておる。・ 580 00:58:20,857 --> 00:58:23,860 太蔵が原のおかげで お家の台所にも・ 581 00:58:23,860 --> 00:58:26,362 少し ゆとりが出来たのでな。・ 582 00:58:26,362 --> 00:58:30,867 どうだろうか? 郡代としましては・ 583 00:58:30,867 --> 00:58:35,705 家禄を戻すことについて 異論はございません。 584 00:58:35,705 --> 00:58:40,710 さようか。 郡代殿のお許しが出た。 585 00:58:40,710 --> 00:58:45,548 (笑い声) 586 00:58:45,548 --> 00:58:49,548 では 今年から 家禄を 5石ずつ戻すことといたす。 587 00:58:52,555 --> 00:58:57,894 桑山殿。 さあ お上に お目通りを願おう。 588 00:58:57,894 --> 00:58:59,896 お上に? 589 00:58:59,896 --> 00:59:03,399 貴公は 今日から 中老に任ぜられる。 590 00:59:03,399 --> 00:59:10,339 ・~ 591 00:59:10,339 --> 00:59:14,343 郡代になった時には いろいろと 陰口をたたかれたな。 592 00:59:14,343 --> 00:59:19,849 はい。 貴公との古いつきあいから 首席家老のヒキだろうとか。 593 00:59:19,849 --> 00:59:23,352 羽太屋からもらった金を 執政たちに ばらまいた。 594 00:59:23,352 --> 00:59:29,192 そういう ひどいのもあったな。 しかし 今度は 文句あるまい。 595 00:59:29,192 --> 00:59:33,029 太蔵が原を拓いた桑山が 中老になったのだ。 596 00:59:33,029 --> 00:59:39,368 ところで 次の郡代だが…。 よい。 所用がある。 597 00:59:39,368 --> 00:59:43,706 次の郡代には 誰がいい? いずれ お上から 御下問があろう。 598 00:59:43,706 --> 00:59:45,708 いろいろと 名前は挙がっているが・ 599 00:59:45,708 --> 00:59:48,377 農政は 貴公が 一番よく分かっているからな。 600 00:59:48,377 --> 00:59:52,048 郡奉行の花岡が よろしいかと 存じまする。 601 00:59:52,048 --> 00:59:54,717 花岡なら 領内の農事は・ 602 00:59:54,717 --> 00:59:58,387 掌を指すがごとく そらんじておりまする。 603 00:59:58,387 --> 01:00:02,391 分かった。 花岡に決めよう。 604 01:00:02,391 --> 01:00:07,396 女に 店を出してやれ。 御加増で 630石になるぞ。 605 01:00:07,396 --> 01:00:11,400 (ふき)女ではございませぬ。 桑山様は 古いお知り合いで・ 606 01:00:11,400 --> 01:00:14,900 よくお越し下さる お客様でございます。 607 01:00:18,908 --> 01:00:22,411 お偉くなられると 嫌みも お上手になられて。 608 01:00:22,411 --> 01:00:27,416 ん? 私を 女などと…。 609 01:00:27,416 --> 01:00:31,016 私は あなたの女では ございませんよ。 610 01:00:33,422 --> 01:00:37,426 好きな男が 出世をするということは・ 611 01:00:37,426 --> 01:00:42,026 これほど 血が騒ぐものなのですね。 612 01:00:45,268 --> 01:00:47,968 (友吉)旦那様が お戻りでございます。 613 01:00:51,607 --> 01:00:54,807 (一同)おめでとうございます。 614 01:00:57,113 --> 01:01:01,117 この度は おめでとうございます。 615 01:01:01,117 --> 01:01:04,017 ああ。 616 01:01:05,888 --> 01:01:09,892 (一同)お帰りなさりませ。 617 01:01:09,892 --> 01:01:13,062 (仲次郎)お父上 おめでとうございます。 618 01:01:13,062 --> 01:01:16,462 (菊井)おめでとうございます。 619 01:01:18,401 --> 01:01:21,401 よろしゅうございましたね。 620 01:01:32,248 --> 01:01:37,253 今日は 疲れた。 人に会うのは 疲れる。 長い一日だった。 621 01:01:37,253 --> 01:01:39,755 お内儀も大変だ。 622 01:01:39,755 --> 01:01:45,428 屋敷替えもある。 誰か 人が要るな。 623 01:01:45,428 --> 01:01:49,932 庄六。 貴公 郷目付に変わるか? 624 01:01:49,932 --> 01:01:53,436 わしは 普請組だぞ。 とりあえず 見習いだが・ 625 01:01:53,436 --> 01:01:55,771 郷目付に変われ。 禄も 10石くらい増える。 626 01:01:55,771 --> 01:02:00,443 わしには 普請組の仕事が 性に合っておる。 627 01:02:00,443 --> 01:02:03,543 そうか。 そうだ。 628 01:02:11,053 --> 01:02:15,725 わしの祝いだ。 縁起物だ。 629 01:02:15,725 --> 01:02:20,725 おあしがたまる。 足腰が丈夫になるという。 630 01:02:23,899 --> 01:02:29,899 金がない。 それで 勘弁してくれ。 631 01:02:36,078 --> 01:02:40,416 庄六。 わしは うれしい。 632 01:02:40,416 --> 01:02:44,420 お前のような友がいて ありがたい。 633 01:02:44,420 --> 01:02:50,092 隼太 お主は立派だ! 634 01:02:50,092 --> 01:02:56,092 貧しい家の次男にもかかわらず よく 執政にまで昇った。 635 01:02:58,100 --> 01:03:01,500 ありがとう! 636 01:03:03,105 --> 01:03:06,876 <私たちは 住み慣れた家を引き払い・ 637 01:03:06,876 --> 01:03:10,379 与力町の家老屋敷に 移りました。・ 638 01:03:10,379 --> 01:03:14,216 新しく雇い入れた 家士の青木藤蔵は・ 639 01:03:14,216 --> 01:03:18,220 一刀流の免許取りで ございます> 640 01:03:18,220 --> 01:03:21,557 旦那様。 何だ? 641 01:03:21,557 --> 01:03:24,393 原口民弥様というお方を ご存じですか? 642 01:03:24,393 --> 01:03:28,397 原口様は 小谷直記様と同じ お上の御縁戚だ。 643 01:03:28,397 --> 01:03:31,897 お使いの方がいらして これを。 644 01:03:36,405 --> 01:03:41,243 (松崎)原口様のお屋敷に。 小谷様ともども。 645 01:03:41,243 --> 01:03:43,412 ・~ 646 01:03:43,412 --> 01:03:49,919 <原口様と小谷様は 政に物申す 特別なお家でした> 647 01:03:49,919 --> 01:03:54,089 (原口)そこもとは 杉山派か? 648 01:03:54,089 --> 01:03:57,092 いえ。 杉山忠兵衛様とは・ 649 01:03:57,092 --> 01:03:59,929 片貝道場で 同門のつきあいでございます。 650 01:03:59,929 --> 01:04:07,369 ふ~ん。 執政の中に そこもとの中老に・ 651 01:04:07,369 --> 01:04:12,374 強く 異論を唱えた者がいた。 それは ご存じか? 652 01:04:12,374 --> 01:04:16,545 それは どなた様のことでしょう? 653 01:04:16,545 --> 01:04:21,383 わしから 名前を言う訳にはいかぬ。 654 01:04:21,383 --> 01:04:24,053 そういう次第でな。 655 01:04:24,053 --> 01:04:31,560 敵と味方を 見誤ったりせぬよう 大事に振る舞うことだ。 656 01:04:31,560 --> 01:04:33,560 さささ…。 657 01:04:38,567 --> 01:04:43,572 だがな 孤立はいかんぞ 桑山。・ 658 01:04:43,572 --> 01:04:49,578 そこもとは 郡奉行から 成り上がってきた中老だ。・ 659 01:04:49,578 --> 01:04:54,750 それだけで すでに 執政の中で 孤立しておる。・ 660 01:04:54,750 --> 01:04:58,087 誰かと組むことだな。・ 661 01:04:58,087 --> 01:05:04,487 そうでないと 自分の意見を通すことは難しい。 662 01:05:08,531 --> 01:05:16,539 お上が そこもとに 大層 望みをかけておられる。・ 663 01:05:16,539 --> 01:05:25,047 存分に 力を振るわせたいと お考えになっておられてな。 664 01:05:25,047 --> 01:05:28,384 恐れ入りまする。 665 01:05:28,384 --> 01:05:31,720 ついでに 一つ 耳に入れておこう。 666 01:05:31,720 --> 01:05:39,395 お上も 我々も 杉山が 小黒の家をつぶしたのは・ 667 01:05:39,395 --> 01:05:46,402 いささか やりすぎだったと考えておる。 668 01:05:46,402 --> 01:05:50,072 やりすぎ… でございますか? 669 01:05:50,072 --> 01:05:56,745 (小谷)あの夜の一件には 不審のことありと 大目付が。・ 670 01:05:56,745 --> 01:06:00,916 後で だいぶ 調べたようだ。 大目付が…? 671 01:06:00,916 --> 01:06:06,855 そうだ。 小黒の伜ら4人もの男が 家から逃れ出たのは・ 672 01:06:06,855 --> 01:06:12,361 外から 手引きした者がいると 疑ったのだ。 673 01:06:12,361 --> 01:06:17,199 疑われたのは 杉山忠兵衛だ。 674 01:06:17,199 --> 01:06:19,201 ・~ 675 01:06:19,201 --> 01:06:22,204 杉山忠兵衛…? 676 01:06:22,204 --> 01:06:36,704 ・~ 677 01:06:39,722 --> 01:06:43,892 ・(市之丞)もう一度 言ってみろ! ごめん! 678 01:06:43,892 --> 01:06:47,396 (類)あ~! 言っていいのか。 言っていいのか! 679 01:06:47,396 --> 01:06:51,900 何をしておる? やめろ! やめんか! 680 01:06:51,900 --> 01:06:54,903 もう一度 言ってみろ! やめろ 市之丞! 681 01:06:54,903 --> 01:06:58,703 (雷鳴) 682 01:07:09,018 --> 01:07:12,855 おい こいつの女になれ。 683 01:07:12,855 --> 01:07:16,692 市之丞 どこへ行く? 684 01:07:16,692 --> 01:07:20,362 地獄だ。 地獄へ行くのだ! 685 01:07:20,362 --> 01:07:23,032 (類の笑い声) 686 01:07:23,032 --> 01:07:27,032 一蔵が待ってるよ~ ハハハ…。 (雷鳴) 687 01:07:33,375 --> 01:07:36,675 (悲鳴) やめろ! 688 01:07:38,881 --> 01:07:42,718 どけ! いや! 689 01:07:42,718 --> 01:07:46,055 どかぬ。 どけ! 690 01:07:46,055 --> 01:07:50,726 何があった? (雷鳴) 691 01:07:50,726 --> 01:07:56,899 一蔵を斬らせて… 勝手に出世したお前などに…。 692 01:07:56,899 --> 01:08:02,071 (雷鳴) 693 01:08:02,071 --> 01:08:05,007 市之丞! 694 01:08:05,007 --> 01:08:08,407 助かりました。 695 01:08:10,679 --> 01:08:13,348 ひどい顔をしておるぞ。 696 01:08:13,348 --> 01:08:17,352 御中老様のせいですよ。 697 01:08:17,352 --> 01:08:22,858 隼太は 中老。 自分は 無役の貧乏侍。 698 01:08:22,858 --> 01:08:26,958 あの顔で 声をあげて 泣くのです。 699 01:08:29,364 --> 01:08:36,038 どこかで 温かいお酒でも 飲ませて下さいな。 700 01:08:36,038 --> 01:08:38,040 断る! 701 01:08:38,040 --> 01:08:42,878 <この夜 夫は 家に戻りませんでした。・ 702 01:08:42,878 --> 01:08:45,380 居所は分かっておりました。・ 703 01:08:45,380 --> 01:08:49,980 ふきさんが 「卯の花」という お店を開いたのです> 704 01:08:51,720 --> 01:08:55,390 あなた様が 中老になられるのを よしとしなかったのは・ 705 01:08:55,390 --> 01:08:59,890 杉山様ですか? そうだ。 706 01:09:02,898 --> 01:09:06,502 昔の仲間のわしが そこそこに出世をする分には・ 707 01:09:06,502 --> 01:09:11,340 特に文句もなかったろう。 しかし 中老となると・ 708 01:09:11,340 --> 01:09:14,340 話が違うと思ったのだ。 709 01:09:17,012 --> 01:09:20,349 あなた様は お偉くなりすぎたのです。 710 01:09:20,349 --> 01:09:25,354 けれど もはや 男の意地では ございませぬか。 711 01:09:25,354 --> 01:09:31,360 そうだ。 わしは 忠兵衛の 言うがままにはならんが・ 712 01:09:31,360 --> 01:09:34,363 つぶされもせぬ。 713 01:09:34,363 --> 01:09:40,869 <夫は ひそかに 元大目付の 堀田勘解由様を呼び出しました> 714 01:09:40,869 --> 01:09:44,039 確かめたいことがあって 御足労願った。 715 01:09:44,039 --> 01:09:49,044 小黒ら前の執政が 一夜にして 失脚した時のことだ。 716 01:09:49,044 --> 01:09:53,048 あの一件 だいぶ詳しく 調べたそうだな。 717 01:09:53,048 --> 01:09:57,386 (堀田)どちらで 耳になされましたか? 718 01:09:57,386 --> 01:10:00,055 さる お方だ。 719 01:10:00,055 --> 01:10:02,455 まさか…。 720 01:10:13,902 --> 01:10:17,406 お知りになりたいのは どのようなことで? 721 01:10:17,406 --> 01:10:23,745 杉山忠兵衛殿と あの一件の かかわりあい 一切ということだ。 722 01:10:23,745 --> 01:10:32,421 「かかわりあい 一切」と 申して… まことに 分かりやすい話で。 723 01:10:32,421 --> 01:10:39,928 小黒屋敷から逃げ出した4人は 杉山様の仕掛けにはまったのです。 724 01:10:39,928 --> 01:10:41,928 罠か? 725 01:10:44,600 --> 01:10:50,772 あの夜 誰かが内通して 4人を裏門から出した。 726 01:10:50,772 --> 01:10:54,276 そう見当をつけて 警固していた者を・ 727 01:10:54,276 --> 01:10:58,113 ひそかに呼び出して 尋問をしました。・ 728 01:10:58,113 --> 01:11:07,055 足軽目付の小川宗蔵と 月番の組頭 山内蔵太の2人が・ 729 01:11:07,055 --> 01:11:12,394 裏門から 小黒らを逃がすのを 見たという者が・ 730 01:11:12,394 --> 01:11:15,898 3人 現れたのです。・ 731 01:11:15,898 --> 01:11:20,569 しかし その者から 口書きを取った時は・ 732 01:11:20,569 --> 01:11:28,410 すでに遅しで 世は 杉山様の 天下になっておりました。・ 733 01:11:28,410 --> 01:11:34,750 馬廻役組頭の山内蔵太は いずれ 執政に入りましょう。・ 734 01:11:34,750 --> 01:11:40,422 杉山様の縁戚でございます。 735 01:11:40,422 --> 01:11:45,922 わしは 何も知らずに 使われておったのだ。 736 01:11:47,763 --> 01:11:51,963 このような大事を頼めるのは 貴公しかおらんのだ。 737 01:11:55,103 --> 01:11:57,773 おのれ 忠兵衛! 738 01:11:57,773 --> 01:12:02,973 ・~ 739 01:12:04,880 --> 01:12:09,380 <中老になって 5年の歳月が流れました> 740 01:12:11,720 --> 01:12:15,720 おいでになった。 では 始めるといたそう。 741 01:12:21,229 --> 01:12:26,401 いや~ いかんいかん。 和田殿を 忘れておった。 742 01:12:26,401 --> 01:12:34,076 <今や 杉山派に属さぬ執政は 夫と 和田甚之丞様 2人だけでした> 743 01:12:34,076 --> 01:12:41,416 では 本日の評定だ。 病のために 職をひかれた多田殿の後役・ 744 01:12:41,416 --> 01:12:48,090 次席家老だが これは 松波殿にお任せするとして・ 745 01:12:48,090 --> 01:12:51,927 いずれにしろ 家老の席が 1つ 空いた訳で・ 746 01:12:51,927 --> 01:12:59,101 これを 桑山殿にお願いすると お上に 言上したいのだが。・ 747 01:12:59,101 --> 01:13:02,771 よろしいかな。 (楢岡)仰せのとおりに。 748 01:13:02,771 --> 01:13:06,875 (一同)異存ござらん。 749 01:13:06,875 --> 01:13:10,379 よろしいか 桑山殿? 750 01:13:10,379 --> 01:13:16,385 また 杉山のヒキだなどと 噂が出るやもしれませぬな。 751 01:13:16,385 --> 01:13:25,060 お分かりならばよい。 で 桑山の後の中老だが…。 752 01:13:25,060 --> 01:13:28,397 来ておるか? は…。 753 01:13:28,397 --> 01:13:35,070 桑山の後の中老には 馬廻役組頭 山内殿を・ 754 01:13:35,070 --> 01:13:38,407 上げたいと お上に言上いたす。 755 01:13:38,407 --> 01:13:48,417 ・~ 756 01:13:48,417 --> 01:13:54,589 山内殿の執政入りについて 異論があらば うかがいたい。 757 01:13:54,589 --> 01:13:57,092 ござりませぬ。 758 01:13:57,092 --> 01:14:03,432 ・~ 759 01:14:03,432 --> 01:14:06,732 ござりませぬ。 760 01:14:13,708 --> 01:14:15,708 おお…。 761 01:14:22,551 --> 01:14:25,251 目は どうだ? 762 01:14:31,059 --> 01:14:34,729 おお! これは すごい。 763 01:14:34,729 --> 01:14:39,234 クソッ… 若ぶりおって。 764 01:14:39,234 --> 01:14:43,238 この度は 家老にしていただき…。 765 01:14:43,238 --> 01:14:50,538 ああ その件か。 次は 首席か? おい。 766 01:14:52,581 --> 01:14:57,581 (2人の笑い声) 767 01:15:00,922 --> 01:15:06,522 では…。 又左。 たまには 遊びに来い。 768 01:15:09,364 --> 01:15:14,536 恐れ入ります。 しかし ただいまは お忙しゅうございましょうから・ 769 01:15:14,536 --> 01:15:18,373 いずれ お暇を見計らって。 770 01:15:18,373 --> 01:15:30,719 ・~ 771 01:15:30,719 --> 01:15:34,389 いかが いたしておる? はい。 怒っていらっしゃいます。 772 01:15:34,389 --> 01:15:36,689 そういうお顔なのだ。 773 01:15:38,393 --> 01:15:43,064 (ふき)お越しでございます。 今 お茶を…。 774 01:15:43,064 --> 01:15:45,564 (和田)茶はいらぬ。 775 01:15:49,070 --> 01:15:53,770 謡の稽古がある。 手短に お願いしたい。 776 01:15:56,077 --> 01:16:02,083 多田殿が去られて… ついに 2人だけとなりましたな。 777 01:16:02,083 --> 01:16:04,853 さよう。 778 01:16:04,853 --> 01:16:09,353 それで 今日は お願いがございまする。 779 01:16:11,026 --> 01:16:14,696 今後 評定の場において・ 780 01:16:14,696 --> 01:16:17,866 それがしが 杉山派に異論を唱える時は・ 781 01:16:17,866 --> 01:16:24,372 なにとぞ お味方をたまわりたい。 和田殿が 異論を唱える時は・ 782 01:16:24,372 --> 01:16:28,172 不肖 それがしが お味方つかまつりまする。 783 01:16:30,545 --> 01:16:36,885 杉山派は 我が世の春を迎え 彼らの申し分の中には・ 784 01:16:36,885 --> 01:16:40,722 身命を賭して 争わねばならぬことが・ 785 01:16:40,722 --> 01:16:42,891 出てくるおそれがござりまする。 786 01:16:42,891 --> 01:16:46,394 今になって さように言われるか。 787 01:16:46,394 --> 01:16:52,194 「時 すでに遅し」では ござらぬか。 788 01:16:54,236 --> 01:16:58,406 <羽太屋に 突然 町奉行所のお調べが入ったのは・ 789 01:16:58,406 --> 01:17:00,742 その日のことでした> 790 01:17:00,742 --> 01:17:06,014 (役人)太蔵が原の帳面は これだけか! これだけか! 791 01:17:06,014 --> 01:17:14,022 手に入れた羽太屋の帳面を 今 詳しく調べております。 792 01:17:14,022 --> 01:17:19,694 桑山とて 木石ではない。 必ず傷がある。 793 01:17:19,694 --> 01:17:23,494 見落とすな。 はい。 794 01:17:35,877 --> 01:17:38,477 いらんぞ。 795 01:17:41,383 --> 01:17:44,719 考えごとをしておる。 796 01:17:44,719 --> 01:17:49,057 桑山様と 仲よくして下さりませ。 797 01:17:49,057 --> 01:17:54,957 「仲よく」だと? たわけたことを。 798 01:17:57,732 --> 01:18:02,070 (万年)太蔵が原の開墾で 桑山様のお名が高まり・ 799 01:18:02,070 --> 01:18:05,507 杉山様は 取って代わられるのではと・ 800 01:18:05,507 --> 01:18:08,343 不安なのかもしれませぬ。 801 01:18:08,343 --> 01:18:11,513 帳面は 持っていったのか? 802 01:18:11,513 --> 01:18:16,685 はい。 ですが 気遣われることは 一つもございません。 803 01:18:16,685 --> 01:18:20,855 むろん やましいことは 何もない。 804 01:18:20,855 --> 01:18:26,027 しかし 向こうが 帳面を どう使うかだ。 805 01:18:26,027 --> 01:18:29,030 先頃 大坂に参りました折・ 806 01:18:29,030 --> 01:18:31,866 かの地の商人と 宴席をもったのですが・ 807 01:18:31,866 --> 01:18:37,372 近年は 利息の払いが滞ることも ないと 喜んでおりました。 808 01:18:37,372 --> 01:18:42,043 利息? お家の借金の利息か? 809 01:18:42,043 --> 01:18:45,380 さようで。 810 01:18:45,380 --> 01:18:47,480 どういう意味だ? 811 01:18:49,384 --> 01:18:54,389 桑山様は 「御金蔵」を ご存じでございますか? 812 01:18:54,389 --> 01:18:57,892 「御金蔵」… 金蔵のことか? 813 01:18:57,892 --> 01:19:02,731 そこに 銀の塊があるそうで。 814 01:19:02,731 --> 01:19:05,333 銀の塊? 815 01:19:05,333 --> 01:19:10,171 それが かすみと消えて 上方商人のふところに・ 816 01:19:10,171 --> 01:19:14,371 入ったという噂がございます。 817 01:19:17,846 --> 01:19:21,850 それは 大事よのう。 818 01:19:21,850 --> 01:19:29,023 ・~ 819 01:19:29,023 --> 01:19:31,025 これか? 820 01:19:31,025 --> 01:19:34,529 (神尾)この鉛銀を 灰吹きで 仕分けしたものが・ 821 01:19:34,529 --> 01:19:37,031 すなわち 銀でございます。 822 01:19:37,031 --> 01:19:41,536 この塊1つで 銀子どれほどになる? 823 01:19:41,536 --> 01:19:44,706 良質の鉛銀でござりますゆえ・ 824 01:19:44,706 --> 01:19:47,375 うまく仕分ければ 金で2百両ほど。 825 01:19:47,375 --> 01:19:52,380 この玉が 締めて30 ござりましたものが・ 826 01:19:52,380 --> 01:19:55,550 今は 2つになりました。 827 01:19:55,550 --> 01:20:00,450 ・~ 828 01:20:02,390 --> 01:20:08,396 この際 百姓衆に 借金を 返済してもらおうと思っておる。・ 829 01:20:08,396 --> 01:20:11,900 未納の年貢米を取り立てるのだ。 830 01:20:11,900 --> 01:20:15,069 凶作のために 納められていない年貢は・ 831 01:20:15,069 --> 01:20:18,072 これまでに 3万石に上っておる。 832 01:20:18,072 --> 01:20:22,072 ほう それはまた 思いのほかの石高ですな。 833 01:20:24,245 --> 01:20:29,417 (忠兵衛) 今 百姓衆に 未納年貢米という 大きな借金を返してもらえれば・ 834 01:20:29,417 --> 01:20:32,017 お家も 少しは楽になる。 835 01:20:34,422 --> 01:20:37,722 それがしは 不承知でござる。 836 01:20:41,095 --> 01:20:45,600 そもそも 凶作の年には 大幅に 年貢を減らすべきところ・ 837 01:20:45,600 --> 01:20:47,936 平年どおりに 取り立ててしまったという・ 838 01:20:47,936 --> 01:20:51,436 いわば 政の失策でございまする。 839 01:20:54,609 --> 01:20:59,113 話は 承った。 そろそろ 決するといたそう。・ 840 01:20:59,113 --> 01:21:01,783 長談義は 疲れる。 841 01:21:01,783 --> 01:21:05,053 お待ち下され! ことは お家の存亡かかわる大事。 842 01:21:05,053 --> 01:21:08,056 郡代 郡奉行がつらなる 月末の大評定にて・ 843 01:21:08,056 --> 01:21:11,456 十分に論じた上で 決すべきことと存ずる。 844 01:21:19,734 --> 01:21:26,074 桑山殿の 言われるとおりでござろう。 845 01:21:26,074 --> 01:21:31,412 それがしも 不承知! 百姓の苦しみを知らぬ者の・ 846 01:21:31,412 --> 01:21:35,012 およそ たわいもない 思いつきであろう! 847 01:21:38,419 --> 01:21:44,092 骨身にしみる御忠告として承る。 848 01:21:44,092 --> 01:21:48,096 では 大評定でと。 849 01:21:48,096 --> 01:22:11,386 ・~ 850 01:22:11,386 --> 01:22:13,388 おお 庄六。 851 01:22:13,388 --> 01:22:16,988 野菜を持ってきたぞ。 すまんな。 852 01:22:19,060 --> 01:22:25,066 忠兵衛の所にも 行ってきた。 珍しく あいつが出てきたぞ。 853 01:22:25,066 --> 01:22:28,403 そうか。 854 01:22:28,403 --> 01:22:33,074 お主を 「今日 葬るのだ」 と言っていた。 855 01:22:33,074 --> 01:22:38,074 ハハハ… そうか。 856 01:22:40,915 --> 01:22:45,420 かわいそうだな お主たちは。 857 01:22:45,420 --> 01:23:06,040 ・~ 858 01:23:06,040 --> 01:23:09,043 戦の前のあいさつか? 859 01:23:09,043 --> 01:23:13,943 そうだ。 長い間 世話になったな。 860 01:23:15,550 --> 01:23:22,056 隼太。 お前 本当に 悪い顔になったな。 861 01:23:22,056 --> 01:23:26,060 それは お互いだろうさ。 鹿之助。 862 01:23:26,060 --> 01:23:33,735 ・~ 863 01:23:33,735 --> 01:23:39,407 <その日 千加様が お越しに なりました。 特別なお話はなく・ 864 01:23:39,407 --> 01:23:43,407 いつもと変わらずに お過ごしになりました> 865 01:23:45,913 --> 01:23:50,418 未納年貢米の取り立ては つぶれ百姓を増やすもので・ 866 01:23:50,418 --> 01:23:56,090 土地を増やし 百姓を増やすという 農政の肝要な狙いが失われまする。 867 01:23:56,090 --> 01:23:59,761 土地を増やすのが 農政の狙いと言うが・ 868 01:23:59,761 --> 01:24:04,365 それでは 尋ねたい。 羽太屋は 太蔵が原に・ 869 01:24:04,365 --> 01:24:06,868 早くも 2百町歩を超える土地を 持ったが・ 870 01:24:06,868 --> 01:24:10,371 これは 農政を壊すものではないのか? 871 01:24:10,371 --> 01:24:13,875 その羽太屋に 金を出させ 開墾を請け負わせたのは・ 872 01:24:13,875 --> 01:24:15,877 どなたか? 貴公ではなかったか! 873 01:24:15,877 --> 01:24:20,048 羽太屋の開墾請け負いは 杉山様に 御相談の上…。 874 01:24:20,048 --> 01:24:22,050 2百町歩を超える土地を 持たせるなどと・ 875 01:24:22,050 --> 01:24:24,385 相談された覚えはない! 876 01:24:24,385 --> 01:24:27,885 (用人)殿のおなりでございます。 877 01:24:44,072 --> 01:24:47,772 かまわぬ。 続けよ。 はっ。 878 01:24:50,578 --> 01:24:55,416 杉山殿は 羽太屋の帳面を 残らず お調べでござろう。 879 01:24:55,416 --> 01:24:58,419 ならば お分かりのはず。 880 01:24:58,419 --> 01:25:02,423 羽太屋は 元金と1割2分の利息に 相当する土地を お家から・ 881 01:25:02,423 --> 01:25:07,195 受け取っていたにすぎぬ。 1割2分は低い利息でございます。 882 01:25:07,195 --> 01:25:11,365 それにしても 2百町歩は 大きすぎる。 今に 羽太屋は・ 883 01:25:11,365 --> 01:25:15,703 お上をしのいで 領内随一の 大地主に のし上がることは必定。 884 01:25:15,703 --> 01:25:19,540 しかし 羽太屋が 独力で 2千町歩の土地を・ 885 01:25:19,540 --> 01:25:24,045 拓いたことを言わぬは 片落ちではございませぬか。 886 01:25:24,045 --> 01:25:29,445 その土地から 我々は 少なからぬ 恩恵を すでに受けておりまする。 887 01:25:35,056 --> 01:25:41,395 ところで お上もおられる席で 内輪の話を持ち出すのは・ 888 01:25:41,395 --> 01:25:47,902 どうかと思われるが 今や羽太屋は 2百町歩の土地を得た上に・ 889 01:25:47,902 --> 01:25:53,908 名字帯刀を許され 300石 郡奉行格の扱いを受けるに至った。 890 01:25:53,908 --> 01:26:00,414 大したものじゃ。 この見返りは どれほどのものであったのか・ 891 01:26:00,414 --> 01:26:05,353 貴公に うかがいたいものだ。 892 01:26:05,353 --> 01:26:08,856 初音町に 貴公の生家で 端女であった女子が・ 893 01:26:08,856 --> 01:26:11,526 店を持っておる。 894 01:26:11,526 --> 01:26:16,426 これなどは その見返りの 産物かと思うが 違ったかの。 895 01:26:18,699 --> 01:26:23,538 もっとも この女子 もう いい加減の年寄りのようだが。 896 01:26:23,538 --> 01:26:25,738 (笑い声) 897 01:26:28,543 --> 01:26:33,047 羽太屋の見返りか否かは 調べれば 分かること。 898 01:26:33,047 --> 01:26:38,719 しかし そこまで 言われましては こちらも 少々・ 899 01:26:38,719 --> 01:26:43,057 杉山殿の不可思議を 申さねばなりませぬ。 900 01:26:43,057 --> 01:26:47,061 大目付の奥村殿。 (奥村)はっ。 901 01:26:47,061 --> 01:26:51,232 古い話だが 先の執政交代の折・ 902 01:26:51,232 --> 01:26:54,735 小黒勝三郎が 杉山殿を襲ったことが・ 903 01:26:54,735 --> 01:26:59,407 一族滅亡のもととなったことは 周知のとおりでござる。 しかし・ 904 01:26:59,407 --> 01:27:05,680 その襲撃 杉山殿が仕掛けた 罠だったという説がござる。 905 01:27:05,680 --> 01:27:11,880 これは 証拠があることゆえ 一度 お調べになっては いかがか。 906 01:27:15,356 --> 01:27:20,456 いまひとつ 御金蔵の鉛銀のことがござる。 907 01:27:24,198 --> 01:27:28,202 御承知がない向きも おられることゆえ 解説をいたす。 908 01:27:28,202 --> 01:27:33,040 この鉛銀は お家三代の 仁世公の御遺言により・ 909 01:27:33,040 --> 01:27:36,878 戦支度に使うために 残されたものでござります。 910 01:27:36,878 --> 01:27:41,378 これは もちろん 我が殿も 御承知でございましょう。 911 01:27:45,052 --> 01:27:50,725 その鉛銀 ただいまは 蔵に 僅か2つを残すのみ。 912 01:27:50,725 --> 01:27:55,062 しかも 驚くべきことに 28個の鉛銀・ 913 01:27:55,062 --> 01:27:59,901 金で およそ6千~7千両が なくなったのは・ 914 01:27:59,901 --> 01:28:03,738 杉山殿が 執政として 采配を 振るうに至ってからだと…。 915 01:28:03,738 --> 01:28:05,673 使いみちは はっきりしておる! 916 01:28:05,673 --> 01:28:09,343 上方商人からの借銀の 利息の支払いに充てたのだ。 917 01:28:09,343 --> 01:28:13,180 出入りは 元締めの帳面に きちんと記載されておる。 918 01:28:13,180 --> 01:28:17,380 使いみちを 間違われましたな。 又左! 919 01:28:22,690 --> 01:28:26,360 固いことを言うものではない。・ 920 01:28:26,360 --> 01:28:30,364 なるほど あれは 戦のために たくわえられておったものだ。・ 921 01:28:30,364 --> 01:28:35,036 だが 世は太平。 どこに 戦があると言うのだ。 922 01:28:35,036 --> 01:28:40,374 それより お家の財政のために 役立てようとした わしの才覚が・ 923 01:28:40,374 --> 01:28:43,544 それほど 咎められるべきものとは思わん。 924 01:28:43,544 --> 01:28:46,881 御公儀から 再三にわたっての お達しがあるも・ 925 01:28:46,881 --> 01:28:50,718 手をつけかねている 異国船に対する海辺の備えは・ 926 01:28:50,718 --> 01:28:54,388 仁世公が仰せの戦では ござるまいか。 927 01:28:54,388 --> 01:28:58,726 費用を出しかねて 海の守りが おろそかになっては・ 928 01:28:58,726 --> 01:29:01,526 申し訳が立ちますまい。 929 01:29:04,065 --> 01:29:10,338 執政の我らに相談もなく。 また お上のお許しを得る訳でもなく。 930 01:29:10,338 --> 01:29:15,176 独断の所業… 仁世公の御遺言を破られた! 931 01:29:15,176 --> 01:29:20,181 これは 杉山家老の大きな 落ち度と思われるが いかがか! 932 01:29:20,181 --> 01:29:23,381 ・~ 933 01:29:43,037 --> 01:29:46,040 はめられた! 934 01:29:46,040 --> 01:30:29,583 ・~ 935 01:30:29,583 --> 01:30:32,586 勝ったと思うな! 936 01:30:32,586 --> 01:31:02,783 ・~ 937 01:31:02,783 --> 01:31:08,722 ついに… ついに…・ 938 01:31:08,722 --> 01:31:11,725 ここまで来た。 939 01:31:11,725 --> 01:31:17,225 ・~ 940 01:31:39,420 --> 01:32:57,420 ・~ 941 01:38:16,383 --> 01:38:20,387 (満江)<出世の階段を駆け上った 夫 又左衛門は・ 942 01:38:20,387 --> 01:38:26,387 郡代から 中老へ 更に 家老にまで上り詰めます> 943 01:38:28,395 --> 01:38:30,898 <そして 51歳。・ 944 01:38:30,898 --> 01:38:34,401 杉山忠兵衛様に 論戦を挑んで・ 945 01:38:34,401 --> 01:38:38,401 ついには 最後の政敵を 倒すのでございます> 946 01:38:48,415 --> 01:38:51,418 ・~(テーマ音楽) 947 01:38:51,418 --> 01:38:57,918 ・~ 948 01:38:59,927 --> 01:39:03,430 (忠兵衛) 2年は 寝ているつもりだが・ 949 01:39:03,430 --> 01:39:07,434 桑山しだいでは もう少し 早くなるかもしれん。 950 01:39:07,434 --> 01:39:10,871 その時に あらためて 声をかける。 951 01:39:10,871 --> 01:39:13,871 (空せき) 952 01:39:17,377 --> 01:39:20,877 (市之丞)桑山の… 祝儀がない。 953 01:39:30,390 --> 01:39:33,390 これが最後だ。 954 01:39:36,396 --> 01:39:39,399 奴に伝えろ。 955 01:39:39,399 --> 01:39:42,069 「わしは 失意のあまり 家に閉じこもり・ 956 01:39:42,069 --> 01:39:44,404 一歩も出ていない」とな。 957 01:39:44,404 --> 01:39:49,409 ・(山田)旦那様。 楢岡様と 松波様が お越しでございます。 958 01:39:49,409 --> 01:39:51,409 (忠兵衛)うむ。 959 01:39:53,413 --> 01:39:56,917 新しい執政たちの 名は 分かったか? 960 01:39:56,917 --> 01:39:59,419 (松波)いや。 全く漏れてきませぬ。 961 01:39:59,419 --> 01:40:01,922 桑山は 誰にも相談せず・ 962 01:40:01,922 --> 01:40:04,424 家にこもって 一人で決めてるようで。 963 01:40:04,424 --> 01:40:06,924 そうか。 964 01:40:10,030 --> 01:40:16,036 <杉山様との対決のあと お殿様は 夫を首席家老に任じ・ 965 01:40:16,036 --> 01:40:21,041 人心一新を お命じになりました。 …ですが 私は・ 966 01:40:21,041 --> 01:40:23,877 原因不明の頭痛に襲われ・ 967 01:40:23,877 --> 01:40:27,377 床から出られなかったので ございます> 968 01:40:29,383 --> 01:40:32,886 <新たな執政として 最初に呼ばれたのは・ 969 01:40:32,886 --> 01:40:38,392 お納戸組頭の 堀田新五郎様でございます> 970 01:40:38,392 --> 01:40:42,392 (又左衛門)どうした? 何とか言わんか。 971 01:40:44,064 --> 01:40:46,400 (堀田)これは意外なことを 仰せになるものかな。 972 01:40:46,400 --> 01:40:49,903 「火急の御用」と聞き もしや 中老で御奉公かと・ 973 01:40:49,903 --> 01:40:53,407 飛んで参りましたら 次席家老とは…。 974 01:40:53,407 --> 01:40:59,413 <小姓頭の 牧原喜一郎様は 家老に任じられました> 975 01:40:59,413 --> 01:41:04,918 牧原様が お上の御用人だった頃 警固を務めたことがあり。 976 01:41:04,918 --> 01:41:06,920 (喜一郎)父より よく聞いておりました。 977 01:41:06,920 --> 01:41:08,922 そうか。 978 01:41:08,922 --> 01:41:12,859 「お上の意に沿うて 桑山様に 太蔵が原の開墾を・ 979 01:41:12,859 --> 01:41:16,363 強く勧めたのは このわしだ」と。 980 01:41:16,363 --> 01:41:20,367 うん。 2千5百町歩の土地が 開けたのは・ 981 01:41:20,367 --> 01:41:23,036 まさしく 牧原様のおかげだが・ 982 01:41:23,036 --> 01:41:25,872 こ度のこととは 何ら関わりはない。 983 01:41:25,872 --> 01:41:32,045 わしは 貴公の人柄と 人心掌握に惚れたのだ。 984 01:41:32,045 --> 01:41:37,718 <夫に お味方した 和田甚之丞様でございます> 985 01:41:37,718 --> 01:41:42,418 貴公には 執政を 外れていただく。 986 01:41:44,891 --> 01:41:51,398 杉山派を一掃し 若返りをはかり 新しいお家づくりを進めたいのだ。 987 01:41:51,398 --> 01:41:54,401 (和田)それがしは 杉山派ではござらぬ。 988 01:41:54,401 --> 01:41:57,404 杉山を 追い落とした 同志でござる! 989 01:41:57,404 --> 01:42:00,404 お家のためと お考えいただきたい。 990 01:42:06,413 --> 01:42:11,351 杉山派を倒し 今度は みどもが桑山派をつくって・ 991 01:42:11,351 --> 01:42:15,355 政を進めていくと 誰もが 思っていることでござろう。 992 01:42:15,355 --> 01:42:21,862 お家ができて 2百年余り ずっと 派閥の政を続けてきた。 993 01:42:21,862 --> 01:42:24,865 執政の顔ぶれだけが変わって・ 994 01:42:24,865 --> 01:42:29,369 中身は決して変わらぬ政は もう 終わりにしたいのだ。 995 01:42:29,369 --> 01:42:36,869 御嫡男の お年は… 確か 36でござったな? 996 01:42:38,879 --> 01:42:43,879 甚介でござるか? 36だが…。 997 01:42:47,387 --> 01:42:52,893 <新しい執政は 次席家老に 堀田新五郎・ 998 01:42:52,893 --> 01:42:56,396 家老に 牧原喜一郎と 中村右京・ 999 01:42:56,396 --> 01:42:59,399 そして 中老に金井武太夫と・ 1000 01:42:59,399 --> 01:43:04,905 和田甚之丞の嫡男 和田甚介の方々でございました> 1001 01:43:04,905 --> 01:43:08,905 ・(男)中老 和田甚介。 1002 01:43:13,346 --> 01:43:16,349 和田を外したのは さすがだな。 1003 01:43:16,349 --> 01:43:21,855 これで 「一時でも 杉山派に いた者には 日は当たらぬ」と・ 1004 01:43:21,855 --> 01:43:25,358 震え上がる者が おるに違いない。 1005 01:43:25,358 --> 01:43:28,361 住吉屋が 桑山に 挨拶に行くそうで。 1006 01:43:28,361 --> 01:43:30,363 なに!? 1007 01:43:30,363 --> 01:43:33,366 (万年)代々 杉山様と御昵懇の・ 1008 01:43:33,366 --> 01:43:38,205 住吉屋の宗兵衛と 山科屋の利兵衛でございます。 1009 01:43:38,205 --> 01:43:40,874 (2人)この度は おめでとうございます。 1010 01:43:40,874 --> 01:43:46,880 昔から存じておるが わしに 挨拶に来るとは思わなかった。 1011 01:43:46,880 --> 01:43:50,380 (宗兵衛) おそれ入ります。 1012 01:43:57,057 --> 01:44:01,394 (万年)これは 御挨拶代わりに どうか お納め下さい。 1013 01:44:01,394 --> 01:44:04,898 これは 賄賂ではないか。 ・(万年)はい。・ 1014 01:44:04,898 --> 01:44:08,401 この金は 賄賂でございます。 1015 01:44:08,401 --> 01:44:12,339 いずれ 何かの折には よろしく お頼み申しますという・ 1016 01:44:12,339 --> 01:44:14,341 意味合いの お金でございます。 1017 01:44:14,341 --> 01:44:18,345 金は もらわんでも 力には なるがの。 1018 01:44:18,345 --> 01:44:22,849 商人と申すものは 利で 結ばれた相手でなければ・ 1019 01:44:22,849 --> 01:44:27,854 なかなか信用しないという 悪い癖を持つものでございまして。 1020 01:44:27,854 --> 01:44:31,858 …なるほど。 はい。 1021 01:44:31,858 --> 01:44:36,529 この金は 杉山忠兵衛を見切って・ 1022 01:44:36,529 --> 01:44:40,429 この わしを 頼みにするという意味か。 1023 01:44:43,036 --> 01:44:45,372 そうか。 1024 01:44:45,372 --> 01:44:48,875 お家も 御両所から 莫大な借金をしておる。 1025 01:44:48,875 --> 01:44:51,878 要らぬと申して へそを曲げられても困る。 1026 01:44:51,878 --> 01:44:56,883 これは ありがたく頂戴する。 ・ありがとう存じます。 1027 01:44:56,883 --> 01:45:01,721 (ふき)杉山忠兵衛様の お父君は・ 1028 01:45:01,721 --> 01:45:04,891 賄賂が 大好きなお方だったそうですよ。 1029 01:45:04,891 --> 01:45:06,893 そうか。 1030 01:45:06,893 --> 01:45:10,330 ええ。 でも その お金を パ~ッと使うので・ 1031 01:45:10,330 --> 01:45:13,333 たいそう 好かれたそうですね。 1032 01:45:13,333 --> 01:45:17,003 よし では わしも「卯の花」で・ 1033 01:45:17,003 --> 01:45:19,339 パ~ッと 散財するとするか。 1034 01:45:19,339 --> 01:45:24,344 散財しようがございませんでしょ。 このような店では。 1035 01:45:24,344 --> 01:45:26,846 あっ…。 1036 01:45:26,846 --> 01:45:28,848 どうした? 1037 01:45:28,848 --> 01:45:33,853 いえ… 時々… どきどきするのです。 1038 01:45:33,853 --> 01:45:36,856 あ… 平気でございます。 1039 01:45:36,856 --> 01:45:40,860 もう よい。 …心の臓か。 1040 01:45:40,860 --> 01:45:45,365 もう 若くはないのだから 大事にせんとな。 1041 01:45:45,365 --> 01:45:49,369 あなたが 一番お偉くなったのですから・ 1042 01:45:49,369 --> 01:45:52,369 思い残すことは ありません。 1043 01:45:54,374 --> 01:45:59,174 ふき… お前に死なれたら 困る。 1044 01:46:00,880 --> 01:46:04,384 褒めてくれる者が この世にいなくなる。 1045 01:46:04,384 --> 01:46:06,386 死ぬなよ。 1046 01:46:06,386 --> 01:46:08,886 …はい。 1047 01:46:10,824 --> 01:46:14,828 よし。 わしが 耳かきをしてやろう。 1048 01:46:14,828 --> 01:46:19,128 まあ うれしい。 ほら。 1049 01:46:22,002 --> 01:46:24,838 (笑い声) 1050 01:46:24,838 --> 01:46:30,938 <私には 苦手な野瀬様が 御挨拶に来られました> 1051 01:46:32,846 --> 01:46:36,349 祝儀…。 お主がか? 1052 01:46:36,349 --> 01:46:38,852 少なくて すまん。 1053 01:46:38,852 --> 01:46:42,355 これは 受け取れぬ。 気持ちだけ頂戴する。 1054 01:46:42,355 --> 01:46:45,358 気にするな。 忠兵衛から もらった金だ。 1055 01:46:45,358 --> 01:46:50,958 忠兵衛… なら なおさら受け取れぬ。 1056 01:46:58,705 --> 01:47:02,375 忠兵衛は… 元気であったか? 1057 01:47:02,375 --> 01:47:07,380 いや 失意のあまり 屋敷に閉じこもっていた。 1058 01:47:07,380 --> 01:47:13,680 …そうか。 あの忠兵衛が 閉じこもっておったか。 1059 01:47:15,321 --> 01:47:18,825 そうか。 (笑い声) 1060 01:47:18,825 --> 01:47:23,329 お主… 早く悟れ。 1061 01:47:23,329 --> 01:47:26,833 どんどん 悪い顔になっていくぞ。 1062 01:47:26,833 --> 01:47:29,836 そうかの。 1063 01:47:29,836 --> 01:47:35,175 昔は 「目のきれいな奴だな」と よく思った。 1064 01:47:35,175 --> 01:47:39,846 のう… 満江殿。 1065 01:47:39,846 --> 01:47:42,646 はい。 1066 01:47:44,851 --> 01:47:48,354 何だ その目は。 (笑い声) 1067 01:47:48,354 --> 01:47:50,857 人のことが 言えるか! 1068 01:47:50,857 --> 01:47:54,861 悪相なら お主の方が よっぽどだ。 1069 01:47:54,861 --> 01:48:00,366 わしは 一蔵を斬った時に悟った。 1070 01:48:00,366 --> 01:48:06,372 「これで もう まともな暮らしは 決して望めぬ。・ 1071 01:48:06,372 --> 01:48:13,379 人の姿はしているが その実 影のようなものだ」とな。 1072 01:48:13,379 --> 01:48:16,382 一蔵か…。 1073 01:48:16,382 --> 01:48:23,389 今年の6月7日で 死んで26年。 27回忌になる。 1074 01:48:23,389 --> 01:48:26,389 あ~… そうだな。 1075 01:48:31,397 --> 01:48:33,897 覚えているはずはない。 1076 01:48:36,402 --> 01:48:39,402 墓参りに行ったことは あるか? 1077 01:48:47,914 --> 01:48:50,917 類殿と会って以来 ない。 1078 01:48:50,917 --> 01:48:56,422 庄六は 毎年 行っている。 わしもだ。 1079 01:48:56,422 --> 01:49:01,928 忠兵衛は 石ころを置いただけの 一蔵の墓を・ 1080 01:49:01,928 --> 01:49:05,431 まともな墓に 建て替えた。 1081 01:49:05,431 --> 01:49:08,431 お主は 何をした? 1082 01:49:10,870 --> 01:49:13,870 よくぞ ここまで出世したものだ。 1083 01:49:20,880 --> 01:49:25,885 老子の言葉に 「足を知る」という言葉がある。 1084 01:49:25,885 --> 01:49:33,893 「足を知る」。 満足せよ。 欲張るなという教えだ。 1085 01:49:33,893 --> 01:49:39,899 わしはな… 「足を知らぬ」 欲張りなのだ。 1086 01:49:39,899 --> 01:49:42,402 ごうつくばりか。 ああ そうだ。 1087 01:49:42,402 --> 01:49:45,402 生来の欲張りだ。 威張るな! 1088 01:49:47,073 --> 01:49:52,412 お主は 強欲。 忠兵衛は 育ちがよすぎたのだ。 1089 01:49:52,412 --> 01:49:57,417 殿の御前で 「仁世公の鉛銀を・ 1090 01:49:57,417 --> 01:50:02,422 御遺言に背いて 借金の利息返済に充てた」などと・ 1091 01:50:02,422 --> 01:50:04,924 責めたてられるとは 思わなかったそうだ。 1092 01:50:04,924 --> 01:50:08,928 それは 最後の話だ。 もとは 農政の議論で・ 1093 01:50:08,928 --> 01:50:13,428 「百姓をしぼるだけしぼる」という 忠兵衛に わしが異を唱えたのだ。 1094 01:50:17,370 --> 01:50:20,370 それは ウソだ。 1095 01:50:24,877 --> 01:50:30,383 立派なことを言うが 要するに あれは・ 1096 01:50:30,383 --> 01:50:34,387 お前と忠兵衛 2人の闘いよ。 1097 01:50:34,387 --> 01:50:36,889 喧嘩にすぎん。 1098 01:50:36,889 --> 01:50:58,411 ・~ 1099 01:50:58,411 --> 01:51:03,082 昔の友として これだけは言っておく。 1100 01:51:03,082 --> 01:51:10,356 忠兵衛は お主が 「長くて2年」と見ている。 1101 01:51:10,356 --> 01:51:14,360 しっかりと 爪を研いでおる。 1102 01:51:14,360 --> 01:51:17,363 気をつけろ。 1103 01:51:17,363 --> 01:51:20,867 「昔の友」か…。 1104 01:51:20,867 --> 01:51:25,367 そうだ。 遥か昔だ。 1105 01:51:27,373 --> 01:51:33,379 野瀬…。 ひとつ 聞きたいことがある。 1106 01:51:33,379 --> 01:51:36,382 何だ? 1107 01:51:36,382 --> 01:51:39,886 お主と 忠兵衛のことだ。 1108 01:51:39,886 --> 01:51:44,390 ああ… 何だ? 1109 01:51:44,390 --> 01:51:47,390 ただの友人か? 1110 01:51:51,898 --> 01:51:56,398 そうだ! …なぜだ? 1111 01:52:03,409 --> 01:52:06,913 (藤蔵)失礼します。 1112 01:52:06,913 --> 01:52:09,913 (せきこみ) 1113 01:52:13,853 --> 01:52:16,353 …厠だ。 1114 01:52:22,362 --> 01:52:24,862 かまわぬ。 1115 01:52:28,368 --> 01:52:32,372 (加音)もう 四つになりますよ。 1116 01:52:32,372 --> 01:52:34,372 はっ。 1117 01:52:40,880 --> 01:52:43,380 ・(女中)奥方様。 1118 01:52:48,888 --> 01:52:51,391 邪魔したな。 1119 01:52:51,391 --> 01:52:55,391 お帰りですか? うん。 1120 01:53:00,900 --> 01:53:03,903 孫が生まれたのか? 1121 01:53:03,903 --> 01:53:09,403 はい。 …娘の菊井に 女の子が。 1122 01:53:11,344 --> 01:53:14,344 そうか…。 1123 01:53:16,349 --> 01:53:19,352 息災でな。 1124 01:53:19,352 --> 01:53:28,361 ・~ 1125 01:53:28,361 --> 01:53:33,366 奥方様に挨拶されて そのまま お帰りになられました。 1126 01:53:33,366 --> 01:53:38,371 そうか。 …よい。 はっ。 1127 01:53:38,371 --> 01:53:58,891 ・~ 1128 01:53:58,891 --> 01:54:01,891 忠兵衛の金か…。 1129 01:54:09,335 --> 01:54:13,339 <首席家老となって はや ふたつき。・ 1130 01:54:13,339 --> 01:54:16,342 5月末の 大評定です> 1131 01:54:16,342 --> 01:54:21,347 (花岡)稲作は天気に恵まれ このまま 何事もなければ・ 1132 01:54:21,347 --> 01:54:24,851 例年にも増しての 収穫が見込まれます。 1133 01:54:24,851 --> 01:54:29,856 そうか。 執政が変わって不作では 何を言われるか分からん。 1134 01:54:29,856 --> 01:54:32,859 まずは 縁起のよい話だ。 1135 01:54:32,859 --> 01:54:35,862 (笑い声) 1136 01:54:35,862 --> 01:54:38,865 本日は これでよいか? 1137 01:54:38,865 --> 01:54:40,867 はい。 1138 01:54:40,867 --> 01:54:43,870 方々。 これにて 評定を終える。 1139 01:54:43,870 --> 01:54:46,870 (一同)はっ。 1140 01:54:53,379 --> 01:54:55,879 (奥村)御家老。 1141 01:54:57,884 --> 01:55:00,887 杉山の一派に 不穏な動きが。 1142 01:55:00,887 --> 01:55:03,890 杉山様が 何か たくらんでいるのか? いえ。 1143 01:55:03,890 --> 01:55:08,895 楢岡と松波が 桑山様に 刺客を放った様子にございます。 1144 01:55:08,895 --> 01:55:11,895 刺客か…。 1145 01:55:13,833 --> 01:55:16,836 (千加)満江様は お元気でいらっしゃいますか? 1146 01:55:16,836 --> 01:55:19,839 いや 何か急に 頭痛持ちになりましてな。 1147 01:55:19,839 --> 01:55:24,839 私も 体がすぐれませぬ。 年のせいでしょう。 1148 01:55:36,355 --> 01:55:39,859 旦那様 桑山様でございます。 1149 01:55:39,859 --> 01:55:42,359 ・(忠兵衛)うん。 1150 01:55:53,372 --> 01:55:57,877 大目付の奥村から 松波と楢岡の企てを聞いた。 1151 01:55:57,877 --> 01:56:05,217 2人には わしから話した。 刺客など 笑止千万だ。 1152 01:56:05,217 --> 01:56:07,917 そうか。 1153 01:56:09,822 --> 01:56:14,827 どうだ? 首席家老の居心地は 格別よかろう。 1154 01:56:14,827 --> 01:56:18,831 人の一生を 思いのままに動かす。 1155 01:56:18,831 --> 01:56:22,331 これほど面白きことは 他になかろう。 1156 01:56:24,337 --> 01:56:29,842 指一本 動かすだけで 人の生き死にさえ 決められる。 1157 01:56:29,842 --> 01:56:32,845 3日もやったら もはや 辞められまい。 1158 01:56:32,845 --> 01:56:35,348 そのとおりだ。 1159 01:56:35,348 --> 01:56:38,851 だが いずれ 辞めざるをえなくなる。 1160 01:56:38,851 --> 01:56:41,854 そうかの? 1161 01:56:41,854 --> 01:56:44,857 育ちが悪いからの。 お主は。 1162 01:56:44,857 --> 01:56:48,361 権勢におぼれ 人心が離れる。 1163 01:56:48,361 --> 01:56:50,861 長くて2年と見た。 1164 01:56:52,865 --> 01:56:55,865 これは… 返す。 1165 01:56:58,371 --> 01:57:01,874 野瀬が 貴公にもらった金だと 言っておった。 1166 01:57:01,874 --> 01:57:08,881 貴公 まさか 野瀬を ずっと 養っておった訳ではあるまいな? 1167 01:57:08,881 --> 01:57:12,818 何の話か よく分からんな。 1168 01:57:12,818 --> 01:57:15,821 そうか? 1169 01:57:15,821 --> 01:57:20,326 暮らしに困っていたがゆえ 時々は 助けたがな。 1170 01:57:20,326 --> 01:57:26,832 昔 御用人の牧原様の警固を 貴公に頼まれたことがあった。 1171 01:57:26,832 --> 01:57:33,832 あの時 小黒勝三郎らに襲われたが 市之丞が…。 1172 01:57:35,841 --> 01:57:42,848 ・~ 1173 01:57:42,848 --> 01:57:48,354 奴が あの夜 たまたま あの場所に 来合わせたとは考えられん。 1174 01:57:48,354 --> 01:57:53,859 明らかに わしと同じように 牧原様を警固しておった。 1175 01:57:53,859 --> 01:58:12,378 ・~ 1176 01:58:12,378 --> 01:58:15,881 わしは 野瀬に ずっと 負い目を感じておった。 1177 01:58:15,881 --> 01:58:17,883 なぜなら…。 1178 01:58:17,883 --> 01:58:20,883 そんな話はよい。 もう 忘れた。 1179 01:58:22,888 --> 01:58:26,892 一蔵のことで 野瀬の一生を壊したと思った。 1180 01:58:26,892 --> 01:58:32,064 あの男は もともと 皮肉ばかり言う。 1181 01:58:32,064 --> 01:58:35,901 世の中を 正面から見ることのできぬ・ 1182 01:58:35,901 --> 01:58:37,903 悲しい人間なのだ。 1183 01:58:37,903 --> 01:58:41,907 一蔵のことがあって ああなった訳ではない。 1184 01:58:41,907 --> 01:58:46,912 そう言われると 少しは 救われた気もするが…。 1185 01:58:46,912 --> 01:58:52,912 忠兵衛…。 市之丞を飼い犬にしたな。 1186 01:58:54,920 --> 01:58:58,924 小黒家老を倒し 政を その手に握るため・ 1187 01:58:58,924 --> 01:59:03,424 表では このわしを 裏で 市之丞を使ってきたのだな。 1188 01:59:05,431 --> 01:59:09,431 それが どうした? 悪いのか? 1189 01:59:13,372 --> 01:59:16,876 おのれの権勢欲を満たそうとして 何が悪い! 1190 01:59:16,876 --> 01:59:21,380 自分の手を汚したことのない お主らしい物言いだ。 1191 01:59:21,380 --> 01:59:25,050 政が きれい事で済むと 思うな! 1192 01:59:25,050 --> 01:59:27,450 正義漢面しおって! 1193 01:59:30,389 --> 01:59:35,889 桑山。 お上の言いなりでは 長くはもたんぞ! 1194 01:59:38,397 --> 01:59:41,400 まあ やっと日の光を。 1195 01:59:41,400 --> 01:59:44,403 やはり 桑山様が お越しになって うれしいのですね。 1196 01:59:44,403 --> 01:59:47,406 バカを言うな! 1197 01:59:47,406 --> 01:59:52,906 若い頃の思い出など 今となっては うとましいだけだ。 1198 01:59:59,418 --> 02:00:04,924 <宮坂一蔵殿の 27回忌の 3日前のことでした> 1199 02:00:04,924 --> 02:00:06,924 野瀬様。 1200 02:00:11,864 --> 02:00:14,867 桑山に…・ 1201 02:00:14,867 --> 02:00:17,867 これを 渡してくれぬか。 1202 02:00:19,872 --> 02:00:22,875 はい。 1203 02:00:22,875 --> 02:00:26,879 どうぞ お上がり下さりませ。 間もなく 戻ると思いますから。 1204 02:00:26,879 --> 02:00:31,383 いや… 会いたくない。 1205 02:00:31,383 --> 02:00:33,883 えっ…!? 1206 02:00:37,389 --> 02:00:44,396 「貴殿儀 近年 権勢をたのみ 朋輩の旧恩を忘れ・ 1207 02:00:44,396 --> 02:00:51,403 言語道断 無恥非道の所業之有り 許しがたく候。・ 1208 02:00:51,403 --> 02:00:56,408 よって 3日後の夕 七つ半時・ 1209 02:00:56,408 --> 02:01:00,913 六斎川 五間河原にて・ 1210 02:01:00,913 --> 02:01:05,413 果たし合い仕りたく お待ち申し上げ候」。 1211 02:01:08,420 --> 02:01:12,920 何を考えておるのだ。 バカ者が! 1212 02:01:20,866 --> 02:01:23,369 ・(藤蔵)おはようございます。 1213 02:01:23,369 --> 02:01:26,372 うん。 居所は分かったのか? 1214 02:01:26,372 --> 02:01:31,377 駄目です。 片貝道場にも 馬廻りの山崎作之進様の所にも・ 1215 02:01:31,377 --> 02:01:33,877 顔を出しておりませぬ。 1216 02:01:38,384 --> 02:01:41,387 何か変な気配ですよ。 1217 02:01:41,387 --> 02:01:45,391 野瀬様からの書状が 読めればいいんですけれど。 1218 02:01:45,391 --> 02:01:48,394 あなたから・ 1219 02:01:48,394 --> 02:01:53,694 今 何が起きているのか 聞いて下さいな。 1220 02:01:56,902 --> 02:02:00,906 心配しなさい もう少し。 夫のことでしょ! 1221 02:02:00,906 --> 02:02:06,912 私には 何も答えませんよ。 あの人は…。 1222 02:02:06,912 --> 02:02:10,349 母上こそ 聞いて下さいな。 1223 02:02:10,349 --> 02:02:14,849 あら 親に逆らうんですか! あなた 聞きなさい。 1224 02:02:18,857 --> 02:02:22,857 藤蔵。 …はっ。 1225 02:02:26,365 --> 02:02:28,865 ごめん。 1226 02:02:30,869 --> 02:02:34,873 (類)あ…。 これは 御家老様。 1227 02:02:34,873 --> 02:02:37,876 市之丞は おるか? 1228 02:02:37,876 --> 02:02:41,880 野瀬様が…? とんでもない。 1229 02:02:41,880 --> 02:02:44,883 もう何年も 見ていませんよ。 1230 02:02:44,883 --> 02:02:49,383 何か… ございましたの? 1231 02:02:51,390 --> 02:02:54,893 いや…。 邪魔をした。 1232 02:02:54,893 --> 02:02:57,393 桑山様。 1233 02:02:59,064 --> 02:03:05,264 あさっては 夫 一蔵の命日でございます。 1234 02:03:07,906 --> 02:03:12,344 一蔵に あのようなことがなければ・ 1235 02:03:12,344 --> 02:03:16,849 私も 今頃は 何の苦労もいらずに・ 1236 02:03:16,849 --> 02:03:21,353 安楽に 暮らせていたものをと・ 1237 02:03:21,353 --> 02:03:28,653 このごろは そのようなことばかり 思っております。 1238 02:03:31,363 --> 02:03:37,863 あ…。 まだ 私を 蔑んでおられますね。 1239 02:03:41,874 --> 02:03:44,877 お願いしたいことが ございます。 1240 02:03:44,877 --> 02:03:47,880 何の願いだ? 1241 02:03:47,880 --> 02:03:54,887 正直に申し上げますが 私… 暮らしに困っております。 1242 02:03:54,887 --> 02:04:00,893 いくらかでも 桑山様の お持ち合わせを・ 1243 02:04:00,893 --> 02:04:05,393 恵んでいただけると ありがたいのですが…。 1244 02:04:18,343 --> 02:04:21,343 多くは入っておらぬが 使うがよい。 1245 02:04:23,015 --> 02:04:31,715 野瀬様に… 「お体をいとうよう」 お伝え下さいませ。 1246 02:04:38,363 --> 02:04:44,163 あの人… 死病に取りつかれております。 1247 02:04:47,372 --> 02:04:50,372 長くは生きられんのか? 1248 02:04:53,378 --> 02:05:00,719 もう… 楽にさせてあげて 下さいな。 1249 02:05:00,719 --> 02:05:18,337 ・~ 1250 02:05:18,337 --> 02:05:21,840 (庄六)訳もなく 会いたくなって 来たというのか? 1251 02:05:21,840 --> 02:05:25,844 文句でもあるのか? ない。 1252 02:05:25,844 --> 02:05:28,847 今夜は 泊まっていけ。 1253 02:05:28,847 --> 02:05:32,847 あたりまえだ。 ほれ。 1254 02:05:39,358 --> 02:05:44,530 お前… 自分のことが 嫌になることはないのか? 1255 02:05:44,530 --> 02:05:47,430 …ない。 1256 02:05:49,368 --> 02:05:51,868 偉いな。 1257 02:05:53,872 --> 02:05:57,376 めずらしいな。 お前が 俺を褒めるか。 1258 02:05:57,376 --> 02:06:00,879 (笑い声) 1259 02:06:00,879 --> 02:06:05,879 俺は ず~っと 自分が嫌でな。 確かに。 1260 02:06:08,387 --> 02:06:11,823 野瀬は 頭もいい。 腕も立つ。 1261 02:06:11,823 --> 02:06:15,823 この世に不足があるのは あたりまえだ。 1262 02:06:17,829 --> 02:06:19,829 (せきこみ) 1263 02:06:24,336 --> 02:06:29,936 俺は… もうすぐ死ぬんだ。 1264 02:06:37,349 --> 02:06:42,849 医者へ行け。 …金ならあるぞ。 1265 02:06:47,359 --> 02:06:50,362 みじめな人生だったな。 1266 02:06:50,362 --> 02:06:59,871 ・~ 1267 02:06:59,871 --> 02:07:01,871 うまい! 1268 02:07:04,876 --> 02:07:07,879 ともと ちよは? 1269 02:07:07,879 --> 02:07:10,879 一人でやるから よいと言ったのだ。 1270 02:07:12,818 --> 02:07:14,818 ああ… もうよい。 1271 02:07:19,324 --> 02:07:21,827 ただいま 戻りました。 1272 02:07:21,827 --> 02:07:24,830 中へ入れ。 1273 02:07:24,830 --> 02:07:27,830 ごめん。 1274 02:07:30,335 --> 02:07:33,839 野瀬様は どこにも おられませんでした。 1275 02:07:33,839 --> 02:07:36,842 申し訳ありません。 1276 02:07:36,842 --> 02:07:40,846 杉山の屋敷は? はい 門を閉ざしたままで・ 1277 02:07:40,846 --> 02:07:43,849 人の出入りも 全くございません。 1278 02:07:43,849 --> 02:07:46,849 野瀬様が 立ち寄ったかどうかは 分かりません。 1279 02:07:48,854 --> 02:07:51,857 腹がへったであろう。 台所で 飯を食え。 1280 02:07:51,857 --> 02:07:53,857 はっ。 1281 02:08:03,368 --> 02:08:07,368 野瀬の手紙は 果たし状であった。 1282 02:08:09,374 --> 02:08:12,377 「果たし状」…。 1283 02:08:12,377 --> 02:08:15,377 野瀬様と 果たし合いですか? 1284 02:08:19,384 --> 02:08:22,888 いつでございます? 果たし合いは。 1285 02:08:22,888 --> 02:08:26,388 「果たし合い」です。 1286 02:08:28,393 --> 02:08:30,393 明日だ。 1287 02:08:34,399 --> 02:08:38,904 杉山様は まだ諦めて いらっしゃらないのですか? 1288 02:08:38,904 --> 02:08:41,904 諦めるものか あの男が。 1289 02:08:44,409 --> 02:08:49,414 野瀬は… 死病を患っておるらしい。 1290 02:08:49,414 --> 02:08:52,414 …死病? 1291 02:08:54,419 --> 02:08:57,419 間もなく 死ぬらしい。 1292 02:09:02,427 --> 02:09:05,931 不運な一生であった。 1293 02:09:05,931 --> 02:09:09,368 どうしても わしに 一太刀 あびせねば・ 1294 02:09:09,368 --> 02:09:12,871 気がすまんのであろう。 1295 02:09:12,871 --> 02:09:20,879 忠兵衛は その市之丞を利用して わしを殺すつもりなのだ。 1296 02:09:20,879 --> 02:09:25,879 果たし状などと 体裁はよいが わしを殺したいだけだ。 1297 02:09:31,390 --> 02:09:34,393 果たし合いに 行くのですか? 1298 02:09:34,393 --> 02:09:38,397 さあ…。 「さあ」…? 1299 02:09:38,397 --> 02:09:41,997 分からんのだ。 1300 02:09:45,404 --> 02:09:49,408 <その日 夫は はやばやと 床につきましたが・ 1301 02:09:49,408 --> 02:09:53,412 私は 眠れず 孫の着物を縫っておりました> 1302 02:09:53,412 --> 02:10:05,424 ・~ 1303 02:10:05,424 --> 02:10:08,424 ・貴様とて 立派なことは言えまい。 1304 02:10:12,364 --> 02:10:15,867 ・貴様とて 立派なことは言えまい。 1305 02:10:15,867 --> 02:10:40,392 ・~ 1306 02:10:40,392 --> 02:10:45,892 隼太…。 わしは 汚れたかの? 1307 02:10:48,400 --> 02:10:51,400 悪い顔か? 1308 02:10:57,409 --> 02:11:03,415 一生懸命 生きてきたつもりだったが・ 1309 02:11:03,415 --> 02:11:06,415 お前から見れば 悪人か。 1310 02:11:10,355 --> 02:11:15,355 一蔵は わしが 斬るべきであったか。 1311 02:11:18,363 --> 02:11:24,363 引き立ててくれた忠兵衛に 義理を尽くすべきであったか。 1312 02:11:27,372 --> 02:11:30,375 市之丞を見捨てず・ 1313 02:11:30,375 --> 02:11:34,375 真の友として 大切にするべきであったか。 1314 02:11:38,383 --> 02:11:45,056 お前なら そうしたであろうな。 1315 02:11:45,056 --> 02:11:57,402 ・~ 1316 02:11:57,402 --> 02:12:13,351 ・「風の果て 尚、足を知らず」 1317 02:12:13,351 --> 02:12:26,364 ・「風の果て 風の果て」 1318 02:12:26,364 --> 02:12:47,364 ・~ 1319 02:12:54,392 --> 02:12:57,395 <夫は 昨日とは違い・ 1320 02:12:57,395 --> 02:13:00,398 何か さっぱりとした 顔をしておりました> 1321 02:13:00,398 --> 02:13:02,901 起きてたか。 1322 02:13:02,901 --> 02:13:06,738 はい。 アヤの着物を 縫っていました。 1323 02:13:06,738 --> 02:13:08,907 そうか。 1324 02:13:08,907 --> 02:13:14,012 菊井が アヤを連れて遊びに来ると 言ってきました。 1325 02:13:14,012 --> 02:13:16,012 …そうか。 1326 02:13:22,354 --> 02:13:29,354 満江。 わしは 今日 市之丞と立ち合うことにした。 1327 02:13:31,363 --> 02:13:34,366 昨夜 眠りに落ちるまでは・ 1328 02:13:34,366 --> 02:13:38,703 「自分こそ正義」。 そう思っていた。 1329 02:13:38,703 --> 02:13:42,707 前の執政を倒すために 杉山忠兵衛が打った手は・ 1330 02:13:42,707 --> 02:13:45,043 それは ひどいものであった。 1331 02:13:45,043 --> 02:13:49,381 そして ひとたび権勢を握ると 今度は 敵対する者を・ 1332 02:13:49,381 --> 02:13:53,718 要職から 次々と外し その矛先を わしに向けてきた。 1333 02:13:53,718 --> 02:13:57,889 だから わしは杉山と闘い 奴を退けた。 1334 02:13:57,889 --> 02:14:01,393 「やましいことは 何一つない」。 そう思っていた。 1335 02:14:01,393 --> 02:14:09,067 しかし 夜中 ふいに声が聞こえて 目が覚めた。 1336 02:14:09,067 --> 02:14:12,467 声…? 1337 02:14:15,006 --> 02:14:22,180 「貴様とて 立派なことは 言えまい」。 そう言った。 1338 02:14:22,180 --> 02:14:25,880 どなたの声でございます? 1339 02:14:29,354 --> 02:14:32,857 若い頃の わしの声だ。 1340 02:14:32,857 --> 02:14:36,357 上村隼太の声だった。 1341 02:14:42,367 --> 02:14:46,367 今日は 一蔵の命日だ。 1342 02:14:49,374 --> 02:14:55,380 26年前の この日 市之丞は一蔵を斬った。 1343 02:14:55,380 --> 02:14:59,880 そして 一生を棒に振った。 1344 02:15:01,886 --> 02:15:05,890 本当に 一蔵を 斬らねばならなかったのは・ 1345 02:15:05,890 --> 02:15:08,390 この わしだ。 1346 02:15:10,328 --> 02:15:14,332 (隼太)俺が行く。 そうだ 俺が行く! 1347 02:15:14,332 --> 02:15:16,334 市之丞! 1348 02:15:16,334 --> 02:15:20,338 (市之丞)分かった。 もう お前を卑怯者呼ばわりはせん。 1349 02:15:20,338 --> 02:15:23,338 一蔵。 (一蔵)悪い冗談は よせ。 1350 02:15:28,346 --> 02:15:31,015 私には 分かりません。 1351 02:15:31,015 --> 02:15:36,020 なぜ 一蔵殿を いつまでも覚えているのか。 1352 02:15:36,020 --> 02:15:40,420 なぜ 野瀬様を それほど重く受け止めるのか。 1353 02:15:43,361 --> 02:15:47,361 さあ… なぜかの。 1354 02:15:49,367 --> 02:15:52,871 おやめになると 思いましたのに・ 1355 02:15:52,871 --> 02:15:57,371 果たし合いをすると おっしゃるのですか? 1356 02:15:59,377 --> 02:16:02,380 了見しろ。 1357 02:16:02,380 --> 02:16:12,323 ・~ 1358 02:16:12,323 --> 02:16:18,329 <夫は それから 大目付の奥村様を呼びました> 1359 02:16:18,329 --> 02:16:22,834 わしは この果たし合いを 受けようと思っておる。 1360 02:16:22,834 --> 02:16:26,337 (奥村)御冗談を! 冗談ではない。 1361 02:16:26,337 --> 02:16:30,341 申し込みを受けるとすれば 誰かに 届け出ねばならん。 1362 02:16:30,341 --> 02:16:34,846 月番の家老に 届けてもよいのだが それでは 話が大げさになる。 1363 02:16:34,846 --> 02:16:37,348 そこで 貴公を呼んだのだ。 1364 02:16:37,348 --> 02:16:40,351 野瀬を捕らえましょう。 それは ならん。 1365 02:16:40,351 --> 02:16:43,855 御家老! お立場を お考え下さい。・ 1366 02:16:43,855 --> 02:16:46,855 認められませぬ! 1367 02:16:48,526 --> 02:16:52,363 それがしが お供いたします。 えっ…!? 1368 02:16:52,363 --> 02:16:56,367 奥村様が どうしても お一人では 駄目だとおっしゃり・ 1369 02:16:56,367 --> 02:17:01,372 それがしが 近間に隠れ いざという時には飛び出すことに。 1370 02:17:01,372 --> 02:17:04,876 旦那様は しぶしぶ それを のまれました。 1371 02:17:04,876 --> 02:17:07,378 旦那様は? 1372 02:17:07,378 --> 02:17:10,378 おやすみになって いらっしゃいます。 1373 02:17:40,345 --> 02:18:06,371 ・~ 1374 02:18:06,371 --> 02:18:10,875 藤蔵。 わしが呼ぶまで 決して飛び出すではないぞ。 1375 02:18:10,875 --> 02:18:13,378 よいな? はっ。 1376 02:18:13,378 --> 02:18:38,903 ・~ 1377 02:18:38,903 --> 02:18:42,407 ・(草をかき分ける音) 1378 02:18:42,407 --> 02:18:59,424 ・~ 1379 02:18:59,424 --> 02:19:01,424 一人か? 1380 02:19:03,428 --> 02:19:05,430 一人だ。 1381 02:19:05,430 --> 02:19:21,430 ・~ 1382 02:19:44,402 --> 02:21:03,402 ・~ 1383 02:26:51,896 --> 02:26:56,400 (鐘の音) 1384 02:26:56,400 --> 02:27:00,738 (又左衛門)藤蔵。 わしが呼ぶまで 決して 飛び出すではないぞ。 1385 02:27:00,738 --> 02:27:03,538 よいな。 (藤蔵)はっ。 1386 02:27:09,413 --> 02:27:11,415 (鐘の音) 1387 02:27:11,415 --> 02:27:14,585 「一筆申しおき候。・ 1388 02:27:14,585 --> 02:27:19,924 それがし 宮坂一蔵27回忌の今日・ 1389 02:27:19,924 --> 02:27:25,763 旧友 野瀬市之丞と 果たし合い いたすことと相なり申し候。・ 1390 02:27:25,763 --> 02:27:32,269 この一件 一蔵 相果てて候よりの 宿命に候か。・ 1391 02:27:32,269 --> 02:27:37,274 これまで 長年 苦労相かけ候こと多く・ 1392 02:27:37,274 --> 02:27:41,612 ひとえに 相わび申し候」。 1393 02:27:41,612 --> 02:27:44,882 ・~(テーマ音楽) 1394 02:27:44,882 --> 02:27:52,389 ・~ 1395 02:27:52,389 --> 02:27:56,489 (風の音) 1396 02:28:07,905 --> 02:28:10,074 (市之丞)一人か? 1397 02:28:10,074 --> 02:28:12,074 一人だ。 1398 02:28:28,926 --> 02:28:31,726 一人で来たのは 上出来だ。 1399 02:28:37,768 --> 02:28:40,437 さあ 来い! 1400 02:28:40,437 --> 02:28:44,875 久しぶりだな 市之丞。 1401 02:28:44,875 --> 02:28:50,675 貴様の空鈍流 錆び付いてないか とくと見せてもらうぞ。 1402 02:28:57,888 --> 02:29:03,894 ・~ 1403 02:29:03,894 --> 02:29:07,231 今日は 貴様の邪剣はくらわぬぞ。 1404 02:29:07,231 --> 02:29:10,401 どうかな。 1405 02:29:10,401 --> 02:29:13,404 (斬り合う音) 1406 02:29:13,404 --> 02:29:24,582 ・~ 1407 02:29:24,582 --> 02:29:29,420 (斬り合う音) 1408 02:29:29,420 --> 02:29:51,375 ・~ 1409 02:29:51,375 --> 02:29:53,877 うわ~! 1410 02:29:53,877 --> 02:30:16,734 ・~ 1411 02:30:16,734 --> 02:30:19,903 (鳥の鳴き声) 1412 02:30:19,903 --> 02:30:38,088 ・~ 1413 02:30:38,088 --> 02:30:40,088 うわ~! うっ! 1414 02:31:02,379 --> 02:31:09,053 市之丞…。 市之丞! 1415 02:31:09,053 --> 02:31:11,055 水くれ。 1416 02:31:11,055 --> 02:31:13,057 今 飲んだら 死ぬぞ。 1417 02:31:13,057 --> 02:31:17,457 かまわん。 水くれ…。 水だ。 1418 02:31:49,359 --> 02:31:54,031 市之丞 すまなかった。 1419 02:31:54,031 --> 02:31:58,431 一蔵は わしが 斬らねばならなかった。 1420 02:32:04,208 --> 02:32:06,408 なあに…。 1421 02:32:09,046 --> 02:32:11,946 よくやったさ 隼太。 1422 02:32:14,051 --> 02:32:17,387 2人とも よくやった…。 1423 02:32:17,387 --> 02:33:14,211 ・~ 1424 02:33:14,211 --> 02:33:17,381 藤蔵! はっ。 1425 02:33:17,381 --> 02:33:32,396 ・~ 1426 02:33:32,396 --> 02:33:34,696 どうぞ。 1427 02:33:39,403 --> 02:33:43,407 あとは それがしが しかるべく…。 内々に。 1428 02:33:43,407 --> 02:34:06,363 ・~ 1429 02:34:06,363 --> 02:34:16,874 (類)今日 ここへ来いと 野瀬様が 知らせてくれました。 1430 02:34:16,874 --> 02:34:23,380 あの人と一緒に… 帰ります。 1431 02:34:23,380 --> 02:34:46,336 ・~ 1432 02:34:46,336 --> 02:34:51,008 (幾江)まあ… どうなされたのです? 1433 02:34:51,008 --> 02:34:53,677 (庄六)どうなされました? 1434 02:34:53,677 --> 02:34:56,977 庄六。 話したいことがある。 1435 02:35:00,350 --> 02:35:03,450 幾江! 医者だ! はい。 1436 02:35:06,523 --> 02:35:10,527 (庄六)今日は 一蔵の27回忌なので・ 1437 02:35:10,527 --> 02:35:14,364 坊さんを呼んで 経を読んでもらったのですが・ 1438 02:35:14,364 --> 02:35:20,871 これが どうにもならぬお経で。 何度もつかえるし・ 1439 02:35:20,871 --> 02:35:25,871 飛ばすしで まことに 腹が立ちました。 1440 02:35:27,878 --> 02:35:30,881 お前は 偉いな。 1441 02:35:30,881 --> 02:35:33,884 宮坂の家はつぶれてしまい・ 1442 02:35:33,884 --> 02:35:37,884 一蔵の供養をする者は 誰もおりませぬので。 1443 02:35:40,557 --> 02:35:44,494 今日は どうなされましたか? 1444 02:35:44,494 --> 02:35:48,694 庄六… 俺 お前で 話そう。 1445 02:35:55,839 --> 02:35:57,939 分かった。 1446 02:36:00,510 --> 02:36:06,410 今日 五間河原で 市之丞と 斬り合いをしてきた。 1447 02:36:10,687 --> 02:36:16,687 やっぱり そうか。 どうも そんな気がしたのだ。 1448 02:36:20,364 --> 02:36:26,364 それで 奴は死んだのか? 1449 02:36:28,538 --> 02:36:30,938 死んだ。 1450 02:36:34,878 --> 02:36:39,383 奴は 俺に 果たし状を 送ってきたのだ。 1451 02:36:39,383 --> 02:36:42,383 (泣き声) 1452 02:36:46,223 --> 02:36:48,523 そうか…。 1453 02:36:51,061 --> 02:36:57,567 奴は 死病を患っていて…・ 1454 02:36:57,567 --> 02:37:00,967 「もう 長い命ではない」と 言っていた。 1455 02:37:04,741 --> 02:37:07,041 いつのことだ? 1456 02:37:09,079 --> 02:37:12,749 おとといの夜だ。 1457 02:37:12,749 --> 02:37:22,426 市之丞が 普請場に来て… 小屋に 一晩泊まっていったのだ。 1458 02:37:22,426 --> 02:37:24,926 (泣き声) 1459 02:37:28,598 --> 02:37:34,438 「俺は もうすぐ死ぬのだ。・ 1460 02:37:34,438 --> 02:37:37,941 惨めな人生だ」と 言っていた。 1461 02:37:37,941 --> 02:37:51,388 ・~ 1462 02:37:51,388 --> 02:37:53,488 一対一か? 1463 02:37:55,559 --> 02:37:59,729 ああ。 藤蔵を連れていったが・ 1464 02:37:59,729 --> 02:38:04,901 顔を合わせたら どうしても 一対一で やりたくなった。 1465 02:38:04,901 --> 02:38:12,401 そうか。 それなら いい。 (泣き声) 1466 02:38:16,413 --> 02:38:19,749 一対一ならいい。 1467 02:38:19,749 --> 02:38:27,749 ・~ 1468 02:38:33,430 --> 02:38:35,765 (加音)まだ 戻りませぬ。 1469 02:38:35,765 --> 02:38:39,769 (満江)少し 落ち着いて下さい。 1470 02:38:39,769 --> 02:38:43,440 お前だって 心配してるのなら してると・ 1471 02:38:43,440 --> 02:38:46,376 正直に 言わなくては 駄目です。 1472 02:38:46,376 --> 02:38:49,880 私は 野瀬様のことも 気がかりなのです。 1473 02:38:49,880 --> 02:38:53,717 でも お前は 野瀬様のことは 嫌いだって言ったでしょう。 1474 02:38:53,717 --> 02:38:56,219 わあ もう うるさい。 1475 02:38:56,219 --> 02:38:59,219 ・(藤蔵)申し上げます。 1476 02:39:00,891 --> 02:39:04,561 旦那様は 御無事でございます。 1477 02:39:04,561 --> 02:39:07,063 お戻りですか? 1478 02:39:07,063 --> 02:39:11,735 はい。 程なく。 ケガをなさり 藤井様の家で・ 1479 02:39:11,735 --> 02:39:15,739 医師の手当てを 受けておいでになります。 1480 02:39:15,739 --> 02:39:18,408 野瀬様は? 1481 02:39:18,408 --> 02:39:20,908 相果てましてございまする。 1482 02:39:26,416 --> 02:39:29,516 (鳥の鳴き声) 1483 02:39:39,095 --> 02:39:42,432 握り飯を作ってこい。 はい? 1484 02:39:42,432 --> 02:39:45,869 茶わんが 持ちにくいのだ。 1485 02:39:45,869 --> 02:39:48,371 中に 何か入れますか? 1486 02:39:48,371 --> 02:39:51,371 何もいらん。 塩と味噌だけでよい。 1487 02:40:09,392 --> 02:40:13,396 うまい。 お世辞を言わずとも よろしゅうございます。 1488 02:40:13,396 --> 02:40:15,732 まずければ お残し下さりませ。 1489 02:40:15,732 --> 02:40:17,732 「うまい」と 言っておるではないか! 1490 02:40:20,237 --> 02:40:22,906 はい。 1491 02:40:22,906 --> 02:40:28,506 すまん。 まだ 血が たぎっておるのだ。 1492 02:40:33,250 --> 02:40:36,419 野瀬様は? 1493 02:40:36,419 --> 02:40:38,755 死んだ。 1494 02:40:38,755 --> 02:40:42,255 いえ… どのように? 1495 02:40:45,695 --> 02:40:50,200 よく 覚えておらぬのだ。 1496 02:40:50,200 --> 02:40:54,537 腕を斬られ 夢中で 刀を振った。 1497 02:40:54,537 --> 02:40:58,937 すると 野瀬が そこに倒れておった。 1498 02:41:01,044 --> 02:41:05,548 野瀬様は 何か おっしゃいましたか? 1499 02:41:05,548 --> 02:41:12,222 野瀬か… 「2人とも よくやった」と言った。 1500 02:41:12,222 --> 02:41:15,558 それが 最期だ。 1501 02:41:15,558 --> 02:41:20,397 (カエルの鳴き声) 1502 02:41:20,397 --> 02:41:22,497 茶をくれ。 1503 02:41:26,569 --> 02:41:29,269 どうしてなんでしょう。 1504 02:41:31,241 --> 02:41:35,578 どうして 斬り合ったのでしょう? 1505 02:41:35,578 --> 02:41:39,078 野瀬様は あなたのことが 一番 好きだったのでしょう? 1506 02:41:42,252 --> 02:41:44,552 分からん。 1507 02:41:48,858 --> 02:41:52,658 (雷鳴) 1508 02:41:55,365 --> 02:41:58,465 (雨音) 1509 02:42:05,041 --> 02:42:09,045 ・(加音)かまいませぬか? 1510 02:42:09,045 --> 02:42:12,445 よいのです。 1511 02:42:14,884 --> 02:42:18,722 降ってきましたねぇ。 1512 02:42:18,722 --> 02:42:21,422 おやすみに なれぬのですか? 1513 02:42:25,562 --> 02:42:31,067 孫助殿の夢を見ましたよ。 1514 02:42:31,067 --> 02:42:33,069 舅殿の? 1515 02:42:33,069 --> 02:42:38,069 ええ。 隼太に伝えてくれと。 1516 02:42:41,578 --> 02:42:46,850 野瀬を斬ったことを 忘れるようにと。 1517 02:42:46,850 --> 02:42:51,020 ・~ 1518 02:42:51,020 --> 02:42:54,357 本当ですよ。 1519 02:42:54,357 --> 02:43:01,957 「忘れて 時を待つように」と 孫助殿は 言いましたよ。 1520 02:43:04,033 --> 02:43:06,433 そうですか。 1521 02:43:08,371 --> 02:43:14,878 今日のことを 本当に 後悔するのか。 1522 02:43:14,878 --> 02:43:22,051 逆に よかったのだと思うのか。 1523 02:43:22,051 --> 02:43:28,251 時が決めるのだと いうことかしら。 1524 02:43:32,061 --> 02:43:35,732 分かりました。 さよう 努めます。 1525 02:43:35,732 --> 02:43:44,674 ・~ 1526 02:43:44,674 --> 02:43:50,013 (忠兵衛)一対一だった? お家を支える首席家老だぞ! 1527 02:43:50,013 --> 02:43:53,183 大目付や配下の者が 伏せていなかったはずはない! 1528 02:43:53,183 --> 02:43:56,519 それは ないと思います。 1529 02:43:56,519 --> 02:44:01,519 庄六。 お主は 昔から あの男を信じすぎる。 1530 02:44:06,696 --> 02:44:13,036 野瀬は 隼太なら 必ず 一人で来ると信じ・ 1531 02:44:13,036 --> 02:44:16,236 果たし状を 出したのでございます。 1532 02:44:18,374 --> 02:44:22,374 (庄六)野瀬は 病で…。 1533 02:44:24,380 --> 02:44:29,385 桑山に 斬られに行ったと 言うのか? 1534 02:44:29,385 --> 02:44:34,224 私は そう考えております。 1535 02:44:34,224 --> 02:44:37,060 そんな きれいな話ではない! 1536 02:44:37,060 --> 02:44:41,064 野瀬は 桑山が 憎くてたまらなかったのだ。 1537 02:44:41,064 --> 02:44:44,067 自分に 一蔵を斬らせ おのれ一人 偉くなった桑山…。 1538 02:44:44,067 --> 02:44:46,336 野瀬の死を 汚さないでいただきたい! 1539 02:44:46,336 --> 02:44:48,836 なに? 1540 02:44:52,842 --> 02:44:58,014 野瀬は 美しく死ぬことを 望んだのです。 1541 02:44:58,014 --> 02:45:04,354 そう信じてやることが 何よりの供養ではありませぬか! 1542 02:45:04,354 --> 02:45:09,859 ・~ 1543 02:45:09,859 --> 02:45:12,359 帰れ。 1544 02:45:15,365 --> 02:45:18,368 (庄六)野瀬家で 通夜がありますが。 1545 02:45:18,368 --> 02:45:20,537 誰が出るか! 1546 02:45:20,537 --> 02:45:25,375 野瀬に 一蔵を斬れと 命じたのは 貴公だぞ! 1547 02:45:25,375 --> 02:45:27,975 なに…? 1548 02:45:30,046 --> 02:45:37,220 庄六! お主 今 わしに 何と言った? 1549 02:45:37,220 --> 02:45:40,557 今や 首席家老は 桑山で このわしは…。 1550 02:45:40,557 --> 02:45:43,457 俺は そんな人間ではない! 1551 02:45:46,329 --> 02:45:51,129 お主が どうとか。 桑山が どうとか。 1552 02:45:53,169 --> 02:45:56,369 俺には 何のかかわりもない! 1553 02:45:58,341 --> 02:46:02,441 ただ 好きだから…。 1554 02:46:04,514 --> 02:46:07,714 ずっと つきあってきた! 1555 02:46:10,353 --> 02:46:12,355 帰る! 1556 02:46:12,355 --> 02:46:28,855 ・~ 1557 02:46:31,708 --> 02:46:36,708 <文化3年の5月半ば 2年の時が流れました> 1558 02:46:43,219 --> 02:46:49,225 (和田)私は 桑山様のお考えには 賛同いたしかねます。・ 1559 02:46:49,225 --> 02:46:53,062 国を捨て 出奔した者は 死罪。 1560 02:46:53,062 --> 02:46:56,566 それが 御定法とはいえ 高松先生の場合は…。 1561 02:46:56,566 --> 02:46:59,736 (堀田)黙らっしゃい! 桑山様の御裁可に・ 1562 02:46:59,736 --> 02:47:03,906 異を唱えるなどとは 百年早い。 しかし…。 1563 02:47:03,906 --> 02:47:06,909 (金井)私も 和田殿と 同じでござる。・ 1564 02:47:06,909 --> 02:47:11,748 高松先生の出奔は お家の将来を 憂えたがゆえでございます。 1565 02:47:11,748 --> 02:47:16,419 高松は 何か 申し立て書きを記したか? 1566 02:47:16,419 --> 02:47:20,423 火のつきやすい若者に 執政批判を吹き込み・ 1567 02:47:20,423 --> 02:47:25,928 その者たちが 熱に浮かされ 騒ぎを起こせば どうなる! 1568 02:47:25,928 --> 02:47:29,932 御公儀に知られることになれば 譜代とはいえ・ 1569 02:47:29,932 --> 02:47:33,770 お家は 大きな咎めを受ける。 1570 02:47:33,770 --> 02:47:37,470 (奥村)桑山様。 評定は いかが 相なりましたか? 1571 02:47:39,609 --> 02:47:42,309 斬れ! はっ。 1572 02:47:44,280 --> 02:47:52,722 ・~ 1573 02:47:52,722 --> 02:47:54,891 旦那様。 1574 02:47:54,891 --> 02:47:59,395 <若い執政に批判されて 夫が隠居するとの噂が・ 1575 02:47:59,395 --> 02:48:05,401 駆け巡りました。 そして 6月…> 1576 02:48:05,401 --> 02:48:07,501 お客様が…。 1577 02:48:10,406 --> 02:48:13,076 どうかなさいました? 1578 02:48:13,076 --> 02:48:15,078 何が? 1579 02:48:15,078 --> 02:48:18,478 何度 お声をかけても 御返事が…。 1580 02:48:22,085 --> 02:48:27,757 御家老の牧原様と 大目付の奥村様がおみえです。 1581 02:48:27,757 --> 02:48:29,757 そうか。 1582 02:48:35,098 --> 02:48:38,935 どうした? (牧原)一大事でございます。 1583 02:48:38,935 --> 02:48:44,107 何だ? 出奔した高松が 討っ手に捕らえられました。 1584 02:48:44,107 --> 02:48:47,376 捕らえた…? 斬ったのではないのか? 1585 02:48:47,376 --> 02:48:51,881 いえ。 越後で 討っ手の宿に いきなり顔を出し・ 1586 02:48:51,881 --> 02:48:55,885 「殿様に 訴えたいことがある。 連れていけ」と。 1587 02:48:55,885 --> 02:49:00,389 連れて帰ったのか? (奥村)あいすみませぬ。 1588 02:49:00,389 --> 02:49:04,227 (牧原)斬って戻ればよいものを 高松に 言葉巧みに・ 1589 02:49:04,227 --> 02:49:07,563 言いくるめられて おめおめと。 1590 02:49:07,563 --> 02:49:11,400 今 どこにおるのだ? 町外れの荒れ寺に。・ 1591 02:49:11,400 --> 02:49:16,000 住職がおりませぬゆえ 誰にも 知られるおそれは ござりませぬ。 1592 02:49:19,575 --> 02:49:23,246 家中で そのことを…。 1593 02:49:23,246 --> 02:49:26,446 よいぞ。 1594 02:49:28,417 --> 02:49:30,419 高松を そこに押し込めておることを・ 1595 02:49:30,419 --> 02:49:32,421 誰かに漏らしたか? (奥村)まさか。 1596 02:49:32,421 --> 02:49:36,092 (牧原)いえ。 1597 02:49:36,092 --> 02:49:38,261 そうか。 1598 02:49:38,261 --> 02:49:50,206 ・~ 1599 02:49:50,206 --> 02:49:53,876 桜湯か。 (牧原)そのようで。 1600 02:49:53,876 --> 02:50:17,900 ・~ 1601 02:50:17,900 --> 02:50:22,238 明日 沙汰する。 明日? 1602 02:50:22,238 --> 02:50:24,740 明日でございますか? 1603 02:50:24,740 --> 02:50:28,244 斬ってはならんぞ。 明日だ。 はっ。 1604 02:50:28,244 --> 02:50:45,361 ・~ 1605 02:50:45,361 --> 02:50:49,031 お主 何の用だ? 1606 02:50:49,031 --> 02:50:52,535 何で わしに会いに来た? 1607 02:50:52,535 --> 02:50:57,039 「なぜ 来た」と 言われてもな。 1608 02:50:57,039 --> 02:50:59,542 悩んでおるのか? 1609 02:50:59,542 --> 02:51:01,878 ん…? 1610 02:51:01,878 --> 02:51:04,881 辞めたくなったか。 1611 02:51:04,881 --> 02:51:07,981 そんなことは… そんなことはない。 1612 02:51:10,052 --> 02:51:17,059 若い時と違って 迷いが生じて 決断が遅くなるであろう? 1613 02:51:17,059 --> 02:51:20,396 迷いか…。 1614 02:51:20,396 --> 02:51:26,235 決断のもとは 体だな。 体…? 1615 02:51:26,235 --> 02:51:32,909 そうだ。 強い体だ。 執政は 人間の運命にかかわる。 1616 02:51:32,909 --> 02:51:36,913 大きな決断をせねばならぬ。 1617 02:51:36,913 --> 02:51:41,913 だが 体が弱っておると 誤った判断を下すことがある。 1618 02:51:45,021 --> 02:51:49,721 それに… 6月だ。 1619 02:51:53,863 --> 02:51:56,863 市之丞のことが 忘れられない。 1620 02:51:59,035 --> 02:52:02,535 それを言うなら…。 何だ? 1621 02:52:04,540 --> 02:52:07,440 一蔵を斬らせたのは 貴公だ。 1622 02:52:09,378 --> 02:52:12,978 そうだ。 俺だ。 1623 02:52:15,885 --> 02:52:19,388 類の男を斬って 出奔した一蔵を・ 1624 02:52:19,388 --> 02:52:24,727 俺たち仲間のうちの誰かが 斬らねばならぬと思った。 1625 02:52:24,727 --> 02:52:27,897 俺たちのうちの誰かがだ。 1626 02:52:27,897 --> 02:52:30,897 そうではなかったか。 1627 02:52:32,902 --> 02:52:37,907 お主 俺 庄六 市之丞。 1628 02:52:37,907 --> 02:52:41,911 その4人のうち あの時 一蔵を斬ることができたのは・ 1629 02:52:41,911 --> 02:52:46,015 婿入り先の決まっていなかった 野瀬以外いたのか? 1630 02:52:46,015 --> 02:52:49,018 いない。 そうだ。 1631 02:52:49,018 --> 02:52:53,689 市之丞しか いなかったのだ。 1632 02:52:53,689 --> 02:52:57,860 俺だけが 斬らせた訳ではない。 俺と庄六とお主が…。 1633 02:52:57,860 --> 02:52:59,860 分かった! 1634 02:53:03,032 --> 02:53:08,204 だから 俺は あの男の生涯を 引き受けてやろうと思った。 1635 02:53:08,204 --> 02:53:12,904 金で済むことなら 一生 金を渡し続けてやろうと思った。 1636 02:53:16,379 --> 02:53:21,979 月に一度 必ず 野瀬に会い 金を渡した。 1637 02:53:26,889 --> 02:53:32,395 お主は 俺が 野瀬を 出世の道具に使ったと言ったが・ 1638 02:53:32,395 --> 02:53:36,565 奴は あれで 俺が出世をし それに くっついて・ 1639 02:53:36,565 --> 02:53:40,069 お主が出世をすることを 案外 喜んでいたのだ。 1640 02:53:40,069 --> 02:53:43,769 それは 分からんではないか。 死んだ野瀬に ウソはつかぬわ! 1641 02:53:49,011 --> 02:53:51,211 お主は 何をした? 1642 02:53:53,182 --> 02:53:58,687 何をした? 野瀬に 何をしてやった? 1643 02:53:58,687 --> 02:54:05,861 庄六は 庄六らしく 律儀に 実直に 野瀬とつきあっていた。 1644 02:54:05,861 --> 02:54:11,867 食べ物を届けてやったり 共に 酒を飲んだり。 1645 02:54:11,867 --> 02:54:17,706 あの庄六が 金を貸してやったこと まで あったそうだ。 1646 02:54:17,706 --> 02:54:20,709 俺が 一番 楽をしたのか? 1647 02:54:20,709 --> 02:54:23,879 お主は 何もしなかったのだ。 1648 02:54:23,879 --> 02:54:27,716 ただ 野瀬を避けていたのだ。 一蔵を斬った血生臭い奴だと。 1649 02:54:27,716 --> 02:54:30,886 俺は いつも 一蔵のことは考えて いた。 俺が 斬るべきだったと。 1650 02:54:30,886 --> 02:54:33,986 考えていただけだ! 1651 02:54:40,729 --> 02:54:43,732 だがな…。 1652 02:54:43,732 --> 02:54:50,339 ・~ 1653 02:54:50,339 --> 02:54:52,939 斬ったからの。 1654 02:54:54,844 --> 02:55:00,844 お主は 何もしてこなかったツケを 一度に払った。 1655 02:55:03,018 --> 02:55:06,018 そう思うことだ。 1656 02:55:08,858 --> 02:55:15,358 は… 野瀬は あの世で お主に 礼を言ってるかもしれぬの。 1657 02:55:20,035 --> 02:55:25,040 一つ 聞きたいことがある。 1658 02:55:25,040 --> 02:55:27,376 何だ? 1659 02:55:27,376 --> 02:55:34,216 執政の身で… 首席家老の立場として・ 1660 02:55:34,216 --> 02:55:37,716 一度たりとも 決断しかねたことはなかったか? 1661 02:55:39,889 --> 02:55:46,889 お前… 最後の敵に そんなことを聞いて よいのか。 1662 02:55:49,832 --> 02:55:53,432 おお… そうか。 1663 02:55:55,671 --> 02:56:00,871 隠居の噂 あれは まことのことか? ハハハ…。 1664 02:56:03,012 --> 02:56:05,514 隠居だと? 1665 02:56:05,514 --> 02:56:08,517 出奔した高松の処分を巡って・ 1666 02:56:08,517 --> 02:56:12,517 執政たちの間で 争いがあったそうだな。 1667 02:56:14,523 --> 02:56:16,692 杉山忠兵衛…。 1668 02:56:16,692 --> 02:56:18,694 何だ? 1669 02:56:18,694 --> 02:56:24,700 根も葉もない噂を喜んでいては 闘えぬぞ。 何か お家のために・ 1670 02:56:24,700 --> 02:56:27,036 暮らしが豊かになる 新しい政でも考えてくれば・ 1671 02:56:27,036 --> 02:56:30,372 わしも 少しはうろたえるが… 老いぼれたか! 1672 02:56:30,372 --> 02:56:32,374 なに! 1673 02:56:32,374 --> 02:56:37,213 わしは 隠居などせぬ。 誰が辞めるか! 1674 02:56:37,213 --> 02:56:40,049 くっ! 1675 02:56:40,049 --> 02:56:43,552 お主とは 話にならん。 帰れ! 1676 02:56:43,552 --> 02:56:46,252 おう 帰る! 1677 02:56:53,395 --> 02:56:57,399 お前の心の臓の音は 大きいの。 1678 02:56:57,399 --> 02:57:00,402 (ふき)そうですか。 1679 02:57:00,402 --> 02:57:04,240 一時 ドキドキすると 言っておったではないか。 1680 02:57:04,240 --> 02:57:10,746 このごろは つきものが 落ちたように 楽になりました。 1681 02:57:10,746 --> 02:57:14,546 体をいたわれよ。 はい。 1682 02:57:20,089 --> 02:57:27,429 楽しゅうございました。 私のような者にとって・ 1683 02:57:27,429 --> 02:57:33,029 あなた様の御出世だけが この世の喜びでございました。 1684 02:57:35,271 --> 02:57:40,442 あの隼太様が どんどん 偉くなるのを見てると・ 1685 02:57:40,442 --> 02:57:44,880 まるで つまらない私の一生が・ 1686 02:57:44,880 --> 02:57:48,380 鮮やかな絵の具で 塗られるようで…。 1687 02:57:50,386 --> 02:57:53,555 お前の思いで 出世したのかの。 1688 02:57:53,555 --> 02:57:58,455 まあ うれしいことを。 ハハハ…。 1689 02:58:07,403 --> 02:58:11,503 お店を 売ることにしました。 1690 02:58:13,575 --> 02:58:15,744 そうか。 1691 02:58:15,744 --> 02:58:18,747 よろしいでしょうか? 1692 02:58:18,747 --> 02:58:21,750 1人になりたいのか? 1693 02:58:21,750 --> 02:58:26,550 年をとってから 慌てても 何もできませんから。 1694 02:58:28,924 --> 02:58:32,428 年のう…。 1695 02:58:32,428 --> 02:58:39,728 病で倒れて あなた様の御迷惑に なることだけは お許し下さい。 1696 02:58:41,770 --> 02:58:44,540 …そうか。 1697 02:58:44,540 --> 02:58:53,048 今なら 生涯… ふきを 心の隅に 置いていただけますから。 1698 02:58:53,048 --> 02:59:01,223 ・~ 1699 02:59:01,223 --> 02:59:04,226 お江戸にも 行ってみたいのです。 1700 02:59:04,226 --> 02:59:08,564 お伊勢参りにも 行ってみたいのです。 1701 02:59:08,564 --> 02:59:14,236 ふき。 俺は寂しい。 1702 02:59:14,236 --> 02:59:18,907 また 来世で お会いできますから。 1703 02:59:18,907 --> 02:59:24,246 ・~ 1704 02:59:24,246 --> 02:59:29,752 (庄六の読経の声) 1705 02:59:29,752 --> 02:59:44,099 ・~ 1706 02:59:44,099 --> 02:59:46,299 庄六。 1707 02:59:48,537 --> 02:59:51,874 ああ…。 2年ぶりだの。 1708 02:59:51,874 --> 02:59:53,876 2年ぶりでございますな。 1709 02:59:53,876 --> 02:59:57,212 普通に話せ。 今日は どうしたのだ? 1710 02:59:57,212 --> 03:00:02,217 俺は 役目のない日は よく ここに来る。 1711 03:00:02,217 --> 03:00:07,055 そうか。 俺は 1年に1回だ。 1712 03:00:07,055 --> 03:00:12,895 そうだな。 今日は どうしたのだ? 1713 03:00:12,895 --> 03:00:18,066 人を斬るか斬らぬか 決めなくてはならぬのだ。 1714 03:00:18,066 --> 03:00:22,738 お役目か。 大変なことだな。 1715 03:00:22,738 --> 03:00:25,741 執政などというものになるから・ 1716 03:00:25,741 --> 03:00:29,077 人の生き死にまで かかわらねばならぬ。 1717 03:00:29,077 --> 03:00:32,414 そんなことは 覚悟の上ではないのか。 1718 03:00:32,414 --> 03:00:36,585 情けにおぼれては 家老は務まるまい。 1719 03:00:36,585 --> 03:00:42,485 市之丞なら 「情けをかけてこそ 家老だぞ」 そう言うだろう。 1720 03:00:44,092 --> 03:00:47,696 ああ。 1721 03:00:47,696 --> 03:00:51,366 「お前の昔の目は どこにいった」。 1722 03:00:51,366 --> 03:00:55,704 「いつも 怒ったような きれいな目だ」。 1723 03:00:55,704 --> 03:01:01,043 2年たって あいつの声が しきりに そう言う。 1724 03:01:01,043 --> 03:01:05,047 「隼太は 隼太のままでいろ」。 1725 03:01:05,047 --> 03:01:09,718 あいつは 悲しかったのであろう。 1726 03:01:09,718 --> 03:01:12,718 悔しかったのであろうな。 1727 03:01:16,391 --> 03:01:21,230 今年が あいつの3回忌だな。 1728 03:01:21,230 --> 03:01:23,732 ああ。 1729 03:01:23,732 --> 03:01:28,032 奴は お主に 斬られたかったのだ。 1730 03:01:31,573 --> 03:01:36,411 どう考えても… いくら病でも・ 1731 03:01:36,411 --> 03:01:40,916 お主に あの邪剣が 避けられるはずはない。 1732 03:01:40,916 --> 03:01:43,916 (鳥の鳴き声) 1733 03:01:46,688 --> 03:01:48,690 うわ~! 1734 03:01:48,690 --> 03:01:50,890 あっ! 1735 03:01:53,695 --> 03:02:06,708 ・~ 1736 03:02:06,708 --> 03:02:09,378 よく やったさ 隼太。 1737 03:02:09,378 --> 03:02:12,548 2人とも よくやった。 1738 03:02:12,548 --> 03:02:18,387 ・~ 1739 03:02:18,387 --> 03:02:22,057 俺は 悔しかった。・ 1740 03:02:22,057 --> 03:02:27,957 市之丞は なぜ 俺に 果たし状をくれなかったのだ。 1741 03:02:32,734 --> 03:02:38,740 野瀬は… お主が 一番好きだったのだ。 1742 03:02:38,740 --> 03:03:02,698 ・~ 1743 03:03:02,698 --> 03:03:04,700 おはようございます。 1744 03:03:04,700 --> 03:03:09,037 <夫は 執政の方々 全員を 呼び出しました> 1745 03:03:09,037 --> 03:03:12,708 今朝は? 聞いておらぬ。 何かあったのか? 1746 03:03:12,708 --> 03:03:14,708 はあ… 何も…。 1747 03:03:17,379 --> 03:03:21,717 遅れてすまぬ。 お上と 所用があった。 1748 03:03:21,717 --> 03:03:26,221 牧原殿。 はい。 牧原殿に一任する。 1749 03:03:26,221 --> 03:03:33,395 高松の処分だ。 わしは 高松の人の値打ちが 分からぬ。 1750 03:03:33,395 --> 03:03:37,566 わしは もともと 郷方廻りの農民なのだ。 1751 03:03:37,566 --> 03:03:43,071 お百姓に ここまで 育ててもらった。 だから 頼む。 1752 03:03:43,071 --> 03:03:49,344 何を みどもに頼むと 仰せなのですか? 1753 03:03:49,344 --> 03:03:56,644 金井殿 和田殿 牧原殿と 一緒にの。 1754 03:04:00,856 --> 03:04:04,356 本日は これまでとする。 1755 03:04:19,875 --> 03:05:11,193 ・~ 1756 03:05:11,193 --> 03:05:15,363 あら 手習いですか。 1757 03:05:15,363 --> 03:05:18,867 53の手習いだ。 1758 03:05:18,867 --> 03:05:23,367 まあ… そうですか。 1759 03:05:25,707 --> 03:05:29,878 隠居を 御決心下さりましたか? 1760 03:05:29,878 --> 03:05:41,890 ・~ 1761 03:05:41,890 --> 03:05:45,827 父の字ですね。 1762 03:05:45,827 --> 03:05:52,167 いい字だ。 これに 近づきたいものだ。 1763 03:05:52,167 --> 03:05:57,367 あなたには 無理ですよ。 欲張りですからね。 1764 03:06:02,010 --> 03:06:07,710 胸の中の風の音 少しは 静かになりましたか? 1765 03:06:10,185 --> 03:06:16,525 全くならん。 親父殿は いまわの際に・ 1766 03:06:16,525 --> 03:06:22,725 「風の果て 尚 悟れぬ」と おっしゃったが そのとおりだの。 1767 03:06:24,699 --> 03:06:29,538 この年になっても まだ 「足」を知らぬ。 欲張りだ。 1768 03:06:29,538 --> 03:06:33,875 だが 体がついてゆかぬ。 1769 03:06:33,875 --> 03:06:44,052 風 蕭々たり… いや 轟々たりかの。 1770 03:06:44,052 --> 03:06:48,752 だが 老残の身 ここにありだ。 1771 03:06:50,725 --> 03:06:54,925 老いぼれて 老いぼれて 尚 春の夢。 1772 03:06:57,065 --> 03:07:01,465 私も このように婆になり 申し訳ござりませぬ。 1773 03:07:05,240 --> 03:07:12,247 お前は このごろ… 昔より きれいだ。 1774 03:07:12,247 --> 03:07:38,440 ・~ 1775 03:07:38,440 --> 03:07:43,778 「風の果て 尚 足を知らず」。 1776 03:07:43,778 --> 03:07:47,078 ・~ 1777 03:07:49,217 --> 03:09:07,417 ・~