1 00:00:00,734 --> 00:00:05,739 ♬~ 2 00:00:17,784 --> 00:00:20,287 (慶次郎)おお 待ちな。 3 00:00:32,132 --> 00:00:34,835 (佐七)大した荷物じゃないね…。 4 00:00:36,803 --> 00:00:39,806 (伊助)旦那… こいつは どちらへ? 5 00:00:42,676 --> 00:00:44,678 そうさな…。 6 00:00:47,314 --> 00:00:49,816 お前さんなら どこに? 7 00:00:49,816 --> 00:00:53,320 飯炊きに 「さん」はいらねえよ。 ただの 佐七。 8 00:00:53,320 --> 00:00:57,157 あんたが!? お前様は 新しい寮番だろ? 9 00:00:57,157 --> 00:01:00,761 仏の旦那! ほ 仏…!? 10 00:01:00,761 --> 00:01:04,631 おお そうか すまねえ。 どこか 眺めのいい場所がいいんだが。 11 00:01:04,631 --> 00:01:07,100 死んだ人に「日当たり」かね? 12 00:01:07,100 --> 00:01:11,772 死んだ人間だから要るんだよ。 明かりも 色もな。 13 00:01:11,772 --> 00:01:24,785 ♬~ 14 00:01:24,785 --> 00:01:28,088 とうとう 来ちまったよ。 15 00:01:30,657 --> 00:01:33,660 慶次郎ってえんだ。 16 00:01:35,429 --> 00:01:39,433 森口慶次郎。 よろしく頼む。 17 00:01:42,803 --> 00:01:48,675 (皐月)<私の舅殿 森口慶次郎様は 隠居される前まで➡ 18 00:01:48,675 --> 00:01:53,680 南町奉行所の定町廻り同心で ございました> 19 00:01:57,317 --> 00:02:06,827 ♬~ 20 00:02:08,428 --> 00:02:13,100 <あと10日で 祝言を挙げ 私の旦那様になられる➡ 21 00:02:13,100 --> 00:02:15,769 晃之助様でございます> 22 00:02:15,769 --> 00:02:19,272 (晃之助)女将さん 居るかい? はい どうぞ。 23 00:02:21,642 --> 00:02:25,779 ヒドリ 熨斗鮑 桜の葉塩漬け 硯蓋七色に…。 24 00:02:25,779 --> 00:02:28,115 (お登世)いなくなった? 25 00:02:28,115 --> 00:02:33,286 <晃之助様の幼なじみ お登世様でございます> 26 00:02:33,286 --> 00:02:35,222 これでいいよ。 27 00:02:35,222 --> 00:02:39,793 もう一度 最初から 話してごらんなさい。 28 00:02:39,793 --> 00:02:45,132 今朝の事だ。 やにわに 家を出ると言いだした。 29 00:02:45,132 --> 00:02:47,801 森口の旦那が? 30 00:02:47,801 --> 00:02:51,672 山口屋の文五郎の引きで 根岸の別荘の寮番を➡ 31 00:02:51,672 --> 00:02:53,673 つとめる事にしたと。 32 00:02:53,673 --> 00:02:56,810 ああ 新川の酒問屋さんの…。 33 00:02:56,810 --> 00:02:59,479 いつもの父の冗談だろうと 聞き過ごしたんだが➡ 34 00:02:59,479 --> 00:03:04,751 妙に気になってな。 ご用の合間 屋敷に戻ると。 35 00:03:04,751 --> 00:03:06,686 消えてらしたんですね。 36 00:03:06,686 --> 00:03:10,424 ああ 三千代殿の位牌も一緒にだ。 37 00:03:10,424 --> 00:03:14,761 ⚟(志乃)皐月。 皐月…。 38 00:03:14,761 --> 00:03:19,633 <申し遅れましたが 北町奉行所の 吟味方与力➡ 39 00:03:19,633 --> 00:03:23,937 神山左門の娘 皐月でございます> 40 00:03:26,773 --> 00:03:30,777 (志乃)森口様の事 お聞きになりましたか? 41 00:03:35,782 --> 00:03:38,685 (皐月)先程 晃之助様から お使いが…。 42 00:03:38,685 --> 00:03:43,657 祝言を前に 舅殿が家を出るなど 何という嫌みか。 43 00:03:43,657 --> 00:03:46,793 しかも 寮の番人などと。 44 00:03:46,793 --> 00:03:51,465 森口様は きっと 私を 気遣ったのでございましょう。 45 00:03:51,465 --> 00:03:54,801 気遣う? とんでもない。 46 00:03:54,801 --> 00:04:01,074 そもそも 町廻りの同心というのは 駆けずり回るのが お勤め。 47 00:04:01,074 --> 00:04:05,946 その嫁ともなれば 旦那様の お世話から 手先の者が➡ 48 00:04:05,946 --> 00:04:11,718 腹をすかせれば その面倒まで 何もかも差配せねばならぬ。 49 00:04:11,718 --> 00:04:16,623 それを すべて 皐月一人に 押しつけて ご自分は➡ 50 00:04:16,623 --> 00:04:20,260 根岸の里で 植木のお手入れですか! 51 00:04:20,260 --> 00:04:23,163 お寂しくはないのでしょうか。 52 00:04:23,163 --> 00:04:26,767 (しづ)ご安心くださいませ 奥様。 私が ご一緒する上は➡ 53 00:04:26,767 --> 00:04:29,102 お嬢様一人に そのような ご苦労は 決して… 決して…! 54 00:04:29,102 --> 00:04:34,774 しづ。 お前だけが頼りですからね。 お前だけが… お前だけが…! 55 00:04:34,774 --> 00:04:37,777 母上! しづ お水を…! 56 00:04:55,796 --> 00:04:58,798 (鈴の音) 57 00:05:09,743 --> 00:05:14,748 ⚟(鈴の音) 58 00:05:22,756 --> 00:05:24,758 よう…。 59 00:05:29,429 --> 00:05:33,767 <三千代様は 舅殿のたった一人の娘さんで➡ 60 00:05:33,767 --> 00:05:41,641 晃之助様の許婚でございました。 すべてのお話は 3年前。➡ 61 00:05:41,641 --> 00:05:46,112 祝言を前にして 三千代様が お亡くなりになる➡ 62 00:05:46,112 --> 00:05:49,416 その夜から 始まります> 63 00:05:52,786 --> 00:05:58,792 (鈴の音) 64 00:06:01,595 --> 00:06:05,298 (戸をたたく音) 65 00:06:10,203 --> 00:06:14,741 (賢吾)森口殿! 屋敷の中で ただならぬ声がすると➡ 66 00:06:14,741 --> 00:06:17,644 伊助が助けを求めて参った。 森口殿! 67 00:06:17,644 --> 00:06:19,646 森口殿! 68 00:06:21,615 --> 00:06:23,617 森口殿…。 69 00:06:25,752 --> 00:06:28,255 ああ…! 三千代さん…! 70 00:06:28,255 --> 00:06:30,257 玄庵殿を! は… はい。 71 00:06:32,759 --> 00:06:36,630 自害か!? 油断した…。 72 00:06:36,630 --> 00:06:38,632 油断…? 73 00:06:38,632 --> 00:06:43,770 誰かが 「雨戸を」と しきりに 言うので 俺が 確かめに…。 74 00:06:43,770 --> 00:06:45,772 その間に…。 75 00:06:47,641 --> 00:06:55,649 ああ! ああ… 三千代! 三千代… 三千代…! 76 00:06:57,784 --> 00:07:06,793 三千代…! 三千代…! 77 00:07:12,732 --> 00:07:17,737 (玄庵)病死…!? そのように…。 78 00:07:19,606 --> 00:07:26,746 森口殿が 是非にと申すなら そのとおり 病死で通すが…。 79 00:07:26,746 --> 00:07:31,618 だが 晃之助殿は どうされるのだ? 80 00:07:31,618 --> 00:07:36,756 おお 許婚の。 岡田家の三男坊であったのう。 81 00:07:36,756 --> 00:07:43,463 晃之助殿にまで 病死と偽られるか。 82 00:07:45,432 --> 00:07:48,435 書き置きのようなものは。 ない。 83 00:07:52,772 --> 00:07:59,112 夕刻。 三千代殿を 見かけました。 84 00:07:59,112 --> 00:08:08,421 屋敷の前を… その…。 ただならぬ姿で…。 85 00:08:11,057 --> 00:08:16,930 (賢吾)とても… 声をかけるには忍びなく…。 86 00:08:16,930 --> 00:08:42,756 ♬~ 87 00:08:42,756 --> 00:08:48,094 (賢吾)ひょっとして 此度の事は それと関わりがあるのでは…。 88 00:08:48,094 --> 00:08:50,029 言うな…! 89 00:08:50,029 --> 00:08:54,334 森口殿! 離されよ! 三千代殿が見ておる…。 90 00:08:59,706 --> 00:09:03,009 (足音) ⚟(伊助)お… お待ちください! 91 00:09:35,608 --> 00:10:09,776 ♬~ 92 00:10:09,776 --> 00:10:18,451 (三千代) 「先立つ不孝を お許し下さいませ。 父上様のおっしゃるとおり➡ 93 00:10:18,451 --> 00:10:25,125 あれは 悪い夢だったと… 何度も そう思おうとしました。➡ 94 00:10:25,125 --> 00:10:29,996 ですが どうしても できませぬ。➡ 95 00:10:29,996 --> 00:10:35,135 この身が すべてを覚えております。➡ 96 00:10:35,135 --> 00:10:43,810 夢と欺き 愛しい晃之助様に 嫁ぐなど もはや できませぬ。➡ 97 00:10:43,810 --> 00:10:49,682 一夜だけでも 晃之助様の 熱き胸に抱かれしまま➡ 98 00:10:49,682 --> 00:10:58,825 朝の光を見てみとうございました。 この世で それが叶わぬのなら➡ 99 00:10:58,825 --> 00:11:05,431 せめて あの世で 晃之助様を お待ちしとうございます。➡ 100 00:11:05,431 --> 00:11:09,302 九つで 母上様を亡くしてより➡ 101 00:11:09,302 --> 00:11:16,776 三千代は 父上様に 日々 深く慈しんで頂きました。➡ 102 00:11:16,776 --> 00:11:23,650 父上様の子に生まれて 幸せでございました」。 103 00:11:23,650 --> 00:11:32,659 ♬~ 104 00:11:34,327 --> 00:11:40,633 (男)さあ いらはい いらはい お代は 見てのお帰り…。 105 00:11:42,468 --> 00:11:46,339 <三千代様は 男に 道案内を頼まれ➡ 106 00:11:46,339 --> 00:11:51,477 探している家まで 同行したがための災難でした。➡ 107 00:11:51,477 --> 00:11:57,183 三千代様の優しいお心が 徒となったのでございます> 108 00:12:06,960 --> 00:12:10,763 死んじまったんですか? あの娘さん。 109 00:12:10,763 --> 00:12:15,068 何だと! 見たのか? 見たんだな! 110 00:12:16,636 --> 00:12:18,638 男…。 男の顔は! 111 00:12:18,638 --> 00:12:23,343 顔…? 顔だなんて…。 112 00:12:23,343 --> 00:12:25,778 「ツネ…」。 ツネ…? 113 00:12:25,778 --> 00:12:31,117 いえね ツネって名前だけは…。 常蔵だか常吉だか 知らないけど➡ 114 00:12:31,117 --> 00:12:35,455 前にも 女を連れて この辺りを うろついてたから…。 115 00:12:35,455 --> 00:12:41,160 (女)ツネさん もう…! (男)あはは… ほらほら…。 116 00:13:01,414 --> 00:13:03,416 三千代…。 117 00:13:19,432 --> 00:13:22,435 殺してやる…! 118 00:13:29,108 --> 00:13:31,110 (辰吉)旦那。 119 00:13:32,779 --> 00:13:34,714 旦那の受け持ちは浅草だ。 120 00:13:34,714 --> 00:13:36,649 こっちは ちょっと方角が違うんじゃ。 121 00:13:36,649 --> 00:13:39,118 悪いが お役目じゃねえ。 122 00:13:39,118 --> 00:13:41,788 ツネって男の事なら 何も出ませんよ。 123 00:13:41,788 --> 00:13:46,459 そっちは 俺が回ったばかりだ。 どけ! 124 00:13:46,459 --> 00:13:50,129 「殺してやりたい」。 「一生かかっても あいつを➡ 125 00:13:50,129 --> 00:13:53,833 捜し出し 一寸刻みに 殺してやりたい」。 126 00:13:56,803 --> 00:13:59,706 お前…。 127 00:13:59,706 --> 00:14:04,010 どこからでも 入りますよ 噂ってやつは。 128 00:14:07,747 --> 00:14:09,749 俺もでしたよ 旦那! 129 00:14:11,617 --> 00:14:13,619 旦那…。 130 00:14:25,765 --> 00:14:28,668 言えぬ? 言えぬとは どういう事です。 131 00:14:28,668 --> 00:14:34,107 祝言こそ 挙げてはおりませんが 三千代は 私の妻。 132 00:14:34,107 --> 00:14:37,143 なぜ 妻たる三千代の死んだ 子細を隠されるのか。 133 00:14:37,143 --> 00:14:41,981 別に 隠しちゃいないさ。 言ったろ。 三千代は 急な病で。 134 00:14:41,981 --> 00:14:47,653 噂が確かで それが因で 自ら 命を絶ったというのなら…! 135 00:14:47,653 --> 00:14:49,655 病死だ! 136 00:14:53,793 --> 00:14:55,795 綺麗な顔だった。 137 00:14:57,463 --> 00:15:03,770 三千代殿 亡き後も 私は婿として 森口家に入ります。 138 00:15:05,271 --> 00:15:08,741 気持ちは ありがたいが。 義父上。 139 00:15:08,741 --> 00:15:12,078 森口の跡継ぎとなれば いつまでも やもめでは➡ 140 00:15:12,078 --> 00:15:15,748 いられまい。 いずれは 嫁を とらねばならない。 141 00:15:15,748 --> 00:15:20,253 嫁は とりません。 生涯 娶りません。 142 00:15:22,088 --> 00:15:26,426 ならば 跡継ぎの 意味があるまい。 143 00:15:26,426 --> 00:15:33,433 養子縁組みの話 なかった事に。 このとおりだ。 144 00:15:39,438 --> 00:15:42,442 <3日ほど後の事でございます> 145 00:15:44,110 --> 00:15:46,045 辰…!? 146 00:15:46,045 --> 00:15:47,980 「ツネ」って名のつく男に 片っ端から➡ 147 00:15:47,980 --> 00:15:50,783 因縁つけて喧嘩ふっかけちゃあ 相手を番屋に引っ張り込む。 148 00:15:50,783 --> 00:15:54,453 「こいつを取り調べてくれ」ってね。 あんまり度が過ぎる。 149 00:15:54,453 --> 00:15:58,324 こちらへお連れしたんだが 口もきかねえ。 うちの蝮が➡ 150 00:15:58,324 --> 00:16:02,628 仏の旦那と関わりのある奴じゃ ねえかってね。 151 00:16:04,730 --> 00:16:06,732 吉次。 152 00:16:14,740 --> 00:16:17,043 馬鹿が…! 153 00:16:19,612 --> 00:16:23,416 お前の気持ちは ありがたくもらった。 だが…。 154 00:16:23,416 --> 00:16:25,351 ははっ! 155 00:16:25,351 --> 00:16:27,753 「ありがたい」? 辰…! 156 00:16:27,753 --> 00:16:29,689 ありがたいもんか。 157 00:16:29,689 --> 00:16:34,627 「この野郎 邪魔しやがって。 てめえに何が分かる。➡ 158 00:16:34,627 --> 00:16:38,764 てめえなんかに金輪際 俺の気持ち なんか分かってたまるか!」。 159 00:16:38,764 --> 00:16:41,667 旦那は こう言いたいんじゃないですか。 160 00:16:41,667 --> 00:16:44,103 …そうだ! 161 00:16:44,103 --> 00:16:49,775 そのとおりだ! 俺は間違ってた。 162 00:16:49,775 --> 00:16:54,113 お前の事だ。 13年前だ。 163 00:16:54,113 --> 00:16:59,719 心底 惚れた女房を殺されて お前は 殺した男を狙っていた。 164 00:16:59,719 --> 00:17:04,056 そうだ 憎まねえ方が おかしい。 165 00:17:04,056 --> 00:17:10,763 あの男を殺してやりてえ! そう思うのが当たり前だったんだ。 166 00:17:16,068 --> 00:17:22,408 何が 「仏」だ。 何が 「ご法度」だ。 167 00:17:22,408 --> 00:17:26,412 肝心の 人の気持ちを 俺は まるで分かっちゃいなかった。 168 00:17:28,281 --> 00:17:34,020 身内を殺された者が どんなに。 どんなに…。 169 00:17:34,020 --> 00:17:40,726 旦那! 仏の旦那…。 言って下さったじゃありませんか。 170 00:17:42,428 --> 00:17:46,766 殺すな! 生きろ!離せ! 殺すな!離せ! 171 00:17:46,766 --> 00:17:49,101 生きろ! 172 00:17:49,101 --> 00:17:54,440 「男は いつでも捕らえられる。 だが あの男を刺したら➡ 173 00:17:54,440 --> 00:17:57,109 お前は 何もかも 終わりになっちまう。➡ 174 00:17:57,109 --> 00:18:02,915 生きろ。 俺は お前に 生きてほしいんだ!」。 175 00:18:02,915 --> 00:18:08,387 だから 俺は ここにいるんだ。 違いますか? 176 00:18:08,387 --> 00:18:10,690 叩き斬る! 177 00:18:13,726 --> 00:18:16,028 殺させねえ。 178 00:18:17,597 --> 00:18:21,400 旦那には 殺させねえ。 179 00:18:21,400 --> 00:18:25,271 じゃなかったら 俺は 何だったんだ! 180 00:18:25,271 --> 00:18:31,577 あの時 あいつを 殺さなかった俺は…。 181 00:18:40,753 --> 00:18:42,755 生きてもらいます。 182 00:18:44,423 --> 00:18:51,097 13年前。 旦那は あいつを 殺そうとする俺を止めた。 183 00:18:51,097 --> 00:18:54,800 今度は 旦那に 生きてもらいます。 184 00:19:01,707 --> 00:19:03,709 お前…。 185 00:19:05,578 --> 00:19:08,881 お前 あの男が憎いか 今でも。 186 00:19:12,351 --> 00:19:18,057 憎いです。 殺したいほど…。 187 00:19:28,934 --> 00:19:33,406 俺も憎いか。 188 00:19:33,406 --> 00:19:45,751 ♬~ 189 00:19:45,751 --> 00:19:47,687 ♬~頂きます。 190 00:19:47,687 --> 00:20:14,680 ♬~ 191 00:20:16,716 --> 00:20:20,119 こりゃ どうも。 おう。 192 00:20:20,119 --> 00:20:23,789 (おきわ)旦那。 兄が また 何か? 193 00:20:23,789 --> 00:20:26,792 そんなんじゃねえよ。 上かい? 194 00:20:36,802 --> 00:20:40,106 吉次。 入るぞ。 195 00:20:48,147 --> 00:20:51,050 恥を承知で来た。 196 00:20:51,050 --> 00:20:56,021 (吉次)十手持ちが 他人様の隠し事で 稼ぐなんざ➡ 197 00:20:56,021 --> 00:20:59,758 「恥を知れ」って 旦那に言われたからね。 198 00:20:59,758 --> 00:21:03,629 あこぎな脅しは やっちゃおりませんですが。 199 00:21:03,629 --> 00:21:06,632 見たとおり 荒っぽい事をする奴も出てきた。 200 00:21:06,632 --> 00:21:09,101 何としてでも 先 たどりつきてえ。 201 00:21:09,101 --> 00:21:12,805 ツネ…。 さ~てね。 202 00:21:14,774 --> 00:21:18,644 お嬢さん お亡くなりになったそうで。 203 00:21:18,644 --> 00:21:23,115 教えてくれるまで 俺は動かん。 一晩でも 二晩でも。 204 00:21:23,115 --> 00:21:26,819 お嬢さんは ご病死でしょうが。 205 00:21:30,790 --> 00:21:39,465 人の噂ってのは妙なもんで ほっときゃ 消えちまうが➡ 206 00:21:39,465 --> 00:21:47,173 ほじれば ほじるほど まことしやかに なりやがる。 207 00:21:53,479 --> 00:21:56,482 そっとしときなさいまし。 208 00:22:06,759 --> 00:22:08,761 一人…。 209 00:22:12,431 --> 00:22:18,304 が こいつは 言っとくが あっしの縄張りだ。 210 00:22:18,304 --> 00:22:22,608 あっしに断りなく 動かんでおくんなさいよ。 211 00:22:24,443 --> 00:22:26,779 分かった。 212 00:22:26,779 --> 00:22:31,116 炭町の自身番に 娘が駆け込んできてね。 213 00:22:31,116 --> 00:22:34,787 鼻緒を切って困ってた男に ハギレをやったら➡ 214 00:22:34,787 --> 00:22:38,457 親の留守に訪ねてきて➡ 215 00:22:38,457 --> 00:22:42,127 なれなれしく 部屋に上がり込んで 帰らねえ。 216 00:22:42,127 --> 00:22:45,798 北の旦那と あっしが つまみ出した その男が…。 217 00:22:45,798 --> 00:22:49,134 ツネか! 畳町の常蔵。 218 00:22:49,134 --> 00:22:52,838 旦那が お捜しの 「ツネ」かどうかは…。 219 00:22:54,473 --> 00:22:58,344 居ませんぜ もう。 引っ越しやした。 220 00:22:58,344 --> 00:23:00,279 引っ越した? 221 00:23:00,279 --> 00:23:04,083 (女)貸本屋で そりゃあ繁盛してたんですよ。➡ 222 00:23:04,083 --> 00:23:08,420 貸本よりも ツネさん待ってる人が 大勢いるんだもの。➡ 223 00:23:08,420 --> 00:23:14,760 旦那がいるのに ツネさんと いい仲になっちまったり。 224 00:23:14,760 --> 00:23:21,767 いるでしょう? なんか こう… 放っておけない気持ちになる人が。 225 00:23:23,435 --> 00:23:25,771 ツネさんも 悪い人じゃないんだけど➡ 226 00:23:25,771 --> 00:23:27,706 手は 早い方だからね。➡ 227 00:23:27,706 --> 00:23:33,646 そんなこんなで 版元からは お出入り禁止さ。 228 00:23:33,646 --> 00:23:35,781 三千代殿の事を知りたい。 229 00:23:35,781 --> 00:23:38,684 あなたが 三千代殿の噂に絡んで その…。 230 00:23:38,684 --> 00:23:41,654 いろいろ動いていると聞いて それで。 231 00:23:41,654 --> 00:23:45,791 それで?噂は知っている。 知りすぎるくらいだ。 232 00:23:45,791 --> 00:23:49,128 だが 正面きって尋ねると 誰もが 口を閉ざす。 233 00:23:49,128 --> 00:23:52,798 森口殿も 養子縁組みは なかった事にしろと そればかり。 234 00:23:52,798 --> 00:23:57,136 本当の事が 分からない。 本当の事? 235 00:23:57,136 --> 00:24:00,739 世間知らずは 分かっている。 愚かも 承知だ。 236 00:24:00,739 --> 00:24:03,242 だが 知りたい。 237 00:24:06,078 --> 00:24:10,749 知って どうされます。 分からぬ。 238 00:24:10,749 --> 00:24:14,620 ただ 私は… 人を知らぬ。 世間を知らぬ。 239 00:24:14,620 --> 00:24:17,623 知ったふりで渡っていくような 器用もできぬ。 240 00:24:17,623 --> 00:24:20,626 本当の事でしか 動けぬ。 241 00:24:24,296 --> 00:24:29,768 あんた お嬢さんと同じ匂いがするよ。 242 00:24:29,768 --> 00:24:33,639 日向で育った 木の匂いだ。 243 00:24:33,639 --> 00:24:36,108 二手に分かれやしょう。 244 00:24:36,108 --> 00:24:39,611 ある男の引っ越し先を 捜しておりやす。心得た。 245 00:24:39,611 --> 00:24:44,783 ただし 本当の事ってのは てめえを刺す事もある。 246 00:24:44,783 --> 00:24:48,654 それでも ようござんすね。 ああ。 247 00:24:48,654 --> 00:24:51,657 常蔵とかいう男を 捜しておりやす。 248 00:24:51,657 --> 00:24:54,793 畳町で 貸本屋をやっていたんですが➡ 249 00:24:54,793 --> 00:24:56,795 3日前に引っ越しました。 250 00:24:58,464 --> 00:25:01,734 <その日は 朝から 寒さがひどく➡ 251 00:25:01,734 --> 00:25:08,440 夕刻になって 空は いよいよ重く よどんでおりました> 252 00:25:12,745 --> 00:25:16,415 常蔵を しょっぴくかも しれやせん。何だと! 253 00:25:16,415 --> 00:25:20,085 騙りで 訴えが出てるんでね。 254 00:25:20,085 --> 00:25:24,757 常蔵に貢いでた女が 「あれは 騙されてたんだ」ってね。 255 00:25:24,757 --> 00:25:28,427 まあ おおかた 切れるの切れねえの話だろうが。 256 00:25:28,427 --> 00:25:33,298 一応 旦那にはと思いまして…。 どこだ! 常蔵は どこに居た! 257 00:25:33,298 --> 00:25:37,436 ヘヘッ… これは あっしの捕り物なんですよ。 258 00:25:37,436 --> 00:25:39,371 おれの仇だ! 259 00:25:39,371 --> 00:25:43,776 ようござんすか。 あっしは 北町奉行所の旦那のお手先だ。 260 00:25:43,776 --> 00:25:48,647 しょっぴく時に 南との面倒は ごめんでさあ。 261 00:25:48,647 --> 00:25:51,350 よろしゅうございますよね。 262 00:25:53,118 --> 00:25:55,421 ようござんすね? 263 00:26:10,602 --> 00:26:15,607 ああ 厄介なもんが 降ってきやがった。 264 00:26:26,752 --> 00:27:42,294 ♬~ 265 00:27:42,294 --> 00:27:46,765 ヘヘ…。 やっぱり いやがった。 266 00:27:46,765 --> 00:27:50,269 この先には もう 小屋は 幾つもねえ。 267 00:27:52,271 --> 00:27:54,773 旦那…。 268 00:27:54,773 --> 00:28:11,790 ♬~ 269 00:28:15,727 --> 00:28:17,729 ⚟(男)馬鹿野郎! 270 00:28:19,398 --> 00:28:21,733 お前…。 お前は? 271 00:28:21,733 --> 00:28:25,070 (常蔵)おとし! 272 00:28:25,070 --> 00:28:27,973 (おとし)どこへ行こうと 私の勝手でしょ! おい! 273 00:28:27,973 --> 00:28:30,943 お父っつぁんは その女と 一緒に暮らせばいいんだ! 274 00:28:30,943 --> 00:28:35,247 私は… 私は 海に飛び込んで 死んでやる! 275 00:28:35,247 --> 00:28:37,249 おとし! 276 00:28:40,752 --> 00:28:43,422 常蔵だな。 何でえ! 277 00:28:43,422 --> 00:28:47,759 10日ほど前だ。 お前 どこにいた?10日…? 278 00:28:47,759 --> 00:28:51,630 霊岸島にいなかったか? 定町廻りか? 279 00:28:51,630 --> 00:28:54,633 (悲鳴) 280 00:29:00,706 --> 00:29:02,641 おとし…! 281 00:29:02,641 --> 00:29:06,578 私は お父っつぁんの娘じゃ ないからね!どけ! 282 00:29:06,578 --> 00:29:09,715 お父っつぁんなんか 斬られて死んじまえ! 283 00:29:09,715 --> 00:29:11,717 離れろ! 284 00:29:13,585 --> 00:29:15,587 (悲鳴) 285 00:29:18,724 --> 00:29:20,726 悪かったよ…。 286 00:29:22,594 --> 00:29:27,065 けどよ ついてくる女が悪いんだ! 287 00:29:27,065 --> 00:29:29,001 何だと…! 288 00:29:29,001 --> 00:29:32,738 誰もいねえようだって言ったら 入ってきやがったんだよ。 289 00:29:32,738 --> 00:29:37,409 人をうたぐった事がねえ まっすぐな木みてえでよ。 290 00:29:37,409 --> 00:29:40,746 それが 妙に 癇に障ったんだ。 291 00:29:40,746 --> 00:29:42,681 黙れ! 292 00:29:42,681 --> 00:29:49,755 炭町の女だって そうだよ。 女が 上がれって言ったんだ! 293 00:29:49,755 --> 00:29:54,092 俺の言い分なんざ 八丁堀は聞きやしねえ。 294 00:29:54,092 --> 00:30:00,799 くそ~! どいつも こいつも 俺を馬鹿にしやがって! 295 00:30:02,768 --> 00:30:04,770 旦那! 296 00:30:10,442 --> 00:30:12,444 晃之助…。 297 00:30:14,112 --> 00:30:16,114 離れろ! 298 00:30:19,785 --> 00:30:22,087 その男は…。 299 00:30:25,457 --> 00:30:30,462 その男は 三千代の仇だ! 300 00:30:33,799 --> 00:30:37,135 晃之助! 旦那! 旦那は 鬼か! 301 00:30:37,135 --> 00:30:39,471 足元を! 302 00:30:39,471 --> 00:30:47,179 死んじまえ! お父っつぁんなんか 死んじまえ。 死んじまえ! 303 00:30:58,156 --> 00:31:02,861 おい… おい…。 304 00:31:11,703 --> 00:31:33,458 ♬~ 305 00:31:33,458 --> 00:31:35,460 旦那…。 306 00:31:39,798 --> 00:31:41,733 旦那! 307 00:31:41,733 --> 00:32:01,753 ♬~ 308 00:32:01,753 --> 00:32:15,767 (おとしの泣き声) 309 00:32:15,767 --> 00:32:18,103 帰りな。 310 00:32:18,103 --> 00:33:29,441 ♬~ 311 00:33:29,441 --> 00:33:39,451 (おとしの泣き声) 312 00:33:43,788 --> 00:34:50,655 ♬~ 313 00:34:50,655 --> 00:34:52,657 (鈴の音) 314 00:35:01,733 --> 00:35:09,741 ⚟(雪を踏む足音) 315 00:35:23,421 --> 00:35:26,725 あれから 死のうと思いました。 316 00:35:29,294 --> 00:35:37,602 なぜ 私は あの男を助けたのか。 なぜ 森口殿の刃から あの男を。 317 00:35:39,771 --> 00:35:42,474 三千代の仇を…。 318 00:35:45,443 --> 00:35:50,115 分からない…。 あの時 どうしても 私は…。 319 00:35:50,115 --> 00:35:57,822 私は あの男を斬らなかったのか。 森口殿に斬らせないなら なぜ。 320 00:36:04,629 --> 00:36:12,737 15の年に 定町廻りの見習いになって 30年。 321 00:36:12,737 --> 00:36:19,611 来る日も 来る日も 俺は… 人殺しをさせまいとしてきた。 322 00:36:19,611 --> 00:36:23,381 あいつが憎い あいつを殺したい。 323 00:36:23,381 --> 00:36:30,288 何十 何百 何千の そういう連中の思いを俺は封じた。 324 00:36:30,288 --> 00:36:33,591 俺も お前と同じ事をしてきた。 325 00:36:35,760 --> 00:36:40,765 なぜかは 俺も分からない。 326 00:36:46,771 --> 00:36:48,773 ただ…。 327 00:36:54,646 --> 00:37:02,253 知ってるか? 人ってな 苦しい時に 髪が伸びて➡ 328 00:37:02,253 --> 00:37:06,257 楽をしてる時には 爪が伸びるんだそうだ。 329 00:37:06,257 --> 00:37:09,561 「苦髪楽爪」ってな。 330 00:37:14,733 --> 00:37:22,740 俺は 爪を切っていた。 あの日。 縁側で…。 331 00:37:26,744 --> 00:37:32,751 (鈴の音) 332 00:37:44,762 --> 00:37:47,765 外は 寒いぞ。 333 00:37:52,637 --> 00:37:54,639 (三千代)ええ…。 334 00:37:59,711 --> 00:38:06,017 俺の体は 温かい。 今まで 日向ぼっこをしていた。 335 00:38:24,736 --> 00:38:27,038 父上…。 336 00:38:28,606 --> 00:38:34,612 父上…。 父上…。 337 00:38:47,759 --> 00:38:54,766 あの時…。 もっと強く抱いてやれば…。 338 00:38:56,768 --> 00:39:05,577 もう ほんの少し 腕と体を 温かく包んでやれれば➡ 339 00:39:05,577 --> 00:39:12,717 そうすれば 三千代は こんな事には…。 340 00:39:12,717 --> 00:39:20,024 そうだ。 もっと強く。 もっと。 もっと…! 341 00:39:24,729 --> 00:39:26,731 義父上…。 342 00:39:28,600 --> 00:39:35,740 俺さえ 俺さえ あいつを しっかりと抱いてやれれば➡ 343 00:39:35,740 --> 00:39:46,751 そうすれば あいつは…。 俺は 三千代を…! 344 00:39:46,751 --> 00:39:50,755 (号泣) 345 00:40:00,765 --> 00:40:06,070 私を 森口家の養子にして下さい! 346 00:40:09,774 --> 00:40:14,646 (号泣) 347 00:40:14,646 --> 00:40:32,797 ♬~ 348 00:40:32,797 --> 00:40:38,469 <こうして 晃之助様は 森口家の ご養子になられました。➡ 349 00:40:38,469 --> 00:40:42,340 あの雪の夜から 3年の歳月が流れ➡ 350 00:40:42,340 --> 00:40:46,144 晃之助様が 私 皐月を娶り➡ 351 00:40:46,144 --> 00:40:49,814 舅殿が 根岸の寮番となられるまで➡ 352 00:40:49,814 --> 00:40:53,818 沢山のお話ししたき事が ございます> 353 00:41:00,758 --> 00:41:06,431 (鈴の音) 354 00:41:06,431 --> 00:41:11,436 <それは またの折に 致しとうございます> 355 00:41:20,778 --> 00:41:25,650 そうして残りたかったのか。 七五郎の心に。 356 00:41:25,650 --> 00:41:31,289 私は… 傷を残そうとしただけです。 357 00:41:31,289 --> 00:41:35,126 差し上げます。 え? 358 00:41:35,126 --> 00:41:39,797 思い切れ。 生きて 思い切れ。 359 00:41:39,797 --> 00:42:54,806 ♬~