1 00:00:00,634 --> 00:00:04,872 ♬~ 2 00:00:04,872 --> 00:00:08,008 (皐月)<祝言まで あと10日。➡ 3 00:00:08,008 --> 00:00:13,347 森口家の嫁となる 皐月でございます。➡ 4 00:00:13,347 --> 00:00:18,018 私の舅殿 森口慶次郎様は➡ 5 00:00:18,018 --> 00:00:23,690 一人娘の三千代様を 不幸な事件で 亡くされました> 6 00:00:23,690 --> 00:00:26,593 自害か!? (慶次郎)三千代…! 7 00:00:26,593 --> 00:00:30,564 <慶次郎様は お心の傷を分かち合おうと➡ 8 00:00:30,564 --> 00:00:33,033 三千代様の許婚➡ 9 00:00:33,033 --> 00:00:36,737 晃之助様を 養子に 迎えられたのです> 10 00:00:41,708 --> 00:00:44,611 <それから 1年と半。➡ 11 00:00:44,611 --> 00:00:48,582 定町廻り同心の見習いとなられた 晃之助様は➡ 12 00:00:48,582 --> 00:00:54,421 慶次郎様について お役目に 励んでおられます> 13 00:00:54,421 --> 00:01:04,932 ♬~ 14 00:01:04,932 --> 00:01:12,639 <上野池之端 不忍池を臨む料理屋 「花ごろも」> 15 00:01:14,608 --> 00:01:19,346 <女将のお登世さんは 旦那さんを亡くされたあと➡ 16 00:01:19,346 --> 00:01:23,684 嫁ぎ先を 後見人の叔父 安右衛門に追われ➡ 17 00:01:23,684 --> 00:01:27,354 身ひとつで この店を 始められました> 18 00:01:27,354 --> 00:01:30,691 (お登世)ぬるいの お好きだから。 板さん それから…。 19 00:01:30,691 --> 00:01:35,562 (お秋)女将さん! 来ました。 鎌倉屋の旦那。 20 00:01:35,562 --> 00:01:39,366 もう お待ちだからね。 へい。 21 00:01:39,366 --> 00:01:41,301 (おかつ)お待ち下さいませ! 22 00:01:41,301 --> 00:01:44,037 (安右衛門)打ち水が 敷居まで跳ねてたぞ。 帳面は!? 23 00:01:44,037 --> 00:01:46,707 すいません。 こちらには…。 24 00:01:46,707 --> 00:01:50,377 安右衛門さん。 今日は 何のご用で? 25 00:01:50,377 --> 00:01:55,215 後見が 商いの様子を見るのに ご用もあるまい。 さあ 帳面を。 26 00:01:55,215 --> 00:01:58,418 あんたが 鎌倉屋の? 27 00:01:59,987 --> 00:02:06,326 どういう事だね。 お役人様の前で ってのは… 何なんだい。 28 00:02:06,326 --> 00:02:09,229 私が 立ち会いを お願いいたしました。 29 00:02:09,229 --> 00:02:14,201 南町奉行所の森口様と ご養子の晃之助様でございます。 30 00:02:14,201 --> 00:02:18,839 この際 双方の言い分を 聞いて頂こうと思いまして。 31 00:02:18,839 --> 00:02:24,344 了見違いも甚だしい。 そもそもが 身内の話じゃないか。 32 00:02:24,344 --> 00:02:29,182 あら お忘れですか。 幼なじみの晃之助は➡ 33 00:02:29,182 --> 00:02:32,686 身内同然でございますよ。 34 00:02:34,688 --> 00:02:39,559 私はね 後家となったお前が よそで恥をかかぬよう➡ 35 00:02:39,559 --> 00:02:44,698 案じているだけだ。 いわば 親心ではないか。 36 00:02:44,698 --> 00:02:48,368 (晃之助)しかし ねえさんが この店を始める時➡ 37 00:02:48,368 --> 00:02:51,204 鎌倉屋は 1文の 助けもしなかったと。 38 00:02:51,204 --> 00:02:55,075 当然でございましょう。 手前味噌になりますが➡ 39 00:02:55,075 --> 00:02:59,913 鎌倉屋と申せば 唐物の逸品を扱う 老舗でございます。 40 00:02:59,913 --> 00:03:04,317 その嫁が 料理屋を出すなど もってのほかでございます。 41 00:03:04,317 --> 00:03:08,188 でしたら その意地 お通し下さいまし。 何だと? 42 00:03:08,188 --> 00:03:11,491 こちらは あちこち頭を下げて お金を かき集めて➡ 43 00:03:11,491 --> 00:03:14,528 やっとの思いで ここまで来たんです。➡ 44 00:03:14,528 --> 00:03:17,164 それを その借金が 半分になった途端に➡ 45 00:03:17,164 --> 00:03:20,067 親心だの 身内だのって➡ 46 00:03:20,067 --> 00:03:23,270 ちょっと おかしな話じゃ ありませんか? 47 00:03:24,905 --> 00:03:28,909 いい眺めだねえ。 48 00:03:33,613 --> 00:03:37,918 蓮の花が咲くころは さぞかし 見事だろうなあ。 49 00:03:39,553 --> 00:03:42,689 あんたの気持ち 分からんじゃねえが➡ 50 00:03:42,689 --> 00:03:47,527 俺だって こんな店見たら さもしくなるさなあ。 51 00:03:47,527 --> 00:03:49,563 さもしいとは? 52 00:03:49,563 --> 00:03:54,267 さもしいさ! 人のものを欲しがるのは。 53 00:03:59,039 --> 00:04:01,341 また来る! 54 00:04:05,312 --> 00:04:07,981 (お登世) みつきほど前からですかねえ。 55 00:04:07,981 --> 00:04:10,884 やたらと顔を出すように なったんですよ。 56 00:04:10,884 --> 00:04:15,489 勝手に後見人を名乗って 帳場に上がり込んだり➡ 57 00:04:15,489 --> 00:04:20,994 座敷のしつらえに 口を出したり。 なるほど。 58 00:04:22,996 --> 00:04:24,931 どうした? 59 00:04:24,931 --> 00:04:32,672 思い出したんです 昔の事。 お登世ねえさん 苦労して…。 60 00:04:32,672 --> 00:04:38,345 父が御家人くずれの 博打にのめり込むような人でね。 61 00:04:38,345 --> 00:04:40,280 よくある話。 62 00:04:40,280 --> 00:04:42,682 奉公に行った料理屋で 見初められて➡ 63 00:04:42,682 --> 00:04:46,353 唐物問屋の女将さんになった って聞いた時は➡ 64 00:04:46,353 --> 00:04:51,224 心底よかった。 そう思ってたのに…。 65 00:04:51,224 --> 00:04:54,227 まあ 飲め。 66 00:04:56,029 --> 00:05:02,302 義父上 この一件 私に任せていただけませんか? 67 00:05:02,302 --> 00:05:04,237 晃之助さんが? 68 00:05:04,237 --> 00:05:09,543 ねえさんには 世話になったから。 恩返しがしたいんだ。 69 00:05:11,311 --> 00:05:13,246 晃之助さん。 70 00:05:13,246 --> 00:05:15,182 (足音) 71 00:05:15,182 --> 00:05:20,654 旦那。 八丁堀から お使いの方が。 72 00:05:20,654 --> 00:05:24,991 <その夜 もう一つ 事件が 起きていました> 73 00:05:24,991 --> 00:05:27,894 (辰吉)弓町で 太兵衛が 引っ立てましたが。 74 00:05:27,894 --> 00:05:31,865 (太兵衛)どう考えても 揉めてたに違いねえんだが➡ 75 00:05:31,865 --> 00:05:34,334 聞いても 何にも言いやしねえ。 76 00:05:34,334 --> 00:05:37,170 そしたら あっちの男がね➡ 77 00:05:37,170 --> 00:05:40,006 森口の旦那 呼んでくれと。 78 00:05:40,006 --> 00:05:44,311 あんた 七五郎さんか。 79 00:05:46,680 --> 00:05:51,017 ちょっと 転びまして。 80 00:05:51,017 --> 00:05:55,689 蔵前の越後屋って 札差の番頭だ。 81 00:05:55,689 --> 00:05:58,592 転んだにしちゃ 派手な傷だが。 82 00:05:58,592 --> 00:06:02,462 (賢吾)伝左 お前また 何か 悪さしたんじゃねえだろうな? 83 00:06:02,462 --> 00:06:05,298 (伝左)旦那。 何を 人聞きの悪い。 84 00:06:05,298 --> 00:06:11,171 蛙の伝左っていってね ゆすり たかりの 鼻つまみでさ。 85 00:06:11,171 --> 00:06:13,974 そうなのか? (七五郎)違います。➡ 86 00:06:13,974 --> 00:06:17,844 転んだはずみで 私の巻き添えに なったんです。 87 00:06:17,844 --> 00:06:20,313 早く帰して頂きたくて➡ 88 00:06:20,313 --> 00:06:24,651 仏の旦那のお名前を 出してしまいました。 89 00:06:24,651 --> 00:06:30,657 ほら。 ねっ でしょう? ねえ 旦那。 90 00:06:34,327 --> 00:06:38,632 手前は 一人で 裏の駕籠屋から。 91 00:06:40,200 --> 00:06:44,504 これは 頂いて参ります。 92 00:06:50,343 --> 00:06:53,013 駕籠か…。 93 00:06:53,013 --> 00:06:57,684 蔵前の番頭が 何で 京橋の駕籠屋を 知ってるんだ。 94 00:06:57,684 --> 00:06:59,953 女ですかね。 95 00:06:59,953 --> 00:07:04,624 女で ゆすられた? 真面目一方の番頭だが。 96 00:07:04,624 --> 00:07:08,495 調べてみましょう。 そうだな。 97 00:07:08,495 --> 00:07:10,497 あの七五郎って男は➡ 98 00:07:10,497 --> 00:07:14,134 評判どおりで 仕事一筋 大番頭に なっておりやした。 99 00:07:14,134 --> 00:07:16,469 女房は 主人の姪です。 100 00:07:16,469 --> 00:07:21,308 札差 越後屋は 大番頭の七五郎で もつってか。 101 00:07:21,308 --> 00:07:25,979 <札差とは 旗本 御家人が➡ 102 00:07:25,979 --> 00:07:28,882 扶持として受け取る米手形を お金に換えるのを➡ 103 00:07:28,882 --> 00:07:31,318 生業としております。➡ 104 00:07:31,318 --> 00:07:36,189 手形を担保に 武家への金貸しも 営んでおります> 105 00:07:36,189 --> 00:07:40,327 このように 7年先の俸禄まで お貸ししております。 106 00:07:40,327 --> 00:07:42,262 旦那は 七五郎と いつ お知り合いに? 107 00:07:42,262 --> 00:07:47,200 もう10年ほど前 まだ 手代だったころだ。 108 00:07:47,200 --> 00:07:51,338 無理な借金を迫った 侍がいてね。 109 00:07:51,338 --> 00:07:55,041 (兵太郎)金を貸さぬなら 斬る! 110 00:08:03,917 --> 00:08:17,497 (笑い声) 111 00:08:17,497 --> 00:08:22,969 七五郎にとっちゃ 若気の至りって事だろうが。 112 00:08:22,969 --> 00:08:26,673 毎度 ありがとうございました。 113 00:08:34,581 --> 00:08:38,885 そんなに荒っぽい 男だったんでやんすか。 114 00:08:41,988 --> 00:08:48,862 <お登世さんの嫁ぎ先 唐物問屋の 鎌倉屋さんでございます> 115 00:08:48,862 --> 00:08:51,664 お待たせいたしました こちらへ。 116 00:08:51,664 --> 00:08:58,538 <唐物とは 異国の地から 渡ってきた品物でございます> 117 00:08:58,538 --> 00:09:05,211 単刀直入に言う。 この後 お登世の店に関わるのは やめろ。 118 00:09:05,211 --> 00:09:09,616 ハハハ 困りましたな どうも。 119 00:09:09,616 --> 00:09:11,551 あの店は 女将が➡ 120 00:09:11,551 --> 00:09:15,288 仕入れから 奉公人の差配 座敷の置物から 料理の塩梅➡ 121 00:09:15,288 --> 00:09:18,324 帳面までを すべて一人で こなしておる。 122 00:09:18,324 --> 00:09:20,794 気の赴くまま いきなり訪れ➡ 123 00:09:20,794 --> 00:09:22,729 傍若無人に振る舞うては➡ 124 00:09:22,729 --> 00:09:25,131 狼藉と とられても しかたなかろう。 125 00:09:25,131 --> 00:09:30,303 大げさですな。 たかが 身内の揉め事でございます。 126 00:09:30,303 --> 00:09:36,643 女将は その方を 身内とは思っておらぬ。 127 00:09:36,643 --> 00:09:38,978 お客様 お帰りだ。 128 00:09:38,978 --> 00:09:42,649 安右衛門殿。 では…。 129 00:09:42,649 --> 00:09:45,351 安右衛門殿! 130 00:09:50,523 --> 00:09:56,162 二度と 花ごろもに出向くのは やめていただきたい。 131 00:09:56,162 --> 00:10:02,368 このとおり。 おやめ下さい。 132 00:10:03,903 --> 00:10:06,206 このとおり! 133 00:10:16,349 --> 00:10:21,688 <その日 鎌倉屋さんは 晃之助様の頼みに➡ 134 00:10:21,688 --> 00:10:25,391 しぶしぶ うなずかれたそうで ございます> 135 00:10:29,028 --> 00:10:32,365 <ところが それから しばらくたって…> 136 00:10:32,365 --> 00:10:36,703 ⚟旦那! 旦那。 旦那! 137 00:10:36,703 --> 00:10:39,606 花ごろもの…。 どうしたい 慌てて。 138 00:10:39,606 --> 00:10:44,911 (おちえ)鎌倉屋が 公事師を立てて 「売り上げを よこせ」と。 139 00:10:47,714 --> 00:10:50,383 身内だと思うからこそ➡ 140 00:10:50,383 --> 00:10:53,286 後見のつもりで あれこれ口を出したが➡ 141 00:10:53,286 --> 00:10:58,725 そうでないと言い張るのなら 二度と商いに口を挟まぬ。 142 00:10:58,725 --> 00:11:02,996 そのかわり 売り上げの三分一を よこせと。 143 00:11:02,996 --> 00:11:04,931 そんな…。 144 00:11:04,931 --> 00:11:08,334 訴えられると まずい事でもあるのかい? 145 00:11:08,334 --> 00:11:14,674 やましい事なんざ ありません。 ただ この店を 始める時に➡ 146 00:11:14,674 --> 00:11:20,547 先代から いざという時のために 頂いた 蓄えを つぎ込みました。 147 00:11:20,547 --> 00:11:23,683 それを 鎌倉屋の金だと とられると…。 148 00:11:23,683 --> 00:11:28,021 鎌倉屋の分け店に されてしまうのか。 149 00:11:28,021 --> 00:11:30,023 はい。 150 00:11:36,696 --> 00:11:39,399 ⚟お待ちどおさま。 151 00:11:43,369 --> 00:11:45,872 ごめんよ。 どうも。 152 00:11:45,872 --> 00:11:53,079 (おきわ)旦那。 兄が また何か? いや。 上かい? 153 00:12:03,990 --> 00:12:08,661 (吉次)ああ いや 出かけるとこで。 154 00:12:08,661 --> 00:12:11,331 悪いが 込み入った話なら またにしておくんなさい。 155 00:12:11,331 --> 00:12:13,333 手間は とらせねえ。 156 00:12:20,673 --> 00:12:24,344 晃之助さんでしたっけね? ご養子の。 157 00:12:24,344 --> 00:12:26,679 いや~ なかなか よくやってらっしゃる。 158 00:12:26,679 --> 00:12:29,582 やっては いるが…➡ 159 00:12:29,582 --> 00:12:35,688 あれは まずいや。 いくら お役に 熱くなったからといって➡ 160 00:12:35,688 --> 00:12:39,559 二本差しに 店の中で 両手を つかれたんじゃ➡ 161 00:12:39,559 --> 00:12:42,562 つかれた方が たまんねえや。 162 00:12:42,562 --> 00:12:45,365 詳しいんだな。 163 00:12:45,365 --> 00:12:48,701 あれじゃ 鎌倉屋も 収まりがつかねえ。 164 00:12:48,701 --> 00:12:54,374 だが おかげで おいしい匂いがしてきやがった。 165 00:12:54,374 --> 00:13:01,180 何で それほど 出てった 嫁の店に こだわるのかってね。 166 00:13:01,180 --> 00:13:07,920 出るかい 埃が。 さあてね…。 167 00:13:07,920 --> 00:13:11,658 お前の仕事には 手は出さねえ。 168 00:13:11,658 --> 00:13:22,302 ♬~ 169 00:13:22,302 --> 00:13:25,204 ああ いや… ちょっと あの あれ…。 170 00:13:25,204 --> 00:13:29,208 せっかく 大根河岸まで いらしたんだ。 171 00:13:29,208 --> 00:13:32,679 似たようなゴミの話でも ひとつ…。 172 00:13:32,679 --> 00:13:36,349 ゴミは 部屋だけでたくさんだ。 173 00:13:36,349 --> 00:13:42,221 伝左っていうのが おりやしてね。 そいつが 近頃 羽振りがいい。 174 00:13:42,221 --> 00:13:45,358 札差の番頭の弱みを 握ったとかで。 175 00:13:45,358 --> 00:13:48,027 いや つまんない弱みですよ。 176 00:13:48,027 --> 00:13:53,733 南鍛冶町に お直っていう女を 囲ってるっていうだけの…。 177 00:13:59,038 --> 00:14:01,641 ああ すまねえ。 この辺りに お直って子いない? 178 00:14:01,641 --> 00:14:06,979 兵さんとこのですか? 尻餅の。 アハハハ。尻餅? 179 00:14:06,979 --> 00:14:11,818 あだ名です。 昔 札差の店で いざこざ起こしてね。 180 00:14:11,818 --> 00:14:16,022 あげく 奉公人に ほら 尻餅くらわされたって。 181 00:14:21,327 --> 00:14:24,997 お直が…。 あの侍の。 182 00:14:24,997 --> 00:14:28,334 あれで すっかり 笑い者。 183 00:14:28,334 --> 00:14:32,004 お侍仲間や 親戚にも 見放されましてね➡ 184 00:14:32,004 --> 00:14:36,676 病で 床に ついたまんま お直ちゃんと 2人暮らし。 185 00:14:36,676 --> 00:14:39,579 あっ… お直ちゃん! ちょっと ちょっと。 186 00:14:39,579 --> 00:14:41,881 (お直)こんにちは。 187 00:14:44,550 --> 00:14:47,687 ちょっと 尋ねてえんだが。 188 00:14:47,687 --> 00:14:51,557 俺は 南の定町廻りで 森口ってもんだ。 189 00:14:51,557 --> 00:14:53,559 待ってくれ。 190 00:14:53,559 --> 00:14:58,264 力になろうと思って 来た。 お前さん…。 191 00:15:01,234 --> 00:15:04,137 伝左って男に つきまとわれてねえか? 192 00:15:04,137 --> 00:15:08,641 いや お前さんだけじゃない。 お父っつぁんや➡ 193 00:15:08,641 --> 00:15:15,348 ここにやってくる 七五郎も。 194 00:15:18,651 --> 00:15:20,987 おい! お直! 195 00:15:20,987 --> 00:15:22,922 ⚟帰って下さい。 196 00:15:22,922 --> 00:15:26,659 話だけでも 聞いてくれねえか。 ⚟知りません。➡ 197 00:15:26,659 --> 00:15:28,661 帰って下さい。 198 00:15:30,329 --> 00:15:36,669 じゃあ 帰るが。 いいかい。 何か 困った事があったら➡ 199 00:15:36,669 --> 00:15:41,974 俺を 思い出すんだぜ。 南の慶次郎だ。 200 00:15:45,011 --> 00:15:50,316 (せきこみ) 201 00:16:04,297 --> 00:16:07,633 ⚟(吉次)昼間から いいご身分で。 202 00:16:07,633 --> 00:16:09,969 何だ お前は? 203 00:16:09,969 --> 00:16:13,005 いえね。 この家に ちょいといい女が➡ 204 00:16:13,005 --> 00:16:15,842 住まってるって 聞いてね。 205 00:16:15,842 --> 00:16:20,313 女か。 言いふらしたいなら するがいい。 206 00:16:20,313 --> 00:16:23,649 こっちは 痛くもかゆくもねえ。 207 00:16:23,649 --> 00:16:27,520 いや それが ただの女じゃねえ。 208 00:16:27,520 --> 00:16:31,524 あちこちのお屋敷から なくなった品物➡ 209 00:16:31,524 --> 00:16:36,662 こっそり商ってるって噂が あってね。 210 00:16:36,662 --> 00:16:46,005 老舗の唐物屋のご主人が通うには ちいと聞こえの悪い家ですがね。 211 00:16:46,005 --> 00:16:52,678 お前…。 蝮。 212 00:16:52,678 --> 00:16:58,551 その名で 捜しておくんなさい。 口は 堅い方でね。 213 00:16:58,551 --> 00:17:02,288 どうぞ いつでも。 214 00:17:02,288 --> 00:17:08,094 <盗んだ品物を商う 陰物買い。 お上に訴えられれば➡ 215 00:17:08,094 --> 00:17:13,299 鎌倉屋さんは 江戸払いの お咎めを 受ける事になります> 216 00:17:20,306 --> 00:17:26,612 何だ。 言いたい事があるなら 申せ。いえ。 217 00:17:28,180 --> 00:17:33,185 男2人の飯なんざ しんきくさくて いけねえや。 218 00:17:35,855 --> 00:17:42,328 義父上。 帰りしなに お登世ねえさんの店を訪ねました。 219 00:17:42,328 --> 00:17:46,198 かえって 迷惑をかけたと 謝りに 寄ったのです。 220 00:17:46,198 --> 00:17:51,337 すると 鎌倉屋からの訴えは 取り下げられたと 聞きました。 221 00:17:51,337 --> 00:17:54,006 そうかい。 222 00:17:54,006 --> 00:17:58,678 ほんの数日で なぜ そのように なるのです? 223 00:17:58,678 --> 00:18:02,281 気が変わったんだろう。 224 00:18:02,281 --> 00:18:05,952 吉次を お使いになりましたね? 225 00:18:05,952 --> 00:18:09,288 もちろん ああした十手持ちを 扱うのも➡ 226 00:18:09,288 --> 00:18:11,958 町廻りの器量だと 分かっております。 227 00:18:11,958 --> 00:18:15,828 分かってはおりますが あれでは何の決着にも ならない。 228 00:18:15,828 --> 00:18:19,131 ならぬか? なりません。 229 00:18:19,131 --> 00:18:22,969 今度は 吉次が 鎌倉屋に しつこく取りつくでしょう。 230 00:18:22,969 --> 00:18:25,304 煮え湯を飲まされた鎌倉屋は➡ 231 00:18:25,304 --> 00:18:27,239 仕返しとばかりに また➡ 232 00:18:27,239 --> 00:18:29,175 ねえさんの店に 現れるかもしれない。 233 00:18:29,175 --> 00:18:32,979 まあ 当分は おとなしくしてるだろうが。 234 00:18:32,979 --> 00:18:37,850 当分ですか? それでは 何もならないでは ありませんか。 235 00:18:37,850 --> 00:18:41,320 元は 何も糾されない。 236 00:18:41,320 --> 00:18:43,990 糾す? はい。 237 00:18:43,990 --> 00:18:46,826 「元を糾し 人を正す」か。 238 00:18:46,826 --> 00:18:52,331 いけませんか? 糾すと思わずして 何のお役目ですか。 239 00:18:55,334 --> 00:18:58,671 義父上も そうではないのですか? 240 00:18:58,671 --> 00:19:01,640 罪人を捕らえるだけが お役目じゃない。 241 00:19:01,640 --> 00:19:04,276 罪を犯させぬのも お役目のうちと➡ 242 00:19:04,276 --> 00:19:06,779 常々 おっしゃっていたでは ありませんか。 243 00:19:06,779 --> 00:19:10,950 それは 人を正す事では ないのですか? 244 00:19:10,950 --> 00:19:16,822 罪は 犯させねえ。 だが それは人を正す事じゃねえ。 245 00:19:16,822 --> 00:19:19,625 正すなどと 思い上がった事を 考えちゃいけねえ。 246 00:19:19,625 --> 00:19:24,296 では 何のためです? 罪に厳しく当たらぬのは➡ 247 00:19:24,296 --> 00:19:29,168 ただ 仏と呼ばれ 情け深い人と ありがたがられるためだけの➡ 248 00:19:29,168 --> 00:19:31,170 方便ですか! 249 00:19:41,313 --> 00:19:47,019 申し訳ございません。 いや…。 250 00:20:04,537 --> 00:20:08,340 ありがとうございました。 251 00:20:08,340 --> 00:20:12,678 この度は ありがとうございました。 252 00:20:12,678 --> 00:20:17,349 鎌倉屋も なかなか商いが 難しいようで…。 253 00:20:17,349 --> 00:20:20,686 うちに来ていたのも 嫌がらせというよりは➡ 254 00:20:20,686 --> 00:20:23,589 憂さ晴らしだったのかも しれませんね。 255 00:20:23,589 --> 00:20:26,859 けれど おかげさまで それも…。 256 00:20:26,859 --> 00:20:33,532 そうか。 あっ いや こっちこそ。 旦那…。 257 00:20:33,532 --> 00:20:37,036 晃之助が…。 258 00:20:37,036 --> 00:20:41,373 早く 一人前にしてやりたいと 思って 任せたんだが…。 259 00:20:41,373 --> 00:20:44,410 どうにも曲がらねえ男で かえって 大ごとにしちまった。 260 00:20:44,410 --> 00:20:46,545 いえ そんな。 261 00:20:46,545 --> 00:20:51,050 だが あいつが お前さんと この店のためを思った気持ちに➡ 262 00:20:51,050 --> 00:20:55,054 うそはねえ。 それだけは 汲んでやってほしい。 263 00:20:59,658 --> 00:21:04,997 いえね。 こういう身内も いるんだなって。 264 00:21:04,997 --> 00:21:08,334 うまくやってる人間 妬むだけではなくて➡ 265 00:21:08,334 --> 00:21:12,671 いたわり合う身内もね。 266 00:21:12,671 --> 00:21:17,543 いや 謝りてえのは それだけじゃねえ。 267 00:21:17,543 --> 00:21:22,848 厄介なのは… どういうんだか➡ 268 00:21:22,848 --> 00:21:28,521 どっか頼もしく思う心がある事で。 269 00:21:28,521 --> 00:21:34,026 曲がらねえ 役立たずの見習い野郎を…。 270 00:21:35,694 --> 00:21:38,697 すまねえ。 271 00:21:40,566 --> 00:21:44,036 <その曲がらない ご気性のお人は➡ 272 00:21:44,036 --> 00:21:48,908 その後 ひどく 我と我が身に 腹を立てておられました。➡ 273 00:21:48,908 --> 00:21:50,910 そのお腹立ちが➡ 274 00:21:50,910 --> 00:21:56,215 私と 晃之助様の 福の神になるのでございますが…> 275 00:22:07,259 --> 00:22:11,497 危ないではないか! 申し訳ありません。 276 00:22:11,497 --> 00:22:16,001 花を…。 花? 277 00:22:16,001 --> 00:22:19,872 <私は お稽古先で お話がはずみ➡ 278 00:22:19,872 --> 00:22:24,677 とうに暗くなっていた 帰り道のことでした> 279 00:22:24,677 --> 00:22:27,680 乗り出しては 川へ落ちる。 280 00:22:38,224 --> 00:22:40,226 ありがとうございます。 281 00:22:40,226 --> 00:22:42,695 こんな花 どこにでもあるだろうに。 282 00:22:42,695 --> 00:22:45,598 水辺に咲いた花は 色のもちが よいのです。 283 00:22:45,598 --> 00:22:48,200 かといって 無理に手を伸ばさずとも。 284 00:22:48,200 --> 00:22:51,036 ご迷惑をおかけしました。 285 00:22:51,036 --> 00:22:53,739 ありがとうございました。 286 00:22:55,908 --> 00:22:58,711 おい。 287 00:22:58,711 --> 00:23:01,981 1人歩きか? なれております。 288 00:23:01,981 --> 00:23:04,316 送ろう。 289 00:23:04,316 --> 00:23:08,654 下心で言うのではない。 夜道は 危ない。 290 00:23:08,654 --> 00:23:12,358 取り返しのつかぬ事にでも なったら どうなさる! 291 00:23:13,993 --> 00:23:17,296 あ… いや…。 292 00:23:24,003 --> 00:23:28,707 差し上げます。 え? 293 00:23:34,013 --> 00:23:37,349 手の届かない花を見ているうち➡ 294 00:23:37,349 --> 00:23:40,686 どうしても 我が手で 摘んでみたくなったのです。 295 00:23:40,686 --> 00:23:44,556 少し無理をしてでも…。 296 00:23:44,556 --> 00:23:47,026 それだけです。 297 00:23:47,026 --> 00:23:49,695 手を貸したのは 迷惑だったか? 298 00:23:49,695 --> 00:23:52,031 いえ。 299 00:23:52,031 --> 00:23:55,901 楽しゅうございました。 300 00:23:55,901 --> 00:24:00,205 迎えの者と そこで 行き合います故。 301 00:24:06,979 --> 00:24:09,281 危ない。 302 00:24:13,852 --> 00:24:15,988 何だ? これは。 303 00:24:15,988 --> 00:24:19,658 見てのとおり 紫陽花ですよ。 304 00:24:19,658 --> 00:24:21,593 ふ~ん。 305 00:24:21,593 --> 00:24:26,532 義父上。 ゆうべは どこか お出かけでしたか? 306 00:24:26,532 --> 00:24:30,302 いや… とりたてて どこという事では…。 307 00:24:30,302 --> 00:24:34,606 ああ そろそろ 梅雨も明けそうだな…。 308 00:24:37,676 --> 00:24:42,982 <その夕方 七五郎が ついに動きます> 309 00:24:44,550 --> 00:24:48,020 伝左の奴 賭場の払いが かさんでおりやす。 310 00:24:48,020 --> 00:24:51,890 今日中には 必ず つなぎを つけてきます。 311 00:24:51,890 --> 00:25:12,878 ♬~ 312 00:25:24,323 --> 00:25:27,025 あいつ…。 313 00:25:30,195 --> 00:25:32,898 お直…。 314 00:25:38,337 --> 00:25:43,342 なぜ ここに? あの男に会うのですね。 315 00:25:45,010 --> 00:25:49,681 ご安心なさい。 悪いようには致しませんから。 316 00:25:49,681 --> 00:25:53,352 でも また お金を せびりにくるのでしょう。 317 00:25:53,352 --> 00:25:57,656 それは もう 今日限りにさせますから。 318 00:26:00,959 --> 00:26:05,297 なぜです? え…。 319 00:26:05,297 --> 00:26:09,968 なぜ 私を責めないのですか? 320 00:26:09,968 --> 00:26:12,871 あの男が付きまとうのは➡ 321 00:26:12,871 --> 00:26:21,180 あんな事をした 私のせいじゃ ありませんか。 なのに なぜ? 322 00:26:23,315 --> 00:26:27,619 今日は もう お帰りなさい。 323 00:26:31,190 --> 00:26:34,493 父上も お待ちだ。 324 00:27:00,619 --> 00:27:09,628 旦那も罪作りだよな。 え? あの女 旦那に夢中じゃねえか。 325 00:27:09,628 --> 00:27:11,930 伝左…。 326 00:27:14,299 --> 00:27:16,235 いくら いるんだ? 327 00:27:16,235 --> 00:27:21,173 始末しやしょう 女。 ね。 328 00:27:21,173 --> 00:27:26,311 旦那だって 持て余してたんでしょうが。 329 00:27:26,311 --> 00:27:30,983 旦那の内儀さんは 主人の姪だ。 330 00:27:30,983 --> 00:27:36,855 娘さんは 近々 旗本のお屋敷に 行儀見習が決まってる。 331 00:27:36,855 --> 00:27:44,863 旦那も来年には 日本橋に 米屋の店をお出しになる。 332 00:27:47,332 --> 00:27:52,004 あっしも そろそろ 楽したいんでさ。 旦那。 333 00:27:52,004 --> 00:27:54,306 危ねえ! 334 00:28:02,281 --> 00:28:04,616 お直! 335 00:28:04,616 --> 00:28:08,287 島送りには なりたかねえよな。 336 00:28:08,287 --> 00:28:12,291 二度と汚ねえ面 出すんじゃねえ。 うせろ! 337 00:28:14,960 --> 00:28:17,663 お直! 338 00:28:22,834 --> 00:28:29,975 (七五郎)お直は 私を かばったのでございます。➡ 339 00:28:29,975 --> 00:28:35,314 お直との仲を かぎつけられ あの男には そりゃもう…。 340 00:28:35,314 --> 00:28:42,988 何度も金をゆすられ続けました。 それに気づいた お直が➡ 341 00:28:42,988 --> 00:28:48,293 あの夜 突然 私と会っている 伝左の前に現れて…。 342 00:28:51,997 --> 00:28:53,999 おやめください! 343 00:28:55,667 --> 00:28:59,538 七五郎様! 344 00:28:59,538 --> 00:29:05,944 お直にしてみれば 私を 助けるつもりだったのでしょう。 345 00:29:05,944 --> 00:29:10,616 …が ゆすりのタネを 増やしただけで。 346 00:29:10,616 --> 00:29:17,322 お直は お前が 店で恥をかかせた侍の娘だな? 347 00:29:25,163 --> 00:29:29,968 (七五郎)おととし ものごい同然になったお侍に➡ 348 00:29:29,968 --> 00:29:32,871 たまたま再会いたしました。➡ 349 00:29:32,871 --> 00:29:35,641 奥様は 病に倒れ➡ 350 00:29:35,641 --> 00:29:42,648 お嬢さんは 身売りの話が 決まっておりました。 351 00:29:44,983 --> 00:29:51,690 私は… 突然 我が身が 恐ろしくなりました。 352 00:29:54,326 --> 00:30:01,199 人を殺めたりする事とは 無縁だと 私は思っておりました。 353 00:30:01,199 --> 00:30:07,873 その私が 人の一生を壊している。 354 00:30:07,873 --> 00:30:18,183 その事が怖くて 恐ろしくて…。 355 00:30:18,183 --> 00:30:21,987 世話をするように なったんだな? 356 00:30:27,359 --> 00:30:31,363 …で お直の事は? 357 00:30:34,032 --> 00:30:40,806 しばらく 後の事でございます。 358 00:30:40,806 --> 00:30:43,709 お直の方が…➡ 359 00:30:43,709 --> 00:30:50,582 私を好いてくれました。 拒めませんでした。 360 00:30:50,582 --> 00:30:57,255 私が不幸せにした女です。 償わねば…。 361 00:30:57,255 --> 00:31:02,561 その気持ちが ずるずると…。 362 00:31:04,996 --> 00:31:08,300 償いか…。 363 00:31:18,009 --> 00:31:20,512 よせ! 離して! 364 00:31:20,512 --> 00:31:22,714 お直! 365 00:31:24,349 --> 00:31:29,688 (すすり泣き) 366 00:31:29,688 --> 00:31:34,359 泣くな。 泣くでない。 367 00:31:34,359 --> 00:31:39,231 (泣き声) 368 00:31:39,231 --> 00:31:44,035 泣くな…。 泣くな…。 369 00:31:44,035 --> 00:31:51,042 (泣き声) 370 00:31:54,679 --> 00:31:59,518 七五郎は お前を許してくれと言っている。 371 00:31:59,518 --> 00:32:06,992 お前が 罪を犯そうとしたのは 自分を守るためだったってな。 372 00:32:06,992 --> 00:32:11,696 七五郎さんが…? ああ。 373 00:32:15,333 --> 00:32:18,336 違います。 374 00:32:22,007 --> 00:32:27,879 お前は 七五郎のために 伝左を 殺そうとしたのではないのかい? 375 00:32:27,879 --> 00:32:36,354 私は… 傷を残そうとしただけです。 376 00:32:36,354 --> 00:32:39,057 傷…? 377 00:32:42,027 --> 00:32:45,697 七五郎にか? 378 00:32:45,697 --> 00:32:51,903 あの人なんか 駄目になればいい。 そう思っていました。 379 00:32:53,438 --> 00:32:57,309 馬鹿な囲い女が 人殺しをしたせいで➡ 380 00:32:57,309 --> 00:33:00,645 何もかも世間に知られて➡ 381 00:33:00,645 --> 00:33:09,321 番頭の座も 新しく出す店の話も 何もかも駄目になって➡ 382 00:33:09,321 --> 00:33:11,990 一生を棒に振ればいい。 383 00:33:11,990 --> 00:33:17,996 お前は…。 憎かった。 あの男が。 384 00:33:19,865 --> 00:33:25,003 私の父を 母を…。 385 00:33:25,003 --> 00:33:30,342 私を こんな目に遭わせたのは あの男です。 386 00:33:30,342 --> 00:33:39,851 許すものか… 許すものか! なのに…。 387 00:33:39,851 --> 00:33:44,022 好いてしまったんだな。 388 00:33:44,022 --> 00:33:53,198 憎む気持ちが いつか… あの人に 私を思わせたいと…。 389 00:33:53,198 --> 00:33:57,402 そういう願いに 変わっていました。 390 00:33:59,004 --> 00:34:08,313 でも あの人は 償いたい一心で 私を拒めなかっただけ。 391 00:34:08,313 --> 00:34:13,618 伝左を殺せば 好いてくれると思ったのか? 392 00:34:15,987 --> 00:34:18,690 分からない。 393 00:34:21,660 --> 00:34:24,329 分からない…。 394 00:34:24,329 --> 00:34:29,334 そうして残りたかったのか。 七五郎の心に。 395 00:34:31,002 --> 00:34:36,675 そんな…。 そのために 罪を犯すなど。 396 00:34:36,675 --> 00:34:40,011 なら 旦那。 397 00:34:40,011 --> 00:34:46,685 私は… 私は どうしたら よかったんです? 398 00:34:46,685 --> 00:34:51,356 あの人が… 愛おしくて憎いんです。 399 00:34:51,356 --> 00:34:55,226 憎くて 愛おしい…。 400 00:34:55,226 --> 00:35:00,966 そんな私は 一体! 思い切れ。 401 00:35:00,966 --> 00:35:07,639 義父上。 生きて 思い切れ。 402 00:35:07,639 --> 00:35:14,312 二度と 伝左が 七五郎を脅す事はなかろう。 403 00:35:14,312 --> 00:35:17,015 騒ぎはなかった。 404 00:35:18,650 --> 00:35:27,325 傷は 誰にも残らなかったのだ。 お前は お咎めなしだ。 405 00:35:27,325 --> 00:35:32,330 傷は 誰にも…。 406 00:35:41,339 --> 00:35:52,684 傷は…。 傷は 必ず つけた方にも残る。 407 00:35:52,684 --> 00:36:14,639 ♬~ 408 00:36:14,639 --> 00:36:20,345 罪を犯さずにすんで よかったな。 409 00:36:21,980 --> 00:36:24,649 旦那…。 410 00:36:24,649 --> 00:36:37,662 ♬~ 411 00:36:37,662 --> 00:36:42,534 この辺りは 雨上がりには よい風が 入ってまいります。 412 00:36:42,534 --> 00:36:47,672 ああ いい風だ。 いい月だ。 413 00:36:47,672 --> 00:36:52,010 亡くなった亭主は 妙に 耳が よござんしてね。 414 00:36:52,010 --> 00:36:58,349 生きていた時分は 「蛙が鳴いている 明日は雨だ。➡ 415 00:36:58,349 --> 00:37:02,320 鐘の音が近い 明日は晴れる」と➡ 416 00:37:02,320 --> 00:37:05,623 日和を当てんのが 好きでございました。 417 00:37:05,623 --> 00:37:10,495 当たるのかい? それが さっぱり。 418 00:37:10,495 --> 00:37:14,299 すいません。 亡くなった人の話なんか。 419 00:37:14,299 --> 00:37:20,605 いや…。 俺にも娘がいた。 420 00:37:27,312 --> 00:37:34,652 1年と半前に 亡くした。 晃之助は その許婚だった。 421 00:37:34,652 --> 00:37:36,588 ええ。 422 00:37:36,588 --> 00:37:42,994 俺も晃之助も いまだに 三千代を思う。 423 00:37:42,994 --> 00:37:46,664 あんな事があったと 笑う事もある。 424 00:37:46,664 --> 00:37:52,971 こんな事をしてやりたかったと 悔いを引きずる時もある。 425 00:37:58,009 --> 00:38:02,280 うらやましいわ。 426 00:38:02,280 --> 00:38:07,986 私なんか 消えたら それで おしまいです。 427 00:38:10,955 --> 00:38:14,292 そこまで思ってくれる人が いるなんて。 428 00:38:14,292 --> 00:38:17,629 お嬢さん 生きてらっしゃるんですね。 429 00:38:17,629 --> 00:38:36,648 ♬~ 430 00:38:36,648 --> 00:38:40,952 お話とは 何でしょう。 そこに座れ。 431 00:38:45,657 --> 00:38:49,994 この度の事 よくやった。 432 00:38:49,994 --> 00:38:52,897 お直の気持ちを よく受け止めた。 433 00:38:52,897 --> 00:38:57,869 あの娘が 出直そうと 思い切ったのは お前のおかげだ。 434 00:38:57,869 --> 00:39:01,272 義父上…。 435 00:39:01,272 --> 00:39:04,309 一人前になりたいと言ったな? 436 00:39:04,309 --> 00:39:08,947 申しました。 この家に入る時でございます。 437 00:39:08,947 --> 00:39:12,817 ならば 妻を娶れ。 438 00:39:12,817 --> 00:39:17,288 すぐにではない。 見習いの修行を積み➡ 439 00:39:17,288 --> 00:39:22,160 しかるべき時がきたら 妻帯し 子をつくれ。 440 00:39:22,160 --> 00:39:25,163 できませぬ。 なぜだ? 441 00:39:25,163 --> 00:39:29,867 私の妻は 三千代殿だけです。 442 00:39:29,867 --> 00:39:32,837 三千代殿が あのような最期を迎え➡ 443 00:39:32,837 --> 00:39:35,974 生き残った私が 妻を娶るなど できますか! 444 00:39:35,974 --> 00:39:38,309 あのような最期だからだ。 分かりませぬ。 445 00:39:38,309 --> 00:39:41,212 分からぬか。 分かりませぬ! 446 00:39:41,212 --> 00:39:44,182 それでは 三千代が…。 447 00:39:44,182 --> 00:39:47,185 三千代が 不憫すぎます。 448 00:39:50,655 --> 00:39:55,326 死んだ者を 不憫だなどと 軽々しく言うな! 449 00:39:55,326 --> 00:39:58,997 三千代は 生きている。 450 00:39:58,997 --> 00:40:04,702 お前は お前を生きてやれ。 それが 供養だ。 451 00:40:09,340 --> 00:40:12,010 妻を娶れ。 452 00:40:12,010 --> 00:40:29,027 ♬~ 453 00:40:29,027 --> 00:40:35,366 命の強い花だ。 うまく根づけばいいんだが。 454 00:40:35,366 --> 00:40:46,711 ♬~ 455 00:40:46,711 --> 00:40:49,614 <私が 晃之助様に嫁ぐのは➡ 456 00:40:49,614 --> 00:40:54,919 それから更に 1年と半の後でございます> 457 00:40:59,991 --> 00:41:03,328 <その祝言を前に 舅殿は➡ 458 00:41:03,328 --> 00:41:07,999 根岸の寮番になられる決意を されるのですが➡ 459 00:41:07,999 --> 00:41:14,005 そのお話は また 次の折に致しとうございます> 460 00:41:19,344 --> 00:41:23,848 三千代…。 晃之助に 嫁が決まった。 461 00:41:23,848 --> 00:41:25,783 怖いのです。 462 00:41:25,783 --> 00:41:30,521 私は 3人の家に 嫁ぐのでございます。 463 00:41:30,521 --> 00:41:34,025 加えて 4人にして頂くのでございます。 464 00:41:36,694 --> 00:41:39,597 <どうぞ お楽しみに> 465 00:41:39,597 --> 00:42:54,605 ♬~