1 00:00:04,738 --> 00:00:08,208 (お登世)夜になると まだ 風が冷とうござんすね。 2 00:00:08,208 --> 00:00:13,714 (皐月)<上野 池之端 不忍池の 料理屋「花ごろも」。➡ 3 00:00:13,714 --> 00:00:15,649 女将のお登世様は➡ 4 00:00:15,649 --> 00:00:20,888 夫を亡くされたあと 金物問屋の嫁ぎ先を追われ➡ 5 00:00:20,888 --> 00:00:25,759 身一つで この店を 始められた方でございます。➡ 6 00:00:25,759 --> 00:00:31,765 そんな お登世様と舅殿は すてきな恋を しておいででした> 7 00:00:33,467 --> 00:00:35,435 <ですが…> 8 00:00:35,435 --> 00:00:40,741 今夜 どうされます? (慶次郎)そうだなあ…。 9 00:00:42,576 --> 00:00:52,886 ♬~ 10 00:00:54,922 --> 00:00:59,760 うめえ! 一汗かいたあとの 茶漬けは なおさらだ。 11 00:00:59,760 --> 00:01:02,362 (佐七)ちょこっと 庭の隅 掃いただけだよ。 12 00:01:02,362 --> 00:01:07,534 これは 八百善で 1両2分は とれるぜ。よしとくれよ! 13 00:01:07,534 --> 00:01:11,705 しかし どういう了見なんだろうね➡ 14 00:01:11,705 --> 00:01:13,740 たかが茶漬けで そんな大金…。 15 00:01:13,740 --> 00:01:18,378 極上の茶で 茶漬けを食べたいと 所望した客が いたんだそうだ。 16 00:01:18,378 --> 00:01:21,214 茶に合う水が この辺りにはないからと➡ 17 00:01:21,214 --> 00:01:25,385 玉川まで くみに行き 客は 半日 待たされたそうだぜ。 18 00:01:25,385 --> 00:01:27,421 半日 飯抜きかい!? 19 00:01:27,421 --> 00:01:30,257 だったら 何だって おいしく 頂けるだろうよ。 20 00:01:30,257 --> 00:01:35,896 趣向さね。 客は その心意気に 代金をはずむ。 21 00:01:35,896 --> 00:01:43,570 分からねえなあ…。 しかし これは 実に うまい! 22 00:01:43,570 --> 00:01:48,909 今夜あたり 上野に行きなさる おつもりだね? 23 00:01:48,909 --> 00:01:53,580 なんだ いきなり! だから 俺に そんな おべっかを! 24 00:01:53,580 --> 00:01:58,752 <今 巷では 高価なお料理が 評判でございます。➡ 25 00:01:58,752 --> 00:02:02,356 洗う水までも 選び抜いた 鯉のお料理や➡ 26 00:02:02,356 --> 00:02:07,861 茄子の しぎ焼きに 7両もの お代を払ったなどと> 27 00:02:09,863 --> 00:02:14,368 <そして お登世様の「花ごろも」でも…> 28 00:02:14,368 --> 00:02:18,872 (板前)こちらが 茄子 こちらが ささげです。 29 00:02:21,541 --> 00:02:25,879 おいしい! 十六ささげの初物です。 30 00:02:25,879 --> 00:02:30,550 噛み応えはありますが あとから ささげのうまみが 広がります。 31 00:02:30,550 --> 00:02:34,721 (おかつ)趣向で値を上げるより 材料を吟味した お料理のほうが➡ 32 00:02:34,721 --> 00:02:37,557 うちには 合ってると 思うんです。 なるほど。 33 00:02:37,557 --> 00:02:40,894 (おちえ)器も少し 涼しげなものに したら どうでしょう。 34 00:02:40,894 --> 00:02:46,700 (お秋)うん… おいしい! これなら 仏の旦那も お喜びだ。 35 00:02:46,700 --> 00:02:49,903 こら! お秋。 お前は もう…。 36 00:02:49,903 --> 00:02:53,573 <ですが そのゆうべ 訪れたのは…➡ 37 00:02:53,573 --> 00:02:59,579 義父上様ではなく 少し変わったお客様だったのです> 38 00:03:12,526 --> 00:03:22,202 ♬~(三味線) 39 00:03:22,202 --> 00:03:25,706 私どもへ 何か? 40 00:03:25,706 --> 00:03:28,208 お客様…。 41 00:03:28,208 --> 00:03:30,243 いらっしゃいませ。 (お俊)甚吉さん➡ 42 00:03:30,243 --> 00:03:33,046 いらしてるでしょ。 案内を お願いします。 43 00:03:33,046 --> 00:03:35,949 早く。はい? 神田の甚吉さんですよ! 44 00:03:35,949 --> 00:03:38,385 あいにく お心当たりのお客様は…。 45 00:03:38,385 --> 00:03:41,221 ここで 七ツ半に 落ち合う約束だったんです。 46 00:03:41,221 --> 00:03:43,156 待たして頂きます。 お客様! 47 00:03:43,156 --> 00:03:45,092 うちを抜け出せなくて➡ 48 00:03:45,092 --> 00:03:47,094 こんな時刻に なってしまったんです。 49 00:03:47,094 --> 00:03:49,896 甚吉さんも きっと そうかもしれない。 50 00:03:49,896 --> 00:03:53,233 お客様。 甚吉様は お客様を なんと言って➡ 51 00:03:53,233 --> 00:03:55,268 お訪ねになって こられるのでしょうか。 52 00:03:55,268 --> 00:04:03,343 あ… 俊と…。 お俊様でございますね。 53 00:04:03,343 --> 00:04:06,546 さあ どうぞ こちらへ。 54 00:04:11,084 --> 00:04:14,087 おしのぎに どうぞ。 55 00:04:16,857 --> 00:04:23,563 <それは 薄闇降りる 逢魔ヶ時の事でございました> 56 00:04:26,867 --> 00:04:33,740 へえ~。 それから どうした? 57 00:04:33,740 --> 00:04:36,042 どうもこうも。 58 00:04:36,042 --> 00:04:40,247 小半時ほど お待ちになって ましたよ 甚吉さんを。 59 00:04:41,848 --> 00:04:45,852 で 来たのかい? 相手は…。 60 00:04:49,222 --> 00:04:55,095 ご迷惑を おかけ致しました。 こんなに…。 61 00:04:55,095 --> 00:04:59,232 お茶と おしのぎが おいしゅうございました。 62 00:04:59,232 --> 00:05:04,838 あれは 十六ささげの初物? はい。 63 00:05:04,838 --> 00:05:09,709 丁寧な お味で お店と合ってらっしゃる。 64 00:05:09,709 --> 00:05:15,482 1両2分の お茶漬けにも 負けない お品でしたよ。 65 00:05:15,482 --> 00:05:19,386 ありがとう存じます。 66 00:05:19,386 --> 00:05:24,391 お待ちの方 お見えになられたら どういたしましょう? 67 00:05:26,526 --> 00:05:30,830 もう 来ないでしょう。 68 00:05:36,203 --> 00:05:38,872 ⚟(お秋)女将さん! 69 00:05:38,872 --> 00:05:43,210 女将さん お客様のお座敷に これが…。ああ…。 70 00:05:43,210 --> 00:05:46,213 お客様! 71 00:05:55,222 --> 00:05:59,092 こりゃあ… 買ったばっかりじゃねえか。 72 00:05:59,092 --> 00:06:01,828 お召しは 流行の柄でした。 73 00:06:01,828 --> 00:06:05,498 履物も 下ろしたてでございました。 74 00:06:05,498 --> 00:06:08,335 あれほどの身なりの お内儀さんは そういない。 75 00:06:08,335 --> 00:06:11,004 いろいろ 心当たりを 捜してはいるんですが。 76 00:06:11,004 --> 00:06:15,675 ほっときな。 次にやってきた時➡ 77 00:06:15,675 --> 00:06:20,347 預かりものだと こいつを出す方が よほど 気が利いている。 78 00:06:20,347 --> 00:06:24,551 女将さん そのままにしてやんな。 79 00:06:34,861 --> 00:06:40,533 女将さんだなんて…。 他人行儀な呼び方してさ。 80 00:06:40,533 --> 00:06:43,570 女将さんじゃねえか。 「花ごろも」の。 81 00:06:43,570 --> 00:06:48,875 人捜しは 口実さ。 分かるだろ? 旦那に 会いに来たんだ。 82 00:06:48,875 --> 00:06:50,810 旦那が 近ごろ お見限りだから…。 83 00:06:50,810 --> 00:06:53,747 おや? お前さん 俺が 「花ごろも」に行くの➡ 84 00:06:53,747 --> 00:06:56,750 嫌がってなかったかい? 85 00:06:56,750 --> 00:07:01,454 女心を 分かってやれって 言ってんだよ! 86 00:07:01,454 --> 00:07:04,457 女心!? 87 00:07:12,098 --> 00:07:18,838 <義父上様は お登世様のため 消えた お俊という方の探索を➡ 88 00:07:18,838 --> 00:07:22,542 辰吉さんに 頼んだのですが…> 89 00:07:24,177 --> 00:07:26,513 <その3日後…> 90 00:07:26,513 --> 00:07:31,184 まだ 何も聞いておりませんが。 (小声で)そうか。 91 00:07:31,184 --> 00:07:35,522 相すみません。 近ごろ 旦那様が お忙しいようで…。 92 00:07:35,522 --> 00:07:39,359 何か あったのか? (しづ)何でも かかりきりの➡ 93 00:07:39,359 --> 00:07:42,162 一件が おありとか…。 94 00:07:49,869 --> 00:07:51,871 あっ。 95 00:07:53,540 --> 00:07:56,443 お客様。 96 00:07:56,443 --> 00:07:59,412 お俊様。 97 00:07:59,412 --> 00:08:02,148 お客様…。 98 00:08:02,148 --> 00:08:06,019 「花ごろも」の女将でございます。 先日は…。 99 00:08:06,019 --> 00:08:12,158 はい? 不忍池の 初物のささげを…。 100 00:08:12,158 --> 00:08:17,163 失礼ですが… お人違いでは? 101 00:08:19,499 --> 00:08:23,370 失礼致しました。 いえ…。 102 00:08:23,370 --> 00:08:47,527 ♬~ 103 00:08:47,527 --> 00:08:50,563 もっと 派手なものは ないかしら…。 104 00:08:50,563 --> 00:08:52,699 (手代)こちらなどは いかがでしょう?➡ 105 00:08:52,699 --> 00:08:56,369 今 流行の品でございます。 (お俊)もう少し 短めのほうが…。 106 00:08:56,369 --> 00:09:00,173 (手代)それでしたら こちらは いかがでしょう? 107 00:09:03,810 --> 00:09:07,680 どう? 大変 お似合いでございます。 108 00:09:07,680 --> 00:09:10,984 そうねえ…。 109 00:09:14,821 --> 00:09:17,857 べっ甲のほうを 出して頂けます? 110 00:09:17,857 --> 00:09:20,059 かしこまりました。 111 00:09:27,834 --> 00:09:33,506 どうぞ こちらでございます。 これ… 頂くわ。 112 00:09:33,506 --> 00:09:37,210 さようでございますか。 ありがとうございます。 113 00:09:40,180 --> 00:09:42,849 逢魔ヶ時の女? 114 00:09:42,849 --> 00:09:44,784 ここんとこ 立て続けに やられておりやす。 115 00:09:44,784 --> 00:09:48,354 池之端仲町 上野黒門町。 店は あちこちですが➡ 116 00:09:48,354 --> 00:09:51,858 時刻は 同じ。 いつも 夕暮れです。 万引き? 117 00:09:51,858 --> 00:09:56,362 一度 不忍池近くまで 追い詰めたようなのですが➡ 118 00:09:56,362 --> 00:09:58,698 かき消すように 消えてしまったと…。 119 00:09:58,698 --> 00:10:01,367 花ごろもの近くだな。 120 00:10:01,367 --> 00:10:05,872 お登世が 何か? ひょっとして お尋ねの? 121 00:10:05,872 --> 00:10:10,210 ああ。 何日か前➡ 122 00:10:10,210 --> 00:10:15,048 密会を装って 花ごろもに 飛び込んできた女がいた。 123 00:10:15,048 --> 00:10:19,719 かなりの金持ちで 小半時も 居座って 出てったそうだが。 124 00:10:19,719 --> 00:10:26,526 その女が 逢魔ヶ時の女だと。 お俊と 名乗ったそうだ。 125 00:10:30,897 --> 00:10:41,207 (カラスの鳴き声と鐘の音) 126 00:11:01,861 --> 00:11:07,200 ささげの お代なら お支払いしたはずですが。 127 00:11:07,200 --> 00:11:14,207 忘れ物を お預かりしております。 128 00:11:19,546 --> 00:11:29,889 どうされます? なぜ… お客様ほどの人が。 129 00:11:29,889 --> 00:11:32,892 なぜなんでしょう…。 130 00:11:34,561 --> 00:11:39,432 亭主は 老舗の 実直な商売上手です。 131 00:11:39,432 --> 00:11:42,902 父は 町医者でした。 132 00:11:42,902 --> 00:11:46,239 命を助けられたという者が➡ 133 00:11:46,239 --> 00:11:50,910 幼いころから よく 菓子を くれたものでございます。 134 00:11:50,910 --> 00:11:55,582 うらやましい。 私は 何もしておりません。 135 00:11:55,582 --> 00:12:00,420 人も 治しておりません。 商売も 出来ません。 136 00:12:00,420 --> 00:12:07,727 ただ そこに生まれて 嫁いだ…。 それだけでございます。 137 00:12:11,531 --> 00:12:18,705 でも… これは 違う。 138 00:12:18,705 --> 00:12:23,543 店先で 出して頂いた品を 手にとります。 139 00:12:23,543 --> 00:12:28,381 帳場に 一瞬 背を向けて…。 140 00:12:28,381 --> 00:12:36,122 こう… ぞくぞくします。 141 00:12:36,122 --> 00:12:43,396 ここに入れた刹那… 血のめぐる音が 致します。 142 00:12:43,396 --> 00:12:50,903 どんな着物を着るより どんな贅沢をするより…。 143 00:12:50,903 --> 00:12:56,609 ああ… あの時だけは…。 144 00:13:02,849 --> 00:13:08,021 泥棒は 私がした事でございます。 145 00:13:08,021 --> 00:13:11,858 泥棒は 私の顔でございます。 お俊様…。 146 00:13:11,858 --> 00:13:17,563 私 今 私の顔で お話ししております。 147 00:13:20,199 --> 00:13:25,872 女将さんは いかがです? 私? 148 00:13:25,872 --> 00:13:31,878 ご自分の お顔… お持ちですか? 149 00:13:39,218 --> 00:13:45,558 どうぞ訴えて下さい。 どうぞ…。 150 00:13:45,558 --> 00:14:03,843 ♬~ 151 00:14:03,843 --> 00:14:06,546 顔…。 152 00:14:08,514 --> 00:14:13,186 女将が… 今日は つむりが痛むからと。 153 00:14:13,186 --> 00:14:17,056 そうか 早じまいか…。 154 00:14:17,056 --> 00:14:19,859 近くまで来たんで 寄ったんだが…。 155 00:14:19,859 --> 00:14:23,529 女将に 養生しろと 言っておくんな。 156 00:14:23,529 --> 00:14:26,866 相すみません。 157 00:14:26,866 --> 00:14:28,801 (ため息) 158 00:14:28,801 --> 00:14:33,539 (お秋)ああ 旦那は 何も お分かりじゃない。➡ 159 00:14:33,539 --> 00:14:38,211 会いたくないっていうのは 会いたいと言ってほしい➡ 160 00:14:38,211 --> 00:14:40,880 女心の裏返しじゃないか! 161 00:14:40,880 --> 00:14:46,219 そうなんですか?なら 女将さん そう おっしゃれば いいのに。 162 00:14:46,219 --> 00:14:49,555 女将さん あれで 案外 うぶだから➡ 163 00:14:49,555 --> 00:14:51,891 自分じゃ 決して言いだせない。 164 00:14:51,891 --> 00:14:58,398 へえ~ 勉強になります。 だからさ ここんとこ➡ 165 00:14:58,398 --> 00:15:01,300 女将さんが 商売一途に 打ち込むのも➡ 166 00:15:01,300 --> 00:15:04,003 もとはといえば 旦那が 煮えきらないから…。 167 00:15:04,003 --> 00:15:08,508 何が 生煮えだって? 筍かい? (一同)いえ…。 168 00:15:08,508 --> 00:15:12,178 みんな 集まっとくれ! いいこと 思いついたんだよ! 169 00:15:12,178 --> 00:15:14,881 (一同)はい! みんな早く! 170 00:15:17,850 --> 00:15:21,854 <それから 数日後の事でございます> 171 00:15:23,523 --> 00:15:28,027 <別荘の持ち主 山口屋さんの使いで➡ 172 00:15:28,027 --> 00:15:32,832 番頭の文五郎さんが 舅殿を 訪ねました> 173 00:15:34,534 --> 00:15:36,869 味試し? はい。 174 00:15:36,869 --> 00:15:39,772 花ごろもが 趣向を凝らした お料理を➡ 175 00:15:39,772 --> 00:15:43,543 ごく限られた お客様に お出ししたいと言うのです。 176 00:15:43,543 --> 00:15:49,882 女将さんが? その味試しを 山口屋が 頼まれました。 177 00:15:49,882 --> 00:15:54,554 つきましては 旦那と それから 佐七。 178 00:15:54,554 --> 00:15:58,391 えっ お… 俺も? 女将の名指しだ。 179 00:15:58,391 --> 00:16:02,361 長年の飯炊きの腕を見込んで 味見を頼みたいと…。 180 00:16:02,361 --> 00:16:07,667 行ってあげなさい。 いや 俺なんか…。 181 00:16:09,836 --> 00:16:13,339 で その味試しとやら ほかに客は? 182 00:16:13,339 --> 00:16:17,510 もう一人 住吉屋という老舗の ご内儀を…。 183 00:16:17,510 --> 00:16:23,015 住吉屋?日本橋室町で 7代続いた 白粉問屋です。 184 00:16:23,015 --> 00:16:29,222 名を お俊と…。 お俊…。 185 00:16:32,191 --> 00:16:35,895 いってらっしゃいませ。 いってらっしゃいませ。 186 00:16:37,864 --> 00:16:40,566 いってらっしゃいませ。 187 00:16:52,211 --> 00:16:57,516 旦那… ちょっと いいかい。 何だい? 188 00:16:59,085 --> 00:17:03,823 お登世さんと… 何かあったのかい? 189 00:17:03,823 --> 00:17:10,329 やぶから棒に…。いえね 近ごろ… 上野に 行ってないし➡ 190 00:17:10,329 --> 00:17:16,836 諍いでもしたのかなと思って。 そんなんじゃねえよ。 191 00:17:18,838 --> 00:17:21,140 まぶしいかい? 192 00:17:24,510 --> 00:17:28,381 俺は そうだったよ。 193 00:17:28,381 --> 00:17:31,384 おひでが あまり まぶしくて…➡ 194 00:17:31,384 --> 00:17:34,387 尻込みしたよ。 195 00:17:40,526 --> 00:17:46,198 思い出すかい? さあてね。 196 00:17:46,198 --> 00:17:48,134 (おひで)親父! 197 00:17:48,134 --> 00:17:52,972 <佐七さんは 昨年 おひでさんという 大切な方を➡ 198 00:17:52,972 --> 00:17:55,474 亡くされたのです> 199 00:18:04,150 --> 00:18:08,821 お登世とは 別に 諍いもなにも しちゃいねえ。 200 00:18:08,821 --> 00:18:12,692 ただ… あまり 深くならねえほうがいい。 201 00:18:12,692 --> 00:18:14,694 そう思っただけだ。 202 00:18:17,163 --> 00:18:22,835 深いと あとで残る。 残されたほうがな…。 203 00:18:22,835 --> 00:18:29,175 旦那が 死んだあとって事かい? さあ…。 204 00:18:29,175 --> 00:18:33,846 いいじゃないか 残してやりゃあ…。 205 00:18:33,846 --> 00:18:39,185 もっといっぱい 残してくれりゃ よかったのにって…。 206 00:18:39,185 --> 00:18:46,525 俺は 今でも そう思ってるよ。 もっと もっと…。 207 00:18:46,525 --> 00:18:57,536 ♬~ 208 00:18:59,805 --> 00:19:04,477 <その日が やって参りました> 209 00:19:04,477 --> 00:19:07,813 ようこそお越し下さいました。 210 00:19:07,813 --> 00:19:10,483 (山口屋)今日の趣向を 楽しみに来ましたよ。 211 00:19:10,483 --> 00:19:14,153 ただし 半日待たされての茶漬けは ごめんだ。 212 00:19:14,153 --> 00:19:16,188 このために 飯を抜いてきたんでね。 213 00:19:16,188 --> 00:19:18,491 (笑い声) まあ…。 214 00:19:18,491 --> 00:19:21,160 俺は 味のほうは それほど…。 215 00:19:21,160 --> 00:19:24,196 女将さんらしい料理を あてにしてるよ。 216 00:19:24,196 --> 00:19:26,332 私も…。 217 00:19:26,332 --> 00:19:28,267 女将さんの お顔➡ 218 00:19:28,267 --> 00:19:31,504 しかと 拝見させて頂きます。 219 00:19:31,504 --> 00:19:35,374 お気に召しますかどうか。 220 00:19:35,374 --> 00:19:41,380 では 早速 蓮の間のほうへ どうぞ。 221 00:19:46,052 --> 00:19:49,355 ほう…。 222 00:19:52,191 --> 00:19:54,860 よろしいんですか? こんなところで…。 223 00:19:54,860 --> 00:19:56,796 ここでいいんだ。 224 00:19:56,796 --> 00:19:59,198 お座敷なんぞ 上がっちまったら ボ~ッとして➡ 225 00:19:59,198 --> 00:20:03,869 肝心の食べ物の味が すっとんじまう ハハハハ。 226 00:20:03,869 --> 00:20:06,872 へえ~。 227 00:20:12,545 --> 00:20:16,382 <ずいきを添えた 鰹の銀皮作り。➡ 228 00:20:16,382 --> 00:20:20,886 汁は はしりの小茄子に 鰹のすり流し。➡ 229 00:20:20,886 --> 00:20:25,224 唐土から伝来のあんかけに 中猪口。➡ 230 00:20:25,224 --> 00:20:31,564 本膳から 二の膳へ お料理は 二汁七菜でございます> 231 00:20:31,564 --> 00:20:52,852 ♬~ 232 00:20:52,852 --> 00:20:57,790 へえ~ こいつは 変わってる。 これは 葛かい? 233 00:20:57,790 --> 00:21:04,797 葛の あんかけです。 ヘえ~ 葛をねえ。 234 00:21:06,398 --> 00:21:09,401 (佐七)う~ん? 235 00:21:13,873 --> 00:21:23,182 ん! うまい! 味が染みて! ヘえ~! 236 00:21:25,885 --> 00:21:28,554 <鉢肴に 焼き物と➡ 237 00:21:28,554 --> 00:21:32,391 旬の味を生かした 見事なお料理が続き➡ 238 00:21:32,391 --> 00:21:35,895 そして 最後に饗されたのが…> 239 00:21:35,895 --> 00:21:39,565 硯蓋七色でございます。 240 00:21:39,565 --> 00:21:44,403 若鮎に うど 竹紙昆布。 241 00:21:44,403 --> 00:21:50,276 よく 手に入ったなあ。 はい。 少々 張り込みました。 242 00:21:50,276 --> 00:21:54,914 これは…。 卵焼きでございます。 243 00:21:54,914 --> 00:21:57,249 選りすぐりの餌だけを 食べさせたという➡ 244 00:21:57,249 --> 00:22:00,252 鶏の卵でございます。 245 00:22:06,058 --> 00:22:09,195 う~…。 246 00:22:09,195 --> 00:22:18,537 ♬~ 247 00:22:18,537 --> 00:22:22,208 なんせ 初めて 作ったもんだからさ…。 248 00:22:22,208 --> 00:22:25,544 うん なかなか うまいよ。 ねえ 旦那。 249 00:22:25,544 --> 00:22:27,880 うまいよ。 そうかい? 250 00:22:27,880 --> 00:22:32,585 あっ 親父のも よこしなよ。 私が食べるからさ。 251 00:22:36,889 --> 00:22:44,763 女将さんとは 長いのかい? いいえ 仏の旦那。 252 00:22:44,763 --> 00:22:48,500 仏の慶次郎…。 253 00:22:48,500 --> 00:22:54,240 そう…。 女将さんの お知り合いだなんて。 254 00:22:54,240 --> 00:22:57,142 八丁堀の知り合いじゃ 迷惑かい? 255 00:22:57,142 --> 00:22:59,845 さあ…。 256 00:23:03,849 --> 00:23:08,721 野暮な知り合いから ひとつ頼みがある。 257 00:23:08,721 --> 00:23:12,858 お前さんが どこの誰だか 俺は 知らねえ。 258 00:23:12,858 --> 00:23:18,731 大店の内儀と言われても 不調法な俺には 見当もつかねえ。 259 00:23:18,731 --> 00:23:23,435 それは表向きで 実は…。 260 00:23:26,405 --> 00:23:32,544 といわれても 俺には かかわりはねえ。 ただ…。 261 00:23:32,544 --> 00:23:37,883 これから先 ここの女将に 面倒が かかるような事だけは➡ 262 00:23:37,883 --> 00:23:42,755 よしてくんな。 なんのお話だか…。 263 00:23:42,755 --> 00:23:47,893 ありきたりの話だが ここの女将が ここにくるまで➡ 264 00:23:47,893 --> 00:23:50,396 決して 平らかじゃなかった。 265 00:23:50,396 --> 00:23:53,732 いや~ どれも うまかった。 また来ますよ。 266 00:23:53,732 --> 00:23:56,568 お忙しいところ ありがとうございました。 267 00:23:56,568 --> 00:23:59,071 懸命に 越えてきたんだ。 268 00:23:59,071 --> 00:24:02,041 あれこれを 板場や女中たちと一緒にな。 269 00:24:02,041 --> 00:24:08,180 ああ…。 よかった…。ホッとしたよ もう。 270 00:24:08,180 --> 00:24:12,885 だから このとおり…。 271 00:24:15,521 --> 00:24:19,391 ⚟(お登世)失礼致します。 272 00:24:19,391 --> 00:24:24,863 お俊様 駕籠が参りました。 273 00:24:24,863 --> 00:24:28,567 今日のお料理ですが…。 274 00:24:30,202 --> 00:24:32,871 とても おいしゅうございました。 275 00:24:32,871 --> 00:24:37,543 はい。 いろいろ思い出しました。 276 00:24:37,543 --> 00:24:41,880 長崎仕込みの料理人に作らせた 葛煮➡ 277 00:24:41,880 --> 00:24:45,384 深川の料亭で頂いた鉢肴。 278 00:24:45,384 --> 00:24:51,890 1両2分のお茶漬けに 勝るとも劣らない 卵焼き。 279 00:24:51,890 --> 00:24:57,763 一流どころの お料理屋さんを よく まねてらっしゃる。 280 00:24:57,763 --> 00:25:00,332 どれも どこかで お見かけしたような➡ 281 00:25:00,332 --> 00:25:03,836 そういう お顔でございました。 282 00:25:03,836 --> 00:25:05,838 では…。 283 00:25:08,173 --> 00:25:11,877 お待ち下さい。 女将さん。 284 00:25:13,512 --> 00:25:17,383 お待ち下さい お俊様! お登世! 285 00:25:17,383 --> 00:25:21,253 痛えようだが そいつは 当たってるぜ。旦那。 286 00:25:21,253 --> 00:25:25,224 今日の あれは らしくなかった。 何もかもな。 287 00:25:25,224 --> 00:25:29,862 らしくない…。 ああ…。 288 00:25:29,862 --> 00:25:33,732 らしさって 何ですか? 289 00:25:33,732 --> 00:25:37,736 旦那は それを…。 290 00:25:37,736 --> 00:25:42,875 私の胸の内を ご存じなんでございますか。 291 00:25:42,875 --> 00:25:55,220 ♬~ 292 00:25:55,220 --> 00:25:58,123 ⚟(足音) 293 00:25:58,123 --> 00:26:04,430 何だ お秋かい。 ⚟(佐七)いや あの…。 294 00:26:07,499 --> 00:26:11,170 佐七さん! こんな遅くまで板場に? 295 00:26:11,170 --> 00:26:15,040 すまねえ 何だか勝手が違って。 あの どうぞ 中へ。 296 00:26:15,040 --> 00:26:18,744 いや ち… 違うんだ。 あの これを…。 297 00:26:20,512 --> 00:26:22,848 お口に 合いませんでした? 298 00:26:22,848 --> 00:26:28,520 いや… 持って帰っていいかな? 299 00:26:28,520 --> 00:26:31,423 食べさせたい奴がいるんだ。 300 00:26:31,423 --> 00:26:34,326 ああ… でしたら まだ ありますから。 301 00:26:34,326 --> 00:26:37,229 いやいや… そんなんじゃねえんだ そんなに いらねえんだ。 302 00:26:37,229 --> 00:26:46,371 もう いねえ奴だから…。 卵焼きが 好物でね。 303 00:26:46,371 --> 00:26:50,542 これは そこらの卵じゃねえだろ。 俺にも 分かる。 304 00:26:50,542 --> 00:26:53,879 甘くて… 口で じんわりとくる。 305 00:26:53,879 --> 00:26:58,383 こんな うめえもの 初めて 食べたよ。 306 00:26:58,383 --> 00:27:01,820 はい。 食べさせてやりてえんだ。 307 00:27:01,820 --> 00:27:07,159 きっと 喜ぶ。 こんな うまい卵焼き。 308 00:27:07,159 --> 00:27:09,995 お秋 ちょいと! ⚟(お秋)はい! 309 00:27:09,995 --> 00:27:13,499 卵焼き 全部 持ってきておくれ。 310 00:27:13,499 --> 00:27:18,203 あっ それを肴に お銚子も! かしこまりました。 311 00:27:19,838 --> 00:27:23,509 女将さん めっそうもない! どうぞ…➡ 312 00:27:23,509 --> 00:27:26,011 どうぞ たくさん 召し上がって下さい。 313 00:27:26,011 --> 00:27:29,515 お料理は 店のものじゃありません。 314 00:27:29,515 --> 00:27:32,417 おいしいと言って下さる お客様のものでございます。 315 00:27:32,417 --> 00:27:37,022 いや お客だなんて 俺は…。 そのかわり ちょっとだけ…➡ 316 00:27:37,022 --> 00:27:40,859 私の お相手をして下さいな。 えっ? 317 00:27:40,859 --> 00:27:45,731 お話 少し聞かせて下さいな。 卵焼きが好きな その人のお話。 318 00:27:45,731 --> 00:27:49,868 いやいや 女将さん いや そんなんじゃ…。はい。 319 00:27:49,868 --> 00:27:53,539 <その夜は お登世さんをお相手に➡ 320 00:27:53,539 --> 00:27:58,243 佐七さんの お話が 続いたのだそうでございます> 321 00:27:59,811 --> 00:28:04,149 <そして 更に日が過ぎて…> 322 00:28:04,149 --> 00:28:19,164 ♬~ 323 00:28:19,164 --> 00:28:21,867 辰吉 そっちだ! 324 00:28:25,337 --> 00:28:28,840 ああ お俊様…。 325 00:28:28,840 --> 00:28:42,854 ♬~ 326 00:28:42,854 --> 00:28:48,660 今 ここに 女が来なかったか? はい。 あっ いえ。 327 00:28:48,660 --> 00:28:51,863 どちらなんだ!? 328 00:28:51,863 --> 00:28:55,200 あらためさせてもらう。 お待ち下さい! 329 00:28:55,200 --> 00:28:58,870 お待ち下さい! 330 00:28:58,870 --> 00:29:01,306 申し訳ございません。 331 00:29:01,306 --> 00:29:05,978 本日は こちら お客様の貸し切りでございます。 332 00:29:05,978 --> 00:29:08,480 逢魔ヶ時の女だ。 333 00:29:08,480 --> 00:29:11,383 店に逃げ込んだのを 見ていたものが いるんだ! 334 00:29:11,383 --> 00:29:15,354 何のお話でございましょう。 335 00:29:15,354 --> 00:29:19,124 中を あらためさせてもらう。 336 00:29:19,124 --> 00:29:23,495 お客様のお座敷でございます。 337 00:29:23,495 --> 00:29:30,369 申し上げます。 ここは 私の店でございます。 338 00:29:30,369 --> 00:29:35,207 どんな方でも お座敷に上がられた方は みな➡ 339 00:29:35,207 --> 00:29:39,044 私のお客様でございます。 女将…。 340 00:29:39,044 --> 00:29:46,051 たとえ 八丁堀の旦那でも お開けする訳には 参りません。 341 00:29:52,190 --> 00:29:55,527 あっ 親分さん。 342 00:29:55,527 --> 00:30:01,833 店先に こんなものが 落ちておりました。 343 00:30:03,402 --> 00:30:09,107 こいつは…。 お心当たりの方にお返し願います。 344 00:30:12,077 --> 00:30:14,880 ⚟(辰吉)旦那! 345 00:30:14,880 --> 00:30:17,582 女将が…。 346 00:30:24,589 --> 00:30:27,392 大丈夫だよ。 347 00:30:36,168 --> 00:30:41,573 よかったんですよ 私は 捕まっても…。 348 00:30:41,573 --> 00:30:45,077 ですから こうして 座っておりました。 349 00:30:45,077 --> 00:30:50,882 誰か 泥棒と 指をさすなら それが 私だと…。 350 00:30:50,882 --> 00:30:54,786 思い違いなさらないで下さいまし。 351 00:30:54,786 --> 00:30:59,257 八丁堀を お断りしたのは 守ったんじゃない。 352 00:30:59,257 --> 00:31:03,228 あなたには お縄になる値打ちなんか➡ 353 00:31:03,228 --> 00:31:07,032 これっぽっちもない。 そう思ったからでございます。 354 00:31:09,534 --> 00:31:15,874 むごうございますね。 ご自分で生きてる方は…。 355 00:31:15,874 --> 00:31:21,213 むごい? ええ おっしゃるとおり➡ 356 00:31:21,213 --> 00:31:27,085 私は 何もない女です。 女将さんのような才覚も➡ 357 00:31:27,085 --> 00:31:31,857 独りで生きていく術も ございません。 358 00:31:31,857 --> 00:31:36,228 独り立ちされてる方からすれば➡ 359 00:31:36,228 --> 00:31:39,064 さぞかし愚かな女で ございましょうが…。 360 00:31:39,064 --> 00:31:43,568 そんな事を 申し上げてるんじゃ ございません。 361 00:31:43,568 --> 00:31:51,443 何もない… 本当に 何もございませんか? 362 00:31:51,443 --> 00:31:54,079 お医者様の家で育って➡ 363 00:31:54,079 --> 00:31:58,250 何不自由なく 暮らしてきただけですか。 364 00:31:58,250 --> 00:32:02,120 病に苦しむ人を 見ませんでしたか? 365 00:32:02,120 --> 00:32:05,524 かけがえのない人を 亡くされて➡ 366 00:32:05,524 --> 00:32:09,027 泣く方 ご覧になりませんでしたか? 367 00:32:09,027 --> 00:32:14,199 白粉問屋は どうです? 嫁入り前の娘さんが➡ 368 00:32:14,199 --> 00:32:16,535 息 弾ませて 見えませんでしたか? 369 00:32:16,535 --> 00:32:19,204 ほくろや傷を気になさる ご新造様…➡ 370 00:32:19,204 --> 00:32:23,542 私のように 商売をする女…。 371 00:32:23,542 --> 00:32:27,879 たくさんの方 ご覧になって きたじゃありませんか。 372 00:32:27,879 --> 00:32:33,752 旦那様は… お子さんは いかがですか? 373 00:32:33,752 --> 00:32:37,556 あなたを 妻として➡ 374 00:32:37,556 --> 00:32:43,895 母として慈しんで下さったんじゃ ございませんか? 375 00:32:43,895 --> 00:32:51,770 愚かは 生まれでも 育ちでも ございません。 376 00:32:51,770 --> 00:32:59,077 お顔を忘れていた… あなた様 ご自身でございます。 377 00:33:02,848 --> 00:33:09,154 そして… 私も。 378 00:33:11,189 --> 00:33:18,697 夫を亡くし… 子も おりません。 379 00:33:18,697 --> 00:33:23,535 振り向いてほしいお方は つれないばかりでござんしてね。 380 00:33:23,535 --> 00:33:30,308 私自身も 生きてくよすがは ここしかございません。 381 00:33:30,308 --> 00:33:38,884 ですが… ただひとつ 楽しみがございます。 382 00:33:38,884 --> 00:33:47,392 ここのお料理を おいしいと 楽しみにして下さる お客様の顔。 383 00:33:47,392 --> 00:33:51,229 なのに 私 それ忘れるとこでした。 384 00:33:51,229 --> 00:33:57,903 忘れて… 自分の顔も なくしてしまうとこだった。 385 00:33:57,903 --> 00:34:00,906 女将さん…。 386 00:34:03,708 --> 00:34:11,349 そうね… そうかもしれない。 387 00:34:11,349 --> 00:34:18,857 私も… 自分で 顔を なくしてしまった。 388 00:34:18,857 --> 00:34:57,228 ♬~ 389 00:34:57,228 --> 00:35:01,199 気づかなかったわ。 390 00:35:01,199 --> 00:35:06,838 ここは とても眺めがいいのね。 391 00:35:06,838 --> 00:35:13,511 蓮の咲くころ また お越し下さいまし。 392 00:35:13,511 --> 00:35:16,214 どうでしょう。 393 00:35:19,317 --> 00:35:24,522 私… 自身番へ 参ります。 394 00:35:26,091 --> 00:35:32,864 私を 泥棒と呼ぶ方は 大勢いるかもしれない。 395 00:35:32,864 --> 00:35:41,373 ですが… 私の顔なしに 気づいて下さったのは➡ 396 00:35:41,373 --> 00:35:44,876 お登世さんだけでございます。 397 00:35:53,551 --> 00:35:56,254 ⚟(お秋)失礼致します。 398 00:35:57,889 --> 00:36:02,160 今しがた 蝮の親分が 何だか 変な事を…。 399 00:36:02,160 --> 00:36:05,196 蝮が 今まで まともな事 言った事 あるかね。 400 00:36:05,196 --> 00:36:09,401 住吉屋のご主人が 亡くなられたと…。 401 00:36:11,503 --> 00:36:13,438 お俊様…。 402 00:36:13,438 --> 00:36:17,308 おっつけ知らせが こちらへ来ると…。 403 00:36:17,308 --> 00:36:21,813 お秋 駕籠を… それから 少し お茶を…。 404 00:36:25,350 --> 00:36:27,852 お俊様…。 405 00:36:27,852 --> 00:36:35,860 (笑い声) 甚吉さんだなんて…。 406 00:36:38,496 --> 00:36:47,872 あの時… 盗みをごまかして 逃げるのに➡ 407 00:36:47,872 --> 00:36:51,543 亭主の名前 使うだなんて…。 408 00:36:51,543 --> 00:37:13,164 (泣き笑い) 409 00:37:13,164 --> 00:37:17,001 <その夜 住吉屋の お俊さんは➡ 410 00:37:17,001 --> 00:37:21,506 亡くなった ご主人の待つ家に 帰られました> 411 00:37:24,509 --> 00:37:28,847 まあ 借金が? 住吉屋さんといえば➡ 412 00:37:28,847 --> 00:37:31,182 大層 繁盛しているように 見えましたのに…。 413 00:37:31,182 --> 00:37:35,520 それだけではない。 蝮が。 蝮さんが どうしました? 414 00:37:35,520 --> 00:37:37,555 吉次に 「さん」など つけるな! 415 00:37:37,555 --> 00:37:40,859 万引きをネタに しつこく お内儀に 付きまとってるようで。 416 00:37:40,859 --> 00:37:45,029 その事なら お俊さんが 万引きをしたお店に わびを入れ➡ 417 00:37:45,029 --> 00:37:48,900 お咎めなしと なったはず。 いくら改心したとはいえ➡ 418 00:37:48,900 --> 00:37:54,038 老舗の内儀が 万引きとは…。 さきざき 商いにも 響くだろうな。 419 00:37:54,038 --> 00:37:57,075 ⚟(八千代の泣き声) おい 泣いてるぞ。 420 00:37:57,075 --> 00:38:01,146 少しは 旦那様も あやして下さいませ! 421 00:38:01,146 --> 00:38:03,081 ⚟(八千代の泣き声) 422 00:38:03,081 --> 00:38:07,652 はいはい 八千代 どうしたの? よしよし。 423 00:38:07,652 --> 00:38:11,156 とっても お似合いに なってますよ。 424 00:38:11,156 --> 00:38:14,492 <お俊さんが継がれた 住吉屋には➡ 425 00:38:14,492 --> 00:38:18,796 あまりよい話は 聞かれませんでした> 426 00:38:21,166 --> 00:38:23,668 こちらのほうが 少し 小さめになっております。 427 00:38:23,668 --> 00:38:26,704 <なのに なぜでございましょう。➡ 428 00:38:26,704 --> 00:38:29,340 住吉屋の女主人は➡ 429 00:38:29,340 --> 00:38:34,012 近ごろ 妙に美しいと 評判なのでございます> 430 00:38:34,012 --> 00:38:36,814 いらっしゃいませ。 431 00:38:56,868 --> 00:38:59,537 何しやがる! こりゃ 失礼。 432 00:38:59,537 --> 00:39:02,307 あんまり静かなんで 冥土 いっちまったんじゃないかと➡ 433 00:39:02,307 --> 00:39:04,509 思ってさ。 434 00:39:12,483 --> 00:39:18,289 この前 言ったな。 深いと 残しちまうって。 435 00:39:18,289 --> 00:39:27,031 そうだっけかな。 あれは お登世の事じゃねえ 俺だ。 436 00:39:27,031 --> 00:39:32,503 俺は びくびくしてる。 お登世が いつか➡ 437 00:39:32,503 --> 00:39:34,839 俺なんぞは越えて➡ 438 00:39:34,839 --> 00:39:38,843 遠くへ 行っちまうんじゃねえかってな。 439 00:39:42,180 --> 00:39:46,851 おかしいか? いや…。 440 00:39:46,851 --> 00:39:54,726 そうなる前に 自分から 手放せば…➡ 441 00:39:54,726 --> 00:39:59,864 まだ あきらめも つくんじゃねえかってなあ。 442 00:39:59,864 --> 00:40:16,881 ♬~ 443 00:40:16,881 --> 00:40:19,884 分かってねえ。 444 00:40:23,221 --> 00:40:29,560 女心がさ…。 女心? 445 00:40:29,560 --> 00:40:33,398 さて… 俺は これから ちょっと 出かけてくるからね。 446 00:40:33,398 --> 00:40:37,902 約束があるんだ。 出かける? 約束!? 447 00:40:37,902 --> 00:40:44,075 花ごろもに 葛煮を教わりに。 お登世さんに 誘われたんだ。 448 00:40:44,075 --> 00:40:48,579 では あとは よろしく。 おい ちょっと待て! 449 00:40:48,579 --> 00:40:53,451 佐七! 待ってくれ! 俺も行く 佐七! 450 00:40:53,451 --> 00:40:56,321 (おちえ)女将さん 私が…。 いいよ いいよ。 451 00:40:56,321 --> 00:41:01,859 掛け行灯は 店の顔。 紅をさすのは 女将の役目だよ。 452 00:41:01,859 --> 00:41:14,372 ♬~ 453 00:41:21,212 --> 00:41:23,214 さあちゃん。 454 00:41:24,882 --> 00:41:29,220 (笑い声) これは…? 455 00:41:29,220 --> 00:41:31,923 <次回は…> 456 00:41:33,558 --> 00:41:36,461 <どうぞお楽しみに> 457 00:41:36,461 --> 00:42:54,472 ♬~