1 00:00:08,876 --> 00:00:10,811 (慶次郎)富くじ? 2 00:00:10,811 --> 00:00:14,748 (佐七)ありゃ 富くじじゃねえ。 貧乏くじだ。 3 00:00:14,748 --> 00:00:20,220 いいかい 旦那。 今 江戸じゃ 70以上の寺や 神社で➡ 4 00:00:20,220 --> 00:00:22,556 くじが売られてるんだそうだ。➡ 5 00:00:22,556 --> 00:00:26,393 谷中感応寺の富くじ 月に 2度。➡ 6 00:00:26,393 --> 00:00:29,897 1枚 2朱のくじを 一年中 買い続け➡ 7 00:00:29,897 --> 00:00:35,569 もし 一度も 当たらなかったら 年3両の損って事になる。 8 00:00:35,569 --> 00:00:41,909 3両だよ。 山口屋の女中の 一年分の給金じゃねえか。 9 00:00:41,909 --> 00:00:47,581 なるほど そりゃ大きい。 だろ? 売られるくじは 3,000枚。 10 00:00:47,581 --> 00:00:52,753 そのうち 100両の大当たりは たったの1枚。 当たる訳がねえ。 11 00:00:52,753 --> 00:00:55,589 なのに 3両なくすの分かってて➡ 12 00:00:55,589 --> 00:00:58,926 なんだって 人は ああ むきになりやがるんだ。 13 00:00:58,926 --> 00:01:03,764 俺が言いたいのは そこだよ! そりゃ 夢を買いてえんだろうな。 14 00:01:03,764 --> 00:01:06,533 夢? 15 00:01:06,533 --> 00:01:10,871 ああ 当たったら 着物を誂えてえ。 16 00:01:10,871 --> 00:01:12,906 いや ちょいとばかり 名の知れた店で➡ 17 00:01:12,906 --> 00:01:15,208 一夜限りの お大尽遊びを楽しみてえ。 18 00:01:15,208 --> 00:01:21,381 いや ここはひとつ 思いきって 商売でも始めて 出直してみるか。 19 00:01:21,381 --> 00:01:26,253 何が 夢だよ。 あんな ぎゅうぎゅう詰めの所で➡ 20 00:01:26,253 --> 00:01:28,555 一突きするたびに ウオ~ッ➡ 21 00:01:28,555 --> 00:01:32,426 二突きで ギャ~ッて 人に押されて➡ 22 00:01:32,426 --> 00:01:34,428 心の臓が こんなんなって➡ 23 00:01:34,428 --> 00:01:39,066 あげくに 冥土を見るのが 関の山だよ。 24 00:01:39,066 --> 00:01:43,570 一突きで ウオ~ッ 二突きで ギャ~ッてんで。 25 00:01:43,570 --> 00:01:49,443 お前…。 詰まるところ 何が言いてえんだ。 26 00:01:49,443 --> 00:01:54,915 頼む 確かめる意気地がねえんだ。 27 00:01:54,915 --> 00:02:01,521 旦那 見てきてくれ。 このとおり。 28 00:02:01,521 --> 00:02:06,193 (皐月)<当たりくじを決める 富突でございます。➡ 29 00:02:06,193 --> 00:02:08,128 富くじの始まりは➡ 30 00:02:08,128 --> 00:02:11,064 お寺や神社の 修繕金を集めるために➡ 31 00:02:11,064 --> 00:02:13,533 売り出されたものです。➡ 32 00:02:13,533 --> 00:02:18,038 懸賞金をつけて ご寄付を集めようとしたのです。➡ 33 00:02:18,038 --> 00:02:19,973 ですが いつのまにか➡ 34 00:02:19,973 --> 00:02:23,210 懸賞金の大当たりの方が 評判となり➡ 35 00:02:23,210 --> 00:02:29,516 一獲千金を夢みる人々が 富くじ買いに 熱狂いたしました> 36 00:02:31,084 --> 00:02:41,094 ♬~ 37 00:02:45,465 --> 00:02:47,901 (辰吉)旦那! 38 00:02:47,901 --> 00:02:51,238 おう 辰 何だい お前も富突かい? 39 00:02:51,238 --> 00:02:53,173 (辰吉)いや あっしは スリの虎蔵一家が➡ 40 00:02:53,173 --> 00:02:55,108 中で 仕事しそうだと 耳にしやして…。 41 00:02:55,108 --> 00:02:58,111 (せきこみ) 大事ないかい? 用心しろよ。 42 00:02:58,111 --> 00:03:00,414 おい。 それじゃあ。 うん。 43 00:03:03,517 --> 00:03:12,826 (太鼓の音) 44 00:03:18,865 --> 00:03:24,671 (読み役)「壱千弐百…」。 (男1)旦那 合ってる 合ってる。 45 00:03:24,671 --> 00:03:28,542 え? え? (読み役)「八拾…」。 46 00:03:28,542 --> 00:03:31,578 押すなよ おい。 源三郎様! 47 00:03:31,578 --> 00:03:36,416 おい どうした? おい 戸板だ! 早く。 48 00:03:36,416 --> 00:03:38,418 お前…。 49 00:03:40,153 --> 00:03:42,889 (お登世)お秋!➡ 50 00:03:42,889 --> 00:03:45,225 どれだけ 捜したと思うの! お前は もう…。 51 00:03:45,225 --> 00:03:47,894 お登世 話は 後だ。 こいつを運ぶ。 52 00:03:47,894 --> 00:03:49,830 そうだよ。 早いとこ 片づけちまっておくれよ。 53 00:03:49,830 --> 00:03:51,765 これじゃ ゲンが悪いったら ありゃしないね。 54 00:03:51,765 --> 00:03:53,767 そうそう 当たるもんも 当たらなくなっちまうよ。 55 00:03:53,767 --> 00:03:58,071 邪魔だ 邪魔だ 早く連れてけよ! 邪魔だ 邪魔だ この死に損ない! 56 00:03:58,071 --> 00:04:03,276 (お秋)死に損ないだって!? ちょっと およし お秋。 57 00:04:05,812 --> 00:04:10,517 精が出ますねえ。 (傘屋)ああ おかげさまで。 58 00:04:14,187 --> 00:04:18,859 (お秋)あの人 富くじにだけは 目がないんです。➡ 59 00:04:18,859 --> 00:04:23,196 今日だって 札は 私が確かめてくるからって➡ 60 00:04:23,196 --> 00:04:25,132 あれほど言ったのに…。 61 00:04:25,132 --> 00:04:30,937 「富突で 当たりくじ握って 死ねりゃ それで本望だ」って…。 62 00:04:30,937 --> 00:04:33,540 お侍のくせに おかしいでしょう? 63 00:04:33,540 --> 00:04:36,376 おかしいのは お秋 お前のほうだよ! 64 00:04:36,376 --> 00:04:38,311 だからって 何で 店の掃除 ほっぽってまで➡ 65 00:04:38,311 --> 00:04:40,547 行かなきゃならないんだよ!? 66 00:04:40,547 --> 00:04:43,250 すいません…。 67 00:04:47,888 --> 00:04:53,693 (玄庵)心の臓が 弱いうえに ロクに 物を食べていないようだ。 68 00:04:53,693 --> 00:04:57,898 せきも よくないな。 せき?うん。 69 00:04:57,898 --> 00:05:03,503 (源三郎)やはり… もう 長くは ありませんかねえ。 70 00:05:03,503 --> 00:05:07,174 おう 目が覚めたかね? 71 00:05:07,174 --> 00:05:13,847 そうだ! 富突 富突…。 ああ 俺が確かめた。 72 00:05:13,847 --> 00:05:19,719 残念だったな。 ああ…。 73 00:05:19,719 --> 00:05:24,191 ご迷惑をおかけした。 いや…。 74 00:05:24,191 --> 00:05:29,496 迷惑ついでに その… お願いしたい事が。 75 00:05:31,064 --> 00:05:33,533 お秋に会いたい? 76 00:05:33,533 --> 00:05:36,436 まあ ずうずうしい! 77 00:05:36,436 --> 00:05:40,207 どの面下げて そんな事 言えるんだろう。 78 00:05:40,207 --> 00:05:42,876 お秋と あの男は 長いのかい? 79 00:05:42,876 --> 00:05:46,213 (安右衛門)まあ 半年と 言ったところかな。 80 00:05:46,213 --> 00:05:48,715 ご存じだったんですか? 安右衛門さん。 81 00:05:48,715 --> 00:05:54,888 感応寺 湯島天神。 そういや 目黒不動の富突でも 見かけたな。 82 00:05:54,888 --> 00:05:57,924 先月は 確か…。 富突…。 83 00:05:57,924 --> 00:06:01,695 お前さんも 相当 熱くなってるな。 いえ 私なんぞは…。 84 00:06:01,695 --> 00:06:05,832 本気で溺れてる連中の 足元にも及びませんよ。 85 00:06:05,832 --> 00:06:08,501 中には わざわざ 斎戒沐浴して➡ 86 00:06:08,501 --> 00:06:11,404 くじ買いに出かける連中も いるからね。 87 00:06:11,404 --> 00:06:15,375 だがね 私は 方角が肝心と にらんでる。 88 00:06:15,375 --> 00:06:21,081 たとえば 今月の吉方だが…。 で あの… 2人の仲は半年って…。 89 00:06:21,081 --> 00:06:28,822 お前さん 知らなかったのか? 珍しいな お前さんが見逃すとは。 90 00:06:28,822 --> 00:06:32,726 何に 気をとられていたんだか。 91 00:06:32,726 --> 00:06:35,528 (安右衛門の笑い声) 92 00:06:35,528 --> 00:06:39,032 まあ いいさ。 くじ仲間に聞いたんだが➡ 93 00:06:39,032 --> 00:06:43,203 男は 北の方の さる大名の家臣だったそうだ。 94 00:06:43,203 --> 00:06:51,878 そういえば 言葉になまりが…。 名を 小野崎といったかな。➡ 95 00:06:51,878 --> 00:06:54,781 国もとで どんな不始末が あったんだか➡ 96 00:06:54,781 --> 00:06:58,752 お家を追われ 江戸で暮らしてるって噂だ。➡ 97 00:06:58,752 --> 00:07:01,988 障子の張り替え 戸の修理➡ 98 00:07:01,988 --> 00:07:07,193 細々した手仕事で しのいでるらしいが…。 99 00:07:09,729 --> 00:07:14,701 どうしよう…。 そんなに深くなっていたなんて。 100 00:07:14,701 --> 00:07:19,005 気配は なかったのかい? おかしいなと思ったのは➡ 101 00:07:19,005 --> 00:07:20,940 このひとつきほど前。 102 00:07:20,940 --> 00:07:23,843 気がつくと どっかに消えていたり…。 103 00:07:23,843 --> 00:07:27,514 おかつに聞いて 初めて知ったんです。 104 00:07:27,514 --> 00:07:31,184 私とした事が…。 とんだ 親代わりだ。 105 00:07:31,184 --> 00:07:35,855 親か…。 ここを始めて何年になる? 106 00:07:35,855 --> 00:07:41,194 なんやかんやで もう6年。 6年。 107 00:07:41,194 --> 00:07:43,530 これからなんです。 108 00:07:43,530 --> 00:07:47,367 働いてくれた あの子たち 幸せにしてやらなきゃ…。 109 00:07:47,367 --> 00:07:50,403 なのに こっちの気持ちも 知らないで もう…➡ 110 00:07:50,403 --> 00:07:52,405 お秋ったら。 111 00:07:54,140 --> 00:07:57,711 今夜は ゆっくりされると 思ったのに。 112 00:07:57,711 --> 00:08:01,681 うちにも一人 富くじに目のねえ奴が いてな。 113 00:08:01,681 --> 00:08:05,685 今か今かと 待ちわびてやがる。 まあ…。 114 00:08:07,387 --> 00:08:12,359 またお越し下さいまし。 師走は 女将も忙しかろう。 115 00:08:12,359 --> 00:08:17,664 邪魔は しねえよ。 じゃあ。 116 00:08:21,835 --> 00:08:27,507 ありがとうございました。 ごちそうさま。 117 00:08:27,507 --> 00:08:31,378 ありがとうございました。 足元お気をつけて。 118 00:08:31,378 --> 00:08:41,855 ♬~ 119 00:08:41,855 --> 00:08:46,526 <近ごろ 義父上様と お登世さんの仲は➡ 120 00:08:46,526 --> 00:08:51,865 なぜか少し 間遠になられているようでした。➡ 121 00:08:51,865 --> 00:08:54,868 その夜の事…> 122 00:09:06,146 --> 00:09:08,848 (お登世)お秋。 あ…。 123 00:09:10,483 --> 00:09:12,819 あの男にかい? 124 00:09:12,819 --> 00:09:16,322 体に 滋養のあるものがいいと 聞いて…。 125 00:09:16,322 --> 00:09:18,825 盗むつもりじゃなかったんです! お代も ほら。 126 00:09:18,825 --> 00:09:22,695 お代の事なんか 言ってんじゃない お前の話 してるんだよ! 127 00:09:22,695 --> 00:09:26,699 どうしちゃったの? え? どうしちゃったんだい? 128 00:09:26,699 --> 00:09:30,003 どうしちまったんでしょう 私。 お前の事じゃないか。 129 00:09:30,003 --> 00:09:32,505 ですよねえ。 130 00:09:34,174 --> 00:09:39,512 お秋 覚えてるかい? この店 始める時➡ 131 00:09:39,512 --> 00:09:44,350 向島の料理屋で いっとう最初に 声かけたの お前だった。 132 00:09:44,350 --> 00:09:47,554 だから 気がかりなんだよ。 133 00:09:49,189 --> 00:09:51,858 富くじ…。 おや? 134 00:09:51,858 --> 00:09:55,361 お前が 買ったのかい? 買ったのは 私ですけど➡ 135 00:09:55,361 --> 00:09:59,199 くじは あの人のものです。 お金 お前が出したんだね? 136 00:09:59,199 --> 00:10:03,069 当たったら 山分けですけどね。 私はね➡ 137 00:10:03,069 --> 00:10:06,706 お前のためを思って 言ってるんだよ。 138 00:10:06,706 --> 00:10:11,377 お前自身 もっと大切におしって 言ってるんだ。はい。 139 00:10:11,377 --> 00:10:13,413 小野崎様も 常々 そう おっしゃいます。 140 00:10:13,413 --> 00:10:18,151 お金もない 仕事もない 病に倒れて 富くじに溺れた男が➡ 141 00:10:18,151 --> 00:10:21,888 お前に 一体 何してくれるって言うの! 142 00:10:21,888 --> 00:10:24,591 旦那は…。 143 00:10:26,759 --> 00:10:32,465 女将さんは じゃあ 森口の旦那に 何をして頂いているんですか? 144 00:10:34,234 --> 00:10:36,569 え? 145 00:10:36,569 --> 00:10:39,472 いくら 女将さんが 懸命に お世話されても➡ 146 00:10:39,472 --> 00:10:42,242 どれほど 贅沢なお着物で 待たれていても➡ 147 00:10:42,242 --> 00:10:46,579 旦那は 気づいても下さらない。 ほかの方の ご相談ばかり。 148 00:10:46,579 --> 00:10:49,916 ご一緒さえも して下さらないじゃないですか。 149 00:10:49,916 --> 00:10:52,952 私の事は…。 150 00:10:52,952 --> 00:10:55,088 お金なんか いいんです。 151 00:10:55,088 --> 00:10:57,123 あの人が 立派じゃなくても いいんです。➡ 152 00:10:57,123 --> 00:10:59,259 私だって お金はないし…➡ 153 00:10:59,259 --> 00:11:01,194 女将さんのように きれいでもないし。 154 00:11:01,194 --> 00:11:04,097 お秋。 でも 楽しいんですよ。 155 00:11:04,097 --> 00:11:07,066 あの人といると 飽きないんです。 156 00:11:07,066 --> 00:11:09,702 この間も…。 こんなに…➡ 157 00:11:09,702 --> 00:11:12,739 お前の事案じてる私と…➡ 158 00:11:12,739 --> 00:11:17,043 楽しいだけの男と お前は 一体 どっちが大切なんだい? 159 00:11:20,413 --> 00:11:26,553 楽しかったのに… 昔は 花ごろもも…。 160 00:11:26,553 --> 00:11:31,891 みんなで お料理を決めたり 味見をしたり…。 161 00:11:31,891 --> 00:11:36,396 初めのころは 一組のお客様だって いらっしゃらなくて…。 162 00:11:36,396 --> 00:11:39,432 ねえ 覚えてます? みんなで呼び込みしたの。 163 00:11:39,432 --> 00:11:42,202 (おかつ)した! (おちえ)うん したね! 164 00:11:42,202 --> 00:11:46,105 おかつ おちえ…。 仕入れた青物が 全部 残って➡ 165 00:11:46,105 --> 00:11:49,576 それから 毎日 賄いは 菜っぱの お浸しばっかり。 166 00:11:49,576 --> 00:11:52,478 初めて お座敷が いっぱいに埋まった日➡ 167 00:11:52,478 --> 00:11:55,448 みんなで 女中部屋で 手 取り合ったよね。 168 00:11:55,448 --> 00:11:59,285 ああ よかった これで 当分 ここで 暮らせるって…。 169 00:11:59,285 --> 00:12:01,521 (おちえ)次から次に お客様が いらっしゃるようになったら➡ 170 00:12:01,521 --> 00:12:04,023 今度は 眠る間もなくて…。 171 00:12:04,023 --> 00:12:05,959 (お秋)そのころの お話➡ 172 00:12:05,959 --> 00:12:09,195 明日 あの人にも 聞かせていいですか?➡ 173 00:12:09,195 --> 00:12:11,197 ねえ 女将さん。 174 00:12:15,868 --> 00:12:18,538 女将さん? 175 00:12:18,538 --> 00:12:22,208 それで あのご浪人さんが 喜ぶっていうなら➡ 176 00:12:22,208 --> 00:12:25,111 お前が それで 楽しいっていうなら➡ 177 00:12:25,111 --> 00:12:29,415 いくらでも 聞かせておあげ。 これと一緒に ほら。 178 00:12:31,551 --> 00:12:34,554 心得違いでした。 179 00:12:37,223 --> 00:12:42,228 店のものを 私…。 すいませんでした。 180 00:12:51,571 --> 00:12:54,240 お秋さん! 181 00:12:54,240 --> 00:13:23,870 ♬~ 182 00:13:23,870 --> 00:13:27,874 (せきこみ) 183 00:13:36,883 --> 00:13:39,585 あっ! 184 00:13:46,893 --> 00:13:49,796 お秋…。 来ちゃいました。 185 00:13:49,796 --> 00:13:52,699 そうか。 飛び出してきました! 186 00:13:52,699 --> 00:13:57,537 そうか そうか そうか! ハハハハハハ! 187 00:13:57,537 --> 00:14:02,341 (2人の笑い声) 188 00:14:02,341 --> 00:14:05,378 源三郎様。 ず~っと こうして? 189 00:14:05,378 --> 00:14:07,680 ああ 待っていた。 ウロウロしていた。 190 00:14:07,680 --> 00:14:12,852 いや とうに 火も切れての。 寒かったんだ ハハハハ。 191 00:14:12,852 --> 00:14:16,522 (せきこみ) これ… 不思議なんです。 192 00:14:16,522 --> 00:14:20,393 懐に入れておくと 懐炉のように 熱いんです。 193 00:14:20,393 --> 00:14:24,197 今年最後の富くじか…。 194 00:14:24,197 --> 00:14:28,067 ああ これは 当たるぞ。 当たる! 195 00:14:28,067 --> 00:14:32,538 私も そう思うんです。 100両ですよ。 196 00:14:32,538 --> 00:14:38,711 100両…。 お~っ!お~っ! 197 00:14:38,711 --> 00:14:40,747 (笑い声) 198 00:14:40,747 --> 00:14:43,549 100両…。 当たったら何しましょ? 199 00:14:43,549 --> 00:14:52,225 当たったら そりゃ… う~ん。 う~ん…。 200 00:14:52,225 --> 00:14:55,261 (笑い声) 201 00:14:55,261 --> 00:15:03,069 <その日を境に お秋さんの姿は 花ごろもから消えてしまいました> 202 00:15:11,511 --> 00:15:14,547 <そのころ 私は しづと➡ 203 00:15:14,547 --> 00:15:19,385 風邪をひいた辰吉さんの お見舞いに出かけました> 204 00:15:19,385 --> 00:15:22,155 すみません わざわざ こんな所まで。 205 00:15:22,155 --> 00:15:26,692 元気そうで 安心致しました。 (しづ)「鬼の霍乱」でございますね。 206 00:15:26,692 --> 00:15:29,529 富突で走り回って こじらしちまったようで。 207 00:15:29,529 --> 00:15:33,533 面目ねえ事で。 辰吉さん。はい。 208 00:15:35,201 --> 00:15:38,905 おぶん 来てくれたのか? 209 00:15:45,545 --> 00:15:50,216 (おぶん)これと… あと これは 女将さんから…。 210 00:15:50,216 --> 00:15:59,559 おぶんさん… ですか? 森口の旦那のご新造さんだ。 211 00:15:59,559 --> 00:16:02,829 失礼しました。 ぶんでございます! 212 00:16:02,829 --> 00:16:08,167 皐月と申します。 こちらは しづ。 こんにちは。 213 00:16:08,167 --> 00:16:11,471 いつも辰吉さんのお世話を? 214 00:16:13,039 --> 00:16:16,342 奉公先の料理屋が 古い知り合いでして。 215 00:16:16,342 --> 00:16:19,846 いいと言うのに 女将が 時々 食い物を 差し入れてくれます。 216 00:16:19,846 --> 00:16:23,683 女将さんに よく礼を言っといてくれ。 217 00:16:23,683 --> 00:16:27,520 中の生姜は 下ろして飲めば 温まるから…。 218 00:16:27,520 --> 00:16:29,822 ありがとよ。 219 00:16:36,863 --> 00:16:39,565 おぶんさん。 220 00:16:41,200 --> 00:16:43,236 うちにも おいでなさい。 221 00:16:43,236 --> 00:16:47,540 辰吉さんに言えば いつでも連れてきてくれます。 222 00:16:47,540 --> 00:16:51,844 何か困った事があったら…。 223 00:16:53,412 --> 00:16:56,415 お礼は どうした? 224 00:17:00,119 --> 00:17:04,023 行けません。おぶん! (せきこみ) 225 00:17:04,023 --> 00:17:08,828 駄目だよ 寝てないと! ご新造さんに おわびしろ。 226 00:17:08,828 --> 00:17:11,831 いえ そんな…。 227 00:17:15,167 --> 00:17:18,504 私を見れば 旦那様は➡ 228 00:17:18,504 --> 00:17:21,841 大切な方が 私のお父っつぁんのせいで➡ 229 00:17:21,841 --> 00:17:25,845 亡くなった事を 思い出します。 それに…。 230 00:17:27,713 --> 00:17:34,420 私も… お父っつぁんのした事を 思い出します。 231 00:17:34,420 --> 00:17:47,533 ♬~ 232 00:17:47,533 --> 00:17:51,871 (晃之助)で どうであった? えっ? 233 00:17:51,871 --> 00:17:58,210 辰吉だ。 容体は 不自由は なさそうだったか? 234 00:17:58,210 --> 00:18:00,813 はい。 235 00:18:00,813 --> 00:18:05,818 あの… おぶんが…。 236 00:18:12,158 --> 00:18:15,828 おぶんが 来ていました。 237 00:18:15,828 --> 00:18:22,168 身の回りのお世話を 時々しているそうで…。 238 00:18:22,168 --> 00:18:24,870 そうか。 239 00:18:27,039 --> 00:18:29,842 <おぶんさんに言われた事を➡ 240 00:18:29,842 --> 00:18:36,182 私は 晃之助様にお話する事は できませんでした。➡ 241 00:18:36,182 --> 00:18:39,852 数日後の事でございます> 242 00:18:39,852 --> 00:18:41,887 ⚟(勘吾)ごめん!➡ 243 00:18:41,887 --> 00:18:47,526 こちらに 仏の慶次郎という方が おられると聞いたんだが…。 244 00:18:47,526 --> 00:18:50,029 慶次郎は 私だが…。 245 00:18:50,029 --> 00:18:54,200 あ… 山川勘吾と申す。 246 00:18:54,200 --> 00:19:01,474 ゆえあって 藩の名は明かせぬが 人を捜しておる。 247 00:19:01,474 --> 00:19:03,476 はい…。 248 00:19:05,144 --> 00:19:10,449 山川勘吾…。 ご存じか? 249 00:19:12,018 --> 00:19:15,788 江戸は不案内だと 私を尋ねてきた。 250 00:19:15,788 --> 00:19:18,991 元服前のご長男の後見だそうだ。 251 00:19:18,991 --> 00:19:23,162 江戸屋敷に とどまって 父親を捜していると…。 252 00:19:23,162 --> 00:19:28,868 大四郎が…。 息子さん… だね? 253 00:19:30,836 --> 00:19:38,177 もうひとつ 殿のご勘気が解け 帰参が かなったそうだ。 254 00:19:38,177 --> 00:19:42,848 すべては あらぬ疑いだったと…。 255 00:19:42,848 --> 00:19:49,722 (激しいせきこみ) 256 00:19:49,722 --> 00:19:52,191 半ば 死にかけておる。 257 00:19:52,191 --> 00:19:57,530 (せきこみ) 258 00:19:57,530 --> 00:20:01,867 森口殿と おっしゃったか。 いかにも。 259 00:20:01,867 --> 00:20:07,740 私を どのような男と思われる? いや どのようと言われても…。 260 00:20:07,740 --> 00:20:13,212 見たままの男でござるよ。 甲斐性もなく 恥知らずで➡ 261 00:20:13,212 --> 00:20:19,552 意気地もない。 昔から この気性での…。 262 00:20:19,552 --> 00:20:26,892 争いを好まぬ。 家中でも 諍いがあるたび あちらを立て➡ 263 00:20:26,892 --> 00:20:33,766 こちらをなだめ いや あげく 誰からも 相手にされなくなった。 264 00:20:33,766 --> 00:20:36,569 ご勘気に触れたというのも 要するに➡ 265 00:20:36,569 --> 00:20:38,504 いろんな もめごとのもとが➡ 266 00:20:38,504 --> 00:20:43,442 いつのまにか 私のせいに されていたというだけだ。 267 00:20:43,442 --> 00:20:50,082 ほどなく妻も 愛想を尽かした。 それは… つらい。 268 00:20:50,082 --> 00:20:54,920 いやいや ホッとした。 269 00:20:54,920 --> 00:20:57,823 競い合いは 苦手だ。 270 00:20:57,823 --> 00:21:00,359 江戸の長屋で障子を張り➡ 271 00:21:00,359 --> 00:21:05,531 米を研ぐ暮らしは 気楽でいい。 ハハハ…。 272 00:21:05,531 --> 00:21:12,872 いや だが ある日 戯れに買った 富くじが すべてを変えた。 273 00:21:12,872 --> 00:21:15,541 富突に 血が たぎった。➡ 274 00:21:15,541 --> 00:21:20,379 ご存じか? あの中は 真冬でも 湯気が立つのだ。➡ 275 00:21:20,379 --> 00:21:23,048 汗や熱だけではない。 とうに あきらめ➡ 276 00:21:23,048 --> 00:21:25,084 手放したと思ったものが かなうかもしれぬ。➡ 277 00:21:25,084 --> 00:21:27,786 その幻に 皆 沸き立つ。 278 00:21:29,555 --> 00:21:34,226 当たる…。 ひょっとしたら 当たるぞ!➡ 279 00:21:34,226 --> 00:21:37,563 身に覚えのない ご勘気 私をさげすむ目 不遇…➡ 280 00:21:37,563 --> 00:21:41,433 それら すべてが ひっくり返るやもしれぬ! 281 00:21:41,433 --> 00:21:43,736 あっ! 282 00:21:48,908 --> 00:21:52,778 なんの事はない。 くじが終われば➡ 283 00:21:52,778 --> 00:21:57,917 また元の文無しだ。 ただ あの中にいる時だけ➡ 284 00:21:57,917 --> 00:22:02,188 私は 皆の知る 気弱な私ではない。 285 00:22:02,188 --> 00:22:08,060 その高ぶりが 忘れられず のめるように くじを買った。 286 00:22:08,060 --> 00:22:13,532 ほどなく 金は尽きた。 病を得た。 287 00:22:13,532 --> 00:22:16,869 もはや 帰参など ありえぬ。 288 00:22:16,869 --> 00:22:21,540 このまま果てるかと 思われた時…➡ 289 00:22:21,540 --> 00:22:24,543 お秋と 会った。 290 00:22:31,884 --> 00:22:36,722 それだ! それそれ。 それがなければ 話にならん。 291 00:22:36,722 --> 00:22:40,893 旦那様のものという証しは ございますか? 292 00:22:40,893 --> 00:22:43,796 ならば 共に 参ろう。 293 00:22:43,796 --> 00:22:46,565 当たれば すべて山分けという事で。 294 00:22:46,565 --> 00:22:49,902 山分け? よいぞ 富突は。 295 00:22:49,902 --> 00:22:51,937 富札を手にして あの中にいれば たちまちにして➡ 296 00:22:51,937 --> 00:22:55,574 か~っと体中 熱くなるのだ。 297 00:22:55,574 --> 00:22:58,244 やですよ これ以上 暑いのは。 298 00:22:58,244 --> 00:23:00,512 はあ? ハハハハハハ! 299 00:23:00,512 --> 00:23:04,383 熱いというのは ここがじゃよ ここが。 300 00:23:04,383 --> 00:23:07,186 ほれ。 301 00:23:07,186 --> 00:23:13,058 ああ 確かに。 では。 302 00:23:13,058 --> 00:23:19,765 あの~。 ん?連れてって下さい 私も。 303 00:23:19,765 --> 00:23:24,370 (太鼓の音) 304 00:23:24,370 --> 00:23:28,374 (喚声) 305 00:23:50,496 --> 00:23:54,433 ⚟(源三郎)お秋が 私に 飛び込んでくれた。➡ 306 00:23:54,433 --> 00:24:01,440 くじに溺れ 金もなく 先もない 病に倒れた 私に…。 307 00:24:05,044 --> 00:24:08,347 帰参はせぬ。 しかし…。 308 00:24:08,347 --> 00:24:11,383 病の文無しが 何を言うと思われるだろう。 309 00:24:11,383 --> 00:24:15,521 しかし 許されて戻る。 310 00:24:15,521 --> 00:24:19,858 今 この身に それが 何ほどの事だというのだ。 311 00:24:19,858 --> 00:24:23,362 あの高ぶり あの血のたぎり。 312 00:24:23,362 --> 00:24:27,866 あれに勝るものなぞ 故郷で 再び味わえるとは 思えぬ。 313 00:24:27,866 --> 00:24:33,739 ヘヘヘ 私に そのような 無頼な性が あろうとは…。 314 00:24:33,739 --> 00:24:38,510 ならば その無頼とやらにつきあい 残されるものは どうなる? 315 00:24:38,510 --> 00:24:45,517 そなたはよい。 だが 残される者の 思いは どうなるのだ? 316 00:24:53,092 --> 00:24:58,097 お帰り下さい 旦那。 お秋…。 317 00:25:02,701 --> 00:25:07,172 私は だまされて ここにいるんじゃありません。 318 00:25:07,172 --> 00:25:09,842 好きでいるんです。 319 00:25:09,842 --> 00:25:15,147 この人と 2人でいるのが なにより幸せなんですよ。 320 00:25:17,182 --> 00:25:20,185 お引き取り下さいませ。 321 00:25:24,523 --> 00:25:27,860 <義父上様は お尋ねの方に➡ 322 00:25:27,860 --> 00:25:34,566 「小野崎様の行方は 定かならず」と お伝えしたのでございました> 323 00:25:38,203 --> 00:25:43,075 なんだね 店の表は 落ち葉だらけ。 324 00:25:43,075 --> 00:25:48,547 近ごろじゃ 客あしらいも 愛想ないと もっぱらの噂だよ。 325 00:25:48,547 --> 00:25:52,718 ご丁寧に。 それでも なんとか やっておりますので。 326 00:25:52,718 --> 00:25:55,554 知ってるかい? おかつと おちえが➡ 327 00:25:55,554 --> 00:25:58,891 お秋と こっそり会ってるのを。 328 00:25:58,891 --> 00:26:04,496 へえ~…。金や米を 時々 差し入れてるそうだ。 329 00:26:04,496 --> 00:26:07,332 しまいだな 店も。 330 00:26:07,332 --> 00:26:13,839 子飼いの女中が 女将に 隠し事を始めちゃ。 331 00:26:13,839 --> 00:26:16,542 (安右衛門の笑い声) 332 00:26:30,189 --> 00:26:32,524 お秋! キャ~! 333 00:26:32,524 --> 00:26:41,200 ああ…。 いやいや これは 失礼した!(せきこみ) 334 00:26:41,200 --> 00:26:43,869 小野崎様…。 335 00:26:43,869 --> 00:26:47,539 面目ない。 336 00:26:47,539 --> 00:26:51,210 いつも お秋と あんなふうに? 337 00:26:51,210 --> 00:26:54,880 くたばりかけの体とは やっかいなもんだ。 338 00:26:54,880 --> 00:27:00,686 どこもかしこも 冷たい。 だが お秋で 温まる。 339 00:27:00,686 --> 00:27:04,990 お秋も それがよいと言う。 340 00:27:04,990 --> 00:27:09,495 いやいや お秋なら 薬をとりに。 じきに戻ります。 341 00:27:09,495 --> 00:27:16,835 なぜでしょう? なぜ お秋は 小野崎様をそれほど。 342 00:27:16,835 --> 00:27:22,174 ああ ワシも それを考えていたのだ。 343 00:27:22,174 --> 00:27:27,513 ワシは ご覧のとおりの面相。 意気地もない 気概もない。 344 00:27:27,513 --> 00:27:33,185 おまけに病持ちで 文無しだ。 それが なぜ…。 345 00:27:33,185 --> 00:27:35,220 もう 結構でございます。 346 00:27:35,220 --> 00:27:41,360 ひょっとしたら お秋は 私が 病持ちの文無しだから➡ 347 00:27:41,360 --> 00:27:44,696 いてくれるんじゃないか。 「だから」? 348 00:27:44,696 --> 00:27:51,470 人は 弱いものに優しい。 己が弱り 寂しい時は なおさらな。 349 00:27:51,470 --> 00:27:57,876 寂しい…。 私も このような体。 350 00:27:57,876 --> 00:28:00,479 いつ どうなるか 分からん。 (せきこみ) 351 00:28:00,479 --> 00:28:04,983 ならば お秋を お返し下さい。 352 00:28:04,983 --> 00:28:10,656 こんな 向こう見ずな暮らし いつまでも続くとは 思えません。 353 00:28:10,656 --> 00:28:14,826 向こう見ず… なるほど。 354 00:28:14,826 --> 00:28:17,162 あなたに もしもの事があったら➡ 355 00:28:17,162 --> 00:28:21,833 お秋は… 残された お秋は どうなるんです? 356 00:28:21,833 --> 00:28:28,840 その時は 女将さん ひとつ お秋を よろしく。 357 00:28:30,842 --> 00:28:34,546 何 考えてんだか…。 358 00:28:38,717 --> 00:28:44,423 楽しかったのに… 昔は 花ごろもも…。 359 00:28:52,864 --> 00:28:54,866 あっ! 360 00:28:57,736 --> 00:29:02,674 源三郎様 帰りました! おう よう戻った! 361 00:29:02,674 --> 00:29:04,810 いい話を聞きました! 362 00:29:04,810 --> 00:29:07,646 富突に 御利益のある神社が あるそうです。 363 00:29:07,646 --> 00:29:11,817 ほんとか!? アハハ それはよい! 364 00:29:11,817 --> 00:29:16,688 (2人の笑い声) 365 00:29:16,688 --> 00:29:45,517 ♬~ 366 00:29:45,517 --> 00:29:47,452 <いよいよ 年の瀬。➡ 367 00:29:47,452 --> 00:29:52,858 明日は 今年 最後の 富突の日でございます> 368 00:29:52,858 --> 00:30:08,874 ♬~ 369 00:30:08,874 --> 00:30:12,177 参りますよ。 370 00:30:14,746 --> 00:30:19,518 (せきこみ) 源三郎様! 371 00:30:19,518 --> 00:30:23,422 さすがに 少々 しんどい。 372 00:30:23,422 --> 00:30:27,559 (せきこみ) 373 00:30:27,559 --> 00:30:35,901 ♬~ 374 00:30:35,901 --> 00:30:41,573 これは当たりくじでございますよ。 うん? 375 00:30:41,573 --> 00:30:47,279 富突で 当たりくじを握って 死ねりゃ 本望じゃねえんですか。 376 00:30:49,081 --> 00:30:55,587 お前は 私を殺す気か? はい。 377 00:30:55,587 --> 00:30:59,858 (笑い声) 378 00:30:59,858 --> 00:31:05,731 (せきこみ) 379 00:31:05,731 --> 00:31:19,544 ♬~ 380 00:31:19,544 --> 00:31:22,547 お秋…。 381 00:31:26,218 --> 00:31:31,556 さあ そろそろ参るとするか。 382 00:31:31,556 --> 00:31:34,259 はい。 383 00:31:42,901 --> 00:31:50,909 足元 大事ないですか?ああ。 だんだん 元気が出てきた。 384 00:31:52,611 --> 00:31:54,613 おう! 源三郎様! 385 00:31:54,613 --> 00:31:58,383 女将さん! さあ 行くよ。 386 00:31:58,383 --> 00:32:03,522 お秋! 今更 何 尻込みしてんだよ! 387 00:32:03,522 --> 00:32:05,857 女将さん…。 388 00:32:05,857 --> 00:32:10,695 いいかい? このくじはね お前が持ってる これは➡ 389 00:32:10,695 --> 00:32:12,631 ほかの誰のもんでもない。 390 00:32:12,631 --> 00:32:15,534 お前さんと このお人のもんなんだ。 391 00:32:15,534 --> 00:32:17,869 札の行方を見届けんのは➡ 392 00:32:17,869 --> 00:32:21,206 お前さんたち 2人しか いないんだよ。 393 00:32:21,206 --> 00:32:24,543 女将さん…。 394 00:32:24,543 --> 00:32:29,881 連れてってくれ。 源三郎様…。 395 00:32:29,881 --> 00:32:32,584 なあ…。 396 00:32:46,898 --> 00:32:52,571 (太鼓の音) 397 00:32:52,571 --> 00:33:04,182 (喚声) 398 00:33:04,182 --> 00:33:07,886 「竹」の…。 399 00:33:10,522 --> 00:33:14,860 「九拾九番」。 400 00:33:14,860 --> 00:33:18,864 「二拾二番」。 401 00:33:28,874 --> 00:33:31,543 これだ…。 402 00:33:31,543 --> 00:33:37,215 これだ…。 くじは この 前が よい。 403 00:33:37,215 --> 00:33:42,053 前? うん 今 ここにいる者は➡ 404 00:33:42,053 --> 00:33:48,727 皆 自分の札こそが 当たりくじに 違いないと思っているのだ。 405 00:33:48,727 --> 00:33:56,401 今 この時 ここには はずれくじは 一枚もない。 406 00:33:56,401 --> 00:33:59,437 はずれくじは ない…。 407 00:33:59,437 --> 00:34:03,174 (読経) 408 00:34:03,174 --> 00:34:10,515 (太鼓の音) 409 00:34:10,515 --> 00:34:12,450 (喚声) 410 00:34:12,450 --> 00:34:14,386 「百…」。 411 00:34:14,386 --> 00:34:25,864 (喚声) 412 00:34:25,864 --> 00:34:34,539 (喚声と読経) 413 00:34:34,539 --> 00:34:42,414 (読経) 414 00:34:42,414 --> 00:34:47,118 「松」の…。 あっ 松…。 415 00:34:47,118 --> 00:34:50,555 「一千参百…」。 416 00:34:50,555 --> 00:34:55,427 合ってる! ここまで 合ってますよ。 417 00:34:55,427 --> 00:34:58,430 源三郎様…。 418 00:34:58,430 --> 00:35:01,199 源三郎様! 源三郎様! 源三郎様! 419 00:35:01,199 --> 00:35:05,070 源三郎様! 源三郎様! 420 00:35:05,070 --> 00:35:08,039 源三郎様! 421 00:35:08,039 --> 00:35:14,179 源三郎様! 源三郎様! 422 00:35:14,179 --> 00:35:21,353 源三郎様! 源三郎様! 423 00:35:21,353 --> 00:35:25,156 源三郎様…。 424 00:35:34,866 --> 00:35:41,640 <小野崎源三郎様の野辺送りから 3日後の事でございます> 425 00:35:41,640 --> 00:35:47,145 さようでございますか。 森口慶次郎様が…。 426 00:35:49,214 --> 00:35:54,085 しかと伺った。 427 00:35:54,085 --> 00:36:00,158 源三郎の最期は よき方々に見守られ➡ 428 00:36:00,158 --> 00:36:09,167 旅立ったと 故郷の者たちにも 必ず伝え申す。 429 00:36:12,504 --> 00:36:16,374 それと 失礼ながら…。 430 00:36:16,374 --> 00:36:22,013 これは 源三郎の帰参のために 支度した➡ 431 00:36:22,013 --> 00:36:27,519 掛かりでござる。 ぶしつけながら…➡ 432 00:36:27,519 --> 00:36:33,191 供養と思うて どうぞお受け取り下され。 433 00:36:33,191 --> 00:36:38,196 当たりくじ…。 はあ? 434 00:36:44,202 --> 00:36:51,876 これは…。 いや 気に障られたなら 謝る。 435 00:36:51,876 --> 00:36:59,050 だが 源三郎の せめてもの気持ちと思うて…。 436 00:36:59,050 --> 00:37:02,020 そんなんじゃないんですよ この子は…。 437 00:37:02,020 --> 00:37:06,157 はあ? お気持ちでしたら➡ 438 00:37:06,157 --> 00:37:10,829 この子は もう 十分すぎるぐらい 頂いておりますから。 439 00:37:10,829 --> 00:37:35,854 ♬~ 440 00:37:35,854 --> 00:37:38,756 いい天気だねえ。 441 00:37:38,756 --> 00:37:44,562 女将さん あれ ひょっとして 小判でしたか? 442 00:37:44,562 --> 00:37:48,199 今になって 何 言ってんだよ。 惜しくなっちまったのかい? 443 00:37:48,199 --> 00:37:53,538 違うんです。 源三郎様の事は…➡ 444 00:37:53,538 --> 00:38:01,146 終わりました。 悔い ないです。 うん。 445 00:38:01,146 --> 00:38:08,853 ただ私 みんなに迷惑かけたから。 女将さんにも。 446 00:38:10,488 --> 00:38:15,326 私になら…。 とっくに返してもらってるよ。 447 00:38:15,326 --> 00:38:19,497 当たりくじでね。 え? 448 00:38:19,497 --> 00:38:24,169 花ごろもって 当たりくじ。 449 00:38:24,169 --> 00:38:26,871 それから…。 450 00:38:30,041 --> 00:38:34,746 おかっちゃん… おちえちゃん…。 451 00:38:40,185 --> 00:38:43,488 戻っておいで。 452 00:38:48,059 --> 00:38:50,762 女将さん…。 453 00:38:53,198 --> 00:38:58,870 (泣き声) 454 00:38:58,870 --> 00:39:02,140 お秋さん…。 455 00:39:02,140 --> 00:39:08,012 (3人の泣き声) 456 00:39:08,012 --> 00:39:13,751 ほら! 戻るよ! うちも 松 飾らないとね。 457 00:39:13,751 --> 00:39:15,687 その前に お秋。 458 00:39:15,687 --> 00:39:18,690 森口の旦那に ちゃんと お礼 言うんだよ。 459 00:39:18,690 --> 00:39:23,995 「山川様 おたちになりました。 お見送りしました」。 それから…。 460 00:39:23,995 --> 00:39:27,031 たまには 花ごろもにも お運び下さいませ。 461 00:39:27,031 --> 00:39:29,801 そうそう。 それを言わないと。 462 00:39:29,801 --> 00:39:32,170 お秋 おかつ おちえ お前たち やっぱり➡ 463 00:39:32,170 --> 00:39:34,105 当たりくじなんかじゃない! 464 00:39:34,105 --> 00:39:37,508 行方 定まらずの富札だよ。 465 00:39:37,508 --> 00:39:42,180 でも 初めから 当たりくじより➡ 466 00:39:42,180 --> 00:39:46,050 そのほうが ずっと血がたぎる。 467 00:39:46,050 --> 00:39:49,754 ほら 行くよ! はい。 468 00:39:51,522 --> 00:39:56,394 ほら もう 何やってんだよ。 もう しょうがないねえ。 469 00:39:56,394 --> 00:40:02,166 分からねえ。 なに ぼんやりしてるんだい。 470 00:40:02,166 --> 00:40:04,535 新しい年が すぐそこまで来てる ってのによ。 471 00:40:04,535 --> 00:40:07,372 いや お秋の話が 一向に要領を得ねえ。 472 00:40:07,372 --> 00:40:12,710 俺には 分かったね そばで聞いているだけだが。 ほう。 473 00:40:12,710 --> 00:40:20,385 何とかっていう侍が 亡くなって みんな 富くじに 血がたぎって➡ 474 00:40:20,385 --> 00:40:23,888 花ごろもに ぜひ おいでなさい って そういう話じゃねえか。 475 00:40:23,888 --> 00:40:26,724 一体 どういうつながりなんだ? その話は。 476 00:40:26,724 --> 00:40:33,064 つまり 人の一生も 店の繁盛も どっちに転ぶか分からない。 477 00:40:33,064 --> 00:40:35,400 のるか そるかの 勝負事みたいなもんだ。 478 00:40:35,400 --> 00:40:38,069 だから 今のうちに 楽しくやりましょうって➡ 479 00:40:38,069 --> 00:40:42,573 そういう話じゃないか。 なるほど。 480 00:40:42,573 --> 00:40:47,412 あっ そうだ! 旦那も 来年こそは 富くじを。 481 00:40:47,412 --> 00:40:51,082 いや~ 俺は 富突に血がたぎる なんて奴の 気がしれねえ。 482 00:40:51,082 --> 00:40:54,585 そういう向こう見ずには 生涯 縁がねえ。 483 00:40:54,585 --> 00:40:59,457 へっ! 骨の髄まで つまらない お人だね! 484 00:40:59,457 --> 00:41:01,392 (笑い声) 485 00:41:01,392 --> 00:41:03,394 ほっ! ほっ! 486 00:41:03,394 --> 00:41:07,165 危ねえな もっと向こうでやってくれよ。 487 00:41:07,165 --> 00:41:13,171 <新年を 5日後に控えた 年の暮れでございます> 488 00:41:17,208 --> 00:41:24,082 あいつには 女房がいた。 20年前だ。 489 00:41:24,082 --> 00:41:26,217 おたか…。 490 00:41:26,217 --> 00:41:30,555 惚れた女房を 守りきれなかった。 491 00:41:30,555 --> 00:41:33,257 <次回は…> 492 00:41:35,226 --> 00:41:38,129 <どうぞお楽しみに> 493 00:41:38,129 --> 00:42:54,439 ♬~