1 00:01:22,216 --> 00:01:24,151 2 00:01:24,151 --> 00:01:29,151 (雷鳴) 3 00:01:35,229 --> 00:01:38,229 (雷鳴) 4 00:01:41,102 --> 00:01:45,239 (ナレーター) <戦国乱世は遠い昔のことながら➡ 5 00:01:45,239 --> 00:01:48,239 武士の魂 やはり剣> 6 00:01:51,112 --> 00:01:53,114 <あえて 戦がなければこそ➡ 7 00:01:53,114 --> 00:01:58,252 腕に覚えの剣客どもは 売り込み合戦に明け暮れる> 8 00:01:58,252 --> 00:02:04,125 <いや まさしく 昨今 剣術は商売なり> 9 00:02:04,125 --> 00:02:13,267 ♬~ 10 00:02:13,267 --> 00:02:25,212 ♬~ 11 00:02:25,212 --> 00:02:35,222 ♬~ 12 00:02:35,222 --> 00:02:47,234 ♬~ 13 00:02:47,234 --> 00:03:00,247 ♬~ 14 00:03:00,247 --> 00:03:10,257 ♬~ 15 00:03:10,257 --> 00:03:22,203 ♬~ 16 00:03:22,203 --> 00:03:39,220 ♬~ 17 00:03:39,220 --> 00:03:48,220 ♬~ 18 00:03:56,237 --> 00:04:02,109 <冬の雨が その事件を呼び込んだ> 19 00:04:02,109 --> 00:04:04,111 <佐々木三冬が➡ 20 00:04:04,111 --> 00:04:07,248 父 田沼意次の家来で 御膳番を務める➡ 21 00:04:07,248 --> 00:04:13,120 30石2人扶持 飯田平助の 姿を見かけたのは➡ 22 00:04:13,120 --> 00:04:17,120 この雨が 上がったあとのことである> 23 00:04:28,202 --> 00:04:43,217 ♬~ 24 00:04:43,217 --> 00:04:48,089 (三冬)亭主! 勘定をこれに置く ≪(亭主)へい! 25 00:04:48,089 --> 00:05:05,239 ♬~ 26 00:05:05,239 --> 00:05:09,110 ♬~ 27 00:05:09,110 --> 00:05:14,248 (男性)おっと! ぼやぼやするねえ! ぬけ作! 28 00:05:14,248 --> 00:05:17,248 (平助)これは ご無礼を… (男性)ああ 29 00:05:33,200 --> 00:05:35,136 ヘヘッ! 30 00:05:35,136 --> 00:05:37,071 ≪(三冬)待て! 31 00:05:37,071 --> 00:05:43,210 見ていたぞ すり取った物を 素直に こっちに渡すがよい 32 00:05:43,210 --> 00:05:46,113 なんだと!? 33 00:05:46,113 --> 00:05:53,220 ヘッ! なんでぇ ハハハッ! 女か… 34 00:05:53,220 --> 00:05:55,156 ハッ! 35 00:05:55,156 --> 00:05:58,092 アッ! ワーッ! 36 00:05:58,092 --> 00:06:02,092 ウッ! イテテ… 37 00:06:05,232 --> 00:06:08,135 ウウ… あっ… ちょ… 38 00:06:08,135 --> 00:06:11,105 ンン! (男性)ウッ! アア… 39 00:06:11,105 --> 00:06:15,242 フゥ… (男性)アア… 40 00:06:15,242 --> 00:06:17,242 二度と悪さをするな 41 00:06:28,189 --> 00:06:48,209 ♬~ 42 00:06:48,209 --> 00:07:03,209 ♬~ 43 00:07:16,237 --> 00:07:21,108 先生 もしやして… それは毒薬では? 44 00:07:21,108 --> 00:07:24,044 (小兵衛)なぜ そう思われる? はあ… 45 00:07:24,044 --> 00:07:27,181 さあ 言うてごらん 46 00:07:27,181 --> 00:07:31,051 持ち主の飯田平助は 父の屋敷の御膳番を相務まります 47 00:07:31,051 --> 00:07:33,053 田沼の殿さまが➡ 48 00:07:33,053 --> 00:07:36,190 召し上がる食べ物を司るのが 役目ということじゃな 49 00:07:36,190 --> 00:07:38,125 さようでございます 50 00:07:38,125 --> 00:07:43,063 うむ… その御膳番が このような物を紙入れにな… 51 00:07:43,063 --> 00:07:49,203 いや ただの胃薬などであれば このような物に包まぬはずじゃ 52 00:07:49,203 --> 00:07:55,075 それに… 金10両 30石2人扶持の飯田平助が➡ 53 00:07:55,075 --> 00:07:58,212 このような大金を 所持しておりますこと➡ 54 00:07:58,212 --> 00:08:00,147 怪しゅうございます うむ… 55 00:08:00,147 --> 00:08:03,083 平助めは 何者かに頼まれて➡ 56 00:08:03,083 --> 00:08:09,223 父を毒殺しようと しているのではございますまいか 57 00:08:09,223 --> 00:08:13,093 早く何らかの手を打たねば 父が… 58 00:08:13,093 --> 00:08:19,233 三冬どの あんたは 父上を嫌うておられるようだが… 59 00:08:19,233 --> 00:08:25,039 どうかな? この際だ 力になってもらえぬかな 60 00:08:25,039 --> 00:08:29,043 この薬と その紙入れは わしが預かっておこう 61 00:08:29,043 --> 00:08:35,182 ごく内密に この薬は 調べてもらうことにするが… 62 00:08:35,182 --> 00:08:40,054 さて 今 申された 三冬どのの お考えどおりだとすれば➡ 63 00:08:40,054 --> 00:08:43,057 事は お屋敷の塀の内のこと 64 00:08:43,057 --> 00:08:47,194 わしひとりの力では 及びがつかんのじゃ 65 00:08:47,194 --> 00:08:50,097 私に何をせよと? 66 00:08:50,097 --> 00:08:54,068 田沼さま お屋敷に しばらく身を寄せてほしいのじゃ 67 00:08:54,068 --> 00:08:58,205 父のお屋敷に? うむ 68 00:08:58,205 --> 00:09:01,108 父上をお守りしてほしいのじゃ 69 00:09:01,108 --> 00:09:06,108 それとな ひそかに飯田平助の 様子を見張ってほしいのだ 70 00:09:08,215 --> 00:09:10,150 お嫌かえ? 71 00:09:10,150 --> 00:09:15,089 いえ! 秋山先生のお言葉とあらば どのようなことでも 72 00:09:15,089 --> 00:09:19,226 そうか いやぁ~ それは良かった良かった 73 00:09:19,226 --> 00:09:22,129 しかし 決して 打ち捨てにしておくわけではない 74 00:09:22,129 --> 00:09:27,034 用があれば そのつど わしの使いが行く 心得ました 75 00:09:27,034 --> 00:09:30,170 それと 飯田平助の顔じゃがね どんなかね? 76 00:09:30,170 --> 00:09:34,041 はい 家中では 平助がことを➡ 77 00:09:34,041 --> 00:09:37,044 「歯ぬけ狸」などと申しております 78 00:09:37,044 --> 00:09:41,044 歯ぬけの狸? 不思議な顔じゃな 79 00:09:57,197 --> 00:10:00,100 どうだ? 少しは手が上がったか? 80 00:10:00,100 --> 00:10:04,071 (おはる)見ちゃ やんだ 上手に書けたら見せてやるから 81 00:10:04,071 --> 00:10:07,071 まだ 見ちゃ やんだ 分かった分かった すまんすまん 82 00:10:09,209 --> 00:10:12,112 奥方 手習いをしておられますか 83 00:10:12,112 --> 00:10:15,082 武家の女房となったからには 少しは 読み書きもな 84 00:10:15,082 --> 00:10:20,220 そう思うて わしが手ほどきを それは よいお心がけ 85 00:10:20,220 --> 00:10:24,220 いいから もう あっちへ行って 出ていって よしよし 86 00:10:26,026 --> 00:10:30,026 おはる 今宵は晩飯は要らぬぞ 87 00:10:32,166 --> 00:10:34,101 三冬さんと? 88 00:10:34,101 --> 00:10:38,038 三冬どのは田沼さまのお屋敷へ わしは別口じゃ 89 00:10:38,038 --> 00:10:42,038 あっ そう いってらっしゃいませ うむ… 90 00:10:44,178 --> 00:10:47,080 (弥七) おうおうおう! 秋山先生は? 91 00:10:47,080 --> 00:10:50,050 ハァ~… この野郎が とろとろ してやがるから 遅くなっちまった 92 00:10:50,050 --> 00:10:54,188 (徳次郎)だって 呼びに行く途中で 草履のひもが切れちまって➡ 93 00:10:54,188 --> 00:10:56,123 片っぽ はだしじゃ駆けにくくって 94 00:10:56,123 --> 00:10:59,059 両方 はだしで 駆けてこいってんだ 馬鹿! 95 00:10:59,059 --> 00:11:01,061 (おみね)大丈夫だよ 「今日は遅くなっても➡ 96 00:11:01,061 --> 00:11:05,199 待たせてもらうから」って 2階の小座敷に 97 00:11:05,199 --> 00:11:07,134 なんだか ちょっと大変な話みたい 98 00:11:07,134 --> 00:11:10,070 分かった とにかく お顔を拝見しなくっちゃな 99 00:11:10,070 --> 00:11:14,208 (男性)ここ置いとくよ (おみね)ありがとうございました 100 00:11:14,208 --> 00:11:17,110 徳さん ちょっと! 行っちゃ駄目 101 00:11:17,110 --> 00:11:20,110 「2人っきりで」って おっしゃってるんだから 102 00:11:29,223 --> 00:11:31,158 何です? 103 00:11:31,158 --> 00:11:36,096 先程な 本所 亀沢町の知り合いの 医者に確かめてもろうた 104 00:11:36,096 --> 00:11:40,234 毒薬じゃ えっ!? 105 00:11:40,234 --> 00:11:45,105 他言は無用だぞ 弥七 いや 今度のことはな➡ 106 00:11:45,105 --> 00:11:50,244 意外に大きな広がりを持って いるように わしは思う へい 107 00:11:50,244 --> 00:11:56,116 そこで お前に探って もらいたいのは… 歯ぬけ狸じゃ 108 00:11:56,116 --> 00:11:58,118 狸? おう 109 00:11:58,118 --> 00:12:02,256 いや 狸面をした人間と いうことじゃよ 110 00:12:02,256 --> 00:12:06,126 あっ なんだ… (笑い声) 111 00:12:06,126 --> 00:12:09,126 まあ よく聞け 今 何もかも話す 112 00:12:12,266 --> 00:12:15,168 (生島)いや 本来 こちらは表御殿 113 00:12:15,168 --> 00:12:20,140 公務が執り行われる所ゆえ 女人は ご法度なのでござりまするが… 114 00:12:20,140 --> 00:12:25,212 「なに 三冬は女ではないから」と 殿が申されましてな 115 00:12:25,212 --> 00:12:29,082 (笑い声) 116 00:12:29,082 --> 00:12:31,084 (せきばらい) 117 00:12:31,084 --> 00:12:34,221 しかし 喜んでおられましたぞ 殿は 118 00:12:34,221 --> 00:12:38,091 「秋山先生の薫陶を 受けるようになってからは➡ 119 00:12:38,091 --> 00:12:42,095 三冬は大分に変わってまいった」 120 00:12:42,095 --> 00:12:47,095 「うれしいことじゃ 良いことじゃ」 と申されましてな ハハハッ! 121 00:12:49,236 --> 00:12:54,107 殿には このところ ご多忙でござってな 122 00:12:54,107 --> 00:12:57,110 いや すぐにでも お会いなさりたいのだが➡ 123 00:12:57,110 --> 00:13:03,250 なにぶん 息つく暇も… ハァ… 「せめて 夕餉の膳なりと➡ 124 00:13:03,250 --> 00:13:06,153 共に食べよう」との お言葉にござりました 125 00:13:06,153 --> 00:13:12,259 いや… 私 この屋敷を訪れましたのは➡ 126 00:13:12,259 --> 00:13:15,162 別段の存念があってのこと 127 00:13:15,162 --> 00:13:19,132 父のお仕事の 邪魔をする気はござりませぬ 128 00:13:19,132 --> 00:13:25,205 食事はすべて お台所の板の間の 隅にて 勝手に済ませますゆえ➡ 129 00:13:25,205 --> 00:13:28,205 お気遣いは無用に願います 130 00:13:42,222 --> 00:13:44,222 (侍)あっ… 131 00:13:50,097 --> 00:13:53,233 飯田平助は おらぬのか? (侍)はっ! 本日は出ておりません 132 00:13:53,233 --> 00:13:56,136 非番でございまして (三冬)さようか 133 00:13:56,136 --> 00:13:59,106 (侍) 何ぞ 用なれば 申し伝えまするが 134 00:13:59,106 --> 00:14:02,242 いや そういうわけではない 135 00:14:02,242 --> 00:14:04,242 ≪(足音) 136 00:14:08,115 --> 00:14:10,115 ≪(三冬)どうした? 平助 137 00:14:14,254 --> 00:14:17,157 非番ではないのか? 138 00:14:17,157 --> 00:14:19,157 はっ… 139 00:14:22,062 --> 00:14:27,200 顔色が悪い… 何ぞ あったのか? 140 00:14:27,200 --> 00:14:31,071 い… いや… 別に… 141 00:14:31,071 --> 00:14:33,073 体の具合でも悪いのか? 142 00:14:33,073 --> 00:14:38,073 はっ! 急に腹痛が… それで… 143 00:14:40,213 --> 00:14:44,213 平に お許しくださりませ 144 00:14:46,086 --> 00:14:50,086 かまわぬ お長屋に戻って休め 145 00:14:52,225 --> 00:14:55,128 (田沼)分からんな 三冬め 146 00:14:55,128 --> 00:15:00,100 この度は 一体 何のために屋敷へまいったのか 147 00:15:00,100 --> 00:15:04,237 そちにも 何も言わんのか? (生島)申されませぬ 148 00:15:04,237 --> 00:15:06,173 しかしながら 娘心 149 00:15:06,173 --> 00:15:11,111 やはり 父親に甘えたいお気持ちが あってのことではと 150 00:15:11,111 --> 00:15:17,250 ならば 夕餉の膳を共にしても よいではないか なぜ断る 151 00:15:17,250 --> 00:15:20,153 それは まあ あのご気性ゆえに➡ 152 00:15:20,153 --> 00:15:25,058 父上と差し向かいでは 気うつなのでございましょう 153 00:15:25,058 --> 00:15:29,196 ますます分からんな それが娘心と申すものなのか? 154 00:15:29,196 --> 00:15:31,131 いや それがしにも よくは… 155 00:15:31,131 --> 00:15:37,070 わしは待っておるのだ いつでもな 156 00:15:37,070 --> 00:15:41,208 幼いころに別れた娘 157 00:15:41,208 --> 00:15:47,080 どんな暮らしをしてきたか 思えば不憫でならぬ… 158 00:15:47,080 --> 00:15:51,218 あっ… (田沼)三冬が望むことなら➡ 159 00:15:51,218 --> 00:15:56,089 どんなことでも かなえて やりたいと思っておるのだ 160 00:15:56,089 --> 00:16:02,089 待っておるのだ… 娘らしく甘えてくれる日をな 161 00:16:04,231 --> 00:16:10,103 いやぁ… このところ 政治向きの仕事が忙しい 162 00:16:10,103 --> 00:16:14,241 じゃが なればこそ 何もかも打ち捨て➡ 163 00:16:14,241 --> 00:16:19,112 ただ一介の父親に 戻りたいと思うときがある 164 00:16:19,112 --> 00:16:24,050 それを… 三冬め なぜ分からんのじゃ! 165 00:16:24,050 --> 00:16:27,187 いえ お分かりでございましょう 166 00:16:27,187 --> 00:16:30,090 口には出さずとも きっと 167 00:16:30,090 --> 00:16:38,198 ただ 長い間 他人の手で 育てられてきた姫君でございます 168 00:16:38,198 --> 00:16:42,068 甘え方を ご存じないのでございましょう 169 00:16:42,068 --> 00:16:47,207 そうか… フッ… 170 00:16:47,207 --> 00:16:51,207 甘え方を知らんのか… 171 00:16:58,218 --> 00:17:01,121 (三冬)ハッ! 172 00:17:01,121 --> 00:17:04,090 エイッ! ンン! 173 00:17:04,090 --> 00:17:22,175 ♬~ 174 00:17:22,175 --> 00:17:25,175 ハッ! ンン! 175 00:17:39,192 --> 00:17:42,192 (たたく音) 176 00:17:48,201 --> 00:17:52,072 (大治郎)秋山大治郎と申す ご当家に ご滞在中の➡ 177 00:17:52,072 --> 00:17:55,075 佐々木三冬どのに お会いしたい (門番)はっ! 178 00:17:55,075 --> 00:17:59,212 では やはり あの薬は… (大治郎)間違いありません 179 00:17:59,212 --> 00:18:04,084 父が 小川宗哲先生に 確かめてもろうたそうです 180 00:18:04,084 --> 00:18:07,087 今しばらく 調べを進めてみるが➡ 181 00:18:07,087 --> 00:18:13,226 事実 田沼さまのお命が 狙われてるとすれば ゆゆしきこと 182 00:18:13,226 --> 00:18:17,097 三冬どのには 今少しお屋敷にとどまり➡ 183 00:18:17,097 --> 00:18:21,097 陰ながら 父君の身を お守りくだされたいとのことです 184 00:18:32,178 --> 00:18:37,050 飯田平助 その後の様子は どうです? 185 00:18:37,050 --> 00:18:42,188 昨日は随分と 帰りが遅うございました 186 00:18:42,188 --> 00:18:46,059 元気がなく 青白い顔をして… 187 00:18:46,059 --> 00:18:51,197 思うにあれは 大切な紙入れを なくしたことに気づき➡ 188 00:18:51,197 --> 00:18:53,133 あちこち心当たりを➡ 189 00:18:53,133 --> 00:18:56,069 捜し回ってでも いたのでございましょう 190 00:18:56,069 --> 00:19:00,069 で… 今朝は? (三冬)休んでおります 191 00:19:03,209 --> 00:19:08,081 急病の届けを出して 長屋に引きこもって➡ 192 00:19:08,081 --> 00:19:13,219 まだ 誰も顔を見ておりません (大治郎)そうですか… 193 00:19:13,219 --> 00:19:19,092 いえ 当人が出仕せぬかぎり まず大丈夫と見てよいが 194 00:19:19,092 --> 00:19:22,028 いえ 油断はなりませぬ 195 00:19:22,028 --> 00:19:27,167 このことは 決して 平助の一存ではないはず 196 00:19:27,167 --> 00:19:29,102 あの気の弱い臆病者が➡ 197 00:19:29,102 --> 00:19:35,041 1人で このような大それたことを たくらむわけがございません 198 00:19:35,041 --> 00:19:42,041 必ずや… 必ずや 裏に糸を引く者が… 199 00:20:08,208 --> 00:20:10,208 ≪(開く音) 200 00:20:12,078 --> 00:20:14,078 三冬さま! 201 00:20:25,158 --> 00:20:30,030 体の具合は どうだ? (平助)はっ… いえ あの… 202 00:20:30,030 --> 00:20:35,168 別に… 静かに寝ておれば 大事あるまいかと 203 00:20:35,168 --> 00:20:38,071 そうか 204 00:20:38,071 --> 00:20:43,071 こうした お長屋に引きこもっての 一人暮らし 寂しかろうなあ 205 00:20:45,178 --> 00:20:48,081 信州に妻子がいると聞いたが 206 00:20:48,081 --> 00:20:52,052 はい 上田に… 生まれ故郷でございます 207 00:20:52,052 --> 00:20:56,189 そのうちに呼び寄せたいとは 思うておりますが➡ 208 00:20:56,189 --> 00:20:59,189 年老いた母がおりますので いまだに… 209 00:21:01,061 --> 00:21:04,064 お子は かわいいか? 210 00:21:04,064 --> 00:21:08,201 我が子のかわいくない親が おりましょうか 211 00:21:08,201 --> 00:21:14,074 ことに 長い間 離れ離れに暮らしている せがれ… 212 00:21:14,074 --> 00:21:21,214 思うだに 切なく… いとおしゅうてなりませぬ 213 00:21:21,214 --> 00:21:24,117 わたしもだ 214 00:21:24,117 --> 00:21:26,086 えっ? 215 00:21:26,086 --> 00:21:33,226 いや わたしも 田沼の父とは 離れ離れに育った身の上 216 00:21:33,226 --> 00:21:38,226 だから 分かるのだ 慕い合う気持ちがな 217 00:21:40,100 --> 00:21:45,100 私も… 父を誰よりも大切に思うている 218 00:21:49,242 --> 00:21:52,145 「病は気から」という 219 00:21:52,145 --> 00:21:57,117 心配事を 腹の中にため込むのは よくない 220 00:21:57,117 --> 00:22:01,117 話してくれれば 力になるぞ 221 00:22:16,269 --> 00:22:18,269 (くしゃみ) 222 00:22:21,141 --> 00:22:31,217 ♬~ 223 00:22:31,217 --> 00:22:35,088 なるほど 「歯ぬけの狸」 こりゃ 間違いねえや 224 00:22:35,088 --> 00:22:55,241 ♬~ 225 00:22:55,241 --> 00:23:14,260 ♬~ 226 00:23:14,260 --> 00:23:19,132 <一橋家の控屋敷である 主君のおなりのないときには➡ 227 00:23:19,132 --> 00:23:25,132 わずかな留守居の人数だけを 残して 門は閉ざされている> 228 00:23:27,207 --> 00:23:29,142 ウッ… 229 00:23:29,142 --> 00:23:34,080 (寺山)愚か者めが! ようやく手に入れた大切な薬! 230 00:23:34,080 --> 00:23:37,217 「なくした」では済まされまい! 231 00:23:37,217 --> 00:23:39,152 誰かに拾われて 事が露見したら どうするのだ! 232 00:23:39,152 --> 00:23:42,088 いえ 紙入れの中には➡ 233 00:23:42,088 --> 00:23:47,227 あの薬の包みのほか 10両の小判のみ 234 00:23:47,227 --> 00:23:50,129 わたしの身元など知れる ような物は何ひとつ… 何ひとつ 235 00:23:50,129 --> 00:23:52,098 それならばよいが 236 00:23:52,098 --> 00:23:56,236 しかし 道で落としたなどと 本当の話だろうな? 237 00:23:56,236 --> 00:24:00,106 事の重大さに恐れをなして 嘘を言っているのではあるまいな 238 00:24:00,106 --> 00:24:02,108 滅相もない さようなことは決して… 239 00:24:02,108 --> 00:24:07,247 いや 平助とて よく分かっておるはずだ 240 00:24:07,247 --> 00:24:11,117 我が一橋家は あの男によって蹂躙されてきた 241 00:24:11,117 --> 00:24:13,119 今 田沼を倒さぬかぎり➡ 242 00:24:13,119 --> 00:24:17,257 ご当主 徳川治済さまの 面目も立たん 243 00:24:17,257 --> 00:24:23,062 平助… そのほう 今は いかに田沼家の家臣とはいえ➡ 244 00:24:23,062 --> 00:24:28,201 以前は代々 一橋家に仕えた者 245 00:24:28,201 --> 00:24:32,071 治済さまへの忠義 忘れてはおるまいな? 246 00:24:32,071 --> 00:24:37,071 さようなことは決して… 決して! 247 00:24:48,221 --> 00:24:55,094 一橋家と申せば 徳川御三家に次ぐ御三卿のお家柄 248 00:24:55,094 --> 00:24:59,232 う~ん その家中の者どもがのぅ… 飯田平助が➡ 249 00:24:59,232 --> 00:25:03,102 以前に 一橋家であったと いうことは事実なのでしょうか? 250 00:25:03,102 --> 00:25:07,106 田沼の殿さまが 正式に老中に就任なさった折に➡ 251 00:25:07,106 --> 00:25:09,242 家来の数が不足してのぅ 252 00:25:09,242 --> 00:25:15,114 足軽を含めて30人ばかり 一橋家から移されたことがある 253 00:25:15,114 --> 00:25:19,252 恐らく その中にいたのであろう 254 00:25:19,252 --> 00:25:23,122 しかし 何ですかい 田沼のお殿さまってのは➡ 255 00:25:23,122 --> 00:25:26,059 一橋家に対して よっぽど ひでえことしなすったんですかい 256 00:25:26,059 --> 00:25:30,196 なに 田沼さまはな ご自分の威勢をひけらかして➡ 257 00:25:30,196 --> 00:25:34,067 事を強引に 運ぶようなことはなさらぬ お方だ 258 00:25:34,067 --> 00:25:40,206 いや 不平不満を持つやからは どこの世界にもおるものだよ 259 00:25:40,206 --> 00:25:43,109 なるほどねぇ… 260 00:25:43,109 --> 00:25:46,079 だけど 一体 どうなさいやす? 261 00:25:46,079 --> 00:25:51,217 そんなに格式の高いお家じゃ あっしらには手は出せねえ 262 00:25:51,217 --> 00:25:53,152 …といって このまま ほっといたんじゃ➡ 263 00:25:53,152 --> 00:25:59,152 田沼さまのお命が危ねえ うむ… そこだがのぅ… 264 00:26:01,227 --> 00:26:04,227 さて どうすればよいかのぅ… 265 00:26:18,244 --> 00:26:21,147 おはる! 266 00:26:21,147 --> 00:26:24,050 おはる! ≪(おはる)はーい! 267 00:26:24,050 --> 00:26:28,054 まず… 飲もう それから ゆっくり考えよう 268 00:26:28,054 --> 00:26:31,054 腹が減っては戦はできんからな 269 00:26:35,194 --> 00:26:41,067 お話は もう済んだかね うん 甘鯛の味噌漬があったな 270 00:26:41,067 --> 00:26:44,203 そろそろ よいころだ あれを出そう 271 00:26:44,203 --> 00:26:46,139 少し味噌が残ったままのほうが➡ 272 00:26:46,139 --> 00:26:50,076 塩気が効いて 酒によく合う うん あいよ! 273 00:26:50,076 --> 00:26:55,214 あ~ こいつは おはるさんの 字でございますかい? 274 00:26:55,214 --> 00:27:01,087 あ… 上手に書けたから 貼っておけって この人が言うから 275 00:27:01,087 --> 00:27:04,223 わたし ちっとも上手じゃねえって 思うんだけど➡ 276 00:27:04,223 --> 00:27:08,094 「上手だ 上手だ」って この人が… 277 00:27:08,094 --> 00:27:12,098 いやぁ~ 上手でございますよ ねえ 若先生 278 00:27:12,098 --> 00:27:16,235 ええ 上手です なかなかのもんです 279 00:27:16,235 --> 00:27:19,138 やだ いくら上手だからって➡ 280 00:27:19,138 --> 00:27:23,042 そんなに面と向かって 褒めるもんじゃねえよ 281 00:27:23,042 --> 00:27:26,042 こっぱずかしい! (大治郎)ハハッ! 282 00:27:36,189 --> 00:27:41,060 金10両は そのままですが 毒薬は まだ父が預かっております 283 00:27:41,060 --> 00:27:44,060 父が お返しいたすそうです 284 00:27:50,203 --> 00:27:54,073 敵の正体が知れました (三冬)えっ? 285 00:27:54,073 --> 00:27:57,076 相手は ただ者ではない 286 00:27:57,076 --> 00:28:02,215 このままに捨て置いては 田沼さまのお命が危ない 287 00:28:02,215 --> 00:28:06,215 三冬どののお力をお貸し願いたい 288 00:28:08,087 --> 00:28:11,224 私に何をせよと? 289 00:28:11,224 --> 00:28:14,126 今 お話し申します 290 00:28:14,126 --> 00:28:19,098 そのことについて 田沼さまを説得してほしいのです 291 00:28:19,098 --> 00:28:22,168 職務繁多の折から 我々が申し上げたところで➡ 292 00:28:22,168 --> 00:28:25,071 とても耳をお貸しになりますまい 293 00:28:25,071 --> 00:28:30,071 これは 三冬どのにしかできぬことです 294 00:28:56,068 --> 00:28:58,068 (田沼)誰じゃ? 295 00:29:02,208 --> 00:29:04,143 三冬… 296 00:29:04,143 --> 00:29:07,143 お話しいたしたき儀がございます 297 00:29:11,217 --> 00:29:16,217 是非とも お耳に入れたき大事がございます 298 00:29:21,227 --> 00:29:24,227 お人払いを… 299 00:29:26,065 --> 00:29:30,065 まげて… お願いを! 300 00:29:49,188 --> 00:30:00,199 ♬~ 301 00:30:00,199 --> 00:30:05,071 聞かせてもらおうな その話 302 00:30:05,071 --> 00:30:25,071 ♬~ 303 00:30:27,159 --> 00:30:33,032 おい 大変だぞ (侍)どうしたんだ? 304 00:30:33,032 --> 00:30:35,034 誰にも口外はならんぞ (侍)ああ 305 00:30:35,034 --> 00:30:38,170 わしも 殿の側近から こっそり聞いた話で 内密の話だ 306 00:30:38,170 --> 00:30:42,041 ああ だから 何だというんだ? 307 00:30:42,041 --> 00:30:46,045 殿のお命を狙う者がおるらしい しかも この家中にだ! 308 00:30:46,045 --> 00:30:49,181 嘘をつけ! (侍)嘘なものか! 309 00:30:49,181 --> 00:30:51,117 いずれにしても 殿は明朝➡ 310 00:30:51,117 --> 00:30:54,053 急きょ 浜町 中屋敷に お移りになられるそうだ 311 00:30:54,053 --> 00:30:57,056 少人数 お忍びでな (侍)なぜだ? 312 00:30:57,056 --> 00:31:00,192 無論 身の安全を図るためだ 313 00:31:00,192 --> 00:31:03,095 同時に このお屋敷には ご公儀から 司直の手が入り➡ 314 00:31:03,095 --> 00:31:07,066 大がかりな 探索が行われるということだ 315 00:31:07,066 --> 00:31:10,202 (侍)大変な騒ぎになるな そりゃ 316 00:31:10,202 --> 00:31:29,221 ♬~ 317 00:31:29,221 --> 00:31:48,240 ♬~ 318 00:31:48,240 --> 00:32:02,240 ♬~ 319 00:32:07,259 --> 00:32:10,162 (平助) もう お屋敷には戻れませぬ 320 00:32:10,162 --> 00:32:13,132 戻れば きっと殺されまする 321 00:32:13,132 --> 00:32:17,269 誰か わたしのことを 知ってる者がいるんです 322 00:32:17,269 --> 00:32:21,140 その者が わざと わたしに見つかる場所に➡ 323 00:32:21,140 --> 00:32:26,078 紙入れを捨てておいたんです 今にして思えば➡ 324 00:32:26,078 --> 00:32:32,218 わたしから紙入れを盗んだのも その男だったのに違いありません 325 00:32:32,218 --> 00:32:38,090 わたしは これから… これから どうすればいいのじゃ… 326 00:32:38,090 --> 00:32:43,229 やめんか うっとうしい! 何を泣く! 327 00:32:43,229 --> 00:32:47,099 こうなれば こうなったで 腹を決めればいいことではないか 328 00:32:47,099 --> 00:32:51,099 そうだ 腹を決めればいい 329 00:32:53,239 --> 00:32:58,110 明朝 意次が少人数にて ひそかに 浜町 中屋敷に移るという話 330 00:32:58,110 --> 00:33:00,112 間違いはあるまいな? 331 00:33:00,112 --> 00:33:06,252 いえ それは… 人から 聞いた話でござりまするから… 332 00:33:06,252 --> 00:33:10,122 びくびくするな! 333 00:33:10,122 --> 00:33:15,261 前後の状況から見て まず間違いはあるまい 334 00:33:15,261 --> 00:33:19,131 よーし 千載一遇の機会だ 335 00:33:19,131 --> 00:33:24,069 これを逃さず 待ち伏せをかけよう 336 00:33:24,069 --> 00:33:28,207 腕の立つ者をよりすぐって 30人も集めれば➡ 337 00:33:28,207 --> 00:33:31,110 よもや仕損じることもあるまい 338 00:33:31,110 --> 00:33:35,110 平助! 貴様も来い! 339 00:33:37,216 --> 00:33:40,119 わ… わたしもでござりまするか? 340 00:33:40,119 --> 00:33:44,089 そうだ! その目で首尾を見届けろ 341 00:33:44,089 --> 00:33:47,226 でも… 私は剣術ができません 342 00:33:47,226 --> 00:33:54,099 それに… 私の立場では 皆さまと違いまして その… 343 00:33:54,099 --> 00:33:57,236 主殺しという大それたことに… 344 00:33:57,236 --> 00:34:02,107 なんだと? では貴様 最初から 毒殺する気はなかったのか? 345 00:34:02,107 --> 00:34:07,246 いや そ… それは… 346 00:34:07,246 --> 00:34:12,246 信州に住む妻子のこと 忘れるなよ 347 00:34:26,198 --> 00:34:29,101 <その朝 一行の大名駕籠が➡ 348 00:34:29,101 --> 00:34:34,073 ひそかに 神田橋御門の 田沼家 上屋敷を出て➡ 349 00:34:34,073 --> 00:34:38,210 日本橋 浜町の 中屋敷へと向かった> 350 00:34:38,210 --> 00:34:51,223 ♬~ 351 00:34:51,223 --> 00:34:55,094 <隠密のおなりらしく 表通りを避け➡ 352 00:34:55,094 --> 00:34:59,098 人目につかぬ脇道ばかりを選んだ> 353 00:34:59,098 --> 00:35:10,242 ♬~ 354 00:35:10,242 --> 00:35:15,114 平助 いつまで泣きっ面をしておる この期に及んで➡ 355 00:35:15,114 --> 00:35:19,251 くよくよしたところで 今更 もう始まらんではないか 356 00:35:19,251 --> 00:35:22,154 主殺しが怖いか? 357 00:35:22,154 --> 00:35:25,057 では お前ひとり 屋敷に戻ってもよいぞ 358 00:35:25,057 --> 00:35:29,061 だが 屋敷に戻れば どうなるか お前が いちばんよく知っておろう 359 00:35:29,061 --> 00:35:32,061 もはや 後戻りはできんのだ 360 00:35:36,201 --> 00:35:41,073 主殺しであろうと 何であろうと 田沼意次を討ち果たさんかぎり➡ 361 00:35:41,073 --> 00:35:45,073 今のお前に 生きる道はないのだ 362 00:36:04,229 --> 00:36:06,229 来ました! 363 00:36:14,239 --> 00:36:33,192 ♬~ 364 00:36:33,192 --> 00:36:37,062 まだだ! もっと引き寄せるのだ 365 00:36:37,062 --> 00:36:56,215 ♬~ 366 00:36:56,215 --> 00:37:03,088 ♬~ 367 00:37:03,088 --> 00:37:08,227 (平助)お逃げくだされ! 待ち伏せ! 待ち伏せでござる! 368 00:37:08,227 --> 00:37:11,227 おのれ! 裏切り者! 369 00:37:13,098 --> 00:37:18,237 ワーッ! (寺山)田沼意次! 天誅! 370 00:37:18,237 --> 00:37:21,237 オッ… ウッ! ウオッ… 371 00:37:29,181 --> 00:37:31,116 貴様! 何者だ! 372 00:37:31,116 --> 00:37:36,055 秋山小兵衛! お前らを1人残らず退治に来た! 373 00:37:36,055 --> 00:37:40,192 では! では その駕籠は初めから そうさ 374 00:37:40,192 --> 00:37:44,063 田沼さまが屋敷の中に引き込んで おられては 打つ手がないからのぅ 375 00:37:44,063 --> 00:37:48,067 おとりを仕掛けて お前たちをおびき出したのだ 376 00:37:48,067 --> 00:37:54,206 殿さまは今ごろ 神田橋の上屋敷で ぐっすりお休みさ 377 00:37:54,206 --> 00:37:58,077 ええい かまわぬ! 斬れ! 皆殺しにしろ! 378 00:37:58,077 --> 00:38:00,079 ヤーッ! 379 00:38:00,079 --> 00:38:18,230 ♬~ 380 00:38:18,230 --> 00:38:35,180 ♬~ 381 00:38:35,180 --> 00:38:55,200 ♬~ 382 00:38:55,200 --> 00:39:10,215 ♬~ 383 00:39:10,215 --> 00:39:30,169 ♬~ 384 00:39:30,169 --> 00:39:34,039 トォーッ! ウウ… 385 00:39:34,039 --> 00:39:36,039 ウウッ… 386 00:39:42,181 --> 00:39:46,181 ヤッ! ウオッ… 387 00:40:06,205 --> 00:40:11,205 (三冬)平助! 平助 しっかりしろ 388 00:40:16,215 --> 00:40:20,085 これでようございました 389 00:40:20,085 --> 00:40:24,085 皆さま ありがとうございました 390 00:40:26,024 --> 00:40:30,024 本当に わたしは馬鹿な奴でした 391 00:40:35,167 --> 00:40:37,102 平助! 392 00:40:37,102 --> 00:40:50,182 ♬~ 393 00:40:50,182 --> 00:41:02,194 ♬~ 394 00:41:02,194 --> 00:41:08,066 <数日後 田沼意次の 不二楼へのお忍びがあった> 395 00:41:08,066 --> 00:41:22,066 ♬~ 396 00:41:26,218 --> 00:41:29,121 (おもと)さあさあ 長さんの心尽くしの合鴨鍋 397 00:41:29,121 --> 00:41:31,089 お熱いうちに どうぞ 398 00:41:31,089 --> 00:41:33,091 (およね) 芹は鴨の肉の臭みを取るので➡ 399 00:41:33,091 --> 00:41:35,227 殿さまの お口にも合うはずでございます 400 00:41:35,227 --> 00:41:38,130 そうか そりゃありがたいな 401 00:41:38,130 --> 00:41:41,099 それでは皆さま どうぞごゆっくり 402 00:41:41,099 --> 00:41:45,237 ああ これこれ お前さんまで 引っ込んでしもうては困る 403 00:41:45,237 --> 00:41:50,108 せっかくの殿のおなりだ うん? お酌のひとつもしてさしあげねば 404 00:41:50,108 --> 00:41:53,111 でも 大切なお話が あるんじゃございませんか? 405 00:41:53,111 --> 00:41:55,247 いや だからこそ… うん? 406 00:41:55,247 --> 00:41:59,117 殿の機嫌が悪ぅなっては 話もしづらいわ 407 00:41:59,117 --> 00:42:03,121 はい おひとつ (田沼)うむ… 408 00:42:03,121 --> 00:42:05,121 フフッ… 409 00:42:07,259 --> 00:42:12,130 申し遅れましたが この度は誠に かたじけないことでござった 410 00:42:12,130 --> 00:42:17,269 些少ではござるが 殿のお気持ち どうか お受け取りくだされ 411 00:42:17,269 --> 00:42:20,269 これはこれは 何よりの物を… 412 00:42:23,075 --> 00:42:27,079 いただきなさい はっ? 413 00:42:27,079 --> 00:42:32,217 「はっ?」ではない いただきなさい いえ しかし これは… 414 00:42:32,217 --> 00:42:37,089 いいのだ あとで山分けにするのだ いただきなさい 415 00:42:37,089 --> 00:42:39,089 承知いたしました 416 00:42:45,230 --> 00:42:47,165 ありがたくちょうだいいたします 417 00:42:47,165 --> 00:42:50,102 して… あれからのち➡ 418 00:42:50,102 --> 00:42:54,239 一橋家のほうから 何も言うてきませぬか 419 00:42:54,239 --> 00:42:57,142 こぬな 420 00:42:57,142 --> 00:43:01,113 ひと言も? ない 421 00:43:01,113 --> 00:43:05,250 まあ 恐らく 当主 治済公にとっては➡ 422 00:43:05,250 --> 00:43:09,121 一切 ご存じないことだったのであろう 423 00:43:09,121 --> 00:43:11,123 しかし 果たして そのようなことが… 424 00:43:11,123 --> 00:43:15,260 まあよい そういうことに しておこうではないか 425 00:43:15,260 --> 00:43:18,163 将軍家御血筋の治済さまが➡ 426 00:43:18,163 --> 00:43:24,069 老中筆頭の このわしを 毒殺しようとしたとなると➡ 427 00:43:24,069 --> 00:43:29,207 天下は ひっくり返るほどの大騒ぎになる 428 00:43:29,207 --> 00:43:34,207 決して あってはならぬことなのだ 429 00:43:38,216 --> 00:43:42,087 殿には ご不快な思いをさせてしもうた 430 00:43:42,087 --> 00:43:46,091 不二楼 手生けの花 存分にご覧くださいませ 431 00:43:46,091 --> 00:43:48,226 (笑い声) 432 00:43:48,226 --> 00:43:52,097 先生 田沼のお殿さまは ご不快どころか➡ 433 00:43:52,097 --> 00:43:56,101 ここ数日は 夢見心地でいらしたそうですよ 434 00:43:56,101 --> 00:43:59,237 なに? それはまた どうして? 435 00:43:59,237 --> 00:44:04,109 三冬さま… 三冬さまが おそばにいらしたから 436 00:44:04,109 --> 00:44:06,111 そうですね? お殿さま 437 00:44:06,111 --> 00:44:12,250 フッフッフ… わしを嫌うていた三冬が➡ 438 00:44:12,250 --> 00:44:18,123 あれほど長い間 屋敷に滞在して くれたのは初めてのことじゃ 439 00:44:18,123 --> 00:44:22,060 しかも わしの身を案じて 440 00:44:22,060 --> 00:44:26,198 いちずに わしを守ろうとしてくれたのじゃ 441 00:44:26,198 --> 00:44:31,198 父親として… これほど うれしいことがあろうか 442 00:44:35,207 --> 00:44:44,216 ことに… この度の一件を 打ち明けてくれたときの涙… 443 00:44:44,216 --> 00:44:51,216 あの涙は… 生涯 忘れることができぬ 444 00:44:53,225 --> 00:44:56,225 (田沼)わしの宝じゃ 445 00:45:08,240 --> 00:45:11,240 (長次)よっ おはるさん 446 00:45:14,112 --> 00:45:16,114 (おはる)うわぁ~! お汁粉! 447 00:45:16,114 --> 00:45:19,251 白玉が たっぷり入って あったまるぜ 448 00:45:19,251 --> 00:45:24,089 ありがとう 長さん (長次)おお~ ここは寒いや 449 00:45:24,089 --> 00:45:29,060 あっ! 先生方は まだまだだ 中へ入って待ってたら どうだい? 450 00:45:29,060 --> 00:45:31,196 ううん 寒かねえ 451 00:45:31,196 --> 00:45:37,068 いいお天気で 空が青くて とっても きれいだから➡ 452 00:45:37,068 --> 00:45:40,205 こうやって 空 見てるんだ 453 00:45:40,205 --> 00:45:45,076 ふぅ~ん 空がねえ… 454 00:45:45,076 --> 00:45:56,221 ♬~ 455 00:45:56,221 --> 00:45:58,221 ≪(嘉助)三冬さま 456 00:46:02,093 --> 00:46:05,230 (嘉助)どうなさいました? 457 00:46:05,230 --> 00:46:08,230 思い出していた 458 00:46:10,101 --> 00:46:16,101 この度の一件を 打ち明けたとき… 父は… 459 00:46:18,243 --> 00:46:27,052 私の この手を… 優しく… 両の手で包んでくれた 460 00:46:27,052 --> 00:46:34,052 そのときの 父のぬくもり… 父のにおい… 461 00:46:36,194 --> 00:46:41,194 父というものを 知らずに育った この私の… 462 00:46:45,203 --> 00:46:47,138 生涯の宝じゃ 463 00:46:47,138 --> 00:47:06,224 ♬~ 464 00:47:06,224 --> 00:47:14,224 ♬~ 465 00:47:23,174 --> 00:47:25,174 ワーッ! 466 00:47:27,045 --> 00:47:34,045 源太めは 多分… もう この世には おりますまい 467 00:47:41,192 --> 00:47:43,192 いざ!