1 00:00:03,937 --> 00:00:08,275 (駒)先生…。 私 駄目です。 2 00:00:08,275 --> 00:00:10,611 (望月東庵)うん? 3 00:00:10,611 --> 00:00:13,947 駄目みたいです。 4 00:00:13,947 --> 00:00:17,618 うん。 駒。 5 00:00:17,618 --> 00:00:20,520 (茶の振売)駒ちゃん どうしたんだい? (東庵)ああ…。➡ 6 00:00:20,520 --> 00:00:28,228 このところ こうなのじゃ。 困ったもんじゃ…。 7 00:00:29,963 --> 00:00:33,300 ⚟伊呂波太夫が ひと踊り~! 8 00:00:33,300 --> 00:00:39,973 じゅんやく踊りをひと踊り~! じゅんやく踊りをひと踊り~! 9 00:00:39,973 --> 00:00:46,313 参られよ 参られよ~! 参られよ 参られよ~! 10 00:00:46,313 --> 00:01:02,029 ♬~ 11 00:01:10,270 --> 00:01:30,958 ♬~ 12 00:01:32,526 --> 00:04:12,819 ♬~ 13 00:04:14,588 --> 00:04:19,926 (商人)参られよ 参られよ~! 参られよ 参られよ~!➡ 14 00:04:19,926 --> 00:04:25,265 あっ 東庵先生。 (東庵)おお… うちの駒を見なかったか? 15 00:04:25,265 --> 00:04:29,136 ああ さっき 芸人一座の行列 見てたな。 16 00:04:29,136 --> 00:04:34,274 ああ… いや 出てったまま帰ってこないのじゃ。 17 00:04:34,274 --> 00:04:38,945 何を考えておるのやら。 ハハハ…。 18 00:04:38,945 --> 00:04:46,820 〽 踊りがまいる踊りがまいる 19 00:04:46,820 --> 00:04:56,963 〽 一の門ひらけ 二の門ひらけ 20 00:04:56,963 --> 00:05:06,773 〽 みな いちようにお並びあれよ 21 00:05:06,773 --> 00:05:16,449 ♬~ 22 00:05:16,449 --> 00:05:18,585 すまん…。 23 00:05:18,585 --> 00:05:21,488 駒…。 24 00:05:21,488 --> 00:05:36,937 ♬~ 25 00:05:36,937 --> 00:05:39,239 はっ! 26 00:05:41,274 --> 00:05:48,281 (歓声) 27 00:05:54,287 --> 00:05:56,223 え…? 28 00:05:56,223 --> 00:06:00,093 おっ 太夫! 29 00:06:00,093 --> 00:06:05,899 お~ 娘さん! やるねえ! お前より うまいぞ。 30 00:06:05,899 --> 00:06:08,602 (笑い声) 31 00:06:13,773 --> 00:06:18,778 太夫様! (伊呂波太夫)お駒ちゃん。 32 00:06:25,252 --> 00:06:28,255 すっかり見違えました。 33 00:06:29,923 --> 00:06:36,596 (東庵) そうか。 京へ戻ってきたのは5年ぶりか。 34 00:06:36,596 --> 00:06:42,936 (太夫)一座を連れ 東は常陸の国から 西は薩摩まで➡ 35 00:06:42,936 --> 00:06:48,275 歌って踊って よく歩きましたよ。 36 00:06:48,275 --> 00:06:54,614 尾張にも行ったそうじゃないか。 お聞きになりました? 37 00:06:54,614 --> 00:06:57,517 織田のお殿様がおっしゃっていた。 38 00:06:57,517 --> 00:07:03,890 美しい都の踊りを見せてもろうたと。 39 00:07:03,890 --> 00:07:10,764 信秀様ね。 双六の大好きな面白いお殿様。 フフフッ…。 40 00:07:10,764 --> 00:07:15,502 じきじきにお話をしたのか? 41 00:07:15,502 --> 00:07:21,908 東庵先生から 10貫巻き上げたって 自慢しておいででしたよ。 42 00:07:21,908 --> 00:07:26,780 (東庵)ま… それはな 去年 ちゃんと取り返してきたのだ。 43 00:07:26,780 --> 00:07:30,250 おや それは よござんした。 44 00:07:30,250 --> 00:07:34,954 (笑い声) 45 00:07:36,923 --> 00:07:40,593 美濃へは お行きにならなかったのですか? 46 00:07:40,593 --> 00:07:44,264 野盗も出るというし 行かずじまい。 47 00:07:44,264 --> 00:07:47,934 去年 先生と 半年以上 行っていたのですよ。 48 00:07:47,934 --> 00:07:56,276 へえ~。 戦に巻き込まれて往生した。 49 00:07:56,276 --> 00:08:04,084 ああ… 美濃に明智十兵衛という 若い家臣がいるそうですけど➡ 50 00:08:04,084 --> 00:08:06,553 お会いになりました?➡ 51 00:08:06,553 --> 00:08:12,225 三好長慶様のご側近の松永様って方が おっしゃっていましたよ。 52 00:08:12,225 --> 00:08:18,565 太夫は 松永久秀様を存じておるのか? 53 00:08:18,565 --> 00:08:24,871 一座に何度かお運び頂き ごひいきに あずかっております。 54 00:08:26,439 --> 00:08:33,580 今 この都を動かしているのが あのお方だ。 55 00:08:33,580 --> 00:08:37,250 へえ~。 56 00:08:37,250 --> 00:08:42,922 駒 太夫は こういうお人だ。 57 00:08:42,922 --> 00:08:50,263 恐ろしく顔が広い。 めったなことは しゃべれぬぞ。 58 00:08:50,263 --> 00:08:56,136 そういう東庵先生こそ あちこちで お名前をお聞きしますよ。 59 00:08:56,136 --> 00:09:00,073 お公家の中では 知らぬ者はいないと申します。 60 00:09:00,073 --> 00:09:05,545 (東庵)その割に お声がかからず 貧乏しておる。 61 00:09:05,545 --> 00:09:09,215 気難しいお方だから。 62 00:09:09,215 --> 00:09:12,218 駒 そうか? 63 00:09:13,887 --> 00:09:15,822 はい! 64 00:09:15,822 --> 00:09:19,225 (笑い声) 65 00:09:19,225 --> 00:09:22,128 気難しいか。 66 00:09:22,128 --> 00:09:26,099 (太夫)お駒ちゃん 後で おだんご 食べに行かないかい。➡ 67 00:09:26,099 --> 00:09:29,102 いいお店 見つけたんだよ。 68 00:09:33,573 --> 00:09:35,909 (ため息) 69 00:09:35,909 --> 00:09:40,580 このところ どうも元気がない。 70 00:09:40,580 --> 00:09:43,917 お駒ちゃん? 71 00:09:43,917 --> 00:09:56,629 美濃から帰ってきて ずっとあの調子だ。 何を聞いても なま返事でな。 72 00:10:05,205 --> 00:10:08,608 見て きれい。 きれい。 73 00:10:08,608 --> 00:10:11,945 帰ったら 兄上にもお見せしてあげよう。 ええ。 74 00:10:11,945 --> 00:10:14,614 見てごらん。 75 00:10:14,614 --> 00:10:21,921 昔 お駒ちゃんが 初めて一座に来た時は あんなふうだったんだよ。 76 00:10:24,290 --> 00:10:29,963 先代の母は 私に こう言ったんだよ。 77 00:10:29,963 --> 00:10:34,834 これからは この子を妹だと思いなされ。 78 00:10:34,834 --> 00:10:40,840 この子が悲しい時は 一緒に泣いておやりと…。 79 00:10:42,542 --> 00:10:46,513 そんなことを 先代が? 80 00:10:46,513 --> 00:10:51,651 でも お駒ちゃん 我慢強くて めったに泣かないの。 81 00:10:51,651 --> 00:10:57,323 一座に芸を仕込まれて 何度 綱渡りをしくじっても➡ 82 00:10:57,323 --> 00:11:00,226 涙一つ こぼしやしない。 83 00:11:00,226 --> 00:11:08,268 な~んだ いいお姉さんになり損ねたって がっかりして…。 フフフ…。 84 00:11:08,268 --> 00:11:15,975 でも かわいがって頂いたことを よく覚えています。 先代にも…。 85 00:11:21,281 --> 00:11:27,620 (太夫) ねえ 東庵先生が 案じておいでだよ。 86 00:11:27,620 --> 00:11:35,929 このところ お駒ちゃんが元気がない。 美濃で つらいことでもあったのかなと。 87 00:11:42,635 --> 00:11:45,338 (太夫)そう? 88 00:11:49,976 --> 00:12:03,289 好きなお方が… 遠くへ… ずっと遠くへ…。 89 00:12:07,460 --> 00:12:15,468 そうか… 手の届かぬお方だったのね…。 90 00:12:17,937 --> 00:12:29,249 こういう時… どうすればよいのか… 分からなくて…。 91 00:12:31,484 --> 00:12:40,960 世の中はね つらいことがあると 必ず いいこともあるものですよ。 92 00:12:40,960 --> 00:12:45,298 美濃では つらいことだけだったの? 93 00:12:45,298 --> 00:12:49,168 いいこと? 94 00:12:49,168 --> 00:12:54,307 1つ ありました。 そう… いいことが。 95 00:12:54,307 --> 00:12:56,643 (太夫)何? 96 00:12:56,643 --> 00:13:02,248 子どもの頃 戦があって 家が焼け➡ 97 00:13:02,248 --> 00:13:07,120 火事の中に残された私を助けてくれた お侍さんがいたのです。 98 00:13:07,120 --> 00:13:14,260 覚えているよ。 そのお侍さん お駒ちゃんを抱いて➡ 99 00:13:14,260 --> 00:13:19,132 先代と一緒に 一座に連れてきて下すった日のこと。 100 00:13:19,132 --> 00:13:22,935 そのお侍さんが 美濃の方だと分かったのです。 101 00:13:22,935 --> 00:13:27,607 少し手がかりがつかめたと思って うれしかった。 102 00:13:27,607 --> 00:13:33,279 命の恩人ですもの。 (太夫)そう。 美濃のお方! 103 00:13:33,279 --> 00:13:36,616 じゃあ もう どういうお方か分かったも同然ね。 104 00:13:36,616 --> 00:13:39,285 え? 母が言ってたの。 105 00:13:39,285 --> 00:13:44,157 そのお侍の御紋は 桔梗だったって。 106 00:13:44,157 --> 00:13:46,959 桔梗…!? 107 00:13:46,959 --> 00:13:53,633 (太夫)持ち物に 桔梗の御紋があったって。 それは私も覚えてるの。 108 00:13:53,633 --> 00:13:58,971 そのお侍さん お駒ちゃんを布に包んで 抱いて 来たの。➡ 109 00:13:58,971 --> 00:14:07,246 その布に大きな御紋があって きれいな花の紋だと思ったのよ。 110 00:14:07,246 --> 00:14:10,950 桔梗…。 111 00:14:20,793 --> 00:14:23,796 桔梗… これですか! 112 00:14:23,796 --> 00:14:26,599 そう それ! この御紋ですか!? 113 00:14:26,599 --> 00:14:29,268 うん。 114 00:14:29,268 --> 00:14:32,939 どうしよう! え? 115 00:14:32,939 --> 00:14:35,842 お駒ちゃん! 116 00:14:35,842 --> 00:15:25,591 ♬~ 117 00:15:25,591 --> 00:15:29,262 (駒)明智家の御紋が入って きれいで…。➡ 118 00:15:29,262 --> 00:15:32,932 この模様 桔梗の花ですね。 119 00:15:32,932 --> 00:15:50,283 ♬~ 120 00:15:50,283 --> 00:15:53,586 明智家の御紋だ…。 121 00:15:56,155 --> 00:15:59,158 十兵衛様の…。 122 00:16:03,830 --> 00:16:08,534 私の命の恩人は…。 123 00:16:11,237 --> 00:16:14,574 明智家の…! 124 00:16:14,574 --> 00:16:33,259 ♬~ 125 00:16:37,597 --> 00:16:41,934 その年の末 三河で戦が起きた。 126 00:16:41,934 --> 00:16:48,941 尾張との国境にある安城城に 今川軍が攻め寄せたのである。 127 00:16:54,947 --> 00:16:59,619 城は落ち 守っていた織田信広が捕らえられた。 128 00:16:59,619 --> 00:17:07,927 織田信広は 信秀の側室の子であり 信長の腹違いの兄であった。 129 00:17:11,564 --> 00:17:17,436 (明智光安)帰蝶様が 尾張に嫁がれて以来 殿は 尾張で何事かある度に➡ 130 00:17:17,436 --> 00:17:21,908 我らを呼びつけられる。 全くもって迷惑な話じゃ。 131 00:17:21,908 --> 00:17:24,810 そう思わぬか。 132 00:17:24,810 --> 00:17:30,583 三河の小さな城が 今川に取られ 織田なにがしかが捕らえられた。 133 00:17:30,583 --> 00:17:35,922 それがどうしたというのじゃ。 登城して 思うところを述べよとのお達しじゃが➡ 134 00:17:35,922 --> 00:17:40,259 思うところなど何もない。 この美濃とは何の関わりもない話じゃ。 135 00:17:40,259 --> 00:17:42,929 そう思わぬか? 136 00:17:42,929 --> 00:17:47,934 (明智十兵衛光秀)そう思われますが…。 だな? 137 00:18:14,226 --> 00:18:19,565 (斎藤山城守利政)昨日 織田信秀殿の使者が参り こう申した。 138 00:18:19,565 --> 00:18:25,237 今川義元が 安城城で捕らえた 信広殿を人質とし➡ 139 00:18:25,237 --> 00:18:31,911 織田方の人質 松平竹千代と 交換したいと伝えてきたというのじゃ。 140 00:18:31,911 --> 00:18:40,920 このことは巡り巡って この美濃にも 波が及ぼうはず。 そう思わぬか。 141 00:18:40,920 --> 00:18:45,257 大いに関わりがござります。 142 00:18:45,257 --> 00:18:52,932 松平竹千代は まだ幼いが 三河の松平家を継ぐ者。 143 00:18:52,932 --> 00:19:03,876 これを今川に渡せば 三河は全土を今川に支配されたも同然。 144 00:19:03,876 --> 00:19:10,750 そうなれば 三河の隣国 尾張は 虎のそばで暮らす猫のようなものじゃ。 145 00:19:10,750 --> 00:19:14,520 ひとたまりもなく食い殺されますな。 146 00:19:14,520 --> 00:19:18,424 (利政)我らは その猫と盟約を結んだ国じゃ。 147 00:19:18,424 --> 00:19:22,895 猫を守るため 虎と戦うことになる。 148 00:19:22,895 --> 00:19:26,766 思うだに身の毛がよだちまする。 149 00:19:26,766 --> 00:19:37,243 信秀殿が 我が子 信広殿を助けるため 竹千代を今川に渡すようなら➡ 150 00:19:37,243 --> 00:19:46,552 我らは 盟約を考え直さねばならぬ。 そう思わぬか 十兵衛。 151 00:19:54,260 --> 00:20:00,132 信秀殿が 我が子を見殺しにいたしましょうか? 152 00:20:00,132 --> 00:20:08,140 見殺しにできるようなら 信秀殿は まだ見どころがある。 153 00:20:13,279 --> 00:20:16,182 十兵衛。 はっ。 154 00:20:16,182 --> 00:20:19,151 尾張へ行き 成り行きを見てまいれ。 155 00:20:19,151 --> 00:20:22,288 そなたなら 帰蝶に会う口実は どうにでもなる。 156 00:20:22,288 --> 00:20:25,591 そこで いろいろ探りを入れよ。 は? 157 00:20:27,159 --> 00:20:33,165 すぐに行け! ぐずぐずするな! 158 00:20:37,303 --> 00:20:42,641 鬼め! 命がいくらあっても足らんわ! 159 00:20:42,641 --> 00:20:45,978 (織田信長)人質の取り交わしなど 同意できませぬ! 160 00:20:45,978 --> 00:20:48,647 竹千代殿は 三河の主となる若君。 161 00:20:48,647 --> 00:20:52,985 それを今川に渡すなどと。 尾張の命運に関わりまする! 162 00:20:52,985 --> 00:20:57,656 (織田信秀) 信広は腹違いなれど そなたの兄ぞ。 163 00:20:57,656 --> 00:21:02,928 みすみす見殺しにはできぬ。 兄上は 戦下手ゆえ捕らえられたのじゃ。 164 00:21:02,928 --> 00:21:06,799 自業自得ではありませぬか。 捕らえられる前に腹を切るべきであった! 165 00:21:06,799 --> 00:21:15,941 信広は 絶えず国境を守ってくれていた。 今川の標的となり 苦労させたのじゃ。 166 00:21:15,941 --> 00:21:21,247 父上は病ゆえ弱気になっておられる。 167 00:21:25,284 --> 00:21:34,293 この信長 竹千代殿を我が城にとどめ 何人にも渡しませぬゆえ そのおつもりで。 168 00:21:34,293 --> 00:21:36,996 (土田御前)信長殿! 169 00:21:39,965 --> 00:21:43,636 フッ… 放っておけ。 170 00:21:43,636 --> 00:21:48,941 あ… なれど あの口の利きようは。 171 00:21:50,976 --> 00:21:58,284 人の上に立つ器量に やや欠けておるかのう。 172 00:22:00,586 --> 00:22:04,256 それゆえ 申したではありませぬか。 173 00:22:04,256 --> 00:22:10,129 家を継がせるのは 弟の信勝の方がよろしいと。 174 00:22:10,129 --> 00:22:17,436 信勝は まこと 心の広い賢い子ですよ。 175 00:22:27,479 --> 00:22:31,951 わしの父 信定は よう仰せられた。 176 00:22:31,951 --> 00:22:37,823 物事には 天の与えた順序というものがある。 177 00:22:37,823 --> 00:22:46,498 それを変えれば 必ず無理が生じ よからぬことが起きるとな。➡ 178 00:22:46,498 --> 00:22:52,271 そなたから生まれた最初の子は信長じゃ。 179 00:22:52,271 --> 00:23:04,850 家を継ぐのは 信長。 僅かな 器量のよしあしで その順序は変えられぬ。 180 00:23:04,850 --> 00:23:10,789 フッ… わしも よう言われたものじゃ。 181 00:23:10,789 --> 00:23:18,097 器量がよいのは 弟の信光じゃと。 182 00:23:23,936 --> 00:23:26,839 はい いらっしゃい いらっしゃい。 いい魚 入ってるよ~。 183 00:23:26,839 --> 00:23:30,609 買わんか~い 買わんか~い。 184 00:23:30,609 --> 00:23:35,281 いらっしゃ~い いらっしゃ~い。 185 00:23:35,281 --> 00:23:41,620 おい…。(菊丸)う…。 おい!うん…? 186 00:23:41,620 --> 00:23:44,957 十兵衛様! 187 00:23:44,957 --> 00:23:49,828 みそは売れておるか。 はい 売れております。 188 00:23:49,828 --> 00:23:52,631 港に着いた船が 丸ごと買ってってくれますから。 189 00:23:52,631 --> 00:23:56,302 ふ~ん。 今 いくつある? 190 00:23:56,302 --> 00:23:58,637 え? 191 00:23:58,637 --> 00:24:01,907 那古野城に届けたいのだ。 192 00:24:01,907 --> 00:24:08,247 ああ 美濃から帰蝶様が お輿入れなされたそうですね。 193 00:24:08,247 --> 00:24:11,583 城まで運んでもらえるか? 194 00:24:11,583 --> 00:24:16,588 お安い御用で。頼むぞ。 はい! 195 00:24:19,925 --> 00:24:24,797 (菊丸)那古野城には 何の御用でいらっしゃるのですか? 196 00:24:24,797 --> 00:24:29,935 だから 申したであろう。 帰蝶様に ご機嫌伺いじゃ。 197 00:24:29,935 --> 00:24:36,809 はあ… 昨日 熱田で お暮らしになっていた 松平竹千代様が➡ 198 00:24:36,809 --> 00:24:39,611 那古野城へ移されたという噂を 聞きました。 199 00:24:39,611 --> 00:24:45,484 まことでございましょうか? さあて… それは初耳じゃ。 200 00:24:45,484 --> 00:24:50,956 何でも 駿河の今川義元様のもとへ 送られるためだというのですが。 201 00:24:50,956 --> 00:24:53,625 何だ 気になるのか? 202 00:24:53,625 --> 00:24:57,296 そりゃあ わしは三河の者ですから。 203 00:24:57,296 --> 00:25:04,103 今の三河は 今川様に押さえつけられて 何をされても じっと我慢です。➡ 204 00:25:04,103 --> 00:25:08,907 言われるがまま 従うほかないのです。 205 00:25:08,907 --> 00:25:15,781 せめて 竹千代様だけでも ご無事でいて頂かねば…。 206 00:25:15,781 --> 00:25:19,251 わしらのお殿様ですから。 207 00:25:19,251 --> 00:25:24,556 うむ… まあ それはそうだな。 (菊丸)はい。 208 00:25:26,592 --> 00:25:32,931 お主らとしては 竹千代様が今川に渡されるより➡ 209 00:25:32,931 --> 00:25:36,935 織田方に残る方がよいのか? 210 00:25:40,606 --> 00:25:46,278 正直に申しますと どちらでもよいのです。 211 00:25:46,278 --> 00:25:51,150 今は じっと我慢をされ 行く末 三河に戻られ➡ 212 00:25:51,150 --> 00:25:58,290 どこからも指図されない 立派な国を つくって頂ければ それでよいのです。 213 00:25:58,290 --> 00:26:02,161 それが わしらの望みです。 214 00:26:02,161 --> 00:26:19,244 ♬~ 215 00:26:19,244 --> 00:26:22,915 (帰蝶)十兵衛殿 久しぶりじゃのう。 216 00:26:22,915 --> 00:26:26,785 奥方様におかれましては つつがなく お過ごしのご様子➡ 217 00:26:26,785 --> 00:26:30,589 美濃の一同 それを聞き及び 安堵いたしております。 218 00:26:30,589 --> 00:26:34,259 今日は みそを持参してくれたとか。 はっ。 219 00:26:34,259 --> 00:26:36,929 父上のお指図か? 220 00:26:36,929 --> 00:26:38,864 はっ。 221 00:26:38,864 --> 00:26:43,802 ありがたきお心配り。 皆で頂きますと 礼を申し上げて下され。 222 00:26:43,802 --> 00:26:46,271 はっ。 223 00:26:46,271 --> 00:26:48,941 あれを膳所へ運べ。 224 00:26:48,941 --> 00:26:51,844 (侍女頭)誰ぞを呼べ。 (侍女)はっ。 225 00:26:51,844 --> 00:26:55,614 場所を教えて頂ければ お運びいたします。 226 00:26:55,614 --> 00:26:58,917 教えておやり。 はい。 227 00:27:09,561 --> 00:27:12,264 こなたへ。 228 00:27:20,205 --> 00:27:25,911 十兵衛 もうよい。 面を上げよ。 はっ。 229 00:27:25,911 --> 00:27:31,250 しらじらしいぞよ。 父上が みそなど持たせるわけがあるまい。 230 00:27:31,250 --> 00:27:35,120 おおかた 何か調べてまいれと命じられて 来たのじゃな。 231 00:27:35,120 --> 00:27:39,925 いや まことに あのみそは 美味でございまして…。 232 00:27:39,925 --> 00:27:46,932 まあ よい そこにいては話ができぬ。 お上がりなされ。はっ。 233 00:27:49,601 --> 00:27:52,604 (若侍)若殿がお戻りになりました! 234 00:28:04,116 --> 00:28:07,886 (帰蝶)お帰りなさいませ。 今日は うまくいったぞ! 235 00:28:07,886 --> 00:28:12,224 (帰蝶)何がでございますか? 走るイノシシを鉄砲でしとめた。 236 00:28:12,224 --> 00:28:15,561 それは おめでとうござります。 うむ。 237 00:28:15,561 --> 00:28:18,564 ほれ 土産じゃ。 238 00:28:24,903 --> 00:28:27,239 誰じゃ? 239 00:28:27,239 --> 00:28:30,909 美濃から父上の使いで 参った者でござります。 240 00:28:30,909 --> 00:28:34,246 名は? はっ 明智十兵衛と申します。 241 00:28:34,246 --> 00:28:37,149 明智? 242 00:28:37,149 --> 00:28:40,919 先日 殿から 鉄砲の撃ち方を教えて頂いた折に➡ 243 00:28:40,919 --> 00:28:43,822 美濃にも 鉄砲に詳しい者がいると申しました。 244 00:28:43,822 --> 00:28:46,258 その十兵衛にござります。 245 00:28:46,258 --> 00:28:54,600 おお そなたが十兵衛か。 246 00:28:54,600 --> 00:28:57,603 恐れ入りまする。 247 00:29:14,553 --> 00:29:22,261 この鉄砲 どこで作られたものか当ててみよ。 248 00:29:46,918 --> 00:29:51,790 渡来物ではありませぬ。 これは 恐らく➡ 249 00:29:51,790 --> 00:29:59,264 近江国友村の助太夫や 徳左衛門の手になるものと思われます。 250 00:29:59,264 --> 00:30:01,967 ほう…。 251 00:30:05,604 --> 00:30:10,275 フッ… ハッハッハ! 当たりだ。 252 00:30:10,275 --> 00:30:13,178 助太夫に作らせたのだ。 253 00:30:13,178 --> 00:30:16,948 茶でも飲んでゆけ。 は…。 254 00:30:16,948 --> 00:30:20,652 明日 また行くぞ! 用意しておけ! (近習の者たち)はっ! 255 00:30:25,957 --> 00:30:28,627 上がれ。 256 00:30:28,627 --> 00:30:30,629 はっ。 257 00:30:36,301 --> 00:30:39,004 (ため息) 258 00:30:53,852 --> 00:30:58,323 その方 どこぞで会うたことがあるな。 259 00:30:58,323 --> 00:31:01,326 は? 260 00:31:03,929 --> 00:31:07,632 熱田の海辺ではなかったか? 261 00:31:12,270 --> 00:31:15,607 は…。 262 00:31:15,607 --> 00:31:18,944 よく覚えておいでで…。 263 00:31:18,944 --> 00:31:24,249 フッ わしは ひと言でも話した相手は忘れぬ。 264 00:31:25,817 --> 00:31:28,820 お前は要らぬのか? 265 00:31:30,555 --> 00:31:34,559 あそこで何をしておったのじゃ? 266 00:31:37,963 --> 00:31:45,637 あるお方に命じられ 信長様のお姿を拝見するため➡ 267 00:31:45,637 --> 00:31:50,308 舟のお帰りをお待ちしておりました。 268 00:31:50,308 --> 00:31:53,612 あるお方とは誰じゃ。 269 00:31:55,981 --> 00:31:59,284 私でござります。 270 00:32:02,254 --> 00:32:12,597 ふむ。 帰蝶に 十兵衛は わしのことを何と申した? 271 00:32:12,597 --> 00:32:15,600 よう分からぬお方じゃと。 272 00:32:17,269 --> 00:32:21,139 ハッハッハッハッハ…! 273 00:32:21,139 --> 00:32:24,142 それは よくぞ申した。 274 00:32:24,142 --> 00:32:27,612 わしも 己がいかなる者か まだ よう分からぬ。 275 00:32:27,612 --> 00:32:31,483 それは 難儀なことでござりますな。 難儀でたまらんのじゃ。 276 00:32:31,483 --> 00:32:34,486 ハッハッハッハッハ…! 277 00:32:39,958 --> 00:32:47,632 信長様は あのように朝早くから…。 278 00:32:47,632 --> 00:32:52,337 釣りがお好きなのですか? 279 00:32:55,507 --> 00:32:58,810 さほどに好きではない。 280 00:33:00,579 --> 00:33:08,253 子どもの頃 わしは 母上のお気に入りではなかった。 281 00:33:08,253 --> 00:33:17,262 母上は ご自分によく似た色白の弟 信勝に目をかけておられた。 282 00:33:17,262 --> 00:33:22,267 わしは それが口惜しかった。 283 00:33:25,136 --> 00:33:33,612 ある日 釣りに行って大きな魚を釣り それを母上に差し上げると➡ 284 00:33:33,612 --> 00:33:37,482 殊の外 喜ばれた。 285 00:33:37,482 --> 00:33:42,487 初めて母上から褒められた。 286 00:33:45,624 --> 00:33:51,496 それから わしは 大きな魚を釣るため 沖に出るようになった。 287 00:33:51,496 --> 00:33:59,170 しかし 母上が喜ばれたのは最初の時だけで➡ 288 00:33:59,170 --> 00:34:08,480 その後 いくら大きな魚を差し上げても よい顔をされなかった。 289 00:34:10,782 --> 00:34:14,486 むしろ 遠ざけられた。 290 00:34:20,258 --> 00:34:28,566 母上は信勝に家を継がせたかったのじゃ。 291 00:34:34,606 --> 00:34:38,276 それでも わしは釣りを続けた。 292 00:34:38,276 --> 00:34:42,948 見事な魚を釣って浜へ戻ると 漁師たちが褒めてくれる。 293 00:34:42,948 --> 00:34:46,618 その魚を皆へ分けてやると 大喜びで市に売りに行く。 294 00:34:46,618 --> 00:34:53,491 それが楽しいのじゃ。 皆が喜ぶのは楽しい。 295 00:34:53,491 --> 00:34:55,794 それだけだ。 296 00:35:03,101 --> 00:35:06,905 申し上げます。 ただいま 竹千代様がお越しになり➡ 297 00:35:06,905 --> 00:35:11,242 殿にお目通りを願っておられます。 分かった。 通せ。 298 00:35:11,242 --> 00:35:13,578 はっ。 では 私はこれで。 299 00:35:13,578 --> 00:35:16,247 いてかまわぬ。 帰蝶もいよ。 300 00:35:16,247 --> 00:35:20,118 昨日から この城に入った松平の若君じゃ。 301 00:35:20,118 --> 00:35:23,822 気遣いは無用ぞ。 302 00:35:49,147 --> 00:35:54,285 (松平竹千代)館へ戻られたと お聞きしたので参りました。 303 00:35:54,285 --> 00:35:58,957 昨日 これをやろうとお約束頂きました。 304 00:35:58,957 --> 00:36:03,561 よろしければ お手合わせ願います。 305 00:36:03,561 --> 00:36:09,901 今は無理と仰せなら また後で参ります。 306 00:36:09,901 --> 00:36:18,576 今も 後も… そなたとは将棋はもうやらぬ。 307 00:36:18,576 --> 00:36:23,448 (竹千代)何故ですか? 童と将棋はせぬことにしたのだ。 308 00:36:23,448 --> 00:36:29,587 (竹千代)負けるのが嫌だからですか。 フッ たわけ! 309 00:36:29,587 --> 00:36:35,460 このところ 前のように遊んで頂けませぬ。 310 00:36:35,460 --> 00:36:38,463 何故ですか。 311 00:36:40,231 --> 00:36:43,935 (竹千代)近習の者が申しておりました。➡ 312 00:36:43,935 --> 00:36:52,644 信長様が 私の父 松平広忠を討ち果たしたと。 313 00:36:58,950 --> 00:37:06,558 そのことで… 私にお気遣いしておられるのですか? 314 00:37:06,558 --> 00:37:11,229 もし そうなら それは無用のことでございます。 315 00:37:11,229 --> 00:37:16,568 父上は母上を離縁し 岡崎から追い払い➡ 316 00:37:16,568 --> 00:37:21,873 今川義元についたのです。 私は大嫌いでした。 317 00:37:23,908 --> 00:37:31,249 それゆえ 討ち果たされたのは 致し方ないことと思うています。 318 00:37:31,249 --> 00:37:42,260 ♬~ 319 00:37:42,260 --> 00:37:47,132 分かった。 駒を並べよ。 320 00:37:47,132 --> 00:37:50,135 はい! 321 00:37:50,135 --> 00:37:54,272 すまぬが 座を外してくれ。 322 00:37:54,272 --> 00:38:22,901 ♬~ 323 00:38:22,901 --> 00:38:25,203 待っておれ。 324 00:38:31,576 --> 00:38:34,245 美濃には いつ帰る? 325 00:38:34,245 --> 00:38:38,917 は? 明日 また来ぬか。 326 00:38:38,917 --> 00:38:46,624 そなたと鉄砲の話をしてみたい。 どうじゃ 後で都合を知らせよ。 327 00:38:49,928 --> 00:38:52,230 はっ! 328 00:38:53,798 --> 00:38:58,937 銭はあるか? 銭は。 銭… でございますか? 329 00:38:58,937 --> 00:39:06,211 城下の宿は高い。 少し渡してやれ。 はい。 330 00:39:06,211 --> 00:39:11,216 明日だぞ。 はっ。 331 00:39:19,224 --> 00:39:22,560 まことに よう分からぬお方じゃ。 332 00:39:22,560 --> 00:39:26,431 まるで 子どものような…。 333 00:39:26,431 --> 00:39:33,571 されど いずれ この国の主におなりになる。 334 00:39:33,571 --> 00:39:37,575 いささかの不安があるといえばある。 335 00:39:39,244 --> 00:39:42,247 (帰蝶)何かと相談するやもしれぬ。 336 00:39:44,115 --> 00:39:47,118 では 今日はこれにて。 337 00:39:48,920 --> 00:39:52,257 みそを運んだ者は いずこに参りましたか? 338 00:39:52,257 --> 00:39:55,593 おや もう とうに帰りましたよ。 339 00:39:55,593 --> 00:39:57,528 帰った? 340 00:39:57,528 --> 00:40:16,281 ♬~ 341 00:40:16,281 --> 00:40:19,951 一つ そなたに聞きたいことがある。 342 00:40:19,951 --> 00:40:25,623 今 わしの兄上が今川の人質になっておる。 343 00:40:25,623 --> 00:40:33,498 その兄上と そなたを 取り替えるという話がある。 344 00:40:33,498 --> 00:40:39,971 わしは不承知じゃ。 そなたを今川へ行かせたくない。 345 00:40:39,971 --> 00:40:43,675 しかし 迷いはある。 346 00:40:51,582 --> 00:40:57,288 この話を潰せば 兄上は斬られる。 347 00:41:01,259 --> 00:41:04,562 迷いはある。 348 00:41:09,600 --> 00:41:18,276 今川は敵です。 いずれ 討つべきと思うております。➡ 349 00:41:18,276 --> 00:41:24,615 しかし その敵の顔を 見たことがありませぬ。 350 00:41:24,615 --> 00:41:31,322 懐に入り 見てみたいと思います。 351 00:41:36,961 --> 00:41:42,834 敵を討つには 敵を知れと申します。 352 00:41:42,834 --> 00:41:50,508 信長様がお迷いなら 私は どちらでも構いませぬ。 353 00:41:50,508 --> 00:42:30,181 ♬~ 354 00:42:30,181 --> 00:42:32,950 三河を救うための戦ぞ! 355 00:42:32,950 --> 00:42:36,821 今川の動きから目を離すな。 今川と織田の戦を止めたいのだ。 356 00:42:36,821 --> 00:42:40,625 戦は ここまでにしてくれと 今川に手を止めさせるほかあるまい。 357 00:42:40,625 --> 00:42:42,960 和議じゃな。 358 00:42:42,960 --> 00:42:46,831 父 利政を…。 殺せるか? 359 00:42:46,831 --> 00:42:50,301 我々武士は… 病んでいます。 360 00:42:50,301 --> 00:42:55,306 立派な征夷大将軍となろう。 さすれば 麒麟がくる。