1 00:00:04,137 --> 00:00:11,879 永禄7年 京を中心に 畿内に絶大な権力を誇った三好長慶が➡ 2 00:00:11,879 --> 00:00:14,581 その生涯を閉じた。 3 00:00:16,283 --> 00:00:24,157 将軍 足利義輝は 復権を図り 京は再び動乱の時代に入った。 4 00:00:24,157 --> 00:00:28,295 (明智十兵衛光秀)信長が上洛し 上様をお支え申すなら➡ 5 00:00:28,295 --> 00:00:31,198 大いに力になりましょう。 6 00:00:31,198 --> 00:00:35,636 (足利義輝)そなたに託す。 織田信長を連れてきてくれ。 7 00:00:35,636 --> 00:00:37,571 はっ! 8 00:00:37,571 --> 00:00:42,309 そのころ 織田信長は 美濃攻めのさなかにあった。 9 00:00:42,309 --> 00:00:48,181 しかし 国境の土豪たちに手を焼き 早3年がたとうとしていた。 10 00:00:48,181 --> 00:00:51,318 (いななき) 11 00:00:51,318 --> 00:03:32,012 ♬~ 12 00:03:43,290 --> 00:03:46,626 (織田信長) 堅苦しい挨拶は抜きじゃ。 面を上げよ。 13 00:03:46,626 --> 00:03:48,562 はっ。 14 00:03:48,562 --> 00:03:52,499 こたびは 突然 参上いたし…。 家老の林から聞いた。 15 00:03:52,499 --> 00:03:57,637 将軍 義輝様の使いで参ったそうじゃな。 はい。 16 00:03:57,637 --> 00:04:02,342 将軍の御内書を持参したとか。 はっ。 17 00:04:17,924 --> 00:04:22,262 すまぬ。 後ほど頂こう。 18 00:04:22,262 --> 00:04:25,165 そなたが参った趣旨は家老から聞いた。 19 00:04:25,165 --> 00:04:33,874 その御内書も 上洛の件と察するが 今は その話をしておる余裕がないのじゃ。 20 00:04:33,874 --> 00:04:38,278 明日 木曽川を渡って 美濃方を攻めるのだが➡ 21 00:04:38,278 --> 00:04:42,149 このところ 押したり引いたりで てこずっておる。 22 00:04:42,149 --> 00:04:44,951 ご事情は上様も承知しておられます。 23 00:04:44,951 --> 00:04:50,824 それは 越後の上杉様も 甲斐の武田様も 皆 同様にございます。 24 00:04:50,824 --> 00:04:55,595 上洛して将軍家をお支えしようとする 大名が皆無に等しく➡ 25 00:04:55,595 --> 00:04:59,966 かかる折こそ 信長様が先陣を切って 上洛を果たされれば➡ 26 00:04:59,966 --> 00:05:02,869 必ずや…。 (若侍)殿 重臣方がそろわれました。 27 00:05:02,869 --> 00:05:06,239 ここへ呼べ。 はっ。 28 00:05:06,239 --> 00:05:12,112 これから軍議じゃ。 それは頂いておこう。 おい。 29 00:05:12,112 --> 00:05:14,114 あ…。 30 00:05:23,256 --> 00:05:31,131 相すまぬが 話の続きは あの者といたしてくれ。 31 00:05:31,131 --> 00:05:33,600 これへ。 32 00:05:33,600 --> 00:05:37,470 (木下藤吉郎)はは~っ! 33 00:05:37,470 --> 00:05:43,276 まだ百人組の頭だが 面白いやつじゃ。 34 00:05:43,276 --> 00:05:47,147 使えるぞ。 35 00:05:47,147 --> 00:05:49,950 明智十兵衛殿じゃ。 36 00:05:49,950 --> 00:05:52,853 はは~っ! 37 00:05:52,853 --> 00:05:56,623 木下藤吉郎にござりまする。 38 00:05:56,623 --> 00:06:00,227 以後お見知りおきを! 39 00:06:00,227 --> 00:06:11,238 ♬~ 40 00:06:11,238 --> 00:06:14,574 よしよしよしよし… 焼きたてだな? 41 00:06:14,574 --> 00:06:17,244 汁は冷えておらぬな。 ハハハ! 42 00:06:17,244 --> 00:06:19,579 ああ もう膳はやめて頂きたい。 43 00:06:19,579 --> 00:06:21,514 わしは ここで 酒を飲むつもりもありませぬゆえ。 44 00:06:21,514 --> 00:06:24,251 はるばる 京よりお下り頂いたのです。 45 00:06:24,251 --> 00:06:26,920 殿よりご接待は抜かりなくと 命じられております。 46 00:06:26,920 --> 00:06:30,590 汁は冷えておりませぬか? ご案じなく。 47 00:06:30,590 --> 00:06:37,297 それより 将軍様の御内書は 信長様は いつ目通しされるのか。 48 00:06:46,606 --> 00:06:48,541 この歌をご存じですか? 49 00:06:48,541 --> 00:06:53,480 ん? これは 奥方 帰蝶様より教わりました。 50 00:06:53,480 --> 00:06:57,617 いずれ侍大将にでもなるつもりなら 歌の一首も詠まねばならぬ。 51 00:06:57,617 --> 00:07:00,887 「古今」もよいが 「万葉」のゾーカでも読んで➡ 52 00:07:00,887 --> 00:07:04,557 学ぶがよかろうと この歌を。 53 00:07:04,557 --> 00:07:09,896 「万葉集」は分かりましたが ゾーカが分かりませぬ。 54 00:07:09,896 --> 00:07:14,768 雑歌は 読み人知らずと申して 名もなき者の歌が多いのです。 55 00:07:14,768 --> 00:07:17,570 それゆえ分かりやすい。 56 00:07:17,570 --> 00:07:20,907 帰蝶様がさようなことを。 (藤吉郎)はい。 57 00:07:20,907 --> 00:07:25,578 その折 よく明智様のお名前を伺いました。 58 00:07:25,578 --> 00:07:32,452 幼なじみで まことに賢いお子であったと。 ハハハハ…。 59 00:07:32,452 --> 00:07:38,925 ところで 昨今 京の都で 奇々怪々な噂が流れておりますが➡ 60 00:07:38,925 --> 00:07:42,629 ご存じでございましょうか。 噂? 61 00:07:44,798 --> 00:07:55,475 恐れ多くも 将軍 義輝様が 近々 闇討ちされるという噂ですが…。 62 00:07:55,475 --> 00:07:58,278 え? (藤吉郎)おや➡ 63 00:07:58,278 --> 00:08:01,548 ご存じではございませぬか? 知らぬ。 誰が そのような…。 64 00:08:01,548 --> 00:08:05,218 闇討ちするのは 亡くなられた三好長慶様のお子➡ 65 00:08:05,218 --> 00:08:08,555 義継様と その取り巻きの衆とのことでございます。 66 00:08:08,555 --> 00:08:11,224 何故 その者たちが闇討ちを! (藤吉郎)将軍様が➡ 67 00:08:11,224 --> 00:08:15,095 幕府を勝手気ままに動かし 誰の諫言も聞き入れぬゆえ➡ 68 00:08:15,095 --> 00:08:18,565 政が滞り 皆 困っているというのですが…。 69 00:08:18,565 --> 00:08:21,468 それは違う。 上様は そういうお方ではない。 断じて違う! 70 00:08:21,468 --> 00:08:28,575 しかし 将軍様を討つ手はずは 既についていると…。 71 00:08:28,575 --> 00:08:34,280 単なる噂でござろう。 (藤吉郎)私もそう思うておりましたが…。 72 00:08:40,587 --> 00:08:45,925 近江の大名 六角様のご家臣で 私を古くから➡ 73 00:08:45,925 --> 00:08:51,931 かわいがって頂いてるお方から出た 確かな知らせでございます。 74 00:08:53,800 --> 00:08:58,271 (藤吉郎)これも噂でございますが➡ 75 00:08:58,271 --> 00:09:03,109 止めることができるのは 三好長慶様のご家老であった➡ 76 00:09:03,109 --> 00:09:09,549 大和の松永久秀様ぐらいであろう とのことでございます。 77 00:09:09,549 --> 00:09:12,452 松永様が? (藤吉郎)なぜなら➡ 78 00:09:12,452 --> 00:09:19,893 闇討ちを裏で糸引いているのが 松永様ご自身だからというのです。 79 00:09:19,893 --> 00:09:32,605 ♬~ 80 00:09:43,917 --> 00:09:46,920 誰かある。 81 00:09:50,790 --> 00:09:53,793 (ため息) 82 00:10:13,613 --> 00:10:16,316 誰かある! 83 00:10:36,836 --> 00:10:39,139 誰かある。 84 00:10:53,286 --> 00:10:58,191  回想 (義輝)さすれば 立派な征夷大将軍となろう。➡ 85 00:10:58,191 --> 00:11:01,594 世を平らかにできよう。 86 00:11:01,594 --> 00:11:06,933 さすれば 麒麟がくる。 87 00:11:06,933 --> 00:11:11,604 この世に麒麟が舞い降りると…。 88 00:11:11,604 --> 00:11:46,306 ♬~ 89 00:11:46,306 --> 00:11:50,643 (覚慶)また明日 ここへ来るがよい。 90 00:11:50,643 --> 00:11:54,314 (覚慶)すまんのう。 また来て下さい。 91 00:11:54,314 --> 00:11:56,249 また明日。➡ 92 00:11:56,249 --> 00:11:59,953 また明日。 また明日な。 93 00:12:02,922 --> 00:12:06,793 あっ お坊様だ。 本当だ お坊様だ。 94 00:12:06,793 --> 00:12:09,796 (覚慶)ハッハッハ…。 95 00:12:24,210 --> 00:12:27,146 (覚慶)また 来たのか。 96 00:12:27,146 --> 00:12:30,617 そなたも 腹をすかせておるのか。 97 00:12:30,617 --> 00:12:36,489 (駒)以前 お見かけして… 今日も おいでになるのか気になって…➡ 98 00:12:36,489 --> 00:12:40,627 申し訳ありません。 何が気になる? 99 00:12:40,627 --> 00:12:44,497 (駒)毎日 施しをされているのですか? 100 00:12:44,497 --> 00:12:49,802 あそこで待つ者がいる。 放ってはおけぬ。 101 00:13:00,113 --> 00:13:04,584 私は 医者の手伝いをしています。➡ 102 00:13:04,584 --> 00:13:08,921 戦でけがをしても 病になっても➡ 103 00:13:08,921 --> 00:13:13,259 貧しくて 医者の所へ来られない人が 大勢おります。 104 00:13:13,259 --> 00:13:18,598 私の先生は お金の払えない人の手当てもしますが➡ 105 00:13:18,598 --> 00:13:25,938 戦は絶えず 貧しい人も多く 私たちの知らない所で➡ 106 00:13:25,938 --> 00:13:29,609 たくさんの人たちが死んでゆきます。 107 00:13:29,609 --> 00:13:34,480 助けられるのは 目の前にいる人たちだけで…➡ 108 00:13:34,480 --> 00:13:37,784 それを思うと…。 109 00:13:41,954 --> 00:13:46,826 お坊様は そういうことを どうお思いになるのか…➡ 110 00:13:46,826 --> 00:13:49,128 お聞きしたくて…。 111 00:13:52,298 --> 00:13:56,636 私も 同じことを思う…。 112 00:13:56,636 --> 00:14:02,241 あそこに集まる者以外の者を 私は知らない。 113 00:14:02,241 --> 00:14:06,913 私が施せるのは 僅かな者たちだけ。 114 00:14:06,913 --> 00:14:10,783 仏のように万民に施すことはできぬ。 115 00:14:10,783 --> 00:14:13,586 私は 無力だ。 116 00:14:13,586 --> 00:14:16,289 お坊様も? 117 00:14:17,924 --> 00:14:19,926 そう思う。 118 00:14:21,594 --> 00:14:29,469 やはり 麒麟がくる世にならねば 皆が同様に豊かになることはない。 119 00:14:29,469 --> 00:14:31,938 麒麟!? 120 00:14:31,938 --> 00:14:36,809 存じておるか。 誰も見たことのない生き物だ。 121 00:14:36,809 --> 00:14:40,279 戦のない穏やかな世に現れるという…。 122 00:14:40,279 --> 00:14:42,949 存じております! そうか。 123 00:14:42,949 --> 00:14:45,284 私の父上がな よう仰せられていた。 124 00:14:45,284 --> 00:14:47,620 麒麟のくる世を作りたいと。 125 00:14:47,620 --> 00:14:49,956 お父上様が? (覚慶)うむ。 126 00:14:49,956 --> 00:14:59,632 父上はな将軍であった。 だが ついに戦を止めることはできなかった。 127 00:14:59,632 --> 00:15:04,637 私の兄上も… 今日まで…。 128 00:15:11,577 --> 00:15:15,448 すまぬが 一緒に市の方まで歩いてくれぬか。 129 00:15:15,448 --> 00:15:19,452 市へ? うむ。 一人で市を歩いたことがない。 130 00:15:19,452 --> 00:15:23,456 久しぶりに行ってみたい。 はあ…。 131 00:15:25,124 --> 00:15:29,929 後をつけてくる者がいるが 振り返ってはならぬ。 132 00:15:29,929 --> 00:15:31,864 走るぞ! 133 00:15:31,864 --> 00:15:33,866 ごめんなさい! 134 00:15:35,802 --> 00:15:38,104 追え 追え! 135 00:15:40,273 --> 00:15:44,143 待て! 逃がすな! 136 00:15:44,143 --> 00:15:46,446 おい 待て! 137 00:15:48,147 --> 00:15:51,150 おっ… 邪魔だ! あっちだ! 138 00:15:52,852 --> 00:15:55,154 ここじゃ! 139 00:15:58,291 --> 00:16:00,993 ⚟おのれ どこじゃ! 140 00:16:03,563 --> 00:16:07,900 どこじゃ! くそっ! 捜せ! 141 00:16:07,900 --> 00:16:09,902 どこじゃ! 142 00:16:12,772 --> 00:16:15,575 驚かせて すまなかった。 143 00:16:15,575 --> 00:16:19,445 いろいろな事情があり 妙な者につけられたりする。 144 00:16:19,445 --> 00:16:22,448 もう案ずることはない。 145 00:16:22,448 --> 00:16:26,219 よし 行こう。 146 00:16:26,219 --> 00:16:28,588 はあ…。 147 00:16:28,588 --> 00:16:30,923 (覚慶)ハハハ…。 おお。 148 00:16:30,923 --> 00:16:33,826 (駒)大きな亀ですね。 (覚慶)うむ。 149 00:16:33,826 --> 00:16:37,797 これは 相当 年寄りだな。 1,000年余りは生きている。 150 00:16:37,797 --> 00:16:40,600 亀の年が お分かりになるのですか? 151 00:16:40,600 --> 00:16:44,470 この目の周りのシワを見るのじゃ。 152 00:16:44,470 --> 00:16:49,275 シワですか…? うそに決まっておろう。 153 00:16:49,275 --> 00:16:52,578 ハッハッハッハ…! 154 00:16:55,615 --> 00:17:13,566 ♬~ 155 00:17:13,566 --> 00:17:18,437 (芸人)さて ご一緒に! 参られよ 参られよ 参られよ。 156 00:17:18,437 --> 00:17:20,907 さあ 参られよ! 157 00:17:20,907 --> 00:17:50,269 ♬~ 158 00:17:50,269 --> 00:17:53,940 (細川藤孝)門跡様 こんな所で1人歩きは 危のうございます。 159 00:17:53,940 --> 00:17:56,609 一乗院までお送りいたします。 160 00:17:56,609 --> 00:18:00,212 私に構うな。 寺へは勝手に帰る。 161 00:18:00,212 --> 00:18:03,883 先ほどから えたいの知れぬ者たちが うろついております。➡ 162 00:18:03,883 --> 00:18:06,218 ご一緒させて頂きます。 163 00:18:06,218 --> 00:18:09,121 そなたたちは 兄上のお側衆ではないか。 164 00:18:09,121 --> 00:18:11,891 京へ戻って兄上をお守りすればよかろう。 165 00:18:11,891 --> 00:18:14,560 上様は三淵たちがお守りしております。 166 00:18:14,560 --> 00:18:18,864 ともあれ 寺へお戻り頂きとうございます。 167 00:18:49,929 --> 00:18:51,864 あっ。 168 00:18:51,864 --> 00:18:57,269 (伊呂波太夫)捜したよ。 宿で 待っていたのに なかなか戻らないから…。 169 00:18:57,269 --> 00:19:00,539 ごめんなさい。 大層いいお坊様がいらっしゃったので➡ 170 00:19:00,539 --> 00:19:04,844 お話 していたら…。 お坊様? 171 00:19:06,412 --> 00:19:11,550 あ そうそう 駒ちゃん 私にくれた あの丸薬 まだある? 172 00:19:11,550 --> 00:19:13,886 今は持ってません。 173 00:19:13,886 --> 00:19:18,224 この近くの 永久寺というお寺のお坊様がね➡ 174 00:19:18,224 --> 00:19:21,894 昨日 おなかが痛いとおっしゃるから あの丸薬を差し上げたの。 175 00:19:21,894 --> 00:19:26,232 しばらくしたら治ったって 喜んで下さって➡ 176 00:19:26,232 --> 00:19:28,901 あれ もう少し頂けないかと頼まれたの。 177 00:19:28,901 --> 00:19:32,772 はあ… 京へ戻れば まだ少しありますが。 178 00:19:32,772 --> 00:19:38,244 ほかのお坊様たちも欲しいと おっしゃっているそうだから➡ 179 00:19:38,244 --> 00:19:43,582 随分 売れるかもしれないよ。 売る? 180 00:19:43,582 --> 00:19:47,920 私は あれは 医者へ来られない人に 差し上げようかと。 181 00:19:47,920 --> 00:19:52,591 はあ! 駄目駄目。 安くてもいいから売るのよ。 182 00:19:52,591 --> 00:19:55,261 作る手間賃 取り戻さなくちゃ。➡ 183 00:19:55,261 --> 00:20:00,566 お金のことは私に任せて。 とにかく 京へ戻りましょう。 184 00:20:21,287 --> 00:20:26,158 (家臣)殿は ただいま 渡来物の 焼き物のよしあしを見ておられます。➡ 185 00:20:26,158 --> 00:20:29,161 終わるまで しばし お待ちを…。 186 00:20:51,984 --> 00:21:03,596 ♬~ 187 00:21:03,596 --> 00:21:08,267 (松永久秀)よう しばらくぶりじゃの。➡ 188 00:21:08,267 --> 00:21:12,571 入れ 入れ入れ。 ハハハッ。 189 00:21:16,609 --> 00:21:21,947 これは 堺の商人が持ち込んできた 茶入れのつぼだ。 190 00:21:21,947 --> 00:21:27,620 どこぞの田舎大名に 名器と称して高く売りつけたいのだが➡ 191 00:21:27,620 --> 00:21:31,957 同じ形のものが3つあっては ありがたみに欠ける。➡ 192 00:21:31,957 --> 00:21:38,831 そこで わしの目で1つを選び 残りは捨ててくれと頼まれたのじゃ。➡ 193 00:21:38,831 --> 00:21:44,537 こう見えても 近頃 わしは 焼き物の 目利きとして名が通っておるのじゃ。 194 00:21:44,537 --> 00:21:50,309 わしが 名器と言えば 名器になるのじゃ。 ハッハッハッハ…。 195 00:21:50,309 --> 00:21:54,647 私が 今日 参りましたのは。 (松永)物の値打ちの話をしておる。 196 00:21:54,647 --> 00:22:00,920 物には もともと値打ちがあるわけではない。 197 00:22:00,920 --> 00:22:05,791 物の値打ちは人が作るものじゃ。 198 00:22:05,791 --> 00:22:13,499 将軍の値打ちもそうだ。 人が決め 人が作っていくのだ。 199 00:22:15,935 --> 00:22:20,606 (松永)人が将軍にふさわしいと思えば 値打ちは上がり➡ 200 00:22:20,606 --> 00:22:24,276 ふさわしくないと思えば値打ちは下がる。 201 00:22:24,276 --> 00:22:30,282 下がれば 壊したくなる。 202 00:22:33,285 --> 00:22:36,956 それゆえ 将軍 義輝様を討とうと 企まれましたか? 203 00:22:36,956 --> 00:22:42,294 そなたが義輝様を大事にしておるのは よく承知しておる。 204 00:22:42,294 --> 00:22:47,166 そなたにとって 義輝様は このつぼじゃ。 205 00:22:47,166 --> 00:22:51,637 残すべき美しき物じゃ。 206 00:22:51,637 --> 00:22:53,639 ならば! 207 00:22:55,307 --> 00:23:00,145 討ちはせん。 都から追い払う。 それだけじゃ。 208 00:23:00,145 --> 00:23:03,582 何故! (松永)周りをよく見よ! 209 00:23:03,582 --> 00:23:09,922 義輝様を支えるために 一体 どの大名が上洛した? 210 00:23:09,922 --> 00:23:14,793 上杉も武田も朝倉も毛利も 誰一人として 動かぬではないか。 211 00:23:14,793 --> 00:23:20,266 幕府の身内の者でさえ 義輝様のご勝手ぶりに あきれ果てておる。 212 00:23:20,266 --> 00:23:26,138 三好長慶様がご存命の間は 長慶様が政の要所を押さえてこられた。 213 00:23:26,138 --> 00:23:30,909 だが もはや それもない。 このままでは 世は治まらんのだ。 214 00:23:30,909 --> 00:23:35,614 では松永様が 長慶様に代わって 上様を お支えすればよろしいではありませぬか! 215 00:23:35,614 --> 00:23:38,284 そうしてきた。 216 00:23:38,284 --> 00:23:43,956 だが… もはや疲れた。 217 00:23:43,956 --> 00:23:47,826 疲れた? (松永)わしの息子も➡ 218 00:23:47,826 --> 00:23:54,300 長慶様のご子息も 三好の一族も 皆 義輝様を除こうと動き出しておる。➡ 219 00:23:54,300 --> 00:23:58,637 それを止める力は わしにはない。 220 00:23:58,637 --> 00:24:03,475 義輝様を除いたとしても 我ら武士には 棟梁たる将軍が➡ 221 00:24:03,475 --> 00:24:07,246 欠かせぬではありませぬか! それをどうしようと! 222 00:24:07,246 --> 00:24:12,551 細川殿! 入られよ。 223 00:24:22,795 --> 00:24:29,935 (藤孝)十兵衛殿 何を申し上げても無念の極みで➡ 224 00:24:29,935 --> 00:24:35,808 どう解き明かせばよいか 言葉がありませぬ。 225 00:24:35,808 --> 00:24:38,277 藤孝殿…。 226 00:24:38,277 --> 00:24:43,615 都の人心は 義輝様から離れてしまいました。 227 00:24:43,615 --> 00:24:48,954 この数年… 幕府も見限る者が多く…。 228 00:24:48,954 --> 00:24:56,628 私も… 都を離れ 次の将軍を… お助けせねばと…。 229 00:24:56,628 --> 00:25:00,499 次の将軍!? 230 00:25:00,499 --> 00:25:02,801 (藤孝)やむなく! 231 00:25:06,238 --> 00:25:10,909 (松永)値打ちは値打ちとして…➡ 232 00:25:10,909 --> 00:25:18,917 美しい物は やはり美しい。 233 00:25:21,253 --> 00:25:25,557 息子たちには 討つなと申してある。 234 00:25:32,598 --> 00:25:35,901 案ずるな。 235 00:26:11,904 --> 00:26:14,907 (侍女)お越しにございます。 236 00:26:28,253 --> 00:26:32,958 (義輝)十兵衛 近う。 237 00:26:49,942 --> 00:26:53,245 (義輝)楽にいたせ。 238 00:26:54,813 --> 00:26:56,815 はっ。 239 00:26:56,815 --> 00:27:01,520 (義輝)長旅… ご苦労であった。 240 00:27:06,225 --> 00:27:09,228 はっ! 241 00:27:11,897 --> 00:27:18,203 (義輝)尾張の織田も… 上洛は無理か…。 242 00:27:20,572 --> 00:27:27,446 (義輝)やむをえぬ。 皆 戦に忙しいのじゃ。➡ 243 00:27:27,446 --> 00:27:35,587 もはや 和議を命じても 誰も応えぬ。 244 00:27:35,587 --> 00:27:49,601 都が これほどさみしい所とは… 知らなかった。 245 00:27:49,601 --> 00:28:00,546 ♬~ 246 00:28:00,546 --> 00:28:07,886 今朝 起きて 風の音に驚いた。➡ 247 00:28:07,886 --> 00:28:12,190 古の歌のとおりじゃ。 248 00:28:14,560 --> 00:28:26,872 「秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞ」…。 249 00:28:29,575 --> 00:28:35,881 (義輝)もはや その季節じゃ。 250 00:28:38,917 --> 00:28:48,260 夏は終わった… わしの夏は…。 251 00:28:48,260 --> 00:28:51,263 上様! 252 00:28:53,932 --> 00:28:59,938 (義輝)十兵衛 越前へ帰れ。 253 00:29:10,415 --> 00:29:16,555 短くはあったが よう わしに仕えてくれた。 254 00:29:16,555 --> 00:29:20,258 礼を言うぞ。 255 00:29:22,227 --> 00:29:25,897 (義輝)欲を言えば➡ 256 00:29:25,897 --> 00:29:32,204 もそっと早うに会いたかった。 257 00:29:33,772 --> 00:29:36,775 遅かった! 258 00:29:40,445 --> 00:29:43,749 上様…。 259 00:29:47,919 --> 00:29:51,223 私も…! 260 00:29:56,928 --> 00:30:00,632 遅かった…。 261 00:30:06,605 --> 00:30:13,278 帰って 朝倉に伝えよ。 将軍は 息災であると。 262 00:30:13,278 --> 00:30:21,586 この後も 生ある限り 幕府を支えてみせると…。 263 00:30:25,290 --> 00:30:27,993 はっ! 264 00:30:34,299 --> 00:30:43,008 十兵衛 また会おう。 265 00:30:46,645 --> 00:30:49,348 はっ。 266 00:31:03,595 --> 00:31:10,902 (茶の振売)一服一銭 よい茶でござる。 茶はいかがかな。 267 00:31:13,605 --> 00:31:17,943 (望月東庵)こんな怪しげな薬を作る者は 要らぬわ! 268 00:31:17,943 --> 00:31:20,946 出ていきます。 お世話になりました! 269 00:31:39,965 --> 00:31:42,634 (振売)お駒さん。➡ 270 00:31:42,634 --> 00:31:48,306 どうしてこんな所に? 家へ入ればいいではないか。 271 00:31:48,306 --> 00:31:53,178 ここしばらく 顔を見なかったが…。 272 00:31:53,178 --> 00:31:58,316 東庵先生とけんかしてしまって…。 273 00:31:58,316 --> 00:32:02,587 ハハッ それでか。 274 00:32:02,587 --> 00:32:07,259 東庵先生が大けがをして 近所の者が大騒ぎをした時➡ 275 00:32:07,259 --> 00:32:10,595 お駒さん いなかったものなあ。 え? 276 00:32:10,595 --> 00:32:13,932 知らないだろ。 おとといの明け方 盗賊が入って➡ 277 00:32:13,932 --> 00:32:17,602 先生のここ たたき折って逃げたんだ。 えっ!? 278 00:32:17,602 --> 00:32:21,273 家中 荒らされて 金めの物 全部持ってかれたそうだ。➡ 279 00:32:21,273 --> 00:32:23,942 大変だったんだぞ。 280 00:32:23,942 --> 00:32:26,645 先生…! 281 00:32:28,280 --> 00:32:31,283 (駒)盗賊に入られたと…! 282 00:32:33,151 --> 00:32:37,289 (東庵)湯を これへ入れてくれ。 283 00:32:37,289 --> 00:32:39,291 はい。 284 00:32:46,631 --> 00:32:52,504 (東庵)何もかも持っていかれた。 金も… 服も…➡ 285 00:32:52,504 --> 00:32:58,810 すずりや墨までも… 全部! 286 00:33:00,579 --> 00:33:03,915 腕… 痛っ…。 287 00:33:03,915 --> 00:33:11,923 腕が使えぬゆえ… 療治ができぬ。 288 00:33:14,259 --> 00:33:22,601 双六で百貫負けて以来の大惨事じゃ! 289 00:33:22,601 --> 00:33:26,905 そんなに負けたことがあるのですか!? 290 00:33:28,940 --> 00:33:35,614 そなたが生まれる随分前の話じゃ。 はあ~…。 291 00:33:35,614 --> 00:33:38,316 (太夫)駒ちゃん いますか? 292 00:33:40,285 --> 00:33:44,956 あっ よかった 駒ちゃん いた。 293 00:33:44,956 --> 00:33:49,628 おや その腕 どうなさいました? 294 00:33:49,628 --> 00:33:57,502 人間 長生きすると いろんなことがあるのだ。 295 00:33:57,502 --> 00:34:04,142 そうですよ。 駒ちゃんの作った丸薬が お坊様の間で評判になるなんて➡ 296 00:34:04,142 --> 00:34:08,580 思いも寄りませんでした。 いろいろありますね。 297 00:34:08,580 --> 00:34:12,450 丸薬? 太夫 私 やはり あの薬➡ 298 00:34:12,450 --> 00:34:15,453 お坊様に売るのはよします。 お断りして下さい。 299 00:34:15,453 --> 00:34:18,924 そんなこと言わないで。 永久寺だけじゃないのよ。 300 00:34:18,924 --> 00:34:24,596 さっき近所の神社へ行ったら あの薬で腹痛が治ったって➡ 301 00:34:24,596 --> 00:34:29,267 宮司様にお礼を言われて 氏子たちにも分けてやりたいから➡ 302 00:34:29,267 --> 00:34:31,202 もっともらえないかと 頼まれてきたんだから。 303 00:34:31,202 --> 00:34:35,607 宮司様にもお渡ししたのですか! 困ります。 304 00:34:35,607 --> 00:34:39,277 それに 先生は あの薬がお嫌いなんです。 305 00:34:39,277 --> 00:34:44,616 あんなもので病が治るのなら困らないと。 それに 私➡ 306 00:34:44,616 --> 00:34:49,287 あれは お医者にかかれない人たちのため だけにと思うて作ってみたのです。 307 00:34:49,287 --> 00:34:54,159 (太夫)そうですよ。 お坊様も宮司様も➡ 308 00:34:54,159 --> 00:34:58,630 そういう人たちに配ってやりたいからと おっしゃっているんですよ。➡ 309 00:34:58,630 --> 00:35:04,903 永久寺は 一袋に5粒入れてもらって 500人分。 310 00:35:04,903 --> 00:35:09,774 神社は 200人分。 締めて700人分。 311 00:35:09,774 --> 00:35:14,913 700袋も!? その寺や神社は➡ 312 00:35:14,913 --> 00:35:21,586 一袋 いくらで欲しいと 申しておるのじゃ? 313 00:35:21,586 --> 00:35:25,256 10文です。 ということは➡ 314 00:35:25,256 --> 00:35:32,931 700袋で 7千文。 7貫以上で売れるのか! 315 00:35:32,931 --> 00:35:37,268 (太夫)これは 手付けだそうです。➡ 316 00:35:37,268 --> 00:35:45,944 私は口利き料で ここから 2割差し引かせて頂きますけど。 317 00:35:45,944 --> 00:35:49,614 口利き料が2割とは! 318 00:35:49,614 --> 00:35:53,284 手付けなんて困ります。 そうですよね 先生。 319 00:35:53,284 --> 00:35:58,957 駄目なら返してもいいんですよ。 一応 預かってきただけですから。 320 00:35:58,957 --> 00:36:01,559 返す? 返しましょう。 321 00:36:01,559 --> 00:36:07,232 作るのは駒ちゃんだから どうしても売りたくないというのなら➡ 322 00:36:07,232 --> 00:36:09,167 そうしましょう。 323 00:36:09,167 --> 00:36:12,570 ああ… ちょっと待ちなさい。 324 00:36:12,570 --> 00:36:20,445 今… 駒も わしも… 米が要る。 325 00:36:20,445 --> 00:36:27,585 みそも要る。 もとより本意ではないが…➡ 326 00:36:27,585 --> 00:36:33,258 駒… とりあえず 700袋だけ作ってみるか? 327 00:36:33,258 --> 00:36:37,128 え? とりあえずじゃ。 328 00:36:37,128 --> 00:36:40,598 あ… そう… しますか? 329 00:36:40,598 --> 00:36:46,471 ハハッ… では 手付金は 頂いておこう。 330 00:36:46,471 --> 00:36:50,775 承知いたしました! ん… うむ。 331 00:37:22,574 --> 00:37:29,581 夏は終わった… わしの夏は…。 332 00:37:32,250 --> 00:37:42,260 ♬~(牧の歌声) 333 00:37:42,260 --> 00:37:47,932 (常)お岸様 そのように毎日水をかけては 枯れてしまいますよ。 334 00:37:47,932 --> 00:37:56,608 ♬~(歌声) 335 00:37:56,608 --> 00:38:12,557 ♬~ 336 00:38:12,557 --> 00:38:17,862 (常)殿! 殿がお帰りでございますよ! 337 00:38:21,232 --> 00:38:23,902 ただいま帰りました。 338 00:38:23,902 --> 00:38:27,238 長らく留守をいたしました。 339 00:38:27,238 --> 00:38:30,909 (岸)お帰りなさいまし。 340 00:38:30,909 --> 00:38:37,248 (熙子)お岸。 お父上がお帰りになったのに 泣くことはありますまい。 341 00:38:37,248 --> 00:38:40,919 驚かせたかな? 342 00:38:40,919 --> 00:38:46,791 (牧)お帰りなさい。 ようご無事で! 343 00:38:46,791 --> 00:38:52,497 お帰りをお待ちしておりました。 うれしうございます。 344 00:38:56,935 --> 00:39:01,940 お許し下さい。 私も驚きましたゆえ。 345 00:39:03,541 --> 00:39:09,547 長く留守をした。 許せ。 346 00:39:21,092 --> 00:39:25,797 (熙子)お留守の間 月末には 朝倉様のご家臣がお見えになり➡ 347 00:39:25,797 --> 00:39:31,236 金子を置いてゆかれました。 うむ。 348 00:39:31,236 --> 00:39:36,541 先ほど ご家老の山崎様から そのことは聞いた。 349 00:39:40,245 --> 00:39:44,582 (熙子)お殿様にはお目にかかれましたか? 350 00:39:44,582 --> 00:39:52,257 じきじきにお話ができ 京のことなどを申し上げてまいった。 351 00:39:52,257 --> 00:39:55,260 (熙子)それは よろしうございました。 352 00:39:56,928 --> 00:40:05,637 義景様は 京のことは 全て思うていたとおりだと仰せられた。 353 00:40:08,539 --> 00:40:12,477 いつもどおりのことを仰せられた。 354 00:40:12,477 --> 00:40:23,955 国の外に振り回されるな。 野心を持たず この国にじっとしておれ。 355 00:40:23,955 --> 00:40:27,258 妻や子と…。 356 00:40:31,829 --> 00:40:36,534 自分のうちが 一番よいのだと。 357 00:40:39,504 --> 00:40:50,815 先ほど 家の庭に立った時 そうかもしれぬと思うた。 358 00:41:00,258 --> 00:41:06,965 (熙子)そう思うて頂けて うれしうございます。 359 00:41:08,599 --> 00:41:11,269 ただ…➡ 360 00:41:11,269 --> 00:41:19,610 美濃では 織田様と斎藤様が 激しい戦のさなかでございます。➡ 361 00:41:19,610 --> 00:41:25,950 今 こうしていても 戦で誰かが命を落としている。➡ 362 00:41:25,950 --> 00:41:31,656 そう考えると つろうございます。 363 00:41:34,625 --> 00:41:40,298 どの国からも 戦がなくなればよい。 364 00:41:40,298 --> 00:41:44,969 お岸や たまが大きうなった時➡ 365 00:41:44,969 --> 00:41:49,640 穏やかな世であればよい。 366 00:41:49,640 --> 00:41:52,944 そう思うのです。 367 00:42:10,595 --> 00:42:16,467 翌年 永禄8年 京で一大事変が起こった。 368 00:42:16,467 --> 00:42:21,239 病死した三好長慶の子 義継率いる軍勢が➡ 369 00:42:21,239 --> 00:42:28,246 将軍 足利義輝のいる 二条御所を襲撃したのである。 370 00:42:30,281 --> 00:42:35,153 将軍の器か否か… お主のその目で確かめてこい と。 371 00:42:35,153 --> 00:42:38,956 死にとうはない。 まこと 将軍のお器であったか? 372 00:42:38,956 --> 00:42:41,859 死にとうない…。 次なる将軍の大任。 373 00:42:41,859 --> 00:42:46,631 死にとうはない。 次の神輿に誰を担ぐか。 374 00:42:46,631 --> 00:42:51,302 死ぬのが怖い。 征夷大将軍職に 足利義栄を。 375 00:42:51,302 --> 00:42:55,306 将軍がお討ち死にあそばされた と。 何故じゃ!