1 00:00:02,202 --> 00:00:06,940 <ここは 江戸の東の外れ 本所割下水。➡ 2 00:00:06,940 --> 00:00:13,747 小さな武家屋敷と町家が こまこまと軒を連ねる町です> 3 00:00:33,634 --> 00:00:37,638 家内円満 無病息災。 4 00:00:40,140 --> 00:00:45,145 (鈴の音) 5 00:00:49,650 --> 00:00:57,658 勝家先祖代々一家一門の諸精霊 追善供養。 6 00:01:00,260 --> 00:01:03,263 南無妙法蓮華経…。 7 00:01:03,263 --> 00:01:07,034 <勝家は 代々 徳川家に仕える ご直参で➡ 8 00:01:07,034 --> 00:01:12,606 天正3年 長篠の合戦の折には 功名手柄を挙げたとも伝わる➡ 9 00:01:12,606 --> 00:01:14,541 武門の家柄。➡ 10 00:01:14,541 --> 00:01:18,045 しかし それから250年…> 11 00:01:21,949 --> 00:01:25,619 <ただいまの当主は 婿養子の勝 小吉。➡ 12 00:01:25,619 --> 00:01:30,791 家督を継いでから長らく 小普請組で くすぶっています> 13 00:01:30,791 --> 00:01:35,963 ヤブ蚊のやつ もう出てきやがった。 14 00:01:35,963 --> 00:01:39,299 <小普請組とは 戦のない この時代➡ 15 00:01:39,299 --> 00:01:42,803 お役目に就けない幕臣たちの 編入先です。➡ 16 00:01:42,803 --> 00:01:47,674 家禄はあれど お役料は頂けません> 17 00:01:47,674 --> 00:01:50,444 (おならの音) 18 00:01:50,444 --> 00:01:54,147 今朝も いい調子だ。 なあ 麟太郎。 19 00:01:54,147 --> 00:01:56,450 はい 父上。 20 00:01:56,450 --> 00:01:59,319 <この少年 後の日本の転換期に➡ 21 00:01:59,319 --> 00:02:02,589 その名をとどろかす 大人物となるのですが➡ 22 00:02:02,589 --> 00:02:06,093 それは まだ ずっと先の話> 23 00:02:08,762 --> 00:02:10,764 あら まあ。 24 00:02:18,472 --> 00:02:24,111 <小吉の女房は 勝家の家付き娘で 名は お信。➡ 25 00:02:24,111 --> 00:02:27,948 ただいま 貧乏所帯をやりくり中> 26 00:02:27,948 --> 00:02:40,160 ♬~ 27 00:02:46,133 --> 00:02:48,635 あれ? 味噌汁だ。 28 00:02:48,635 --> 00:02:50,971 すまし汁かと思いました。 29 00:02:50,971 --> 00:02:52,906 ごめんなさい。 味噌を切らしていること➡ 30 00:02:52,906 --> 00:02:54,841 うっかり忘れていて。 31 00:02:54,841 --> 00:02:57,644 麟太郎 侍の子は➡ 32 00:02:57,644 --> 00:03:00,547 食べ物に 文句を言ってはなりませぬ。 33 00:03:00,547 --> 00:03:02,482 はい。 34 00:03:02,482 --> 00:03:06,086 勝家は やりくりが苦しいのです。 35 00:03:06,086 --> 00:03:10,957 婿殿が いつまで たっても 小普請組から抜けられず➡ 36 00:03:10,957 --> 00:03:14,394 お役料が頂けないのですから。 37 00:03:14,394 --> 00:03:16,329 おばば様。 38 00:03:16,329 --> 00:03:22,936 味噌の香りが かすかにするだけでも ありがたいと思わねばなりませぬよ。 39 00:03:22,936 --> 00:03:26,606 おい お信。 今朝の飯は やけに やわいな。 40 00:03:26,606 --> 00:03:28,608 そうですか? 41 00:03:30,477 --> 00:03:33,380 あっ 水加減 しくじったかしら。 42 00:03:33,380 --> 00:03:35,315 まあ いいわさ。 43 00:03:35,315 --> 00:03:42,155 歯の土手がぐらついてる年寄りの口にゃ 硬い飯は 口に合わねえだろうからな。 44 00:03:42,155 --> 00:03:44,624 歯が 何ですって? 45 00:03:44,624 --> 00:03:49,296 まだまだ丈夫ですよ。 そなたには負けぬ。 46 00:03:49,296 --> 00:03:51,965 (咀嚼音) 47 00:03:51,965 --> 00:03:54,868 いやいや 音が違います。 48 00:03:54,868 --> 00:03:58,305 丈夫な歯は こうです。 49 00:03:58,305 --> 00:04:00,907 どこが違うのです。 50 00:04:00,907 --> 00:04:08,081 違いが聞き分けられぬとは お耳も遠くなられましたか。 51 00:04:08,081 --> 00:04:13,954 フフフ… お二人とも よい音ですよ。 52 00:04:13,954 --> 00:04:18,391 お代わり。 はい。 53 00:04:18,391 --> 00:04:21,895 (小声で)今日の勝負は引き分け。 54 00:04:24,197 --> 00:04:26,266 旦那様 そろそろ お支度を。 55 00:04:26,266 --> 00:04:28,769 まあ もう六ツ半? 56 00:04:28,769 --> 00:04:30,971 (利平次)はい。 いかん! 57 00:04:37,110 --> 00:04:40,413 行ってらっしゃいませ。 行ってらっしゃいませ。 58 00:04:42,282 --> 00:04:46,786 今日こそは よい知らせがありますように。 59 00:04:54,628 --> 00:04:57,130 負けるか~! 60 00:05:03,069 --> 00:05:09,576 <次々と現れた侍たちは 小吉と同様 ただいま就活中の「あぶれ者」。➡ 61 00:05:09,576 --> 00:05:19,085 向かう先は 赤坂喰違外にある 小普請組支配 大久保上野介のお屋敷です> 62 00:05:32,599 --> 00:05:35,936 (大久保)止まれ。 はっ! 63 00:05:35,936 --> 00:05:40,106 (大久保)勝か? ははっ! 64 00:05:40,106 --> 00:05:43,977 近頃の出精 大儀である。 65 00:05:43,977 --> 00:05:47,848 辛抱の木に花が咲くというぞ。 66 00:05:47,848 --> 00:05:51,818 もう一押しじゃ。 な。 67 00:05:51,818 --> 00:05:54,020 は? 68 00:05:56,289 --> 00:05:59,492 (大久保)出せ。 はっ! 69 00:06:09,236 --> 00:06:14,040 しめた。 とうとう運が向いてきた。 70 00:06:18,578 --> 00:06:24,384 (登勢)お信 塩を持っておいで。 71 00:06:24,384 --> 00:06:27,187 は~い ただいま。 72 00:06:30,090 --> 00:06:32,592 フフ… どこに出ましたか? 73 00:06:32,592 --> 00:06:36,596 それ そこ。 手水鉢。 74 00:06:38,265 --> 00:06:40,934 早く 塩をおかけなさい。 75 00:06:40,934 --> 00:06:43,603 こんな小さいものの どこが怖いのでしょう。 76 00:06:43,603 --> 00:06:47,474 ナメクジとヤブ蚊は 本所の名物ですよ。 77 00:06:47,474 --> 00:06:51,778 怖いのではない。 気味が悪いだけです。 78 00:06:54,247 --> 00:06:57,617 あ… 虫の知らせ。 79 00:06:57,617 --> 00:07:01,221 はい? 虫が知らせるというではありませんか。 80 00:07:01,221 --> 00:07:03,723 今日は 見逃してやりましょう。 81 00:07:03,723 --> 00:07:06,760 何か よいことの前触れのような気が…。 82 00:07:06,760 --> 00:07:08,895 ばかなことを。 83 00:07:08,895 --> 00:07:14,067 「虫の知らせ」の虫とは 三尸といって 人の体内にいるものです。 84 00:07:14,067 --> 00:07:17,570 しかも 災難に遭うとか 人が亡くなるとか➡ 85 00:07:17,570 --> 00:07:19,906 よくない時に使う言葉ですよ。 86 00:07:19,906 --> 00:07:23,376 でも 朝蜘蛛は福が来るといいますし➡ 87 00:07:23,376 --> 00:07:27,247 よい虫の知らせもあるのではないですか? 88 00:07:27,247 --> 00:07:29,182 もう よい。 89 00:07:29,182 --> 00:07:32,919 利平次。 90 00:07:32,919 --> 00:07:35,822 まっ もう来た。 一大事にございます! 91 00:07:35,822 --> 00:07:38,258 大久保様… ご支配様が➡ 92 00:07:38,258 --> 00:07:41,761 旦那様に お声をかけられたそうにございます。 93 00:07:41,761 --> 00:07:43,697 (お信 登勢)お声を? 94 00:07:43,697 --> 00:07:45,932 「辛抱の木に花が咲く」と。 95 00:07:45,932 --> 00:07:52,105 これは 御番入りがかなう 前触れではありますまいか。 96 00:07:52,105 --> 00:07:54,040 まさしく。 97 00:07:54,040 --> 00:07:56,042 当たった…。 98 00:08:01,781 --> 00:08:05,285 よい虫の知らせ。 99 00:08:08,054 --> 00:08:11,091 <小吉の実家 男谷家から 呼び出しがあったのは➡ 100 00:08:11,091 --> 00:08:13,860 それから間もなくのこと> 101 00:08:13,860 --> 00:08:15,862 (せきばらい) 102 00:08:18,365 --> 00:08:22,068 申し伝えることがある。 103 00:08:22,068 --> 00:08:26,573 小普請組支配 大久保様のご推挙で➡ 104 00:08:26,573 --> 00:08:32,379 そなたをお役目に取り立てる話が 進んでおる。 105 00:08:32,379 --> 00:08:37,584 やっぱり! これ。 神妙に承れ。 106 00:08:37,584 --> 00:08:40,086 2,000人余りの小普請組の者が➡ 107 00:08:40,086 --> 00:08:42,922 皆 御番入りを願う中➡ 108 00:08:42,922 --> 00:08:46,393 お取り立てとなるのは まことに ありがたいことだぞ。 109 00:08:46,393 --> 00:08:48,328 ははっ。 110 00:08:48,328 --> 00:08:52,599 いやぁ 2年このかた➡ 111 00:08:52,599 --> 00:08:57,470 ご支配や お歴々の屋敷に 日参したかいがあったのう。 112 00:08:57,470 --> 00:09:00,206 はっ。 113 00:09:00,206 --> 00:09:04,210 お信にも 長々と苦労をかけた。 114 00:09:04,210 --> 00:09:06,880 いいえ 私は何も…。 115 00:09:06,880 --> 00:09:11,351 こたびは 御徒士へのご推挙と相なる。 116 00:09:11,351 --> 00:09:17,157 お役料は少ないが まずは 小普請組を抜け出すことが肝要。 117 00:09:17,157 --> 00:09:19,893 御徒士… ですか。 118 00:09:19,893 --> 00:09:25,231 (彦四郎)近々 大久保様と 御徒士頭 御徒士組頭を招いて➡ 119 00:09:25,231 --> 00:09:27,167 顔合わせの酒宴を開く。 120 00:09:27,167 --> 00:09:32,105 そこで もう一押しすれば 御番入りは まず間違いない。 121 00:09:32,105 --> 00:09:37,243 御徒士頭というのは 石川太郎左衛門ですか? 122 00:09:37,243 --> 00:09:39,579 (彦四郎)そうだ。 123 00:09:39,579 --> 00:09:44,751 兄上 お役目を替えていただくわけには いかないでしょうか? 124 00:09:44,751 --> 00:09:46,686 何を言うのだ! 125 00:09:46,686 --> 00:09:49,088 旦那様? 126 00:09:49,088 --> 00:09:52,592 石川とは ガキの時分からの因縁でな。 127 00:09:52,592 --> 00:09:54,794 えい! 128 00:10:00,266 --> 00:10:02,202 卑怯者の弱虫め! 129 00:10:02,202 --> 00:10:04,771 分かった! 130 00:10:04,771 --> 00:10:08,942 謝る。 このとおり…。 131 00:10:08,942 --> 00:10:11,845 てめえの家が格上なのを鼻にかけて➡ 132 00:10:11,845 --> 00:10:15,815 貧乏勝だの 四十俵取りの微禄者だのと➡ 133 00:10:15,815 --> 00:10:18,418 しつこく笑い者にしやがった。 134 00:10:18,418 --> 00:10:21,955 腹が煮えてならねえから ぶちのめしてやったのよ。 135 00:10:21,955 --> 00:10:24,858 腐った了見のケチな野郎さ。 136 00:10:24,858 --> 00:10:26,826 (彦四郎)ばか者! 137 00:10:26,826 --> 00:10:31,631 お前を御番入りさせるために 父上が どれほど お心を砕かれたと思う!➡ 138 00:10:31,631 --> 00:10:33,566 お心ばかりではない。➡ 139 00:10:33,566 --> 00:10:36,302 金をいかほど使ったか 分かっておるのか!➡ 140 00:10:36,302 --> 00:10:40,306 春は花見の付け届け 夏は暑気払い 秋は月見➡ 141 00:10:40,306 --> 00:10:47,013 事あるごとに重役の方々に進物を贈られ ご機嫌を伺ったればこそ➡ 142 00:10:47,013 --> 00:10:50,216 お声がかかるところまで こぎ着けたのだ。 143 00:10:51,851 --> 00:10:53,853 もう一押しじゃ。 144 00:10:55,655 --> 00:10:57,991 そういうことか…。 145 00:10:57,991 --> 00:11:01,494 失礼いたします。 146 00:11:06,699 --> 00:11:13,506 幼少の頃の喧嘩など 先様は とうに忘れておるわ。 147 00:11:15,775 --> 00:11:19,279 お前にも 思うところはあろう。 148 00:11:19,279 --> 00:11:29,289 なれどな 長年 ご公儀のお扶持を頂く身が 生涯一度も ご奉公に出ぬのでは➡ 149 00:11:29,289 --> 00:11:32,625 武士の面目が立たぬぞ。 150 00:11:32,625 --> 00:11:35,128 お信殿。 151 00:11:44,971 --> 00:11:48,007 (平蔵)お前一人のことではないのだ。 152 00:11:48,007 --> 00:11:53,146 親が生涯無役では 麟太郎の行く末は どうなる? 153 00:11:53,146 --> 00:12:01,754 暇と貧乏を持て余す暮らしを 麟太郎にもさせるつもりか? 154 00:12:01,754 --> 00:12:04,591 それは…。 155 00:12:04,591 --> 00:12:09,762 御番入りがなるか ならぬかは あなたに かかっているのですよ。 156 00:12:09,762 --> 00:12:12,765 えっ 私に? 157 00:12:18,938 --> 00:12:21,608 軍資金です。 158 00:12:21,608 --> 00:12:25,945 ご支配様の奥様と 御徒士頭 石川様の奥様には➡ 159 00:12:25,945 --> 00:12:29,282 越後屋の反物に菓子を添えて。 160 00:12:29,282 --> 00:12:34,954 組頭の奥様方には 五十嵐兵庫の白粉などがよいでしょう。 161 00:12:34,954 --> 00:12:39,425 一軒一軒 お届けにあがるのですよ。 はあ…。 162 00:12:39,425 --> 00:12:45,632 勝の家は 心遣いが行き届いていると 奥方の口から お耳に入れば➡ 163 00:12:45,632 --> 00:12:49,802 小吉殿の後押しとなりましょう。 164 00:12:49,802 --> 00:12:54,307 大奥のご意向が ご政道を動かすのと 同じ理屈です。 165 00:12:54,307 --> 00:12:56,809 そういうものですか? 166 00:12:56,809 --> 00:12:58,745 そういうものです。 167 00:12:58,745 --> 00:13:03,249 小吉殿は あのご気性ですから 酒の席で 粗相がありはしないかと➡ 168 00:13:03,249 --> 00:13:06,152 旦那様は 大層 案じておいでなのですよ。 169 00:13:06,152 --> 00:13:10,990 うちの人は まるっきりの下戸ですから 酔って暴れたりはいたしません。 170 00:13:10,990 --> 00:13:14,260 酔わなくても暴れるではありませぬか。 171 00:13:14,260 --> 00:13:16,195 そうでした…。 172 00:13:16,195 --> 00:13:18,931 かんしゃくを起こして こんなことなどなさっては➡ 173 00:13:18,931 --> 00:13:23,102 これまでの苦労が水の泡です。 174 00:13:23,102 --> 00:13:26,406 私… どうすればよいのでしょうか? 175 00:13:26,406 --> 00:13:29,108 まずは 家内を円満に。 176 00:13:29,108 --> 00:13:32,779 小吉殿が 日々を穏やかな気持ちで過ごせるよう➡ 177 00:13:32,779 --> 00:13:34,714 心がけることです。 178 00:13:34,714 --> 00:13:38,418 はい。 家内円満…。 179 00:13:38,418 --> 00:13:44,290 <…とはいえ 勝家では それが一番 難しい> 180 00:13:44,290 --> 00:13:49,796 ようございましたねえ。 男谷の父上も おうれしそうで。 181 00:13:49,796 --> 00:13:51,731 ああ…。 182 00:13:51,731 --> 00:13:54,634 義姉上から いろいろ教えていただきました。 183 00:13:54,634 --> 00:14:00,239 お世話になる方々の奥様に ご挨拶をしておくようにと。 184 00:14:00,239 --> 00:14:04,110 石川のとこにも行くのかい? ええ もちろんです。 185 00:14:04,110 --> 00:14:06,579 (舌打ち) いまいましい! 186 00:14:06,579 --> 00:14:10,917 ガキの時分の腐った性根が そう簡単に直るもんか。 187 00:14:10,917 --> 00:14:13,820 あいつが上役なら ろくなことはあるめえな。 188 00:14:13,820 --> 00:14:15,788 旦那様。 189 00:14:15,788 --> 00:14:19,926 けどよ 麟の行く末 考えろって言われちゃあ➡ 190 00:14:19,926 --> 00:14:26,265 今回ばかりは 奈良の観音 駿河の観音で いくしかねえや。 191 00:14:26,265 --> 00:14:28,201 なあ。 192 00:14:28,201 --> 00:14:30,403 はい。 193 00:14:34,774 --> 00:14:37,610 (男)何を釣ってるんだね? 194 00:14:37,610 --> 00:14:40,646 鮒です。 ここは よく釣れますよ。 195 00:14:40,646 --> 00:14:43,850 ほお どれどれ。 196 00:14:45,785 --> 00:14:50,423 おお これは これは よく肥えた鮒だな。 197 00:14:50,423 --> 00:14:55,128 これは 塩焼きにしたら うまかろう。 198 00:14:55,128 --> 00:14:58,965 私は 母の作る甘露煮が好きです。 199 00:14:58,965 --> 00:15:03,803 甘露煮。 ハハハ ああ それは またよいな。 200 00:15:03,803 --> 00:15:06,005 ハハハ! 201 00:15:10,076 --> 00:15:13,780 では またな。 202 00:15:19,252 --> 00:15:23,756 今のお方は どちらのご隠居ですか? 203 00:15:23,756 --> 00:15:26,559 さあ 誰だろう。 204 00:15:28,261 --> 00:15:31,597 <この老人 名は 中野碩翁。➡ 205 00:15:31,597 --> 00:15:33,933 気楽な ご隠居のように見えて➡ 206 00:15:33,933 --> 00:15:37,603 実は ただ者ではないのです> 207 00:15:37,603 --> 00:15:42,108 (登勢)勝家先祖代々一家一門の皆様➡ 208 00:15:42,108 --> 00:15:49,816 外れくじの婿に やっと 御番入りの話が巡ってまいりました。 209 00:15:52,618 --> 00:15:56,789 おばば様 外れくじは あんまりです。 210 00:15:56,789 --> 00:16:01,360 外れくじで悪ければ ナメクジです。 211 00:16:01,360 --> 00:16:08,234 カタツムリのように家一つ背負うでもなく 空身で のらくら暮らして。 212 00:16:08,234 --> 00:16:10,570 まあ ひどい! 213 00:16:10,570 --> 00:16:14,373 昔の呼び名は もっとひどいものでしたよ。 214 00:16:14,373 --> 00:16:16,909 柄のない肥柄杓で…。 215 00:16:16,909 --> 00:16:21,080 どうにも手の付けようがない。 そのとおり。 216 00:16:21,080 --> 00:16:23,015 はあ…。 217 00:16:23,015 --> 00:16:30,256 お前が5つの時に 娘夫婦が流行病で死ななければ➡ 218 00:16:30,256 --> 00:16:37,763 男谷家の出来損ないの三男坊など 慌てて婿に決めることはなかったのです。 219 00:16:37,763 --> 00:16:40,266 また その話ですか。 220 00:16:40,266 --> 00:16:45,605 小吉を養子にやろうと 男谷様からお申し出があった時には➡ 221 00:16:45,605 --> 00:16:50,409 天の助けと思ったものですが…。 222 00:16:50,409 --> 00:16:53,279 やあ! えい! 223 00:16:53,279 --> 00:16:55,214 うわっ! 224 00:16:55,214 --> 00:16:57,617 弱えやつらだ! 参ったか! 225 00:16:57,617 --> 00:17:02,221 (登勢)毎日毎日 暴れ放題の喧嘩三昧…。 226 00:17:02,221 --> 00:17:05,892 勝家の名に 泥を塗るようなまねばかりして…。 227 00:17:05,892 --> 00:17:09,562 でも 弱い者いじめはなさいませんし…。 228 00:17:09,562 --> 00:17:14,901 婿の素行が悪いせいで どれだけ肝を冷やしたか…。 229 00:17:14,901 --> 00:17:18,771 14の時には 家を飛び出し…。 230 00:17:18,771 --> 00:17:20,773 ♬「お陰でさ するりとな」 231 00:17:20,773 --> 00:17:25,378 (登勢)卑しい者たちに交じって お伊勢参りなどして…。➡ 232 00:17:25,378 --> 00:17:29,248 武士の子の所業とも思えませぬ。 233 00:17:29,248 --> 00:17:34,921 おばば様が 意地悪ばかりなさるから 嫌気がさして出ていかれたのです。 234 00:17:34,921 --> 00:17:37,590 まあ! 235 00:17:37,590 --> 00:17:43,462 では 二十歳を過ぎて また家出したのも 私のせいだというのですか? 236 00:17:43,462 --> 00:17:46,599 いえ それは…。 あの時は➡ 237 00:17:46,599 --> 00:17:52,104 もはや 勝家もこれまでと 覚悟したものです。 238 00:17:54,473 --> 00:17:59,278 (登勢)お咎めを受けるより早く 平蔵殿が座敷牢に押し込めたから➡ 239 00:17:59,278 --> 00:18:02,048 命拾いしたようなものの…。 240 00:18:02,048 --> 00:18:07,219 座敷牢の中で 我が身を振り返り 学問をなさって➡ 241 00:18:07,219 --> 00:18:11,891 旦那様は 立派に立ち直ったではありませんか。 242 00:18:11,891 --> 00:18:17,763 (登勢)ようやく 人様の半分ほどまで たどりついただけです。 243 00:18:17,763 --> 00:18:23,369 それまでは 自分の名さえ ろくに書けなかったのですから。 244 00:18:23,369 --> 00:18:27,239 次は 横に「一」。 245 00:18:27,239 --> 00:18:31,577 もう一つ 長めに「一」。 246 00:18:31,577 --> 00:18:36,248 左に 大きく払って➡ 247 00:18:36,248 --> 00:18:39,919 最後 右に払う。 248 00:18:39,919 --> 00:18:42,588 うまく書けたではありませんか。 249 00:18:42,588 --> 00:18:48,894 (登勢)どうした はずみか 座敷牢の中で子が出来て…。 250 00:18:53,099 --> 00:18:58,971 麟太郎という 跡取りをこしらえたことだけが➡ 251 00:18:58,971 --> 00:19:04,477 婿殿の ただ一つの手柄です。 252 00:19:07,046 --> 00:19:10,349 家内円満 家内円満…。 253 00:19:10,349 --> 00:19:12,718 (利平次)何でございます? 254 00:19:12,718 --> 00:19:15,221 おばば様にも困ったものです。 255 00:19:15,221 --> 00:19:18,724 いつまでも 旦那様を目の敵になさって…。 256 00:19:18,724 --> 00:19:22,061 よほど 馬が合わんのでございましょうな。 257 00:19:22,061 --> 00:19:25,564 旦那様も あのご気性ですから…。 258 00:19:25,564 --> 00:19:30,436 私は 好きでございますよ。 竹を割ったような あのご気性。 259 00:19:30,436 --> 00:19:33,439 利平次は 昔から 旦那様びいきですものね。 260 00:19:33,439 --> 00:19:37,176 はい。 お小さい頃から お世話申しておりますが➡ 261 00:19:37,176 --> 00:19:40,913 あんな ご気性のよい方は めったにおられるものではございません。 262 00:19:40,913 --> 00:19:44,750 ええ そうですとも。 263 00:19:44,750 --> 00:19:47,787 旦那様のような方が お役目に就けないのなら➡ 264 00:19:47,787 --> 00:19:53,092 それは 世の中の方がおかしいのです。 265 00:19:55,461 --> 00:20:00,232 それから これは ほんの おしるしばかりでございますが➡ 266 00:20:00,232 --> 00:20:02,935 お納めいただければ うれしゅう存じます。 267 00:20:02,935 --> 00:20:06,806 まあ! おてつの牡丹餅。 268 00:20:06,806 --> 00:20:10,609 私の好物を よくご存じでしたね。 269 00:20:10,609 --> 00:20:16,282 えっ… はい それは もう…。 270 00:20:16,282 --> 00:20:18,284 ですが…➡ 271 00:20:18,284 --> 00:20:22,154 このごろ 控えておりましたのよ。 272 00:20:22,154 --> 00:20:27,426 ついつい 食べ過ぎてしまいますでしょう? 273 00:20:27,426 --> 00:20:31,130 ホホホホ! 274 00:20:31,130 --> 00:20:34,800 それは 気の利かないことで 失礼いたしました。 275 00:20:34,800 --> 00:20:38,671 あ… では 別の品に変えてまいります。 276 00:20:38,671 --> 00:20:43,976 いえ せっかくですから これは こちらで。 277 00:20:43,976 --> 00:20:46,278 はあ…。 278 00:20:47,847 --> 00:20:50,850 あ~あ。 しくじりました。 279 00:20:50,850 --> 00:20:53,986 かえって ご機嫌を損じたかもしれない。 280 00:20:53,986 --> 00:20:56,889 なに 案ずるには及びません。 281 00:20:56,889 --> 00:21:00,759 好物に祟りなしといいますよ。 282 00:21:00,759 --> 00:21:03,596 そうですね。 (利平次)はい。➡ 283 00:21:03,596 --> 00:21:05,531 はっ。 284 00:21:05,531 --> 00:21:29,822 ♬~ 285 00:21:29,822 --> 00:21:32,958 勝の家の者が訪ねてきたのか。 286 00:21:32,958 --> 00:21:37,429 はい。 これから世話になるからといって。 287 00:21:37,429 --> 00:21:40,966 ふ~む…。 288 00:21:40,966 --> 00:21:44,436 では あれが 小吉の妻女か…。 289 00:21:44,436 --> 00:22:05,724 ♬~ 290 00:22:05,724 --> 00:22:08,727 ハハハハ! では もうひとつ。 291 00:22:14,934 --> 00:22:17,836 ほれ 大久保様に酌をせい。 292 00:22:17,836 --> 00:22:20,039 はっ。 293 00:22:23,108 --> 00:22:27,413 どうぞ ひとつ。 かたじけない。 294 00:22:29,415 --> 00:22:33,285 (彦四郎)弟は 役目の作法も知らぬ未熟者にござる。 295 00:22:33,285 --> 00:22:37,156 御徒士の皆様には よろしく お引き回しを願います。 296 00:22:37,156 --> 00:22:39,625 (矢田)何も難しいことはござりませぬ。 297 00:22:39,625 --> 00:22:43,963 ただ 身命を賭して ご奉公に励むばかりです。 298 00:22:43,963 --> 00:22:49,301 おじい様の将監様が 小普請組支配をお勤めの折には➡ 299 00:22:49,301 --> 00:22:53,305 倅が ただならぬご恩を受けましてな。 300 00:22:53,305 --> 00:22:56,976 家出をされた時のことですな。 はい。 301 00:22:56,976 --> 00:23:02,748 いやぁ 小吉めが あまりに不行跡ゆえ 隠居をさせると申し出たのですが➡ 302 00:23:02,748 --> 00:23:09,255 将監様は いずれ改心すれば お役に立つ 隠居には及ばぬと➡ 303 00:23:09,255 --> 00:23:12,925 お許しをくだされましてな。 304 00:23:12,925 --> 00:23:15,594 (小声で)じじ様が余計なこと…。 305 00:23:15,594 --> 00:23:19,265 いや よいことをいたしました。 306 00:23:19,265 --> 00:23:23,269 そなたからも お頼み申し上げよ。 307 00:23:23,269 --> 00:23:26,605 …よろしく お引き回しくだされ。 308 00:23:26,605 --> 00:23:29,642 承知した。 309 00:23:29,642 --> 00:23:33,779 おお そうそう 藤の花が ちょうど見頃。 310 00:23:33,779 --> 00:23:38,117 大久保様 庭で 藤見酒としゃれ込みませぬか。 311 00:23:38,117 --> 00:23:41,787 ふむ それは ようござるな。 312 00:23:41,787 --> 00:23:45,124 (彦四郎)そなたも お供せよ。 はい。 313 00:23:45,124 --> 00:23:49,995 いや 小吉殿は いずれ組中の仲間となる矢田たちと➡ 314 00:23:49,995 --> 00:23:52,998 こちらで 親交を深めるがよかろう。 315 00:23:52,998 --> 00:23:57,703 (平蔵) ああ では お供の役は この年寄りが。 316 00:23:57,703 --> 00:23:59,972 それは かたじけない。 317 00:23:59,972 --> 00:24:03,275 ささ 大久保様。 318 00:24:05,744 --> 00:24:08,080 (女中)こちらへ。 319 00:24:08,080 --> 00:24:26,465 ♬~ 320 00:24:26,465 --> 00:24:30,469 さあ こうなれば無礼講だ。 ああ。 321 00:24:30,469 --> 00:24:32,604 勝 お主も飲め。 322 00:24:32,604 --> 00:24:35,507 あいにく それがし 不調法者にて…。 323 00:24:35,507 --> 00:24:39,478 まあ 一杯ぐらい よいではないか。 酒は まるで いけません。 324 00:24:39,478 --> 00:24:43,182 俺の酌では飲めぬというのか? 325 00:24:47,953 --> 00:24:51,657 では 頂戴いたします。 326 00:25:01,600 --> 00:25:04,436 (矢田)どうした? さあ ぐっとやれ。 327 00:25:04,436 --> 00:25:09,575 (谷原)そう 責めるな。 無理に飲ませるほど うまい酒ではないわ。 328 00:25:09,575 --> 00:25:15,748 そうよなあ。 かような席では 灘の生一本とおごるところだが➡ 329 00:25:15,748 --> 00:25:19,918 これは そこらの安酒だ。ああ。 ハハハ!ハハハハ! 330 00:25:19,918 --> 00:25:23,789 (谷原)水無瀬は この辺りで指折りの料理屋と聞いたが➡ 331 00:25:23,789 --> 00:25:26,792 さほどの味ではないのう。 332 00:25:26,792 --> 00:25:31,096 まあ 両国の屋台店よりは ましよ。 ああ。 333 00:25:31,096 --> 00:25:33,032 ハハハハハ! フハハハ! 334 00:25:33,032 --> 00:25:37,870 おう 見ろ。 器も安手だ。 ハハハハハ! 335 00:25:37,870 --> 00:25:40,806 おっと! いけない。 336 00:25:40,806 --> 00:25:44,109 お召し物は汚れませんでしたか。 337 00:25:46,578 --> 00:25:50,783 土産の菓子が これだ。 338 00:25:50,783 --> 00:25:57,656 当世名代は 鈴木越後と決まったものだが 一つ格落ちの金澤丹後と来た。 339 00:25:57,656 --> 00:26:00,893 とんだ しみったれよ。 ああ。 340 00:26:00,893 --> 00:26:07,366 (矢田と谷原の笑い声) 341 00:26:07,366 --> 00:26:10,669 (鈴の音) 342 00:26:25,250 --> 00:26:28,587 (包丁の音) 343 00:26:28,587 --> 00:26:32,091 いけない… 切り過ぎ。 344 00:26:39,098 --> 00:26:42,601 どうか 首尾よく運びますように…。 345 00:26:44,269 --> 00:26:47,172 ちょうど 見頃でしたな。 さようでございましたな。見事であった。 346 00:26:47,172 --> 00:26:49,141 だ~! 何事だ!? 347 00:26:49,141 --> 00:26:51,143 きゃ~! うわっ! 348 00:26:57,816 --> 00:27:01,820 小吉… どういうことだ!? 349 00:27:03,555 --> 00:27:08,360 いっけねえ… やっちまった…。 350 00:27:08,360 --> 00:27:16,902 ♬~ 351 00:27:16,902 --> 00:27:19,738 (登勢) なんということをしてくれたのです! 352 00:27:19,738 --> 00:27:22,241 皆様 大層 ご立腹で➡ 353 00:27:22,241 --> 00:27:25,744 もう 御番入りどころではありませんよ! 354 00:27:25,744 --> 00:27:29,615 また 勝家の名に泥を塗って! 355 00:27:29,615 --> 00:27:32,918 ああ もう うるせえ うるせえ! 旦那様! 356 00:27:32,918 --> 00:27:38,590 もう… そなたは 勝家を潰しに来たのですね! 357 00:27:38,590 --> 00:27:40,592 もう…! 358 00:27:47,933 --> 00:27:51,603 どうして 暴れたりなさったのです? 359 00:27:51,603 --> 00:27:53,539 無礼を言ったから 殴った! 360 00:27:53,539 --> 00:28:01,880 そんな…。 ほんの一夜の辛抱が なぜ おできにならないのですか! 361 00:28:01,880 --> 00:28:04,550 男谷の父上に お詫びに上がりましょう。 362 00:28:04,550 --> 00:28:08,220 親父殿に合わせる顔がねえ! 363 00:28:08,220 --> 00:28:10,222 はあ…。 364 00:28:12,057 --> 00:28:13,992 (平蔵)うまい。 365 00:28:13,992 --> 00:28:19,231 ハハハ… 鮒は甘露煮に限るな。 366 00:28:19,231 --> 00:28:25,103 父上のご苦心を ふいにしてしまい 申し訳ありません。 367 00:28:25,103 --> 00:28:28,373 小吉は どうしておる? 368 00:28:28,373 --> 00:28:31,276 ふて寝をしております。 369 00:28:31,276 --> 00:28:37,082 ふて寝か。 困ったやつよのう。 370 00:28:37,082 --> 00:28:39,918 私が至らなかったのです。 371 00:28:39,918 --> 00:28:44,590 心遣いが足りないばかりに 家の中が治まらず➡ 372 00:28:44,590 --> 00:28:50,095 旦那様も 大事の席で辛抱ができずに…。 373 00:28:50,095 --> 00:28:54,766 お信 そなた 小吉を見くびっておるぞ。 374 00:28:54,766 --> 00:28:59,104 え? あれは 確かに乱暴者だが➡ 375 00:28:59,104 --> 00:29:02,341 辛抱のできぬ男ではない。 376 00:29:02,341 --> 00:29:04,409 でも…。 377 00:29:04,409 --> 00:29:07,212 暴れた訳を聞いたか? 378 00:29:07,212 --> 00:29:10,082 はい。 無礼を言うから殴ったと…。 379 00:29:10,082 --> 00:29:14,720 その無礼というのは わしの悪口よ。 380 00:29:14,720 --> 00:29:16,755 父上の? 381 00:29:16,755 --> 00:29:23,061 勝。 平蔵殿の父御は 座頭の金貸しだったそうだな。 382 00:29:23,061 --> 00:29:24,997 はあ…。 383 00:29:24,997 --> 00:29:31,570 高利を取って稼いだ金で 旗本株を買い 倅を 俄武士に仕立てたわけか。 384 00:29:31,570 --> 00:29:34,239 (矢田)フッ 当節 よくある話だが➡ 385 00:29:34,239 --> 00:29:40,045 我らと違って 代々の武士ではないゆえ こうした席での作法に暗いのであろうよ。 386 00:29:40,045 --> 00:29:45,584 いや 彦四郎殿という 代官にまで出世した 利口者がついているのだ。 387 00:29:45,584 --> 00:29:48,387 作法を知らぬわけはない。 388 00:29:48,387 --> 00:29:50,322 銭金を惜しんでいるのだろう。 389 00:29:50,322 --> 00:29:53,091 元が 吝嗇な金貸しゆえな。 390 00:29:53,091 --> 00:29:55,594 (矢田)お里が知れるというやつか。 391 00:29:55,594 --> 00:29:58,263 (矢田と谷原の笑い声) 392 00:29:58,263 --> 00:30:01,166 うわっ! な… 何をする! 393 00:30:01,166 --> 00:30:06,004 べらぼうめ! 口に関所がねえからって 勝手放題 ぬかしゃあがって! 394 00:30:06,004 --> 00:30:08,974 何!? 強い者には 尻尾振り➡ 395 00:30:08,974 --> 00:30:11,777 下の者には 吠えかかって 威張りまくる。 396 00:30:11,777 --> 00:30:15,280 てめえらみたいな卑怯なやつを 何というか 教えてやらあ! 397 00:30:15,280 --> 00:30:17,215 犬侍ってんだ! 398 00:30:17,215 --> 00:30:21,153 おのれ 謝れ! 手をついて詫びろ! 御番入りが ふいになってもいいのか! 399 00:30:21,153 --> 00:30:25,624 こっちから願い下げだ! 腰巾着のへっぽこ野郎が! 400 00:30:25,624 --> 00:30:27,559 ええい 黙れ! きゃっ! 401 00:30:27,559 --> 00:30:29,961 ああっ! 402 00:30:29,961 --> 00:30:31,897 もう我慢ならねえ! 403 00:30:31,897 --> 00:30:33,832 てめえ! 404 00:30:33,832 --> 00:30:35,834 いたたた! あいた! 405 00:30:35,834 --> 00:30:38,637 うっ! あいたたたた! 406 00:30:38,637 --> 00:30:41,306 おやめくださいませ! おやめ…。 407 00:30:41,306 --> 00:30:43,241 きゃ~! うわっ! 408 00:30:43,241 --> 00:30:47,112 堪忍袋の緒を切ったのは…。 409 00:30:47,112 --> 00:30:55,821 金貸しの家だの 吝嗇家だの 男谷の悪口を言われたゆえだ。 410 00:30:55,821 --> 00:31:01,927 ああ… それならそうと 打ち明けてくださればよいのに…。 411 00:31:01,927 --> 00:31:05,597 言い訳一つなさらないのですから…。 412 00:31:05,597 --> 00:31:09,401 そういうやつよ。 413 00:31:09,401 --> 00:31:17,776 まあ これで 御番入りの望みは消えたが…➡ 414 00:31:17,776 --> 00:31:23,415 実を言うとのう わしは うれしかったのだよ。 415 00:31:23,415 --> 00:31:25,350 え? 416 00:31:25,350 --> 00:31:31,156 小吉が 出世のためなら 親の悪口も平気で聞くような➡ 417 00:31:31,156 --> 00:31:36,661 そんな卑しいやつでなくて よかったと思うてな。 418 00:31:38,630 --> 00:31:42,300 申し訳ありません。 419 00:31:42,300 --> 00:31:48,173 私は 酒宴を台なしにしたことばかりを 気にかけ➡ 420 00:31:48,173 --> 00:31:52,811 旦那様が どんなお気持ちで そうなさったのか➡ 421 00:31:52,811 --> 00:31:56,148 そこに思いが至りませんでした…。 422 00:31:56,148 --> 00:31:58,083 もう よい。 423 00:31:58,083 --> 00:32:01,119 お信 そなたも 一つ食え。 424 00:32:01,119 --> 00:32:05,757 ハハハハ… うまいぞ。 425 00:32:05,757 --> 00:32:15,767 ♬~ 426 00:32:15,767 --> 00:32:20,972 (走り寄る足音) 427 00:32:22,541 --> 00:32:25,410 奥様! 亀沢町のご隠居様が! 428 00:32:25,410 --> 00:32:27,479 (襖が開く音) 親父様が どうかしたのか!? 429 00:32:27,479 --> 00:32:29,948 お倒れになられました! ご容体は? 430 00:32:29,948 --> 00:32:32,450 卒中の発作だそうで。 431 00:32:34,820 --> 00:32:38,957 利平次 おばば様と麟太郎を頼みます! 432 00:32:38,957 --> 00:32:58,944 ♬~ 433 00:33:06,051 --> 00:33:08,753 お部屋で倒れていらして…➡ 434 00:33:08,753 --> 00:33:13,091 お医者様を呼んだ時には もう…。 435 00:33:13,091 --> 00:33:15,894 そんな…。 436 00:33:17,963 --> 00:33:21,666 昼間は あんなに…。 437 00:33:23,602 --> 00:34:08,747 ♬~ 438 00:34:08,747 --> 00:34:13,618 ここに 3年も閉じ込められていたっけな。 439 00:34:13,618 --> 00:34:15,620 ええ。 440 00:34:15,620 --> 00:34:22,093 親父様の作った牢は 最初っから 柵が外れるようになってた。 441 00:34:22,093 --> 00:34:26,398 逃げ出そうと思ったが やめた。 442 00:34:26,398 --> 00:34:32,203 考えてみりゃ 俺を思ってしてくれたことだ。 443 00:34:32,203 --> 00:34:34,139 はい。 444 00:34:34,139 --> 00:34:39,978 なのに 俺は 最後まで 親父様をがっかりさせちまった。 445 00:34:39,978 --> 00:34:44,115 そうではないのです。 446 00:34:44,115 --> 00:34:50,422 父上は 喜んでおいででした。 447 00:34:50,422 --> 00:34:52,357 旦那様が➡ 448 00:34:52,357 --> 00:34:57,862 親の悪口を黙って聞くような男でなくて よかったと おっしゃって…。 449 00:34:59,631 --> 00:35:06,071 こざかしく立ち回る者が 出世する世の中だ。 450 00:35:06,071 --> 00:35:13,078 小吉の気性では 志を得るのは難しかろうよ。 451 00:35:15,246 --> 00:35:22,020 なれどな 小吉は 小吉のようにしか生きられぬ。 452 00:35:22,020 --> 00:35:25,890 たとえ 生涯無役で終わるとしても➡ 453 00:35:25,890 --> 00:35:32,797 あの まっすぐな気性を貫けば それで よいわ。 454 00:35:32,797 --> 00:35:35,400 はい。 455 00:35:35,400 --> 00:35:38,770 ハハハハハ…。 456 00:35:38,770 --> 00:35:42,273 おばば殿は➡ 457 00:35:42,273 --> 00:35:45,176 こうなるだろうがな。 458 00:35:45,176 --> 00:35:49,147 ハハハハハ! フフフフ! 459 00:35:49,147 --> 00:35:52,917 親父様が そんなことを…。 460 00:35:52,917 --> 00:35:55,620 何で 早く言わねえんだ。 461 00:35:55,620 --> 00:35:58,289 あなたが ふて寝していたからですよ。 462 00:35:58,289 --> 00:36:02,227 あ そうか…。 463 00:36:02,227 --> 00:36:05,897 なあ お信。 はい。 464 00:36:05,897 --> 00:36:10,902 おめえは いいのかい 俺が 一生無役でも。 465 00:36:13,638 --> 00:36:16,074 「勝家を潰す気か」➡ 466 00:36:16,074 --> 00:36:19,577 おばば殿が また やかましく言うぜ。 467 00:36:19,577 --> 00:36:22,781 しかたありません。 468 00:36:29,754 --> 00:36:34,092 子どもの頃 あの木に 縛られたことがあったでしょう? 469 00:36:34,092 --> 00:36:36,027 ああ。 470 00:36:36,027 --> 00:36:41,266 傘屋の万吉という子に 怪我をさせたと ひどく叱られておいででした。 471 00:36:41,266 --> 00:36:50,775 (平蔵)己より弱い者に怪我をさせるとは 貴様 それでも 侍の子か! 472 00:36:50,775 --> 00:36:55,980 強情者め。 なぜ謝らぬ! 473 00:37:00,218 --> 00:37:02,220 えい! 474 00:37:06,991 --> 00:37:09,727 性根の腐ったやつだ。 475 00:37:09,727 --> 00:37:12,363 貴様のような ならず者を 生かしておいては➡ 476 00:37:12,363 --> 00:37:14,299 世のためにならぬ! 477 00:37:14,299 --> 00:37:16,234 旦那様! お許しください! 478 00:37:16,234 --> 00:37:18,736 坊ちゃまに代わって 利平次が お詫び申します! 479 00:37:18,736 --> 00:37:21,072 旦那様! 邪魔だ! 放せ! 480 00:37:21,072 --> 00:37:24,375 やめて! 小吉ちゃんを斬らないで! 481 00:37:24,375 --> 00:37:26,678 やったのは 私です! 482 00:37:33,118 --> 00:37:35,920 傘屋の子に怪我をさせたのは➡ 483 00:37:35,920 --> 00:37:40,625 まことは 謙吉という別の子どもで…。 484 00:37:45,630 --> 00:37:49,267 なぜ 本当のことを言わなかったのだ。 485 00:37:49,267 --> 00:37:52,103 約束したからです。 486 00:37:52,103 --> 00:37:55,974 叱られるから 黙っておいてくれと 謙吉が頼むので➡ 487 00:37:55,974 --> 00:38:01,179 ならば 俺の口からは決して言わぬと 約束しました。 488 00:38:04,749 --> 00:38:07,886 お前というやつは…。 489 00:38:07,886 --> 00:38:13,358 私 その時 そりゃあ うれしかったんですよ。 490 00:38:13,358 --> 00:38:19,564 私は この人のお嫁様になれるんだって…。 491 00:38:19,564 --> 00:38:28,239 意地っ張りだけど 強くて まっすぐで 優しい この人が➡ 492 00:38:28,239 --> 00:38:31,242 私の旦那様なんだって…。 493 00:38:31,242 --> 00:38:35,113 何 言ってやがんでえ。 フフフ…。 494 00:38:35,113 --> 00:38:38,583 あ… 蛍。 495 00:38:38,583 --> 00:38:55,934 ♬~ 496 00:38:55,934 --> 00:39:00,205 <平蔵の四十九日の法要も済み➡ 497 00:39:00,205 --> 00:39:03,208 夏の盛りを迎えた頃…> 498 00:39:07,345 --> 00:39:12,050 旦那様 いいかげん月代をあたりましょう。 499 00:39:12,050 --> 00:39:18,356 山賊のようで見苦しいと おばば様が怒っておいでですよ。 500 00:39:18,356 --> 00:39:21,559 ナメクジってのは えれえもんだなあ。 501 00:39:21,559 --> 00:39:23,595 え? 何ですか? 502 00:39:23,595 --> 00:39:28,299 鎧う殻もなしに 角 つっぱらかして 生きてやがる。 503 00:39:30,902 --> 00:39:33,571 俺は ナメクジでいい。 504 00:39:33,571 --> 00:39:36,608 お役目という殻は 一生 背負わねえと決めたから➡ 505 00:39:36,608 --> 00:39:39,077 おめえも その覚悟でいろ。 506 00:39:39,077 --> 00:39:41,579 思うとおりになさりませ。 507 00:39:41,579 --> 00:39:44,916 麟のことだけは 気がかりだがな。 508 00:39:44,916 --> 00:39:51,389 あいつは 俺に似ねえ優れ者だから くすぶらせちゃあ かわいそうだ。 509 00:39:51,389 --> 00:39:54,592 まあ いいじゃありませんか。 510 00:39:54,592 --> 00:39:59,931 人の役に立つ子に育てば いつかは世に出る折もありますよ。 511 00:39:59,931 --> 00:40:02,400 うん。 512 00:40:02,400 --> 00:40:04,469 おい 何だ? それ。 513 00:40:04,469 --> 00:40:08,106 色紙を頼まれたんです。 軸にするからと。 514 00:40:08,106 --> 00:40:10,141 へえ~ 何て書くんだい? 515 00:40:10,141 --> 00:40:12,277 「雲外に」…。 516 00:40:12,277 --> 00:40:15,780 大変です! すぐそこの角で 酔った侍が暴れて…。 517 00:40:15,780 --> 00:40:18,983 よし きた 俺に任せろ! 518 00:40:21,286 --> 00:40:24,622 フフッ また始まった。 519 00:40:24,622 --> 00:40:44,442 ♬~ 520 00:40:44,442 --> 00:40:48,947 「雲外に蒼天あり」。 521 00:40:56,187 --> 00:41:00,391 (登勢)お信 来ておくれ。 522 00:41:00,391 --> 00:41:02,760 は~い。 523 00:41:02,760 --> 00:41:07,932 ♬~ 524 00:41:07,932 --> 00:41:12,804 <分厚い雲を突き抜けりゃ そこには いつも 青い空。➡ 525 00:41:12,804 --> 00:41:15,273 お信 小吉の行く先は➡ 526 00:41:15,273 --> 00:41:20,144 晴れやら 雨やら 曇りやら> 527 00:41:20,144 --> 00:41:22,780 麟太郎が お城に召し出されることになったのだ! 528 00:41:22,780 --> 00:41:24,716 ええっ! 529 00:41:24,716 --> 00:41:27,952 金が ご入り用なんでござんしょう? 巾着切りの掏った金なんぞ使えるか! 530 00:41:27,952 --> 00:41:29,887 おや あれは…。 531 00:41:29,887 --> 00:41:32,824 一体 どうなさったのです! そなたは 勝家を潰す気か! 532 00:41:32,824 --> 00:41:34,826 誰が何と言おうと➡ 533 00:41:34,826 --> 00:41:38,296 麟太郎は 城にはやらねえ! 旦那様の分からず屋! 534 00:41:38,296 --> 00:41:40,231 もう! 535 00:41:40,231 --> 00:42:55,239 ♬~