1 00:00:03,937 --> 00:00:07,608 <菅原道真公を祀る 天神様は➡ 2 00:00:07,608 --> 00:00:10,611 ご存じ 学問の神様> 3 00:00:15,782 --> 00:00:19,786 麟太郎の手習いが 上達しますように。 4 00:00:28,362 --> 00:00:32,666 家内円満 無病息災。 5 00:00:35,168 --> 00:00:40,941 坊ちゃまは 大層 上達がお早いと お師匠様が褒めておいででした。 6 00:00:40,941 --> 00:00:43,310 利平次も 鼻が高うございますよ。 7 00:00:43,310 --> 00:00:45,646 今は 何を習っているのですか? 8 00:00:45,646 --> 00:00:47,681 江戸方角です。 9 00:00:47,681 --> 00:00:50,317 御城外 東者…。 10 00:00:50,317 --> 00:00:52,252 (鼻緒が切れる音) 11 00:00:52,252 --> 00:00:54,187 あ… いけない。 12 00:00:54,187 --> 00:00:56,657 ああ どれ すげてさしあげましょう。 13 00:00:56,657 --> 00:00:58,659 はい。 14 00:01:06,767 --> 00:01:08,702 よかった。 15 00:01:08,702 --> 00:01:12,573 これで 災いが払えましたね。 16 00:01:12,573 --> 00:01:16,777 鼻緒が切れるのは 厄落としなのですよ。 17 00:01:16,777 --> 00:01:18,712 はい! 18 00:01:18,712 --> 00:01:20,647 (利平次)はい。 19 00:01:20,647 --> 00:01:23,650 ありがとう。 はい。 20 00:01:30,290 --> 00:01:33,193 もし そこのお方。 21 00:01:33,193 --> 00:01:36,797 珍しい相をお持ちじゃ。 22 00:01:36,797 --> 00:01:39,132 ひとつ 見て進ぜましょう。 23 00:01:39,132 --> 00:01:42,436 いえいえ そちらのお子を。 24 00:01:42,436 --> 00:01:45,639 でも…。 見料は頂きませぬ。 25 00:01:45,639 --> 00:01:49,142 ささ こちらへ。 ささ! 26 00:01:51,144 --> 00:01:54,448 (関川)ふ~む…。 27 00:01:54,448 --> 00:01:58,986 やはり 非凡の相が出ておりまする。 28 00:01:58,986 --> 00:02:00,921 この お子は➡ 29 00:02:00,921 --> 00:02:05,792 善く行けば 天下を救う大人物となりましょう。 30 00:02:05,792 --> 00:02:08,662 まあ!ただし! ただし? 31 00:02:08,662 --> 00:02:15,102 悪く行けば 天下を乱す大悪党ともなる人相。➡ 32 00:02:15,102 --> 00:02:18,605 道を過つことなきよう➡ 33 00:02:18,605 --> 00:02:21,642 よくよく丹精して お育てなされ。 34 00:02:21,642 --> 00:02:23,643 はい。 35 00:02:28,281 --> 00:02:40,293 ♬~ 36 00:03:02,149 --> 00:03:06,920 ほら たるんだ。 それでは 斜めに しわが寄りますよ。 37 00:03:06,920 --> 00:03:08,922 はあ…。 38 00:03:19,399 --> 00:03:22,269 はあ… さすが おばば様。 39 00:03:22,269 --> 00:03:24,938 このくらい できて当たり前ですよ。 40 00:03:24,938 --> 00:03:27,607 そなたが 不器用なだけです。 41 00:03:27,607 --> 00:03:29,643 ハハハハ! すいません。 42 00:03:29,643 --> 00:03:32,412 婿殿は何をしているのですか? 43 00:03:32,412 --> 00:03:34,481 どうせ 暇なのだから➡ 44 00:03:34,481 --> 00:03:37,951 障子張りぐらい手伝っても 罰は当たりませんよ。 45 00:03:37,951 --> 00:03:39,886 先ほど お出かけになりました。 46 00:03:39,886 --> 00:03:45,125 はあ… また どこぞで 無法なことでも しでかしているのでしょうよ。 47 00:03:45,125 --> 00:03:47,060 まあ 無法だなんて…。 48 00:03:47,060 --> 00:03:50,997 (登勢) 道場破りで 看板をたたき壊したとやら➡ 49 00:03:50,997 --> 00:03:54,434 地回りを 大川に投げ込んだとやら➡ 50 00:03:54,434 --> 00:03:59,639 からすの鳴かぬ日はあっても 婿の噂を耳にしない日はありません。 51 00:03:59,639 --> 00:04:04,911 それは 旦那様がお強くて 人様から 何かと頼りにされているからです。 52 00:04:04,911 --> 00:04:08,782 甘い! あれでは ゴロツキも同然。 53 00:04:08,782 --> 00:04:14,621 よいですか 勝家は 三河以来のご直参で➡ 54 00:04:14,621 --> 00:04:17,491 そもそもは…。 おばば様。 55 00:04:17,491 --> 00:04:22,762 麟太郎は 今頃 粗相なくやっているでしょうか? 56 00:04:22,762 --> 00:04:25,599 心配は 無用です。 57 00:04:25,599 --> 00:04:29,269 でも 初めてお城に上がるのですから…。 58 00:04:29,269 --> 00:04:32,939 私なら 縮み上がって きっと何か しくじってしまいます。 59 00:04:32,939 --> 00:04:36,276 麟太郎に限って そのようなことはありません。 60 00:04:36,276 --> 00:04:39,779 あの子は 利発なうえに 肝が据わっていますから。 61 00:04:39,779 --> 00:04:42,282 それそれ 手がお留守ですよ。 62 00:04:42,282 --> 00:04:45,285 口と一緒に 手も動かしなさい。 はい。 63 00:04:46,953 --> 00:04:51,625 貧乏所帯といえど せめて 障子くらい張り替えて➡ 64 00:04:51,625 --> 00:04:58,331 お城から戻る麟太郎を 清々しく迎えてやりましょう。 65 00:05:01,234 --> 00:05:03,170 <この日 麟太郎は➡ 66 00:05:03,170 --> 00:05:09,910 将来有望な旗本の子弟が招かれる お城見学会に出かけていました> 67 00:05:09,910 --> 00:05:15,382 (阿茶局)この辺りは 昔 御三家のお屋敷があった所ですが➡ 68 00:05:15,382 --> 00:05:20,754 明暦の大火の後に お庭に造り替えたそうです。 69 00:05:20,754 --> 00:05:25,258 では 火除地の役目も 果たしているのですね。 70 00:05:25,258 --> 00:05:27,194 ええ そのとおり。 71 00:05:27,194 --> 00:05:29,763 この池も いざという時には➡ 72 00:05:29,763 --> 00:05:32,265 火消しの役に立つのですよ。 73 00:05:32,265 --> 00:05:34,935 なるほど…。 74 00:05:34,935 --> 00:05:39,139 美しいだけではないのですね。 75 00:05:44,277 --> 00:05:48,114 今年も 百日紅が見事に咲いたわ。 76 00:05:48,114 --> 00:05:50,951 さようでございまするな。 77 00:05:50,951 --> 00:05:55,822 百日紅は 花の盛りが長いのがよい。 78 00:05:55,822 --> 00:05:59,626 わしも当分 隠居はせぬつもりよ。 79 00:05:59,626 --> 00:06:06,433 ハハハハ… 上様あっての ご政道にござりまする。 80 00:06:06,433 --> 00:06:11,571 そなたにも まだまだ働いてもらわねばならぬぞ。 81 00:06:11,571 --> 00:06:14,474 ははっ。 82 00:06:14,474 --> 00:06:22,249 (子どもたちの笑い声) 83 00:06:22,249 --> 00:06:25,952 おや あれは…。 84 00:06:35,595 --> 00:06:45,272 麟太郎は 今にきっと 重いお役目に就いて お城に上がることになるはずです。 85 00:06:45,272 --> 00:06:48,174 ただ…。 86 00:06:48,174 --> 00:06:53,980 男の子は 父親に似るというから➡ 87 00:06:53,980 --> 00:07:03,223 婿殿が無頼漢では 麟太郎まで 悪い道に染まるのではないかと➡ 88 00:07:03,223 --> 00:07:06,126 案じられて…。 89 00:07:06,126 --> 00:07:08,094 あ…。 90 00:07:08,094 --> 00:07:12,933 悪く行けば 天下を乱す大悪党ともなる人相。 91 00:07:12,933 --> 00:07:17,137 天下を乱す大悪党…。 92 00:07:26,079 --> 00:07:28,748 ぬっ… や~! 93 00:07:28,748 --> 00:07:32,752 や~! うわ~! ああ~! 94 00:07:34,621 --> 00:07:38,458 さすがは 直心影流の使い手。 95 00:07:38,458 --> 00:07:40,460 お見事でござる。 96 00:07:40,460 --> 00:07:45,932 いまだ 未熟者ゆえ 一手 ご教示賜りたい。 97 00:07:45,932 --> 00:07:50,236 では お相手いたそう。 98 00:07:56,276 --> 00:07:59,179 た~! 99 00:07:59,179 --> 00:08:02,716 ああ~! 100 00:08:02,716 --> 00:08:05,752 (小声で)近頃は門人が減って やりくりが苦しい。 101 00:08:05,752 --> 00:08:08,588 今日のところは これで…。 102 00:08:08,588 --> 00:08:11,224 一分でござるか? ああ とても とても…。 103 00:08:11,224 --> 00:08:14,561 一朱が せいぜい。 一朱か…。 104 00:08:14,561 --> 00:08:17,063 しかたがない。 105 00:08:17,063 --> 00:08:19,099 せ~の…。 106 00:08:19,099 --> 00:08:21,234 ああっ! 107 00:08:21,234 --> 00:08:23,436 (2人)お見事! 108 00:08:29,909 --> 00:08:37,217 <小普請組の者は 年に二度 ご公儀に 小普請金を納めることになっていました> 109 00:08:39,252 --> 00:08:41,254 まだ足んねえか…。 110 00:08:41,254 --> 00:08:46,259 <この7月は その入金の月> 111 00:08:48,395 --> 00:08:52,766 回る 回る ぐるぐる回る。 更には 高~く 高~く上がります。 112 00:08:52,766 --> 00:08:56,636 (観客)おお~! はい はい! 113 00:08:56,636 --> 00:08:58,938 ありがとうございます! 114 00:08:58,938 --> 00:09:26,566 ♬~ 115 00:09:26,566 --> 00:09:29,569 にいさん いい腕だな。 116 00:09:31,738 --> 00:09:33,773 あっ! あたたたた! 117 00:09:33,773 --> 00:09:37,544 人の懐から 勝手に頂いちゃいけねえな。 118 00:09:37,544 --> 00:09:40,380 旦那… 見逃しておくんなせえ。 119 00:09:40,380 --> 00:09:42,315 掏ったものを返してきな。 120 00:09:42,315 --> 00:09:46,119 そしたら 役人には突き出さねえでやる。 121 00:09:47,921 --> 00:09:49,923 へえ…。 122 00:09:52,091 --> 00:09:54,761 顎に載りましたら お慰み。 123 00:09:54,761 --> 00:09:57,063 (観客たち)おおっ。 124 00:09:58,631 --> 00:10:01,935 (観客たちの歓声) 125 00:10:01,935 --> 00:10:06,239 はあ… 見事なもんだな。 126 00:10:08,608 --> 00:10:11,511 旦那 どうも 相すいやせん…。 127 00:10:11,511 --> 00:10:14,280 盗ったもん返しゃ それでいいんだ。 もう行きな。 128 00:10:14,280 --> 00:10:16,783 いや あの…➡ 129 00:10:16,783 --> 00:10:18,718 これを…。 130 00:10:18,718 --> 00:10:21,421 俺の財布! てめえ いつの間に! 131 00:10:21,421 --> 00:10:23,723 すいません…。 132 00:10:26,960 --> 00:10:29,963 ただいま 戻りました。 133 00:10:31,631 --> 00:10:34,667 (登勢)勝家代々 一家一門の皆様➡ 134 00:10:34,667 --> 00:10:41,674 麟太郎が お城に上がり ありがたくも お菓子を頂戴してまいりました。 135 00:10:44,210 --> 00:10:48,648 麟太郎 今日の様子を聞かせてください。 136 00:10:48,648 --> 00:10:50,583 はい。 137 00:10:50,583 --> 00:10:54,154 御城内には からめ手の半蔵門から入りました。 138 00:10:54,154 --> 00:10:57,056 大きな土橋が架かっていましたよ。 139 00:10:57,056 --> 00:11:00,393 石垣にも いろいろな組み方があって➡ 140 00:11:00,393 --> 00:11:03,296 よく見ると 削り方にも違いがあるのです。 141 00:11:03,296 --> 00:11:07,167 そうですか。 お庭は どんな所でした? 142 00:11:07,167 --> 00:11:11,938 吹上のお庭は 大層 広くて 庭の中に 滝もあります。 143 00:11:11,938 --> 00:11:13,973 まあ! 滝。 144 00:11:13,973 --> 00:11:17,810 おばば様 庭に滝があるそうですよ。 145 00:11:17,810 --> 00:11:21,114 聞こえてますよ。 それから? 146 00:11:21,114 --> 00:11:25,785 滝の水は 玉川上水から懸樋で引いているそうです。 147 00:11:25,785 --> 00:11:31,124 水は 川になって庭を巡り 道灌堀に流れ落ちていました。 148 00:11:31,124 --> 00:11:34,794 浮き島のある大きな池 松の植え込み➡ 149 00:11:34,794 --> 00:11:39,666 それから お薬園も 大層立派でした。 150 00:11:39,666 --> 00:11:45,305 さすがは 麟太郎。 よく見てきましたね。 151 00:11:45,305 --> 00:11:48,808 一緒に お庭を拝見しているような気がします。 152 00:11:48,808 --> 00:11:52,812 ⚟お~い 戻ったぞ! 153 00:11:54,681 --> 00:11:59,819 麟太郎 あとで 父上にも お庭の様子を話しておあげなさい。 154 00:11:59,819 --> 00:12:01,754 はい! 155 00:12:01,754 --> 00:12:04,791 さあ 遠慮しねえで 入ってくんな。 156 00:12:04,791 --> 00:12:06,993 へえ…。 157 00:12:09,395 --> 00:12:11,331 あら お客様? 158 00:12:11,331 --> 00:12:14,767 こいつに 飯 食わしてやってくんな。 こちらは? 159 00:12:14,767 --> 00:12:17,403 へえ 銀次と申しやす。 160 00:12:17,403 --> 00:12:20,306 巾着切りの名人さ。 161 00:12:20,306 --> 00:12:22,275 巾着切り? 162 00:12:22,275 --> 00:12:25,945 (銀次)はあ… あっ あの… あっしゃあ ご遠慮申し上げたんですがね➡ 163 00:12:25,945 --> 00:12:28,615 殿様が 一緒に来いとおっしゃるもんで…。 164 00:12:28,615 --> 00:12:33,119 こんなボロ家で 殿様もねえわさ。 ハハハハ! 165 00:12:33,119 --> 00:12:36,155 俺ぁ こいつの今日の稼ぎ ふいにしちまってな。 166 00:12:36,155 --> 00:12:39,993 蕎麦の一杯でもおごってやりてえが あいにく 懐が寂しい。 167 00:12:39,993 --> 00:12:42,128 かといって 腹減らしたまんま放り出したんじゃ➡ 168 00:12:42,128 --> 00:12:44,063 また これ やらかすかもしんねえからよ。 169 00:12:44,063 --> 00:12:46,265 (登勢)婿殿! 170 00:12:49,869 --> 00:12:52,639 武士の屋敷は 城も同然。 171 00:12:52,639 --> 00:12:58,811 巾着切りなどという不浄な輩を招き入れて 何事ですか! 172 00:12:58,811 --> 00:13:01,080 おばば様…。 173 00:13:01,080 --> 00:13:03,116 出ていきなさい! 今すぐ! 174 00:13:03,116 --> 00:13:05,118 へ… へえ…。 175 00:13:06,886 --> 00:13:09,889 お信 塩! 176 00:13:13,393 --> 00:13:18,097 おっかねえ ばあさんだな…。 177 00:13:18,097 --> 00:13:21,801 旦那も大変だねえ…。 178 00:13:31,944 --> 00:13:34,847 (鐘の音) 179 00:13:34,847 --> 00:13:41,421 旦那様 吹上のお庭は それは それは 広いそうですよ。 180 00:13:41,421 --> 00:13:45,625 フフッ 私 両国の広小路ぐらいかと思っていました。 181 00:13:45,625 --> 00:13:47,560 ウフフフフ…。 182 00:13:47,560 --> 00:13:51,497 食事中に笑うのはよしなさい。 はしたない。 183 00:13:51,497 --> 00:13:53,499 はい…。 184 00:13:53,499 --> 00:13:57,136 人間 おかしけりゃ笑うもんだ。 どんどん笑え どんどん。 185 00:13:57,136 --> 00:14:00,440 ハハハハハハ ハハ~か! 186 00:14:02,375 --> 00:14:04,444 (箸を置く音) 187 00:14:04,444 --> 00:14:07,914 もう我慢なりません。 188 00:14:07,914 --> 00:14:09,849 決めました。 189 00:14:09,849 --> 00:14:13,720 麟太郎は 男谷家に預かってもらいます。 190 00:14:13,720 --> 00:14:15,655 ええっ!? 191 00:14:15,655 --> 00:14:19,625 ゴロツキが出入りするような家には 置いておけぬ。 192 00:14:19,625 --> 00:14:23,930 彦四郎殿とお遊殿に養育を頼みます。 193 00:14:23,930 --> 00:14:27,767 冗談じゃねえや! 麟は俺の子だ! どこにもやるもんか! 194 00:14:27,767 --> 00:14:32,605 麟太郎は 勝家の跡取りです! 195 00:14:32,605 --> 00:14:34,540 出世前の大事な身に➡ 196 00:14:34,540 --> 00:14:39,479 巾着切りだの何だのと 世の不浄を見せてはならぬ。 197 00:14:39,479 --> 00:14:42,281 世の中ってなあ 亀沢町の兄貴みてえな➡ 198 00:14:42,281 --> 00:14:44,217 堅物ばっかりで 出来てるわけじゃねえんだ! 199 00:14:44,217 --> 00:14:47,620 子どものうちから 世間の裏も表も見せてやるのが➡ 200 00:14:47,620 --> 00:14:49,555 活学問ってもんじゃねえんですかい! 201 00:14:49,555 --> 00:14:56,863 その活学問とやらで 小普請金の工面はついたのですか? 202 00:15:02,135 --> 00:15:05,571 いいかげんになさいませ! 203 00:15:05,571 --> 00:15:09,876 お二人とも 麟太郎の前ですよ。 204 00:15:12,745 --> 00:15:15,248 お代わり。 205 00:15:17,617 --> 00:15:21,120 (小声で)今日の勝負は 母上が一本。 206 00:15:32,131 --> 00:15:35,401 勝の旦那! 207 00:15:35,401 --> 00:15:39,605 よしてくださいよ。 旦那の懐なんざ狙いやせん。 208 00:15:39,605 --> 00:15:42,942 どうせ 大して入ってねえんだから。 無礼なやつだな。 209 00:15:42,942 --> 00:15:47,613 金が ご入り用なんでござんしょう? ご入り用だが あいにく当てがねえ。 210 00:15:47,613 --> 00:15:49,549 あっしが お力になりやしょう。 211 00:15:49,549 --> 00:15:52,485 ばか! 巾着切りの掏った金なんざ使えるか! 212 00:15:52,485 --> 00:15:54,487 そうじゃござんせん。 213 00:15:54,487 --> 00:15:57,123 今日は 回向院の富くじの日です。 214 00:15:57,123 --> 00:15:59,058 一獲千金が狙えやすぜ。 215 00:15:59,058 --> 00:16:02,728 富札は 一枚二朱だ。 そんな金があったら苦労しねえや。 216 00:16:02,728 --> 00:16:06,365 だから 陰富ですよ。 217 00:16:06,365 --> 00:16:09,569 陰富か…。 218 00:16:11,904 --> 00:16:16,576 <当時 神社仏閣で行われていた 富くじの興行は➡ 219 00:16:16,576 --> 00:16:20,079 お上公認の いわば公営ギャンブル。➡ 220 00:16:20,079 --> 00:16:27,753 それに対して 闇業者が勝手に富札を作り 一枚数文で安く売るのが 陰富。➡ 221 00:16:27,753 --> 00:16:32,391 本物の富くじと同じ番号が 当たり札となる仕組みでした> 222 00:16:32,391 --> 00:16:34,460 いやいやいや 俺は ご直参だ。 223 00:16:34,460 --> 00:16:36,929 御法度の陰富に 手は出せねえ! 224 00:16:36,929 --> 00:16:38,865 まあ そう堅いこと言わずに。 225 00:16:38,865 --> 00:16:43,102 第一 なけなしの金つぎ込んで 外れでもしたら 元も子もねえや。 226 00:16:43,102 --> 00:16:46,973 それがね 当たり札を占う 寄加持ってのがあるんでさ。 227 00:16:46,973 --> 00:16:51,777 旦那 行ってみやしょう。 228 00:16:51,777 --> 00:16:56,949 金が入りゃ ご隠居さんの機嫌も よくなるんじゃねえですか? 229 00:16:56,949 --> 00:17:01,554 麟太郎は 男谷家に預かってもらいます。 230 00:17:01,554 --> 00:17:05,258 麟を よそにやられてたまるか! よし! 231 00:17:09,729 --> 00:17:13,566 向こうの 風通しのよいところに 並べて干しましょう。 232 00:17:13,566 --> 00:17:19,238 これは 父上が 御広敷番頭を勤めておいでの折➡ 233 00:17:19,238 --> 00:17:23,910 御台様より賜ったもの…。 234 00:17:23,910 --> 00:17:30,216 あのころの勝家の栄光は どこへ行ってしまったのでしょうねえ。 235 00:17:33,619 --> 00:17:39,091 おばば様の愚痴も 一緒に虫干しできるといいんだけど…。 236 00:17:39,091 --> 00:17:41,594 (彦四郎)おい! 小吉はいるか!? 237 00:17:41,594 --> 00:17:44,630 あら 男谷の兄上。 238 00:17:44,630 --> 00:17:47,099 ああ… おうおう おうおう おう! 239 00:17:47,099 --> 00:17:49,936 麟太郎が 大変なことになったのだ! 240 00:17:49,936 --> 00:17:51,871 まさか 怪我でも!? 241 00:17:51,871 --> 00:17:53,806 そのようなことではない! 242 00:17:53,806 --> 00:17:56,275 阿茶局様より お使いが来た。 243 00:17:56,275 --> 00:17:59,946 麟太郎が お城に召し出されることになったのだ! 244 00:17:59,946 --> 00:18:02,848 ええっ! ええっ… そ… それは…。 245 00:18:02,848 --> 00:18:07,053 公方様のお孫様 初之丞君の お遊び相手として➡ 246 00:18:07,053 --> 00:18:10,356 お城に上がるようにと ご沙汰があったのです! 247 00:18:10,356 --> 00:18:13,559 まあ… 若君の? 248 00:18:13,559 --> 00:18:16,462 おばば殿も お信も喜べ。 249 00:18:16,462 --> 00:18:22,668 麟太郎は これで 出世のはしごを登ることになるのだぞ! 250 00:18:29,375 --> 00:18:32,745 あそこが にわかごしらえの祈祷所でさ。 251 00:18:32,745 --> 00:18:44,757 ♬~ 252 00:18:44,757 --> 00:18:46,792 幸運を祈ってますよ。 253 00:18:46,792 --> 00:18:49,095 とっつぁん 頼まあ。 254 00:18:49,095 --> 00:18:51,998 ああ いいよ。 世話役の長兵衛さんです。 255 00:18:51,998 --> 00:18:53,966 古道具屋のおやじで➡ 256 00:18:53,966 --> 00:18:57,603 常から懇意にしてるもんで お代はツケにしてもらいやした。 257 00:18:57,603 --> 00:19:02,208 すまねえな。 ああ いえいえ。 さあさあ奥へ。 258 00:19:02,208 --> 00:19:19,558 (祈祷) 259 00:19:19,558 --> 00:19:23,362 殿村南平といって 加持祈祷の達人らしいですよ。 260 00:19:23,362 --> 00:19:25,297 ふ~ん。 261 00:19:25,297 --> 00:19:35,741 (祈祷) 262 00:19:35,741 --> 00:19:38,744 ああっ! (一同)おおっ! 263 00:19:41,247 --> 00:19:43,249 ええい! 264 00:19:45,084 --> 00:19:52,792 本日の当たり札! 265 00:19:54,760 --> 00:19:59,265 竹の…➡ 266 00:19:59,265 --> 00:20:09,275 881番! 267 00:20:09,275 --> 00:20:13,612 おおっ! よ~し! 268 00:20:13,612 --> 00:20:17,950 銀次 あの祈祷師 ここら辺りで よく加持やってんのか? 269 00:20:17,950 --> 00:20:20,786 いや 本所では お初でさ。 270 00:20:20,786 --> 00:20:23,823 ふ~ん… やっぱりな。 271 00:20:23,823 --> 00:20:26,959 梅の…。 ⚟梅…。⚟梅? 272 00:20:26,959 --> 00:20:42,975 3783番! 273 00:20:42,975 --> 00:20:45,878 おい ありゃ インチキだぜ。 274 00:20:45,878 --> 00:20:47,847 えっ? 275 00:20:47,847 --> 00:20:49,849 はっ…! 276 00:20:49,849 --> 00:20:56,155 本日の突き止め~! 277 00:20:56,155 --> 00:20:58,824 (一同)おおっ! 278 00:20:58,824 --> 00:21:23,015 亀の… 4989番! 279 00:21:24,617 --> 00:21:27,953 よっしゃ! よ~し! 280 00:21:27,953 --> 00:21:31,791 あっ いたぞ! 281 00:21:31,791 --> 00:21:34,627 どけ! おら! 邪魔だ! 282 00:21:34,627 --> 00:21:38,130 やいやい 殿村南平! このイカサマ野郎が! 283 00:21:38,130 --> 00:21:41,033 何を無礼な! 罰が当たるぞよ! 284 00:21:41,033 --> 00:21:43,936 ああ!? 当てられるもんなら 当ててみやがれ! 285 00:21:43,936 --> 00:21:48,841 芝神明様の富くじで てめえが口寄せした札は 全部外れたぜ! 286 00:21:48,841 --> 00:21:52,678 そうだ 有り金つぎ込んで こっちは 素寒貧だ! 287 00:21:52,678 --> 00:21:56,515 ⚟よくも だましやがったな! ⚟おう 勘弁ならねえ! 288 00:21:56,515 --> 00:22:02,755 おう! うちの先生に非礼いたすと ただでは置かぬぞ! 289 00:22:02,755 --> 00:22:04,690 とっとと帰れ! 290 00:22:04,690 --> 00:22:08,394 巻き込まれちゃ面倒です。 行きやしょう。おう。 291 00:22:08,394 --> 00:22:11,297 臼の化け物が! うりゃ! 292 00:22:11,297 --> 00:22:16,101 ど… どちら様も お鎮まりください! 293 00:22:16,101 --> 00:22:19,138 お鎮まり…。 邪魔だ! 294 00:22:19,138 --> 00:22:21,907 ああっ! 295 00:22:21,907 --> 00:22:23,909 よさねえか! 296 00:22:26,612 --> 00:22:29,415 いってえな… 何しやがんだ! 297 00:22:29,415 --> 00:22:32,418 皆様 喧嘩はやめてくだされ! 298 00:22:34,119 --> 00:22:38,991 ひいっ…! このイカサマ野郎が! 299 00:22:38,991 --> 00:22:41,293 いたたたた! 重い 重い! 痛い! 300 00:22:41,293 --> 00:22:43,629 喧嘩は… 喧嘩はやめてくだされ! 301 00:22:43,629 --> 00:22:48,434 喧嘩は やめてくだされ! やめてくだされ~! 302 00:22:48,434 --> 00:22:51,971 ほら ご覧ください。 303 00:22:51,971 --> 00:22:55,641 よく書けていますこと。 304 00:22:55,641 --> 00:23:03,749 書は人を表すといいますが 悠々とした 立派な手ですねえ。 305 00:23:03,749 --> 00:23:06,252 さすが 勝家の孫。 306 00:23:06,252 --> 00:23:11,123 これなら お城に上がっても 恥ずかしいことはありません。 307 00:23:11,123 --> 00:23:13,592 はい。 308 00:23:13,592 --> 00:23:18,097 でも お宿下がりまで家には戻れないなんて➡ 309 00:23:18,097 --> 00:23:21,133 寂しくなりますね。 310 00:23:21,133 --> 00:23:25,838 お信 そなたも 武士の子の親です。 311 00:23:25,838 --> 00:23:28,807 我が子の出世のかかっている時に➡ 312 00:23:28,807 --> 00:23:32,278 寂しいなどと 口にするものではありません。 313 00:23:32,278 --> 00:23:34,213 はい。 314 00:23:34,213 --> 00:23:36,782 あの おばば様。 うん? 315 00:23:36,782 --> 00:23:40,619 実は 少し前に 人相見に言われたのです。 316 00:23:40,619 --> 00:23:46,492 麟太郎は いずれ 天下を救う人物になるかもしれぬと。 317 00:23:46,492 --> 00:23:51,797 その人相見 大当たりかもしれませんね。 318 00:23:51,797 --> 00:23:54,633 まあ どうしましょう! 319 00:23:54,633 --> 00:23:56,568 フフフフフ! 320 00:23:56,568 --> 00:23:59,972 旦那様 早くお戻りになればいいのに。 321 00:23:59,972 --> 00:24:04,944 麟太郎をこしらえたことだけは 婿殿の手柄ですからね。 322 00:24:04,944 --> 00:24:07,079 ウフフフフ…。 323 00:24:07,079 --> 00:24:09,014 ⚟(利平次)あっ お帰りなさいませ。 324 00:24:09,014 --> 00:24:11,016 あっ お戻りです! 325 00:24:14,386 --> 00:24:16,322 あ~…。 旦那様 お危のうございます。 326 00:24:16,322 --> 00:24:19,925 大丈夫だ 酔っちゃいねえよ。 327 00:24:19,925 --> 00:24:22,761 お帰りなさい…。 328 00:24:22,761 --> 00:24:25,397 わっ お酒臭い…。 329 00:24:25,397 --> 00:24:29,101 どうなさったのです? 小普請金は出来たのですか? 330 00:24:29,101 --> 00:24:34,807 金 金 金 金 うるせえな ヒグラシじゃあるめえし。 331 00:24:37,409 --> 00:24:39,478 まあ 空っぽ。 332 00:24:39,478 --> 00:24:42,181 おい 水。 水 一杯くれ。 はい。 333 00:24:43,949 --> 00:24:46,285 しっかりしてください。 334 00:24:46,285 --> 00:24:51,123 今日 男谷の兄上が見えられて 大事なお話をして行かれたのですよ。 335 00:24:51,123 --> 00:24:55,294 兄上が? 麟を預ける話なら お断りだぜ。 336 00:24:55,294 --> 00:24:57,229 そうではありません。 337 00:24:57,229 --> 00:25:01,100 麟太郎が お城に召し出されることになって…。 338 00:25:01,100 --> 00:25:03,569 何だ? お城だ? 339 00:25:03,569 --> 00:25:07,072 夢の話なら 後にしてくれ。 うっ…! 340 00:25:07,072 --> 00:25:11,910 先日のお庭拝見の折に 麟太郎が お目に留まったのです。 341 00:25:11,910 --> 00:25:16,081 初之丞君のお遊び相手に 選ばれたのですよ! 342 00:25:16,081 --> 00:25:19,385 お信 俺 担ごうってんじゃねえだろうな? 343 00:25:19,385 --> 00:25:21,754 嘘や冗談で こんなこと言えません。 344 00:25:21,754 --> 00:25:28,093 兄上のところに 阿茶局様のお使いが見えられたのです。 345 00:25:28,093 --> 00:25:30,929 ようございましたねえ! 346 00:25:30,929 --> 00:25:35,801 これで 麟太郎が世に出る道が開けますよ! 347 00:25:35,801 --> 00:25:38,670 どうぞ。 348 00:25:38,670 --> 00:25:43,409 その話 断っちめえ。 349 00:25:43,409 --> 00:25:47,279 …えっ? お断り申し上げろ。 350 00:25:47,279 --> 00:25:50,949 麟を お城に上げるなんざ 真っ平だ。 351 00:25:50,949 --> 00:25:53,986 (登勢)何を言う! 352 00:25:53,986 --> 00:25:58,190 ご下命に背くことなどできませぬ! 353 00:26:00,559 --> 00:26:04,363 小便が近えんで 半時もじっとしてられねえ。 354 00:26:04,363 --> 00:26:07,232 とてもお役目は勤まりません とでも言っとけ! 355 00:26:07,232 --> 00:26:10,135 酔っ払いのざれ言としても 聞き捨てならぬ! 356 00:26:10,135 --> 00:26:13,105 そなたは 勝家を潰す気か! 357 00:26:13,105 --> 00:26:16,909 誰が何と言おうと 麟太郎は 城にはやらねえ! 358 00:26:16,909 --> 00:26:21,613 誰が何と言おうと お城にやります! 359 00:26:26,251 --> 00:26:29,922 旦那様…。 360 00:26:29,922 --> 00:26:33,759 おい 麟。 お前は お城に住みたいのか? 361 00:26:33,759 --> 00:26:36,795 お城ってのは そんなによい所か? 362 00:26:36,795 --> 00:26:39,264 それは…。 363 00:26:39,264 --> 00:26:41,934 こんなボロ家に住むのは ごめんだってのか? 364 00:26:41,934 --> 00:26:43,969 いいえ うちは好きです。 365 00:26:43,969 --> 00:26:46,104 だったら ここにいろ。 366 00:26:46,104 --> 00:26:49,608 でも… 私が お城に上がった方が➡ 367 00:26:49,608 --> 00:26:51,944 おばば様の気持ちが鎮まるのでは…。 368 00:26:51,944 --> 00:26:55,647 子どものくせに 大人の顔色をうかがうな! 369 00:27:00,652 --> 00:27:04,857 坊ちゃま 薪を取りに行きましょう。 さあ。 370 00:27:10,729 --> 00:27:12,664 (戸が閉まる音) 371 00:27:12,664 --> 00:27:16,235 ⚟(鈴の音) ⚟(登勢)南無妙法蓮華経…。 372 00:27:16,235 --> 00:27:18,170 一体 どうなさったのです! 373 00:27:18,170 --> 00:27:23,909 下戸なのに お酒なんか飲んで 頭が どうかしたのですか! 374 00:27:23,909 --> 00:27:28,580 麟太郎をくすぶらせては かわいそうだ。 世に出してやりたい。 375 00:27:28,580 --> 00:27:32,251 いつも そう仰せではありませんか! それなのに…! 376 00:27:32,251 --> 00:27:36,955 つべこべ言うな! やらねえったら やらねえんだ! 377 00:27:40,759 --> 00:27:42,961 寝る! 378 00:27:49,101 --> 00:27:53,305 旦那様の… 分からず屋! 379 00:27:55,607 --> 00:27:57,609 もう! 380 00:28:02,214 --> 00:28:05,117 そこが 勝様のお宅でさ。 381 00:28:05,117 --> 00:28:07,719 じゃあ あっしは これで。 382 00:28:07,719 --> 00:28:10,355 一緒に行ってくれないのかい? 383 00:28:10,355 --> 00:28:14,726 あっしが行くと 門前払いを食らっちまいまさあ。 384 00:28:14,726 --> 00:28:16,728 ヘヘヘ…。 385 00:28:21,366 --> 00:28:24,903 頭 痛え…。 386 00:28:24,903 --> 00:28:28,740 ⚟まあ! 祈祷所で喧嘩沙汰ですか? 387 00:28:28,740 --> 00:28:32,377 人に怪我をさせたのでしょうか? 物を壊したのでしょうか? 388 00:28:32,377 --> 00:28:34,313 申し訳ないことをいたしました! 389 00:28:34,313 --> 00:28:36,915 いえいえ 話があべこべでございます。 390 00:28:36,915 --> 00:28:39,818 喧嘩を鎮めてくださったのが 勝様で。 391 00:28:39,818 --> 00:28:41,787 えっ? 392 00:28:41,787 --> 00:28:46,258 (長兵衛)ゆうべのお礼と お詫びに伺ったのでございますよ。 393 00:28:46,258 --> 00:28:50,929 ああ~! 頭 冷やせ! 394 00:28:50,929 --> 00:28:54,766 まだ暴れるやつぁな 片っ端から…。 395 00:28:54,766 --> 00:28:59,771 どりゃ~! 竪川に蹴落とすぞ! 396 00:29:04,443 --> 00:29:06,712 さっ 旦那も お一つ。 397 00:29:06,712 --> 00:29:09,748 いやいや いやいや 俺は 酒は からっきしで…。 398 00:29:09,748 --> 00:29:11,883 勘弁してくれ。 399 00:29:11,883 --> 00:29:16,221 (長兵衛)その後 どっちに遺恨が残っても いけないからと おっしゃって➡ 400 00:29:16,221 --> 00:29:20,092 手打ちの酒まで 振る舞ってくださったのです。 401 00:29:20,092 --> 00:29:22,361 あ~! (笑い声) 402 00:29:22,361 --> 00:29:24,730 死人や縄付きが出ていれば➡ 403 00:29:24,730 --> 00:29:29,901 世話役を勤めた私も お咎めを受けるところでございました。 404 00:29:29,901 --> 00:29:34,740 勝様のおかげで 命拾いをいたしました。 405 00:29:34,740 --> 00:29:37,242 それで ゆうべ…。 406 00:29:39,911 --> 00:29:45,584 世話役の私が 酒肴を調えるのが 筋でございますのに➡ 407 00:29:45,584 --> 00:29:49,254 何せ 気が動転いたしておりまして…。 408 00:29:49,254 --> 00:29:57,129 これは 立て替えていただいた酒代でございます。 409 00:29:57,129 --> 00:29:59,264 おい よせやい。 410 00:29:59,264 --> 00:30:02,167 あっ 勝様 ゆうべは まことに ありがとうございました。 411 00:30:02,167 --> 00:30:04,603 礼はいいから その金持って帰んな。 412 00:30:04,603 --> 00:30:08,273 俺だって 武士の端くれだよ。 一回 出したものを引っ込められるか。 413 00:30:08,273 --> 00:30:10,208 あいたたた…。 414 00:30:10,208 --> 00:30:13,145 それでは 私の方の筋が通りません。 415 00:30:13,145 --> 00:30:15,147 銀次さんに伺いました。 416 00:30:15,147 --> 00:30:17,282 手打ちの酒に化けたのは➡ 417 00:30:17,282 --> 00:30:20,786 こちら様にとっては なくてはならない お金だと。 418 00:30:20,786 --> 00:30:24,122 あ… はい。 銀次の野郎 余計なことを…。 419 00:30:24,122 --> 00:30:26,425 いいから これ持って 帰ってくんな。 420 00:30:26,425 --> 00:30:29,294 いや そうは まいりません。 やいのやいの言うな。 421 00:30:29,294 --> 00:30:32,130 俺は 頭が痛えんだよ。 受け取れません。 422 00:30:32,130 --> 00:30:35,167 何だと この野郎 もう早く帰ってくれよ おい…。 423 00:30:35,167 --> 00:30:37,302 まあ お待ちください。 424 00:30:37,302 --> 00:30:41,173 あなたは 古道具を商っておいでなのですよね? 425 00:30:41,173 --> 00:30:43,475 はあ…。 426 00:30:45,177 --> 00:30:47,312 大したものはありませんが➡ 427 00:30:47,312 --> 00:30:50,315 いくつか見繕って 買い取っていただけませんか? 428 00:30:50,315 --> 00:30:52,451 お信…。 429 00:30:52,451 --> 00:30:54,986 どうぞ 損のないように目利きしてください。 430 00:30:54,986 --> 00:30:59,324 こちらは 二分ほど都合がつくと ありがたいのです。 431 00:30:59,324 --> 00:31:01,760 はい。 432 00:31:01,760 --> 00:31:05,397 ああ では…➡ 433 00:31:05,397 --> 00:31:09,267 この軸と…➡ 434 00:31:09,267 --> 00:31:12,938 これと➡ 435 00:31:12,938 --> 00:31:16,274 これで 二分で いかがでしょう? 436 00:31:16,274 --> 00:31:20,145 世話役さんよ そんなものは二束三文だぜ。 437 00:31:20,145 --> 00:31:22,948 玄人の見立てなのですから➡ 438 00:31:22,948 --> 00:31:26,952 旦那様が とやかく おっしゃることはありません。 439 00:31:28,620 --> 00:31:34,826 いい買い物をさせていただきました。 440 00:31:38,296 --> 00:31:40,232 ありがとうございます。 441 00:31:40,232 --> 00:31:43,034 お世話をかけました。 442 00:31:53,145 --> 00:31:55,347 (水をくむ音) 443 00:31:58,950 --> 00:32:07,392 旦那様は 麟太郎を手放すのが お寂しいのですか? 444 00:32:07,392 --> 00:32:14,099 飲めないお酒を召し上がったのには ちゃんと 訳があったのですもの。 445 00:32:14,099 --> 00:32:20,405 お城にやらないというのにも 何か お考えがおありなのでしょう? 446 00:32:23,275 --> 00:32:28,113 いつも 麟太郎だけは 日の当たる場所に出してやりたいと➡ 447 00:32:28,113 --> 00:32:31,416 おっしゃっているではありませんか。 448 00:32:31,416 --> 00:32:37,789 そりゃあな 身の丈に合った出世ならいいぜ。 449 00:32:37,789 --> 00:32:42,661 けどよ 若君のお相手じゃ➡ 450 00:32:42,661 --> 00:32:47,966 日が当たるどころか お天道様が近すぎて➡ 451 00:32:47,966 --> 00:32:52,637 麟が焼かれて 落っこっちまう。 452 00:32:52,637 --> 00:32:56,308 周りは 御大家の息子だらけ。 453 00:32:56,308 --> 00:33:03,582 僅か二分の金を作るのにせえ 四苦八苦している無役の親の子は➡ 454 00:33:03,582 --> 00:33:06,918 麟だけだろうよ…。 455 00:33:06,918 --> 00:33:09,821 あいつが いくら 利口者でも➡ 456 00:33:09,821 --> 00:33:16,528 小身者の子と いじめられて つれえ思いをするだけだ。 457 00:33:18,263 --> 00:33:22,133 貧乏勝だの 四十俵取りの微禄者だのと➡ 458 00:33:22,133 --> 00:33:24,936 しつこく笑い者にしやがった。 459 00:33:24,936 --> 00:33:27,606 惨めな思いをして➡ 460 00:33:27,606 --> 00:33:32,477 麟のまっつぐな心が いじけて曲がっちまうのが➡ 461 00:33:32,477 --> 00:33:34,980 俺ぁ 恐ろしいんだ…。 462 00:33:37,616 --> 00:33:41,486 すいません 私 ぼんやりで…➡ 463 00:33:41,486 --> 00:33:47,959 旦那様のお気持ちを 察することができなくて…。 464 00:33:47,959 --> 00:33:53,832 でも 麟太郎は そんなに弱い子ではありません。 465 00:33:53,832 --> 00:34:01,239 ああ見えて 負けん気は強いし 度胸も据わっています。 466 00:34:01,239 --> 00:34:05,243 旦那様に よく似ていますから。 467 00:34:13,818 --> 00:34:19,324 どなた様の ご入来だ? 立派な乗り物だなあ。 468 00:34:30,268 --> 00:34:32,270 あ…! 469 00:34:36,775 --> 00:34:40,946 男谷の遠縁の者で 昌と申します。 470 00:34:40,946 --> 00:34:47,118 ただいまは 阿茶の名を頂き 西丸呉服の間に詰めております。 471 00:34:47,118 --> 00:34:51,122 お初に お目にかかります。 信と申します。 472 00:34:52,791 --> 00:34:57,629 今日は 親類の一人として伺いました。 473 00:34:57,629 --> 00:35:00,231 麟太郎のことですね。 474 00:35:00,231 --> 00:35:04,069 降って湧いたような話で さぞ驚いていると思い➡ 475 00:35:04,069 --> 00:35:07,572 いきさつを お伝えしに参ったのです。 476 00:35:11,242 --> 00:35:13,178 (鼻緒が切れる音) あっ! 477 00:35:13,178 --> 00:35:15,180 あ…。 478 00:35:19,751 --> 00:35:23,254 鼻緒が切れるのは 縁起が悪いのだ。 479 00:35:23,254 --> 00:35:26,257 不吉だなあ。 ああ 不吉だ。 480 00:35:26,257 --> 00:35:28,393 これ! 481 00:35:28,393 --> 00:35:33,098 縁起が悪いなどと言うのは 間違った迷信です。 482 00:35:33,098 --> 00:35:35,767 鼻緒が切れるのは 厄落とし。 483 00:35:35,767 --> 00:35:40,972 災いを避けることができたのですから むしろ めでたいのです。 484 00:35:44,275 --> 00:35:47,946 麟太郎が そのように差し出たことを…。 485 00:35:47,946 --> 00:35:52,283 うちでは しょっちゅう 鼻緒が切れるものですから。 486 00:35:52,283 --> 00:35:55,286 下駄も草履も安物で…。 487 00:35:55,286 --> 00:35:57,956 これ!あ…。 フフフフ…。 488 00:35:57,956 --> 00:36:00,725 差し出口ではありません。 489 00:36:00,725 --> 00:36:08,900 麟太郎殿のひと言で 子どもたちは鎮まり 皆 明るい気持ちになったのですよ。➡ 490 00:36:08,900 --> 00:36:14,706 その様子を ご休息にいらしていた上様が ご覧になられて➡ 491 00:36:14,706 --> 00:36:20,612 あのように快活で機転の利く者こそ 初之丞君のお遊び相手にふさわしいと➡ 492 00:36:20,612 --> 00:36:22,914 仰せになられたのです。 493 00:36:22,914 --> 00:36:24,849 上様が…! 494 00:36:24,849 --> 00:36:26,785 まあ…! 495 00:36:26,785 --> 00:36:29,387 もったいない お言葉…。 496 00:36:29,387 --> 00:36:33,091 お城に上がるとなれば 何かと物入りですが➡ 497 00:36:33,091 --> 00:36:35,126 案じることはありません。 498 00:36:35,126 --> 00:36:38,763 ご公儀から 支度金が下されますから。 499 00:36:38,763 --> 00:36:40,765 はい。 500 00:36:43,101 --> 00:36:45,770 親に甲斐性がないもので➡ 501 00:36:45,770 --> 00:36:50,608 麟太郎は これまで ろくな躾を受けていません。 502 00:36:50,608 --> 00:36:53,511 あのような者でも お役に立つのであらば➡ 503 00:36:53,511 --> 00:36:58,483 よろしく お引き回しください。 504 00:36:58,483 --> 00:37:01,986 よろしくお頼み申します。 505 00:37:04,722 --> 00:37:10,929 大事なご子息 確かにお預かり申します。 506 00:37:15,233 --> 00:37:21,039 <今日は 麟太郎が めでたくお城に上がる日> 507 00:37:23,108 --> 00:37:27,312 家内円満 無病息災。 508 00:37:31,082 --> 00:37:34,285 前途洋々。 509 00:37:38,957 --> 00:37:54,773 (鳶の鳴き声) 510 00:38:01,880 --> 00:38:06,050 立派なもんだ。 「馬子にも衣装」たあ このこったな。 511 00:38:06,050 --> 00:38:11,222 勝家の跡取りとして しっかり ご奉公に励むのですよ。 512 00:38:11,222 --> 00:38:14,726 くれぐれも 体を大切になさいね。 513 00:38:14,726 --> 00:38:16,928 はい。 514 00:38:18,596 --> 00:38:23,067 おばば様 父上 母上。 515 00:38:23,067 --> 00:38:25,970 お達者で お暮らしください。 516 00:38:25,970 --> 00:38:37,248 ♬~ 517 00:38:37,248 --> 00:38:41,753 おい 何を ぐずぐずしている! 518 00:38:41,753 --> 00:38:46,257 支度はよいか? 出立するぞ。 519 00:38:46,257 --> 00:38:48,259 はい。 520 00:38:57,869 --> 00:39:03,575 坊ちゃまの… 晴れ姿でございますね。 ええ…。 521 00:39:05,210 --> 00:39:07,145 (小声で)「鬼ばばの目にも涙」か。 522 00:39:07,145 --> 00:39:09,080 旦那様! 523 00:39:09,080 --> 00:39:14,285 「鳶が鷹を生む」とは このことですよ。 524 00:39:24,229 --> 00:39:29,934 さ… ご先祖様に ご報告申し上げなければ。 525 00:39:32,904 --> 00:39:36,374 神武以来 鳶が鷹を生んだためしはねえや。 526 00:39:36,374 --> 00:39:41,246 まことに。 「瓜の蔓に茄子はならぬ」と言いますもの。 527 00:39:41,246 --> 00:39:44,916 麟のやつは 俺に似たとこがあっていけねえ。 528 00:39:44,916 --> 00:39:47,585 俺のすることを見て育ったら➡ 529 00:39:47,585 --> 00:39:52,257 行く末 どんな ばかに育つか 分かんねえや。 530 00:39:52,257 --> 00:39:56,761 俺のまねは しねえがいいのよ。 旦那様…。 531 00:39:56,761 --> 00:39:59,797 (鳶の鳴き声) 532 00:39:59,797 --> 00:40:02,567 鳶だって 広いとこに出りゃ➡ 533 00:40:02,567 --> 00:40:06,271 鷹より もっと遠くまで飛べるかもしれねえぜ。 534 00:40:06,271 --> 00:40:09,941 鳶でも鷹でもいいじゃありませんか。 535 00:40:09,941 --> 00:40:14,279 空を飛ぶことに 変わりはありませんもの。 536 00:40:14,279 --> 00:40:22,987 それに 私は 瓜も茄子も 両方とも大好物ですよ。 537 00:40:22,987 --> 00:40:24,989 ハハッ 何 言ってんだい。 538 00:40:24,989 --> 00:40:29,827 ハハハハ!ウフフフ! (鳶の鳴き声) 539 00:40:29,827 --> 00:40:43,641 ♬~ 540 00:40:43,641 --> 00:40:49,847 <めでたいけれど ちょっぴり さみしい 我が子の旅立ち> 541 00:40:52,650 --> 00:40:57,355 (鳶の鳴き声) 542 00:41:01,092 --> 00:41:05,096 (鳶の鳴き声) 543 00:41:08,399 --> 00:41:14,105 <麟太郎の将来が 明るく開けていきますように。➡ 544 00:41:14,105 --> 00:41:20,278 それが お信の一番の願いでした> 545 00:41:20,278 --> 00:41:23,181 女を一人 もらい受けることにした。 え? 546 00:41:23,181 --> 00:41:25,616 勝様 私を連れて逃げてください…。 547 00:41:25,616 --> 00:41:27,552 お雪殿…。 548 00:41:27,552 --> 00:41:29,787 お好きなのですか? その方のことが…。 549 00:41:29,787 --> 00:41:32,623 女をもらう掛け合いに 女房を行かせる ばかがいるかよ! 550 00:41:32,623 --> 00:41:34,559 放してください! 551 00:41:34,559 --> 00:41:36,494 書き置き… あいつ! 552 00:41:36,494 --> 00:41:40,298 私が必ず 話をつけてまいります。 553 00:41:40,298 --> 00:42:17,935 ♬~ 554 00:42:17,935 --> 00:42:55,239 ♬~