1 00:00:33,040 --> 00:00:38,846 桜草や 桜草~! 2 00:00:38,846 --> 00:00:45,253 <売り声高く町を行く 桜草売りは 春のお江戸の名物です> 3 00:00:45,253 --> 00:00:47,622 まあ かわいらしい。 4 00:00:47,622 --> 00:00:50,525 おばば様 これがよいのではありませんか? 5 00:00:50,525 --> 00:00:54,795 うん… あっ 花付きは でも こちらがよさそうですよ。 6 00:00:54,795 --> 00:00:57,131 そうですねえ。 でも 色みは こちらが…。 7 00:00:57,131 --> 00:01:01,802 <桜に似た愛らしい花が 女性たちに大人気。➡ 8 00:01:01,802 --> 00:01:04,472 高価な園芸品種も作られましたが➡ 9 00:01:04,472 --> 00:01:06,407 棒手振りが売り歩くのは➡ 10 00:01:06,407 --> 00:01:10,645 荒川の土手から 引っこ抜いてきた 野生の花です> 11 00:01:10,645 --> 00:01:13,281 ええい 2つで十文に まけときまさあ。 12 00:01:13,281 --> 00:01:15,816 両方 買ってやっておくんなせえ。 13 00:01:15,816 --> 00:01:17,752 2つで十文? 14 00:01:17,752 --> 00:01:20,688 一つ お遊様にお届けしましょう。 15 00:01:20,688 --> 00:01:25,293 では こちらと こちらを頂きます。 16 00:01:25,293 --> 00:01:30,131 18の頃だよ。 20人ばかりの鳶と喧嘩になってな。 17 00:01:30,131 --> 00:01:36,904 鳶口を受けたはずみに 鍔元三寸で 刀がぽっきり折れちまった。 18 00:01:36,904 --> 00:01:39,774 脇差しで切り払って なんとか逃げ延びたが➡ 19 00:01:39,774 --> 00:01:42,109 あんな危ねえことはなかったな。 20 00:01:42,109 --> 00:01:45,947 それからよ 刀の目利きの稽古を始めたんだ。 21 00:01:45,947 --> 00:01:48,616 俺が請け合う。 22 00:01:48,616 --> 00:01:52,787 こいつは無銘だが 長船だ。 23 00:01:52,787 --> 00:01:56,958 掛値は言わねえ 五両でどうだ? 24 00:01:56,958 --> 00:02:02,129 <古道具屋の長兵衛の世話で始めた 刀の売買が軌道に乗って➡ 25 00:02:02,129 --> 00:02:06,829 勝家の暮らしは ようやく上向いてきました> 26 00:02:08,636 --> 00:02:20,636 ♬~ 27 00:02:26,821 --> 00:02:29,490 ほい おめえの取り分だ。 28 00:02:29,490 --> 00:02:33,361 あ~ ありがてえ! また いい客 探してきやすぜ。 29 00:02:33,361 --> 00:02:37,231 みんなで 蕎麦でも食いな。 あっ ありがとうございます。 30 00:02:37,231 --> 00:02:41,936 皆さん 勝様から また頂戴しましたよ。 31 00:02:41,936 --> 00:02:44,438 ありがとうございます! 32 00:02:44,438 --> 00:02:50,111 いや~ おかげさまで 市の客足も ぐんと増えましてございましてね。 33 00:02:50,111 --> 00:02:52,947 旦那が どしっと座っていなさりゃあ➡ 34 00:02:52,947 --> 00:02:56,450 所のワルどもは寄ってきやせんや! 35 00:02:56,450 --> 00:02:59,253 体のいい用心棒か。 36 00:02:59,253 --> 00:03:03,124 (お清)いつも おごっていただいて…。 殿様のご内証が苦しくなりゃしませんか? 37 00:03:03,124 --> 00:03:06,961 ああ 今は 楽なもんだ。 息子はお城だし 世話がかからねえ。 38 00:03:06,961 --> 00:03:09,864 御殿に上がって もう2年になりやすねえ。 39 00:03:09,864 --> 00:03:13,467 まだ突っ返されてねえところを見ると うまくやってるみたいだぜ。 40 00:03:13,467 --> 00:03:18,139 はあ~ 出来た坊ちゃんで 殿様は お幸せだ。 ねえ。 41 00:03:18,139 --> 00:03:22,643 今に出世なすって 大きな門の 立派なお屋敷に お住みになりますよ。 42 00:03:22,643 --> 00:03:25,479 大名じゃあるめえし そんな大げさなもんじゃねえやい。 43 00:03:25,479 --> 00:03:27,415 そうだよ。 違えねえよ。 44 00:03:27,415 --> 00:03:29,350 ねえ! ハハハハ! 45 00:03:29,350 --> 00:03:32,150 また お前か。 46 00:03:38,592 --> 00:03:42,763 うわっ…! 何のまねだ? 47 00:03:42,763 --> 00:03:47,435 この刀 目利きを頼みたい。 48 00:03:47,435 --> 00:03:50,771 ふ~ん。 どれ 見してごらんよ。 49 00:03:50,771 --> 00:03:56,444 おお ナマクラだが 魚の骨くらいは切れそうだな。 50 00:03:56,444 --> 00:03:58,779 何っ!? 51 00:03:58,779 --> 00:04:02,450 振り回しちゃ危ねえ。 とっとと納めな。 52 00:04:02,450 --> 00:04:04,385 ううっ! 53 00:04:04,385 --> 00:04:07,121 <この男 名は 小林隼太。➡ 54 00:04:07,121 --> 00:04:12,993 本所の剣術道場の食客で めっぽう気の荒い乱暴者> 55 00:04:12,993 --> 00:04:17,131 や~! や~! 56 00:04:17,131 --> 00:04:19,066 うわっ! ああ~! 57 00:04:19,066 --> 00:04:23,003 <試合を挑んで たたきのめされたことを 遺恨に思い➡ 58 00:04:23,003 --> 00:04:27,203 度々 小吉に突っかかってくるのですが…> 59 00:04:37,218 --> 00:04:40,588 あんな野郎 一発ぶちのめしてやりゃいいのに! 60 00:04:40,588 --> 00:04:42,523 ばかをお言いでないよ。 61 00:04:42,523 --> 00:04:45,926 坊ちゃんのご出世の障りに ならないようにと➡ 62 00:04:45,926 --> 00:04:49,230 殿様は身を慎んでおいでなんだ。 63 00:04:49,230 --> 00:04:53,230 何だか 聖人君子になっちまったようだよ…。 64 00:05:01,809 --> 00:05:04,445 男谷様からのお使いの方が見えて➡ 65 00:05:04,445 --> 00:05:07,782 すぐに お屋敷の方に いらしていただきたいとのことです。 66 00:05:07,782 --> 00:05:09,717 ちょうどよかった。 67 00:05:09,717 --> 00:05:12,953 桜草をお届けに上がるつもりでしたから➡ 68 00:05:12,953 --> 00:05:17,458 旦那様が戻られたら 一緒に伺うと伝えてください。 69 00:05:17,458 --> 00:05:20,494 それが… まず奥様お一人で➡ 70 00:05:20,494 --> 00:05:22,494 おいでいただきたいそうで。 71 00:05:24,799 --> 00:05:29,470 話というのは 麟太郎のことなのだが…。 72 00:05:29,470 --> 00:05:31,405 はい。 73 00:05:31,405 --> 00:05:35,276 近々 お城を下がることが決まった。 74 00:05:35,276 --> 00:05:38,746 まさか 悪い病にでも…。 75 00:05:38,746 --> 00:05:41,081 いや 達者にしておる。 76 00:05:41,081 --> 00:05:43,017 そうですか…。 77 00:05:43,017 --> 00:05:48,222 では 何か ご不興を被るような 粗相をいたしましたか? 78 00:05:48,222 --> 00:05:51,125 麟太郎に落ち度はない。 79 00:05:51,125 --> 00:05:56,430 実は… 初之丞君が患っておいでなのだ。 80 00:05:56,430 --> 00:05:58,365 若君様が…。 81 00:05:58,365 --> 00:06:01,936 一月ほど前から 床に就いておいでだそうです。 82 00:06:01,936 --> 00:06:04,238 そんなに お悪いのですか? 83 00:06:04,238 --> 00:06:13,914 ううむ… 医者の見立てでは ご平癒は難しいかもしれぬと。 84 00:06:13,914 --> 00:06:18,118 まだ幼くていらっしゃるのに…。 85 00:06:18,118 --> 00:06:24,625 麟太郎のお城勤めも これきりになると 覚悟しておいた方がよかろう。 86 00:06:24,625 --> 00:06:29,797 若君ご不例のこと 一切口外無用だ。 よいな。 87 00:06:29,797 --> 00:06:32,399 はい。 88 00:06:32,399 --> 00:06:38,205 はあ… 麟太郎も運のないやつ。 89 00:06:38,205 --> 00:06:44,411 若君に仕えておれば いずれは ひとかどの役職にも就けたであろうに…。 90 00:06:44,411 --> 00:06:48,916 おばば様が さぞ がっかりされることでしょうね…。 91 00:06:48,916 --> 00:06:50,851 ええ…。 92 00:06:50,851 --> 00:06:53,787 それより 気がかりなのは 小吉の方だ。 93 00:06:53,787 --> 00:06:57,091 このところ 神妙に暮らしているようだが➡ 94 00:06:57,091 --> 00:07:01,762 それも 麟太郎がご奉公しておればこそ。 95 00:07:01,762 --> 00:07:05,633 ヤケになって また無法なことなどせねばよいが…。 96 00:07:05,633 --> 00:07:09,436 しっかりと 手綱を引かねばなりませぬよ。 97 00:07:09,436 --> 00:07:13,774 くれぐれも 家内円満を心がけて。 98 00:07:13,774 --> 00:07:16,243 はい。 99 00:07:16,243 --> 00:07:18,779 あっ…。 100 00:07:18,779 --> 00:07:21,079 これを。 101 00:07:29,490 --> 00:07:35,262 今年初めて売りに来ましたので 一鉢持ってまいりました。 102 00:07:35,262 --> 00:07:39,733 麟太郎にも 一花咲かせてやりたかったが…。 103 00:07:39,733 --> 00:07:41,733 まことに…。 104 00:07:43,604 --> 00:07:47,408 ≪兄上 御用とは何ですか? 105 00:07:47,408 --> 00:07:51,745 道具市に出ていることに対しての お小言なら 御免被りますよ。 106 00:07:51,745 --> 00:07:54,081 何も悪事をしやしめえし➡ 107 00:07:54,081 --> 00:07:57,084 刀剣の目利きを 引き受けてるだけですから。 108 00:07:57,084 --> 00:08:01,422 市の者たちが 殿様殿様と 大事にしてくれましてね。 109 00:08:01,422 --> 00:08:05,592 麟のことなんぞ 今に 大名に出世するんじゃないかと思ってる。 110 00:08:05,592 --> 00:08:08,495 たわいのない連中ですよ。 ハハハ! 111 00:08:08,495 --> 00:08:11,098 旦那様…。 112 00:08:11,098 --> 00:08:15,598 …ん? 何かあったか? 113 00:08:18,772 --> 00:08:22,443 (登勢)なんと 若君様が…。 114 00:08:22,443 --> 00:08:24,378 あらあら…。 115 00:08:24,378 --> 00:08:29,378 麟太郎は どうなるのでしょう…。 116 00:08:32,119 --> 00:08:39,193 ようやく 勝家の立て直しの道が 開けたというのに…。 117 00:08:39,193 --> 00:08:44,732 麟太郎まで 世間のあぶれ者になったら➡ 118 00:08:44,732 --> 00:08:52,072 あの世で ご先祖様に合わせる顔がありません…。 119 00:08:52,072 --> 00:08:54,975 そんな お気の早い…。 120 00:08:54,975 --> 00:08:58,579 (泣き声) 121 00:08:58,579 --> 00:09:03,879 (鈴の音) 122 00:09:06,320 --> 00:09:14,820 勝家先祖代々一家一門の諸精霊 追善供養。 123 00:09:16,964 --> 00:09:26,640 南無妙法蓮華経 南無妙法蓮華経 南無妙法蓮華経。 124 00:09:26,640 --> 00:09:43,390 ♬~ 125 00:09:43,390 --> 00:09:48,062 お信。 麟が戻ってきたら また にぎやかになるぜ。 126 00:09:48,062 --> 00:09:50,964 ヘヘヘヘ…。 旦那様…。 127 00:09:50,964 --> 00:09:54,735 まずは 学問の師匠を見つけてやんねえとな。 128 00:09:54,735 --> 00:09:58,072 あいつの食いぶちも 稼がなきゃなんねえし。 129 00:09:58,072 --> 00:10:01,942 さ~て 忙しくなるぞ! 130 00:10:01,942 --> 00:10:06,413 そうですね。 また にぎやかになりますね。 131 00:10:06,413 --> 00:10:08,348 おう! 132 00:10:08,348 --> 00:10:12,048 あっ いけない。 お水を…。 133 00:10:24,798 --> 00:10:28,598 花は まだ咲いたばかり。 134 00:10:31,105 --> 00:10:33,040 <それから 程なく➡ 135 00:10:33,040 --> 00:10:36,340 麟太郎が 城から戻ってきました> 136 00:10:42,716 --> 00:10:50,124 父上 母上 おばば様 お変わりなくて 安堵いたしました。 137 00:10:50,124 --> 00:10:55,796 おめえも 無事で戻って何よりだ。 138 00:10:55,796 --> 00:11:01,969 また いつ お召し出しがあるか分からぬ。 身を慎んで 日々を過ごすのだぞ。 139 00:11:01,969 --> 00:11:03,904 心得ました。 140 00:11:03,904 --> 00:11:08,142 長々のお勤め ご苦労さまでした。 141 00:11:08,142 --> 00:11:11,812 すっかり大人びて…。 142 00:11:11,812 --> 00:11:15,112 背も少し伸びましたね。 143 00:11:17,151 --> 00:11:21,989 <事情はあれど 成長した我が子との久々の再会➡ 144 00:11:21,989 --> 00:11:25,189 うれしくないはずはありません> 145 00:11:28,662 --> 00:11:31,231 太郎坊 おまんま出来たよ~。 146 00:11:31,231 --> 00:11:33,731 はい はいはい。 147 00:11:38,438 --> 00:11:40,738 (一同)いただきます。 148 00:11:42,943 --> 00:11:45,979 お城じゃ うめえもん たくさん頂いてたんだろ? 149 00:11:45,979 --> 00:11:50,450 はい。 でも 鮒も納豆も出ませんでした。 150 00:11:50,450 --> 00:11:54,321 母上の作る ご馳走の方が 私は ずっと好きです。 151 00:11:54,321 --> 00:11:57,624 まあ…。 こいつ 世辞言うことを覚えやがったよ。 152 00:11:57,624 --> 00:11:59,560 (笑い声) 153 00:11:59,560 --> 00:12:03,497 婿殿。 麟太郎の学問の師匠は 見つかりましたか? 154 00:12:03,497 --> 00:12:05,499 三ツ目之橋を渡った向かいに➡ 155 00:12:05,499 --> 00:12:08,969 旗本の用人の原田主膳というのが 塾を開いておりまして➡ 156 00:12:08,969 --> 00:12:10,904 そこがよかろうかと。 157 00:12:10,904 --> 00:12:16,104 まあ 婿殿にしては手回しのよいこと。 158 00:12:17,678 --> 00:12:22,516 その師匠 人物は確かなのでしょうね? 159 00:12:22,516 --> 00:12:26,386 (小声で)探さなきゃ文句言うし 探したら探したで ケチつけるし➡ 160 00:12:26,386 --> 00:12:29,156 ちっ 始末に負えねえや…。 161 00:12:29,156 --> 00:12:31,091 何ですって? 162 00:12:31,091 --> 00:12:33,927 ご安心なさい。 兄上のご推薦ですよ。 163 00:12:33,927 --> 00:12:39,433 彦四郎殿の? それでは安心です。 164 00:12:39,433 --> 00:12:43,133 なぜ 先に そのことを言わぬのですか? 165 00:12:47,774 --> 00:12:52,246 麟太郎が戻った早々に…。 166 00:12:52,246 --> 00:12:56,450 これを聞くと 我が家に帰ってきた気がいたします。 167 00:12:56,450 --> 00:12:59,253 では 本日の勝負は? 168 00:12:59,253 --> 00:13:01,188 引き分け。 169 00:13:01,188 --> 00:13:03,790 フフフフ! ウフフフフ…。 170 00:13:03,790 --> 00:13:06,627 何にしても 学問には身を入れなきゃいけねえよ。 171 00:13:06,627 --> 00:13:10,464 はい。 俺は12の時に湯島の聖堂に入れられたが➡ 172 00:13:10,464 --> 00:13:12,799 読書なんぞは 退屈でね。 173 00:13:12,799 --> 00:13:16,970 毎日 抜け出して 剣術や馬の稽古ばかりしていたら➡ 174 00:13:16,970 --> 00:13:19,806 とうとう 学問所を追い出されたよ。 175 00:13:19,806 --> 00:13:22,142 ろくに文字も知らねえもんだから➡ 176 00:13:22,142 --> 00:13:28,282 上役のところに 逢対に出た時 てめえの名も書けずに 往生したよ。 177 00:13:28,282 --> 00:13:30,217 名前が? 178 00:13:30,217 --> 00:13:34,421 自分の恥を よく子どもに聞かせられますね。 179 00:13:34,421 --> 00:13:40,421 俺が 悪い手本だから 戒めのために聞かせるんです。 180 00:13:46,600 --> 00:13:48,600 麟太郎。 181 00:13:58,779 --> 00:14:00,714 ふん! 182 00:14:00,714 --> 00:14:03,116 ふん! 183 00:14:03,116 --> 00:14:05,452 (おならの音) お~ 今日も いい調子だ。 184 00:14:05,452 --> 00:14:07,387 なあ 麟。 185 00:14:07,387 --> 00:14:10,791 お塾に行ってまいります。 186 00:14:10,791 --> 00:14:13,126 何だよ…。 187 00:14:13,126 --> 00:14:15,462 ふん! 188 00:14:15,462 --> 00:14:23,136 (子どもたち)「子 曰く 賢を見ては 斉しからんことを思い➡ 189 00:14:23,136 --> 00:14:29,810 不賢を見ては 内に自ら省みるなり。➡ 190 00:14:29,810 --> 00:14:37,084 曾子曰く 吾 日に三度 吾が身を省みる。➡ 191 00:14:37,084 --> 00:14:42,422 人の為に謀りて忠ならざるか。➡ 192 00:14:42,422 --> 00:14:47,928 朋友と交わりて 信ならざるか。➡ 193 00:14:47,928 --> 00:14:51,428 習わざるを傳うるか」。 194 00:15:06,947 --> 00:15:10,647 あんな顔 前はしなかったのに…。 195 00:15:14,254 --> 00:15:19,960 これを 麟太郎の着物に 仕立て直しておあげなさい。 196 00:15:19,960 --> 00:15:23,630 おばば様のお気に入り… こんな上等なものを? 197 00:15:23,630 --> 00:15:28,135 貧しいなりをさせて あの子が負い目に思うといけません。 198 00:15:28,135 --> 00:15:30,070 子どもなのですから➡ 199 00:15:30,070 --> 00:15:34,408 垢じみたり破れていたりしなければ それで十分ですよ。 200 00:15:34,408 --> 00:15:38,578 いいえ。 あの子は お城勤めをした身。 201 00:15:38,578 --> 00:15:42,416 周りも そういう目で見るのです。 202 00:15:42,416 --> 00:15:45,752 麟太郎に恥をかかせる気ですか。 203 00:15:45,752 --> 00:15:49,423 でも 身の丈に合った暮らしをさせる方が…。 204 00:15:49,423 --> 00:15:55,595 麟太郎が侮られては 勝家の恥辱です。 205 00:15:55,595 --> 00:15:58,632 (足音) 206 00:15:58,632 --> 00:16:01,401 坊ちゃまのお迎えに行ってまいります。 207 00:16:01,401 --> 00:16:04,304 私が。 208 00:16:04,304 --> 00:16:06,940 今日は 私が迎えに行きます。 209 00:16:06,940 --> 00:16:08,940 は? 210 00:16:10,610 --> 00:16:15,482 札差の番頭が刀を売りたがってます。 備前助包って話ですがね。 211 00:16:15,482 --> 00:16:18,485 折り紙付きなら 値打ちもんだな。 へい。 212 00:16:18,485 --> 00:16:20,787 お宿下がりってのは どういう訳だろうね? 213 00:16:20,787 --> 00:16:23,123 坊ちゃん 勤めを しくじっちまったんじゃねえか? 214 00:16:23,123 --> 00:16:25,058 ちょいと およしよ! 215 00:16:25,058 --> 00:16:28,261 ちぇっ! つまらねえ噂しやがって。 216 00:16:28,261 --> 00:16:30,964 悪気はねえんだ。 気にすんな。 217 00:16:30,964 --> 00:16:34,401 ねえ 旦那 何か 深い訳があるんでござんしょう? 218 00:16:34,401 --> 00:16:38,271 話してくれたっていいじゃねえですか。 おめえの知ったこっちゃねえや。 219 00:16:38,271 --> 00:16:41,575 あっ! あいつ また来てやすぜ。 220 00:16:41,575 --> 00:16:44,911 しつこい野郎だな。 相手にすんな。 221 00:16:44,911 --> 00:16:46,847 へい。 222 00:16:46,847 --> 00:16:51,418 ご子息が お役御免になったそうだな。 223 00:16:51,418 --> 00:16:53,920 随分 自慢にしていたが➡ 224 00:16:53,920 --> 00:17:01,661 こうなってみると かえって惨めなものだ。 225 00:17:01,661 --> 00:17:05,661 抜くか? あ? おう! 226 00:17:08,768 --> 00:17:14,574 ハッ! 親父が こんな腰抜けでは 倅も先が知れてるわ。 227 00:17:14,574 --> 00:17:20,480 一生 お役目にありつけずに 過ごすだろうよ。 おら! 228 00:17:20,480 --> 00:17:22,616 うわっ! あっ! あっ…。 229 00:17:22,616 --> 00:17:26,786 筵敷きでも 俺の店だ。 土足で踏み込むたぁ どういう了見だい! 230 00:17:26,786 --> 00:17:29,689 や~! ううう…! 231 00:17:29,689 --> 00:17:31,625 うわ~! 232 00:17:31,625 --> 00:17:33,593 うわっ! じたばたするねえ! 233 00:17:33,593 --> 00:17:36,196 亀みてえで みっともねえや! ハハハハハ! 234 00:17:36,196 --> 00:17:42,002 てめえみたいな野郎に コケにされるほど まだ 焼きは回ってねえんだよ! 235 00:17:42,002 --> 00:17:44,002 父上! 236 00:17:49,743 --> 00:17:51,943 旦那様…。 237 00:17:56,082 --> 00:17:58,082 うう…! 238 00:18:00,954 --> 00:18:05,792 「君子は争うところなし」と 塾で習いました。 239 00:18:05,792 --> 00:18:13,633 立派な人は 争いを好まず 競い合う時も礼儀正しくするそうです。 240 00:18:13,633 --> 00:18:18,939 父上が踏みつけていた人も 同じ武士ではありませんか。 241 00:18:18,939 --> 00:18:23,109 なぜ あのように辱めるのですか? 242 00:18:23,109 --> 00:18:28,609 父上は まるで ならず者のようでした。 243 00:18:33,753 --> 00:18:36,556 麟太郎 およしなさい。 244 00:18:36,556 --> 00:18:39,192 何か 訳がおありなのですよ。 245 00:18:39,192 --> 00:18:42,562 訳とは何ですか? 246 00:18:42,562 --> 00:18:44,497 言えないようなことなのですか? 247 00:18:44,497 --> 00:18:50,197 うるせえ! 子どもの分際で 親に意見するんじゃねえ! 248 00:18:52,739 --> 00:18:54,674 あっ…! 249 00:18:54,674 --> 00:19:07,220 ♬~ 250 00:19:07,220 --> 00:19:09,756 旦那様! 251 00:19:09,756 --> 00:19:28,608 ♬~ 252 00:19:28,608 --> 00:19:30,644 これに植え替えましょう。 253 00:19:30,644 --> 00:19:33,380 ありがとう。 はい。 254 00:19:33,380 --> 00:19:38,051 はあ… 私が余計なことをしたばっかりに。 255 00:19:38,051 --> 00:19:45,191 あの子に 旦那様のいいところを 見せるつもりだったのですが…。 256 00:19:45,191 --> 00:19:51,064 銀次が 勝手口の前を うろうろしておりました。 257 00:19:51,064 --> 00:19:54,934 坊ちゃんには 出世の見込みがないと言われて➡ 258 00:19:54,934 --> 00:19:58,738 つい 手が出てしまったそうです。 そう。 259 00:19:58,738 --> 00:20:02,609 やはり 気に病んでいらしたのですね。 260 00:20:02,609 --> 00:20:05,211 お役目に就けない悔しさ➡ 261 00:20:05,211 --> 00:20:10,417 旦那様が 誰よりも 身にしみておいでですもの…。 262 00:20:10,417 --> 00:20:16,222 子の出世を願わない親はいませんよ。 ええ。 263 00:20:16,222 --> 00:20:21,761 でも いくら賢くても偉くなっても➡ 264 00:20:21,761 --> 00:20:25,961 親を見下す子には なってほしくないのです。 265 00:20:27,567 --> 00:20:32,405 (子どもたち) 「吾 日に三度 吾が身を省みる。➡ 266 00:20:32,405 --> 00:20:37,310 人の為に謀りて忠ならざるか。➡ 267 00:20:37,310 --> 00:20:42,782 朋友と交わりて 信ならざるか。➡ 268 00:20:42,782 --> 00:20:46,082 習わざるを傳うるか」。 269 00:20:48,121 --> 00:20:52,625 (犬の吠え声) 270 00:20:52,625 --> 00:20:55,462 (うなり声) 271 00:20:55,462 --> 00:20:58,131 (子どもたちの悲鳴) (男)子どもが噛まれたぞ! 272 00:20:58,131 --> 00:21:00,967 (子ども1)助けて! (子ども2)誰か! 273 00:21:00,967 --> 00:21:02,902 (吠え声) 274 00:21:02,902 --> 00:21:04,902 こら! 275 00:21:09,275 --> 00:21:11,275 坊ちゃん! 276 00:21:13,813 --> 00:21:15,849 戸板 持ってこい! へい! 277 00:21:15,849 --> 00:21:20,153 誰か 市に行って 勝の旦那に知らせろ! (男)分かりやした! 278 00:21:20,153 --> 00:21:23,656 坊ちゃん! しっかりしなせえ! 279 00:21:23,656 --> 00:21:34,100 ♬~ 280 00:21:34,100 --> 00:21:37,003 麟太郎 無事か!? 281 00:21:37,003 --> 00:21:39,773 旦那様! 怪我の具合は? 282 00:21:39,773 --> 00:21:44,110 (道庵)今 拝見しております。 283 00:21:44,110 --> 00:21:46,045 こりゃあ いかん。 284 00:21:46,045 --> 00:21:49,616 急所を噛み破られて 玉が下りておる。 285 00:21:49,616 --> 00:21:53,486 えっ…。 先生 麟太郎は…!? 286 00:21:53,486 --> 00:21:58,124 この傷では どうも難しい…。 287 00:21:58,124 --> 00:22:00,460 目ぇ 覚ませ! お前も武士だろう! 288 00:22:00,460 --> 00:22:03,363 何をするのです! おやめください! ああっ! 289 00:22:03,363 --> 00:22:05,799 ぼやぼやしてないで 早く傷を縫え! 290 00:22:05,799 --> 00:22:08,635 (道庵)はい ただいま。 縫っても 助かるかどうか…。 291 00:22:08,635 --> 00:22:10,670 つべこべ言わずに さっさとやれ! 292 00:22:10,670 --> 00:22:14,440 麟 気をしっかり持て。 293 00:22:14,440 --> 00:22:28,021 ♬~ 294 00:22:28,021 --> 00:22:30,023 何のまねですか? 295 00:22:30,023 --> 00:22:32,959 おい 麟。 今から傷を縫うが➡ 296 00:22:32,959 --> 00:22:35,728 お前も武士の子なら我慢しろ! 297 00:22:35,728 --> 00:22:39,432 泣いたり暴れたりしたら 承知しねえぞ! 298 00:22:39,432 --> 00:22:48,441 ♬~ 299 00:22:48,441 --> 00:22:50,376 うう…。 300 00:22:50,376 --> 00:23:08,761 ♬~ 301 00:23:08,761 --> 00:23:14,133 なんのこれくれえ 痛えことがあるもんか! 302 00:23:14,133 --> 00:23:18,972 じっとしてろ。 動くと たたっ斬るぞ! 303 00:23:18,972 --> 00:23:28,147 ♬~ 304 00:23:28,147 --> 00:23:30,650 麟太郎…。 305 00:23:30,650 --> 00:23:42,095 ♬~ 306 00:23:42,095 --> 00:23:45,431 どうか どうか お助けくださいまし…。 307 00:23:45,431 --> 00:23:48,768 お願い申し上げます…! 308 00:23:48,768 --> 00:23:52,068 南無妙法蓮華経…。 309 00:24:02,248 --> 00:24:08,121 縫うには縫いましたが あの傷では…。 310 00:24:08,121 --> 00:24:13,621 命のほどは 今夜にも請け負えませぬ。 311 00:24:18,698 --> 00:24:45,224 (泣き声) 312 00:24:45,224 --> 00:24:48,761 麟太郎…。 313 00:24:48,761 --> 00:24:51,230 ばか! なに 泣いてんだ! 314 00:24:51,230 --> 00:24:54,100 玉ぁ 噛まれたぐらいで 死んでたまるか! 315 00:24:54,100 --> 00:24:57,437 麟は そんなに弱かねえ! はい…。 316 00:24:57,437 --> 00:25:00,773 どけ! 317 00:25:00,773 --> 00:25:04,610 めそめそしやがったら 承知しねえぞ! 318 00:25:04,610 --> 00:25:07,246 あっ… どこへ? 319 00:25:07,246 --> 00:25:15,621 ♬~ 320 00:25:15,621 --> 00:25:17,557 (犬の吠え声) 321 00:25:17,557 --> 00:25:19,492 な… 何だ ありゃ? 322 00:25:19,492 --> 00:25:21,794 何だ? 今のは…。 鬼か? 323 00:25:21,794 --> 00:25:28,468 あああ~! 324 00:25:28,468 --> 00:25:41,748 ♬~ 325 00:25:41,748 --> 00:25:45,084 金比羅様に お頼み申し上げます。 326 00:25:45,084 --> 00:25:47,754 倅の命を助けていただきたい! 327 00:25:47,754 --> 00:25:50,089 何を引き換えにしても かまわない。 328 00:25:50,089 --> 00:25:54,961 どうか この願いだけは お聞き届けください! 329 00:25:54,961 --> 00:26:04,237 ♬~ 330 00:26:04,237 --> 00:26:08,941 麟… 死なさねえぞ。 331 00:26:08,941 --> 00:26:10,877 や~い! 待て~! 332 00:26:10,877 --> 00:26:12,812 や~い! 333 00:26:12,812 --> 00:26:17,950 旦那様が 誰も中にいれるなと申しております。 334 00:26:17,950 --> 00:26:22,255 何を言っている? 伯父が見舞いに来たのだぞ。 335 00:26:22,255 --> 00:26:25,158 私にも部屋に入るなと申しますので…。 336 00:26:25,158 --> 00:26:29,996 ≪いや~! や~! 337 00:26:29,996 --> 00:26:34,400 小吉のやつ とうとう狂ったか…。 ≪や~! 338 00:26:34,400 --> 00:26:37,437 かわいそうに…。 339 00:26:37,437 --> 00:26:39,572 ≪いや~! いいえ。 340 00:26:39,572 --> 00:26:43,443 狂ってなどおりません。 341 00:26:43,443 --> 00:26:49,082 ≪いや~! 旦那様は ただ 麟太郎を助けるために…。 342 00:26:49,082 --> 00:26:52,752 ≪ああ~! 一心不乱で…。 343 00:26:52,752 --> 00:26:56,089 ≪いや~! 344 00:26:56,089 --> 00:27:00,426 今日のところは お引き取りください。 ≪や~! 345 00:27:00,426 --> 00:27:07,934 や~! さ~! だ~! だ~! 346 00:27:07,934 --> 00:27:09,969 ああ~! 347 00:27:09,969 --> 00:27:14,169 おりゃ~! だ~! 348 00:27:16,242 --> 00:27:22,442 麟。 この部屋の邪気は 俺が全て切り払った! 349 00:27:25,451 --> 00:27:27,487 お前を連れ去ろうとするやつは➡ 350 00:27:27,487 --> 00:27:30,623 決して この部屋に入れねえ! 351 00:27:30,623 --> 00:27:40,733 ♬~ 352 00:27:40,733 --> 00:27:43,569 水を替えてまいりました。 353 00:27:43,569 --> 00:27:46,269 ≪そこに置いとけ。 354 00:27:56,149 --> 00:27:58,084 麟太郎の具合は…? 355 00:27:58,084 --> 00:28:01,087 大丈夫だ。 じきによくなる。 356 00:28:01,087 --> 00:28:03,890 旦那様 何か召し上がらないと…。 357 00:28:03,890 --> 00:28:06,225 いらねえ! 358 00:28:06,225 --> 00:28:09,128 埃が入る。 早く閉めろ! 359 00:28:09,128 --> 00:28:11,430 はい…。 360 00:28:11,430 --> 00:28:27,880 ♬~ 361 00:28:27,880 --> 00:28:30,449 ≪いや~! 362 00:28:30,449 --> 00:28:32,385 また始まったよ…。 363 00:28:32,385 --> 00:28:34,887 刀 振り回して 暴れているらしい。 ≪うお~! 364 00:28:34,887 --> 00:28:39,058 ここに来ちまったってのは 本当のようだね。 ≪いや~! 365 00:28:39,058 --> 00:28:42,061 旦那…。 ≪だ~! 366 00:28:42,061 --> 00:28:50,670 南無妙法蓮華経 南無妙法蓮華経 南無妙法蓮華経 南無妙法蓮華経➡ 367 00:28:50,670 --> 00:28:52,670 南無妙法蓮華経…。 368 00:28:55,408 --> 00:28:59,745 麟太郎の命を お助けください。 369 00:28:59,745 --> 00:29:28,241 ♬~ 370 00:29:28,241 --> 00:29:30,176 やはり…。 371 00:29:30,176 --> 00:29:32,545 (足音) 372 00:29:32,545 --> 00:29:35,581 あっ ちと尋ねるが…。 あっ はい。 373 00:29:35,581 --> 00:29:40,419 今 お百度を踏んでおったのは どちらのお内儀かな? 374 00:29:40,419 --> 00:29:42,555 あ… はあ…。 375 00:29:42,555 --> 00:29:47,727 でも お百度は 人に知られんように踏むものですから…。 376 00:29:47,727 --> 00:29:53,532 いや ちと見かけたところな 知り合いの者だったような気がして➡ 377 00:29:53,532 --> 00:29:58,904 もし 困っていることがあったら 力になりたいのだ。 378 00:29:58,904 --> 00:30:03,409 はあ… そういうことでしたら。 379 00:30:03,409 --> 00:30:08,281 お気の毒に 坊ちゃんのお命が 明日をも知れぬのです。 380 00:30:08,281 --> 00:30:10,283 なんと…。 381 00:30:10,283 --> 00:30:12,418 奉公先から戻され➡ 382 00:30:12,418 --> 00:30:16,922 悪いことは重なるとやらで 犬に急所を噛まれました。➡ 383 00:30:16,922 --> 00:30:22,094 その上 勝の殿様までが おかしくなってしまわれたそうで…。 384 00:30:22,094 --> 00:30:24,094 勝? 385 00:30:29,435 --> 00:30:32,635 では あの子が…。 386 00:30:44,450 --> 00:30:49,789 皆 見舞いに来たいって言うんですが 大勢 押しかけては ご迷惑ですから➡ 387 00:30:49,789 --> 00:30:53,626 私が 総代で参りました。 388 00:30:53,626 --> 00:30:58,126 これを 坊ちゃまに。 389 00:31:07,139 --> 00:31:10,042 それぞれが 勝手に願を掛けて➡ 390 00:31:10,042 --> 00:31:12,945 神様同士 喧嘩になっちゃいけませんから➡ 391 00:31:12,945 --> 00:31:17,745 そろって 江戸六地蔵に 参ってきたんでございますよ。 392 00:31:24,690 --> 00:31:32,298 品川 新宿 巣鴨➡ 393 00:31:32,298 --> 00:31:41,006 上野 浅草 深川…。 394 00:31:41,006 --> 00:31:43,609 全部 回ってくださったのですか? 395 00:31:43,609 --> 00:31:50,116 お地蔵様は 子どもを守る菩薩様だから きっと 坊ちゃんを助けてくださると➡ 396 00:31:50,116 --> 00:31:53,452 茶屋のお清さんが言いだしましてね。 397 00:31:53,452 --> 00:31:57,123 みんなが 一緒に行くって聞かぬものですから➡ 398 00:31:57,123 --> 00:32:02,928 ぞろぞろ連れ立って 2日で回ってまいりました。 399 00:32:02,928 --> 00:32:07,133 麟太郎は きっと助かります。 400 00:32:07,133 --> 00:32:13,005 皆様のお志が お地蔵様に通じないはずありません。 401 00:32:13,005 --> 00:32:17,843 そうですとも ええ… きっと よくなりますとも! 402 00:32:17,843 --> 00:32:19,845 はい! 403 00:32:19,845 --> 00:32:21,981 (すすり泣き) 404 00:32:21,981 --> 00:32:27,787 ♬~ 405 00:32:27,787 --> 00:32:31,223 では 失礼いたします。 ありがとうございました。 406 00:32:31,223 --> 00:32:34,023 どうぞ お大事に。 407 00:32:40,599 --> 00:32:44,236 あの~…。 408 00:32:44,236 --> 00:32:47,106 勝様のお宅は こちらですか? 409 00:32:47,106 --> 00:32:50,443 ええ。 勝は うちですよ。 410 00:32:50,443 --> 00:32:57,143 薬種問屋の日野屋から お客様に頼まれて お薬を届けに参りました。 411 00:33:01,120 --> 00:33:03,622 これを。 412 00:33:03,622 --> 00:33:05,658 うちで一番の薬です。 413 00:33:05,658 --> 00:33:09,128 人参が入っていますから よく効きますよ。 414 00:33:09,128 --> 00:33:12,631 そんな高価なものを… どなたからですか? 415 00:33:12,631 --> 00:33:16,135 え~っと… 品のよい ご隠居様からです。 416 00:33:16,135 --> 00:33:20,639 どちらの? それは申し上げられないのですが…。 417 00:33:20,639 --> 00:33:23,476 あっ そうだ! 418 00:33:23,476 --> 00:33:26,979 これをお渡しするように言われました。 419 00:33:26,979 --> 00:33:28,914 おこし…? 420 00:33:28,914 --> 00:33:30,950 どうぞ お大事に。 421 00:33:30,950 --> 00:33:44,096 ♬~ 422 00:33:44,096 --> 00:33:46,031 あ…。 423 00:33:46,031 --> 00:33:50,436 美濃屋の石原おこしです。 土産に買って帰ろうと存じまして。 424 00:33:50,436 --> 00:33:52,771 おこし? ハハハ…。 425 00:33:52,771 --> 00:33:55,674 あのお方が…? 426 00:33:55,674 --> 00:33:59,874 でも どうして 麟太郎のことを…。 427 00:34:04,950 --> 00:34:08,787 ひょっとして…➡ 428 00:34:08,787 --> 00:34:14,587 あのご隠居様は 白鬚様の化身…。 429 00:34:21,367 --> 00:34:23,335 <小僧さんは➡ 430 00:34:23,335 --> 00:34:27,139 白鬚大明神の お使いだったのかもしれない。➡ 431 00:34:27,139 --> 00:34:33,839 …と 向島の方角に 夢中で手を合わせる お信でした> 432 00:34:46,091 --> 00:34:49,791 <犬に襲われてから7日> 433 00:34:55,100 --> 00:34:57,937 もう大丈夫。 434 00:34:57,937 --> 00:35:02,737 ああ…。 よかった…。 435 00:35:07,947 --> 00:35:14,747 <ようやく熱が下がって 麟太郎は 危うい命を取りとめました> 436 00:35:19,458 --> 00:35:22,127 (いびき) 437 00:35:22,127 --> 00:35:24,463 あらまあ。 438 00:35:24,463 --> 00:35:32,263 (いびき) 439 00:35:36,742 --> 00:35:39,211 母上…。 440 00:35:39,211 --> 00:35:41,580 重湯が出来ましたよ。 441 00:35:41,580 --> 00:35:44,083 食べて力をつけましょうね。 442 00:35:44,083 --> 00:35:46,383 はい…。 443 00:35:49,588 --> 00:35:53,225 さ… よいしょ。 444 00:35:53,225 --> 00:35:57,596 あの船 どうしたかなあ…。 え? 445 00:35:57,596 --> 00:36:00,633 川岸に泊まっていた船ですよ。 446 00:36:00,633 --> 00:36:04,103 川… 大川ですか? 447 00:36:04,103 --> 00:36:07,773 さあ… 違うようでした。 448 00:36:07,773 --> 00:36:15,648 白い着物の子どもたちが 船に乗って 向こう岸に渡っていきました。 449 00:36:15,648 --> 00:36:18,948 私も乗りたかったのですが…。 450 00:36:29,461 --> 00:36:31,730 乗ってはならぬ! 451 00:36:31,730 --> 00:36:33,730 うわっ! 452 00:36:35,401 --> 00:36:38,437 鍾馗様のような怖い顔の人が➡ 453 00:36:38,437 --> 00:36:42,574 乗るなと言って 私を引き戻すのです。 454 00:36:42,574 --> 00:36:46,412 遠くの方で お地蔵様が手招きしていたので➡ 455 00:36:46,412 --> 00:36:50,215 そっちの方に向かって 歩いていきました。 456 00:36:50,215 --> 00:36:55,054 そう…。 夢を見ていたのですね。 457 00:36:55,054 --> 00:37:01,427 夢かなあ… 本当にあったような気がするなあ…。 458 00:37:01,427 --> 00:37:06,231 麟太郎を引き戻してくださった 怖いお顔の鍾馗様は➡ 459 00:37:06,231 --> 00:37:08,934 父上に似ていませんでしたか? 460 00:37:08,934 --> 00:37:12,805 あ… そういえば…。 461 00:37:12,805 --> 00:37:19,645 七日七夜 ずっと麟太郎を抱いていらしたのですよ。 462 00:37:19,645 --> 00:37:21,947 父上が…。 463 00:37:21,947 --> 00:37:25,250 うう… う~ん…。 464 00:37:25,250 --> 00:37:27,319 いっけねえ 眠っちまった。 465 00:37:27,319 --> 00:37:31,390 奥に布団を敷きますから ゆっくり休んでください。 466 00:37:31,390 --> 00:37:34,193 いや こうしちゃいられねえ。 467 00:37:34,193 --> 00:37:37,062 お礼参りが まだだった。 468 00:37:37,062 --> 00:37:39,064 よかったな 麟。 しっかり食え。 469 00:37:39,064 --> 00:37:42,201 はい。 470 00:37:42,201 --> 00:37:46,739 父上… 何で裸なんだろう? 471 00:37:46,739 --> 00:37:51,076 ウフフフ…。 フフフ…。 472 00:37:51,076 --> 00:37:56,415 さあ 頂きましょう。 473 00:37:56,415 --> 00:38:03,589 眠っている間にあったことは 後で ゆっくり話してあげましょうね。 474 00:38:03,589 --> 00:38:06,625 次は きっと ぶちのめしてやる…。 475 00:38:06,625 --> 00:38:08,761 え? 476 00:38:08,761 --> 00:38:12,097 あの犬です。 よく人を襲うので…。 477 00:38:12,097 --> 00:38:14,032 (吠え声) 478 00:38:14,032 --> 00:38:15,968 (犬のうなり声) 479 00:38:15,968 --> 00:38:17,970 (子どもたちの悲鳴) 480 00:38:17,970 --> 00:38:21,440 懲らしめてやるつもりが…。 481 00:38:21,440 --> 00:38:24,109 不覚でした。 482 00:38:24,109 --> 00:38:29,448 まあ… それで。 483 00:38:29,448 --> 00:38:32,248 さあ。 484 00:38:34,052 --> 00:38:37,923 <三途の川を渡り損ねた麟太郎。➡ 485 00:38:37,923 --> 00:38:41,560 怪我が すっかりよくなって 床上げするまでには➡ 486 00:38:41,560 --> 00:38:45,060 それから二月ほど かかりました> 487 00:38:48,901 --> 00:38:57,409 (菖蒲売り)菖蒲~ 菖蒲~。 488 00:38:57,409 --> 00:39:02,080 <端午の節句の前日 軒先に菖蒲を挿すのは➡ 489 00:39:02,080 --> 00:39:05,751 邪気や災いを払うためのおまじない> 490 00:39:05,751 --> 00:39:10,422 そうですね。 そこがよいでしょう。 はい。 491 00:39:10,422 --> 00:39:40,385 ♬~ 492 00:39:40,385 --> 00:39:44,056 ちょうど このくらいの季節だったなあ。 493 00:39:44,056 --> 00:39:47,559 ガキの頃 上方にでも行ってみようかって 思いついて➡ 494 00:39:47,559 --> 00:39:49,494 家を飛び出したんだ。 ふ~ん。 495 00:39:49,494 --> 00:39:54,066 ところが 浜松の宿で 道中荒らしにやられて➡ 496 00:39:54,066 --> 00:39:56,902 着物も路銀も すっかり盗られちまった。 497 00:39:56,902 --> 00:39:59,738 さすがに 途方に暮れたっけ。 498 00:39:59,738 --> 00:40:02,207 それで 家に戻ったのですか? 499 00:40:02,207 --> 00:40:06,078 戻りゃしねえよ。 そのまま お伊勢さんまで行ったよ。 500 00:40:06,078 --> 00:40:08,413 無一文で どうやって? 501 00:40:08,413 --> 00:40:11,450 道中 情けをかけてくれる人が 大勢いてな。 502 00:40:11,450 --> 00:40:18,090 みんな 貧しい人だったが 地獄で地蔵様に会うようだった。 503 00:40:18,090 --> 00:40:22,594 旅は情け 人は心さ。 504 00:40:22,594 --> 00:40:26,594 人間 どこで何をしようが 生きていけるもんだ。 505 00:40:28,233 --> 00:40:30,168 そうだ。 506 00:40:30,168 --> 00:40:33,772 江戸に帰る途中 箱根の辺りで崖から落ちて➡ 507 00:40:33,772 --> 00:40:36,241 岩の角で 金玉 したたかに打ちつけた。 508 00:40:36,241 --> 00:40:38,176 えええっ…! 509 00:40:38,176 --> 00:40:41,780 痛くて痛くて 立ち居もままならねえ。 510 00:40:41,780 --> 00:40:47,119 あれには 往生したぞ~。 511 00:40:47,119 --> 00:40:49,054 なあ 麟。 512 00:40:49,054 --> 00:40:56,461 俺たちは よくよく金玉に祟られた親子だなあ。 513 00:40:56,461 --> 00:41:00,132 そうですね 父上…。 514 00:41:00,132 --> 00:41:02,634 ウフフ…。 515 00:41:02,634 --> 00:41:05,134 ああ~! 516 00:41:07,139 --> 00:41:11,009 (菖蒲を打ちつける音) いいか 麟。 こうしてな 鳴らしてみな。 517 00:41:11,009 --> 00:41:13,209 (菖蒲を打ちつける音) おお うめえ! 518 00:41:14,880 --> 00:41:17,482 ウフフ…。 519 00:41:17,482 --> 00:41:19,818 よいしょ! (菖蒲を打ちつける音) 520 00:41:19,818 --> 00:41:22,154 (菖蒲を打ちつける音) おお いい音だ! 521 00:41:22,154 --> 00:41:24,454 ちぎれた! アハハハ! 522 00:41:26,024 --> 00:41:29,224 似たもの親子…。 523 00:41:33,432 --> 00:41:36,468 <この父にして この子あり。➡ 524 00:41:36,468 --> 00:41:42,607 一心不乱に突き進む 小吉の性根は そっくり 麟太郎に受け継がれ➡ 525 00:41:42,607 --> 00:41:47,807 やがて 大きな花を咲かせることになるのです> 526 00:41:51,116 --> 00:41:53,785 おばば殿が戻らない? 家出なさったのでは…! 527 00:41:53,785 --> 00:41:55,821 心を穏やかに。 528 00:41:55,821 --> 00:41:59,658 お上人様のお言葉が 心にしみたのでございます。 529 00:41:59,658 --> 00:42:02,961 この野郎! まだ成仏しねえか…。 530 00:42:02,961 --> 00:42:04,997 あなたは 誰なのですか? 531 00:42:04,997 --> 00:42:07,632 ありゃ間違えねえや 暗闇の丑松だ。 532 00:42:07,632 --> 00:42:11,136 あっ…! 駄目です 丑松さん! 533 00:42:11,136 --> 00:43:25,636 ♬~