1 00:00:32,646 --> 00:00:34,715 痛むのは この辺りですか? 2 00:00:34,715 --> 00:00:36,851 うう…! あっ…。 3 00:00:36,851 --> 00:00:38,786 奥様のお手を煩わせては 罰が当たります…。 4 00:00:38,786 --> 00:00:42,056 いけません。 じっとしていらっしゃい。 はあ…。 5 00:00:42,056 --> 00:00:45,860 <天保5年。 年明けから 利平次は体調を崩し➡ 6 00:00:45,860 --> 00:00:48,729 床に就く日が続いていました> 7 00:00:48,729 --> 00:00:52,566 (登勢) まったく失礼な人! 8 00:00:52,566 --> 00:00:54,869 あ…。 あっ そのまま そのまま。 9 00:00:54,869 --> 00:00:56,804 あら おいしそう。 10 00:00:56,804 --> 00:01:00,074 食が細っている時には 干し柿がいいというので➡ 11 00:01:00,074 --> 00:01:02,977 根岸の智恵さんに 送ってもらったのですが…。 12 00:01:02,977 --> 00:01:06,413 根岸? ああ おばば様の幼なじみの…。 13 00:01:06,413 --> 00:01:11,886 あの人ときたら こんなものまで添えてきて。 14 00:01:11,886 --> 00:01:16,724 「しわがよる ほくろが出来る 背がかがむ➡ 15 00:01:16,724 --> 00:01:21,562 頭は禿げる 毛は白くなる」。 16 00:01:21,562 --> 00:01:29,270 「くどくなる 気短かになる 愚痴になる 思いつくこと みな古くなる」。 17 00:01:29,270 --> 00:01:31,205 あら まあ。 ハハハハ…。 ウフフ…。 18 00:01:31,205 --> 00:01:35,042 「寄る年波に自戒を込めて」などと 書いてありますが➡ 19 00:01:35,042 --> 00:01:38,913 私は あの人より2つも若いのですよ! 20 00:01:38,913 --> 00:01:42,216 老いの坂は 上れば下るもの。 21 00:01:42,216 --> 00:01:44,852 養生第一でございますよ。 22 00:01:44,852 --> 00:01:48,722 養生ねえ…。 23 00:01:48,722 --> 00:01:51,225 そなたこそですよ。 24 00:01:51,225 --> 00:01:53,561 ああ…。 25 00:01:53,561 --> 00:01:59,867 根岸のお方に どうか よろしく お礼を申し上げてくださいまし。 26 00:01:59,867 --> 00:02:01,936 分かりました。 27 00:02:01,936 --> 00:02:06,236 では 早々に礼状を…。 はっ。 28 00:02:08,876 --> 00:02:12,413 利平次のおかげで ご機嫌が直ったようです。 29 00:02:12,413 --> 00:02:15,316 フフフ…。 フフフ…。 30 00:02:15,316 --> 00:02:21,422 早く よくなって 長生きしてもらわねば困りますよ。 31 00:02:21,422 --> 00:02:23,357 はい。 32 00:02:23,357 --> 00:02:28,762 麟太郎坊ちゃまのご出世を見届けるまでは 達者でおりますとも。 33 00:02:28,762 --> 00:02:30,698 ええ。 34 00:02:30,698 --> 00:02:42,698 ♬~ 35 00:02:44,245 --> 00:02:49,045 (稽古の声) 36 00:02:57,224 --> 00:02:59,260 <麟太郎は 12歳。➡ 37 00:02:59,260 --> 00:03:04,732 麻布狸穴の男谷道場で 剣術の修行に励んでいます。➡ 38 00:03:04,732 --> 00:03:08,569 江戸屈指の剣豪 男谷精一郎は 彦四郎の養子で➡ 39 00:03:08,569 --> 00:03:11,238 麟太郎とは 従兄の間柄。➡ 40 00:03:11,238 --> 00:03:13,173 年は 小吉とも近く➡ 41 00:03:13,173 --> 00:03:18,012 若い頃は一緒になって 荒っぽい喧嘩もしたものですが➡ 42 00:03:18,012 --> 00:03:23,312 今では 穏やかな人柄と高い教養で 人望を集めています> 43 00:03:25,085 --> 00:03:27,588 参れ。 44 00:03:27,588 --> 00:03:30,424 参れ! 45 00:03:30,424 --> 00:03:32,924 はっ! 46 00:03:37,031 --> 00:03:38,966 ありがとうございました。 47 00:03:38,966 --> 00:03:42,903 「大学の道は 明徳を明らかにするに存り➡ 48 00:03:42,903 --> 00:03:45,739 民を新たにするに存り」。 49 00:03:45,739 --> 00:03:47,708 もう一度。 50 00:03:47,708 --> 00:03:54,048 <彦四郎は月に数度 麟太郎を呼び出し 学問の進み具合を確かめます。➡ 51 00:03:54,048 --> 00:03:57,551 というのも…> 52 00:03:57,551 --> 00:04:03,424 麟太郎さんも 来年か再来年には 素読吟味を受けるのですから➡ 53 00:04:03,424 --> 00:04:07,861 よくよく お励みにならないと いけませんよ。 はい。 54 00:04:07,861 --> 00:04:13,067 <素読吟味とは 湯島の聖堂で開かれる学力試験。➡ 55 00:04:13,067 --> 00:04:17,738 これに合格することが 幕臣の出世の第一歩でした> 56 00:04:17,738 --> 00:04:23,243 此度 本丸老中になられた 水野越前守様は➡ 57 00:04:23,243 --> 00:04:29,416 清廉潔白 真面目一筋 学問第一のお方と聞く。 58 00:04:29,416 --> 00:04:34,021 いずれ お引き立てにあずかれるよう 研鑽を積むのだぞ。 59 00:04:34,021 --> 00:04:35,956 はい。 60 00:04:35,956 --> 00:04:41,528 「古えの明徳を 天下に明らかにせんと欲する者は」…。 61 00:04:41,528 --> 00:04:47,728 <麟太郎の成長を 何よりも楽しみにしていた 利平次は…> 62 00:05:00,381 --> 00:05:04,051 干し柿のへた…。 63 00:05:04,051 --> 00:05:05,986 利平次…。 64 00:05:05,986 --> 00:05:07,921 <二月 寝ついたあと➡ 65 00:05:07,921 --> 00:05:14,228 お信たちに看取られ 静かに この世を去っていきました> 66 00:05:14,228 --> 00:05:27,408 ♬~ 67 00:05:27,408 --> 00:05:31,178 お信。 お信 来ておくれ。 68 00:05:31,178 --> 00:05:33,113 は~い。 69 00:05:33,113 --> 00:05:35,913 また ナメクジでも出たのかしら。 70 00:05:38,819 --> 00:05:42,022 花鳥図のお軸は どこにやりました? 71 00:05:42,022 --> 00:05:45,692 そこにありませんか? ないから探しているのですよ。 72 00:05:45,692 --> 00:05:49,563 確かに ここに しまったのですが…。 73 00:05:49,563 --> 00:05:53,834 婿殿が 道具市に出したのではないでしょうね? 74 00:05:53,834 --> 00:05:57,371 まさか! おばば様の部屋では? 75 00:05:57,371 --> 00:06:02,571 私の部屋にはありません。 ここに しまったのですから! 76 00:06:07,714 --> 00:06:10,050 探しても無駄ですよ。 77 00:06:10,050 --> 00:06:11,985 あら? 78 00:06:11,985 --> 00:06:14,185 あ…。 79 00:06:22,062 --> 00:06:25,933 誰が こんな所に…。 80 00:06:25,933 --> 00:06:29,570 見つかって ようございましたね。 81 00:06:29,570 --> 00:06:32,339 む…。 82 00:06:32,339 --> 00:06:35,676 出かけてきます。 どちらへ? 83 00:06:35,676 --> 00:06:38,178 お軸は どうなさるのです? 84 00:06:38,178 --> 00:06:42,049 白鬚大明神に 長寿の願いを取り下げていただきます。 85 00:06:42,049 --> 00:06:44,051 えっ? 86 00:06:44,051 --> 00:06:46,353 長生きしても ろくなことはない。 87 00:06:46,353 --> 00:06:52,826 くどくなる 気短になる 愚痴になる 物忘れして 孫にまで ばかにされる。 88 00:06:52,826 --> 00:06:54,761 なにも そんな…。 89 00:06:54,761 --> 00:06:58,061 利平次 出かけますよ。 90 00:07:13,146 --> 00:07:16,646 お信まで 私にあんな口を…。 91 00:07:19,086 --> 00:07:21,388 まっ! 嫌だ! 92 00:07:21,388 --> 00:07:24,424 あ~あ 情けない…。 93 00:07:24,424 --> 00:07:27,261 鳥まで 私のこと ばかにして…。 94 00:07:27,261 --> 00:07:30,397 うっ… 痛…。 95 00:07:30,397 --> 00:07:32,697 ううっ… 痛…。 96 00:07:34,268 --> 00:07:36,203 うっ…。 97 00:07:36,203 --> 00:07:39,006 いかがなされました? 98 00:07:39,006 --> 00:07:40,941 急な差し込み…。 99 00:07:40,941 --> 00:07:45,779 ああ それは いけない。 さあ こちらへ。 100 00:07:45,779 --> 00:07:56,356 ♬~ 101 00:07:56,356 --> 00:08:00,527 おばば殿が戻らない? 私が強く言ったのがいけなかったのです。 102 00:08:00,527 --> 00:08:04,031 あっ! ひょっとして 家出なさったのでは…! 103 00:08:04,031 --> 00:08:06,934 まさか。 白鬚様まで捜しに行ってまいります。 104 00:08:06,934 --> 00:08:10,203 いや 待て。 入れ違いになっちゃいけねえ。 105 00:08:10,203 --> 00:08:13,840 銀次に言って 年寄りの行き倒れがいねえか捜させよう。 106 00:08:13,840 --> 00:08:20,047 行き倒れだなんて そんな…。 年寄りのことだ 何があるか分かんねえぜ。 107 00:08:20,047 --> 00:08:21,982 おばば様! 108 00:08:21,982 --> 00:08:25,682 (登勢)ただいま 戻りました。 109 00:08:29,056 --> 00:08:31,658 どうかしました? 110 00:08:31,658 --> 00:08:35,329 お戻りが遅いので 案じていたのですよ。 111 00:08:35,329 --> 00:08:38,365 今 父上が捜しに行かれるところでした。 112 00:08:38,365 --> 00:08:41,201 まあ ハハ… 私が迷子になったとでも? 113 00:08:41,201 --> 00:08:44,701 フフッ 子どもじゃあるまいし。 ホホホ…。 114 00:08:47,040 --> 00:08:49,676 婿殿。 115 00:08:49,676 --> 00:08:54,676 案じてくれて ありがとう。 116 00:08:58,352 --> 00:09:03,023 今 「ありがとう」って言ったか…? 117 00:09:03,023 --> 00:09:04,958 …お~! いけねえ! 118 00:09:04,958 --> 00:09:09,196 首の辺りが ゾクゾクした…。 119 00:09:09,196 --> 00:09:13,533 (鈴の音) 120 00:09:13,533 --> 00:09:18,405 <この日を境に 登勢は まるで人が変わったようで…> 121 00:09:18,405 --> 00:09:21,208 また 米の値が上がったそうですね。 122 00:09:21,208 --> 00:09:24,845 はい。 去年から不作続きだとかで。 123 00:09:24,845 --> 00:09:28,382 こうして 三度三度 ごはんが食べられるのも➡ 124 00:09:28,382 --> 00:09:34,882 婿殿が 道具市で稼いできてくれるおかげですよ。 125 00:09:38,659 --> 00:09:41,459 お… 「おかげ」? 126 00:09:49,169 --> 00:09:52,072 どう考えても 妙だぜ…。 127 00:09:52,072 --> 00:09:57,044 「ありがとう」とか「おかげさま」なんて言葉 これまで ついぞ聞いたことがねえ。 128 00:09:57,044 --> 00:10:00,681 狐でも憑いたか…? そんな…。 129 00:10:00,681 --> 00:10:05,352 毎日 どこにお出かけなのでしょう? 130 00:10:05,352 --> 00:10:07,821 寺参りだとおっしゃっていますけれど…。 131 00:10:07,821 --> 00:10:10,691 ひょっとして お迎えが近いのか? 132 00:10:10,691 --> 00:10:12,693 よしてくださいよ。 133 00:10:12,693 --> 00:10:15,562 悪いのに引っ掛かってなきゃいいが…。 134 00:10:15,562 --> 00:10:19,032 お寺は 善男善女が集まる所では? 135 00:10:19,032 --> 00:10:23,203 よい人間を狙って 悪党も寄ってくるのさ。 136 00:10:23,203 --> 00:10:28,075 信用師といって 信心深いふりをして 金を巻き上げる輩とかな。 137 00:10:28,075 --> 00:10:33,213 まさか おばば様に限って…。 そのまさかが 危ねえのよ。 138 00:10:33,213 --> 00:10:37,551 では 私が おばば様の後をつけてみましょう。 139 00:10:37,551 --> 00:10:43,857 麟太郎。 人の後をつけるなど 武士の子がすることではありませんよ。 140 00:10:43,857 --> 00:10:46,557 じゃあ どうすんだよ? 141 00:10:48,562 --> 00:11:04,578 ♬~ 142 00:11:04,578 --> 00:11:07,414 利平次がいてくれたら…。 143 00:11:07,414 --> 00:11:22,763 ♬~ 144 00:11:22,763 --> 00:11:25,763 水死塔…? 145 00:11:34,708 --> 00:11:38,708 ごめんくださいまし。 146 00:11:43,216 --> 00:11:49,022 さあさあ さあさあ おかゆですよ。 147 00:11:49,022 --> 00:11:51,725 はい どうぞ。 148 00:11:51,725 --> 00:11:54,394 おばば様? 149 00:11:54,394 --> 00:11:58,394 無徳庵に御用ですかな? 150 00:12:00,200 --> 00:12:02,200 お信。 151 00:12:04,104 --> 00:12:08,604 さあ どうぞ お入りください。 152 00:12:10,410 --> 00:12:13,246 長谷川が 信用師にだまされた? 153 00:12:13,246 --> 00:12:17,083 昨日 道具を見繕いに お屋敷に伺ったんですが➡ 154 00:12:17,083 --> 00:12:19,753 それは もう お気の毒なありさまで…。 155 00:12:19,753 --> 00:12:21,755 (銀次)誰です? 長谷川様っていうのは。 156 00:12:21,755 --> 00:12:27,093 本所の貧乏御家人さ。 俺とは剣術の相弟子でね。 157 00:12:27,093 --> 00:12:29,996 近々 娘が嫁に出るとか言ってたぞ。 158 00:12:29,996 --> 00:12:34,901 その支度を調えるために 金策に走っておいでだったのですよ。 159 00:12:34,901 --> 00:12:37,370 蔵宿では借り尽くして➡ 160 00:12:37,370 --> 00:12:40,841 やむなく 高野山のお金を 借りることになったんですがね。 161 00:12:40,841 --> 00:12:42,776 高野山の金? 162 00:12:42,776 --> 00:12:45,378 名目金ってやつかい。 163 00:12:45,378 --> 00:12:49,850 (お清)お寺のくせに あれで 高い利を取るんですからね。 164 00:12:49,850 --> 00:12:57,057 <名目金とは 寺や神社が資金集めのために 金貸しをして 金利を稼ぐものです。➡ 165 00:12:57,057 --> 00:12:59,726 幕府公認の金融制度でしたが➡ 166 00:12:59,726 --> 00:13:04,564 金が動くところには 悪だくみが付き物で…> 167 00:13:04,564 --> 00:13:07,400 (長兵衛) 長谷川様は 借金の相談のために➡ 168 00:13:07,400 --> 00:13:12,739 斎藤監物という高野山の金の取扱人を 屋敷に招いたんです。 169 00:13:12,739 --> 00:13:18,879 馳走になった礼に 珍しいものをお見せいたしましょう。 170 00:13:18,879 --> 00:13:29,623 ♬~ 171 00:13:29,623 --> 00:13:35,195 これは 紀州様のお山で採れた➡ 172 00:13:35,195 --> 00:13:40,066 銀の吹き寄せにございます。 173 00:13:40,066 --> 00:13:43,069 ああ… ささ お手に取ってご覧なされ。 174 00:13:43,069 --> 00:13:45,205 はい。 175 00:13:45,205 --> 00:13:48,005 うん さあさあ さあさあ…。 176 00:13:50,710 --> 00:13:55,048 (長兵衛)その銀の塊が いつの間にか消えたんですよ。 177 00:13:55,048 --> 00:13:57,550 銀に足が生えて逃げやしめえし➡ 178 00:13:57,550 --> 00:14:01,388 その斎藤監物って野郎が てめえの懐に戻したんだろう。 179 00:14:01,388 --> 00:14:06,226 ええ。 ですが その証しが立ちませんので。 180 00:14:06,226 --> 00:14:10,096 お気の毒に 長谷川様は 金を借りるどころか➡ 181 00:14:10,096 --> 00:14:13,733 銀の代金として 五両 取られてしまわれまして…。 182 00:14:13,733 --> 00:14:16,069 (銀次) そりゃ 悪いのに引っ掛かったねえ。 183 00:14:16,069 --> 00:14:18,405 監物は 名うての信用師ですぜ。 184 00:14:18,405 --> 00:14:20,440 高野山とは 何の関わり合いもねえ。 185 00:14:20,440 --> 00:14:23,743 同じ手に引っ掛かって むしられた人が 大勢いやすよ。 186 00:14:23,743 --> 00:14:27,414 悪党だと分かってて 町方が 何で動かねえんだ。 187 00:14:27,414 --> 00:14:32,018 そりゃね お町の旦那方に レコを握らせてんでさ。 188 00:14:32,018 --> 00:14:33,954 ふ~む…。 189 00:14:33,954 --> 00:14:35,889 おい 銀次。 へい。 190 00:14:35,889 --> 00:14:37,891 その野郎 どこにいんだ? 191 00:14:37,891 --> 00:14:41,361 こちらは 病の療養所ですか? 192 00:14:41,361 --> 00:14:47,167 いいえ。 行き倒れた人や 身寄りのないお年寄りが➡ 193 00:14:47,167 --> 00:14:50,704 身を寄せ合って暮らす所です。 194 00:14:50,704 --> 00:14:53,606 おばば様は なぜ ここに? 195 00:14:53,606 --> 00:14:58,578 先日 急な差し込みで困っていたところを➡ 196 00:14:58,578 --> 00:15:04,718 一日上人様に助けられ こちらで介抱していただいたのです。 197 00:15:04,718 --> 00:15:08,388 そうでしたか。 祖母が ご厄介をおかけしまして…。 198 00:15:08,388 --> 00:15:10,423 いやいや。 199 00:15:10,423 --> 00:15:17,564 些細なことを恩に思われて こうして手伝いに来てくださるのです。 200 00:15:17,564 --> 00:15:21,234 こちらこそ ありがたく存じます。 201 00:15:21,234 --> 00:15:24,137 何をおっしゃいます。 202 00:15:24,137 --> 00:15:32,812 お上人様のお言葉が つくづくと 心にしみたのでございます。 203 00:15:32,812 --> 00:15:37,650 (一日上人)気を鎮め 心を穏やかに。 204 00:15:37,650 --> 00:15:45,392 怒りや嘆きは 己の身を苛む刃です。 205 00:15:45,392 --> 00:15:51,698 世間では よく 恩を怨みで返すと言いますが➡ 206 00:15:51,698 --> 00:15:56,898 あなたは その反対をなされるとよい。 207 00:15:59,205 --> 00:16:01,841 反対? 208 00:16:01,841 --> 00:16:05,378 怨みには 恩を返す。 209 00:16:05,378 --> 00:16:16,022 そうすれば 人と争うこともなく 心安らかに過ごせます。 210 00:16:16,022 --> 00:16:18,725 怨みには 恩を…。 211 00:16:18,725 --> 00:16:23,596 ああ それで おばば様は近頃…。 212 00:16:23,596 --> 00:16:28,068 お信。 そなたこそ どうして ここにいるんです? 213 00:16:28,068 --> 00:16:31,938 えっ… あ… それは その…。 214 00:16:31,938 --> 00:16:36,176 あっ… あの 水死塔というのは何でしょう? 215 00:16:36,176 --> 00:16:39,679 あれは 供養塔です。 216 00:16:39,679 --> 00:16:46,453 お上人様は 大川端に流れ着く水死人を引き揚げて➡ 217 00:16:46,453 --> 00:16:49,355 ご供養なさっておいでなのですよ。 218 00:16:49,355 --> 00:16:51,291 まあ…。 219 00:16:51,291 --> 00:16:57,530 出家の身の勤めとして 菩提を弔ってまいりましたが➡ 220 00:16:57,530 --> 00:17:01,701 それだけでは足りませぬ。 221 00:17:01,701 --> 00:17:08,041 病や貧苦に責められ 身投げする人をなくすために➡ 222 00:17:08,041 --> 00:17:12,241 この庵を開きました。 223 00:17:20,053 --> 00:17:23,853 お待たせいたしました。 224 00:17:33,166 --> 00:17:36,069 はあ…。 225 00:17:36,069 --> 00:17:38,037 ご用件は? 226 00:17:38,037 --> 00:17:42,675 おめえさん 大層なナリをしているね。 227 00:17:42,675 --> 00:17:47,547 その押し出しなら さぞ 人が信用するだろう。 228 00:17:47,547 --> 00:17:55,255 尊い御寺の金子を取り扱う身ゆえ まっ それなりに…。 229 00:17:55,255 --> 00:17:59,125 扱ってんのは 金子だけじゃなかろう。 230 00:17:59,125 --> 00:18:07,534 紀州様の銀の吹き寄せとやら 俺にも見せちゃくんねえか。 231 00:18:07,534 --> 00:18:11,037 え? ちゃちな小道具で荒稼ぎたぁ➡ 232 00:18:11,037 --> 00:18:14,841 信用師ってなあ いい商売だねえ。 233 00:18:14,841 --> 00:18:19,679 な… な… 何を! 無礼ですぞ! 234 00:18:19,679 --> 00:18:24,384 天下のご直参 たばかって 何が無礼だ! 235 00:18:24,384 --> 00:18:30,684 長谷川寛次郎って御家人から 五両 だまし取ったろう。 236 00:18:34,060 --> 00:18:39,499 ちっ… フフフフフ…。 237 00:18:39,499 --> 00:18:46,272 あ~あ 何だ 客かと思いのほか➡ 238 00:18:46,272 --> 00:18:53,072 商えの上前をはねようって魂胆か? ええ? 239 00:18:55,348 --> 00:19:01,821 まあ そいじゃ あの… もうけの1割ってとこで どうです? 240 00:19:01,821 --> 00:19:04,524 ねっ? ヘッヘ…。 241 00:19:04,524 --> 00:19:09,028 ただ取る金だ。 それで不足はありますまい。 242 00:19:09,028 --> 00:19:10,964 べらぼうめ! 243 00:19:10,964 --> 00:19:15,802 はした金欲しさに 長え橋渡って 浅草まで来るかい! 244 00:19:15,802 --> 00:19:20,707 本所で稼ぎてえんなら 勝の名前ぐらい覚えとけ! 245 00:19:20,707 --> 00:19:27,380 えっ? あっ あ… あなた様が ほ… 本所の勝様…。 246 00:19:27,380 --> 00:19:30,650 長谷川から巻き上げた五両 返しな。 247 00:19:30,650 --> 00:19:35,521 一人娘を嫁入りに出す 大事な支度金だ。 248 00:19:35,521 --> 00:19:41,294 おめえも いっぱしの悪党なら 貧乏人の懐なんぞ狙わず➡ 249 00:19:41,294 --> 00:19:46,294 金の うなってるとこから 百両でも千両でも 大きく取れ! 250 00:19:48,801 --> 00:19:56,009 は… はあ…。 ははっ…。 251 00:19:56,009 --> 00:20:01,180 ふ~む 無徳庵の一日上人か。 252 00:20:01,180 --> 00:20:04,217 本物の出家ってのは そういう人をいうんだろうな。 253 00:20:04,217 --> 00:20:08,688 高野山を名乗るかたりとは大違えだ。 254 00:20:08,688 --> 00:20:14,827 よいことをなさっているのに おばば様は なぜ隠していたのでしょう? 255 00:20:14,827 --> 00:20:17,730 さあ…。 256 00:20:17,730 --> 00:20:21,200 暇を見て 私も手伝いに参りたいのですが。 257 00:20:21,200 --> 00:20:26,539 行ってきな。 おばば殿の角を折ってくれた大恩人だ。 258 00:20:26,539 --> 00:20:32,412 麟。 おめえも 怨みを恩で返すことを 心がけたがいいぜ。 259 00:20:32,412 --> 00:20:37,850 世の中を丸く収める秘訣は これに尽きるよ。 260 00:20:37,850 --> 00:20:39,850 はい。 261 00:20:45,058 --> 00:20:50,058 気を鎮め 心を穏やかに。 262 00:20:52,231 --> 00:20:56,402 うう… ううう…。 263 00:20:56,402 --> 00:20:58,338 あっ… ああ…。 264 00:20:58,338 --> 00:21:01,538 この野郎! 265 00:21:03,876 --> 00:21:08,176 うわ~! 266 00:21:14,887 --> 00:21:18,587 まだ成仏しねえか…。 267 00:21:32,705 --> 00:21:34,705 あの人…。 268 00:21:37,043 --> 00:21:39,712 早まってはなりませぬ! なりませぬ! 269 00:21:39,712 --> 00:21:41,714 放… 放して 死なせて…。 270 00:21:41,714 --> 00:21:44,217 しな… 死なせてください! なりませぬ! なりませぬ! 271 00:21:44,217 --> 00:21:48,054 死なせて… 死なせて…。 272 00:21:48,054 --> 00:21:51,724 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏…。 273 00:21:51,724 --> 00:21:55,424 どうぞ お召し上がりください。 274 00:22:00,400 --> 00:22:03,900 ご僧侶。 275 00:22:13,413 --> 00:22:20,186 丑松さんじゃねえか。 ヘヘヘ… 江戸へ戻ってたのかい? 276 00:22:20,186 --> 00:22:26,125 どなた様か存じませぬが お人違いでございましょう。 277 00:22:26,125 --> 00:22:30,925 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏…。 278 00:22:34,700 --> 00:22:41,700 妙だな… 今の ありゃ 丑松だよ。 279 00:22:49,048 --> 00:22:51,717 お上人様? 280 00:22:51,717 --> 00:22:53,917 いや…。 281 00:22:56,222 --> 00:22:58,724 先日お返しした五両➡ 282 00:22:58,724 --> 00:23:02,562 あれ そっくりそのまま 長谷川様に お渡しなすったそうですね。 283 00:23:02,562 --> 00:23:05,598 ああ 渡したよ。 284 00:23:05,598 --> 00:23:07,733 間に入ったからにゃ➡ 285 00:23:07,733 --> 00:23:12,405 一両ばかり 礼金をお取りになるかと 思っておりましたが…。 286 00:23:12,405 --> 00:23:15,241 長谷川が困ってるっていうから 掛け合えに行ったんだ。 287 00:23:15,241 --> 00:23:17,176 礼なんか取るかい! 288 00:23:17,176 --> 00:23:20,112 偉い! いやいや いやいや いやいや➡ 289 00:23:20,112 --> 00:23:26,419 この斎藤監物 殿様のその胆力と無欲さに 感服いたしました! 290 00:23:26,419 --> 00:23:29,889 どうぞ 子分にしてやってくださいまし! まあ…。 291 00:23:29,889 --> 00:23:35,695 貧乏旗本とはいえ ご直参だぞ。 悪党を子分にできるかい! 292 00:23:35,695 --> 00:23:38,197 茶なんか出さなくていい! 293 00:23:38,197 --> 00:23:43,069 俺は 道具市に出なきゃならねえんだ。 帰ってくんな。 294 00:23:43,069 --> 00:23:46,372 お美しい…! 295 00:23:46,372 --> 00:23:54,046 奥様 いや おきれいだな。 どうも 以後 お見知りおきを。 296 00:23:54,046 --> 00:23:55,982 こちらこそ。 297 00:23:55,982 --> 00:24:01,921 うちには 出世前の大事な倅がいるんだ。 信用師なんぞに出入りされちゃ迷惑だ! 298 00:24:01,921 --> 00:24:05,057 殿様 ヘヘヘ…。 299 00:24:05,057 --> 00:24:11,230 世の中にゃあね お武家様の知らねえ 裏の世界ってのがありましてね。 300 00:24:11,230 --> 00:24:14,867 これが なかなか難しいもんですよ。 301 00:24:14,867 --> 00:24:18,070 何かあった時にゃあね あっしみたいのがいたらね➡ 302 00:24:18,070 --> 00:24:20,873 必ず重宝しますよ。 303 00:24:20,873 --> 00:24:22,808 フフ… ヘヘ… ヘヘヘ… ヘヘヘヘ! 304 00:24:22,808 --> 00:24:25,711 嫌な笑い方するねえ。 ああ そうそう そうそう。 305 00:24:25,711 --> 00:24:30,082 ここに来る途中もね 托鉢僧に行き合いましてね➡ 306 00:24:30,082 --> 00:24:34,820 これが あなた 昔なじみの悪党ですよ。 307 00:24:34,820 --> 00:24:38,190 暗闇の丑松っていいやしてね➡ 308 00:24:38,190 --> 00:24:41,027 押し借り 強請 美人局…➡ 309 00:24:41,027 --> 00:24:45,197 まっ 殺し以外の悪事ならね 何でもござれって野郎だ。 310 00:24:45,197 --> 00:24:48,034 暗闇の…。 聞いたことがあるな。 311 00:24:48,034 --> 00:24:53,205 ああ 11年前にね 牢で死んだ あの河内山の子分です。 312 00:24:53,205 --> 00:24:58,711 ああ 河内山宗春か。 茶坊主の悪党だね。 313 00:24:58,711 --> 00:25:04,050 <「悪に強きは善にもと」 颯爽と強きをくじく 河内山宗俊!➡ 314 00:25:04,050 --> 00:25:07,086 …というのは あくまで 芝居の作り事。➡ 315 00:25:07,086 --> 00:25:14,393 実際は 強請が得意な悪党で 文政6年に 牢内で病死しています> 316 00:25:14,393 --> 00:25:16,429 しかも 丑松ってのは➡ 317 00:25:16,429 --> 00:25:21,067 河内山を訴人して ずらかった 裏切り者でしてね。 318 00:25:21,067 --> 00:25:23,569 僧侶姿に だまされたら➡ 319 00:25:23,569 --> 00:25:27,073 どんな悪事に引っ掛かるか 分かったもんじゃありませんよ。 320 00:25:27,073 --> 00:25:29,875 それ お前が言うかね。 アハハハハ…。➡ 321 00:25:29,875 --> 00:25:35,514 托鉢僧に 姿 変えてもね 顎のほくろ こりゃ ごまかせねえ。 322 00:25:35,514 --> 00:25:39,685 ありゃ間違えねえや 暗闇の丑松だ。 323 00:25:39,685 --> 00:25:41,985 [ 心の声 ] ほくろ…? 324 00:25:52,198 --> 00:25:58,704 お紋さんといいましたね。 身寄りは? 325 00:25:58,704 --> 00:26:03,542 息子が一人 おりましたが…➡ 326 00:26:03,542 --> 00:26:11,050 11年前 大川に 水死人になって あがりました…。 327 00:26:11,050 --> 00:26:14,854 まあ…。 川で溺れて…。 328 00:26:14,854 --> 00:26:16,789 いいえ。 329 00:26:16,789 --> 00:26:21,727 殺されたんでございます…。 え…。 330 00:26:21,727 --> 00:26:30,670 お上の御用で 悪人を追っております時に…。 331 00:26:30,670 --> 00:26:39,679 川からあがった亡骸には 刃物で斬られた傷が…。 332 00:26:39,679 --> 00:26:49,355 11年前… 11年前 斬られて 大川に…? 333 00:26:49,355 --> 00:26:56,228 (お紋)あの子一人が頼りでした…。➡ 334 00:26:56,228 --> 00:27:05,805 この年になって もう体は動かず 寄る辺もなく…➡ 335 00:27:05,805 --> 00:27:13,579 生きていても 世間の厄介になるばかりで…。 336 00:27:13,579 --> 00:27:17,216 (登勢) 気の弱いことを言ってはなりません。➡ 337 00:27:17,216 --> 00:27:24,957 ここには 同じような身の上の人たちが 大勢 暮らしているのです。➡ 338 00:27:24,957 --> 00:27:36,335 第一 あなたが身投げをしたら ご子息の菩提を 誰が弔うのですか。 339 00:27:36,335 --> 00:27:41,006 何も思い煩うことはありません。 340 00:27:41,006 --> 00:27:45,177 しばらく横になって休まれるがよい。 341 00:27:45,177 --> 00:27:48,514 話は また後ほど。 342 00:27:48,514 --> 00:27:52,514 さあ こちらへ。 343 00:28:17,543 --> 00:28:24,216 托鉢僧に 姿 変えても 顎のほくろは ごまかせねえや。 344 00:28:24,216 --> 00:28:27,853 ありゃ間違えねえ 暗闇の丑松だ。 345 00:28:27,853 --> 00:28:32,491 まさか… お上人様のはずでは…。 346 00:28:32,491 --> 00:28:34,426 痛っ…。 347 00:28:34,426 --> 00:28:42,802 ♬~ 348 00:28:42,802 --> 00:28:44,870 おや お信様。 349 00:28:44,870 --> 00:28:47,339 祖母は おりますでしょうか? 350 00:28:47,339 --> 00:28:51,177 お登勢様なら 足腰の立つ方たちを連れて➡ 351 00:28:51,177 --> 00:28:56,015 多田のお薬師様に お参りに行かれましたよ。 352 00:28:56,015 --> 00:28:58,517 お上人様もご一緒に? 353 00:28:58,517 --> 00:29:04,317 いいえ。 お上人様は 内におられます。 354 00:29:08,027 --> 00:29:13,199 ≪(一日上人)お手伝いします。 入ってもよろしいですか? 355 00:29:13,199 --> 00:29:15,234 はい。 356 00:29:15,234 --> 00:29:24,810 ♬~ 357 00:29:24,810 --> 00:29:28,214 さあ これを。 358 00:29:28,214 --> 00:29:31,183 ありがとうございます。 359 00:29:31,183 --> 00:29:44,997 ♬~ 360 00:29:44,997 --> 00:29:46,932 あっ…! 361 00:29:46,932 --> 00:29:51,432 いけません! 駄目です 丑松さん! 362 00:29:53,672 --> 00:29:56,008 何をしておいでです! 363 00:29:56,008 --> 00:29:58,008 これは…。 364 00:29:59,879 --> 00:30:01,881 お上人様。 365 00:30:01,881 --> 00:30:03,883 はい…。 366 00:30:03,883 --> 00:30:08,020 久しぶりに湯浴みさせていただいて➡ 367 00:30:08,020 --> 00:30:13,692 身も心も さっぱりといたしました。 368 00:30:13,692 --> 00:30:16,695 お上人様…。 369 00:30:16,695 --> 00:30:19,365 お慈悲でございます。 370 00:30:19,365 --> 00:30:26,705 どうか お上人様の手で あの世へ送ってくださいまし…。 371 00:30:26,705 --> 00:30:47,026 ♬~ 372 00:30:47,026 --> 00:30:59,726 (嗚咽) 373 00:31:04,743 --> 00:31:08,747 あなたは 誰なのですか? 374 00:31:08,747 --> 00:31:16,755 昔 暗闇の丑松と名乗っていた男です。 375 00:31:16,755 --> 00:31:19,258 なぜ あのような…。 376 00:31:19,258 --> 00:31:25,898 11年前 河内山の悪事が露見し➡ 377 00:31:25,898 --> 00:31:29,198 私にも 追っ手が かかりました。 378 00:31:30,736 --> 00:31:34,436 河内山宗春の隠れがは どこだ! 379 00:31:37,843 --> 00:31:42,143 正直に話せば お前だけは見逃してやる。 380 00:31:46,051 --> 00:31:55,394 今夜のうちに江戸を離れて 上州辺りに逃げな。 381 00:31:55,394 --> 00:32:02,167 私は 河内山の隠れがを教え その足で…➡ 382 00:32:02,167 --> 00:32:12,411 吾妻橋を渡り 大川を越え 本所まで来た その時…。➡ 383 00:32:12,411 --> 00:32:16,281 見逃すというのは 嘘でした。➡ 384 00:32:16,281 --> 00:32:21,120 若い岡っ引きが追ってきて もみ合ううちに…。 385 00:32:21,120 --> 00:32:25,958 あっ…! くっ… うう…。 386 00:32:25,958 --> 00:32:28,658 この野郎! 387 00:32:30,429 --> 00:32:36,201 江戸を離れ 10年近く逃げ通したが➡ 388 00:32:36,201 --> 00:32:42,975 この手で斬った男が 川に落ちていった時の目…。 389 00:32:42,975 --> 00:32:49,381 怨みに満ちた あの目が どこまでも ついてくる…。 390 00:32:49,381 --> 00:32:55,854 お紋さんは その岡っ引きのおっ母さんだ。 391 00:32:55,854 --> 00:32:57,854 えっ…! 392 00:33:01,393 --> 00:33:06,593 お紋さんは ご存じなのですか? その話…。 393 00:33:08,734 --> 00:33:17,743 頭を丸め 大川に流れ着く水死人を 弔っていたのは➡ 394 00:33:17,743 --> 00:33:21,043 あの男の供養のため。 395 00:33:22,614 --> 00:33:31,290 あの目から逃れたい その一心で…。 396 00:33:31,290 --> 00:33:37,990 だがね やっぱり いけねえ…。 397 00:33:39,832 --> 00:33:46,605 今日 昔を知る男と ばったり出会い➡ 398 00:33:46,605 --> 00:33:52,377 無徳庵に戻ってみれば お紋さんが待っていた。 399 00:33:52,377 --> 00:33:56,548 ただの偶然とは思えねえ。 400 00:33:56,548 --> 00:34:05,257 まだ 罪は消えちゃいねえという ありゃ 天の声だ…。 401 00:34:05,257 --> 00:34:12,030 では なぜ お紋さんまで 手にかけようとなさったのですか? 402 00:34:12,030 --> 00:34:17,736 どうして この上 罪を重ねるようなことを? 403 00:34:17,736 --> 00:34:22,875 いっそ 刺してくれたらと…。 404 00:34:22,875 --> 00:34:24,810 え…。 405 00:34:24,810 --> 00:34:32,017 殺したのは俺だと打ち明けて お紋さんの手にかかれば➡ 406 00:34:32,017 --> 00:34:37,189 昔の罪は 帳消しになる…。 407 00:34:37,189 --> 00:34:48,534 丑松は死んで 俺は一日上人になれる… と。 408 00:34:48,534 --> 00:34:50,569 でも…。 409 00:34:50,569 --> 00:34:58,210 どうか お上人様の手で あの世へ送ってくださいまし…。 410 00:34:58,210 --> 00:35:04,716 俺は ただ 犯した罪の恐ろしさから逃げ出して➡ 411 00:35:04,716 --> 00:35:10,016 てめえが楽になりたいだけだった…。 412 00:35:16,061 --> 00:35:20,399 心が決まりました。 413 00:35:20,399 --> 00:35:25,737 全てを打ち明けた そのあとで➡ 414 00:35:25,737 --> 00:35:29,408 お上に 名乗って出ます。 415 00:35:29,408 --> 00:35:31,376 ♬~(三味線) 416 00:35:31,376 --> 00:35:42,521 ♬「さんさ時雨か」 417 00:35:42,521 --> 00:35:55,534 ♬「萱野の雨か」 418 00:35:55,534 --> 00:35:58,570 さあ お紋さんも一緒に。 419 00:35:58,570 --> 00:36:03,041 こうして 歌って過ごしていられたら それだけで いいじゃありませんか。 420 00:36:03,041 --> 00:36:06,712 さあさあさあ はい 行きましょう。 421 00:36:06,712 --> 00:36:22,728 ♬~(三味線と歌声) 422 00:36:22,728 --> 00:36:25,631 急ぐことはありませんよ。 423 00:36:25,631 --> 00:36:30,402 お迎えは いつか 必ず来るのですから。 424 00:36:30,402 --> 00:36:33,171 ♬~ 425 00:36:33,171 --> 00:36:36,675 ♬「はあ めでたい めでたい」 426 00:36:36,675 --> 00:36:42,180 ♬~ 427 00:36:42,180 --> 00:36:49,521 昔のことを表沙汰にして 誰が救われるでしょう。 428 00:36:49,521 --> 00:36:53,692 無徳庵は なくてはならぬ所。 429 00:36:53,692 --> 00:36:59,564 皆 お上人様をお慕いし お上人様にすがって生きております。 430 00:36:59,564 --> 00:37:02,834 私の祖母も…。 431 00:37:02,834 --> 00:37:08,707 今日 見たことも 伺ったお話も➡ 432 00:37:08,707 --> 00:37:13,845 私一人の胸に納めさせてください。 433 00:37:13,845 --> 00:37:15,781 お信様…。 434 00:37:15,781 --> 00:37:20,218 ♬「はあ めでたい めでたい」 435 00:37:20,218 --> 00:37:27,518 お願いします。 どうか このまま お上人様のままで…。 436 00:37:29,928 --> 00:37:33,665 (登勢)お上人様。 437 00:37:33,665 --> 00:37:38,003 おや お信 来てたのですか。 はい。 438 00:37:38,003 --> 00:37:41,673 お上人様 皆が待っておりますよ。 439 00:37:41,673 --> 00:37:46,545 あちらで一緒に歌いませんか。 440 00:37:46,545 --> 00:37:50,245 今 参ります。 441 00:38:01,993 --> 00:38:06,531 <一日上人が 本所から 忽然と姿を消したのは➡ 442 00:38:06,531 --> 00:38:10,531 それから10日ほど後のことでした> 443 00:38:16,041 --> 00:38:21,546 <無徳庵に身を寄せていた人たちには 托鉢でためた金が分け与えられ➡ 444 00:38:21,546 --> 00:38:27,546 上人が手配した先に それぞれ引き取られていったのです> 445 00:38:39,664 --> 00:38:42,167 「世を捨てて➡ 446 00:38:42,167 --> 00:38:46,004 身も名も 草の庵も捨て➡ 447 00:38:46,004 --> 00:38:51,704 捨てたといふも 捨てはてにけり」。 448 00:38:56,348 --> 00:38:59,384 上総無宿 丑松。 449 00:38:59,384 --> 00:39:07,359 その方 11年前の旧悪を名乗って出たこと 殊勝である。 450 00:39:07,359 --> 00:39:16,835 また 一日上人と名乗り 水死人を供養し 行き倒れを救済したること➡ 451 00:39:16,835 --> 00:39:21,373 悪党ながらも 感心。 452 00:39:21,373 --> 00:39:25,243 お奉行様に申し上げます。 453 00:39:25,243 --> 00:39:30,982 一日上人などという名 聞いたことがございません。 454 00:39:30,982 --> 00:39:33,485 控えい! 無徳庵の主は➡ 455 00:39:33,485 --> 00:39:37,285 そなたではないと申すか? 456 00:39:39,991 --> 00:39:47,691 私には 丑松以外の名はございません。 457 00:39:50,168 --> 00:39:52,671 <暗闇の丑松が自首し➡ 458 00:39:52,671 --> 00:39:56,541 お上のお慈悲で死罪を免れ 遠島になった話は➡ 459 00:39:56,541 --> 00:40:01,346 瓦版に刷られて 江戸中に広まりました。➡ 460 00:40:01,346 --> 00:40:04,182 ですが どの瓦版にも➡ 461 00:40:04,182 --> 00:40:10,982 一日上人が丑松であったことは 一切 記されていなかったのです> 462 00:40:19,197 --> 00:40:24,697 どうか お上人様をお守りください。 463 00:40:27,906 --> 00:40:34,606 <本所のお上人様が どこに消えたかは 永遠に謎のまま…> 464 00:40:36,381 --> 00:40:40,218 薪割り人足を雇うゆとりが うちには あるのですか! 465 00:40:40,218 --> 00:40:42,721 ガミガミ言わなくたって やりますよ。 466 00:40:42,721 --> 00:40:45,223 あ~あ 利平次がいたらなあ。 467 00:40:45,223 --> 00:40:47,158 私が手伝います。 468 00:40:47,158 --> 00:40:51,396 ご覧なさい。 瓦が外れかかってますよ。 469 00:40:51,396 --> 00:40:54,232 直すよう頼んだはずですよ! 470 00:40:54,232 --> 00:40:56,868 今すぐ 瓦が落ちてくるわけじゃあるめえし➡ 471 00:40:56,868 --> 00:41:00,368 年寄りは気が短くって いけねえや! 472 00:41:04,743 --> 00:41:08,079 「怨みは恩で返す」。 473 00:41:08,079 --> 00:41:10,379 お忘れですか? 474 00:41:11,950 --> 00:41:16,788 怨みを恩で返せば 世の中は丸く収まる。 475 00:41:16,788 --> 00:41:20,988 お二人とも そうおっしゃっていましたね。 476 00:41:22,627 --> 00:41:26,431 本日は 母上が一本。 477 00:41:26,431 --> 00:41:28,767 ウフフフ…。 478 00:41:28,767 --> 00:41:39,210 ♬~ 479 00:41:39,210 --> 00:41:42,714 <すっかり元気を取り戻した登勢と 小吉のバトルは➡ 480 00:41:42,714 --> 00:41:46,714 まだまだ続きそうな気配です> 481 00:41:50,589 --> 00:41:53,425 鼠小僧が また現れたよ~! 482 00:41:53,425 --> 00:41:55,860 そこの2人 こっちに渡しておくんなせえ。 483 00:41:55,860 --> 00:41:59,731 どう見たって 河童じゃねえか! また 得体の知れない者を連れてきて…。 484 00:41:59,731 --> 00:42:01,666 まあ なんとかなりますよ。 485 00:42:01,666 --> 00:42:03,602 あの2人 何か隠し事があるんじゃねえかな。 486 00:42:03,602 --> 00:42:05,604 まさか そんな…。 487 00:42:05,604 --> 00:42:08,406 俺たちも 鼠小僧の一味に加わったも同然だ。 488 00:42:08,406 --> 00:42:10,742 その証文を 私に。 489 00:42:10,742 --> 00:43:25,242 ♬~