1 00:00:33,036 --> 00:00:36,906 ♬「トントン 唐辛子 唐辛子は 辛いよ」 2 00:00:36,906 --> 00:00:39,809 (お順)おじさ~ん! へい。 3 00:00:39,809 --> 00:00:42,111 1つ ください。 毎度。 4 00:00:42,111 --> 00:00:44,811 3文 頂戴します。 5 00:00:46,783 --> 00:00:50,119 はい どうぞ。 うわ~。 6 00:00:50,119 --> 00:00:55,919 ≪♬「トントン 唐辛子 ピリリと辛いは山椒の粉」 7 00:00:59,262 --> 00:01:02,632 母上~! 8 00:01:02,632 --> 00:01:05,668 はい 買ってきました。 ご苦労さま。 9 00:01:05,668 --> 00:01:09,405 唐辛子を切らすと 父上は 召し上がってくれませんからね。 10 00:01:09,405 --> 00:01:12,976 わがままな病人で 困ったものです。 11 00:01:12,976 --> 00:01:16,776 まあ ウフフフフ。 12 00:01:19,148 --> 00:01:25,288 <小吉は 昨年から体調を崩し 寝たり起きたりの日が続いていました。➡ 13 00:01:25,288 --> 00:01:27,991 医者の見立ては 江戸患い。➡ 14 00:01:27,991 --> 00:01:30,493 つまり 脚気です> 15 00:01:30,493 --> 00:01:32,929 お昼の支度ができましたよ。 16 00:01:32,929 --> 00:01:36,766 か~っ また そばが来たよ。 17 00:01:36,766 --> 00:01:39,102 いいかげん飽きちまったぜ。 18 00:01:39,102 --> 00:01:42,939 江戸患いには そばが効くと言いますから。 19 00:01:42,939 --> 00:01:45,975 へっくしょん あ~。 あら いけない。 20 00:01:45,975 --> 00:01:48,111 ったく お前… へっくしょん。 ああ~。 21 00:01:48,111 --> 00:01:53,983 (笑い声) 22 00:01:53,983 --> 00:02:06,262 ♬~ 23 00:02:06,262 --> 00:02:10,800 (銀次)まだ 少し むくんでますね。 どうにも しびれちまっていけねえや。 24 00:02:10,800 --> 00:02:13,469 長兵衛が 目利きの刀 持ってきてくれたぞ。 25 00:02:13,469 --> 00:02:16,372 お世話かけます。 (長兵衛)あっ いえいえ。 26 00:02:16,372 --> 00:02:18,975 いやあ 殿様の目利きのおかげで➡ 27 00:02:18,975 --> 00:02:21,811 損を出さずに済んでおりますよ。 28 00:02:21,811 --> 00:02:25,481 まっ そのお礼と 言っちゃあなんですが➡ 29 00:02:25,481 --> 00:02:28,985 ウナギを 白焼きにして 持ってまいりました。 30 00:02:28,985 --> 00:02:30,920 あら まあ。 31 00:02:30,920 --> 00:02:33,423 ウナギは 江戸患いの薬って 言いやすからね~。 32 00:02:33,423 --> 00:02:36,092 ありがてえや 毎日 そばばっか食わされて➡ 33 00:02:36,092 --> 00:02:38,094 総身から脂っ気が抜けちまったよ。 34 00:02:38,094 --> 00:02:40,596 また そんなことを。 35 00:02:40,596 --> 00:02:44,767 すいません 頂きます。 (長兵衛)はい。 36 00:02:44,767 --> 00:02:47,804 早く よくなっておくんなさいまし。 37 00:02:47,804 --> 00:02:52,108 殿様が おいででないと 市の者が みんな寂しがります。 38 00:02:52,108 --> 00:02:54,110 旦那がいねえと つまらなくってねえ。 39 00:02:54,110 --> 00:02:57,447 まあ じきに治るさ。 でねえと ウナギに悪いからな。 40 00:02:57,447 --> 00:03:03,786 (笑い声) 41 00:03:03,786 --> 00:03:10,460 <脚気は ビタミンB1の不足で起きる 疾患ですが 当時は原因不明。➡ 42 00:03:10,460 --> 00:03:16,760 悪化すれば 命を落とすこともある 恐ろしい病でした> 43 00:03:19,168 --> 00:03:24,640 横になりますか? 布団 敷きましょうか。 44 00:03:24,640 --> 00:03:28,811 なあ お信。 45 00:03:28,811 --> 00:03:32,611 桜はもう 散っちまったな…。 46 00:03:37,086 --> 00:03:40,957 (稽古の掛け声) 47 00:03:40,957 --> 00:03:43,657 (麟太郎)とりゃ~! 48 00:03:52,435 --> 00:03:55,338 とお~っ! 49 00:03:55,338 --> 00:03:57,774 よし! ここまで。 50 00:03:57,774 --> 00:04:00,810 まだまだ。 もう一本 お願いします。 51 00:04:00,810 --> 00:04:02,945 うわあ~! 52 00:04:02,945 --> 00:04:07,817 <天保12年 時代は 大きく動いていました。➡ 53 00:04:07,817 --> 00:04:13,456 長年 幕府の実権を握っていた大御所 徳川家斉が➡ 54 00:04:13,456 --> 00:04:16,956 閏1月に亡くなったのです> 55 00:04:22,965 --> 00:04:26,002 父上は まだ伏せっておいでか。 56 00:04:26,002 --> 00:04:28,471 寝たり起きたりです。 57 00:04:28,471 --> 00:04:32,742 こんな時こそ 私がしっかりしなければ。 58 00:04:32,742 --> 00:04:35,778 それで むきになって 打ちかかってきたのだな。 59 00:04:35,778 --> 00:04:39,215 いえ それは…。 60 00:04:39,215 --> 00:04:43,753 島田先生 清国が エゲレス相手に 苦戦しているというのは➡ 61 00:04:43,753 --> 00:04:46,088 まことでしょうか。 62 00:04:46,088 --> 00:04:49,592 ああ そのようだな。 63 00:04:49,592 --> 00:04:52,428 清ほどの大国が…。 64 00:04:52,428 --> 00:04:57,233 エゲレスとは どれほど強い国なのでしょうか。 65 00:04:57,233 --> 00:05:03,773 <前年 中国清朝とイギリスの間で アヘン戦争が勃発。➡ 66 00:05:03,773 --> 00:05:10,646 清の艦隊が撃破されたとの知らせは 日本にも大きな衝撃をもたらしました> 67 00:05:10,646 --> 00:05:13,115 皆が噂しています。 68 00:05:13,115 --> 00:05:20,256 大御所様の四十九日が明け いよいよ 内輪もめが始まるだろうと…。 69 00:05:20,256 --> 00:05:24,460 今朝は 橋のたもとに 落首が貼られていました。 70 00:05:24,460 --> 00:05:29,966 「本荘の 石は墓所で むだになり」…。 71 00:05:29,966 --> 00:05:36,205 本荘の石とは 本所の中野碩翁への当てこすりか。 72 00:05:36,205 --> 00:05:39,108 大御所派の追い落としが 始まるかもしれぬな。 73 00:05:39,108 --> 00:05:43,746 異国の船は 日本の近海にも 姿を見せているというのに…。 74 00:05:43,746 --> 00:05:49,085 こんな時に 足の引っ張り合いなど 愚かなことです。 75 00:05:49,085 --> 00:05:52,922 無役とはいえ 私も幕臣の端くれ。 76 00:05:52,922 --> 00:05:58,122 なすべきことが 何かあるはずです。 77 00:06:00,663 --> 00:06:06,936 (碩翁) 「本荘の 石は墓所で むだになり」…。 78 00:06:06,936 --> 00:06:13,936 ハッ 役に立たぬ石か… フッ。 79 00:06:16,112 --> 00:06:20,449 (忠篤)越前守は 油断のならぬ男。 80 00:06:20,449 --> 00:06:25,621 我らの失脚を企てているに相違ござらぬ。 81 00:06:25,621 --> 00:06:30,121 こちらも早々 策を練らねばなりませぬ。 82 00:06:39,068 --> 00:06:41,003 (秋村)申し上げます。 うむ。 83 00:06:41,003 --> 00:06:43,072 美濃守様から使いが参りました。 84 00:06:43,072 --> 00:06:46,409 武蔵屋の離れ座敷に お越し願いたいとのこと。 85 00:06:46,409 --> 00:06:50,746 そうか すぐに伺うと伝えなさい。 はっ。 86 00:06:50,746 --> 00:06:53,215 されば お駕籠の支度を。 あっ いや➡ 87 00:06:53,215 --> 00:06:58,087 隠居のブラブラ歩きじゃ 供も駕籠もいらん。 88 00:06:58,087 --> 00:07:02,892 なれど…。 大御所様の 忌みが明けたばかりじゃ。 89 00:07:02,892 --> 00:07:07,096 人目に立たぬよう 慎まねばならぬ。 90 00:07:07,096 --> 00:07:11,601 では お着替えを…。 ああ~ 美濃守殿とは➡ 91 00:07:11,601 --> 00:07:15,938 長年 大御所様にお仕えした者同士じゃ。 92 00:07:15,938 --> 00:07:21,811 気遣いはいらん。 うん フフッ よっ。 93 00:07:21,811 --> 00:07:41,897 ♬~ 94 00:07:41,897 --> 00:07:47,397 あやつら 何を仕掛けてくるか…。 95 00:07:53,209 --> 00:07:58,914 おや あれは…。 96 00:07:58,914 --> 00:08:01,817 どちらがよいか…。 97 00:08:01,817 --> 00:08:03,786 こちらにお決めなせえやし。 98 00:08:03,786 --> 00:08:07,223 ほら 花が大ぶりで ようございますよ。 99 00:08:07,223 --> 00:08:10,926 そうですね。 でも 色はこちらが…。 100 00:08:10,926 --> 00:08:15,231 (碩翁)枝が太くて どっしりした方を選びなさい。 101 00:08:15,231 --> 00:08:17,299 あっ 白鬚様。 102 00:08:17,299 --> 00:08:23,299 座れば牡丹とは よく言ったものだ。 103 00:08:25,875 --> 00:08:31,747 なるほど。 えっ… フッ。 104 00:08:31,747 --> 00:08:38,387 いや まさに眼光鋭く 刀の目利きをするがごとくでしたな。 105 00:08:38,387 --> 00:08:43,893 真剣勝負ですから 値のはる買い物で しくじるわけにはいきません。 106 00:08:43,893 --> 00:08:48,564 では 見事値切られたのは お手柄でした。 107 00:08:48,564 --> 00:08:51,067 はい。 108 00:08:51,067 --> 00:08:55,071 端数は まけて 2百文かっきりになりませんか? 109 00:08:55,071 --> 00:08:57,406 無茶言わねえでおくんなせえ。 110 00:08:57,406 --> 00:09:01,277 そこをなんとか。 111 00:09:01,277 --> 00:09:04,747 弱ったねえ どうも。 112 00:09:04,747 --> 00:09:07,416 (笑い声) なるほど ハッハッハ。 113 00:09:07,416 --> 00:09:10,219 軍資金が少ないのですもの。 114 00:09:10,219 --> 00:09:14,757 おかげさまで 病人のよい慰めになります。 115 00:09:14,757 --> 00:09:17,793 家に ご病人が? 116 00:09:17,793 --> 00:09:20,629 夫が 江戸患いに…。 117 00:09:20,629 --> 00:09:27,236 じっとしているのが つらそうで せめて 目を楽しませるものをと。 118 00:09:27,236 --> 00:09:31,707 それは さぞ ご心配でしょう。 119 00:09:31,707 --> 00:09:37,580 ああ ならば 病気平癒の ご祈願をなされてはいかがかな。 120 00:09:37,580 --> 00:09:40,883 ああ 私がご案内しましょう。 121 00:09:40,883 --> 00:09:46,388 でも… どこか お出かけになるところだったのでは? 122 00:09:46,388 --> 00:09:49,058 いや どうも気が進まぬ…。 123 00:09:49,058 --> 00:09:51,060 えっ…? あっ いやいや➡ 124 00:09:51,060 --> 00:09:55,197 ほんの野暮用で 遅れてもかまわぬのですよ。 125 00:09:55,197 --> 00:09:57,997 さっ 参りましょう。 126 00:09:59,735 --> 00:10:04,907 <三囲稲荷から 大川沿いを 少し行ったところにある牛の御前は➡ 127 00:10:04,907 --> 00:10:11,207 本所一帯の総鎮守として 古くから崇敬を集めていました> 128 00:10:15,417 --> 00:10:19,755 まずは 体の悪いところをさすり➡ 129 00:10:19,755 --> 00:10:23,592 それから なで牛の同じ箇所をさする。 130 00:10:23,592 --> 00:10:27,096 すると 病が治ると申しますぞ。 131 00:10:27,096 --> 00:10:30,432 私がなでて 夫の病に効くのでしょうか? 132 00:10:30,432 --> 00:10:36,132 念ずれば通ず です。 さあ どうぞ。 133 00:10:45,447 --> 00:10:50,319 一日も早く 旦那様の病が よくなりますように。 134 00:10:50,319 --> 00:10:55,624 脚の痛みが 消えますように…。 135 00:10:55,624 --> 00:10:57,660 ≪モ~ッ。 136 00:10:57,660 --> 00:10:59,795 おっ。 えっ! 137 00:10:59,795 --> 00:11:04,633 今 鳴きましたね! 鳴きました。 138 00:11:04,633 --> 00:11:08,470 モ~ッ。 139 00:11:08,470 --> 00:11:12,341 な~んだ。 こら いたずら坊主。 140 00:11:12,341 --> 00:11:15,344 お参りする人を からかってはいかん。 141 00:11:15,344 --> 00:11:17,344 へへっ。 142 00:11:20,149 --> 00:11:25,654 あ~ 驚いた。 てっきり なで牛が鳴いたのかと。 143 00:11:25,654 --> 00:11:32,094 正体見たりですな。 ええ。 (笑い声) 144 00:11:32,094 --> 00:11:36,932 あら 消えた。 ああ もういない。 145 00:11:36,932 --> 00:11:39,835 ひょっとして…➡ 146 00:11:39,835 --> 00:11:46,442 今の子は 牛の御前様のお使い? 147 00:11:46,442 --> 00:11:53,642 旦那様が 早くよくなりますように。 148 00:12:06,262 --> 00:12:09,965 お待たせしました。 どうぞ。 149 00:12:09,965 --> 00:12:15,471 まあ よい香り。 おお。 150 00:12:15,471 --> 00:12:18,807 いや もう少し早ければ➡ 151 00:12:18,807 --> 00:12:23,145 この辺りは 花の見頃なんですがな…。 152 00:12:23,145 --> 00:12:29,818 まっ せめて桜餅で 春の名残を惜しむといたしましょうか。 153 00:12:29,818 --> 00:12:32,018 はい。 154 00:12:34,223 --> 00:12:38,427 これは 土産に持って帰ることにいたします。 155 00:12:38,427 --> 00:12:41,230 桜餅は お嫌いですか? 156 00:12:41,230 --> 00:12:45,601 いいえ。 主人が甘いものが好きなので。 157 00:12:45,601 --> 00:12:50,105 今年は 花見もできなかったと 寂しがっていましたから。 158 00:12:50,105 --> 00:12:53,008 では 土産の分は 別に買えば…。 159 00:12:53,008 --> 00:12:58,447 フフッ とうとう軍資金が底をつきました。 160 00:12:58,447 --> 00:13:02,318 すいません。 はい。 これ 包んでもらえますか? 161 00:13:02,318 --> 00:13:05,621 はい。 ああ では これも一緒に。 162 00:13:05,621 --> 00:13:08,958 いけません。 白鬚様は どうぞ召し上がってください。 163 00:13:08,958 --> 00:13:13,462 あ~ いやいや 実は 私はな こっちの方で。 164 00:13:13,462 --> 00:13:15,798 甘いものは とんと苦手じゃ。 165 00:13:15,798 --> 00:13:20,669 まあ。 だから これは お子たちへのお土産に。 166 00:13:20,669 --> 00:13:23,973 ありがとうございます。 では 遠慮なく。 はい。 167 00:13:23,973 --> 00:13:28,773 これもお願いします。 はい。 168 00:13:38,487 --> 00:13:44,293 ああ こりゃいかん。 とんだ粗相を。 いいえ ご心配なく。 169 00:13:44,293 --> 00:13:47,930 いやいや あの 染みになるといけない。 奥で 手水を借りましょう。 170 00:13:47,930 --> 00:13:52,434 でも…。 いやいや。 すまん ちょっとすまん。 171 00:13:52,434 --> 00:13:57,239 もう~ 殿はどこに行かれたのだ。 172 00:13:57,239 --> 00:13:59,739 あ~ う~っ。 173 00:14:05,781 --> 00:14:10,252 フッ 許せよ…。 174 00:14:10,252 --> 00:14:16,125 ああ。 おかげさまで よい土産も出来ました。 175 00:14:16,125 --> 00:14:20,462 では これで 失礼します。 176 00:14:20,462 --> 00:14:22,965 あの…。 177 00:14:22,965 --> 00:14:25,801 に… 庭を…。 えっ? 178 00:14:25,801 --> 00:14:29,138 いや 庭をご覧になりませぬか。 179 00:14:29,138 --> 00:14:32,408 近くに よいところがあるんです。 180 00:14:32,408 --> 00:14:35,911 庭… でも そろそろ戻らないと。 181 00:14:35,911 --> 00:14:42,111 いやいや すぐ近くです。 ちょっと のぞいてごらんなさい。 182 00:14:44,420 --> 00:14:56,765 ♬~ 183 00:14:56,765 --> 00:14:59,601 プハハハハ ハハハハ! 184 00:14:59,601 --> 00:15:01,537 また私の勝ちです。 185 00:15:01,537 --> 00:15:05,240 くそっ これで10連敗だ。 お順は めっぽう強いなあ。 186 00:15:05,240 --> 00:15:07,309 父上が弱いだけです。 187 00:15:07,309 --> 00:15:10,446 こいつ ますます おばば様に似てきやがった…。 188 00:15:10,446 --> 00:15:13,246 よし もうひと勝負だ。 189 00:15:16,952 --> 00:15:24,452 まあ なんて見事な楓なんでしょう。 はあ~。 190 00:15:27,129 --> 00:15:29,465 でも よいのですか? 191 00:15:29,465 --> 00:15:34,436 どなたのお屋敷か存じませんが 断りもなくお庭を拝見したりして。 192 00:15:34,436 --> 00:15:40,909 あ~ かまいません。 ここはな 私が手がけた庭ですから。 193 00:15:40,909 --> 00:15:43,745 あっ やっと分かった! 194 00:15:43,745 --> 00:15:48,917 はっ? 白鬚様は 植木屋のご隠居様なのですね。 195 00:15:48,917 --> 00:15:52,421 えっ? どうりで 植木の見分け方を➡ 196 00:15:52,421 --> 00:15:55,090 よくご存じのはずです。 フフフフッ。 197 00:15:55,090 --> 00:15:57,926 私ったら 勝手に白鬚様だなんて…。 198 00:15:57,926 --> 00:16:01,597 あ いや 白鬚で結構です。 199 00:16:01,597 --> 00:16:06,101 神様の名前で呼ばれるのは 悪い気はしませんからな。 200 00:16:06,101 --> 00:16:10,973 ハハハハ…。 さあ さあ 奥の方を どうぞご覧なさい。 201 00:16:10,973 --> 00:16:13,775 はい。 202 00:16:13,775 --> 00:16:17,946 あっ あれは何でしょう? 203 00:16:17,946 --> 00:16:20,616 珍しいお花ですね。 204 00:16:20,616 --> 00:16:24,253 あれは あんじゃべる。 205 00:16:24,253 --> 00:16:30,792 いや 麝香ナデシコとも申しましてな オランダから来た花ですよ。 206 00:16:30,792 --> 00:16:33,395 麝香ナデシコ…。 はい。➡ 207 00:16:33,395 --> 00:16:38,901 もうひと月ほどすると よい香りのする花が咲きます。 208 00:16:38,901 --> 00:16:44,773 この株 早咲きのようですね。 ほら つぼみが もう。 209 00:16:44,773 --> 00:16:46,775 ≪(秋村)殿! 210 00:16:46,775 --> 00:16:50,913 ああ よかった ここに おいででしたか。 211 00:16:50,913 --> 00:16:56,084 いや お越しがないが いかがされたのかと 武蔵屋から使いの者が来て…。 212 00:16:56,084 --> 00:16:58,987 こちらのお殿様が どうかなさいましたか? 213 00:16:58,987 --> 00:17:03,425 はっ? あ~ 武蔵屋と申すと➡ 214 00:17:03,425 --> 00:17:06,929 あっ そうそう 小梅村の花作りでしたな。 215 00:17:06,929 --> 00:17:08,864 な… 何を仰せです? 216 00:17:08,864 --> 00:17:12,234 (小声で)いいから いいから いいから。 217 00:17:12,234 --> 00:17:16,605 アハハハハ…。 お取り込みのようでしたら 私はこれで。 218 00:17:16,605 --> 00:17:22,477 こちらは どなた様で? あっ さる お旗本の奥方様でな➡ 219 00:17:22,477 --> 00:17:25,247 懇意にしていただいております。 220 00:17:25,247 --> 00:17:27,616 信と申します。 221 00:17:27,616 --> 00:17:31,486 今日はな この植木をお買い求めになった その帰りに➡ 222 00:17:31,486 --> 00:17:33,889 こちらに お連れいたしました。 223 00:17:33,889 --> 00:17:38,060 はあ… ああ 美濃守様のことは どうなさるのです! 224 00:17:38,060 --> 00:17:43,565 美濃紙… 美濃… ああ 障子でも破けましたか。 225 00:17:43,565 --> 00:17:46,602 いかん いかん いかん 陽気のせいで おかしくなられたか。 226 00:17:46,602 --> 00:17:49,905 お約束をお忘れですか 殿…。 227 00:17:49,905 --> 00:17:54,076 痛い~ 痛い…。 あっ お前様には➡ 228 00:17:54,076 --> 00:17:56,078 痛風の持病がございましたな。 229 00:17:56,078 --> 00:17:59,948 (小声で)気は確かじゃ。 わしは今 植木屋の隠居 よいな。 230 00:17:59,948 --> 00:18:03,085 はい? あの…。 231 00:18:03,085 --> 00:18:05,921 あ~ 何でもございませぬ。 232 00:18:05,921 --> 00:18:09,424 通風が ちょっと痛いそうで。 あ~ 通風が痛い…。 233 00:18:09,424 --> 00:18:13,295 あっ ちょっと これを お預かり願えませんでしょうか。 234 00:18:13,295 --> 00:18:17,099 (小声で)向こうには すぐに行くと申しておけ。 よいな。 235 00:18:17,099 --> 00:18:20,769 では 奥の方を見てまいりましょう。 236 00:18:20,769 --> 00:18:26,441 ハッ ハハハ… ではな。 ハハハ…。 237 00:18:26,441 --> 00:18:28,941 どうか お急ぎを…。 238 00:18:30,612 --> 00:18:35,884 (小鳥の鳴き声) 239 00:18:35,884 --> 00:18:38,884 (小鳥の鳴き声) 愛らしい声! 240 00:18:43,625 --> 00:18:49,898 「花は根に 鳥は古巣に帰るなり➡ 241 00:18:49,898 --> 00:18:54,770 春のとまりを 知る人ぞなき」。 242 00:18:54,770 --> 00:19:01,410 春が過ぎれば 花は根に 鳥は巣に帰っていく。 243 00:19:01,410 --> 00:19:07,582 けれど 春がどこに帰るのかを 知る人はいない…。 244 00:19:07,582 --> 00:19:11,453 崇徳院の御製ですね。 確か 「千載和歌集」。 245 00:19:11,453 --> 00:19:14,356 ほう よくご存じで。 246 00:19:14,356 --> 00:19:20,929 保元の乱に敗れて 流された讃岐で詠んだ歌ですね。 247 00:19:20,929 --> 00:19:25,729 行く春に 帰るとこなどあるのかと…。 248 00:19:33,041 --> 00:19:37,546 そろそろ おいとましなければ… 家の者が待っています。 249 00:19:37,546 --> 00:19:41,049 あっ では その辺りまで お送りしましょう。 250 00:19:41,049 --> 00:19:42,984 一人で大丈夫です。 251 00:19:42,984 --> 00:19:47,984 あっ すみません 長いこと預かっていただいて。 252 00:19:52,194 --> 00:19:56,064 お屋敷の殿様に よろしくお伝えくださいまし。 253 00:19:56,064 --> 00:19:59,568 よいものを拝見させていただきました。 254 00:19:59,568 --> 00:20:05,741 承知しました。 確かに 伝えましょう。 255 00:20:05,741 --> 00:20:09,911 おお 気を付けてお帰りください。 256 00:20:09,911 --> 00:20:12,111 はい。 257 00:20:32,768 --> 00:20:36,438 使いの者が 催促に参っております。 どうか お急ぎを。 258 00:20:36,438 --> 00:20:41,738 分かった。 駕籠の支度をせい。 はっ。 259 00:20:46,615 --> 00:20:50,786 行く春を惜しんでも➡ 260 00:20:50,786 --> 00:20:53,786 もはや詮なきことか。 261 00:21:05,267 --> 00:21:07,202 ただいま戻りました! 262 00:21:07,202 --> 00:21:11,402 シ~ッ 父上がお休みですよ。 263 00:21:13,008 --> 00:21:16,812 あれ 牡丹か。 きれいだなあ。 264 00:21:16,812 --> 00:21:20,282 向島で買い求めてきました。 265 00:21:20,282 --> 00:21:24,152 麟太郎 よい牡丹の見分け方を 知っていますか? 266 00:21:24,152 --> 00:21:26,488 いえ…。 267 00:21:26,488 --> 00:21:31,927 枝がしっかりして 落ち着いて 座っているように見えるのがよいのです。 268 00:21:31,927 --> 00:21:35,764 ほら 座れば牡丹と言うでしょう? 269 00:21:35,764 --> 00:21:37,699 えっ…。 270 00:21:37,699 --> 00:21:43,104 というのは 白鬚様の受け売りですけど。 白鬚様? 271 00:21:43,104 --> 00:21:47,976 昔 犬にかまれて けがをしたことがありましたね。 272 00:21:47,976 --> 00:21:52,447 ああ… はい。 273 00:21:52,447 --> 00:21:56,318 その時 よいお薬を 届けてくださったお方ですよ。 274 00:21:56,318 --> 00:22:00,188 今日 三囲稲荷の前で ばったり会って。 275 00:22:00,188 --> 00:22:04,059 ふ~ん。 それから 一緒に牛の御前に。 276 00:22:04,059 --> 00:22:09,631 父上の病が早くよくなるように なで牛に お願いしてきました。 277 00:22:09,631 --> 00:22:12,968 フフッ フフフフッ…。 何です? 278 00:22:12,968 --> 00:22:16,271 なで牛が 「モ~ッ」と鳴いたのです。 279 00:22:16,271 --> 00:22:20,141 石の牛が? ハハハハ… まさか。 280 00:22:20,141 --> 00:22:24,980 フフフ… 立派なお屋敷のお庭にも 連れていっていただいたのですよ。 281 00:22:24,980 --> 00:22:27,883 珍しい花や木が たくさんあって…。 282 00:22:27,883 --> 00:22:29,851 どなたのお屋敷ですか? 283 00:22:29,851 --> 00:22:33,088 さあ… 白鬚様のお出入り屋敷です。 284 00:22:33,088 --> 00:22:38,960 やっと分かりました。 あのお方の正体は 植木屋のご隠居様。 285 00:22:38,960 --> 00:22:43,598 あっ いけない。 また お名を聞きそびれた…。 286 00:22:43,598 --> 00:22:46,434 向島なら 探してみましょうか? 287 00:22:46,434 --> 00:22:53,775 そうですねえ…。 でも きっとまた すぐ会えますよ。 288 00:22:53,775 --> 00:22:58,075 昔から 不思議なご縁がありますから。 289 00:23:02,484 --> 00:23:07,122 そうか…。 これでよいのか。 290 00:23:07,122 --> 00:23:09,958 何がですか? 291 00:23:09,958 --> 00:23:12,460 ずっと 考えていたのです。 292 00:23:12,460 --> 00:23:16,331 世の中は 今に大きく変わる。 293 00:23:16,331 --> 00:23:20,201 私は 何をすればよいのかと。 294 00:23:20,201 --> 00:23:22,137 簡単なことでした。 295 00:23:22,137 --> 00:23:28,009 母上が笑って暮らせる毎日が ずっと続くようにすればよいのです。 296 00:23:28,009 --> 00:23:31,947 笑って? はい。 297 00:23:31,947 --> 00:23:36,585 それを物差しにして 事の善しあしを測れば➡ 298 00:23:36,585 --> 00:23:39,785 大きく間違うことはありません。 299 00:23:43,758 --> 00:23:47,929 あっ そうそう 桜餅がありますよ。 300 00:23:47,929 --> 00:23:50,832 長命寺の? あれはうまい。 301 00:23:50,832 --> 00:23:52,801 ≪お~い お信! 302 00:23:52,801 --> 00:23:57,001 あっ 目が覚めたようです。 一緒に 頂きましょう。 303 00:24:04,479 --> 00:24:12,787 <大御所 家斉の忌み明けから ひとつきもたたない 4月16日のこと…> 304 00:24:12,787 --> 00:24:16,124 越前殿。 305 00:24:16,124 --> 00:24:20,124 それがしに 何か御用か? 306 00:24:22,464 --> 00:24:25,266 上意である。 控えよ。 307 00:24:25,266 --> 00:24:28,637 ははっ。 308 00:24:28,637 --> 00:24:31,606 (忠邦)ご沙汰を申し聞かす。 309 00:24:31,606 --> 00:24:37,078 その方儀 勤め方 尊慮にかなわず。 310 00:24:37,078 --> 00:24:40,081 お役御免を仰せつけらる。 311 00:24:40,081 --> 00:24:42,581 なんと…! 312 00:24:44,419 --> 00:24:51,926 上意じゃ! 直ちに この場を立ち去りませいっ。 313 00:24:51,926 --> 00:24:55,726 さっ…。 立つぞ。 314 00:24:59,234 --> 00:25:01,169 バカな…! 315 00:25:01,169 --> 00:25:03,605 <水野美濃守忠篤。➡ 316 00:25:03,605 --> 00:25:09,110 御側御用取次として 碩翁と共に 大御所の治世を支えてきた高官は➡ 317 00:25:09,110 --> 00:25:14,410 一日にして その座を追われました。 そして…> 318 00:25:18,453 --> 00:25:20,388 何用かな。 319 00:25:20,388 --> 00:25:22,957 中野碩翁。 320 00:25:22,957 --> 00:25:28,630 不届きの儀あるにつき 登城を禁ずる。 321 00:25:28,630 --> 00:25:33,468 直ちに屋敷へ戻り 沙汰を待たれよ。 さっ。 322 00:25:33,468 --> 00:25:35,437 痛っ! 323 00:25:35,437 --> 00:25:40,237 お城を下がるのに 人の手は借りぬ。 324 00:25:42,077 --> 00:25:47,577 委細 承知つかまつった。 325 00:25:53,788 --> 00:26:00,462 <この日を境に 老中首座 水野忠邦が権力を掌握。➡ 326 00:26:00,462 --> 00:26:02,931 亡き大御所に仕えた者たちは➡ 327 00:26:02,931 --> 00:26:07,769 ことごとく その地位を 追われることとなったのです。➡ 328 00:26:07,769 --> 00:26:10,672 それから ひとつきの後…> 329 00:26:10,672 --> 00:26:18,480 これより 御政事の儀は 享保 寛政の御改革を手本とし➡ 330 00:26:18,480 --> 00:26:26,154 質素倹約に励み 綱紀を粛正する。 331 00:26:26,154 --> 00:26:35,196 皆の者 いずれも よくよく心得 相勤むべし。 332 00:26:35,196 --> 00:26:37,496 (重臣たち)ははっ。 333 00:26:40,902 --> 00:26:44,405 <天保の改革の始まりでした。➡ 334 00:26:44,405 --> 00:26:47,742 町方にも 改革の開始が告げられ➡ 335 00:26:47,742 --> 00:26:55,416 以後 芝居小屋の移転 寄席の削減 高価な品物の売買禁止など➡ 336 00:26:55,416 --> 00:27:02,290 178件にも及ぶ町触が 次々と出されたのです。➡ 337 00:27:02,290 --> 00:27:09,430 町奉行所には 市中取締掛が新設され 厳しい監視が行われました> 338 00:27:09,430 --> 00:27:12,934 あっ お見回り ご苦労さまにございます。 339 00:27:12,934 --> 00:27:17,238 金銀の細工物 鼈甲 絹物 箔を使った品などは➡ 340 00:27:17,238 --> 00:27:19,174 扱っておらぬだろうな。 341 00:27:19,174 --> 00:27:24,374 はい お触れに背く品は 一切置いておりません。 342 00:27:34,189 --> 00:27:38,989 ぜいたく品を売り買いすれば 容赦なく しょっぴくぞ! 343 00:27:42,063 --> 00:27:44,263 お前ら こそこそするな! 344 00:27:48,403 --> 00:27:52,103 べ~だっ。 345 00:27:53,741 --> 00:27:58,913 <碩翁には 過酷な処分が待っていました。➡ 346 00:27:58,913 --> 00:28:04,213 家屋敷を没収され 逼塞を言い渡されたのです> 347 00:28:05,787 --> 00:28:11,092 殿。 人足どもが参りました。 348 00:28:11,092 --> 00:28:13,027 そうか。 349 00:28:13,027 --> 00:28:17,727 取りかかっても よろしゅうございましょうか。 350 00:28:20,602 --> 00:28:27,108 長年 丹精込めて作られたお庭を…。 言うな。 351 00:28:27,108 --> 00:28:30,612 このまま人手に渡るより➡ 352 00:28:30,612 --> 00:28:35,884 己の手で さら地にした方がよい。 353 00:28:35,884 --> 00:28:40,084 では 始めさせまする。 354 00:28:53,201 --> 00:28:55,270 あれは何でしょう? 355 00:28:55,270 --> 00:29:00,074 麝香ナデシコとも申しましてな オランダから来た花ですよ。 356 00:29:00,074 --> 00:29:02,210 麝香ナデシコ…。 357 00:29:02,210 --> 00:29:08,210 (碩翁)もうひとつきほどすると よい香りのする花が咲きます。 358 00:29:12,954 --> 00:29:17,225 今度は 祭りの山車や 鳴り物を 禁ずるというお触れが出やした。 359 00:29:17,225 --> 00:29:22,764 はあ… 三味線や太鼓も駄目なのですか? 360 00:29:22,764 --> 00:29:27,235 それでは お祭りになりませんね。 361 00:29:27,235 --> 00:29:29,771 (銀次)旦那の具合はどうです? 362 00:29:29,771 --> 00:29:35,576 まだ… 町の様子が耳に入って 気が ふさぐようです。 363 00:29:35,576 --> 00:29:38,379 道具市も 客足は さっぱりで。 364 00:29:38,379 --> 00:29:41,716 せめて 旦那がいてくれたらなあ…。 365 00:29:41,716 --> 00:29:44,619 ≪(お順)母上~! 366 00:29:44,619 --> 00:29:47,388 これを渡してほしいと頼まれました。 367 00:29:47,388 --> 00:29:51,388 どなたから? さあ… 知らない人。 368 00:29:53,728 --> 00:29:55,663 うわあ~ きれい! 369 00:29:55,663 --> 00:29:59,600 いい匂いですねえ! 370 00:29:59,600 --> 00:30:03,400 これ あのお庭の…。 371 00:30:11,579 --> 00:30:14,579 白鬚様…。 372 00:30:18,920 --> 00:30:21,589 きれいだなあ 何て花だい? 373 00:30:21,589 --> 00:30:24,625 麝香ナデシコです。 いい匂いがしますよ。 374 00:30:24,625 --> 00:30:29,425 ほう。 どれ よいしょ。 375 00:30:31,232 --> 00:30:34,932 旦那様 気を付けて。 おう。 376 00:30:36,604 --> 00:30:40,404 よ~し お水やるか。 はい。 377 00:30:50,451 --> 00:30:57,125 [ 心の声 ] 「花は根に 鳥は古巣に帰るなり➡ 378 00:30:57,125 --> 00:31:04,999 春のとまりを 知る人ぞなき」…。 379 00:31:04,999 --> 00:31:10,999 白鬚様 どこに帰られたのかしら。 380 00:31:12,673 --> 00:31:16,144 (お順)見て見て。 381 00:31:16,144 --> 00:31:18,079 きれいな虹。 382 00:31:18,079 --> 00:31:21,379 おお 久しぶりに見たな。 383 00:31:30,291 --> 00:31:34,162 <碩翁からの贈り物が 勝家に明るさを届け➡ 384 00:31:34,162 --> 00:31:40,601 小吉の病も 少しずつ 快方に向かっていきました。➡ 385 00:31:40,601 --> 00:31:44,601 ところが その秋のこと> 386 00:31:51,946 --> 00:31:54,946 鳥居様 これを。 387 00:32:01,656 --> 00:32:07,128 岡野のことは 2年前に沙汰なしと決めたであろう。 388 00:32:07,128 --> 00:32:09,797 片づいたのは 岡野の方だけ。 389 00:32:09,797 --> 00:32:13,267 借地人の勝が 騒ぎに乗じて江戸を離れた件は➡ 390 00:32:13,267 --> 00:32:16,170 詮議が済んでおりませぬ。 391 00:32:16,170 --> 00:32:20,475 無法に関所を破ったに相違なく 綱紀粛正の折➡ 392 00:32:20,475 --> 00:32:24,475 かかる不届きものこそ 取り締まるべきかと。 393 00:32:37,225 --> 00:32:40,128 <2年前の摂津行きが蒸し返され➡ 394 00:32:40,128 --> 00:32:44,932 下された処分は 重いものでした…。➡ 395 00:32:44,932 --> 00:32:51,232 勝家は 本所を追われ 虎ノ門に押込と決まったのです> 396 00:33:00,481 --> 00:33:04,252 随分 長いこと拝んでいましたね。 397 00:33:04,252 --> 00:33:08,122 おばば様に 謝ってたんだ。 398 00:33:08,122 --> 00:33:10,958 バカを尽くしたあげく➡ 399 00:33:10,958 --> 00:33:17,265 とうとう本所を追ん出されることに なっちまった。 400 00:33:17,265 --> 00:33:21,802 あの世で さぞ怒ってるだろうなあ。 401 00:33:21,802 --> 00:33:27,141 「そなた やはり 勝家を潰しに来たのだな」って。 402 00:33:27,141 --> 00:33:30,811 勝家は 潰れてなどいませんよ。 403 00:33:30,811 --> 00:33:34,782 麟太郎がいるではありませんか。 404 00:33:34,782 --> 00:33:38,085 命まで取られるわけじゃなし。 405 00:33:38,085 --> 00:33:43,085 みんな そろって暮らせるのですから きっと なんとかなりますよ。 406 00:33:44,759 --> 00:33:47,094 こんなことで気落ちしていたら➡ 407 00:33:47,094 --> 00:33:52,233 それこそ おばば様が あの世で角を出します。 408 00:33:52,233 --> 00:33:54,168 ん? 409 00:33:54,168 --> 00:33:56,103 婿殿! 410 00:33:56,103 --> 00:33:59,607 チッ やっぱり おばば様の孫だな。 411 00:33:59,607 --> 00:34:01,542 よく似てるよ。 412 00:34:01,542 --> 00:34:05,246 ウフフッ。 お前は のんきだね。 413 00:34:05,246 --> 00:34:08,546 はい。 ≪(多賀)小吉殿! 414 00:34:14,622 --> 00:34:18,259 ああっ どうしましょう。 415 00:34:18,259 --> 00:34:25,032 岡野の家を助けてくださったばっかりに こんなことに…。 416 00:34:25,032 --> 00:34:27,935 (光江)おばあ様。 417 00:34:27,935 --> 00:34:30,838 2年もたってから処分を下すとは…。 418 00:34:30,838 --> 00:34:33,407 ご公儀は あんまり非道だ。 419 00:34:33,407 --> 00:34:39,280 何もかも 岡野の不始末から 起きたこと…。 420 00:34:39,280 --> 00:34:41,749 (泣き声) 421 00:34:41,749 --> 00:34:45,086 お多賀様 もう その話は。 422 00:34:45,086 --> 00:34:48,923 口出しするなと約束して 俺が勝手にやったことだ。 423 00:34:48,923 --> 00:34:52,593 お前様たちのせいじゃ ありませんよ。 424 00:34:52,593 --> 00:34:54,793 ≪(お順)お客さんですよ。 425 00:34:56,430 --> 00:34:58,466 旦那! おう 銀次。 426 00:34:58,466 --> 00:35:00,601 どうしたい 市で何かあったのかい? 427 00:35:00,601 --> 00:35:02,536 どうしたもねえもんだ。 428 00:35:02,536 --> 00:35:04,472 旦那が 本所から 追ん出されるって聞いて➡ 429 00:35:04,472 --> 00:35:06,774 慌てて飛んできたんですぜ。 430 00:35:06,774 --> 00:35:09,677 (長兵衛)大勢押しかけて 騒ぎになってもいけませんから➡ 431 00:35:09,677 --> 00:35:11,646 我々だけで来ましたが➡ 432 00:35:11,646 --> 00:35:15,116 市の者たちは 皆 案じておりますよ。 433 00:35:15,116 --> 00:35:17,118 旦那が どんな悪いことしたってんですよ。 434 00:35:17,118 --> 00:35:19,787 何が御改革だい ちきしょう 本当に! 435 00:35:19,787 --> 00:35:21,722 これ お清さん…。 436 00:35:21,722 --> 00:35:26,127 やっぱり おととしの 摂津行きが たたったんですかい? 437 00:35:26,127 --> 00:35:30,131 (泣き声) 438 00:35:30,131 --> 00:35:33,567 お多賀様。 バカ! 余計なこと言ってんじゃねえや。 439 00:35:33,567 --> 00:35:38,072 俺の身性が悪いんで とうから目ぇつけられてただけだろうが。 440 00:35:38,072 --> 00:35:41,575 旦那…。 しみったれた顔すんな。 441 00:35:41,575 --> 00:35:44,478 なんてこたあねえ 川の向こうに ちょいと引っ越しするだけさ。 442 00:35:44,478 --> 00:35:48,349 殿様がいなけりゃ 道具市は おしまいでございます。 443 00:35:48,349 --> 00:35:52,219 情けねえ。 市は みんなのものだろ。 444 00:35:52,219 --> 00:35:54,155 みんなで守らなくて どうするんでえ。 445 00:35:54,155 --> 00:35:56,590 けど 今でせえ お取り締まりが厳しくて➡ 446 00:35:56,590 --> 00:35:59,427 息を殺すようにして 商売してるんですぜ。 447 00:35:59,427 --> 00:36:03,764 銀次さん それも しばらくの辛抱ですよ。 448 00:36:03,764 --> 00:36:09,437 今にきっと 元のにぎやかな道具市に戻りますから。 449 00:36:09,437 --> 00:36:11,372 奥様…。 450 00:36:11,372 --> 00:36:13,774 やけに自信たっぷりじゃねえか。 451 00:36:13,774 --> 00:36:18,446 はい。 ご公儀のなさることでも➡ 452 00:36:18,446 --> 00:36:23,250 人情とかけ離れていたのでは 長く続くはずがありませんもの。 453 00:36:23,250 --> 00:36:27,621 フッ 聞いたかい。 いい卦が出たぜ。 454 00:36:27,621 --> 00:36:32,393 うちのお信は 大した易者だ。 455 00:36:32,393 --> 00:36:34,729 まあ 人をからかって。 456 00:36:34,729 --> 00:36:37,198 お前が言ってるのが 道理だ。 457 00:36:37,198 --> 00:36:40,568 みんな 口をつぐんでいるだけだ。 458 00:36:40,568 --> 00:36:43,070 ご妻女は度胸がいいのだ。 459 00:36:43,070 --> 00:36:46,574 2年前は すりこ木 一本で ゴロツキに立ち向かっていたっけ。 460 00:36:46,574 --> 00:36:49,774 よしてください そんな話。 461 00:36:51,412 --> 00:36:53,347 お下がりなさい! 462 00:36:53,347 --> 00:36:56,283 武士の家に 勝手に上がり込むとは 無礼な。 463 00:36:56,283 --> 00:36:59,587 すりこ木 持たせりゃ 俺でも かなわねえや。 464 00:36:59,587 --> 00:37:04,458 フッ ウフフ…。 光江様まで。 465 00:37:04,458 --> 00:37:07,094 (笑い声) 466 00:37:07,094 --> 00:37:10,765 もうっ。 (笑い声) 467 00:37:10,765 --> 00:37:16,237 驚いたな。 励ますつもりで来たが 無用であったらしい。 468 00:37:16,237 --> 00:37:18,305 はい…。 469 00:37:18,305 --> 00:37:21,609 何をしているのです? こんなところに集まって。 470 00:37:21,609 --> 00:37:23,544 伯母上。 471 00:37:23,544 --> 00:37:26,344 門の外まで笑い声が。 472 00:37:28,783 --> 00:37:30,818 あれは ちょっとした勘違いで…。 473 00:37:30,818 --> 00:37:32,753 ちょっとじゃねえよ とんでもねえ…。 474 00:37:32,753 --> 00:37:35,189 さぞ 力を 落としているだろうと思ったら…。 475 00:37:35,189 --> 00:37:39,393 お信さん いつもと ちっとも変わらない。 476 00:37:39,393 --> 00:37:41,896 (笑い声) ひど~い! 477 00:37:41,896 --> 00:37:44,732 慌てず 騒がず…。 478 00:37:44,732 --> 00:37:48,602 勝家で一番落ち着いているのは 母のようです。 479 00:37:48,602 --> 00:37:52,072 まことに…。 480 00:37:52,072 --> 00:37:59,213 麟太郎 ふた親が のんき者なのですから そなたが しっかりせねばなりませんよ。 481 00:37:59,213 --> 00:38:03,083 勝家の命運は そなたにかかっているのです。 482 00:38:03,083 --> 00:38:07,087 はい。 心得ております。 483 00:38:07,087 --> 00:38:16,230 (笑い声) 484 00:38:16,230 --> 00:38:18,766 (せきこみ) 485 00:38:18,766 --> 00:38:23,237 起きていなさると お体に障りますよ。 486 00:38:23,237 --> 00:38:27,037 いやいや 世話をかけるな。 487 00:38:32,713 --> 00:38:37,384 ああ よいよい。 開けといてくれ。 488 00:38:37,384 --> 00:38:41,722 けど 風に当たっては 体に毒ですから。 489 00:38:41,722 --> 00:38:46,594 いや 今日はのう 日ざしが温かい。 490 00:38:46,594 --> 00:38:51,198 ハハ… しばらく そのままに。 491 00:38:51,198 --> 00:38:55,402 さようですか それなら…。 492 00:38:55,402 --> 00:38:59,907 おや 寒牡丹に つぼみが。 493 00:38:59,907 --> 00:39:04,078 花が咲いたら さぞ きれいでしょうねえ。 494 00:39:04,078 --> 00:39:07,078 (碩翁)牡丹か…。 495 00:39:10,584 --> 00:39:15,222 わしの一生も➡ 496 00:39:15,222 --> 00:39:21,022 そう悪いものではなかった。 497 00:39:34,174 --> 00:39:36,243 おい お信 先行くぞ! 498 00:39:36,243 --> 00:39:38,712 ≪は~い。 499 00:39:38,712 --> 00:39:42,383 <小吉一家が 住み慣れた本所の家を離れたのは➡ 500 00:39:42,383 --> 00:39:46,083 暮れも近い ある日のことです> 501 00:39:48,055 --> 00:41:05,799 ♬~ 502 00:41:05,799 --> 00:41:11,138 ああ 楽しかった…。 503 00:41:11,138 --> 00:41:22,850 ♬~ 504 00:41:22,850 --> 00:41:25,152 ≪(麟太郎 お順)母上~! 505 00:41:25,152 --> 00:41:28,489 ≪おい お信 何やってんだ。 行くぞ! 506 00:41:28,489 --> 00:41:32,289 は~い 今参ります。 507 00:41:40,100 --> 00:41:43,400 よし 出立! 508 00:41:51,111 --> 00:41:53,947 待て! 手荒なまねは よしなさい。 ありがとうござんした。 509 00:41:53,947 --> 00:41:56,850 澄んだ瞳といい 名馬じゃ 名馬。 馬。 510 00:41:56,850 --> 00:41:59,453 西洋の書物は 知識の宝庫だ。 511 00:41:59,453 --> 00:42:01,488 鳥居は 大の蘭学嫌えだそうです。 512 00:42:01,488 --> 00:42:04,792 人の役に立つことを禁ずるなんざ バカのするこった。 513 00:42:04,792 --> 00:42:06,727 ポナ パルテ? フランス王 ナポレオン➡ 514 00:42:06,727 --> 00:42:08,662 フレイヘイドの世を 打ち立てようとした男だ。 515 00:42:08,662 --> 00:42:11,131 フレイヘイド フレイヘイドです。 516 00:42:11,131 --> 00:42:41,128 ♬~ 517 00:42:41,128 --> 00:42:46,600 ♬~ 518 00:42:46,600 --> 00:43:26,100 ♬~ 519 00:45:35,602 --> 00:45:38,238 空から見れば読み解ける➡ 520 00:45:38,238 --> 00:45:42,609 歴史の物語があります。 521 00:45:42,609 --> 00:45:48,115 「空旅中国」。 522 00:45:48,115 --> 00:45:53,787 英雄たちの足跡をたどってみましょう。 523 00:45:53,787 --> 00:46:01,087 ♬~