1 00:00:32,636 --> 00:00:35,840 <天保13年 初物の野菜を➡ 2 00:00:35,840 --> 00:00:41,212 高値で売買することを禁ずる お触れが出ました> 3 00:00:41,212 --> 00:00:43,848 おい。 4 00:00:43,848 --> 00:00:47,051 初物のなすを 高く売ったそうだよ。 5 00:00:47,051 --> 00:00:51,051 いくらご法度だって なすぐれえでなあ。 6 00:00:53,390 --> 00:00:55,726 また召し捕りか…。 7 00:00:55,726 --> 00:01:00,598 <江戸の町には 質素倹約 綱紀粛正を強行する➡ 8 00:01:00,598 --> 00:01:04,401 改革の嵐が 吹き荒れていたのです> 9 00:01:04,401 --> 00:01:16,413 ♬~ 10 00:01:16,413 --> 00:01:20,751 (お信)まあ よく出来ていること。 11 00:01:20,751 --> 00:01:23,087 でしょう? これで お徳さん➡ 12 00:01:23,087 --> 00:01:25,122 また店に出られますよ。 13 00:01:25,122 --> 00:01:28,959 どっから都合したんだい。 深川八幡の宮地芝居でさ。 14 00:01:28,959 --> 00:01:30,895 床山が顔見知りで。 15 00:01:30,895 --> 00:01:33,697 (お順)宮地芝居って 何ですか? 16 00:01:33,697 --> 00:01:36,600 神社の境内でやってる 掛け小屋の小芝居さ。 17 00:01:36,600 --> 00:01:40,471 あ そうそう 嬢様には これを。 18 00:01:40,471 --> 00:01:44,041 小道具の余りもんですが あやとりひもに どうです? 19 00:01:44,041 --> 00:01:46,544 ありがとう 銀次さん。 20 00:01:46,544 --> 00:01:49,046 (銀次)どういたしやして。➡ 21 00:01:49,046 --> 00:01:51,949 宮地芝居は もういけやせん。 22 00:01:51,949 --> 00:01:54,919 とうとう 小屋を取っ払えと お達しが出たそうで。 23 00:01:54,919 --> 00:01:58,722 取っ払うって 江戸中の小屋をかい? へい。 24 00:01:58,722 --> 00:02:02,593 役者も裏方も 廃業するか 旅回りに出るしかねえってんで➡ 25 00:02:02,593 --> 00:02:06,397 衣装や道具を始末してるんでさあ。 ふ~ん。 26 00:02:06,397 --> 00:02:12,069 天下の中村座と市村座も 日本橋の二丁町を追われて➡ 27 00:02:12,069 --> 00:02:14,872 浅草聖天町裏に所替えですからね。 28 00:02:14,872 --> 00:02:20,578 100年も前から江戸の真ん中にあるものを わざわざ遠くに移さなくても…。 29 00:02:20,578 --> 00:02:23,614 お取り潰しにならなかっただけ マシかもしれませんや。 30 00:02:23,614 --> 00:02:26,250 愚にもつかねえことやりやがるぜ。 31 00:02:26,250 --> 00:02:29,887 寄席や芝居小屋潰して 誰が得するっつうんだい。 32 00:02:29,887 --> 00:02:33,757 寄席で思い出した。 ちょいと奉行所に行ってきます。 33 00:02:33,757 --> 00:02:36,193 おっ 呼び出しでも食らったか。 34 00:02:36,193 --> 00:02:42,533 違いますよ。 ほら 去年の暮れ 娘義太夫が 大勢召し捕られたでしょう。 35 00:02:42,533 --> 00:02:45,369 長えこと 伝馬町の牢に 放り込まれていたのが➡ 36 00:02:45,369 --> 00:02:48,405 いよいよ 今日 お沙汰が下るって噂なんでい。 37 00:02:48,405 --> 00:02:53,243 それじゃあ 100日も牢に… ひどい。 38 00:02:53,243 --> 00:02:56,847 役人どもが張り切って 片っ端からしょっぴくから➡ 39 00:02:56,847 --> 00:02:59,717 奉行所の詮議が つっかえてるんだろうな。 40 00:02:59,717 --> 00:03:04,221 よし! じゃあ 俺も ちょっと見に行ってくっか。 41 00:03:04,221 --> 00:03:06,156 へい。 行ってきやす。 42 00:03:06,156 --> 00:03:09,856 行ってらっしゃい。 んっ! 43 00:03:11,862 --> 00:03:14,398 母上。 44 00:03:14,398 --> 00:03:18,068 娘義太夫は 悪いことなのですか? 45 00:03:18,068 --> 00:03:20,004 えっ…。 46 00:03:20,004 --> 00:03:27,077 ♬~ 47 00:03:27,077 --> 00:03:34,351 今ごろは 半七っつぁん。 48 00:03:34,351 --> 00:03:39,690 <天保の頃 娘義太夫が 大ブームを巻き起こしました。➡ 49 00:03:39,690 --> 00:03:43,027 現代のアイドルさながらの人気で➡ 50 00:03:43,027 --> 00:03:46,363 町人はもとより 武士までが寄席に詰めかけ➡ 51 00:03:46,363 --> 00:03:51,235 風紀を乱すと 問題になったのです> 52 00:03:51,235 --> 00:03:54,038 悪いことではありません。 53 00:03:54,038 --> 00:03:57,908 ただ 女が義太夫節を語るのは➡ 54 00:03:57,908 --> 00:04:00,911 禁じられてしまったのですよ。 55 00:04:00,911 --> 00:04:03,714 どうして? 56 00:04:03,714 --> 00:04:06,617 男ならよいのですか? 57 00:04:06,617 --> 00:04:10,487 それは…。 58 00:04:10,487 --> 00:04:14,224 女の髪結いも ご法度だし…。 59 00:04:14,224 --> 00:04:19,024 おかしな世の中。 60 00:04:20,998 --> 00:04:24,198 おお 来たぞ! 61 00:04:26,737 --> 00:04:30,674 <太夫たちは 判決の申し渡しを受けるために➡ 62 00:04:30,674 --> 00:04:36,413 伝馬町の牢から 奉行所に引き立てられました> 63 00:04:36,413 --> 00:04:39,713 (お民)鶴秀師匠…。 64 00:04:51,528 --> 00:04:54,565 この間の子…。 65 00:04:54,565 --> 00:04:58,065 ≪おい! 66 00:05:10,214 --> 00:05:12,214 んっ! 67 00:05:16,553 --> 00:05:19,053 (小声で)出ちゃいけない。 68 00:05:25,562 --> 00:05:29,262 んっ! 69 00:05:30,801 --> 00:05:33,601 お待ちよ! 70 00:05:37,674 --> 00:05:40,344 (銀次)ひっでえことするなあ。 71 00:05:40,344 --> 00:05:42,379 弱え者 見せしめにしやがって。 72 00:05:42,379 --> 00:05:45,015 改革が聞いてあきれるぜ。 73 00:05:45,015 --> 00:05:47,315 行くぜ。 74 00:05:49,686 --> 00:05:52,189 ふんっ… 痛っ! 75 00:05:52,189 --> 00:05:54,989 フン ざまあみやがれ。 76 00:05:57,361 --> 00:06:04,134 <この日 36人の娘義太夫に 30日の手鎖が言い渡され➡ 77 00:06:04,134 --> 00:06:09,072 寄席の席亭には 江戸払いの処分が下されたのでした> 78 00:06:09,072 --> 00:06:12,709 (お徳)あっ どうぞ。 79 00:06:12,709 --> 00:06:17,047 よく似合っていること。 まるで地毛のようです。 80 00:06:17,047 --> 00:06:20,551 根を低く 結い直してみたんですよ。 81 00:06:20,551 --> 00:06:23,854 さすがは 髪結いのお徳さん。 82 00:06:23,854 --> 00:06:28,225 おかげさまで 私は大助かりですが…。 83 00:06:28,225 --> 00:06:34,665 小屋を潰される 宮地芝居の人たちは さぞ お困りでしょうね。 84 00:06:34,665 --> 00:06:39,169 ええ…。 娘義太夫も 厳しいお咎めを受けて➡ 85 00:06:39,169 --> 00:06:42,806 二度と 寄席には 出られないそうですし…。 86 00:06:42,806 --> 00:06:47,678 髪を結って回るのも 寄席で義太夫節を語るのも➡ 87 00:06:47,678 --> 00:06:50,347 皆 渡世でございますよ。 88 00:06:50,347 --> 00:06:52,382 身につけた芸を売らずに➡ 89 00:06:52,382 --> 00:06:57,882 何を生業に 生きていけというのでしょうねえ。 90 00:07:02,693 --> 00:07:05,028 お帰りなさい。 91 00:07:05,028 --> 00:07:07,064 ただいま戻りました。 おう 戻ったかい。 92 00:07:07,064 --> 00:07:09,199 辰 うちのが帰ったぜ。 93 00:07:09,199 --> 00:07:11,134 (新門)お留守中に お邪魔しておりやす。 94 00:07:11,134 --> 00:07:13,537 新門辰五郎だ。 95 00:07:13,537 --> 00:07:15,572 浅草一の大親分だ。 96 00:07:15,572 --> 00:07:17,708 何をおっしゃいます。 97 00:07:17,708 --> 00:07:19,643 そんな貫禄じゃございやせんよ。 98 00:07:19,643 --> 00:07:21,578 さあ どうぞ 座敷の方に。 99 00:07:21,578 --> 00:07:25,048 ああ めっそうもねえ ここで結構で…。 100 00:07:25,048 --> 00:07:29,848 おう お前もご挨拶しねえかい。 101 00:07:35,325 --> 00:07:39,196 この娘 うちで預かることにしたぜ。 えっ? 102 00:07:39,196 --> 00:07:41,498 行き倒れているところを➡ 103 00:07:41,498 --> 00:07:45,335 うちの若え者が見つけて 連れ帰ってきやしてね。 104 00:07:45,335 --> 00:07:49,673 名は お峰。 身寄りはねえようです。 105 00:07:49,673 --> 00:07:53,343 お峰さん 年はいくつ? 106 00:07:53,343 --> 00:07:57,514 16…。 107 00:07:57,514 --> 00:08:01,685 フッ あいすいやせん 口の重いタチのようで。 108 00:08:01,685 --> 00:08:05,188 こちら様で 手伝えにでも 使っていただけねえかと。 109 00:08:05,188 --> 00:08:09,026 二間しかねえ家で 手伝いも何も あったもんじゃねえや ハハッ。 110 00:08:09,026 --> 00:08:12,696 でも… 寝る部屋もないですし。 111 00:08:12,696 --> 00:08:15,198 麟のやつを しばらく 虎のところに預けりゃいいさ。 112 00:08:15,198 --> 00:08:17,834 えっ 兄上を…? 113 00:08:17,834 --> 00:08:24,207 実は お峰は こちらのお坊ちゃんに 助けていただいたことがあるんです。 114 00:08:24,207 --> 00:08:27,044 (麟太郎)手荒なまねは よしなさい。 115 00:08:27,044 --> 00:08:29,713 辰巳芸者の文吉というのと2人…。 116 00:08:29,713 --> 00:08:32,983 おかげさまで けがもなく済みました。 117 00:08:32,983 --> 00:08:36,653 へえ そりゃ初耳だ。 お前 知ってたかい? 118 00:08:36,653 --> 00:08:41,353 いいえ。 勝手ながら これも何かのご縁かと…。 119 00:08:43,160 --> 00:08:45,996 当座のものは そろえて参りやした。 120 00:08:45,996 --> 00:08:50,167 いずれ 米屋か酒屋にでも 奉公先を見つけますんで➡ 121 00:08:50,167 --> 00:08:53,967 少しの間 お頼み申しやす。 122 00:09:02,679 --> 00:09:06,350 いい人ですねえ 辰五郎さん。 123 00:09:06,350 --> 00:09:10,687 大親分というから もっと怖い人かと思いました。 124 00:09:10,687 --> 00:09:14,691 頭と立てられるだけあって 度胸はいいし 情にはあつい。 125 00:09:14,691 --> 00:09:18,362 いい人に拾われたな。 126 00:09:18,362 --> 00:09:23,233 当座のものはそろえたと 言ってましたけど…。 127 00:09:23,233 --> 00:09:25,533 あら? 128 00:09:35,145 --> 00:09:37,080 お金…。 129 00:09:37,080 --> 00:09:39,783 頂くわけにはいきませんね。 130 00:09:39,783 --> 00:09:43,153 ちょっと行って お返ししてきます。 よしな。 131 00:09:43,153 --> 00:09:45,655 頭に恥かかせる気かい。 けど…。 132 00:09:45,655 --> 00:09:50,527 辰のやつ そいつをよこす口実に 娘連れてきたのかもしれねえな。 133 00:09:50,527 --> 00:09:52,529 よけいな気ぃ回しやがる。 134 00:09:52,529 --> 00:09:55,999 それじゃあ やっぱりこれは…。 預かっときな。 135 00:09:55,999 --> 00:10:01,171 俺がもらう金じゃねえ。 お峰の飯代だ。 136 00:10:01,171 --> 00:10:03,106 はい。 137 00:10:03,106 --> 00:10:05,042 ≪ただいま戻りました。 138 00:10:05,042 --> 00:10:07,811 お帰りなさい。 兄上。 139 00:10:07,811 --> 00:10:09,746 あれ お客さん? 140 00:10:09,746 --> 00:10:13,246 おう お峰。 見覚えあるだろ? 141 00:10:15,352 --> 00:10:18,255 ああ この間の。 142 00:10:18,255 --> 00:10:21,825 新門の世話で しばらく預かることになったから➡ 143 00:10:21,825 --> 00:10:25,028 お前は 当分 虎の道場に泊まってくれ。 144 00:10:25,028 --> 00:10:26,963 はあ…。 145 00:10:26,963 --> 00:10:29,366 浅草で 女2人助けたんだってな。 146 00:10:29,366 --> 00:10:31,301 どうして黙ってたんだよ。 147 00:10:31,301 --> 00:10:33,703 えっ それは その…。 148 00:10:33,703 --> 00:10:36,373 あの! 149 00:10:36,373 --> 00:10:39,173 ありがとうござんした。 150 00:10:41,545 --> 00:10:44,448 いや 別に 話すほどのことでも…。 151 00:10:44,448 --> 00:10:47,417 では 夕飯が済んだら道場に戻ります。 152 00:10:47,417 --> 00:10:50,220 もう 今夜からですか? 153 00:10:50,220 --> 00:10:53,123 島田先生に 禅の修行をするよう言われたので➡ 154 00:10:53,123 --> 00:10:56,393 よい折ですから 道場で座禅を組みますよ。 155 00:10:56,393 --> 00:10:59,229 そうかい。 なら そうしてくんな。 156 00:10:59,229 --> 00:11:03,567 ゆっくりするといい。 ここは 気兼ねのいらないうちだから。 157 00:11:03,567 --> 00:11:05,502 はい…。 158 00:11:05,502 --> 00:11:09,072 お峰さんて変なのよ 「はい」と「いいえ」しか言わないの。 159 00:11:09,072 --> 00:11:11,372 お順。 160 00:11:24,087 --> 00:11:35,365 ♬~ 161 00:11:35,365 --> 00:11:40,036 文吉か…。 162 00:11:40,036 --> 00:11:44,836 いや 修行だ 修行。 163 00:11:47,377 --> 00:11:51,077 ありがとう。 重いでしょう。 164 00:11:56,052 --> 00:12:00,857 <勝家の居候となったお峰は 驚くほど無口でしたが➡ 165 00:12:00,857 --> 00:12:04,227 骨惜しみをせずに よく働き…> 166 00:12:04,227 --> 00:12:08,098 おっ 気が利くなあ。 167 00:12:08,098 --> 00:12:10,734 ありがとよ。 168 00:12:10,734 --> 00:12:16,873 <お信も小吉も すっかり気に入った様子ですが…> 169 00:12:16,873 --> 00:12:23,647 まあ ピカピカ。 よかったですね おばば様。 170 00:12:23,647 --> 00:12:29,085 <大好きな兄が家を出た上に 自分の領分を侵されたようで➡ 171 00:12:29,085 --> 00:12:33,785 お順は 対抗心がメラメラと…> 172 00:12:38,195 --> 00:12:40,695 ≪(お順)お峰さん。 173 00:12:44,701 --> 00:12:47,704 一手 お手合わせを。 174 00:12:47,704 --> 00:12:50,204 さあ。 175 00:12:55,045 --> 00:13:00,850 網ですね では…。 176 00:13:00,850 --> 00:13:02,919 川。 177 00:13:02,919 --> 00:13:24,107 ♬~ 178 00:13:24,107 --> 00:13:29,107 いい勝負。 2人とも しっかり。 179 00:13:38,188 --> 00:13:40,688 (お順)その指 どうしたの? 180 00:13:42,359 --> 00:13:44,828 あっ…。 181 00:13:44,828 --> 00:13:49,032 負けました。 182 00:13:49,032 --> 00:13:52,369 うそ 今 わざと しくじったでしょ。 183 00:13:52,369 --> 00:13:54,704 勝負から逃げるなんて ひきょうです。 184 00:13:54,704 --> 00:13:57,504 お順 およしなさい。 185 00:14:06,216 --> 00:14:08,718 深川も寂しくなりましたね。 186 00:14:08,718 --> 00:14:12,589 前は あちこちから にぎやかな佃節が聞こえていたのに。 187 00:14:12,589 --> 00:14:17,394 (都甲)ほお 堅い男と思っていたが 岡場所にも通じてるとは。 188 00:14:17,394 --> 00:14:19,863 ハハ 麟太郎 見直したぞ。 189 00:14:19,863 --> 00:14:23,400 通ったことがあるだけですよ。 家が本所で 近くでしたから。 190 00:14:23,400 --> 00:14:27,737 いい若い者が 剣術や学問に うつつを抜かしててはいかん。 191 00:14:27,737 --> 00:14:31,341 紅灯のちまたを さまようのも これ 生き学問。 192 00:14:31,341 --> 00:14:35,512 はあ。 しかし 遊ぶには金が要りますからね。 193 00:14:35,512 --> 00:14:41,017 馬の療治の礼金が もう ここにたっぷり。 ハハハハハ! 194 00:14:41,017 --> 00:14:49,192 (都甲)♬「吹けよ川風 揚がれよ簾」か。 195 00:14:49,192 --> 00:14:54,064 そうか。 とうとう 立ち退きを命じられたか。 196 00:14:54,064 --> 00:14:57,367 (お福)御改革以来 客足も減って➡ 197 00:14:57,367 --> 00:15:01,705 こちらは 派手なことはせぬよう 慎んでいたんですけど…。 198 00:15:01,705 --> 00:15:05,575 料理屋も遊女屋も 一切合財 取り払えとのお達しなんです。 199 00:15:05,575 --> 00:15:08,211 それは ひどい。 フン。 200 00:15:08,211 --> 00:15:13,049 人間の暮らしを勘定に入れずに 天下の算段がつくものか。 201 00:15:13,049 --> 00:15:19,222 深川を潰すなど 愚策中の愚策よ。 はい。 202 00:15:19,222 --> 00:15:22,258 今のうち 楽しんでくださいまし。 203 00:15:22,258 --> 00:15:25,395 さあ 勝様も。 あっ いえ 私は下戸で…。 204 00:15:25,395 --> 00:15:28,865 あっ…。 ≪(お民)ごめんくださいまし。 205 00:15:28,865 --> 00:15:32,168 あっ お入り。 先生がお待ちかねだよ。 206 00:15:32,168 --> 00:15:37,507 おわ! これは ありがたい ありがたい。 弁天様のご入来だ。 207 00:15:37,507 --> 00:15:41,207 うん… うん うん。 208 00:15:45,248 --> 00:15:48,017 あっ そなたは…。 209 00:15:48,017 --> 00:15:50,920 まあ この間の…。 210 00:15:50,920 --> 00:16:04,834 ♬~ 211 00:16:04,834 --> 00:16:09,672 あの時の子が 勝様のお宅に? 212 00:16:09,672 --> 00:16:12,575 不思議なご縁が あるものですねえ。 213 00:16:12,575 --> 00:16:15,845 縁…? 214 00:16:15,845 --> 00:16:17,781 えっ? 215 00:16:17,781 --> 00:16:20,281 あっ いや…。 216 00:16:23,219 --> 00:16:27,719 実は 少し前 私も あの子を見かけたんです。 217 00:16:29,559 --> 00:16:33,163 (お民)娘義太夫に ご沙汰が下った日でした。 218 00:16:33,163 --> 00:16:38,034 人気がかえって仇になって 見せしめに使われてしまったな。 219 00:16:38,034 --> 00:16:40,503 はい…。 220 00:16:40,503 --> 00:16:46,309 去年の今頃までは 町の娘が 競って太夫に弟子入りして➡ 221 00:16:46,309 --> 00:16:49,212 ここいらの料理屋なんざ➡ 222 00:16:49,212 --> 00:16:54,350 素人の義太夫語りで やかましいほどだったわ。 223 00:16:54,350 --> 00:17:00,023 私 以前 鶴秀師匠のところに 稽古に通っていたんです。 224 00:17:00,023 --> 00:17:05,895 どっかで見た顔だと思ったら あの子 師匠の家で 下働きをしていたんですよ。 225 00:17:05,895 --> 00:17:13,036 (鶴秀)今ごろは。 今ごろは。 226 00:17:13,036 --> 00:17:19,542 半七っつぁん。 半七っつぁん。 227 00:17:19,542 --> 00:17:21,578 (お民)浅草で突っかかった男たち➡ 228 00:17:21,578 --> 00:17:27,217 娘義太夫を 色を売る稼業のように 言っていましたけど…。➡ 229 00:17:27,217 --> 00:17:29,853 師匠は 芸に厳しいお人で➡ 230 00:17:29,853 --> 00:17:34,691 ひいきと浮き名を流すようなことは ただの一度もありませんでした。 231 00:17:34,691 --> 00:17:39,496 芸は売っても 色は売らぬか。 232 00:17:39,496 --> 00:17:43,333 お前さんとおんなじだな。 はい。 233 00:17:43,333 --> 00:17:47,003 さっ 文吉 ひとつ にぎやかにやってくれ。 234 00:17:47,003 --> 00:17:49,003 はい。 235 00:17:50,874 --> 00:17:53,877 一番よい部屋を用意しているだろうな。 236 00:17:53,877 --> 00:17:58,077 それはもう 一番よい部屋でございます。 237 00:18:00,183 --> 00:18:02,519 (女中)お銚子は 都甲様にね。 238 00:18:02,519 --> 00:18:07,190 勝様は お酒はあがらないよ。 239 00:18:07,190 --> 00:18:09,225 勝…? 240 00:18:09,225 --> 00:18:11,528 貧乏勝が まさか この店に? 241 00:18:11,528 --> 00:18:14,430 おい 女将 勝という客が来ておるのか? 242 00:18:14,430 --> 00:18:17,834 まあ 粋な殿様らしくもない。 243 00:18:17,834 --> 00:18:21,204 遊び場で よその座敷のことは 聞かぬものですよ。 244 00:18:21,204 --> 00:18:23,239 フン…。 フフフッ。 245 00:18:23,239 --> 00:18:25,375 文吉は呼んであるな。 246 00:18:25,375 --> 00:18:28,044 あいにく よそに出ておりまして。 247 00:18:28,044 --> 00:18:29,979 何!? 248 00:18:29,979 --> 00:18:32,782 ♬~ 249 00:18:32,782 --> 00:18:42,992 ♬「吹けよ川風」 250 00:18:42,992 --> 00:18:48,164 ♬「揚がれよ簾」 251 00:18:48,164 --> 00:18:51,801 おや あの声は文吉…? 252 00:18:51,801 --> 00:18:55,171 一番よいお部屋は あの ず~っと奥でございます。 253 00:18:55,171 --> 00:18:57,106 はい はい どうぞ どうぞ。 いや…。 こちらでございます。 254 00:18:57,106 --> 00:18:59,306 おい… 女将。 255 00:19:05,682 --> 00:19:36,980 ♬~ 256 00:19:36,980 --> 00:19:42,652 ≪(雨音) ≪雨… いけない 洗濯物。 257 00:19:42,652 --> 00:19:46,155 お峰さん 降ってきました。 洗濯物を。 258 00:19:46,155 --> 00:20:02,672 ♬~ 259 00:20:02,672 --> 00:20:07,872 これ お峰さんの? 260 00:20:15,685 --> 00:20:18,685 何だろう? 261 00:20:21,824 --> 00:20:24,727 (お峰)お順様!? 262 00:20:24,727 --> 00:20:26,696 あっ それ…。 263 00:20:26,696 --> 00:20:29,032 ごめんなさい ここにあったから…。 264 00:20:29,032 --> 00:20:31,032 何すんだい! 265 00:20:32,702 --> 00:20:36,572 大事なものに 何てことするんさ! 266 00:20:36,572 --> 00:20:42,045 これは… これは 私の魂なんだよ! 267 00:20:42,045 --> 00:20:45,045 どうしたの? 268 00:20:49,385 --> 00:20:54,223 (泣き声) 269 00:20:54,223 --> 00:20:58,061 お峰さん…。 ≪いや~ まいったまいった。 270 00:20:58,061 --> 00:21:00,730 家の前まで来て降られやがっ…。 271 00:21:00,730 --> 00:21:02,665 何かあったかい? 272 00:21:02,665 --> 00:21:08,665 (泣き声) 273 00:21:13,443 --> 00:21:20,243 5年前の飢きんの時 おっかあと2人で 江戸に出てきたけど…。 274 00:21:24,754 --> 00:21:29,425 おっかあ 病では死んじまって…。➡ 275 00:21:29,425 --> 00:21:33,425 拾ってくれたんが お師匠さんだったんさ。 276 00:21:37,166 --> 00:21:40,369 仏さんは お前のおっかさんかい? 277 00:21:40,369 --> 00:21:48,845 あ~い~ ととさんの名は 十郎兵衛➡ 278 00:21:48,845 --> 00:21:54,383 かかさんな お弓と申します。 279 00:21:54,383 --> 00:21:58,554 (お峰)お師匠さんの家で 初めて義太夫を聞いたん。➡ 280 00:21:58,554 --> 00:22:03,726 切なぐって 美しぐって 涙が出た。➡ 281 00:22:03,726 --> 00:22:06,562 お師匠さんみてえになりたくって➡ 282 00:22:06,562 --> 00:22:10,733 何度もお願えして 弟子にしてもらったんだいの。 283 00:22:10,733 --> 00:22:18,241 ととさんの名は。 ととさんの名は。 284 00:22:18,241 --> 00:22:22,745 違う 腹から声を出すんだよ。 もういっぺん。 285 00:22:22,745 --> 00:22:28,417 (お峰)稽古は厳しかったけど ちっとんべえも つらくなかった。➡ 286 00:22:28,417 --> 00:22:32,688 字も教えてもらったん。 床本が読めるように…。 287 00:22:32,688 --> 00:22:36,359 お師匠さん いつも言ってた。➡ 288 00:22:36,359 --> 00:22:40,696 床本は 義太夫の魂だって。 289 00:22:40,696 --> 00:22:44,996 小指にあるの 三味線のバチダコね。 290 00:22:48,437 --> 00:22:51,407 お前の師匠は どうしたんだ? 291 00:22:51,407 --> 00:22:55,244 去年の暮れに 召し捕られたのか? 292 00:22:55,244 --> 00:23:01,851 役人が踏み込んできて… お師匠さん 私だけ逃がしてくれたがね。 293 00:23:01,851 --> 00:23:06,389 まだ舞台に出てねえからって。 294 00:23:06,389 --> 00:23:08,889 けど…。 295 00:23:10,560 --> 00:23:15,231 年明けたら 寄席に出るはずだったん。 296 00:23:15,231 --> 00:23:17,166 「鶴蝶」って名もらって➡ 297 00:23:17,166 --> 00:23:22,866 何べんも稽古した 「傾城阿波の鳴門」を 語るはずだったんだいの。 298 00:23:25,241 --> 00:23:30,112 そういうことなら 黙ってなくてよかったんだぜ。 299 00:23:30,112 --> 00:23:35,051 誰も お前を 役人に突き出したりしねえ。 300 00:23:35,051 --> 00:23:40,523 でも しゃべると国のなまりが出るん…。 301 00:23:40,523 --> 00:23:45,323 田舎に返されたら 困るだんべ。 302 00:23:48,831 --> 00:23:52,535 私 寄席に出てえ。 303 00:23:52,535 --> 00:23:56,839 寄席で 義太夫節を語りてえ。 304 00:23:56,839 --> 00:24:00,339 だから 江戸を離れたくねえんだ! 305 00:24:02,545 --> 00:24:05,045 そう。 306 00:24:11,854 --> 00:24:18,154 こんな一生懸命 稽古したんだものね。 307 00:24:22,498 --> 00:24:26,198 しゃべらねえで ごめんなんし。 308 00:24:31,207 --> 00:24:37,680 お順様 突き飛ばしたりして ごめんなんし。 309 00:24:37,680 --> 00:24:39,980 ごめんなんし。 310 00:24:44,353 --> 00:24:48,824 旦那様 なんとかできないものでしょうか。 311 00:24:48,824 --> 00:24:51,527 う~ん。 312 00:24:51,527 --> 00:24:55,831 何年も何年も 精魂込めてやってきたことが➡ 313 00:24:55,831 --> 00:24:59,201 少しも報われないなんて…。 314 00:24:59,201 --> 00:25:03,039 せめて一度だけでも 寄席に出してやれたら…。 315 00:25:03,039 --> 00:25:07,843 けどなあ 捕まっちまったら 元も子もねえし。 316 00:25:07,843 --> 00:25:11,043 何か いい手がありゃなあ…。 317 00:25:13,649 --> 00:25:17,219 そうだ! あの人なら…。 318 00:25:17,219 --> 00:25:20,056 娘義太夫を寄席に? 319 00:25:20,056 --> 00:25:21,991 いや~ そいつは難しい。 320 00:25:21,991 --> 00:25:24,860 席亭が所払いになったばかりですから➡ 321 00:25:24,860 --> 00:25:27,229 どの寄席も縮み上がっていまさあ。 322 00:25:27,229 --> 00:25:29,165 だから お前に頼んでんじゃねえか。 323 00:25:29,165 --> 00:25:32,068 浅草の奥山辺りで こっそりやれねえもんかねえ? 324 00:25:32,068 --> 00:25:34,804 市中取締掛が目を光らせていやすぜ。 325 00:25:34,804 --> 00:25:38,007 ちくられでもしたら えれえことになりやす。 326 00:25:38,007 --> 00:25:41,510 ≪お峰はいますか? 327 00:25:41,510 --> 00:25:44,347 これは坊ちゃん。 その節は…。 328 00:25:44,347 --> 00:25:47,183 新門の頭… どうしてうちに? 329 00:25:47,183 --> 00:25:49,218 お前こそ 何だよ。 330 00:25:49,218 --> 00:25:51,354 お峰の 前の奉公先のことで…。 331 00:25:51,354 --> 00:25:55,191 ああ 娘義太夫の 鶴秀か。 332 00:25:55,191 --> 00:25:58,094 知っていたんですか。 ついさっきな。 お前こそ どこで? 333 00:25:58,094 --> 00:26:03,532 ゆうべ 都甲先生のお供で 深川の梅園という料理屋に行ったんです。 334 00:26:03,532 --> 00:26:08,037 浅草で会った 文吉という芸者が お前のことを思い出してね。 335 00:26:08,037 --> 00:26:10,072 (新門)深川の梅園か…。 336 00:26:10,072 --> 00:26:15,544 坊ちゃん そりゃあ いいところに お行きなすった。 337 00:26:15,544 --> 00:26:19,715 あそこなら 義太夫の会を開くのにちょうどいい。 338 00:26:19,715 --> 00:26:24,587 女将は 肝の太え女ですから きっと 力を貸してくれやすぜ。 339 00:26:24,587 --> 00:26:28,724 深川の料理屋で名披露目か…。 そりゃあいいや。 340 00:26:28,724 --> 00:26:32,495 客は うちの若え者と こちらのお身内だけで。 341 00:26:32,495 --> 00:26:36,799 お峰さん どうかしら? 342 00:26:36,799 --> 00:26:40,002 でも… 駄目だんべ。 343 00:26:40,002 --> 00:26:44,173 もし お役人に見っかったら 迷惑かかっから。 344 00:26:44,173 --> 00:26:48,511 危ねえ橋だが… ひとつ渡ってみるか。 345 00:26:48,511 --> 00:26:52,815 な~に 見つかった時は また策を考えるさ。 346 00:26:52,815 --> 00:26:55,718 でも…。 お前のためじゃねえ。 347 00:26:55,718 --> 00:27:02,191 俺はな 江戸の町を こんな寂しい つまらねえところにしやがった連中に➡ 348 00:27:02,191 --> 00:27:05,694 ひと泡吹かせてやりてえのよ! 349 00:27:05,694 --> 00:27:10,833 そうですよ。 少しは やり返してやりましょう。 350 00:27:10,833 --> 00:27:14,036 フレイヘイド フレイヘイドです。 351 00:27:14,036 --> 00:27:16,539 何だ そりゃ。 352 00:27:16,539 --> 00:27:19,041 いえ 何でも…。 353 00:27:19,041 --> 00:27:22,912 やると決まったら早い方がいいや。 新門の 頼んだぜ! 354 00:27:22,912 --> 00:27:25,412 承知しやした! 355 00:27:34,156 --> 00:27:39,028 ようござんす。 店は貸し切りにしますんで お好きなようにお使いください。 356 00:27:39,028 --> 00:27:42,865 そうかい。 やっぱり俺の見込んだとおりだ。 357 00:27:42,865 --> 00:27:48,865 お上の無慈悲なやり方 私も腹に据えかねておりましたよ。 358 00:27:50,606 --> 00:27:53,542 娘義太夫…。 359 00:27:53,542 --> 00:27:58,380 これが見台 それから肩衣に袴…。 360 00:27:58,380 --> 00:28:01,817 ほかにも使えそうなものを 宮地芝居から借りてきやした。 361 00:28:01,817 --> 00:28:03,886 助かります。 362 00:28:03,886 --> 00:28:09,191 けど… どうして肩衣が2枚 入り用なんです? 363 00:28:09,191 --> 00:28:12,828 ウフフ。 それはね…。 364 00:28:12,828 --> 00:28:14,828 ウフフ? 365 00:28:26,375 --> 00:28:30,045 <名披露目の当日 招かれた客たちは➡ 366 00:28:30,045 --> 00:28:35,745 人目に立たないように三々五々 梅園に集まってきました> 367 00:28:45,995 --> 00:28:47,930 うん。 368 00:28:47,930 --> 00:28:51,430 わあ… お峰さん きれい。 369 00:28:53,502 --> 00:28:56,002 ≪(お民)ごめんくださいまし。 370 00:28:59,808 --> 00:29:01,877 太棹を持ってまいりました。 371 00:29:01,877 --> 00:29:05,347 文吉さんですね。 372 00:29:05,347 --> 00:29:09,347 麟太郎の母で 信と申します。 373 00:29:11,820 --> 00:29:14,690 ここでは 文吉と名乗っておりますが…。 374 00:29:14,690 --> 00:29:18,527 本所相生町の炭屋の娘で 民と申します。 375 00:29:18,527 --> 00:29:21,030 まあ 本所の? 376 00:29:21,030 --> 00:29:25,834 あっ 着付け これでどうでしょう? 377 00:29:25,834 --> 00:29:30,039 はい。 よく似合ってるよ。 378 00:29:30,039 --> 00:29:32,308 何年も修業したんだってねえ。 379 00:29:32,308 --> 00:29:37,808 今日の姿をお師匠さんが見たら どんなに喜ぶだろう。 380 00:29:40,482 --> 00:29:46,155 母上 支度は どうでしょう。 381 00:29:46,155 --> 00:29:48,355 あっ…。 382 00:29:51,794 --> 00:29:53,729 お手伝いにまいりました。 383 00:29:53,729 --> 00:29:57,600 ああ うん…。 384 00:29:57,600 --> 00:30:00,336 客は あらかたそろいましたので➡ 385 00:30:00,336 --> 00:30:03,036 支度ができたら いつでも始めてください。 386 00:30:06,508 --> 00:30:08,444 頭 遅くなりました。 387 00:30:08,444 --> 00:30:12,144 わあ お客さんがいっぱい! 388 00:30:18,220 --> 00:30:21,020 お客さん…。 389 00:30:28,530 --> 00:30:33,030 ご法度の娘義太夫が始まるよ。 390 00:30:56,558 --> 00:30:59,228 (拍子木の音) 391 00:30:59,228 --> 00:31:06,101 東西! このところ お聞きに達しまするは➡ 392 00:31:06,101 --> 00:31:10,406 「傾城阿波の鳴門 巡礼歌の段」。 393 00:31:10,406 --> 00:31:15,744 竹本鶴蝶 初お目見えにて ご披露申し上げます。 394 00:31:15,744 --> 00:31:21,550 東西 東西! 395 00:31:21,550 --> 00:31:23,485 (拍子木の音) 396 00:31:23,485 --> 00:31:42,905 ♬「ふるさとを」 397 00:31:42,905 --> 00:31:55,384 ♬「はるばる」 398 00:31:55,384 --> 00:32:03,859 ♬「ここに」 399 00:32:03,859 --> 00:32:09,665 <「傾城阿波の鳴門」は 近松半二が書いた 人気浄瑠璃です。➡ 400 00:32:09,665 --> 00:32:14,403 両親と生き別れた幼い娘が 巡礼となって旅をする途中➡ 401 00:32:14,403 --> 00:32:19,274 実の母と巡り会うのですが…> 402 00:32:19,274 --> 00:32:26,882 あ~い~ ととさんの名は 十郎兵衛➡ 403 00:32:26,882 --> 00:32:33,689 かかさんな お弓と申します。 404 00:32:33,689 --> 00:32:36,692 と 聞いてびっくり あ これ これ➡ 405 00:32:36,692 --> 00:32:40,562 あのととさんな 十郎兵衛 かかさんな お弓。➡ 406 00:32:40,562 --> 00:32:44,400 三つの年別れて ばばさんに育てられていたとは。 407 00:32:44,400 --> 00:32:46,535 (小声で)来やしたぜ。 408 00:32:46,535 --> 00:32:48,837 かぎつけやがったか…。 409 00:32:48,837 --> 00:32:51,206 用意はいいな。 410 00:32:51,206 --> 00:32:53,242 はい。 411 00:32:53,242 --> 00:33:02,918 ♬「見れば見るほど」 412 00:33:02,918 --> 00:33:11,593 ♬「幼顔」 413 00:33:11,593 --> 00:33:14,229 お待ちくださいまし。 何のお改めですか。 414 00:33:14,229 --> 00:33:18,400 (沼田)とぼけるな。 娘義太夫の興行を打っているな。 415 00:33:18,400 --> 00:33:20,700 めっそうもない。 どけ。 416 00:33:23,071 --> 00:33:26,771 勘違いなさいますと 旦那が恥をかきますよ! 417 00:33:28,410 --> 00:33:30,410 やはり ここだな。 418 00:33:32,381 --> 00:33:37,119 役儀により改める。 一同 神妙にしろ! 419 00:33:37,119 --> 00:33:39,521 ん? 420 00:33:39,521 --> 00:33:44,359 さてもさても 世の中に➡ 421 00:33:44,359 --> 00:33:48,831 親となり子と生まるるほど➡ 422 00:33:48,831 --> 00:33:54,036 深い縁は なけれども~。 423 00:33:54,036 --> 00:33:57,840 なぁ~ ハハハハハ…。 424 00:33:57,840 --> 00:33:59,775 (三味線の音) 425 00:33:59,775 --> 00:34:01,710 やめやめ やめやめ! 426 00:34:01,710 --> 00:34:03,712 娘義太夫は ご法度だ! 427 00:34:03,712 --> 00:34:06,048 お見回り ご苦労さんでございます。 428 00:34:06,048 --> 00:34:09,718 あの… ここら辺りで 娘義太夫の出し物がございますんで? 429 00:34:09,718 --> 00:34:12,554 それ! そこでやっているではないか! 430 00:34:12,554 --> 00:34:14,857 ん? 431 00:34:14,857 --> 00:34:16,792 (笑い声) 432 00:34:16,792 --> 00:34:18,727 何がおかしい! 433 00:34:18,727 --> 00:34:22,527 お手前は この演題が目に入らぬか? 434 00:34:24,399 --> 00:34:28,070 (沼田)昔咄? 忠孝…? 435 00:34:28,070 --> 00:34:34,810 さよう。 忠臣 孝子の道を 昔咄にて承っておるところだ。 436 00:34:34,810 --> 00:34:38,180 こよいは わしの弟子たちも 連れてまいった。 437 00:34:38,180 --> 00:34:41,517 (虎之助)主君に忠義 親に孝行。 438 00:34:41,517 --> 00:34:44,553 これぞ 人倫の大道と申すべきもの。 439 00:34:44,553 --> 00:34:49,191 先生 つくづく心にしみました。 うむ。 440 00:34:49,191 --> 00:34:53,028 心学 神道講釈 軍書講談 昔咄。 441 00:34:53,028 --> 00:34:57,366 この4つは 民を教え導くものとして 奉行所から お許しが出ています。 442 00:34:57,366 --> 00:35:02,204 市中取締掛なら ご存じのはずですが…。 443 00:35:02,204 --> 00:35:05,240 いや 肩衣などつけて怪しい女だ。 444 00:35:05,240 --> 00:35:07,376 ひとまず 自身番に来てもらおう。 445 00:35:07,376 --> 00:35:09,711 あ~ もし 旦那 そいつぁいけやせん。 446 00:35:09,711 --> 00:35:13,215 あちらは さるお旗本の奥様でございます。 447 00:35:13,215 --> 00:35:16,718 町方風情に 手の出せる方じゃない! 448 00:35:16,718 --> 00:35:18,720 し しかし…。 449 00:35:18,720 --> 00:35:21,223 無礼者 お控えなさい! 450 00:35:21,223 --> 00:35:23,158 は ははっ…。 451 00:35:23,158 --> 00:35:25,958 ご一同! お静かに! 452 00:35:32,668 --> 00:35:36,538 どうぞ お続けください。 453 00:35:36,538 --> 00:35:41,009 (三味線の音) 454 00:35:41,009 --> 00:35:51,520 ♬「父母の」 455 00:35:51,520 --> 00:36:07,002 ♬「恵みも深き粉川寺」 456 00:36:07,002 --> 00:36:09,302 (三味線の音) 457 00:36:11,907 --> 00:36:14,710 勘違いだったと? 458 00:36:14,710 --> 00:36:17,212 いや待てよ。 459 00:36:17,212 --> 00:36:22,718 どうも 小吉が一枚かんでいる気がする。 460 00:36:22,718 --> 00:36:25,621 よし 俺が…。 461 00:36:25,621 --> 00:36:31,793 昔咄の会は とうに お開きになりましたよ。 462 00:36:31,793 --> 00:36:35,163 女将 座敷を誰に貸したんだ? 463 00:36:35,163 --> 00:36:38,667 初めてのお客様で 確か…➡ 464 00:36:38,667 --> 00:36:43,171 阿波十郎兵衛様と 奥方のお弓様。 465 00:36:43,171 --> 00:36:45,674 阿波の…。 466 00:36:45,674 --> 00:36:49,177 バカッ! それは 義太夫節の役の名前だ! 467 00:36:49,177 --> 00:36:51,213 まあ~ よくご存じで。 468 00:36:51,213 --> 00:36:58,687 殿様も 娘義太夫目当てに 寄席に通い詰めていらしたクチですか? 469 00:36:58,687 --> 00:37:09,197 ♬「どうして ござろうぞ」 470 00:37:09,197 --> 00:37:11,533 ぶっ 無礼を申すな。 471 00:37:11,533 --> 00:37:13,568 こんな店 いつでも潰せるのだぞ。 472 00:37:13,568 --> 00:37:16,038 お手を煩わせなくても➡ 473 00:37:16,038 --> 00:37:21,710 深川の料理屋は もうお取り潰しと決まっておりますよ。 474 00:37:21,710 --> 00:37:24,212 どけっ。 475 00:37:24,212 --> 00:37:29,851 怪しい。 勝の押込め先を探らせるか…。 476 00:37:29,851 --> 00:37:34,156 <しかし 小吉の方にも 抜かりはありません。➡ 477 00:37:34,156 --> 00:37:39,027 夜が明けぬうちに お峰は 勝家を出る手はずになっていました。➡ 478 00:37:39,027 --> 00:37:45,333 辰五郎の世話で 浅草の油屋に 奉公することが決まっていたのです> 479 00:37:45,333 --> 00:37:48,370 おう お信 あれを忘れちゃいけねえよ。 480 00:37:48,370 --> 00:37:51,370 ≪そうでした。 481 00:38:04,686 --> 00:38:07,689 これを。 482 00:38:07,689 --> 00:38:09,825 これは 頂けねえ。 483 00:38:09,825 --> 00:38:11,760 お峰の米代って書いてるだろう。 484 00:38:11,760 --> 00:38:15,197 けど…。 こいつは お前のもんだ。 485 00:38:15,197 --> 00:38:18,233 けど…。 486 00:38:18,233 --> 00:38:20,233 いいから。 487 00:38:23,371 --> 00:38:26,274 今夜は いい喉を聞かせてもらったよ。 488 00:38:26,274 --> 00:38:32,481 気の荒い 鳶の若え者が 鼻すすりながら聞いてたぜ。 489 00:38:32,481 --> 00:38:34,681 はい…。 490 00:38:40,155 --> 00:38:43,191 これも 持ってお行きなさい。 えっ…。 491 00:38:43,191 --> 00:38:47,796 いずれまた 天下晴れて 寄席に出られる日が来るさ。 492 00:38:47,796 --> 00:38:51,666 それまでは 苦労があっても 辛抱しなきゃいけねえよ。 493 00:38:51,666 --> 00:38:56,004 ボウフラも 蚊になるまでの浮き沈み だ。 494 00:38:56,004 --> 00:38:57,939 まあ 蚊ですか? 495 00:38:57,939 --> 00:39:01,676 いいじゃねえか どっちも よくうなるんだから。 496 00:39:01,676 --> 00:39:05,976 ああ そうですね。 ウフフ…。 497 00:39:12,387 --> 00:39:16,087 三味線? 498 00:39:22,364 --> 00:39:24,664 デデデン。 499 00:39:36,011 --> 00:39:41,511 もっと聞きたかった お峰さんの義太夫。 500 00:39:51,526 --> 00:39:57,499 私 諦めねえど…。 501 00:39:57,499 --> 00:40:01,299 いつか必ず 江戸の寄席に出る。 502 00:40:04,806 --> 00:40:07,606 そん時は 皆さんで…。 503 00:40:10,512 --> 00:40:12,814 行きますよ。 504 00:40:12,814 --> 00:40:16,014 きっと 行きますとも。 505 00:40:21,523 --> 00:40:25,523 新門の使いが来ました。 そろそろ…。 506 00:40:32,701 --> 00:40:35,370 お世話になりました。 507 00:40:35,370 --> 00:40:56,224 ♬~ 508 00:40:56,224 --> 00:40:59,024 また 会えるさ。 509 00:41:02,397 --> 00:41:05,066 鶴蝶! 510 00:41:05,066 --> 00:41:08,066 日本一になれよ! 511 00:41:15,410 --> 00:41:18,079 <時は移り 明治の世…。➡ 512 00:41:18,079 --> 00:41:22,751 娘義太夫は 再び大ブームとなります。➡ 513 00:41:22,751 --> 00:41:25,754 東京の寄席を席巻した人気者たちの中に➡ 514 00:41:25,754 --> 00:41:27,889 年は取っているけれど➡ 515 00:41:27,889 --> 00:41:32,360 芸の力で 客をうならせる太夫がいました。➡ 516 00:41:32,360 --> 00:41:37,232 その名を 竹本鶴蝶といいます> 517 00:41:37,232 --> 00:41:50,712 ♬~ 518 00:41:50,712 --> 00:41:53,214 お~ やれやれ~! つまらねえ喧嘩だな。 519 00:41:53,214 --> 00:41:55,150 (2人)小判!? 520 00:41:55,150 --> 00:41:57,852 この国の先行きは危うい。 日本のため。 521 00:41:57,852 --> 00:41:59,788 面白い方ではありませんか。 522 00:41:59,788 --> 00:42:01,723 勝様。 きれいだ。 523 00:42:01,723 --> 00:42:04,225 贋金がどうしたって? あれだけ細工道具がそろってて➡ 524 00:42:04,225 --> 00:42:06,161 いい腕がありゃあ 贋小判だって案外たやすく…。 525 00:42:06,161 --> 00:42:08,096 旦那様…。 526 00:42:08,096 --> 00:42:10,732 悪いことしてねえんなら 裏から逃げんな! 527 00:42:10,732 --> 00:43:25,732 ♬~ 528 00:45:35,036 --> 00:45:37,839 空から見れば読み取れる➡ 529 00:45:37,839 --> 00:45:42,377 歴史の物語があります。 530 00:45:42,377 --> 00:45:47,248 「空旅中国」。 531 00:45:47,248 --> 00:45:52,854 英雄たちの足跡をたどってみましょう。