1 00:00:02,202 --> 00:00:05,405 <天保13年 初物の野菜を➡ 2 00:00:05,405 --> 00:00:10,777 高値で売買することを禁ずる お触れが出ました> 3 00:00:10,777 --> 00:00:13,413 おい。 4 00:00:13,413 --> 00:00:16,617 初物のなすを 高く売ったそうだよ。 5 00:00:16,617 --> 00:00:20,621 いくらご法度だって なすぐれえでなあ。 6 00:00:22,956 --> 00:00:25,292 また召し捕りか…。 7 00:00:25,292 --> 00:00:30,163 <江戸の町には 質素倹約 綱紀粛正を強行する➡ 8 00:00:30,163 --> 00:00:33,967 改革の嵐が 吹き荒れていたのです> 9 00:00:33,967 --> 00:00:45,979 ♬~ 10 00:00:45,979 --> 00:00:50,317 (お信)まあ よく出来ていること。 11 00:00:50,317 --> 00:00:52,653 でしょう? これで お徳さん➡ 12 00:00:52,653 --> 00:00:54,688 また店に出られますよ。 13 00:00:54,688 --> 00:00:58,525 どっから都合したんだい。 深川八幡の宮地芝居でさ。 14 00:00:58,525 --> 00:01:00,460 床山が顔見知りで。 15 00:01:00,460 --> 00:01:03,263 (お順)宮地芝居って 何ですか? 16 00:01:03,263 --> 00:01:06,166 神社の境内でやってる 掛け小屋の小芝居さ。 17 00:01:06,166 --> 00:01:10,037 あ そうそう 嬢様には これを。 18 00:01:10,037 --> 00:01:13,607 小道具の余りもんですが あやとりひもに どうです? 19 00:01:13,607 --> 00:01:16,109 ありがとう 銀次さん。 20 00:01:16,109 --> 00:01:18,612 (銀次)どういたしやして。➡ 21 00:01:18,612 --> 00:01:21,515 宮地芝居は もういけやせん。 22 00:01:21,515 --> 00:01:24,484 とうとう 小屋を取っ払えと お達しが出たそうで。 23 00:01:24,484 --> 00:01:28,288 取っ払うって 江戸中の小屋をかい? へい。 24 00:01:28,288 --> 00:01:32,159 役者も裏方も 廃業するか 旅回りに出るしかねえってんで➡ 25 00:01:32,159 --> 00:01:35,963 衣装や道具を始末してるんでさあ。 ふ~ん。 26 00:01:35,963 --> 00:01:41,635 天下の中村座と市村座も 日本橋の二丁町を追われて➡ 27 00:01:41,635 --> 00:01:44,438 浅草聖天町裏に所替えですからね。 28 00:01:44,438 --> 00:01:50,143 100年も前から江戸の真ん中にあるものを わざわざ遠くに移さなくても…。 29 00:01:50,143 --> 00:01:53,180 お取り潰しにならなかっただけ マシかもしれませんや。 30 00:01:53,180 --> 00:01:55,816 愚にもつかねえことやりやがるぜ。 31 00:01:55,816 --> 00:01:59,453 寄席や芝居小屋潰して 誰が得するっつうんだい。 32 00:01:59,453 --> 00:02:03,323 寄席で思い出した。 ちょいと奉行所に行ってきます。 33 00:02:03,323 --> 00:02:05,759 おっ 呼び出しでも食らったか。 34 00:02:05,759 --> 00:02:12,099 違いますよ。 ほら 去年の暮れ 娘義太夫が 大勢召し捕られたでしょう。 35 00:02:12,099 --> 00:02:14,935 長えこと 伝馬町の牢に 放り込まれていたのが➡ 36 00:02:14,935 --> 00:02:17,971 いよいよ 今日 お沙汰が下るって噂なんでい。 37 00:02:17,971 --> 00:02:22,809 それじゃあ 100日も牢に… ひどい。 38 00:02:22,809 --> 00:02:26,413 役人どもが張り切って 片っ端からしょっぴくから➡ 39 00:02:26,413 --> 00:02:29,282 奉行所の詮議が つっかえてるんだろうな。 40 00:02:29,282 --> 00:02:33,787 よし! じゃあ 俺も ちょっと見に行ってくっか。 41 00:02:33,787 --> 00:02:35,722 へい。 行ってきやす。 42 00:02:35,722 --> 00:02:39,426 行ってらっしゃい。 んっ! 43 00:02:41,428 --> 00:02:43,964 母上。 44 00:02:43,964 --> 00:02:47,634 娘義太夫は 悪いことなのですか? 45 00:02:47,634 --> 00:02:49,569 えっ…。 46 00:02:49,569 --> 00:02:56,643 ♬~ 47 00:02:56,643 --> 00:03:03,917 今ごろは 半七っつぁん。 48 00:03:03,917 --> 00:03:09,256 <天保の頃 娘義太夫が 大ブームを巻き起こしました。➡ 49 00:03:09,256 --> 00:03:12,592 現代のアイドルさながらの人気で➡ 50 00:03:12,592 --> 00:03:15,929 町人はもとより 武士までが寄席に詰めかけ➡ 51 00:03:15,929 --> 00:03:20,801 風紀を乱すと 問題になったのです> 52 00:03:20,801 --> 00:03:23,603 悪いことではありません。 53 00:03:23,603 --> 00:03:27,474 ただ 女が義太夫節を語るのは➡ 54 00:03:27,474 --> 00:03:30,477 禁じられてしまったのですよ。 55 00:03:30,477 --> 00:03:33,280 どうして? 56 00:03:33,280 --> 00:03:36,183 男ならよいのですか? 57 00:03:36,183 --> 00:03:40,053 それは…。 58 00:03:40,053 --> 00:03:43,790 女の髪結いも ご法度だし…。 59 00:03:43,790 --> 00:03:48,595 おかしな世の中。 60 00:03:50,564 --> 00:03:53,767 おお 来たぞ! 61 00:03:56,303 --> 00:04:00,240 <太夫たちは 判決の申し渡しを受けるために➡ 62 00:04:00,240 --> 00:04:05,979 伝馬町の牢から 奉行所に引き立てられました> 63 00:04:05,979 --> 00:04:09,282 (お民)鶴秀師匠…。 64 00:04:21,094 --> 00:04:24,131 この間の子…。 65 00:04:24,131 --> 00:04:27,634 ⚟おい! 66 00:04:39,779 --> 00:04:41,781 んっ! 67 00:04:46,119 --> 00:04:48,622 (小声で)出ちゃいけない。 68 00:04:55,128 --> 00:04:58,832 んっ! 69 00:05:00,367 --> 00:05:03,170 お待ちよ! 70 00:05:07,240 --> 00:05:09,910 (銀次)ひっでえことするなあ。 71 00:05:09,910 --> 00:05:11,945 弱え者 見せしめにしやがって。 72 00:05:11,945 --> 00:05:14,581 改革が聞いてあきれるぜ。 73 00:05:14,581 --> 00:05:16,883 行くぜ。 74 00:05:19,252 --> 00:05:21,755 ふんっ… 痛っ! 75 00:05:21,755 --> 00:05:24,558 フン ざまあみやがれ。 76 00:05:26,927 --> 00:05:33,700 <この日 36人の娘義太夫に 30日の手鎖が言い渡され➡ 77 00:05:33,700 --> 00:05:38,638 寄席の席亭には 江戸払いの処分が下されたのでした> 78 00:05:38,638 --> 00:05:42,275 (お徳)あっ どうぞ。 79 00:05:42,275 --> 00:05:46,613 よく似合っていること。 まるで地毛のようです。 80 00:05:46,613 --> 00:05:50,116 根を低く 結い直してみたんですよ。 81 00:05:50,116 --> 00:05:53,420 さすがは 髪結いのお徳さん。 82 00:05:53,420 --> 00:05:57,791 おかげさまで 私は大助かりですが…。 83 00:05:57,791 --> 00:06:04,231 小屋を潰される 宮地芝居の人たちは さぞ お困りでしょうね。 84 00:06:04,231 --> 00:06:08,735 ええ…。 娘義太夫も 厳しいお咎めを受けて➡ 85 00:06:08,735 --> 00:06:12,372 二度と 寄席には 出られないそうですし…。 86 00:06:12,372 --> 00:06:17,244 髪を結って回るのも 寄席で義太夫節を語るのも➡ 87 00:06:17,244 --> 00:06:19,913 皆 渡世でございますよ。 88 00:06:19,913 --> 00:06:21,948 身につけた芸を売らずに➡ 89 00:06:21,948 --> 00:06:27,454 何を生業に 生きていけというのでしょうねえ。 90 00:06:32,259 --> 00:06:34,594 お帰りなさい。 91 00:06:34,594 --> 00:06:36,630 ただいま戻りました。 おう 戻ったかい。 92 00:06:36,630 --> 00:06:38,765 辰 うちのが帰ったぜ。 93 00:06:38,765 --> 00:06:40,700 (新門)お留守中に お邪魔しておりやす。 94 00:06:40,700 --> 00:06:43,103 新門辰五郎だ。 95 00:06:43,103 --> 00:06:45,138 浅草一の大親分だ。 96 00:06:45,138 --> 00:06:47,274 何をおっしゃいます。 97 00:06:47,274 --> 00:06:49,209 そんな貫禄じゃございやせんよ。 98 00:06:49,209 --> 00:06:51,144 さあ どうぞ 座敷の方に。 99 00:06:51,144 --> 00:06:54,614 ああ めっそうもねえ ここで結構で…。 100 00:06:54,614 --> 00:06:59,419 おう お前もご挨拶しねえかい。 101 00:07:04,891 --> 00:07:08,762 この娘 うちで預かることにしたぜ。 えっ? 102 00:07:08,762 --> 00:07:11,064 行き倒れているところを➡ 103 00:07:11,064 --> 00:07:14,901 うちの若え者が見つけて 連れ帰ってきやしてね。 104 00:07:14,901 --> 00:07:19,239 名は お峰。 身寄りはねえようです。 105 00:07:19,239 --> 00:07:22,909 お峰さん 年はいくつ? 106 00:07:22,909 --> 00:07:27,080 16…。 107 00:07:27,080 --> 00:07:31,251 フッ あいすいやせん 口の重いタチのようで。 108 00:07:31,251 --> 00:07:34,754 こちら様で 手伝えにでも 使っていただけねえかと。 109 00:07:34,754 --> 00:07:38,591 二間しかねえ家で 手伝いも何も あったもんじゃねえや ハハッ。 110 00:07:38,591 --> 00:07:42,262 でも… 寝る部屋もないですし。 111 00:07:42,262 --> 00:07:44,764 麟のやつを しばらく 虎のところに預けりゃいいさ。 112 00:07:44,764 --> 00:07:47,400 えっ 兄上を…? 113 00:07:47,400 --> 00:07:53,773 実は お峰は こちらのお坊ちゃんに 助けていただいたことがあるんです。 114 00:07:53,773 --> 00:07:56,609 (麟太郎)手荒なまねは よしなさい。 115 00:07:56,609 --> 00:07:59,279 辰巳芸者の文吉というのと2人…。 116 00:07:59,279 --> 00:08:02,549 おかげさまで けがもなく済みました。 117 00:08:02,549 --> 00:08:06,219 へえ そりゃ初耳だ。 お前 知ってたかい? 118 00:08:06,219 --> 00:08:10,924 いいえ。 勝手ながら これも何かのご縁かと…。 119 00:08:12,726 --> 00:08:15,562 当座のものは そろえて参りやした。 120 00:08:15,562 --> 00:08:19,733 いずれ 米屋か酒屋にでも 奉公先を見つけますんで➡ 121 00:08:19,733 --> 00:08:23,536 少しの間 お頼み申しやす。 122 00:08:32,245 --> 00:08:35,915 いい人ですねえ 辰五郎さん。 123 00:08:35,915 --> 00:08:40,253 大親分というから もっと怖い人かと思いました。 124 00:08:40,253 --> 00:08:44,257 頭と立てられるだけあって 度胸はいいし 情にはあつい。 125 00:08:44,257 --> 00:08:47,927 いい人に拾われたな。 126 00:08:47,927 --> 00:08:52,799 当座のものはそろえたと 言ってましたけど…。 127 00:08:52,799 --> 00:08:55,101 あら? 128 00:09:04,711 --> 00:09:06,646 お金…。 129 00:09:06,646 --> 00:09:09,349 頂くわけにはいきませんね。 130 00:09:09,349 --> 00:09:12,719 ちょっと行って お返ししてきます。 よしな。 131 00:09:12,719 --> 00:09:15,221 頭に恥かかせる気かい。 けど…。 132 00:09:15,221 --> 00:09:20,093 辰のやつ そいつをよこす口実に 娘連れてきたのかもしれねえな。 133 00:09:20,093 --> 00:09:22,095 よけいな気ぃ回しやがる。 134 00:09:22,095 --> 00:09:25,565 それじゃあ やっぱりこれは…。 預かっときな。 135 00:09:25,565 --> 00:09:30,737 俺がもらう金じゃねえ。 お峰の飯代だ。 136 00:09:30,737 --> 00:09:32,672 はい。 137 00:09:32,672 --> 00:09:34,607 ⚟ただいま戻りました。 138 00:09:34,607 --> 00:09:37,377 お帰りなさい。 兄上。 139 00:09:37,377 --> 00:09:39,312 あれ お客さん? 140 00:09:39,312 --> 00:09:42,816 おう お峰。 見覚えあるだろ? 141 00:09:44,918 --> 00:09:47,821 ああ この間の。 142 00:09:47,821 --> 00:09:51,391 新門の世話で しばらく預かることになったから➡ 143 00:09:51,391 --> 00:09:54,594 お前は 当分 虎の道場に泊まってくれ。 144 00:09:54,594 --> 00:09:56,529 はあ…。 145 00:09:56,529 --> 00:09:58,932 浅草で 女2人助けたんだってな。 146 00:09:58,932 --> 00:10:00,867 どうして黙ってたんだよ。 147 00:10:00,867 --> 00:10:03,269 えっ それは その…。 148 00:10:03,269 --> 00:10:05,939 あの! 149 00:10:05,939 --> 00:10:08,741 ありがとうござんした。 150 00:10:11,111 --> 00:10:14,013 いや 別に 話すほどのことでも…。 151 00:10:14,013 --> 00:10:16,983 では 夕飯が済んだら道場に戻ります。 152 00:10:16,983 --> 00:10:19,786 もう 今夜からですか? 153 00:10:19,786 --> 00:10:22,689 島田先生に 禅の修行をするよう言われたので➡ 154 00:10:22,689 --> 00:10:25,959 よい折ですから 道場で座禅を組みますよ。 155 00:10:25,959 --> 00:10:28,795 そうかい。 なら そうしてくんな。 156 00:10:28,795 --> 00:10:33,133 ゆっくりするといい。 ここは 気兼ねのいらないうちだから。 157 00:10:33,133 --> 00:10:35,068 はい…。 158 00:10:35,068 --> 00:10:38,638 お峰さんて変なのよ 「はい」と「いいえ」しか言わないの。 159 00:10:38,638 --> 00:10:40,940 お順。 160 00:10:53,653 --> 00:11:04,931 ♬~ 161 00:11:04,931 --> 00:11:09,602 文吉か…。 162 00:11:09,602 --> 00:11:14,407 いや 修行だ 修行。 163 00:11:16,943 --> 00:11:20,647 ありがとう。 重いでしょう。 164 00:11:25,618 --> 00:11:30,423 <勝家の居候となったお峰は 驚くほど無口でしたが➡ 165 00:11:30,423 --> 00:11:33,793 骨惜しみをせずに よく働き…> 166 00:11:33,793 --> 00:11:37,664 おっ 気が利くなあ。 167 00:11:37,664 --> 00:11:40,300 ありがとよ。 168 00:11:40,300 --> 00:11:46,439 <お信も小吉も すっかり気に入った様子ですが…> 169 00:11:46,439 --> 00:11:53,212 まあ ピカピカ。 よかったですね おばば様。 170 00:11:53,212 --> 00:11:58,651 <大好きな兄が家を出た上に 自分の領分を侵されたようで➡ 171 00:11:58,651 --> 00:12:03,356 お順は 対抗心がメラメラと…> 172 00:12:07,760 --> 00:12:10,263 ⚟(お順)お峰さん。 173 00:12:14,267 --> 00:12:17,270 一手 お手合わせを。 174 00:12:17,270 --> 00:12:19,772 さあ。 175 00:12:24,611 --> 00:12:30,416 網ですね では…。 176 00:12:30,416 --> 00:12:32,485 川。 177 00:12:32,485 --> 00:12:53,673 ♬~ 178 00:12:53,673 --> 00:12:58,678 いい勝負。 2人とも しっかり。 179 00:13:07,754 --> 00:13:10,256 (お順)その指 どうしたの? 180 00:13:11,924 --> 00:13:14,394 あっ…。 181 00:13:14,394 --> 00:13:18,598 負けました。 182 00:13:18,598 --> 00:13:21,934 うそ 今 わざと しくじったでしょ。 183 00:13:21,934 --> 00:13:24,270 勝負から逃げるなんて ひきょうです。 184 00:13:24,270 --> 00:13:27,073 お順 およしなさい。 185 00:13:35,782 --> 00:13:38,284 深川も寂しくなりましたね。 186 00:13:38,284 --> 00:13:42,155 前は あちこちから にぎやかな佃節が聞こえていたのに。 187 00:13:42,155 --> 00:13:46,959 (都甲)ほお 堅い男と思っていたが 岡場所にも通じてるとは。 188 00:13:46,959 --> 00:13:49,429 ハハ 麟太郎 見直したぞ。 189 00:13:49,429 --> 00:13:52,965 通ったことがあるだけですよ。 家が本所で 近くでしたから。 190 00:13:52,965 --> 00:13:57,303 いい若い者が 剣術や学問に うつつを抜かしててはいかん。 191 00:13:57,303 --> 00:14:00,907 紅灯のちまたを さまようのも これ 生き学問。 192 00:14:00,907 --> 00:14:05,078 はあ。 しかし 遊ぶには金が要りますからね。 193 00:14:05,078 --> 00:14:10,583 馬の療治の礼金が もう ここにたっぷり。 ハハハハハ! 194 00:14:10,583 --> 00:14:18,758 (都甲)♬「吹けよ川風 揚がれよ簾」か。 195 00:14:18,758 --> 00:14:23,629 そうか。 とうとう 立ち退きを命じられたか。 196 00:14:23,629 --> 00:14:26,933 (お福)御改革以来 客足も減って➡ 197 00:14:26,933 --> 00:14:31,270 こちらは 派手なことはせぬよう 慎んでいたんですけど…。 198 00:14:31,270 --> 00:14:35,141 料理屋も遊女屋も 一切合財 取り払えとのお達しなんです。 199 00:14:35,141 --> 00:14:37,777 それは ひどい。 フン。 200 00:14:37,777 --> 00:14:42,615 人間の暮らしを勘定に入れずに 天下の算段がつくものか。 201 00:14:42,615 --> 00:14:48,788 深川を潰すなど 愚策中の愚策よ。 はい。 202 00:14:48,788 --> 00:14:51,824 今のうち 楽しんでくださいまし。 203 00:14:51,824 --> 00:14:54,961 さあ 勝様も。 あっ いえ 私は下戸で…。 204 00:14:54,961 --> 00:14:58,431 あっ…。 ⚟(お民)ごめんくださいまし。 205 00:14:58,431 --> 00:15:01,734 あっ お入り。 先生がお待ちかねだよ。 206 00:15:01,734 --> 00:15:07,073 おわ! これは ありがたい ありがたい。 弁天様のご入来だ。 207 00:15:07,073 --> 00:15:10,777 うん… うん うん。 208 00:15:14,814 --> 00:15:17,583 あっ そなたは…。 209 00:15:17,583 --> 00:15:20,486 まあ この間の…。 210 00:15:20,486 --> 00:15:34,400 ♬~ 211 00:15:34,400 --> 00:15:39,238 あの時の子が 勝様のお宅に? 212 00:15:39,238 --> 00:15:42,141 不思議なご縁が あるものですねえ。 213 00:15:42,141 --> 00:15:45,411 縁…? 214 00:15:45,411 --> 00:15:47,346 えっ? 215 00:15:47,346 --> 00:15:49,849 あっ いや…。 216 00:15:52,785 --> 00:15:57,290 実は 少し前 私も あの子を見かけたんです。 217 00:15:59,125 --> 00:16:02,728 (お民)娘義太夫に ご沙汰が下った日でした。 218 00:16:02,728 --> 00:16:07,600 人気がかえって仇になって 見せしめに使われてしまったな。 219 00:16:07,600 --> 00:16:10,069 はい…。 220 00:16:10,069 --> 00:16:15,875 去年の今頃までは 町の娘が 競って太夫に弟子入りして➡ 221 00:16:15,875 --> 00:16:18,778 ここいらの料理屋なんざ➡ 222 00:16:18,778 --> 00:16:23,916 素人の義太夫語りで やかましいほどだったわ。 223 00:16:23,916 --> 00:16:29,589 私 以前 鶴秀師匠のところに 稽古に通っていたんです。 224 00:16:29,589 --> 00:16:35,461 どっかで見た顔だと思ったら あの子 師匠の家で 下働きをしていたんですよ。 225 00:16:35,461 --> 00:16:42,602 (鶴秀)今ごろは。 今ごろは。 226 00:16:42,602 --> 00:16:49,108 半七っつぁん。 半七っつぁん。 227 00:16:49,108 --> 00:16:51,143 (お民)浅草で突っかかった男たち➡ 228 00:16:51,143 --> 00:16:56,782 娘義太夫を 色を売る稼業のように 言っていましたけど…。➡ 229 00:16:56,782 --> 00:16:59,418 師匠は 芸に厳しいお人で➡ 230 00:16:59,418 --> 00:17:04,257 ひいきと浮き名を流すようなことは ただの一度もありませんでした。 231 00:17:04,257 --> 00:17:09,061 芸は売っても 色は売らぬか。 232 00:17:09,061 --> 00:17:12,899 お前さんとおんなじだな。 はい。 233 00:17:12,899 --> 00:17:16,569 さっ 文吉 ひとつ にぎやかにやってくれ。 234 00:17:16,569 --> 00:17:18,571 はい。 235 00:17:20,439 --> 00:17:23,442 一番よい部屋を用意しているだろうな。 236 00:17:23,442 --> 00:17:27,647 それはもう 一番よい部屋でございます。 237 00:17:29,749 --> 00:17:32,084 (女中)お銚子は 都甲様にね。 238 00:17:32,084 --> 00:17:36,756 勝様は お酒はあがらないよ。 239 00:17:36,756 --> 00:17:38,791 勝…? 240 00:17:38,791 --> 00:17:41,093 貧乏勝が まさか この店に? 241 00:17:41,093 --> 00:17:43,996 おい 女将 勝という客が来ておるのか? 242 00:17:43,996 --> 00:17:47,400 まあ 粋な殿様らしくもない。 243 00:17:47,400 --> 00:17:50,770 遊び場で よその座敷のことは 聞かぬものですよ。 244 00:17:50,770 --> 00:17:52,805 フン…。 フフフッ。 245 00:17:52,805 --> 00:17:54,941 文吉は呼んであるな。 246 00:17:54,941 --> 00:17:57,610 あいにく よそに出ておりまして。 247 00:17:57,610 --> 00:17:59,545 何!? 248 00:17:59,545 --> 00:18:02,348 ♬~ 249 00:18:02,348 --> 00:18:12,558 ♬「吹けよ川風」 250 00:18:12,558 --> 00:18:17,730 ♬「揚がれよ簾」 251 00:18:17,730 --> 00:18:21,367 おや あの声は文吉…? 252 00:18:21,367 --> 00:18:24,737 一番よいお部屋は あの ず~っと奥でございます。 253 00:18:24,737 --> 00:18:26,672 はい はい どうぞ どうぞ。いや…。 こちらでございます。 254 00:18:26,672 --> 00:18:28,874 おい… 女将。 255 00:18:35,247 --> 00:19:06,545 ♬~ 256 00:19:06,545 --> 00:19:12,218 ⚟(雨音) ⚟雨… いけない 洗濯物。 257 00:19:12,218 --> 00:19:15,721 お峰さん 降ってきました。 洗濯物を。 258 00:19:15,721 --> 00:19:32,238 ♬~ 259 00:19:32,238 --> 00:19:37,443 これ お峰さんの? 260 00:19:45,251 --> 00:19:48,254 何だろう? 261 00:19:51,390 --> 00:19:54,293 (お峰)お順様!? 262 00:19:54,293 --> 00:19:56,262 あっ それ…。 263 00:19:56,262 --> 00:19:58,597 ごめんなさい ここにあったから…。 264 00:19:58,597 --> 00:20:00,599 何すんだい! 265 00:20:02,268 --> 00:20:06,138 大事なものに 何てことするんさ! 266 00:20:06,138 --> 00:20:11,610 これは… これは 私の魂なんだよ! 267 00:20:11,610 --> 00:20:14,613 どうしたの? 268 00:20:18,951 --> 00:20:23,789 (泣き声) 269 00:20:23,789 --> 00:20:27,626 お峰さん…。 ⚟いや~ まいったまいった。 270 00:20:27,626 --> 00:20:30,296 家の前まで来て降られやがっ…。 271 00:20:30,296 --> 00:20:32,231 何かあったかい? 272 00:20:32,231 --> 00:20:38,237 (泣き声) 273 00:20:43,008 --> 00:20:49,815 5年前の飢きんの時 おっかあと2人で 江戸に出てきたけど…。 274 00:20:54,320 --> 00:20:58,991 おっかあ 病では死んじまって…。➡ 275 00:20:58,991 --> 00:21:02,995 拾ってくれたんが お師匠さんだったんさ。 276 00:21:06,732 --> 00:21:09,935 仏さんは お前のおっかさんかい? 277 00:21:09,935 --> 00:21:18,410 あ~い~ ととさんの名は 十郎兵衛➡ 278 00:21:18,410 --> 00:21:23,949 かかさんな お弓と申します。 279 00:21:23,949 --> 00:21:28,120 (お峰)お師匠さんの家で 初めて義太夫を聞いたん。➡ 280 00:21:28,120 --> 00:21:33,292 切なぐって 美しぐって 涙が出た。➡ 281 00:21:33,292 --> 00:21:36,128 お師匠さんみてえになりたくって➡ 282 00:21:36,128 --> 00:21:40,299 何度もお願えして 弟子にしてもらったんだいの。 283 00:21:40,299 --> 00:21:47,806 ととさんの名は。 ととさんの名は。 284 00:21:47,806 --> 00:21:52,311 違う 腹から声を出すんだよ。 もういっぺん。 285 00:21:52,311 --> 00:21:57,983 (お峰)稽古は厳しかったけど ちっとんべえも つらくなかった。➡ 286 00:21:57,983 --> 00:22:02,254 字も教えてもらったん。 床本が読めるように…。 287 00:22:02,254 --> 00:22:05,925 お師匠さん いつも言ってた。➡ 288 00:22:05,925 --> 00:22:10,262 床本は 義太夫の魂だって。 289 00:22:10,262 --> 00:22:14,567 小指にあるの 三味線のバチダコね。 290 00:22:18,003 --> 00:22:20,973 お前の師匠は どうしたんだ? 291 00:22:20,973 --> 00:22:24,810 去年の暮れに 召し捕られたのか? 292 00:22:24,810 --> 00:22:31,417 役人が踏み込んできて… お師匠さん 私だけ逃がしてくれたがね。 293 00:22:31,417 --> 00:22:35,955 まだ舞台に出てねえからって。 294 00:22:35,955 --> 00:22:38,457 けど…。 295 00:22:40,125 --> 00:22:44,797 年明けたら 寄席に出るはずだったん。 296 00:22:44,797 --> 00:22:46,732 「鶴蝶」って名もらって➡ 297 00:22:46,732 --> 00:22:52,438 何べんも稽古した 「傾城阿波の鳴門」を 語るはずだったんだいの。 298 00:22:54,807 --> 00:22:59,678 そういうことなら 黙ってなくてよかったんだぜ。 299 00:22:59,678 --> 00:23:04,617 誰も お前を 役人に突き出したりしねえ。 300 00:23:04,617 --> 00:23:10,089 でも しゃべると国のなまりが出るん…。 301 00:23:10,089 --> 00:23:14,893 田舎に返されたら 困るだんべ。 302 00:23:18,397 --> 00:23:22,101 私 寄席に出てえ。 303 00:23:22,101 --> 00:23:26,405 寄席で 義太夫節を語りてえ。 304 00:23:26,405 --> 00:23:29,909 だから 江戸を離れたくねえんだ! 305 00:23:32,111 --> 00:23:34,613 そう。 306 00:23:41,420 --> 00:23:47,726 こんな一生懸命 稽古したんだものね。 307 00:23:52,064 --> 00:23:55,768 しゃべらねえで ごめんなんし。 308 00:24:00,773 --> 00:24:07,246 お順様 突き飛ばしたりして ごめんなんし。 309 00:24:07,246 --> 00:24:09,548 ごめんなんし。 310 00:24:13,919 --> 00:24:18,390 旦那様 なんとかできないものでしょうか。 311 00:24:18,390 --> 00:24:21,093 う~ん。 312 00:24:21,093 --> 00:24:25,397 何年も何年も 精魂込めてやってきたことが➡ 313 00:24:25,397 --> 00:24:28,767 少しも報われないなんて…。 314 00:24:28,767 --> 00:24:32,604 せめて一度だけでも 寄席に出してやれたら…。 315 00:24:32,604 --> 00:24:37,409 けどなあ 捕まっちまったら 元も子もねえし。 316 00:24:37,409 --> 00:24:40,612 何か いい手がありゃなあ…。 317 00:24:43,215 --> 00:24:46,785 そうだ! あの人なら…。 318 00:24:46,785 --> 00:24:49,621 娘義太夫を寄席に? 319 00:24:49,621 --> 00:24:51,557 いや~ そいつは難しい。 320 00:24:51,557 --> 00:24:54,426 席亭が所払いになったばかりですから➡ 321 00:24:54,426 --> 00:24:56,795 どの寄席も縮み上がっていまさあ。 322 00:24:56,795 --> 00:24:58,731 だから お前に頼んでんじゃねえか。 323 00:24:58,731 --> 00:25:01,633 浅草の奥山辺りで こっそりやれねえもんかねえ? 324 00:25:01,633 --> 00:25:04,370 市中取締掛が目を光らせていやすぜ。 325 00:25:04,370 --> 00:25:07,573 ちくられでもしたら えれえことになりやす。 326 00:25:07,573 --> 00:25:11,076 ⚟お峰はいますか? 327 00:25:11,076 --> 00:25:13,912 これは坊ちゃん。 その節は…。 328 00:25:13,912 --> 00:25:16,749 新門の頭… どうしてうちに? 329 00:25:16,749 --> 00:25:18,784 お前こそ 何だよ。 330 00:25:18,784 --> 00:25:20,919 お峰の 前の奉公先のことで…。 331 00:25:20,919 --> 00:25:24,757 ああ 娘義太夫の 鶴秀か。 332 00:25:24,757 --> 00:25:27,659 知っていたんですか。 ついさっきな。 お前こそ どこで? 333 00:25:27,659 --> 00:25:33,098 ゆうべ 都甲先生のお供で 深川の梅園という料理屋に行ったんです。 334 00:25:33,098 --> 00:25:37,603 浅草で会った 文吉という芸者が お前のことを思い出してね。 335 00:25:37,603 --> 00:25:39,638 (新門)深川の梅園か…。 336 00:25:39,638 --> 00:25:45,110 坊ちゃん そりゃあ いいところに お行きなすった。 337 00:25:45,110 --> 00:25:49,281 あそこなら 義太夫の会を開くのにちょうどいい。 338 00:25:49,281 --> 00:25:54,153 女将は 肝の太え女ですから きっと 力を貸してくれやすぜ。 339 00:25:54,153 --> 00:25:58,290 深川の料理屋で名披露目か…。 そりゃあいいや。 340 00:25:58,290 --> 00:26:02,061 客は うちの若え者と こちらのお身内だけで。 341 00:26:02,061 --> 00:26:06,365 お峰さん どうかしら? 342 00:26:06,365 --> 00:26:09,568 でも… 駄目だんべ。 343 00:26:09,568 --> 00:26:13,739 もし お役人に見っかったら 迷惑かかっから。 344 00:26:13,739 --> 00:26:18,076 危ねえ橋だが… ひとつ渡ってみるか。 345 00:26:18,076 --> 00:26:22,381 な~に 見つかった時は また策を考えるさ。 346 00:26:22,381 --> 00:26:25,284 でも…。 お前のためじゃねえ。 347 00:26:25,284 --> 00:26:31,757 俺はな 江戸の町を こんな寂しい つまらねえところにしやがった連中に➡ 348 00:26:31,757 --> 00:26:35,260 ひと泡吹かせてやりてえのよ! 349 00:26:35,260 --> 00:26:40,399 そうですよ。 少しは やり返してやりましょう。 350 00:26:40,399 --> 00:26:43,602 フレイヘイド フレイヘイドです。 351 00:26:43,602 --> 00:26:46,104 何だ そりゃ。 352 00:26:46,104 --> 00:26:48,607 いえ 何でも…。 353 00:26:48,607 --> 00:26:52,478 やると決まったら早い方がいいや。 新門の 頼んだぜ! 354 00:26:52,478 --> 00:26:54,980 承知しやした! 355 00:27:03,722 --> 00:27:08,594 ようござんす。 店は貸し切りにしますんで お好きなようにお使いください。 356 00:27:08,594 --> 00:27:12,431 そうかい。 やっぱり俺の見込んだとおりだ。 357 00:27:12,431 --> 00:27:18,437 お上の無慈悲なやり方 私も腹に据えかねておりましたよ。 358 00:27:20,172 --> 00:27:23,108 娘義太夫…。 359 00:27:23,108 --> 00:27:27,946 これが見台 それから肩衣に袴…。 360 00:27:27,946 --> 00:27:31,383 ほかにも使えそうなものを 宮地芝居から借りてきやした。 361 00:27:31,383 --> 00:27:33,452 助かります。 362 00:27:33,452 --> 00:27:38,757 けど… どうして肩衣が2枚 入り用なんです? 363 00:27:38,757 --> 00:27:42,394 ウフフ。 それはね…。 364 00:27:42,394 --> 00:27:44,396 ウフフ? 365 00:27:55,941 --> 00:27:59,611 <名披露目の当日 招かれた客たちは➡ 366 00:27:59,611 --> 00:28:05,317 人目に立たないように三々五々 梅園に集まってきました> 367 00:28:15,561 --> 00:28:17,496 うん。 368 00:28:17,496 --> 00:28:20,999 わあ… お峰さん きれい。 369 00:28:23,068 --> 00:28:25,571 ⚟(お民)ごめんくださいまし。 370 00:28:29,374 --> 00:28:31,443 太棹を持ってまいりました。 371 00:28:31,443 --> 00:28:34,913 文吉さんですね。 372 00:28:34,913 --> 00:28:38,917 麟太郎の母で 信と申します。 373 00:28:41,386 --> 00:28:44,256 ここでは 文吉と名乗っておりますが…。 374 00:28:44,256 --> 00:28:48,093 本所相生町の炭屋の娘で 民と申します。 375 00:28:48,093 --> 00:28:50,596 まあ 本所の? 376 00:28:50,596 --> 00:28:55,400 あっ 着付け これでどうでしょう? 377 00:28:55,400 --> 00:28:59,605 はい。 よく似合ってるよ。 378 00:28:59,605 --> 00:29:01,873 何年も修業したんだってねえ。 379 00:29:01,873 --> 00:29:07,379 今日の姿をお師匠さんが見たら どんなに喜ぶだろう。 380 00:29:10,048 --> 00:29:15,721 母上 支度は どうでしょう。 381 00:29:15,721 --> 00:29:17,923 あっ…。 382 00:29:21,360 --> 00:29:23,295 お手伝いにまいりました。 383 00:29:23,295 --> 00:29:27,165 ああ うん…。 384 00:29:27,165 --> 00:29:29,901 客は あらかたそろいましたので➡ 385 00:29:29,901 --> 00:29:32,604 支度ができたら いつでも始めてください。 386 00:29:36,074 --> 00:29:38,010 頭 遅くなりました。 387 00:29:38,010 --> 00:29:41,713 わあ お客さんがいっぱい! 388 00:29:47,786 --> 00:29:50,589 お客さん…。 389 00:29:58,096 --> 00:30:02,601 ご法度の娘義太夫が始まるよ。 390 00:30:26,124 --> 00:30:28,794 (拍子木の音) 391 00:30:28,794 --> 00:30:35,667 東西! このところ お聞きに達しまするは➡ 392 00:30:35,667 --> 00:30:39,971 「傾城阿波の鳴門 巡礼歌の段」。 393 00:30:39,971 --> 00:30:45,310 竹本鶴蝶 初お目見えにて ご披露申し上げます。 394 00:30:45,310 --> 00:30:51,116 東西 東西! 395 00:30:51,116 --> 00:30:53,051 (拍子木の音) 396 00:30:53,051 --> 00:31:12,471 ♬「ふるさとを」 397 00:31:12,471 --> 00:31:24,950 ♬「はるばる」 398 00:31:24,950 --> 00:31:33,425 ♬「ここに」 399 00:31:33,425 --> 00:31:39,231 <「傾城阿波の鳴門」は 近松半二が書いた 人気浄瑠璃です。➡ 400 00:31:39,231 --> 00:31:43,969 両親と生き別れた幼い娘が 巡礼となって旅をする途中➡ 401 00:31:43,969 --> 00:31:48,840 実の母と巡り会うのですが…> 402 00:31:48,840 --> 00:31:56,448 あ~い~ ととさんの名は 十郎兵衛➡ 403 00:31:56,448 --> 00:32:03,255 かかさんな お弓と申します。 404 00:32:03,255 --> 00:32:06,258 と 聞いてびっくり あ これ これ➡ 405 00:32:06,258 --> 00:32:10,128 あのととさんな 十郎兵衛 かかさんな お弓。➡ 406 00:32:10,128 --> 00:32:13,965 三つの年別れて ばばさんに育てられていたとは。 407 00:32:13,965 --> 00:32:16,101 (小声で)来やしたぜ。 408 00:32:16,101 --> 00:32:18,403 かぎつけやがったか…。 409 00:32:18,403 --> 00:32:20,772 用意はいいな。 410 00:32:20,772 --> 00:32:22,808 はい。 411 00:32:22,808 --> 00:32:32,484 ♬「見れば見るほど」 412 00:32:32,484 --> 00:32:41,159 ♬「幼顔」 413 00:32:41,159 --> 00:32:43,795 お待ちくださいまし。 何のお改めですか。 414 00:32:43,795 --> 00:32:47,966 (沼田)とぼけるな。 娘義太夫の興行を打っているな。 415 00:32:47,966 --> 00:32:50,268 めっそうもない。 どけ。 416 00:32:52,637 --> 00:32:56,341 勘違いなさいますと 旦那が恥をかきますよ! 417 00:32:57,976 --> 00:32:59,978 やはり ここだな。 418 00:33:01,947 --> 00:33:06,685 役儀により改める。 一同 神妙にしろ! 419 00:33:06,685 --> 00:33:09,087 ん? 420 00:33:09,087 --> 00:33:13,925 さてもさても 世の中に➡ 421 00:33:13,925 --> 00:33:18,396 親となり子と生まるるほど➡ 422 00:33:18,396 --> 00:33:23,602 深い縁は なけれども~。 423 00:33:23,602 --> 00:33:27,405 なぁ~ ハハハハハ…。 424 00:33:27,405 --> 00:33:29,341 (三味線の音) 425 00:33:29,341 --> 00:33:31,276 やめやめ やめやめ! 426 00:33:31,276 --> 00:33:33,278 娘義太夫は ご法度だ! 427 00:33:33,278 --> 00:33:35,614 お見回り ご苦労さんでございます。 428 00:33:35,614 --> 00:33:39,284 あの… ここら辺りで 娘義太夫の出し物がございますんで? 429 00:33:39,284 --> 00:33:42,120 それ! そこでやっているではないか! 430 00:33:42,120 --> 00:33:44,422 ん? 431 00:33:44,422 --> 00:33:46,358 (笑い声) 432 00:33:46,358 --> 00:33:48,293 何がおかしい! 433 00:33:48,293 --> 00:33:52,097 お手前は この演題が目に入らぬか? 434 00:33:53,965 --> 00:33:57,636 (沼田)昔咄? 忠孝…? 435 00:33:57,636 --> 00:34:04,376 さよう。 忠臣 孝子の道を 昔咄にて承っておるところだ。 436 00:34:04,376 --> 00:34:07,746 こよいは わしの弟子たちも 連れてまいった。 437 00:34:07,746 --> 00:34:11,082 (虎之助)主君に忠義 親に孝行。 438 00:34:11,082 --> 00:34:14,119 これぞ 人倫の大道と申すべきもの。 439 00:34:14,119 --> 00:34:18,757 先生 つくづく心にしみました。 うむ。 440 00:34:18,757 --> 00:34:22,594 心学 神道講釈 軍書講談 昔咄。 441 00:34:22,594 --> 00:34:26,932 この4つは 民を教え導くものとして 奉行所から お許しが出ています。 442 00:34:26,932 --> 00:34:31,770 市中取締掛なら ご存じのはずですが…。 443 00:34:31,770 --> 00:34:34,806 いや 肩衣などつけて怪しい女だ。 444 00:34:34,806 --> 00:34:36,942 ひとまず 自身番に来てもらおう。 445 00:34:36,942 --> 00:34:39,277 あ~ もし 旦那 そいつぁいけやせん。 446 00:34:39,277 --> 00:34:42,781 あちらは さるお旗本の奥様でございます。 447 00:34:42,781 --> 00:34:46,284 町方風情に 手の出せる方じゃない! 448 00:34:46,284 --> 00:34:48,286 し しかし…。 449 00:34:48,286 --> 00:34:50,789 無礼者 お控えなさい! 450 00:34:50,789 --> 00:34:52,724 は ははっ…。 451 00:34:52,724 --> 00:34:55,527 ご一同! お静かに! 452 00:35:02,233 --> 00:35:06,104 どうぞ お続けください。 453 00:35:06,104 --> 00:35:10,575 (三味線の音) 454 00:35:10,575 --> 00:35:21,086 ♬「父母の」 455 00:35:21,086 --> 00:35:36,568 ♬「恵みも深き粉川寺」 456 00:35:36,568 --> 00:35:38,870 (三味線の音) 457 00:35:41,473 --> 00:35:44,275 勘違いだったと? 458 00:35:44,275 --> 00:35:46,778 いや待てよ。 459 00:35:46,778 --> 00:35:52,283 どうも 小吉が一枚かんでいる気がする。 460 00:35:52,283 --> 00:35:55,186 よし 俺が…。 461 00:35:55,186 --> 00:36:01,359 昔咄の会は とうに お開きになりましたよ。 462 00:36:01,359 --> 00:36:04,729 女将 座敷を誰に貸したんだ? 463 00:36:04,729 --> 00:36:08,233 初めてのお客様で 確か…➡ 464 00:36:08,233 --> 00:36:12,737 阿波十郎兵衛様と 奥方のお弓様。 465 00:36:12,737 --> 00:36:15,240 阿波の…。 466 00:36:15,240 --> 00:36:18,743 バカッ! それは 義太夫節の役の名前だ! 467 00:36:18,743 --> 00:36:20,779 まあ~ よくご存じで。 468 00:36:20,779 --> 00:36:28,253 殿様も 娘義太夫目当てに 寄席に通い詰めていらしたクチですか? 469 00:36:28,253 --> 00:36:38,763 ♬「どうして ござろうぞ」 470 00:36:38,763 --> 00:36:41,099 ぶっ 無礼を申すな。 471 00:36:41,099 --> 00:36:43,134 こんな店 いつでも潰せるのだぞ。 472 00:36:43,134 --> 00:36:45,603 お手を煩わせなくても➡ 473 00:36:45,603 --> 00:36:51,276 深川の料理屋は もうお取り潰しと決まっておりますよ。 474 00:36:51,276 --> 00:36:53,778 どけっ。 475 00:36:53,778 --> 00:36:59,417 怪しい。 勝の押込め先を探らせるか…。 476 00:36:59,417 --> 00:37:03,722 <しかし 小吉の方にも 抜かりはありません。➡ 477 00:37:03,722 --> 00:37:08,593 夜が明けぬうちに お峰は 勝家を出る手はずになっていました。➡ 478 00:37:08,593 --> 00:37:14,899 辰五郎の世話で 浅草の油屋に 奉公することが決まっていたのです> 479 00:37:14,899 --> 00:37:17,936 おう お信 あれを忘れちゃいけねえよ。 480 00:37:17,936 --> 00:37:20,939 ⚟そうでした。 481 00:37:34,252 --> 00:37:37,255 これを。 482 00:37:37,255 --> 00:37:39,390 これは 頂けねえ。 483 00:37:39,390 --> 00:37:41,326 お峰の米代って書いてるだろう。 484 00:37:41,326 --> 00:37:44,762 けど…。 こいつは お前のもんだ。 485 00:37:44,762 --> 00:37:47,799 けど…。 486 00:37:47,799 --> 00:37:49,801 いいから。 487 00:37:52,937 --> 00:37:55,840 今夜は いい喉を聞かせてもらったよ。 488 00:37:55,840 --> 00:38:02,046 気の荒い 鳶の若え者が 鼻すすりながら聞いてたぜ。 489 00:38:02,046 --> 00:38:04,249 はい…。 490 00:38:09,721 --> 00:38:12,757 これも 持ってお行きなさい。 えっ…。 491 00:38:12,757 --> 00:38:17,362 いずれまた 天下晴れて 寄席に出られる日が来るさ。 492 00:38:17,362 --> 00:38:21,232 それまでは 苦労があっても 辛抱しなきゃいけねえよ。 493 00:38:21,232 --> 00:38:25,570 ボウフラも 蚊になるまでの浮き沈み だ。 494 00:38:25,570 --> 00:38:27,505 まあ 蚊ですか? 495 00:38:27,505 --> 00:38:31,242 いいじゃねえか どっちも よくうなるんだから。 496 00:38:31,242 --> 00:38:35,547 ああ そうですね。 ウフフ…。 497 00:38:41,953 --> 00:38:45,657 三味線? 498 00:38:51,930 --> 00:38:54,232 デデデン。 499 00:39:05,577 --> 00:39:11,082 もっと聞きたかった お峰さんの義太夫。 500 00:39:21,092 --> 00:39:27,065 私 諦めねえど…。 501 00:39:27,065 --> 00:39:30,869 いつか必ず 江戸の寄席に出る。 502 00:39:34,372 --> 00:39:37,175 そん時は 皆さんで…。 503 00:39:40,078 --> 00:39:42,380 行きますよ。 504 00:39:42,380 --> 00:39:45,583 きっと 行きますとも。 505 00:39:51,089 --> 00:39:55,093 新門の使いが来ました。 そろそろ…。 506 00:40:02,267 --> 00:40:04,936 お世話になりました。 507 00:40:04,936 --> 00:40:25,790 ♬~ 508 00:40:25,790 --> 00:40:28,593 また 会えるさ。 509 00:40:31,963 --> 00:40:34,632 鶴蝶! 510 00:40:34,632 --> 00:40:37,635 日本一になれよ! 511 00:40:44,976 --> 00:40:47,645 <時は移り 明治の世…。➡ 512 00:40:47,645 --> 00:40:52,317 娘義太夫は 再び大ブームとなります。➡ 513 00:40:52,317 --> 00:40:55,320 東京の寄席を席巻した人気者たちの中に➡ 514 00:40:55,320 --> 00:40:57,455 年は取っているけれど➡ 515 00:40:57,455 --> 00:41:01,926 芸の力で 客をうならせる太夫がいました。➡ 516 00:41:01,926 --> 00:41:06,798 その名を 竹本鶴蝶といいます> 517 00:41:06,798 --> 00:41:20,278 ♬~ 518 00:41:20,278 --> 00:41:22,780 お~ やれやれ~! つまらねえ喧嘩だな。 519 00:41:22,780 --> 00:41:24,716 (2人)小判!? 520 00:41:24,716 --> 00:41:27,418 この国の先行きは危うい。 日本のため。 521 00:41:27,418 --> 00:41:29,354 面白い方ではありませんか。 522 00:41:29,354 --> 00:41:31,289 勝様。 きれいだ。 523 00:41:31,289 --> 00:41:33,791 贋金がどうしたって? あれだけ細工道具がそろってて➡ 524 00:41:33,791 --> 00:41:35,727 いい腕がありゃあ 贋小判だって案外たやすく…。 525 00:41:35,727 --> 00:41:37,662 旦那様…。 526 00:41:37,662 --> 00:41:40,298 悪いことしてねえんなら 裏から逃げんな! 527 00:41:40,298 --> 00:42:55,306 ♬~