1 00:00:33,137 --> 00:00:35,539 嫌だ… 嫌だ~! 2 00:00:35,539 --> 00:00:38,876 どうした 男だろ! (おびえる声) 3 00:00:38,876 --> 00:00:41,545 ほらほら! ほら いくぞ! 嫌だ 来ないで! 4 00:00:41,545 --> 00:00:43,881 あれを 俺に 一体 どうしろってんだよ。 5 00:00:43,881 --> 00:00:48,218 (折笠)剣術の修行 心身を鍛えてやって頂きたい。 6 00:00:48,218 --> 00:00:51,121 そりゃ 道場主のやるこったろう。 7 00:00:51,121 --> 00:00:55,893 既に 預かって半月 いっかな 成果があらわれんのだ。 8 00:00:55,893 --> 00:00:59,563 このままでは 約束の礼金が ふいに…。 9 00:00:59,563 --> 00:01:02,232 何だい やっぱり金絡みか。 10 00:01:02,232 --> 00:01:05,135 おら どうした? 11 00:01:05,135 --> 00:01:07,571 (泣き声) 12 00:01:07,571 --> 00:01:10,908 とうとう 泣きだしちまったよ。 13 00:01:10,908 --> 00:01:13,811 孝太郎といって 年は16。 14 00:01:13,811 --> 00:01:18,782 炭問屋 紀州屋の 跡取り息子でござる。 15 00:01:18,782 --> 00:01:22,853 母親を早くに亡くし 周りが甘やかすから➡ 16 00:01:22,853 --> 00:01:25,756 すっかり 女々しくなってしまったのだとか。 17 00:01:25,756 --> 00:01:28,459 炭俵が持ち上がらないといっては 泣き➡ 18 00:01:28,459 --> 00:01:32,396 手が汚れるのが嫌だといっては 泣きで 往生しておるそうだ。 19 00:01:32,396 --> 00:01:38,135 ふ~ん それで とりあえず 道場に放り込んだってのか。 20 00:01:38,135 --> 00:01:40,435 (孝太郎)かわいい。 あ? 21 00:01:42,072 --> 00:01:44,875 あの… 赤ちゃん だっこしてもいいですか? 22 00:01:44,875 --> 00:01:47,875 あ… ああ。 ほら。 23 00:01:49,746 --> 00:01:52,616 あの お名前 何て言うんですか? 24 00:01:52,616 --> 00:01:54,885 鶴之助だ。 25 00:01:54,885 --> 00:01:57,585 あ~ 笑った 笑った。 26 00:01:59,223 --> 00:02:03,093 とにかく 俺は鶴坊の世話と そば屋で手いっぱい。 27 00:02:03,093 --> 00:02:09,233 困ってる者を見捨てぬのが 松村信兵衛殿の真骨頂。➡ 28 00:02:09,233 --> 00:02:12,903 頼む。 少~しなりとも 男らしくして帰さん事には➡ 29 00:02:12,903 --> 00:02:15,239 拙者の面目が。 30 00:02:15,239 --> 00:02:17,574 おだてには乗らん! 31 00:02:17,574 --> 00:02:20,911 (浅沼)松村信兵衛。 32 00:02:20,911 --> 00:02:24,211 (およう)松村信兵衛 覚悟おし! 33 00:02:29,253 --> 00:02:32,856 ちょっと待て。 一体 何の話だ? 34 00:02:32,856 --> 00:02:39,196 左内様の恨み 忘れたとは言わせないよ! 35 00:02:39,196 --> 00:02:45,536 松村信兵衛ってのは お前の思い人の仇か。 36 00:02:45,536 --> 00:02:51,208 フンッ そんな大事な相手を 取り違えるとは➡ 37 00:02:51,208 --> 00:02:54,545 そそっかしい女だ。 38 00:02:54,545 --> 00:02:58,215 俺は 浅沼右京之介。 嘘だ。 39 00:02:58,215 --> 00:03:02,553 その胸にある 花びらのような あざ➡ 40 00:03:02,553 --> 00:03:05,253 それが何よりの証拠だよ。 41 00:03:09,893 --> 00:03:19,903 こいつはな ガキの頃 親父に殺されかかった名残でね。 42 00:03:19,903 --> 00:03:23,203 いわば 俺は死に損ない。 43 00:03:24,775 --> 00:03:29,075 身に覚えがあれば いくらでも斬られてやるんだが。 44 00:03:34,184 --> 00:03:36,520 (あやす声) 45 00:03:36,520 --> 00:03:38,855 孝太郎や。 はい。 お前は これから➡ 46 00:03:38,855 --> 00:03:42,155 こちらの先生のお世話に なるんだよ。 あ…。 47 00:03:43,727 --> 00:03:52,402 ♬~ 48 00:03:52,402 --> 00:03:55,872 <俺は 松村信兵衛。➡ 49 00:03:55,872 --> 00:04:00,210 木挽町の裏長屋に住む 貧乏浪人だ。➡ 50 00:04:00,210 --> 00:04:04,548 思いがけねえ成り行きで 赤子を育てる事になって➡ 51 00:04:04,548 --> 00:04:08,218 目下 子育てに奮闘中。➡ 52 00:04:08,218 --> 00:04:12,518 おっ どうした? 鶴坊。 ご機嫌だね> 53 00:04:18,228 --> 00:04:22,099 (おぶん)先生 おだんご頂いたから お裾分… け。 54 00:04:22,099 --> 00:04:24,101 今 出かけてます。 55 00:04:24,101 --> 00:04:26,570 え… 誰!? 56 00:04:26,570 --> 00:04:28,505 そこで 何やってるの? 57 00:04:28,505 --> 00:04:30,907 おむつを縫ってるんです。 みんな古くなって➡ 58 00:04:30,907 --> 00:04:32,843 数も足りないようだったから。 59 00:04:32,843 --> 00:04:36,713 ねえ それ 私の浴衣。 おむつにする前に➡ 60 00:04:36,713 --> 00:04:39,716 鶴坊のおくるみに 縫い直そうと思ってたのに! 61 00:04:39,716 --> 00:04:41,852 し~っ! 急に大きな声出したら➡ 62 00:04:41,852 --> 00:04:44,552 鶴坊が びっくりするじゃありませんか。 63 00:04:47,724 --> 00:04:51,194 ねえ あんた 誰なのよ? 64 00:04:51,194 --> 00:04:54,865 先生と鶴坊のお世話は 私がする事になってるの。 65 00:04:54,865 --> 00:04:57,367 そんなの聞いてません。 私は この子のおっかさんも➡ 66 00:04:57,367 --> 00:05:00,404 同じなのよ。 私も そのつもりです。 67 00:05:00,404 --> 00:05:04,704 おいおい 何の騒ぎだ? 先生! 先生。 68 00:05:06,543 --> 00:05:10,881 何で 炭問屋の若旦那に 剣術なんて。 69 00:05:10,881 --> 00:05:14,751 商売に要るのは そろばんでしょ。 70 00:05:14,751 --> 00:05:18,555 おとっつぁんにしてみりゃ 頼りなくてしょうがねえんだろう。 71 00:05:18,555 --> 00:05:23,226 なよなよしてるし すぐ泣くし。 72 00:05:23,226 --> 00:05:30,000 ふ~ん。 あんた 剣術好き? 強くなりたいと思ってる? 73 00:05:30,000 --> 00:05:33,837 私は おとっつぁんに言われて しかたなく。 74 00:05:33,837 --> 00:05:36,740 そんなんじゃ 先生に くっついたって意味ないわ。 75 00:05:36,740 --> 00:05:39,176 ここで帰ったら 大目玉を食らいます。 76 00:05:39,176 --> 00:05:41,511 ご迷惑にならないように しますから➡ 77 00:05:41,511 --> 00:05:44,414 しばらく ここへ置いて下さい。 78 00:05:44,414 --> 00:05:47,851 しばらくったって おめえ…。 79 00:05:47,851 --> 00:05:52,522 あっ 先生から おとっつぁんに 話してあげたら どうですか? 80 00:05:52,522 --> 00:05:56,393 きちんと筋道立てて。 筋道? 81 00:05:56,393 --> 00:06:00,397 剣術なんか習わしてる暇が あったら 手塩にかけて➡ 82 00:06:00,397 --> 00:06:04,134 いっちょ前の商売人に 育てなさいって事ですよ。 83 00:06:04,134 --> 00:06:07,434 そりゃ ごもっともな話だが…。 84 00:06:12,209 --> 00:06:16,079 (孝兵衛)ご高名は 折笠道場の ご師範から伺っております。 85 00:06:16,079 --> 00:06:19,082 立派な先生に 伜をご指南頂けるとは➡ 86 00:06:19,082 --> 00:06:22,552 ありがたい事でございます。 いや… その 何だ…。 87 00:06:22,552 --> 00:06:27,424 どうか 先生のお力で 伜を男にしてやって下さいまし。 88 00:06:27,424 --> 00:06:32,362 その事なんだがな 何だって そう 剣術に こだわるんだ? 89 00:06:32,362 --> 00:06:35,132 店を継がせるつもりなら 必ずしも…。 90 00:06:35,132 --> 00:06:39,836 女子のような泣き虫が 人の上に立てるとお思いですか? 91 00:06:39,836 --> 00:06:44,708 いや 女っぽいたちの男なんてのは 世間に いくらだっている。 92 00:06:44,708 --> 00:06:47,511 そのうち 時がたちゃ おのずと…。 93 00:06:47,511 --> 00:06:50,211 のんきに構えちゃおれんのです。 94 00:06:53,183 --> 00:06:58,021 お恥ずかしい話ではございますが せんだって 部屋をのぞいたら➡ 95 00:06:58,021 --> 00:07:00,056 あろう事か…。 96 00:07:00,056 --> 00:07:07,531 ♬~ 97 00:07:07,531 --> 00:07:10,367 (孝兵衛)死んだ女房の形見を 引っ張り出しては➡ 98 00:07:10,367 --> 00:07:12,869 さも うれしそうに。➡ 99 00:07:12,869 --> 00:07:16,206 そのうち 紅おしろいでも はたき始めた日にゃ➡ 100 00:07:16,206 --> 00:07:18,875 取り返しのつかない事に。 101 00:07:18,875 --> 00:07:21,545 う~ん…。 102 00:07:21,545 --> 00:07:34,825 ♬~ 103 00:07:34,825 --> 00:07:37,494 (悲鳴) (榎戸)あっちだ!➡ 104 00:07:37,494 --> 00:07:40,163 どいた どいた! (源吉)どいた どいた! 105 00:07:40,163 --> 00:07:42,098 どけ どけ どけ! コノヤロー どけ! 106 00:07:42,098 --> 00:07:44,501 おい 切られたのかい? 107 00:07:44,501 --> 00:07:47,537 やられた! 例の野郎に違えありやせんぜ! 108 00:07:47,537 --> 00:07:50,737 おい 切った男の顔を 見たか? 109 00:07:56,112 --> 00:07:58,515 うわ~っ 冷てえ! 110 00:07:58,515 --> 00:08:01,551 申し訳ございません。 店の者が そそうを致しました。 111 00:08:01,551 --> 00:08:03,854 ごめんなさい! 人通りの多い時に➡ 112 00:08:03,854 --> 00:08:06,189 水をまいてはいけないと 言ったでしょう。 113 00:08:06,189 --> 00:08:08,124 どうか ご容赦下さい。 な~に➡ 114 00:08:08,124 --> 00:08:10,527 俺が ぼんやり歩いてたから いけねえんだよ。 115 00:08:10,527 --> 00:08:12,827 気にする事はねえよ。 うん? 116 00:08:16,399 --> 00:08:18,399 (ため息) 117 00:08:20,871 --> 00:08:25,041 あ~あ 孝太郎だって ほっときゃ いつかは➡ 118 00:08:25,041 --> 00:08:27,711 ああいう立派な若旦那に…。 119 00:08:27,711 --> 00:08:32,482 さすがに無理かな。 ハハハハハハ! 120 00:08:32,482 --> 00:08:34,818 (源吉)松村の旦那! 121 00:08:34,818 --> 00:08:37,320 どうした? 息せき切って。 出たんですよ。 122 00:08:37,320 --> 00:08:40,156 切り裂き野郎が また。 切り裂き野郎? 123 00:08:40,156 --> 00:08:43,827 女ばかり狙いやがって 剃刀で こっそり切りつけては➡ 124 00:08:43,827 --> 00:08:46,329 喜んでやがる 不届き者でさ。 125 00:08:46,329 --> 00:08:50,500 怪しい奴が こっちへ逃げたって。 松村さん 見かけませんでしたか? 126 00:08:50,500 --> 00:08:52,500 いや。 127 00:08:55,171 --> 00:08:57,674 そんな奴が うろついてるんじゃ➡ 128 00:08:57,674 --> 00:09:00,510 女 子どもは おちおち 人混みを歩かせられんな。 129 00:09:00,510 --> 00:09:03,413 最初は ちょっと 袂を切りつける程度だったんです。 130 00:09:03,413 --> 00:09:06,016 それが だんだん 手口が荒っぽくなってきて。 131 00:09:06,016 --> 00:09:08,852 今じゃ 血を見ねえ事には 済まねえようで。 132 00:09:08,852 --> 00:09:11,688 (おせい)何が面白くて そんな事するんでしょう。➡ 133 00:09:11,688 --> 00:09:14,724 ああ… 気味が悪い。 134 00:09:14,724 --> 00:09:17,193 いらっしゃいまし。 135 00:09:17,193 --> 00:09:19,193 酒をくれ。 はいよ。 136 00:09:25,535 --> 00:09:27,835 松村信兵衛。 137 00:09:29,406 --> 00:09:35,406 お主 浪々前は どこの家中で 禄を食んでおった? 138 00:09:38,114 --> 00:09:41,814 一体 何をしでかして 禄を離れた? 139 00:09:44,020 --> 00:09:48,758 言えぬのは さしずめ 人の恨みを買って➡ 140 00:09:48,758 --> 00:09:52,058 逃げてきたためか? 141 00:09:55,165 --> 00:09:58,668 (竹造) おう あんた! でたらめ言うと ただじゃおかねえぞ。 142 00:09:58,668 --> 00:10:01,171 いてっ。 旦那はな 人様の恨み買うような➡ 143 00:10:01,171 --> 00:10:04,207 男じゃねえんだい! (一同)そうだい そうだい! 144 00:10:04,207 --> 00:10:07,043 お待たせをしました。 145 00:10:07,043 --> 00:10:18,188 ♬~ 146 00:10:18,188 --> 00:10:22,058 上手ね 赤ちゃん だっこするの。 147 00:10:22,058 --> 00:10:25,862 私 初めは どきどきした。 148 00:10:25,862 --> 00:10:31,201 女だったら できて当たり前 しくじったら どうしようって。 149 00:10:31,201 --> 00:10:34,104 ねえ 何か コツでもあるの? 150 00:10:34,104 --> 00:10:37,904 だって 赤ちゃん かわいいから。 それだけ? 151 00:10:58,228 --> 00:11:00,563 (鶴之助の声) 152 00:11:00,563 --> 00:11:03,900 さっきまで 眠っていたんですよ。 ああ そうかい。 153 00:11:03,900 --> 00:11:09,239 フフッ いい子にしてたみたいだな。 ありがとよ 2人とも。 154 00:11:09,239 --> 00:11:13,910 さっき 出ていったの 折笠道場のご浪人さんですよね? 155 00:11:13,910 --> 00:11:15,845 ああ。 156 00:11:15,845 --> 00:11:20,250 どうしたんだろう あの女の人。 女? 157 00:11:20,250 --> 00:11:23,950 きっと あのご浪人さんと 何か…。 158 00:11:25,588 --> 00:11:28,625 (およう)嘘だ… 嘘だ! 159 00:11:28,625 --> 00:11:34,825 そんな話 誰が信じるもんか。 160 00:11:36,533 --> 00:11:38,568 怖い顔して走っていったんです。 161 00:11:38,568 --> 00:11:41,404 居候のくせに女連れ込むなんて 太え野郎だ。 162 00:11:41,404 --> 00:11:44,874 おおかた 悪さでもして 怒らせたんだろうさ。 163 00:11:44,874 --> 00:11:46,874 (笑い声) 164 00:11:58,421 --> 00:12:05,195 [ 回想 ] 松村信兵衛ってのは お前の思い人の仇か?➡ 165 00:12:05,195 --> 00:12:08,731 そんな大事な相手を 取り違えるとは➡ 166 00:12:08,731 --> 00:12:11,531 そそっかしい女だ。 167 00:12:13,236 --> 00:12:15,738 そんな ばかな…。 168 00:12:15,738 --> 00:12:18,408 ≪(足音) 169 00:12:18,408 --> 00:12:22,208 悪いけど 今日は 勘弁しておくれ。 170 00:12:23,913 --> 00:12:25,849 ≪(せきこみ) 171 00:12:25,849 --> 00:12:32,522 帰れって言ってるだろ。 しつこいね もう。 172 00:12:32,522 --> 00:12:39,395 ♬~ 173 00:12:39,395 --> 00:12:41,395 あんた…。 174 00:12:43,166 --> 00:12:45,702 どうして ここが? 175 00:12:45,702 --> 00:12:54,043 気付いてないとでも思ったか。 妙な夜鷹が付け回していた事を。 176 00:12:54,043 --> 00:12:59,549 何故 松村信兵衛を仇と付け狙う? 177 00:12:59,549 --> 00:13:02,585 あんたには関わりのない事だよ。 178 00:13:02,585 --> 00:13:14,097 ♬~ 179 00:13:14,097 --> 00:13:17,097 話を聞かせてもらおうか。 180 00:13:21,571 --> 00:13:24,407 (おたえ)すまないね 孝ちゃん。 お芋ふかしたから➡ 181 00:13:24,407 --> 00:13:26,910 みんなで分けとくれ。 さあ。 182 00:13:26,910 --> 00:13:28,845 (子どもたち)わ~! 183 00:13:28,845 --> 00:13:32,348 (おちか)孝ちゃん 孝ちゃん 悪いんだけどさ➡ 184 00:13:32,348 --> 00:13:34,384 後で お使い頼まれてくれないかい? 185 00:13:34,384 --> 00:13:37,020 はい 何でも お申しつけ下さい。 186 00:13:37,020 --> 00:13:42,192 かわいいこと。 あんた 男にしとくの もったいないよ。 187 00:13:42,192 --> 00:13:44,694 あたしゃ 女じゃもったいないって いわれてるよ。 188 00:13:44,694 --> 00:13:47,197 本当だ。 (笑い声) 189 00:13:47,197 --> 00:13:50,197 違えねえ。 (笑い声) 190 00:13:56,873 --> 00:14:00,743 あ~… うまかった。 191 00:14:00,743 --> 00:14:05,215 ごちそうさん。 お粗末さまでした。 192 00:14:05,215 --> 00:14:08,885 いや~ 大したもんだ お前は。 193 00:14:08,885 --> 00:14:12,755 このみそ汁の塩加減なんざ おぶんちゃんより…。 194 00:14:12,755 --> 00:14:18,755 おっと… 今のは内緒だぜ ハハハハ! 195 00:14:20,897 --> 00:14:24,597 初めてです そうやって褒めてもらうの。 196 00:14:28,571 --> 00:14:31,474 おい 何だ? それ。 197 00:14:31,474 --> 00:14:35,345 ああ おもちゃの笛です。 割れて音が出ないっていうから。 198 00:14:35,345 --> 00:14:37,545 ふ~ん。 199 00:14:39,515 --> 00:14:44,187 おめえ この長屋の水が 合ってるみてえだな。 200 00:14:44,187 --> 00:14:47,690 さっき おかみさんたちに 女の子みたいだって➡ 201 00:14:47,690 --> 00:14:53,690 笑われたじゃないですか。 でも ちっとも悲しくないんです。 202 00:14:55,865 --> 00:15:00,737 今まで ずっと 自分は 間違えて 生まれてきたんじゃないかって➡ 203 00:15:00,737 --> 00:15:03,037 思ってました。 204 00:15:04,874 --> 00:15:10,546 お店を継いで お嫁さんをもらって➡ 205 00:15:10,546 --> 00:15:16,719 これから ずっと 男として 生きていくのかと思うと➡ 206 00:15:16,719 --> 00:15:19,219 怖くなって…。 207 00:15:21,224 --> 00:15:23,224 うん…。 208 00:15:27,397 --> 00:15:32,197 世の中には いろんな人間がいる。 209 00:15:34,504 --> 00:15:41,678 この長屋の連中にとって それは当たり前の事なんだ。 210 00:15:41,678 --> 00:15:44,714 侍も町人も男も女も➡ 211 00:15:44,714 --> 00:15:50,386 役割は違ったって みんな 一人の人間だ。 212 00:15:50,386 --> 00:15:54,257 そういう連中だからこそ 俺のような はみ出し者でも➡ 213 00:15:54,257 --> 00:15:59,757 隔てをしねえで 仲間に入れてくれた。 214 00:16:01,864 --> 00:16:06,536 私も 仲間に入る事は できないでしょうか。 215 00:16:06,536 --> 00:16:10,039 この長屋で 先生と鶴坊のお世話をして➡ 216 00:16:10,039 --> 00:16:12,375 生きていく訳には いかないでしょうか。 217 00:16:12,375 --> 00:16:15,211 いや お前 そこまでは…。 そうすれば➡ 218 00:16:15,211 --> 00:16:19,048 もう おとっつぁんの足手まといに なる事だって…。 219 00:16:19,048 --> 00:16:29,225 ♬~ 220 00:16:29,225 --> 00:16:31,828 (ため息) 221 00:16:31,828 --> 00:16:35,128 おめえは優しいんだな。 222 00:16:36,699 --> 00:16:41,170 男らしくねえとか 女々しいとか➡ 223 00:16:41,170 --> 00:16:44,006 そうやって ひと色に 決めつけようとするから➡ 224 00:16:44,006 --> 00:16:49,812 ややこしくなる。 そんな事より まず➡ 225 00:16:49,812 --> 00:16:54,183 おめえは 人間が優しいってこった。 226 00:16:54,183 --> 00:16:56,483 私が? ああ。 227 00:16:58,054 --> 00:17:04,193 それを 一番初めに見抜いたのは 鶴坊だ。 228 00:17:04,193 --> 00:17:08,531 (鶴之助の声) 229 00:17:08,531 --> 00:17:11,434 俺はな 孝太郎➡ 230 00:17:11,434 --> 00:17:16,205 鶴坊には 強え男に なってもらいてえと思ってる。 231 00:17:16,205 --> 00:17:21,077 だが それ以上にな おめえのような優しい人間に➡ 232 00:17:21,077 --> 00:17:23,713 育ってほしいと思ってるよ。 233 00:17:23,713 --> 00:17:26,213 信兵衛先生。 234 00:17:27,884 --> 00:17:30,553 おとっつぁんにも もっと おめえの事を➡ 235 00:17:30,553 --> 00:17:33,156 分かってもらわんといかんな。 236 00:17:33,156 --> 00:17:37,156 さきざきを決めるのは そっからにしようじゃねえか。 237 00:17:39,028 --> 00:17:41,330 (戸が開く音) (おぶん)孝ちゃん。 238 00:17:41,330 --> 00:17:45,168 孝ちゃん? 繕い物 預かってきたわよ。 239 00:17:45,168 --> 00:17:48,070 何だい? 繕い物ってのは。 私が お願いしたんです。 240 00:17:48,070 --> 00:17:50,506 少しでも 皆さんのお役に立ちたくて。 241 00:17:50,506 --> 00:17:53,409 はあ~。 これ 私の分。 242 00:17:53,409 --> 00:17:56,179 お気に入りなんだから 一等先にやってよね。 243 00:17:56,179 --> 00:17:58,514 はい おぶんさん。 喜んで! 244 00:17:58,514 --> 00:18:02,714 何だ お前たち いつの間に。 245 00:18:07,857 --> 00:18:11,727 ごちそうさん。 どうも ありがとう存じやす。 246 00:18:11,727 --> 00:18:13,729 はい。 ありがとう存じやす。 247 00:18:13,729 --> 00:18:15,729 お気を付けて。 248 00:18:18,868 --> 00:18:22,738 お? そば~い。 249 00:18:22,738 --> 00:18:25,938 温かいそば いかがですか? 250 00:18:28,044 --> 00:18:30,880 (ため息) 251 00:18:30,880 --> 00:18:33,580 店じまいか。 252 00:18:35,485 --> 00:18:38,821 遅くまで ご苦労さん。 お先に。 253 00:18:38,821 --> 00:18:45,161 ≪火の用心! 戸締まり用心! 火の用心! 254 00:18:45,161 --> 00:19:08,851 ♬~ 255 00:19:08,851 --> 00:19:10,786 ≪(悲鳴) 256 00:19:10,786 --> 00:19:19,862 ♬~ 257 00:19:19,862 --> 00:19:21,898 おい! おい! 258 00:19:21,898 --> 00:19:24,200 大丈夫か? 259 00:19:24,200 --> 00:19:27,200 おい! おい! 260 00:19:32,475 --> 00:19:35,811 (道仙)ああ ひでえもんだ。 261 00:19:35,811 --> 00:19:40,011 執ように 幾たびも切りつけたと 見える。 262 00:19:44,320 --> 00:19:47,156 なんて むごたらしいまねを…。 263 00:19:47,156 --> 00:19:49,992 病のおっかさん養うために➡ 264 00:19:49,992 --> 00:19:54,830 毎晩 遅くまで働いてた 孝行娘だったようで…。 265 00:19:54,830 --> 00:19:57,733 例の切り裂き野郎の 仕業じゃねえのか? 266 00:19:57,733 --> 00:19:59,702 奴の獲物は剃刀です。 267 00:19:59,702 --> 00:20:04,840 それに いつだって 昼日中 せいぜい けがを負わせるだけで。 268 00:20:04,840 --> 00:20:07,510 あれから 見張りを増やしたんだろう? 269 00:20:07,510 --> 00:20:11,847 それで 人目につかねえ夜分に 動き始めたんじゃ…。 270 00:20:11,847 --> 00:20:16,185 ついでに 剃刀を 匕首に持ち替えたと? 271 00:20:16,185 --> 00:20:19,522 面白半分で始めたものが➡ 272 00:20:19,522 --> 00:20:24,393 知らず知らず 気持ちが高ぶって抑えきれず➡ 273 00:20:24,393 --> 00:20:29,198 とうとう 越えてはならねえ仕切りを➡ 274 00:20:29,198 --> 00:20:31,498 踏み越えてしまった。 275 00:20:34,537 --> 00:20:40,409 一たび 人の世の闇へ踏み込んだら➡ 276 00:20:40,409 --> 00:20:46,882 足元には もっと でっかくて 真っ暗な闇が広がっている。 277 00:20:46,882 --> 00:20:50,753 こっちへ来ねえと呼びかけて➡ 278 00:20:50,753 --> 00:20:54,453 逃げ出そうにも逃げられねえ。 279 00:20:56,225 --> 00:20:59,895 うわ~っ はっ! 280 00:20:59,895 --> 00:21:01,895 うわ~っ! 281 00:21:04,233 --> 00:21:07,136 おい 信の字! 282 00:21:07,136 --> 00:21:09,136 ん? 283 00:21:14,877 --> 00:21:18,247 怖いわね~。 (重助)怖いな。 284 00:21:18,247 --> 00:21:20,916 物騒な世の中だよ。 285 00:21:20,916 --> 00:21:24,253 あっ ちょっと とっつぁん。 何だよ。 286 00:21:24,253 --> 00:21:26,553 (おちか)あれ 誰? ほら。 287 00:21:30,593 --> 00:21:33,562 ≪(孝太郎)はい 鶴坊 もうすぐ終わるからね。 288 00:21:33,562 --> 00:21:36,399 ≪(鶴之助の声) 289 00:21:36,399 --> 00:21:39,201 孝太郎! 290 00:21:39,201 --> 00:21:41,871 おとっつぁん…。 291 00:21:41,871 --> 00:21:45,171 赤子など おぶって 何をしている? 292 00:21:46,742 --> 00:21:50,212 道場に行っても お前が 稽古をしている様子がない。 293 00:21:50,212 --> 00:21:53,883 ご門人衆に聞けば 松村先生預けになって以来➡ 294 00:21:53,883 --> 00:21:56,719 とんと姿を見ておらんと いうではないか。 295 00:21:56,719 --> 00:21:58,754 先生は どこだ? 296 00:21:58,754 --> 00:22:03,492 何故 修行もさせずに 子守 洗濯など…。 297 00:22:03,492 --> 00:22:08,230 これだって 生きていくための 大事な修行です。 298 00:22:08,230 --> 00:22:10,166 何だね お前さんは。 299 00:22:10,166 --> 00:22:12,902 わ… 私は➡ 300 00:22:12,902 --> 00:22:15,805 私は 先生の身内です。 301 00:22:15,805 --> 00:22:20,805 おっしゃりたい事があるんなら 私が 代わりに伺います。 302 00:22:23,546 --> 00:22:25,481 ねえ 旦那。 303 00:22:25,481 --> 00:22:28,918 息子の目を見てやって下さい 目を。 304 00:22:28,918 --> 00:22:31,918 前よりは 生き生きとしてるでしょう? 305 00:22:34,724 --> 00:22:37,727 おかしいと思ったんだ。 306 00:22:37,727 --> 00:22:40,529 武芸の達人という 触れ込みだったのに➡ 307 00:22:40,529 --> 00:22:43,432 あの男 腰に大小すら 差していなかった。 308 00:22:43,432 --> 00:22:47,870 さては 折笠道場の師範とつるんで 私をだましたという事か。 309 00:22:47,870 --> 00:22:50,570 (孝太郎)信兵衛先生は そんな人じゃありません! 310 00:22:52,742 --> 00:22:55,611 知ってるでしょ むやみに人を切りつける➡ 311 00:22:55,611 --> 00:22:58,881 恐ろしい奴の事を。 ゆうべは とうとう➡ 312 00:22:58,881 --> 00:23:01,550 女の人が殺されたんです。 これ以上➡ 313 00:23:01,550 --> 00:23:03,886 一人も 傷つけられちゃいけないって➡ 314 00:23:03,886 --> 00:23:06,789 先生は お役人と一緒に 昼も夜も寝ずに番を…。 315 00:23:06,789 --> 00:23:09,225 (鶴之助の泣き声) 316 00:23:09,225 --> 00:23:13,562 先生を悪く言うのは おとっつぁんだって許さない! 317 00:23:13,562 --> 00:23:16,465 孝太郎 お前…。 もう お店には戻りません。 318 00:23:16,465 --> 00:23:20,165 先生と 長屋のみんなと ここで生きていきます。 319 00:23:26,909 --> 00:23:28,909 では。 320 00:23:34,717 --> 00:23:37,520 ああ 旦那 ご苦労さんでございやす。 321 00:23:37,520 --> 00:23:40,189 このなりなら 敵に怪しまれねえ。 322 00:23:40,189 --> 00:23:43,859 それに おめえさんたちの小腹が 減った時の役にも立つしな。 323 00:23:43,859 --> 00:23:48,197 松村さんは どうして そこまで? 324 00:23:48,197 --> 00:23:52,535 何だ 急に。 この間 丸源に来た浪人者が➡ 325 00:23:52,535 --> 00:23:54,470 言っていましたよね。 326 00:23:54,470 --> 00:23:59,875 言えぬのは さしずめ 人の恨みを買って➡ 327 00:23:59,875 --> 00:24:03,546 逃げてきたためか? 328 00:24:03,546 --> 00:24:08,050 もしかして 何かの罪滅ぼしでもするために? 329 00:24:08,050 --> 00:24:10,386 ばか言うもんじゃありませんぜ。 330 00:24:10,386 --> 00:24:14,223 松村の旦那は ただ 町の人たちを守りてえ一心で。 331 00:24:14,223 --> 00:24:16,523 いいんだい 親分。 332 00:24:20,095 --> 00:24:25,234 相すいやせん。 まだまだ 人を見る目ができてねえもんで。 333 00:24:25,234 --> 00:24:27,234 いいって事よ。 334 00:24:56,866 --> 00:24:58,866 誰か いるのか? 335 00:25:02,204 --> 00:25:11,213 ♬~ 336 00:25:11,213 --> 00:25:14,884 チクショー どこ行きやがった。 337 00:25:14,884 --> 00:25:22,758 ♬~ 338 00:25:22,758 --> 00:25:24,894 美濃屋? 339 00:25:24,894 --> 00:25:27,229 人通りの多い時に 水をまいてはいけないと➡ 340 00:25:27,229 --> 00:25:30,566 言ったでしょう。 どうか ご容赦下さい。 341 00:25:30,566 --> 00:25:36,171 ♬~ 342 00:25:36,171 --> 00:25:38,871 まさか…。 343 00:25:44,046 --> 00:25:47,516 (鶴之助の声) 344 00:25:47,516 --> 00:25:49,516 孝ちゃん。 345 00:25:52,855 --> 00:25:55,758 先生 まだ帰らないの? 346 00:25:55,758 --> 00:25:58,527 明け方になるって おっしゃってました。 347 00:25:58,527 --> 00:26:01,196 あ…。 (鶴之助の声) 348 00:26:01,196 --> 00:26:04,700 孝ちゃんがいてくれて よかった。 349 00:26:04,700 --> 00:26:10,500 でなきゃ 先生 鶴坊おぶってでも 見張りに出かねないもの。 350 00:26:16,412 --> 00:26:20,182 おぶんさん 昼間 おとっつぁんが来た事は➡ 351 00:26:20,182 --> 00:26:24,553 先生には内緒にしておいて下さい。 どうして? 352 00:26:24,553 --> 00:26:29,553 これ以上 先生の心配事を増やす訳には…。 353 00:26:33,362 --> 00:26:39,068 ねえ 孝ちゃん 2人で 先生のお手伝いをしない? 354 00:26:39,068 --> 00:26:41,837 お手伝い? うん。 355 00:26:41,837 --> 00:26:45,507 私が囮になって 悪い奴をおびき寄せるの。 356 00:26:45,507 --> 00:26:48,410 囮って… そんな危ないまね させられません! 357 00:26:48,410 --> 00:26:55,184 大丈夫よ。 男が現れたら 孝ちゃんが笛を吹くの。 358 00:26:55,184 --> 00:26:58,484 そしたら すぐに 先生が 駆けつけてくれるわ。 359 00:27:01,523 --> 00:27:07,223 あいつが捕まれば 先生が 肩の荷を下ろせる。 360 00:27:09,198 --> 00:27:14,898 鶴坊にだって これ以上 寂しい思いをさせなくて済むわ。 361 00:27:27,549 --> 00:27:29,849 ≪(子どもたちの遊ぶ声) 362 00:27:38,494 --> 00:27:50,506 ♬~ 363 00:27:50,506 --> 00:27:52,506 (悲鳴) 364 00:27:54,176 --> 00:27:56,176 どうしよう…。 365 00:27:57,846 --> 00:28:00,146 ≪(鶴之助の声) 366 00:28:02,718 --> 00:28:05,521 あれ? 367 00:28:05,521 --> 00:28:09,221 おい どうした? 泣いてるのか? 368 00:28:10,859 --> 00:28:16,198 先生は 私の事を 優しいと言ってくれました。 369 00:28:16,198 --> 00:28:22,071 でも 本当に優しいっていうのは 先生や おぶんさんみたいに➡ 370 00:28:22,071 --> 00:28:25,071 勇気があって 強い人の事なんだなって…。 371 00:28:28,710 --> 00:28:31,410 私も先生のお役に立ちたい。 372 00:28:32,981 --> 00:28:35,017 なのに…。 373 00:28:35,017 --> 00:28:41,156 ハハハハハ! 十分 役に立ってるさ。 374 00:28:41,156 --> 00:28:44,493 ここで おめえが 鶴坊を 守ってくれているおかげで➡ 375 00:28:44,493 --> 00:28:47,396 どれだけ心強いか。 376 00:28:47,396 --> 00:28:50,365 え? 377 00:28:50,365 --> 00:28:54,837 鶴坊だけじゃねえ。 おぶんちゃんだって同じだ。 378 00:28:54,837 --> 00:28:58,707 いくら気の強い事 言ったって 足の悪い年寄り抱えて➡ 379 00:28:58,707 --> 00:29:01,510 心細いに決まってる。 380 00:29:01,510 --> 00:29:05,210 俺がいねえ時は おめえが頼りだ。 381 00:29:08,383 --> 00:29:11,520 早く みんなが 安心して暮らせるように➡ 382 00:29:11,520 --> 00:29:14,189 必ず 切り裂き野郎を とっ捕まえる。 383 00:29:14,189 --> 00:29:17,860 それまで おめえは ここで 鶴坊と おぶんちゃんを➡ 384 00:29:17,860 --> 00:29:21,530 しっかり守ってやってくれ。 385 00:29:21,530 --> 00:29:24,199 な! 386 00:29:24,199 --> 00:29:26,199 ほい。 387 00:29:31,807 --> 00:29:33,807 (ため息) 388 00:29:35,477 --> 00:29:37,777 頼んだぜ。 389 00:29:45,487 --> 00:29:53,487 私が守る。 この手で 鶴坊と おぶんさんを。 390 00:29:55,831 --> 00:30:00,169 熱っぽいって どうしたの? 風邪? 391 00:30:00,169 --> 00:30:04,039 今朝方から寒気がして 立っているのも つらくて。 392 00:30:04,039 --> 00:30:07,509 えっ 熱? 鶴坊に うつす訳には いきません。 393 00:30:07,509 --> 00:30:10,179 今夜は預かって下さい。 394 00:30:10,179 --> 00:30:12,514 何だ 鶴坊 来たか。 (鶴之助の泣き声) 395 00:30:12,514 --> 00:30:15,417 お~ おいで おいで。 あいあいあい。 396 00:30:15,417 --> 00:30:19,717 (戸の開閉音) 397 00:30:22,191 --> 00:30:24,126 すまねえな。 ご苦労さまです。 398 00:30:24,126 --> 00:30:28,530 美濃屋の若旦那ですか? ああ。 どんな男だ? 399 00:30:28,530 --> 00:30:31,433 近頃 すっかり 気持ちを入れ替えたようで➡ 400 00:30:31,433 --> 00:30:35,204 評判ようござんすよ。 じゃあ 前は違ったのかい? 401 00:30:35,204 --> 00:30:42,077 ええ ちょっと前まで 吉原辺りで 羽振りよく遊んでたって話です。 402 00:30:42,077 --> 00:30:44,880 女たらしって事か。 403 00:30:44,880 --> 00:30:50,552 いえいえ そこはまあ 一度は通る道って事で。 404 00:30:50,552 --> 00:30:55,224 あれ 何か 怪しい節でも? いや…。 405 00:30:55,224 --> 00:30:58,894 ああ 若旦那といえば 紀州屋の坊ちゃん➡ 406 00:30:58,894 --> 00:31:01,230 風邪ひいて 熱出したんですって? 407 00:31:01,230 --> 00:31:03,565 孝太郎が? ええ 出がけに➡ 408 00:31:03,565 --> 00:31:06,235 重助のとっつぁんが飲みに来て そう言ってやしたが。 409 00:31:06,235 --> 00:31:08,170 あ? 410 00:31:08,170 --> 00:31:11,106 ≪(戸が開く音) 孝太郎。 411 00:31:11,106 --> 00:31:13,406 孝ちゃん? 孝太郎。 412 00:31:15,244 --> 00:31:19,944 えっ! 嘘だったのね。 熱があるなんて。 413 00:31:22,918 --> 00:31:28,618 [ 回想 ] 私も先生のお役に立ちたい。 なのに…。 414 00:31:32,527 --> 00:31:34,563 ん? えっ? 415 00:31:34,563 --> 00:31:37,866 どうした? 私の着物がない。 416 00:31:37,866 --> 00:31:40,202 え? 417 00:31:40,202 --> 00:31:43,502 あっ… 先生 まさか! 418 00:31:45,073 --> 00:31:47,073 バカヤロー! 419 00:31:48,877 --> 00:31:55,217 ♬~ 420 00:31:55,217 --> 00:31:58,887 どうか 私に勇気を。 421 00:31:58,887 --> 00:32:35,190 ♬~ 422 00:32:35,190 --> 00:32:37,859 はっ! うっ ああ…。 423 00:32:37,859 --> 00:32:40,559 ふざけたまねを… このアマ! 424 00:32:44,733 --> 00:32:47,033 お前… 男か!? 425 00:32:51,707 --> 00:32:57,512 ≪(笛の音) 426 00:32:57,512 --> 00:32:59,448 孝太郎! 427 00:32:59,448 --> 00:33:02,248 ふざけやがって… 死ね! 428 00:33:10,092 --> 00:33:12,728 孝太郎! 429 00:33:12,728 --> 00:33:14,928 こら! 430 00:33:18,233 --> 00:33:21,570 孝太郎 孝太郎! 431 00:33:21,570 --> 00:33:23,505 うっ! 432 00:33:23,505 --> 00:33:26,241 (せきこみ) 433 00:33:26,241 --> 00:33:28,176 こら! 434 00:33:28,176 --> 00:33:30,476 待て こら! 435 00:33:32,047 --> 00:33:36,852 やっぱり てめえか。 美濃屋のどら息子! 436 00:33:36,852 --> 00:33:39,755 うわべは 人のいい真面目な若旦那。 437 00:33:39,755 --> 00:33:43,525 裏じゃ 女たちを切り刻んで喜ぶ けだものめが! 438 00:33:43,525 --> 00:33:47,863 上っ面がいいのは 私に限った事じゃないでしょう。 439 00:33:47,863 --> 00:33:50,365 殊に 女はそうだ。 440 00:33:50,365 --> 00:33:53,034 形ばかりの愛想で取り入って➡ 441 00:33:53,034 --> 00:33:56,071 人を 小判のなる木としか 思っちゃいない。 442 00:33:56,071 --> 00:33:59,808 親父の金で 吉原の花魁だって さんざん抱きましたよ。 443 00:33:59,808 --> 00:34:03,211 あいつら 女郎のくせに どいつも こいつも➡ 444 00:34:03,211 --> 00:34:05,547 お高くとまりやがって。 445 00:34:05,547 --> 00:34:10,547 そこへいくと あの女たちは 私を 心底 楽しませてくれた。 446 00:34:15,557 --> 00:34:17,557 (悲鳴) 447 00:34:19,227 --> 00:34:21,227 あっ! 448 00:34:25,901 --> 00:34:28,201 甘ったれるんじゃない! 449 00:34:31,506 --> 00:34:34,543 女たちが まともに 相手にしてくれねえのはな➡ 450 00:34:34,543 --> 00:34:37,343 てめえに まことがねえからだ。 451 00:34:43,518 --> 00:34:46,855 金の力で女たちを見下して➡ 452 00:34:46,855 --> 00:34:51,155 てめえばかりが いい気分になろうとするからだ。 453 00:34:54,729 --> 00:34:58,567 金を積んでも 思うようにならねえから➡ 454 00:34:58,567 --> 00:35:03,205 今度は 陰に隠れて こそこそと➡ 455 00:35:03,205 --> 00:35:12,714 罪もねえ女たちを傷つけ 殺め まるで おもちゃのように…。 456 00:35:12,714 --> 00:35:15,050 あんた 一体 何者です? 457 00:35:15,050 --> 00:35:18,086 役人でもないのに 私を裁こうっていうんですか? 458 00:35:18,086 --> 00:35:24,226 俺はな… 俺は 赤子を育ててるんだよ。 459 00:35:24,226 --> 00:35:27,896 その赤子を産んでくれたのは女だ。 460 00:35:27,896 --> 00:35:34,503 俺も おめえも あの孝太郎も➡ 461 00:35:34,503 --> 00:35:38,673 みんな 女が 大変な思いをして産んで➡ 462 00:35:38,673 --> 00:35:41,710 育ててくれたんだ。 463 00:35:41,710 --> 00:35:45,847 それをありがてえと思うのが 人の道だぞ。 464 00:35:45,847 --> 00:35:47,782 フンッ。 465 00:35:47,782 --> 00:35:50,519 てめえって奴ぁ…。 466 00:35:50,519 --> 00:35:57,859 ♬~ 467 00:35:57,859 --> 00:36:02,697 先生 駄目! 先生の手は 鶴坊を育てる大事な手。 468 00:36:02,697 --> 00:36:06,868 そんな男を殴ったら 汚れになります。 469 00:36:06,868 --> 00:36:17,879 ♬~ 470 00:36:17,879 --> 00:36:19,879 孝太郎…。 471 00:36:22,217 --> 00:36:24,553 あとは あっしらで。 472 00:36:24,553 --> 00:36:26,588 あ… ああ。 473 00:36:26,588 --> 00:36:29,891 旦那 しっかりしなせえ! 474 00:36:29,891 --> 00:36:31,826 ほら。 475 00:36:31,826 --> 00:36:35,497 北町奉行所同心 榎戸誠三郎である。 476 00:36:35,497 --> 00:36:38,197 源吉 縄を打て! へい。 477 00:36:41,369 --> 00:36:43,669 ほら! 478 00:36:55,684 --> 00:36:57,884 (ため息) 479 00:36:59,521 --> 00:37:04,859 孝太郎 おめえって奴は。 480 00:37:04,859 --> 00:37:07,195 先生。 481 00:37:07,195 --> 00:37:09,130 (おぶん)孝ちゃん! 482 00:37:09,130 --> 00:37:11,700 おぶんさん! 483 00:37:11,700 --> 00:37:18,206 ばかよ あんた! 私の事 心配して 一人で行くなんて! 484 00:37:18,206 --> 00:37:20,206 ごめん。 485 00:37:23,545 --> 00:37:25,845 無事でよかった。 486 00:37:32,821 --> 00:37:36,491 孝太郎が 手柄を? そうなんです。 487 00:37:36,491 --> 00:37:43,164 イヤッハッハッハッ 全く ここまで見事に 修行の成果が あらわれるとは。 488 00:37:43,164 --> 00:37:45,834 さすが 松村先生。 489 00:37:45,834 --> 00:37:50,505 ハッ 孝太郎は 一つも変わっちゃいませんよ。 490 00:37:50,505 --> 00:37:53,541 なあ。 え? 491 00:37:53,541 --> 00:37:56,845 それは 一体 どういう…。 492 00:37:56,845 --> 00:37:58,845 入ってきな。 493 00:38:02,183 --> 00:38:04,119 孝太郎。 494 00:38:04,119 --> 00:38:08,523 こいつが もともと持っていた まっすぐな心が➡ 495 00:38:08,523 --> 00:38:13,194 表へ はじけ出した。 それだけの事です。 496 00:38:13,194 --> 00:38:15,864 うんうん うん。 そうそう そうそう。 497 00:38:15,864 --> 00:38:19,367 私は おとっつぁんの望むような 跡取りには➡ 498 00:38:19,367 --> 00:38:22,404 なれないかもしれません。 でも 逃げないで➡ 499 00:38:22,404 --> 00:38:27,542 こんな私にもできる事を 探していきたいと思います。 500 00:38:27,542 --> 00:38:35,242 ♬~ 501 00:38:38,153 --> 00:38:40,088 ありがとうございました。 502 00:38:40,088 --> 00:38:42,490 こっち こっち! (鶴之助の声) 503 00:38:42,490 --> 00:38:44,526 ほら あそこ。 504 00:38:44,526 --> 00:38:47,996 あっ! ハハハハハ。 505 00:38:47,996 --> 00:38:50,665 孝ちゃんのおとっつぁんの 口利きで➡ 506 00:38:50,665 --> 00:38:52,701 見習い奉公 させてもらってるんですって。 507 00:38:52,701 --> 00:38:55,837 ふ~ん。 ありがとうございます。 508 00:38:55,837 --> 00:38:59,537 おぶんさん! 先生も! 509 00:39:02,610 --> 00:39:05,513 よかったな 似合いの店で働けて。 510 00:39:05,513 --> 00:39:07,849 はい。 でも 働いてみて➡ 511 00:39:07,849 --> 00:39:10,518 こういう きれいなものを扱う お商売だって➡ 512 00:39:10,518 --> 00:39:13,188 ただ 楽しいだけじゃないって 分かりました。 だから➡ 513 00:39:13,188 --> 00:39:16,091 炭にまみれて ずっと お店を 守ってきた おとっつぁんは➡ 514 00:39:16,091 --> 00:39:18,860 大したもんだって 改めて思いました。 515 00:39:18,860 --> 00:39:21,560 孝ちゃん 私にも かんざし見せて。 516 00:39:23,198 --> 00:39:26,868 じゃあ これは? これ? 517 00:39:26,868 --> 00:39:29,537 先生 どう? 518 00:39:29,537 --> 00:39:36,537 奴こそ お前が仇と狙う男 松村信兵衛だ。 519 00:39:39,147 --> 00:39:46,020 でも あんたは なぜ 私の手助けをしようだなんて。 520 00:39:46,020 --> 00:39:49,720 己の生きた証しが欲しいのさ。 521 00:39:52,494 --> 00:39:55,396 頑張って! もうちょっと もうちょっと! 522 00:39:55,396 --> 00:39:57,832 いけ! (一同)あ~あ。 523 00:39:57,832 --> 00:40:00,735 (鶴之助の泣き声) 524 00:40:00,735 --> 00:40:02,704 (おぶん)あら? 525 00:40:02,704 --> 00:40:05,507 何やってるんです? そんなとこで。 526 00:40:05,507 --> 00:40:09,177 いや ちょっと… 松村先生に。 527 00:40:09,177 --> 00:40:14,177 ん? 何だい? 俺に何か用か。 528 00:40:17,051 --> 00:40:19,187 すいませんでした! 529 00:40:19,187 --> 00:40:21,122 え? 530 00:40:21,122 --> 00:40:25,527 今まで 松村先生の事 どっか うさんくさい人だなと➡ 531 00:40:25,527 --> 00:40:30,198 思ってたんです。 それで つい お人柄を疑うような事を…。 532 00:40:30,198 --> 00:40:34,068 うさんくせえって あんた これまで 旦那のおかげで➡ 533 00:40:34,068 --> 00:40:36,538 手柄を上げてきたんじゃ ねえのかい。 534 00:40:36,538 --> 00:40:38,838 それは… はい。 535 00:40:40,408 --> 00:40:44,212 うさんくせえには違えねえ。 別に構わねえよ。 536 00:40:44,212 --> 00:40:50,084 どうか 今後は ご指導 ご鞭撻の上 人生の師となって頂きたく➡ 537 00:40:50,084 --> 00:40:52,554 よろしくお願い申し上げます。 538 00:40:52,554 --> 00:40:54,489 あ? 539 00:40:54,489 --> 00:40:59,427 先生と仲よくなりたいなら まずは 鶴坊に好かれなくっちゃ。 540 00:40:59,427 --> 00:41:02,230 (笑い声) 私 子どもは ちょっと…。 541 00:41:02,230 --> 00:41:04,165 え? (重助)そんな事 言わないでさ➡ 542 00:41:04,165 --> 00:41:06,901 ちょっと ご挨拶しなよ。 ね。 543 00:41:06,901 --> 00:41:10,572 鶴坊。 おいおい 大丈夫かよ。 544 00:41:10,572 --> 00:41:13,272 どうぞ。 しっかり持てよ。 545 00:41:14,909 --> 00:41:18,246 これは どうも よろしくお願いつかまつる。 546 00:41:18,246 --> 00:41:21,916 (竹造)先生 やっぱり いろいろ 教えてやらなきゃ駄目だぜ。 547 00:41:21,916 --> 00:41:25,616 (笑い声) 548 00:41:27,255 --> 00:41:29,190 あんたには 今日限り 出てってもらう。 549 00:41:29,190 --> 00:41:32,093 おっかさんが何と言っても 私 銀次さんと一緒になる。 550 00:41:32,093 --> 00:41:34,996 裏じゃ いろいろ あるもんだな。 551 00:41:34,996 --> 00:41:37,699 その粒ぞろいの板前の中に➡ 552 00:41:37,699 --> 00:41:40,201 盗人がおるいう噂を 聞いたんですが。 553 00:41:40,201 --> 00:41:43,705 丹波屋さん。 駆け落ちでも しようってんじゃないだろうな。 554 00:41:43,705 --> 00:41:46,541 母親が 色の道で生きてきたからって➡ 555 00:41:46,541 --> 00:41:49,878 あの子まで おかしな目で見られて なるものか。 556 00:41:49,878 --> 00:41:52,213 (道仙)10年前の あの一件か。 557 00:41:52,213 --> 00:41:56,084 裏で糸引いてる野郎が いるって事よ。 558 00:41:56,084 --> 00:42:43,865 ♬~ 559 00:42:43,865 --> 00:42:50,204 ♬~ 560 00:42:50,204 --> 00:43:14,062 ♬~ 561 00:43:14,062 --> 00:43:17,899 ♬~ 562 00:43:17,899 --> 00:43:26,199 ♬~