1 00:00:35,330 --> 00:00:37,665 (鶴之助の声) (信兵衛)うわっ 冷てえ! 2 00:00:37,665 --> 00:00:39,601 やりやがったな 鶴坊! 3 00:00:39,601 --> 00:00:42,337 (おちか)やれ やれ。 4 00:00:42,337 --> 00:00:45,240 (おぶん)鶴坊 ほら 見てて。 5 00:00:45,240 --> 00:00:48,009 鶴坊 ほら。 6 00:00:48,009 --> 00:00:51,880 お~ きれいだな。 きれいでしょ。 7 00:00:51,880 --> 00:00:55,683 鶴坊 ここんとこ 急に大きくなったね。 8 00:00:55,683 --> 00:00:57,619 青物と一緒。 9 00:00:57,619 --> 00:01:00,555 春になって夏になって おてんとさまに照らされて➡ 10 00:01:00,555 --> 00:01:04,692 赤ん坊だって ニョキニョキ大きくなんのよ。 ねえ! 11 00:01:04,692 --> 00:01:08,863 (おたえ)頂き物。 皆さんも どうぞ。 12 00:01:08,863 --> 00:01:12,663 おっ 初物か! こりゃ いいな。 13 00:01:18,373 --> 00:01:21,709 あ~ うまい! うまいな! (おちか)うまいよ おたえさん。 14 00:01:21,709 --> 00:01:23,709 うまいよ~。 15 00:01:29,584 --> 00:01:31,884 (里緒)鶴之助? 16 00:01:34,289 --> 00:01:36,224 その お子の名は➡ 17 00:01:36,224 --> 00:01:39,661 沖石鶴之助でございましょ? 18 00:01:39,661 --> 00:01:41,696 沖石? 19 00:01:41,696 --> 00:01:44,532 あなた様が 松村信兵衛様? 20 00:01:44,532 --> 00:01:48,670 いかにも 松村信兵衛ですが。 21 00:01:48,670 --> 00:01:53,007 申し遅れました 私は 沖石主殿の姉➡ 22 00:01:53,007 --> 00:01:55,677 猪熊川里緒と申します。 23 00:01:55,677 --> 00:01:58,346 沖石さんの!? 24 00:01:58,346 --> 00:02:05,119 そのお子の 鶴之助殿の伯母でございます。 25 00:02:05,119 --> 00:02:07,355 あ…。 26 00:02:07,355 --> 00:02:16,364 ♬~ 27 00:02:16,364 --> 00:02:19,200 <俺は松村信兵衛。➡ 28 00:02:19,200 --> 00:02:25,707 木挽町の裏長屋に住む 貧乏浪人だ。➡ 29 00:02:25,707 --> 00:02:32,514 長屋のみんなの手を借りて 男手一つで子育てに奮闘中。➡ 30 00:02:32,514 --> 00:02:36,814 おう 鶴坊 今日も ご機嫌だね> 31 00:02:43,191 --> 00:02:47,491 ずっと 沖石の消息を? 32 00:02:49,330 --> 00:02:54,669 主家が お取り潰しになった事 妻女を亡くした事は➡ 33 00:02:54,669 --> 00:03:00,542 風の便りで耳に致しておりました。 何か 言ってくれれば➡ 34 00:03:00,542 --> 00:03:05,013 夫に力添えを頼む事も できたのですが…。 35 00:03:05,013 --> 00:03:08,883 沖石からは何も? 36 00:03:08,883 --> 00:03:13,354 遠慮があったのだと思います。 37 00:03:13,354 --> 00:03:18,026 私どもは 父親の違う姉弟なので。➡ 38 00:03:18,026 --> 00:03:24,899 父が亡くなって 母は 改めて 沖石家へ嫁いだのです。 39 00:03:24,899 --> 00:03:27,368 ≪そうでしたか。 40 00:03:27,368 --> 00:03:33,668 弟が この子を残して みまかったという事も 人づてに。 41 00:03:35,643 --> 00:03:39,314 よく覚えておくんだぞ 父上を。 42 00:03:39,314 --> 00:03:42,650 お父上が おめえを この世に授けてくれた事を➡ 43 00:03:42,650 --> 00:03:45,350 忘れんじゃねえぞ。 44 00:03:49,991 --> 00:03:52,026 (美玖)おぶん殿。 45 00:03:52,026 --> 00:03:55,526 何をしているのです? そんなところで。 し~っ! 46 00:03:57,865 --> 00:04:04,505 不躾ではございますが 何とぞ お納め下さいませ。 47 00:04:04,505 --> 00:04:06,541 何ですか これは。 48 00:04:06,541 --> 00:04:09,344 あなた様とて ご浪々の身➡ 49 00:04:09,344 --> 00:04:13,681 まして 独り身の殿御が 乳飲み子を押しつけられて➡ 50 00:04:13,681 --> 00:04:17,352 さぞ ご迷惑だった事でしょう。 51 00:04:17,352 --> 00:04:20,688 迷惑なんて これっぽっちも…。 52 00:04:20,688 --> 00:04:25,360 そりゃ 慣れねえ赤子の世話には 苦労もしましたけど➡ 53 00:04:25,360 --> 00:04:28,660 楽しいもんです 子育ては。 54 00:04:31,966 --> 00:04:34,636 鶴坊がいてくれるおかげで➡ 55 00:04:34,636 --> 00:04:37,636 一日一日 張り合いがある。 56 00:04:39,307 --> 00:04:42,210 長え事 いい加減な暮らしを してたんですが➡ 57 00:04:42,210 --> 00:04:46,510 こいつに教えられて 少しは まっとうに。 58 00:04:48,316 --> 00:04:52,654 とはいえ このままという訳に まいりますまい。 59 00:04:52,654 --> 00:04:57,525 夫 猪熊川久右衛門は お納戸勤め。 60 00:04:57,525 --> 00:05:05,667 23で嫁してより 私 いまだ 子宝に恵まれておりません。 61 00:05:05,667 --> 00:05:11,539 さすれば 私と血縁のある 鶴之助殿を養子に迎え➡ 62 00:05:11,539 --> 00:05:15,539 我が猪熊川家150石の跡取りに…。 63 00:05:19,213 --> 00:05:22,913 鶴坊を跡取りに? 64 00:05:24,686 --> 00:05:31,359 いらっしゃい。 私が そなたの新しい母ですよ。 65 00:05:31,359 --> 00:05:33,327 そんなの駄目! なりません! 66 00:05:33,327 --> 00:05:35,963 鶴之助殿を手放すなんて。 (鶴之助の声) 67 00:05:35,963 --> 00:05:38,866 おい 脅かすなよ 鶴坊 びっくりしてるじゃないか。 68 00:05:38,866 --> 00:05:41,302 何を悠長な事を。 69 00:05:41,302 --> 00:05:44,972 先生と鶴坊は もう 本当の親子なんです。 70 00:05:44,972 --> 00:05:48,309 心と心が 見えない絆で結ばれてるんです。 71 00:05:48,309 --> 00:05:52,146 やめるんだ おぶんちゃん。 ここにいるのが この十六店に➡ 72 00:05:52,146 --> 00:05:54,649 先生と一緒にいるのが 鶴坊の幸せなんです! 73 00:05:54,649 --> 00:05:57,985 鶴之助は武士の子です。 74 00:05:57,985 --> 00:06:01,022 貧乏長屋に住んでたって 先生は お武家です。 75 00:06:01,022 --> 00:06:03,858 先生の背中を見て育てば➡ 76 00:06:03,858 --> 00:06:06,994 鶴坊だって 立派なお武家になれるはずです。 77 00:06:06,994 --> 00:06:09,664 夜分に屋台を引いて歩き➡ 78 00:06:09,664 --> 00:06:13,501 小金を商う背中を見せて どうやって この子に武士道を? 79 00:06:13,501 --> 00:06:16,537 それは…。 ご心配には及びません。 80 00:06:16,537 --> 00:06:19,006 遠からず 松村様には➡ 81 00:06:19,006 --> 00:06:22,343 仕官して頂く事に なっておりますゆえ。 82 00:06:22,343 --> 00:06:25,680 仕官を? ええ。 その暁には➡ 83 00:06:25,680 --> 00:06:29,350 私が鶴之助殿の母となる 約定でございます。 84 00:06:29,350 --> 00:06:32,620 嘘よ! でたらめ言わないで! 85 00:06:32,620 --> 00:06:35,523 (小声で)話を合わせないで どうするんです!➡ 86 00:06:35,523 --> 00:06:37,959 鶴之助殿を連れていかれて よいのですか? 87 00:06:37,959 --> 00:06:40,862 (おぶん)だって…。 2人とも➡ 88 00:06:40,862 --> 00:06:44,562 ちょっと 黙っててくれ。 89 00:06:51,506 --> 00:06:56,206 急な話で 正直 何て言ったらいいか…。 90 00:06:57,979 --> 00:07:06,988 しかしながら おっしゃる事は よく分かっているつもりです。 91 00:07:06,988 --> 00:07:09,688 先生! 松村様…。 92 00:07:20,501 --> 00:07:23,004 あ~ ごっつぉさん。 ああ。 93 00:07:23,004 --> 00:07:25,339 毎度 どうも。 94 00:07:25,339 --> 00:07:28,676 あ~ こら ついてねえや 全く。 よいしょ! 95 00:07:28,676 --> 00:07:30,676 お気を付けて。 96 00:07:32,947 --> 00:07:34,947 (鶴之助の声) 97 00:07:36,617 --> 00:07:38,817 (鶴之助の声) 98 00:07:47,962 --> 00:07:53,634 (道仙)何で 「この子のてて親は 俺だ」と言ってやらなかった? 99 00:07:53,634 --> 00:07:59,634 だってよ 相手は 実のてて親の身内だぜ。 100 00:08:01,976 --> 00:08:08,649 本当は思ってるさ こんな理不尽な話があるかって。 101 00:08:08,649 --> 00:08:16,524 けど 改めて 心の内をのぞいてみりゃ➡ 102 00:08:16,524 --> 00:08:22,663 鶴坊にゃ やっぱり ひとかどの男になってもらいてえ。 103 00:08:22,663 --> 00:08:25,963 そういう てめえが いるんだよ。 104 00:08:27,535 --> 00:08:31,339 そば屋の伜じゃ いけねえのかい? 105 00:08:31,339 --> 00:08:36,039 俺は 今の商売 気に入ってるさ。 けど…。 106 00:08:38,613 --> 00:08:41,515 悩め 悩め。 それでこそ➡ 107 00:08:41,515 --> 00:08:46,815 おめえさんが 本物のてて親に なるって事だ。 え! 108 00:08:50,625 --> 00:08:52,560 (鈴の音) 109 00:08:52,560 --> 00:08:56,964 ♬~ 110 00:08:56,964 --> 00:09:03,964 どうか 先生と鶴坊が いつまでも 一緒にいられますように。 111 00:09:06,641 --> 00:09:08,641 (鈴の音) 112 00:09:18,986 --> 00:09:20,986 (2人)あら! 113 00:09:22,857 --> 00:09:24,857 ありがとうございました。 114 00:09:27,328 --> 00:09:31,599 聞いてますよ 毎日のように 折笠先生のお弟子さんたちを➡ 115 00:09:31,599 --> 00:09:34,936 しごいてるって。 116 00:09:34,936 --> 00:09:38,272 やっぱり 美玖さんには 赤ちゃんのお世話より➡ 117 00:09:38,272 --> 00:09:41,272 やっとうが お似合いなんじゃありませんか? 118 00:09:44,145 --> 00:09:49,617 実を申せば 私自身 ふと そんな気が…。 119 00:09:49,617 --> 00:09:52,954 えっ? 120 00:09:52,954 --> 00:09:58,826 楽しいのですよ 父の生前より 今の方が。 121 00:09:58,826 --> 00:10:02,126 剣術の稽古が。 はあ。 122 00:10:03,965 --> 00:10:09,770 楽しいというか すがすがしいというか。 123 00:10:09,770 --> 00:10:12,974 折笠様のご門弟が 皆➡ 124 00:10:12,974 --> 00:10:16,310 気持ちよく接してくれるからかも しれません。 125 00:10:16,310 --> 00:10:19,310 ご門弟が? 126 00:10:20,982 --> 00:10:25,319 女だからといって 見くびったりしない。 127 00:10:25,319 --> 00:10:31,993 剣の実力を ちゃんと認めて 素直に ぶつかってきてくれる。 128 00:10:31,993 --> 00:10:37,993 女の師範代なんて 父だったら 決して許さなかったのに。 129 00:10:39,667 --> 00:10:43,537 それって折笠先生が偉いのかも。➡ 130 00:10:43,537 --> 00:10:46,540 折笠先生って 何か こう➡ 131 00:10:46,540 --> 00:10:50,011 世の中の決まり事に 流されないっていうか➡ 132 00:10:50,011 --> 00:10:52,913 自分の好きなように 生きてるような…。 133 00:10:52,913 --> 00:10:58,686 おぶん殿 あなたも面白い事を言いますね。 134 00:10:58,686 --> 00:11:03,686 お待たせしました。 すみません お席が狭くて。 135 00:11:11,032 --> 00:11:15,332 すずと申します。 ご用があったら お申しつけ下さいね。 136 00:11:19,373 --> 00:11:22,276 お人形みたい。 137 00:11:22,276 --> 00:11:28,382 見目形のよい娘を集めれば 男連中が寄ってくる。 138 00:11:28,382 --> 00:11:31,285 財布のひもも おのずと緩む。 ふ~ん。 139 00:11:31,285 --> 00:11:34,655 うまい商売を考えたものです。 140 00:11:34,655 --> 00:11:38,192 おとっちゃまのお帰りよ。 お帰りなさい おとっちゃま。 141 00:11:38,192 --> 00:11:43,998 はい 戻りましたよ。 アハハ どうも おいでなさいまし。 142 00:11:43,998 --> 00:11:46,333 どうぞ ごゆるりと。 143 00:11:46,333 --> 00:11:49,236 おすず! はい。 144 00:11:49,236 --> 00:11:51,839 あれが 主のようですね。 145 00:11:51,839 --> 00:11:56,010 (おすず)えっ 猪熊川様が? 146 00:11:56,010 --> 00:11:59,880 せんだってのお店で 今すぐ会いたいそうだ。 147 00:11:59,880 --> 00:12:06,180 大した ご執心じゃないか。 ささ 早く 支度をしなさい。 148 00:12:09,356 --> 00:12:12,259 猪熊川って…。 そうそう ある名とは➡ 149 00:12:12,259 --> 00:12:14,695 思えませんが…。 はい。 150 00:12:14,695 --> 00:12:57,004 ♬~ 151 00:12:57,004 --> 00:13:00,341 何の話でえ。 その茶くみ娘が どうしたって? 152 00:13:00,341 --> 00:13:04,512 あいびきしていたのです。 猪熊川久右衛門様と。 153 00:13:04,512 --> 00:13:07,548 猪熊川ってえと 沖石の姉さんのか? 154 00:13:07,548 --> 00:13:10,017 あの方の ご主人です。 155 00:13:10,017 --> 00:13:13,888 昼日中から 人目につかない 料理茶屋へ呼びつけて➡ 156 00:13:13,888 --> 00:13:17,588 ただならぬ間柄に相違ありません。 157 00:13:19,360 --> 00:13:22,263 これは朗報ですよ 松村様。 158 00:13:22,263 --> 00:13:24,231 朗報? 159 00:13:24,231 --> 00:13:28,536 あの おすずという娘が妾になって 赤子を産めば➡ 160 00:13:28,536 --> 00:13:31,205 鶴之助殿は お役御免。 161 00:13:31,205 --> 00:13:33,705 え!? (せきばらい) 162 00:13:35,176 --> 00:13:37,478 いや…。 163 00:13:37,478 --> 00:13:39,980 ありがとうございました。 164 00:13:39,980 --> 00:13:43,851 ごちそうさま。 毎度 ありがとうございます。 165 00:13:43,851 --> 00:13:46,654 おう 茶 もらおうかな。 166 00:13:46,654 --> 00:13:48,589 いらっしゃいませ。 167 00:13:48,589 --> 00:13:51,525 なあ ひょっとして おめえさんが おすずちゃんかい? 168 00:13:51,525 --> 00:13:53,527 え? あっ いやいや➡ 169 00:13:53,527 --> 00:13:56,330 評判の器量よしと聞いて 拝みに来たんだ。 170 00:13:56,330 --> 00:13:58,999 いや 俺じゃなくて こいつがな。 171 00:13:58,999 --> 00:14:01,902 こう見えて きれいな子には目がねえんだ。 172 00:14:01,902 --> 00:14:06,340 まあ かわいい赤ちゃん。 173 00:14:06,340 --> 00:14:09,243 いきなり妙な事を聞くようだが➡ 174 00:14:09,243 --> 00:14:13,214 こういう所へは いろんな客が来るんだろ? 175 00:14:13,214 --> 00:14:19,887 あ~ 例えばだぞ 例えばだ 旗本なんかも 茶を飲みに? 176 00:14:19,887 --> 00:14:24,358 お旗本が? あ… つまり その 何だ➡ 177 00:14:24,358 --> 00:14:29,697 そういう客に気に入られてだな 別の所で 2人きりで➡ 178 00:14:29,697 --> 00:14:32,967 会ったりする事も…。 (喜助)恐れ入ります。 179 00:14:32,967 --> 00:14:36,837 そういうお相手をお探しなら 別の店に行って頂けませんか? 180 00:14:36,837 --> 00:14:39,473 違う違う 俺は そんなつもりは…。 181 00:14:39,473 --> 00:14:41,976 うちの子は みんな うぶなんです。 182 00:14:41,976 --> 00:14:45,846 おかしな ご詮索は 無用にお願い致します。 183 00:14:45,846 --> 00:14:47,848 (鶴之助の声) 184 00:14:47,848 --> 00:14:51,148 悪気はなかったんだ すまねえな。 185 00:15:00,327 --> 00:15:03,027 お出かけでございますか? 186 00:15:05,199 --> 00:15:09,499 そのお掛け軸 どちらへお持ちに? 187 00:15:11,672 --> 00:15:16,372 茶会だ。 茶会に貸してほしいと 言われてな。 188 00:15:21,682 --> 00:15:24,018 おっ ちょっと すまねえ。 おい! 189 00:15:24,018 --> 00:15:28,318 お待ち下さい! どうか お待ちを。 190 00:15:30,357 --> 00:15:32,960 話してねえって!? 191 00:15:32,960 --> 00:15:36,630 それじゃ 鶴坊の事 ご亭主は まるっきり? 192 00:15:36,630 --> 00:15:40,301 私の一存で お願いにあがりました。 193 00:15:40,301 --> 00:15:42,236 はっ…。 194 00:15:42,236 --> 00:15:46,536 何だって こんな大事な話を 相談もせずに。 195 00:15:48,175 --> 00:15:52,175 殿方には分かりますまい 女の気持ちなど。 196 00:15:56,317 --> 00:16:00,187 赤子を 授かりたくて授かりたくて。 197 00:16:00,187 --> 00:16:04,191 懐妊を信じて 長年 待ち続けてくれる旦那様に➡ 198 00:16:04,191 --> 00:16:07,191 申し訳なくて。 199 00:16:10,331 --> 00:16:15,002 その旦那様が 近頃 妙に そわそわと。 200 00:16:15,002 --> 00:16:19,673 おかしいと思って 家の者に調べさせたら➡ 201 00:16:19,673 --> 00:16:21,973 よそに女が。 202 00:16:24,011 --> 00:16:27,881 相手は まだ子どもじみた 水茶屋の娘。 203 00:16:27,881 --> 00:16:33,821 とはいえ 大層美しいと評判なのだとか。 204 00:16:33,821 --> 00:16:36,957 遊びなら 目をつぶります。 205 00:16:36,957 --> 00:16:41,628 でも 万が一 その娘に赤子ができたら。 206 00:16:41,628 --> 00:16:45,499 そう思うと 生きた心地も…。 207 00:16:45,499 --> 00:16:49,136 まさか それで先手を打つために? 208 00:16:49,136 --> 00:16:51,972 身勝手は 承知の上でございます。 209 00:16:51,972 --> 00:16:56,143 それにしたって まずは 夫婦で 話し合いってもんをだな…。 210 00:16:56,143 --> 00:16:59,980 でも もし 「お前に子ができぬから よそで作るのだ」と➡ 211 00:16:59,980 --> 00:17:05,680 言われでもしたら それこそ 私の 立つ瀬がないではありませんか。 212 00:17:09,656 --> 00:17:11,956 ありがとうございます。 ごちそうさん。 213 00:17:13,527 --> 00:17:16,330 やっかいなもんだな 女心ってのは。 214 00:17:16,330 --> 00:17:19,666 (重助)旦那も形なしだな。 215 00:17:19,666 --> 00:17:24,004 いくら望んだところで できなかったもんはしかたがねえ。 216 00:17:24,004 --> 00:17:26,907 赤ん坊ってのは そういうもんだろう? 217 00:17:26,907 --> 00:17:31,345 (源吉)うん。 (おせい)あんまりね 軽々しく➡ 218 00:17:31,345 --> 00:17:33,781 言ってもらいたくないわね。 おい おせい。 219 00:17:33,781 --> 00:17:36,817 赤ちゃんが できる できないって いうのはね…。 220 00:17:36,817 --> 00:17:41,288 はぁ~ 分かってないのね 女にとって大変な事なんですよ。 221 00:17:41,288 --> 00:17:44,958 相すいやせん 余計な口を…。 ましてね 武家の奥様なんでしょ? 222 00:17:44,958 --> 00:17:46,894 ああ。 武家はさ➡ 223 00:17:46,894 --> 00:17:50,631 跡取りをこさえるために 当たり前みたいな顔してさ➡ 224 00:17:50,631 --> 00:17:53,534 側室やら お妾さんやら 作るんでしょ。 225 00:17:53,534 --> 00:17:59,306 けどね 女は我慢してんですよ。 させられてんです。 226 00:17:59,306 --> 00:18:01,241 うん。 (榎戸)駄目だ! 227 00:18:01,241 --> 00:18:03,644 腹が減り過ぎて もう一歩も歩けない。 228 00:18:03,644 --> 00:18:06,547 おいおい 女将! 飯だってよ。 229 00:18:06,547 --> 00:18:09,347 ハハハ ほらほらほら。 フンッ! 230 00:18:11,518 --> 00:18:16,223 やっぱり 猪熊川様は おすずちゃんと…。 231 00:18:16,223 --> 00:18:18,992 う~ん…。 おすずっていうと➡ 232 00:18:18,992 --> 00:18:21,992 喜助茶屋の茶くみの事か? 233 00:18:23,864 --> 00:18:26,867 知ってるんですか? おすずちゃんの事。 234 00:18:26,867 --> 00:18:29,336 店一番の美形。 235 00:18:29,336 --> 00:18:31,939 私が行くと いつも だんごをまけてくれるんだ。 236 00:18:31,939 --> 00:18:36,276 プッ! 旦那 勘違えもいいとこだ。 237 00:18:36,276 --> 00:18:38,212 勘違い? ああ そりゃ➡ 238 00:18:38,212 --> 00:18:41,615 お役得ってもんですよ。 その羽織を脱いでいったらな➡ 239 00:18:41,615 --> 00:18:43,951 旦那なんか 相手にしてもらえっこ ねえんだからな。 240 00:18:43,951 --> 00:18:47,287 おいら 近頃 やっと 顔を覚えてもらえたんだ。 241 00:18:47,287 --> 00:18:49,623 そんなに評判なのか あの娘。 242 00:18:49,623 --> 00:18:53,961 要は 主の喜助が やり手なんでさあ。 243 00:18:53,961 --> 00:18:57,631 おすずって子に限らず 抱えているのは器量よしばかり。 244 00:18:57,631 --> 00:19:00,133 みんな てめえの大事な娘だと言って➡ 245 00:19:00,133 --> 00:19:02,636 てて親みてえに 振る舞ってるそうで。 246 00:19:02,636 --> 00:19:05,539 しかも どんどん 新しい娘と入れ替えて➡ 247 00:19:05,539 --> 00:19:08,308 客を飽きさせないってんだから。 248 00:19:08,308 --> 00:19:12,646 大事な娘を 次から次から 入れ替えちまうって➡ 249 00:19:12,646 --> 00:19:14,982 そんな てて親 どこにいるんだい! 250 00:19:14,982 --> 00:19:17,982 (榎戸)言われてみれば 確かに。 251 00:19:19,853 --> 00:19:22,553 お待たせ致しました。 252 00:19:29,329 --> 00:19:32,029 喜助は留守なのだな? 253 00:19:37,604 --> 00:19:41,475 その金を持って 逃げなさい。 254 00:19:41,475 --> 00:19:45,946 某が木戸まで送っていくゆえ 今すぐにでも…。 255 00:19:45,946 --> 00:19:48,615 困りますね 旦那! 256 00:19:48,615 --> 00:19:53,487 おすずに会いたいのなら 私を通して頂かないと。 257 00:19:53,487 --> 00:19:58,792 この金は 今日の分として 頂戴しておきますよ。 258 00:19:58,792 --> 00:20:01,461 それは おすずのために…。 259 00:20:01,461 --> 00:20:05,966 ハハハハハ 二本差しなんぞ 怖くも何ともありゃしない。 260 00:20:05,966 --> 00:20:09,836 この世に 金よりも強いものが ございますか? 261 00:20:09,836 --> 00:20:11,836 おい! おら! 262 00:20:15,309 --> 00:20:17,244 おら! 263 00:20:17,244 --> 00:20:19,944 やめて おとっちゃま! やめなさい! 264 00:20:22,182 --> 00:20:24,482 寄ってたかって何事です! 265 00:20:26,320 --> 00:20:28,255 あ~っ! 266 00:20:28,255 --> 00:20:30,190 てめえ…! 267 00:20:30,190 --> 00:20:32,490 (喜助)行くぞ 蔵に入れておけ! へい! 268 00:20:37,331 --> 00:20:39,666 おすず! 269 00:20:39,666 --> 00:20:43,003 猪熊川久右衛門様ですね? え? 270 00:20:43,003 --> 00:20:47,303 あなた様は あの娘を 金子で あがなっていたのですか? 271 00:20:50,344 --> 00:20:55,344 くわがた~! 玉虫! 272 00:20:57,217 --> 00:21:01,688 ≪くわがた~! 玉虫! 273 00:21:01,688 --> 00:21:05,559 表向きは 優しい父親面をしてみせて➡ 274 00:21:05,559 --> 00:21:09,029 裏じゃ 娘たちに身売りを強いる。 275 00:21:09,029 --> 00:21:11,932 よもや そのような店だったとは。 276 00:21:11,932 --> 00:21:15,902 おしろい臭くねえ おぼこらしいのばかり➡ 277 00:21:15,902 --> 00:21:20,641 集めてたんだろう。 その上で これと思った客に➡ 278 00:21:20,641 --> 00:21:23,577 喜助の方から話を持ちかけてか。 279 00:21:23,577 --> 00:21:28,048 評判の茶くみ娘を こっそり抱けるとなりゃ➡ 280 00:21:28,048 --> 00:21:33,654 助平どもが飛びつくわな。 281 00:21:33,654 --> 00:21:37,991 あっ 違う… 拙者は決して そういうつもりでは…。 282 00:21:37,991 --> 00:21:41,662 ならば どういうおつもりで? 283 00:21:41,662 --> 00:21:45,999 母親を知っているのです。 284 00:21:45,999 --> 00:21:48,335 おはつといって➡ 285 00:21:48,335 --> 00:21:54,207 某が若かりし時 初めて思いを寄せた女でござった。 286 00:21:54,207 --> 00:21:58,011 (せきこみ) 287 00:21:58,011 --> 00:21:59,946 はい お水。 288 00:21:59,946 --> 00:22:02,246 かたじけない。 289 00:22:05,352 --> 00:22:07,652 (せきこみ) 290 00:22:13,694 --> 00:22:15,694 (悲鳴) 291 00:22:24,037 --> 00:22:26,873 (久右衛門) いとしく思っていたものの➡ 292 00:22:26,873 --> 00:22:29,910 さすがに一緒になる訳には。 293 00:22:29,910 --> 00:22:38,210 おはつも そんな気持ちを察してか 某の前から いつの間にか姿を。 294 00:22:41,321 --> 00:22:43,256 お待ち遠さまです。 295 00:22:43,256 --> 00:22:45,826 (久右衛門) 喜助の店で おすずを見た時は➡ 296 00:22:45,826 --> 00:22:51,998 目を疑った。 おはつの面ざしが そのまま生き写しだった。 297 00:22:51,998 --> 00:22:55,669 お待ち遠さまでした。 298 00:22:55,669 --> 00:22:58,572 おはつ…。 299 00:22:58,572 --> 00:23:02,872 お侍様 どうして おっかさんの名を? 300 00:23:05,011 --> 00:23:08,348 (久右衛門)おはつは 遠州の在所で おすずを産み➡ 301 00:23:08,348 --> 00:23:12,686 3年ほど前に亡くなったと 聞き申した。 302 00:23:12,686 --> 00:23:16,386 それで おすずは江戸に? 303 00:23:18,024 --> 00:23:21,724 喜助に声をかけられて 茶屋勤めを始めたと。 304 00:23:23,897 --> 00:23:29,035 その喜助が ある日…。 305 00:23:29,035 --> 00:23:32,735 誰の手あかもついてない まっさらな初物でございますよ。 306 00:23:34,641 --> 00:23:36,576 まさか…。 307 00:23:36,576 --> 00:23:39,312 おすずも 旦那を気に入ってるようで。 308 00:23:39,312 --> 00:23:43,612 ほかに渡すのは惜しいと お思いになりませんか? 309 00:23:46,987 --> 00:23:50,857 (久右衛門)それを聞いて あの子が ふびんで…。➡ 310 00:23:50,857 --> 00:23:55,157 ただもう なんとかしてやりたい一心で。 311 00:23:57,998 --> 00:23:59,998 (ふすまが開く音) 312 00:24:05,672 --> 00:24:11,545 ごちそうを頼んだから おなかいっぱい食べてお行き。 313 00:24:11,545 --> 00:24:15,245 眠くなったら しばらく眠って それから帰ればよい。 314 00:24:17,017 --> 00:24:20,353 本当に それだけで? 315 00:24:20,353 --> 00:24:22,353 うん。 316 00:24:29,362 --> 00:24:34,062 怖かったろう? ここへ来るまで。 317 00:24:37,170 --> 00:24:44,311 死んだ おっかさんが 言ってたんです。 318 00:24:44,311 --> 00:24:52,011 私のおとっつぁんは お侍だって。 319 00:24:53,653 --> 00:24:55,989 え? 320 00:24:55,989 --> 00:25:00,861 猪熊川様と初めて会った時➡ 321 00:25:00,861 --> 00:25:04,331 こんな お方が➡ 322 00:25:04,331 --> 00:25:08,331 おとっつぁんだったら いいなって…。 323 00:25:10,003 --> 00:25:12,303 おすず…。 324 00:25:13,874 --> 00:25:17,874 まさか おすずは 本当に あんたの? 325 00:25:19,679 --> 00:25:23,550 おはつの肌には触れておりませぬ。 326 00:25:23,550 --> 00:25:26,353 知っているのは➡ 327 00:25:26,353 --> 00:25:32,053 あの時の あの手のひらの 温かな ぬくもりだけ。 328 00:25:35,629 --> 00:25:40,329 じゃあ なぜ おはつさんは 父親が侍だなどと。 329 00:25:42,969 --> 00:25:45,305 そうであったらよかったと➡ 330 00:25:45,305 --> 00:25:47,974 思っていてくれたのでは ないでしょうか。 331 00:25:47,974 --> 00:25:53,847 某が おはつとの懐かしい日々を 大切に思うように➡ 332 00:25:53,847 --> 00:25:57,317 おはつも また…。 333 00:25:57,317 --> 00:26:02,989 その娘 遠からず 今度こそ➡ 334 00:26:02,989 --> 00:26:08,662 花を散らされてしまうんだろうな。 335 00:26:08,662 --> 00:26:11,362 かわいそうに。 336 00:26:17,337 --> 00:26:19,272 (ため息) 337 00:26:19,272 --> 00:26:21,675 おとっちゃまが悪かった。 338 00:26:21,675 --> 00:26:25,011 今度こそ これぞというお客を 見つけてくるから➡ 339 00:26:25,011 --> 00:26:30,711 いい子にして待っておいで。 え? ハハハハハ。 340 00:26:34,821 --> 00:26:39,960 [ 回想 ] (道仙)その娘 遠からず 今度こそ➡ 341 00:26:39,960 --> 00:26:47,260 花を散らされてしまうんだろうな。 かわいそうに。 342 00:26:51,304 --> 00:26:54,604 お話し致したい事がございます。 343 00:26:57,177 --> 00:26:59,646 旦那様? 344 00:26:59,646 --> 00:27:05,318 ♬~ 345 00:27:05,318 --> 00:27:09,990 岡場所に? 喜助茶屋から 流れてきたって女がいたんです。 346 00:27:09,990 --> 00:27:12,892 それも 1人や2人じゃありません。 347 00:27:12,892 --> 00:27:16,863 (源吉)客のつかねえ娘はもちろん 少しでも飽きて目移りしたら➡ 348 00:27:16,863 --> 00:27:21,001 すぐに岡場所へ。 それが 喜助のやり方だったんでさあ。 349 00:27:21,001 --> 00:27:23,903 しかも 皆 幼い頃に 拐かされて➡ 350 00:27:23,903 --> 00:27:26,673 無理やり 江戸に連れてこられたと。 351 00:27:26,673 --> 00:27:29,342 きれいなべべ着て 茶を運ぶだけ。 352 00:27:29,342 --> 00:27:31,945 娘たちは そんなふうに言いくるめられて➡ 353 00:27:31,945 --> 00:27:34,280 喜助の言いなりに。 354 00:27:34,280 --> 00:27:48,795 ♬~ 355 00:27:48,795 --> 00:27:51,995 (扉が開く音) 356 00:27:55,668 --> 00:27:58,468 (久右衛門)おすず! 357 00:28:01,508 --> 00:28:06,980 ああ… こんな ひどい目に。 358 00:28:06,980 --> 00:28:18,591 ♬~ 359 00:28:18,591 --> 00:28:21,327 ≪(喜助)おすずが逃げた! 捕まえておくれ! 360 00:28:21,327 --> 00:28:24,664 ♬~ 361 00:28:24,664 --> 00:28:27,000 (喜助)あっちだ! 362 00:28:27,000 --> 00:28:35,275 ♬~ 363 00:28:35,275 --> 00:28:37,610 待て おら! おすず! 364 00:28:37,610 --> 00:28:39,610 おすず! 365 00:28:42,482 --> 00:28:46,619 やめろ! おすず! 366 00:28:46,619 --> 00:28:50,290 また お仕置きをしないと いけないね。 367 00:28:50,290 --> 00:28:56,590 いい子だ さあ おとっちゃまのところに おいで。 368 00:29:01,634 --> 00:29:03,570 ちょっと… おすず! 369 00:29:03,570 --> 00:29:05,505 ≪おすずちゃん! 370 00:29:05,505 --> 00:29:07,507 行っちゃならねえ! 371 00:29:07,507 --> 00:29:52,807 ♬~ 372 00:29:56,623 --> 00:29:59,959 てめえのどこが てて親なんだ。 373 00:29:59,959 --> 00:30:04,297 年端もいかねえ娘たちを 拐かしやがった人でなしが! 374 00:30:04,297 --> 00:30:07,967 放り出されりゃ 表は地獄だとでも 言ったのか。 375 00:30:07,967 --> 00:30:10,303 おまんまも食えねえ。 376 00:30:10,303 --> 00:30:13,206 一人じゃ 生きていく事さえ できやしねえ。 377 00:30:13,206 --> 00:30:17,206 幼え心に そう埋め込みやがったのか。 378 00:30:19,979 --> 00:30:23,850 そうなりゃ てめえは この世の神様 仏様だ。 379 00:30:23,850 --> 00:30:26,653 笑えと言われりゃ笑い➡ 380 00:30:26,653 --> 00:30:30,353 親孝行だと言われりゃ 身だって ひさぐ。 381 00:30:31,991 --> 00:30:37,330 確かに ほかの娘たちには 気の毒な事をしたかもしれません。 382 00:30:37,330 --> 00:30:42,202 でも おすずは 別でございます。 383 00:30:42,202 --> 00:30:46,005 別? 血を分けた娘を どう扱おうと➡ 384 00:30:46,005 --> 00:30:50,677 人様に口出しされる筋合いは ありますまい。 385 00:30:50,677 --> 00:30:53,012 何だって? 386 00:30:53,012 --> 00:30:56,349 血を分けた娘…? 387 00:30:56,349 --> 00:31:00,687 かわいい子だったんですよ この子の母親も。 388 00:31:00,687 --> 00:31:05,024 それが 事もあろうに お侍を好きになって。 389 00:31:05,024 --> 00:31:08,361 思っても 一緒になれる相手じゃない。 390 00:31:08,361 --> 00:31:10,863 そんな事 分かってたろうに➡ 391 00:31:10,863 --> 00:31:13,199 なかなか こっちに なびかないものだから➡ 392 00:31:13,199 --> 00:31:15,702 腹が立ってきましてね。 393 00:31:15,702 --> 00:31:19,402 まさか おはつを手込めに…。 394 00:31:24,043 --> 00:31:28,214 それから間もなく 私は江戸に限らず➡ 395 00:31:28,214 --> 00:31:31,651 器量のいい娘を 探し歩くようになった。 396 00:31:31,651 --> 00:31:34,554 それで噂を耳にしたんです。 397 00:31:34,554 --> 00:31:39,525 在所に戻ってきた おはつが 娘を産んだ事を。 398 00:31:39,525 --> 00:31:44,525 おすず お前は その事を この男から? 399 00:31:48,201 --> 00:31:54,874 おっかさんが死んだあと この人が来て➡ 400 00:31:54,874 --> 00:31:58,678 おとっつぁんだって…。➡ 401 00:31:58,678 --> 00:32:04,017 信じたくなかった。 だから せめて 心の中では➡ 402 00:32:04,017 --> 00:32:09,017 おっかさんの言ってた事が 本当だって思う事に。 403 00:32:12,692 --> 00:32:19,032 おっかさんは 優しいお侍を好きになって➡ 404 00:32:19,032 --> 00:32:25,032 私を産んだ。 そう思っていようって。 405 00:32:29,676 --> 00:32:35,315 よくも… よくも おすずを おもちゃのように。 406 00:32:35,315 --> 00:32:39,185 子は親のもの。 実の娘を 親の私が どうしようと➡ 407 00:32:39,185 --> 00:32:41,485 勝手でござんしょ。 408 00:32:47,894 --> 00:32:50,663 てめえなんか親じゃねえ。 409 00:32:50,663 --> 00:32:52,963 ああっ…。 410 00:32:56,002 --> 00:32:58,002 うう…。 411 00:33:01,674 --> 00:33:05,345 親ってのは➡ 412 00:33:05,345 --> 00:33:10,045 己の身を捨てても 子どもを守るもんじゃねえのか。 413 00:33:12,018 --> 00:33:15,355 子どもをどうしようが 親の勝手だと? 414 00:33:15,355 --> 00:33:19,025 冗談じゃねえ。 415 00:33:19,025 --> 00:33:23,696 確かに その命は てめえの血を 分けたもんかもしれねえ。 416 00:33:23,696 --> 00:33:33,506 だがよ その命ある事を 心から喜んで➡ 417 00:33:33,506 --> 00:33:41,647 その子の幸せを何よりも望んで➡ 418 00:33:41,647 --> 00:33:47,347 心尽くして生きるのが 親ってもんじゃねえのかい。 419 00:33:49,989 --> 00:33:55,661 てめえなんか 親じゃねえ。 420 00:33:55,661 --> 00:34:01,000 ♬~ 421 00:34:01,000 --> 00:34:03,903 ≪(笛の音) 422 00:34:03,903 --> 00:34:05,872 御用だ! 御用だ 御用だ! 423 00:34:05,872 --> 00:34:09,872 北町奉行所だ! 一同 神妙に致せ! 424 00:34:13,012 --> 00:34:17,350 茶屋の主 喜助 長年にわたる拐かしのかどで➡ 425 00:34:17,350 --> 00:34:20,253 お縄に致す! 源吉。 へい! 426 00:34:20,253 --> 00:34:41,953 ♬~ 427 00:34:46,512 --> 00:34:49,649 お前も ほかの娘たちも➡ 428 00:34:49,649 --> 00:34:53,319 在所に戻るなり 働き口を見つけるなり➡ 429 00:34:53,319 --> 00:34:59,019 いずれも よきように取り計らう。 さあ 参ろうか。 430 00:35:07,867 --> 00:35:11,867 待ってくれ。 それには及ばん。 431 00:35:15,007 --> 00:35:19,707 おすずは 私の娘だ。 432 00:35:22,882 --> 00:35:28,882 おはつは そう思って おすずを育てた。 433 00:35:31,023 --> 00:35:35,294 この子は 今日から➡ 434 00:35:35,294 --> 00:35:38,631 いや…。 435 00:35:38,631 --> 00:35:42,969 この子は 生まれた時から ず~っと➡ 436 00:35:42,969 --> 00:35:45,669 私の娘だった。 437 00:35:48,641 --> 00:35:50,941 旦那さん…。 438 00:35:53,312 --> 00:35:55,312 おすず。 439 00:36:02,321 --> 00:36:07,660 頼む! 貴殿の口から 家内に口添えしてくれ。 440 00:36:07,660 --> 00:36:09,996 う~ん…。 441 00:36:09,996 --> 00:36:11,931 ひっ…。 442 00:36:11,931 --> 00:36:17,336 あら 松村様も ご一緒でしたか。 はい! 443 00:36:17,336 --> 00:36:20,636 すぐ そこで ばったり出くわしまして。 444 00:36:25,211 --> 00:36:29,916 実は 鶴坊の事なんですが…。 445 00:36:29,916 --> 00:36:32,716 そうじゃなくて おすず…。 (せきばらい) 446 00:36:35,288 --> 00:36:37,988 やっぱり…。 447 00:36:39,625 --> 00:36:43,963 俺は 鶴坊のてて親なんです。 448 00:36:43,963 --> 00:36:49,302 沖石の思いも ひっくるめて➡ 449 00:36:49,302 --> 00:36:53,172 たった一人で残された鶴坊を 一番大事に思ってるのは➡ 450 00:36:53,172 --> 00:36:55,641 この俺だ。 451 00:36:55,641 --> 00:36:59,812 そりゃ 血のつながりから考えりゃ おかしな事 言ってるのは➡ 452 00:36:59,812 --> 00:37:03,316 じゅうじゅう承知です。 それに➡ 453 00:37:03,316 --> 00:37:08,654 さきざきの事も 心尽くして また 考えてやらなきゃならねえが➡ 454 00:37:08,654 --> 00:37:11,991 だけど 今は➡ 455 00:37:11,991 --> 00:37:15,661 俺が 鶴坊のそばを 離れちゃいけねえと➡ 456 00:37:15,661 --> 00:37:19,532 改めて その事を よ~く分かったんです。 457 00:37:19,532 --> 00:37:25,832 どうか 今回の養子の件は なかった事にしてくれませんか。 458 00:37:30,209 --> 00:37:32,945 分かりました。 459 00:37:32,945 --> 00:37:35,281 それじゃ…。 460 00:37:35,281 --> 00:37:42,581 弟も あなたなればこそ 鶴之助殿を託したのでしょうね。 461 00:37:45,291 --> 00:37:47,226 あっ そのかわり➡ 462 00:37:47,226 --> 00:37:50,630 うちでは おすずを 正式に養女として迎え…。 463 00:37:50,630 --> 00:37:54,500 代わりとは何ですか 代わりとは。 464 00:37:54,500 --> 00:37:57,970 鶴之助殿を思う松村様と 同じ気持ちで➡ 465 00:37:57,970 --> 00:38:01,841 あなたは おすずの父親に なったのでございましょ? 466 00:38:01,841 --> 00:38:03,843 えっ? 467 00:38:03,843 --> 00:38:07,313 あなたが父親であるのなら➡ 468 00:38:07,313 --> 00:38:10,983 私が母親にならずして どうするのです? 469 00:38:10,983 --> 00:38:13,886 それじゃ お前…。 だからこそ➡ 470 00:38:13,886 --> 00:38:16,856 お茶に お花に なぎなたに➡ 471 00:38:16,856 --> 00:38:22,595 武家としての心得を教えるために こんなものを引っ張り出して。 472 00:38:22,595 --> 00:38:24,997 そ… そうだったのか。 473 00:38:24,997 --> 00:38:36,609 ♬~ 474 00:38:36,609 --> 00:38:40,309 ハハハハ 見違えたよ おすずちゃん。 475 00:38:42,948 --> 00:38:49,822 うん 猪熊川家の娘として どこへ出しても恥ずかしくない。 476 00:38:49,822 --> 00:38:53,592 な! 本当に。 477 00:38:53,592 --> 00:38:56,495 もったいない。 私は➡ 478 00:38:56,495 --> 00:39:00,299 旦那様と奥様の お世話をさせて頂ければ➡ 479 00:39:00,299 --> 00:39:02,234 それだけで。 480 00:39:02,234 --> 00:39:08,174 な~に おめえさんは 遣わされたんだよ。 この家に。 481 00:39:08,174 --> 00:39:14,474 出会うべくして 父上と母上に巡り合ったんだ。 482 00:39:16,849 --> 00:39:21,149 お父様 お母様。 483 00:39:26,525 --> 00:39:30,162 鶴之助殿にも母御がいれば➡ 484 00:39:30,162 --> 00:39:32,662 なお よいでしょうに。 485 00:39:34,133 --> 00:39:40,133 子があって 父と母がそろって 互いの顔を見交わし合う。 486 00:39:42,608 --> 00:39:48,481 まことに… よいものだぞ 松村殿。 487 00:39:48,481 --> 00:40:04,181 ♬~ 488 00:40:07,299 --> 00:40:09,635 (鶴之助の声) 489 00:40:09,635 --> 00:40:11,635 どこ行くの? 鶴坊。 490 00:40:15,975 --> 00:40:17,975 (せきばらい) 491 00:40:22,648 --> 00:40:24,948 美玖さん。 はい。 492 00:40:26,519 --> 00:40:33,292 いつか 鶴坊の母親になりてえと 言ってくれた気持ち➡ 493 00:40:33,292 --> 00:40:36,195 今も変わりはねえかい? 494 00:40:36,195 --> 00:40:39,198 は? 495 00:40:39,198 --> 00:40:41,498 いや 何…。 496 00:40:43,936 --> 00:40:51,677 男親には男親の 女親には女親の➡ 497 00:40:51,677 --> 00:40:55,677 よさってもんが あるのかなって。 498 00:40:58,017 --> 00:41:03,717 それじゃ 松村様は 私と? 499 00:41:07,693 --> 00:41:10,029 考えてみてくれ。 500 00:41:10,029 --> 00:41:12,698 おい 鶴坊。 よし。 501 00:41:12,698 --> 00:41:24,998 ♬~ 502 00:41:26,712 --> 00:41:29,048 何だい お前さんたちは! 誰か 助けて! 503 00:41:29,048 --> 00:41:30,983 黙れ! 泥棒? 504 00:41:30,983 --> 00:41:34,320 男は3人 そろって 二十歳か そこいらだったんだな? 505 00:41:34,320 --> 00:41:37,156 私と 所帯を持ちたいと。 506 00:41:37,156 --> 00:41:39,992 美玖殿を幸せにしてやってくれ。 507 00:41:39,992 --> 00:41:43,329 助けてやるって。 きっと おいらが迎えに行くって。 508 00:41:43,329 --> 00:41:46,665 幼なじみか。 鉄ちゃん。 509 00:41:46,665 --> 00:41:49,568 頼むから お奉行所へ行かせてくれ! 510 00:41:49,568 --> 00:41:54,540 こいつの命はねえぞ。 鉄平は必ず約束を守る。 511 00:41:54,540 --> 00:41:56,675 心配ねえぞ。 512 00:41:56,675 --> 00:42:52,665 ♬~ 513 00:42:52,665 --> 00:43:11,684 ♬~ 514 00:43:11,684 --> 00:43:15,354 ♬~ 515 00:43:15,354 --> 00:43:28,654 ♬~