1 00:01:11,595 --> 00:01:13,597 (加倉井隼人) 上野が 燃えてしもうた… 2 00:01:13,597 --> 00:01:17,601 <上野戦争は 新政府軍の圧勝に終わった> 3 00:01:17,601 --> 00:01:21,605 (勝)あまりにも非道じゃねぇか! (大村)道義を違えたなどとは➡ 4 00:01:21,605 --> 00:01:25,609 ひとっつも思っちょりゃあせん 説得の一つもできんのかね! 5 00:01:25,609 --> 00:01:27,611 ふむ… 6 00:01:27,611 --> 00:01:32,616 (六兵衛の妻) 主人の勤めは 主人の勤め 7 00:01:32,616 --> 00:01:34,618 (加倉井しずゑ) たとえ 戻らずに死んでも➡ 8 00:01:34,618 --> 00:01:40,624 かまわぬとおっしゃいますか? (六兵衛の妻)それが宿命なれば 9 00:01:40,624 --> 00:01:43,627 <六兵衛の正体についても 重要な証言が> 10 00:01:43,627 --> 00:01:47,631 (淀屋)五千両でいかが? 11 00:01:47,631 --> 00:01:49,633 (勝)土用のうなぎも 食いそびれたからな 12 00:01:49,633 --> 00:01:52,636 <一方 半年間 握り飯のみだった六兵衛は➡ 13 00:01:52,636 --> 00:01:56,640 加倉井の情にほだされ うなぎを食らうが➡ 14 00:01:56,640 --> 00:01:59,643 直後に なんと 将軍の御座所である➡ 15 00:01:59,643 --> 00:02:02,646 黒書院に入ってしまう> 16 00:02:02,646 --> 00:02:06,650 ♬~ 17 00:02:06,650 --> 00:02:10,654 <しかし その夜 六兵衛に異変が> 18 00:02:10,654 --> 00:02:14,591 <うなぎが原因で 重篤な状態となる> 19 00:02:14,591 --> 00:02:20,591 <かたくなに 薬を拒む六兵衛 果たして その命運は…> 20 00:02:22,599 --> 00:02:27,599 (長太郎)ハァ ハァ ハァ… 21 00:02:32,609 --> 00:02:35,612 長太郎… 22 00:02:35,612 --> 00:02:38,615 長太郎 23 00:02:38,615 --> 00:02:43,615 長太郎 ハァ ハァ… 長太郎 24 00:02:46,623 --> 00:02:51,628 ハァ ハァ ハァ… 25 00:02:51,628 --> 00:03:01,638 ♬~ 26 00:03:01,638 --> 00:03:05,642 ハァ ハァ ハァ ハァ… 27 00:03:05,642 --> 00:03:07,642 長太郎 28 00:03:12,582 --> 00:03:15,585 ≪(足音) ≪(小源太)お頭! 29 00:03:15,585 --> 00:03:18,588 六兵衛が倒れたと聞いたでござる 30 00:03:18,588 --> 00:03:20,590 (的矢六兵衛)⦅ンン…⦆ ⦅アッ…⦆ 31 00:03:20,590 --> 00:03:22,592 ⦅六兵衛~!⦆ 32 00:03:22,592 --> 00:03:24,592 ⦅ンンッ!⦆ 33 00:03:26,596 --> 00:03:30,600 わしを払いのけて 厠へ行きおった 34 00:03:30,600 --> 00:03:34,604 万が一 これで 六兵衛が死んだとあらば➡ 35 00:03:34,604 --> 00:03:38,604 わしが 毒を盛ったようなもの… 36 00:03:40,610 --> 00:03:43,610 責任を取らねばならぬ 37 00:03:47,617 --> 00:03:51,621 (町医者)薬が効いたようです もう大丈夫でしょう 38 00:03:51,621 --> 00:03:56,626 夜分 本当に ありがとうございました 39 00:03:56,626 --> 00:03:59,626 さあ 帰りましょうね 40 00:04:07,637 --> 00:04:12,576 お一人で帰られるのですか? 41 00:04:12,576 --> 00:04:16,580 主人は 勤めに出ておりますゆえ アァ… 42 00:04:16,580 --> 00:04:18,580 ありがとうございました うむ 43 00:04:31,595 --> 00:04:33,597 ンンッ… おい 44 00:04:33,597 --> 00:04:38,602 ♬~ 45 00:04:38,602 --> 00:04:40,604 アアッ 46 00:04:40,604 --> 00:04:43,607 ♬~ 47 00:04:43,607 --> 00:04:47,611 (小源太)なぜ のまん!? (福地)いいかげんにしたまえ! 48 00:04:47,611 --> 00:04:50,614 死んでしまうぞ 六兵衛! 49 00:04:50,614 --> 00:05:09,633 ♬~ 50 00:05:09,633 --> 00:05:17,433 ♬~ 51 00:05:20,577 --> 00:05:23,580 (天璋院) 眠れないのでございますか? 52 00:05:23,580 --> 00:05:28,585 (家達)お江戸も しまいなのかと思いましたら… 53 00:05:28,585 --> 00:05:31,588 上様… 54 00:05:31,588 --> 00:05:36,593 お城を出たあとも 皆々は変わらず➡ 55 00:05:36,593 --> 00:05:40,597 予を敬い 尽くしてくれました 56 00:05:40,597 --> 00:05:44,601 それは 開城してから数か月 上様が 立派に➡ 57 00:05:44,601 --> 00:05:47,604 お勤めあそばされたからに ございましょう 58 00:05:47,604 --> 00:05:52,609 父上も喜んでくださるでしょうか 59 00:05:52,609 --> 00:05:55,612 <僅か御年6歳にて➡ 60 00:05:55,612 --> 00:05:59,616 徳川宗家 十六代に祭り上げられた家達> 61 00:05:59,616 --> 00:06:04,621 <この幼君には 実父と養父 二人の父がいた> 62 00:06:04,621 --> 00:06:09,626 ♬~ 63 00:06:09,626 --> 00:06:13,563 <家達が 十六代目を 相続するにあたり➡ 64 00:06:13,563 --> 00:06:15,565 養子に入ったことで➡ 65 00:06:15,565 --> 00:06:19,569 実父の田安候は 家達の臣下となり➡ 66 00:06:19,569 --> 00:06:22,572 養父とされる 前の将軍家は➡ 67 00:06:22,572 --> 00:06:25,575 駿府に移り 謹慎となった> 68 00:06:25,575 --> 00:06:28,578 <つまり 家達にとって 二人の父は➡ 69 00:06:28,578 --> 00:06:32,582 いまや 亡きも同然である> 70 00:06:32,582 --> 00:06:36,586 夜分に畏れ入りまする 71 00:06:36,586 --> 00:06:39,586 天璋院様 お城で ちと… 72 00:06:53,603 --> 00:06:58,608 (本多)的矢殿は天罰でござろう 73 00:06:58,608 --> 00:07:01,611 黒書院を汚してはならん 74 00:07:01,611 --> 00:07:03,613 引きずり出しましょうぞ! 75 00:07:03,613 --> 00:07:06,616 (幕臣たち) 引きずり出せ 引きずり出せ! 76 00:07:06,616 --> 00:07:09,619 (勝)静かにしろい! 77 00:07:09,619 --> 00:07:14,558 力ずくはならんと 西郷さんと 約束したと言ったろう! 78 00:07:14,558 --> 00:07:16,560 (幕臣) 西郷殿の申しつけがなんじゃ! 79 00:07:16,560 --> 00:07:19,563 政も返上し お城も江戸も明け渡したうえ➡ 80 00:07:19,563 --> 00:07:21,565 こうまで へつらわねばならんのか! 81 00:07:21,565 --> 00:07:23,567 (幕臣)しかし 六兵衛の意思というのもあろう! 82 00:07:23,567 --> 00:07:25,569 (幕臣)そうじゃ 今 追い出すというのは➡ 83 00:07:25,569 --> 00:07:27,571 あまりにも非情ではないか! (幕臣)何を言うておる! 84 00:07:27,571 --> 00:07:30,574 あやつが何者かは知らぬが 将軍様の御座所を➡ 85 00:07:30,574 --> 00:07:32,576 これ以上 汚させるわけにはいかぬ! 86 00:07:32,576 --> 00:07:35,579 (幕臣)戦じゃ! (幕臣)そうじゃ 戦じゃ! 87 00:07:35,579 --> 00:07:40,584 (騒ぎ声) 88 00:07:40,584 --> 00:07:42,586 (勝)バカ者! 89 00:07:42,586 --> 00:07:45,589 (天璋院)一同 お静まりなされよ! 90 00:07:45,589 --> 00:07:48,592 (本多)天璋院様! 91 00:07:48,592 --> 00:07:51,595 何故 こちらに? 92 00:07:51,595 --> 00:07:56,595 (天璋院)六兵衛が 生死の境にいると伺いました 93 00:08:01,605 --> 00:08:05,609 (天璋院)体の具合を これ幸いと引きずり出すのは➡ 94 00:08:05,609 --> 00:08:07,609 卑怯です 95 00:08:09,613 --> 00:08:14,551 (勝)まあ どちらにしろ なんとかせんと死んでしまう 96 00:08:14,551 --> 00:08:16,553 誰か いい策はないか? 97 00:08:16,553 --> 00:08:20,557 (一同)ンン… (官軍将校)ひとつ ここは➡ 98 00:08:20,557 --> 00:08:22,559 徳川宗家をお継ぎになられた➡ 99 00:08:22,559 --> 00:08:27,564 家達公の心積もりを 聞きんしゃったらどうじゃろうか 100 00:08:27,564 --> 00:08:32,569 家達公にとって 六兵衛は 家来にあたるはずじゃけぇ 101 00:08:32,569 --> 00:08:36,573 上様に そこ退けと 下知させるおつもりか? 102 00:08:36,573 --> 00:08:39,573 (官軍将校)グッ… ハァー 103 00:08:42,579 --> 00:08:46,583 どうすればいいんじゃ? 104 00:08:46,583 --> 00:08:50,587 (天璋院)上様 (一同)オッ… 105 00:08:50,587 --> 00:08:52,589 (天璋院) 屋敷でお待ちいただくよう➡ 106 00:08:52,589 --> 00:08:55,592 申し上げたはずです 107 00:08:55,592 --> 00:08:57,592 (家達)戦はなりません 108 00:08:59,596 --> 00:09:03,600 的矢には しかと申しつくるゆえ 109 00:09:03,600 --> 00:09:07,600 ♬~ 110 00:09:10,607 --> 00:09:13,543 上様 しばらく! 誰か? 111 00:09:13,543 --> 00:09:17,547 尾張家中 加倉井隼人と申しまする 112 00:09:17,547 --> 00:09:22,552 それがしの不行き届きにより かくなる次第と相成りました 113 00:09:22,552 --> 00:09:28,558 上様におかせられましては お関わりなさりませぬよう 114 00:09:28,558 --> 00:09:34,564 なれど このままでは 戦になってしまう 115 00:09:34,564 --> 00:09:37,567 もし 江戸が➡ 116 00:09:37,567 --> 00:09:40,567 上野のお山みたいに 焼けてしまったら➡ 117 00:09:42,572 --> 00:09:46,576 権現様に申し訳ないもの 118 00:09:46,576 --> 00:10:06,596 ♬~ 119 00:10:06,596 --> 00:10:09,599 ♬~ 120 00:10:09,599 --> 00:10:11,499 (配下たち)アッ… 121 00:10:22,545 --> 00:10:26,549 上様 あちらが 将軍家の御座所にござりまする 122 00:10:26,549 --> 00:10:28,551 お運びくださりませ 123 00:10:28,551 --> 00:10:32,555 もはや 将軍家のものではない 124 00:10:32,555 --> 00:10:36,559 あれなるは 天朝様の玉座ゆえ➡ 125 00:10:36,559 --> 00:10:39,559 座ってはならぬ 126 00:10:50,573 --> 00:10:55,573 (家達)苦しゅうない 面を上げよ 127 00:11:01,584 --> 00:11:05,584 お前に 子はあるのかな? 128 00:11:10,593 --> 00:11:15,593 ねえ 答えてよ 的矢に 子はあるの? 129 00:11:18,601 --> 00:11:21,604 ウウッ… ウッ… 130 00:11:21,604 --> 00:11:24,604 ウゥ… 131 00:11:31,614 --> 00:11:35,618 ウゥ… 分かった 132 00:11:35,618 --> 00:11:38,621 だったら お薬をのんでよ 133 00:11:38,621 --> 00:11:43,621 お前が死んでしまったら 子が かわいそうだよ 134 00:11:45,628 --> 00:11:49,632 ♬~ 135 00:11:49,632 --> 00:11:52,635 (家達) ててなし子は かわいそうだよ 136 00:11:52,635 --> 00:11:54,637 だから 死なないで 137 00:11:54,637 --> 00:12:06,649 ♬~ 138 00:12:06,649 --> 00:12:09,652 上様のおっしゃるとおりじゃ! 139 00:12:09,652 --> 00:12:13,590 お主には 妻と子供がおるであろう! 140 00:12:13,590 --> 00:12:16,593 お主が どこで何をしようと もはや かまわぬが➡ 141 00:12:16,593 --> 00:12:19,596 死ぬことは 断じて許さぬ! 142 00:12:19,596 --> 00:12:27,604 ♬~ 143 00:12:27,604 --> 00:12:30,607 のんでくれ 144 00:12:30,607 --> 00:12:32,609 六兵衛! 145 00:12:32,609 --> 00:12:52,629 ♬~ 146 00:12:52,629 --> 00:13:12,582 ♬~ 147 00:13:12,582 --> 00:13:20,590 ♬~ 148 00:13:20,590 --> 00:13:22,592 よかった 149 00:13:22,592 --> 00:13:39,609 ♬~ 150 00:13:39,609 --> 00:13:44,614 (お勢)時代は変われど 私どもの主人は戻らず…➡ 151 00:13:44,614 --> 00:13:48,618 でございますね 152 00:13:48,618 --> 00:13:52,622 うちの主人が 勤めを果たさぬせいで… 153 00:13:52,622 --> 00:13:54,624 なんと申し上げてよいやら… (お勢)しずゑ様➡ 154 00:13:54,624 --> 00:13:57,627 そんなつもりでは… ほら もしや➡ 155 00:13:57,627 --> 00:14:01,631 元号が変われば 六兵衛様も 時代とともに➡ 156 00:14:01,631 --> 00:14:05,635 立ち去るのではございませぬか? (女性)きっと そうですよ 157 00:14:05,635 --> 00:14:08,635 そうだとよいのですが… 158 00:14:28,591 --> 00:14:38,601 159 00:14:38,601 --> 00:14:40,601 ゆっくり休まれよ 160 00:14:53,616 --> 00:15:10,633 ♬~ 161 00:15:10,633 --> 00:15:16,572 <徳川慶喜が 駿府で謹慎を始め ひと月余り> 162 00:15:16,572 --> 00:15:21,577 <追うように移った家達は 駿府藩主となる> 163 00:15:21,577 --> 00:15:27,583 ♬~ 164 00:15:27,583 --> 00:15:31,587 <そして この日 「慶応」は「明治」に改元され➡ 165 00:15:31,587 --> 00:15:35,591 江戸時代は幕を閉じた> 166 00:15:35,591 --> 00:15:38,594 <だが…> 167 00:15:38,594 --> 00:15:41,597 六兵衛 168 00:15:41,597 --> 00:15:45,601 本日をもって 改元がなされた 169 00:15:45,601 --> 00:15:50,601 新しき元号は 「明治」と称する 170 00:16:05,621 --> 00:16:10,626 来る十月十三日 京都の御所より➡ 171 00:16:10,626 --> 00:16:13,526 天朝様が こちらに ご到着あそばされる 172 00:16:18,568 --> 00:16:22,572 さすれば➡ 173 00:16:22,572 --> 00:16:26,572 旗本である お主の役目は 終わったのではないか? 174 00:16:31,581 --> 00:16:33,583 まったく… 175 00:16:33,583 --> 00:16:37,587 ≪(足音) 176 00:16:37,587 --> 00:16:41,591 (本多)そやつの狙いが とうとう分かったぞ! 177 00:16:41,591 --> 00:16:43,593 何を今更… 178 00:16:43,593 --> 00:16:47,597 (本多)天朝様と共に➡ 179 00:16:47,597 --> 00:16:50,600 多くのお偉方が やってくるであろう 180 00:16:50,600 --> 00:16:56,606 その機に乗じて 新政府の顕官に 取り入ろうとしておるのだ 181 00:16:56,606 --> 00:16:59,609 いいかげんにしてくだされ 182 00:16:59,609 --> 00:17:04,614 しからば なぜ 六兵衛は 大村様の誘いを断ったのですか? 183 00:17:04,614 --> 00:17:07,617 (本多)大村殿は武官じゃ 184 00:17:07,617 --> 00:17:11,554 武官である大村殿に付けば➡ 185 00:17:11,554 --> 00:17:15,558 イギリスと 戦うはめになるかもしれん 186 00:17:15,558 --> 00:17:21,564 座っておるだけのこやつに そんな勇気はなかろう 187 00:17:21,564 --> 00:17:24,567 自分を棚に上げて どの口が言いなさる 188 00:17:24,567 --> 00:17:26,569 (本多)なんじゃと? 189 00:17:26,569 --> 00:17:31,574 其処許こそ 新政府の役職に 就こうと思ってるのではないか? 190 00:17:31,574 --> 00:17:35,574 ♬~ 191 00:17:37,580 --> 00:17:44,480 (本多)沈没する船もろとも 江戸前に沈むわけにはゆかぬ 192 00:17:46,589 --> 00:17:52,589 それがしにも 妻や子があるのじゃ 193 00:17:57,600 --> 00:18:01,604 (長太郎)い~ち… ふた~つ み~っつ… ワアー 194 00:18:01,604 --> 00:18:04,607 フフフッ 195 00:18:04,607 --> 00:18:06,609 しずゑ 196 00:18:06,609 --> 00:18:08,609 今 帰った 197 00:18:10,613 --> 00:18:13,549 おかえりなさいませ うむ 198 00:18:13,549 --> 00:18:15,549 長らく留守にして すまなんだ 199 00:18:17,553 --> 00:18:20,556 天朝様が来るまでには 出てゆけと言うたんじゃが➡ 200 00:18:20,556 --> 00:18:24,556 あやつ 仏像になったようでのう ハハハッ 201 00:18:29,565 --> 00:18:34,570 ん? どうした? 202 00:18:34,570 --> 00:18:37,573 六兵衛のように 腹でも下したか? 203 00:18:37,573 --> 00:18:40,576 ハァ… 204 00:18:40,576 --> 00:18:43,579 久方ぶりに帰ったというのに➡ 205 00:18:43,579 --> 00:18:47,583 六兵衛様の話ばかりで ございますね 206 00:18:47,583 --> 00:18:50,586 ん? 旦那様がおらぬ間➡ 207 00:18:50,586 --> 00:18:54,590 長太郎が どれだけ寂しがっていることか 208 00:18:54,590 --> 00:18:56,590 アッ… 209 00:19:00,596 --> 00:19:03,599 長太郎 210 00:19:03,599 --> 00:19:05,601 すまんのう 211 00:19:05,601 --> 00:19:07,603 すまんのう (長太郎)うん 212 00:19:07,603 --> 00:19:10,606 すまんのう 213 00:19:10,606 --> 00:19:14,543 フフッ すまんのう~ 214 00:19:14,543 --> 00:19:18,547 先日 私 六兵衛様のお宅へ伺いました 215 00:19:18,547 --> 00:19:22,551 はあ? 奥様に会い お話をしました 216 00:19:22,551 --> 00:19:25,554 なぜ そのようなまねを? 217 00:19:25,554 --> 00:19:29,558 旦那様が だらしないからでございましょう 218 00:19:29,558 --> 00:19:31,560 余計なことをせんでくれ 219 00:19:31,560 --> 00:19:33,562 わしは わしで 精いっぱいやっておる! 220 00:19:33,562 --> 00:19:35,564 精いっぱいでございますか? そうじゃ 221 00:19:35,564 --> 00:19:37,566 食いぶちを得られるように➡ 222 00:19:37,566 --> 00:19:40,569 毎日 毎日 必死に勤めておるのじゃ! 223 00:19:40,569 --> 00:19:43,572 旦那様 お給金さえ持ってくればいいと➡ 224 00:19:43,572 --> 00:19:45,574 お思いではございませぬか! なぬ? 225 00:19:45,574 --> 00:19:47,576 旦那様は 何も分かっておりません 226 00:19:47,576 --> 00:19:51,580 分かっとらんのは そっちじゃ ハァー 227 00:19:51,580 --> 00:19:55,580 つべこべ言わず 早く お勤めを終えてくださいまし 228 00:19:58,587 --> 00:20:00,587 もう知らぬわ 229 00:20:05,594 --> 00:20:07,594 勝手にせぇ! 230 00:20:11,534 --> 00:20:14,537 (長太郎)とと様は? 231 00:20:14,537 --> 00:20:17,540 (福地)ふむ… なるほど 232 00:20:17,540 --> 00:20:21,544 独り身の僕には分からぬ 苦労があるようだな 233 00:20:21,544 --> 00:20:24,547 しかし 単身 的矢家に乗り込むとは➡ 234 00:20:24,547 --> 00:20:28,547 おびえて逃げた加倉井さんより 男気があるではないか 235 00:20:30,553 --> 00:20:34,557 なあ 福地殿 もう一度 的矢家を訪ねてみんか? 236 00:20:34,557 --> 00:20:37,560 (福地)ん? なんの心変わりだ? 237 00:20:37,560 --> 00:20:41,564 いや あやつのご家族なら 心を動かせるかもしれぬ 238 00:20:41,564 --> 00:20:44,567 (福地)うん… 239 00:20:44,567 --> 00:20:46,567 よし… (福地)ん? 240 00:21:00,583 --> 00:21:02,583 アッ 241 00:21:07,590 --> 00:21:09,592 (清右衛門)何用か? 242 00:21:09,592 --> 00:21:13,596 拙者 加倉井隼人と申しまする 243 00:21:13,596 --> 00:21:18,596 的矢六兵衛殿の近況を 伝えに参りました 244 00:21:24,607 --> 00:21:27,610 入りなされよ 245 00:21:27,610 --> 00:21:29,610 江戸も終わった 246 00:21:31,614 --> 00:21:36,619 すべて話すときが 来たのかもしれぬ 247 00:21:36,619 --> 00:21:42,625 ♬~ 248 00:21:42,625 --> 00:21:45,628 (清右衛門)この的矢という家➡ 249 00:21:45,628 --> 00:21:50,633 旗本の家という看板が 残っているだけでござる 250 00:21:50,633 --> 00:21:53,636 ん? それは どういう意味でございますか? 251 00:21:53,636 --> 00:21:59,636 実は それがし この家の生まれではないのだ 252 00:22:01,644 --> 00:22:07,650 母は 的矢に捨てられた女で➡ 253 00:22:07,650 --> 00:22:10,653 貧しい長屋育ち 254 00:22:10,653 --> 00:22:14,590 そもそも それがしは➡ 255 00:22:14,590 --> 00:22:18,590 旗本を継ぐべき人間ではなかった 256 00:22:20,596 --> 00:22:26,602 しかし 本家の兄上が 早くに亡くなり➡ 257 00:22:26,602 --> 00:22:28,604 跡継ぎもおらず➡ 258 00:22:28,604 --> 00:22:33,609 それがしは 的矢の体面を保つため➡ 259 00:22:33,609 --> 00:22:38,609 とりあえず 迎えられたのでござるよ 260 00:22:40,616 --> 00:22:42,618 そうであったのですか… 261 00:22:42,618 --> 00:22:49,518 (清右衛門)それから 一昨年に この家を去った➡ 262 00:22:51,627 --> 00:22:54,630 借金をこさえていた六兵衛… 263 00:22:54,630 --> 00:22:57,633 (元の六兵衛)⦅無理を承知で お願い申し上げまする⦆ 264 00:22:57,633 --> 00:23:00,636 ⦅父 母だけは…➡ 265 00:23:00,636 --> 00:23:03,639 なんとかならぬでしょうか?⦆ 266 00:23:03,639 --> 00:23:06,642 あやつは➡ 267 00:23:06,642 --> 00:23:11,580 みどもらとは血縁のない 養子でござった 268 00:23:11,580 --> 00:23:13,582 養子? 269 00:23:13,582 --> 00:23:19,582 それがしどもの本当の子は 早くに亡くなったのでござる 270 00:23:25,594 --> 00:23:32,601 (清右衛門)それから先 子は できなかったのだが➡ 271 00:23:32,601 --> 00:23:39,608 的矢の家を 絶やすわけにはいかぬゆえ➡ 272 00:23:39,608 --> 00:23:42,611 養子をもらい受けたのでござる 273 00:23:42,611 --> 00:23:46,615 その養子が 旗本として ふさわしくない➡ 274 00:23:46,615 --> 00:23:49,618 とんでもない人間だったわけですか 275 00:23:49,618 --> 00:23:56,625 (清右衛門)いや… それがしどもの罪でござる 276 00:23:56,625 --> 00:24:01,630 (はる)養子とはいえ できた子供が かわいくて➡ 277 00:24:01,630 --> 00:24:04,630 甘やかしすぎたのでございます 278 00:24:07,636 --> 00:24:10,639 そんなときでござった 279 00:24:10,639 --> 00:24:15,578 淀屋に 旗本株を買いたいという男を➡ 280 00:24:15,578 --> 00:24:17,578 紹介されたのは 281 00:24:19,582 --> 00:24:23,586 もし 男に無礼あらば➡ 282 00:24:23,586 --> 00:24:27,590 刺し違えて 死ぬる覚悟にござった 283 00:24:27,590 --> 00:24:47,610 ♬~ 284 00:24:47,610 --> 00:24:54,510 (六兵衛の妻)⦅私どもの 父 母になってくださいまし⦆ 285 00:24:56,619 --> 00:25:00,623 ⦅お心遣いは ありがたいがの➡ 286 00:25:00,623 --> 00:25:05,628 お主らの 誠の親御どのを差し置いて➡ 287 00:25:05,628 --> 00:25:09,632 我らが 親になどなれようか⦆ 288 00:25:09,632 --> 00:25:16,572 ♬~ 289 00:25:16,572 --> 00:25:23,472 ⦅主人も私も 生まれついて 親を知りませぬ⦆ 290 00:25:37,593 --> 00:25:43,599 ⦅お主 一体 何をしてきた?⦆ 291 00:25:43,599 --> 00:25:47,603 ⦅親の顔すら知らぬ二人が➡ 292 00:25:47,603 --> 00:25:50,603 どうやって ここまで来た?⦆ 293 00:25:59,615 --> 00:26:04,620 ⦅やめおけ 幕府は しまいじゃ⦆ 294 00:26:04,620 --> 00:26:11,560 ⦅そうとなれば 旗本とて 一文の値打ちもない⦆ 295 00:26:11,560 --> 00:26:18,460 ⦅これまでの苦労を 水の泡にしてはなるまいぞ⦆ 296 00:26:29,578 --> 00:26:34,583 (清右衛門)「さればこそ」 297 00:26:34,583 --> 00:26:38,583 重いひと言でござった 298 00:26:40,589 --> 00:26:45,594 そのあと 的矢の事情を話した 299 00:26:45,594 --> 00:26:50,594 すると あの男 自ら言いだしたのじゃ 300 00:26:52,601 --> 00:26:57,606 的矢六兵衛を名乗りたいと… 301 00:26:57,606 --> 00:27:01,610 六兵衛殿は 一体 なぜ 旗本になったのでございますか? 302 00:27:01,610 --> 00:27:04,613 知らぬ えっ? 303 00:27:04,613 --> 00:27:08,617 あの男の生まれも本名も➡ 304 00:27:08,617 --> 00:27:11,553 何も知らぬ 305 00:27:11,553 --> 00:27:16,558 (福地)しかし 素性の分からぬ者と 一緒に暮らすなど… 306 00:27:16,558 --> 00:27:18,560 フッ… 307 00:27:18,560 --> 00:27:23,560 素性を知ることに なんの意味があろう 308 00:27:25,567 --> 00:27:32,574 家柄だ 血筋だと こだわり続けるうちに➡ 309 00:27:32,574 --> 00:27:38,574 天下の旗本にふさわしい武士は 一人もいなくなった 310 00:27:40,582 --> 00:27:43,585 それが すべてではござらんか? 311 00:27:43,585 --> 00:27:48,590 ♬~ 312 00:27:48,590 --> 00:27:53,595 武士の時代 最後のときを迎えて➡ 313 00:27:53,595 --> 00:28:01,603 我らは 的矢六兵衛という 一閃の光芒を見た 314 00:28:01,603 --> 00:28:13,549 ♬~ 315 00:28:13,549 --> 00:28:16,552 それでいいではござらんか 316 00:28:16,552 --> 00:28:36,572 ♬~ 317 00:28:36,572 --> 00:28:49,585 ♬~ 318 00:28:49,585 --> 00:28:52,588 (六兵衛の妻) ご苦労さまでございました 319 00:28:52,588 --> 00:28:57,588 アッ… 六兵衛殿は 随分と 腹をくくってらっしゃる 320 00:29:00,596 --> 00:29:04,596 (福地)しかし あなたは それでよいのですか? 321 00:29:06,602 --> 00:29:09,602 (六兵衛の妻)かまいませぬ 322 00:29:14,543 --> 00:29:17,546 ところで 先日➡ 323 00:29:17,546 --> 00:29:20,546 女房が訪ねたと聞いた 324 00:29:22,551 --> 00:29:27,556 その折は 大変 失礼いたした 325 00:29:27,556 --> 00:29:30,559 失礼なことなど 何もござりませぬ 326 00:29:30,559 --> 00:29:34,563 いや ぶしつけなところも あったでござろう 327 00:29:34,563 --> 00:29:40,569 それもこれも お城勤めを果たされている➡ 328 00:29:40,569 --> 00:29:44,573 加倉井様を 思ってのことでござりましょう 329 00:29:44,573 --> 00:29:46,575 なんじゃと? 330 00:29:46,575 --> 00:29:49,578 私が➡ 331 00:29:49,578 --> 00:29:55,584 主人が死んで 戻らずともかまわぬと申したら➡ 332 00:29:55,584 --> 00:29:59,588 こんなことを おっしゃっておりました 333 00:29:59,588 --> 00:30:03,592 ⦅たとえ 戻らずに死んでも かまわぬとおっしゃいますか?⦆ 334 00:30:03,592 --> 00:30:07,592 ⦅それが宿命なれば⦆ 335 00:30:11,533 --> 00:30:14,536 ⦅承知いたしました⦆ 336 00:30:14,536 --> 00:30:17,539 ⦅ですが➡ 337 00:30:17,539 --> 00:30:21,539 私は 主人が死んで戻ることは 許しませぬ⦆ 338 00:30:23,545 --> 00:30:28,550 ⦅どんなことがあっても 生き抜いて➡ 339 00:30:28,550 --> 00:30:34,556 私と息子を 幸せにしてもらいますゆえ⦆ 340 00:30:34,556 --> 00:30:48,570 ♬~ 341 00:30:48,570 --> 00:30:51,573 狙って… 342 00:30:51,573 --> 00:30:53,575 惜しい 343 00:30:53,575 --> 00:30:56,578 ヨッ 344 00:30:56,578 --> 00:30:58,580 オッ アアー! 345 00:30:58,580 --> 00:31:02,584 当たった フフフッ 346 00:31:02,584 --> 00:31:09,484 ♬~ 347 00:31:13,595 --> 00:31:15,595 すまなんだ! 348 00:31:17,599 --> 00:31:19,599 旦那様… 349 00:31:28,610 --> 00:31:31,610 わしは 大バカ者じゃった 350 00:31:33,615 --> 00:31:36,618 お主が いかなる気持ちで 家を守っていてくれたか➡ 351 00:31:36,618 --> 00:31:40,622 考えが及ばんかった 352 00:31:40,622 --> 00:31:45,622 わしは 一介の御徒組頭じゃ 353 00:31:47,629 --> 00:31:53,635 遊んで暮らせるような 大金を稼ぐなど まずなかろう 354 00:31:53,635 --> 00:31:56,638 この先 世が変わるなかで➡ 355 00:31:56,638 --> 00:32:01,643 つらく苦しい思いを させてしまうかもしれん 356 00:32:01,643 --> 00:32:04,643 じゃが これだけは約束する 357 00:32:06,648 --> 00:32:10,648 お主と長太郎のことは 必ずや守ってみせる! 358 00:32:12,587 --> 00:32:19,594 それが わしの人生で 最も大切な使命じゃ 359 00:32:19,594 --> 00:32:27,602 ♬~ 360 00:32:27,602 --> 00:32:29,602 しずゑ➡ 361 00:32:32,607 --> 00:32:35,610 長太郎➡ 362 00:32:35,610 --> 00:32:39,614 お城での勤めを果たすまで➡ 363 00:32:39,614 --> 00:32:44,619 もうしばし待っていてくれ 364 00:32:44,619 --> 00:32:54,629 ♬~ 365 00:32:54,629 --> 00:32:57,632 お顔を上げてくださいまし 366 00:32:57,632 --> 00:33:01,636 ♬~ 367 00:33:01,636 --> 00:33:06,641 旦那様は 加倉井家の主でございますゆえ 368 00:33:06,641 --> 00:33:08,643 主! 369 00:33:08,643 --> 00:33:11,543 フフッ フフッ フッ 370 00:33:13,582 --> 00:33:16,585 <明治元年九月二十日> 371 00:33:16,585 --> 00:33:19,588 <明治天皇を乗せた御鳳輦は➡ 372 00:33:19,588 --> 00:33:24,593 京都御所より東京へ向けて 行幸に発った> 373 00:33:24,593 --> 00:33:29,598 <九月二十二日 会津若松城が落城> 374 00:33:29,598 --> 00:33:34,603 <翌月九日 盛岡藩が 新政府に降伏し➡ 375 00:33:34,603 --> 00:33:37,606 東北戦争は終結> 376 00:33:37,606 --> 00:33:41,610 <こうして 江戸の時代は 姿を消してゆく> 377 00:33:41,610 --> 00:33:47,616 ♬~ 378 00:33:47,616 --> 00:33:49,616 六兵衛よ➡ 379 00:33:51,620 --> 00:33:55,620 あさってには 天朝様が ご到着あそばされる 380 00:33:59,628 --> 00:34:02,631 それでな➡ 381 00:34:02,631 --> 00:34:08,631 儀式は ここ… 黒書院で行われる予定なんじゃ 382 00:34:11,573 --> 00:34:14,576 じゃが➡ 383 00:34:14,576 --> 00:34:17,576 お主が ここに居座っていては それが かなわぬ 384 00:34:20,582 --> 00:34:23,585 お城の中にいるのはよい 385 00:34:23,585 --> 00:34:27,585 せめて ここから出てくれぬか? 386 00:34:35,597 --> 00:34:39,601 事と次第によっては わしも お主も➡ 387 00:34:39,601 --> 00:34:42,601 腹を切ることになるかもしれん 388 00:34:47,609 --> 00:34:49,609 動く気はないか? 389 00:34:53,615 --> 00:34:55,617 (福地)フゥー 390 00:34:55,617 --> 00:34:59,621 おい 別れの挨拶に来たぞ 391 00:34:59,621 --> 00:35:02,624 (福地)駿府ですか? (勝)おうよ 392 00:35:02,624 --> 00:35:06,628 上様方がおるのでな 393 00:35:06,628 --> 00:35:11,528 で 結局 俺よりも居残ったか 394 00:35:14,569 --> 00:35:16,571 大した風格だ 395 00:35:16,571 --> 00:35:22,577 もはや 本物の将軍のようだな 396 00:35:22,577 --> 00:35:25,580 で どうした? 397 00:35:25,580 --> 00:35:29,584 天朝様を迎え入れるにあたり やはり こやつを どうかせんと 398 00:35:29,584 --> 00:35:33,588 アアー それなんだがね 置き土産に 一つ 案を考えてきた 399 00:35:33,588 --> 00:35:36,591 (福地)オッ なんと 400 00:35:36,591 --> 00:35:40,595 (勝)出ないのならば この黒書院を 板戸で塞ぎ➡ 401 00:35:40,595 --> 00:35:42,597 廊下に 見張りでも立たしとけ 402 00:35:42,597 --> 00:35:44,599 (福地)オッ それは… (勝)そうすりゃ➡ 403 00:35:44,599 --> 00:35:47,602 外からは ただの座敷に見えるし 直訴もできん 404 00:35:47,602 --> 00:35:50,605 いや しかし もろもろの儀式は ここで行われると… 405 00:35:50,605 --> 00:35:53,608 そんなもん 大広間にでも 変更すりゃいいんだよ! 406 00:35:53,608 --> 00:35:57,612 いや しかし… 俺が 話をつけといてやる 407 00:35:57,612 --> 00:36:00,615 なっ じゃあ 頼んだぞ アッ… 408 00:36:00,615 --> 00:36:03,615 (勝)じゃあ 福地君 元気でな (福地)はい 409 00:36:11,559 --> 00:36:14,562 さすが 無理筋を通してきた人だ 410 00:36:14,562 --> 00:36:17,562 (小源太)どうなさいますか? 411 00:36:20,568 --> 00:36:22,570 やるしかあるまい 412 00:36:22,570 --> 00:36:30,578 ♬~ 413 00:36:30,578 --> 00:36:33,581 (福地) 守神のお社を作ってる気分だな 414 00:36:33,581 --> 00:36:37,585 (小源太)しかし 結局 こやつ 何者なのでございましょうか? 415 00:36:37,585 --> 00:36:40,588 もはや 何者でもよい 416 00:36:40,588 --> 00:36:43,591 こやつの生まれが 何であろうと 名が 何であろうと➡ 417 00:36:43,591 --> 00:36:46,594 そこに 意味などござらん 418 00:36:46,594 --> 00:36:51,599 武士として生きることに 家柄や血筋など関係ないのだ 419 00:36:51,599 --> 00:36:56,604 己の道を信じ 意思を貫く一人の旗本 420 00:36:56,604 --> 00:36:59,607 それでよいではないか 421 00:36:59,607 --> 00:37:08,616 ♬~ 422 00:37:08,616 --> 00:37:12,554 <この日 江戸の街から人が消えた> 423 00:37:12,554 --> 00:37:15,557 <江戸の 人々は 新たな支配者である➡ 424 00:37:15,557 --> 00:37:17,559 天皇についての知識を➡ 425 00:37:17,559 --> 00:37:19,561 持ち合わせておらず➡ 426 00:37:19,561 --> 00:37:22,564 <むげに 占領されるのではないかと➡ 427 00:37:22,564 --> 00:37:24,566 恐れていたからである> 428 00:37:24,566 --> 00:37:27,569 <皆 恐れや困惑にとらわれ➡ 429 00:37:27,569 --> 00:37:31,573 ただ 息を潜めるのみであった> 430 00:37:31,573 --> 00:37:37,579 ♬~ 431 00:37:37,579 --> 00:37:42,584 <一方の江戸城 城内は 静寂に包まれ➡ 432 00:37:42,584 --> 00:37:46,588 幕府始まって以来 二六〇有余年の➡ 433 00:37:46,588 --> 00:37:51,588 栄華と喧騒は もはや みじんも感じられなかった> 434 00:38:10,612 --> 00:38:14,512 六兵衛 入るぞ 435 00:38:34,569 --> 00:38:43,578 436 00:38:43,578 --> 00:38:45,578 お主のじゃ 437 00:38:47,582 --> 00:38:50,585 いくら封禁されておるとはいえ➡ 438 00:38:50,585 --> 00:38:54,585 その格好で 天朝様を お迎えするわけにもいくまい 439 00:39:13,541 --> 00:39:33,561 440 00:39:33,561 --> 00:39:48,576 441 00:39:48,576 --> 00:39:50,576 ンン… 442 00:39:56,584 --> 00:39:58,586 フゥー 443 00:39:58,586 --> 00:40:01,586 お主が飲まんでも わしは飲むぞ 444 00:40:06,594 --> 00:40:09,594 アァ… 445 00:40:13,535 --> 00:40:15,535 ンン… 446 00:40:18,540 --> 00:40:24,546 ここは 今でも 江戸が続いとるようじゃのう 447 00:40:24,546 --> 00:40:31,553 花のお江戸も 随分 廃れてしまった 448 00:40:31,553 --> 00:40:37,559 お大名は どなたも お国元に引き揚げてしもうたし➡ 449 00:40:37,559 --> 00:40:41,563 旗本御家人の多くは 自ら 逼塞しおるか➡ 450 00:40:41,563 --> 00:40:46,563 さもなくば… 行方知れずじゃ 451 00:40:50,572 --> 00:40:57,579 じゃが 天朝様がいらっしゃれば また 空気も変わるじゃろう 452 00:40:57,579 --> 00:40:59,579 うん 453 00:41:02,584 --> 00:41:04,584 アァ… 454 00:41:12,594 --> 00:41:16,594 思えば 実に 足かけ八月 455 00:41:19,601 --> 00:41:25,601 お主とは 長い月日を共にしたのう 456 00:41:29,611 --> 00:41:35,617 あれは まだ 桜も咲かぬ 底冷えする時期じゃったのう 457 00:41:35,617 --> 00:41:39,621 虎の間に居座る お主を見たときは➡ 458 00:41:39,621 --> 00:41:42,621 どうしたもんかと思うたもんじゃ 459 00:41:44,626 --> 00:41:49,631 握り飯を食うた姿は 今でも よう覚えとる 460 00:41:49,631 --> 00:41:55,631 あんなに うまそうに食らうやつは 生まれて初めて見たのう 461 00:41:57,639 --> 00:42:03,645 あれ以来 わしらも 食事の作法を 気にするようになったもんじゃ 462 00:42:03,645 --> 00:42:07,649 虎の間を立ったお主は➡ 463 00:42:07,649 --> 00:42:11,549 大広間の武者隠しに向こうたのう 464 00:42:13,588 --> 00:42:18,588 それで 風呂に入ったと思うたら 帝鑑の間じゃ 465 00:42:20,595 --> 00:42:24,599 何を思うて 場所を移ったかは分からぬが➡ 466 00:42:24,599 --> 00:42:27,599 そのつど 肝を冷やしたものじゃ 467 00:42:29,604 --> 00:42:33,604 お主の脇差しを 取ろうとしたときは… 468 00:42:36,611 --> 00:42:39,611 生きた心地がせんかったわ 469 00:42:41,616 --> 00:42:46,621 こんなことを言うと 笑われるかもしれんがのう➡ 470 00:42:46,621 --> 00:42:51,626 武士の魂でもある脇差しを わしに渡してくれたとき➡ 471 00:42:51,626 --> 00:42:56,626 少し 心が通じ合った気がしたもんじゃ 472 00:42:59,634 --> 00:43:02,637 あのとき➡ 473 00:43:02,637 --> 00:43:05,640 こやつは 無益に人を殺したりせんと➡ 474 00:43:05,640 --> 00:43:07,640 ふっと感じてな 475 00:43:10,645 --> 00:43:12,580 まあ➡ 476 00:43:12,580 --> 00:43:16,584 お主が わしのことを どう思っとるかは分からぬがな 477 00:43:16,584 --> 00:43:20,588 ♬~ 478 00:43:20,588 --> 00:43:22,590 アァ… 479 00:43:22,590 --> 00:43:26,594 ♬~ 480 00:43:26,594 --> 00:43:32,600 西郷様に 大村様 481 00:43:32,600 --> 00:43:36,604 お主の前に どんなお偉方が現れても… 482 00:43:36,604 --> 00:43:40,608 ♬~ 483 00:43:40,608 --> 00:43:44,608 お主は 誰にも媚びへつらわんかった 484 00:43:47,615 --> 00:43:50,618 あまりに堂々としておるゆえ➡ 485 00:43:50,618 --> 00:43:53,621 上様かと思ってしまったほどじゃ 486 00:43:53,621 --> 00:43:57,625 ♬~ 487 00:43:57,625 --> 00:43:59,627 ハァー 488 00:43:59,627 --> 00:44:04,632 その度胸 分けてほしいものよ 489 00:44:04,632 --> 00:44:10,638 ♬~ 490 00:44:10,638 --> 00:44:14,575 ところで お主… 491 00:44:14,575 --> 00:44:19,580 ♬~ 492 00:44:19,580 --> 00:44:22,580 やはり 上様ではあるまいな? 493 00:44:24,585 --> 00:44:26,585 フゥ… 494 00:44:28,589 --> 00:44:32,593 ハハッ 冗談じゃ 495 00:44:32,593 --> 00:44:37,598 ♬~ 496 00:44:37,598 --> 00:44:41,598 大廊下の上之御部屋に 溜間 497 00:44:43,604 --> 00:44:48,609 世間が 時代の変化に大騒ぎすれど➡ 498 00:44:48,609 --> 00:44:52,613 お主は 戦国の世から そこにおるように変わらなかった 499 00:44:52,613 --> 00:44:54,615 お主を見る度➡ 500 00:44:54,615 --> 00:44:58,619 どっしりとした安心すら 感じるようになっておった 501 00:44:58,619 --> 00:45:01,622 あまりに お主のことを気にしたせいで➡ 502 00:45:01,622 --> 00:45:04,625 女房に 叱られてしもうたんじゃぞ! 503 00:45:04,625 --> 00:45:09,630 ♬~ 504 00:45:09,630 --> 00:45:14,569 お主の奥方も 大層 気が強そうじゃ 505 00:45:14,569 --> 00:45:18,569 こっぴどく 叱られるのではござらぬか? 506 00:45:20,575 --> 00:45:23,578 そうか 分かったぞ 507 00:45:23,578 --> 00:45:28,583 怒られるのが怖くて 帰れぬのじゃな? 508 00:45:28,583 --> 00:45:30,585 ハハハッ 509 00:45:30,585 --> 00:45:35,590 ♬~ 510 00:45:35,590 --> 00:45:39,594 うなぎのせいで 死なんでよかったわい 511 00:45:39,594 --> 00:45:46,494 ♬~ 512 00:45:48,603 --> 00:45:51,603 まだ 何も語ってくれぬか? 513 00:45:58,613 --> 00:46:00,613 よい 514 00:46:05,620 --> 00:46:10,620 いつか お主と 笑って 酒を酌み交わしたいものじゃ 515 00:46:14,562 --> 00:46:19,562 のう 六兵衛と申す者よ 516 00:46:27,575 --> 00:46:29,575 アァ… 517 00:46:32,580 --> 00:46:35,580 しかし まさか➡ 518 00:46:37,585 --> 00:46:40,588 将軍様の御座所➡ 519 00:46:40,588 --> 00:46:45,588 ここ… 黒書院まで上るとは思わなんだ 520 00:46:50,598 --> 00:46:55,603 幕府は滅び 江戸はなくなり➡ 521 00:46:55,603 --> 00:46:59,607 上様も駿府におられる今➡ 522 00:46:59,607 --> 00:47:03,611 お主は まるで➡ 523 00:47:03,611 --> 00:47:06,614 代々の将軍様に代わって➡ 524 00:47:06,614 --> 00:47:10,614 天朝様をお迎えするようじゃな 525 00:47:15,556 --> 00:47:19,560 お主➡ 526 00:47:19,560 --> 00:47:21,560 今 何を思うておる? 527 00:47:25,566 --> 00:47:29,570 よもや➡ 528 00:47:29,570 --> 00:47:32,570 初めから お迎えするつもりで居座った…➡ 529 00:47:34,575 --> 00:47:37,578 ということはあるまいな? 530 00:47:37,578 --> 00:47:46,587 ♬~ 531 00:47:46,587 --> 00:47:48,587 (杯を置く音) 532 00:47:51,592 --> 00:47:53,592 おい 六兵衛 533 00:47:56,597 --> 00:47:59,600 死を覚悟することはかまわぬ 534 00:47:59,600 --> 00:48:03,604 じゃが➡ 535 00:48:03,604 --> 00:48:07,604 本当に死するつもりであれば…➡ 536 00:48:10,611 --> 00:48:12,511 許さぬ 537 00:48:15,549 --> 00:48:17,549 六兵衛 538 00:48:22,556 --> 00:48:26,560 新しい時代を➡ 539 00:48:26,560 --> 00:48:30,564 共に生きようぞ 540 00:48:30,564 --> 00:48:34,568 ♬~ 541 00:48:34,568 --> 00:48:36,570 よいな? 542 00:48:36,570 --> 00:48:41,575 ♬~ 543 00:48:41,575 --> 00:48:44,578 男と男の約束じゃ 544 00:48:44,578 --> 00:49:00,594 ♬~ 545 00:49:00,594 --> 00:49:03,597 (西郷)力ずくは いけもはん! 546 00:49:03,597 --> 00:49:05,599 (木戸)大不敬の罪により➡ 547 00:49:05,599 --> 00:49:09,603 首を はねられるだけじゃ 548 00:49:09,603 --> 00:49:13,541 (女官)徳川幕府の怨念 549 00:49:13,541 --> 00:49:16,544 武士の魂は 忘れてはなりませんよ 550 00:49:16,544 --> 00:49:19,547 (慶喜)その方には 話してもよいかもしれぬ 551 00:49:19,547 --> 00:49:21,547 なりませぬ! 552 00:49:23,551 --> 00:49:25,553 (男性)的矢六兵衛… (男性)的矢殿! 553 00:49:25,553 --> 00:49:27,553 六兵衛! 554 00:49:29,557 --> 00:49:49,577 ♬~ 555 00:49:49,577 --> 00:50:09,597 ♬~ 556 00:50:09,597 --> 00:50:29,550 ♬~ 557 00:50:29,550 --> 00:50:49,570 ♬~ 558 00:50:49,570 --> 00:51:04,370 ♬~