1 00:00:01,224 --> 00:00:03,226 (加倉井隼人) 上野が 燃えてしもうた… 2 00:00:03,226 --> 00:00:07,230 <上野戦争は 新政府軍の圧勝に終わった> 3 00:00:07,230 --> 00:00:11,234 (勝)あまりにも非道じゃねぇか! (大村)道義を違えたなどとは・ 4 00:00:11,234 --> 00:00:15,238 ひとっつも思っちょりゃあせん 説得の一つもできんのかね! 5 00:00:15,238 --> 00:00:17,240 ふむ… 6 00:00:17,240 --> 00:00:22,245 (六兵衛の妻) 主人の勤めは 主人の勤め 7 00:00:22,245 --> 00:00:24,247 (加倉井しずゑ) たとえ 戻らずに死んでも・ 8 00:00:24,247 --> 00:00:30,253 かまわぬとおっしゃいますか? (六兵衛の妻)それが宿命なれば 9 00:00:30,253 --> 00:00:33,256 <六兵衛の正体についても 重要な証言が> 10 00:00:33,256 --> 00:00:37,260 (淀屋)五千両でいかが? 11 00:00:37,260 --> 00:00:39,262 (勝)土用のうなぎも 食いそびれたからな 12 00:00:39,262 --> 00:00:42,265 <一方 半年間 握り飯のみだった六兵衛は・ 13 00:00:42,265 --> 00:00:46,269 加倉井の情にほだされ うなぎを食らうが・ 14 00:00:46,269 --> 00:00:49,272 直後に なんと 将軍の御座所である・ 15 00:00:49,272 --> 00:00:52,275 黒書院に入ってしまう> 16 00:00:52,275 --> 00:00:56,279 ・~ 17 00:00:56,279 --> 00:01:00,283 <しかし その夜 六兵衛に異変が> 18 00:01:00,283 --> 00:01:04,220 <うなぎが原因で 重篤な状態となる> 19 00:01:04,220 --> 00:01:10,220 <かたくなに 薬を拒む六兵衛 果たして その命運は…> 20 00:01:12,228 --> 00:01:17,228 (長太郎)ハァ ハァ ハァ… 21 00:01:22,238 --> 00:01:25,241 長太郎… 22 00:01:25,241 --> 00:01:28,244 長太郎 23 00:01:28,244 --> 00:01:33,244 長太郎 ハァ ハァ… 長太郎 24 00:01:36,252 --> 00:01:41,257 ハァ ハァ ハァ… 25 00:01:41,257 --> 00:01:51,267 ・~ 26 00:01:51,267 --> 00:01:55,271 ハァ ハァ ハァ ハァ… 27 00:01:55,271 --> 00:01:57,271 長太郎 28 00:02:02,211 --> 00:02:05,214 ・(足音) ・(小源太)お頭! 29 00:02:05,214 --> 00:02:08,217 六兵衛が倒れたと聞いたでござる 30 00:02:08,217 --> 00:02:10,219 (的矢六兵衛)ンン… アッ… 31 00:02:10,219 --> 00:02:12,221 六兵衛~! 32 00:02:12,221 --> 00:02:14,221 ンンッ! 33 00:02:16,225 --> 00:02:20,229 わしを払いのけて 厠へ行きおった 34 00:02:20,229 --> 00:02:24,233 万が一 これで 六兵衛が死んだとあらば・ 35 00:02:24,233 --> 00:02:28,233 わしが 毒を盛ったようなもの… 36 00:02:30,239 --> 00:02:33,239 責任を取らねばならぬ 37 00:02:37,246 --> 00:02:41,250 (町医者)薬が効いたようです もう大丈夫でしょう 38 00:02:41,250 --> 00:02:46,255 夜分 本当に ありがとうございました 39 00:02:46,255 --> 00:02:49,255 さあ 帰りましょうね 40 00:02:57,266 --> 00:03:02,205 お一人で帰られるのですか? 41 00:03:02,205 --> 00:03:06,209 主人は 勤めに出ておりますゆえ アァ… 42 00:03:06,209 --> 00:03:08,209 ありがとうございました うむ 43 00:03:21,224 --> 00:03:23,226 ンンッ… おい 44 00:03:23,226 --> 00:03:28,231 ・~ 45 00:03:28,231 --> 00:03:30,233 アアッ 46 00:03:30,233 --> 00:03:33,236 ・~ 47 00:03:33,236 --> 00:03:37,240 (小源太)なぜ のまん・ (福地)いいかげんにしたまえ! 48 00:03:37,240 --> 00:03:40,243 死んでしまうぞ 六兵衛! 49 00:03:40,243 --> 00:03:59,262 ・~ 50 00:03:59,262 --> 00:04:07,062 ・~ 51 00:04:10,206 --> 00:04:13,209 (天璋院) 眠れないのでございますか? 52 00:04:13,209 --> 00:04:18,214 (家達)お江戸も しまいなのかと思いましたら… 53 00:04:18,214 --> 00:04:21,217 上様… 54 00:04:21,217 --> 00:04:26,222 お城を出たあとも 皆々は変わらず・ 55 00:04:26,222 --> 00:04:30,226 予を敬い 尽くしてくれました 56 00:04:30,226 --> 00:04:34,230 それは 開城してから数か月 上様が 立派に・ 57 00:04:34,230 --> 00:04:37,233 お勤めあそばされたからに ございましょう 58 00:04:37,233 --> 00:04:42,238 父上も喜んでくださるでしょうか 59 00:04:42,238 --> 00:04:45,241 <僅か御年6歳にて・ 60 00:04:45,241 --> 00:04:49,245 徳川宗家 十六代に祭り上げられた家達> 61 00:04:49,245 --> 00:04:54,250 <この幼君には 実父と養父 二人の父がいた> 62 00:04:54,250 --> 00:04:59,255 ・~ 63 00:04:59,255 --> 00:05:03,192 <家達が 十六代目を 相続するにあたり・ 64 00:05:03,192 --> 00:05:05,194 養子に入ったことで・ 65 00:05:05,194 --> 00:05:09,198 実父の田安候は 家達の臣下となり・ 66 00:05:09,198 --> 00:05:12,201 養父とされる 前の将軍家は・ 67 00:05:12,201 --> 00:05:15,204 駿府に移り 謹慎となった> 68 00:05:15,204 --> 00:05:18,207 <つまり 家達にとって 二人の父は・ 69 00:05:18,207 --> 00:05:22,211 いまや 亡きも同然である> 70 00:05:22,211 --> 00:05:26,215 夜分に畏れ入りまする 71 00:05:26,215 --> 00:05:29,215 天璋院様 お城で ちと… 72 00:05:43,232 --> 00:05:48,237 (本多)的矢殿は天罰でござろう 73 00:05:48,237 --> 00:05:51,240 黒書院を汚してはならん 74 00:05:51,240 --> 00:05:53,242 引きずり出しましょうぞ! 75 00:05:53,242 --> 00:05:56,245 (幕臣たち) 引きずり出せ 引きずり出せ! 76 00:05:56,245 --> 00:05:59,248 (勝)静かにしろい! 77 00:05:59,248 --> 00:06:04,186 力ずくはならんと 西郷さんと 約束したと言ったろう! 78 00:06:04,186 --> 00:06:06,188 (幕臣) 西郷殿の申しつけがなんじゃ! 79 00:06:06,188 --> 00:06:09,191 政も返上し お城も江戸も明け渡したうえ・ 80 00:06:09,191 --> 00:06:11,193 こうまで へつらわねばならんのか! 81 00:06:11,193 --> 00:06:13,195 (幕臣)しかし 六兵衛の意思というのもあろう! 82 00:06:13,195 --> 00:06:15,197 (幕臣)そうじゃ 今 追い出すというのは・ 83 00:06:15,197 --> 00:06:17,199 あまりにも非情ではないか! (幕臣)何を言うておる! 84 00:06:17,199 --> 00:06:20,202 あやつが何者かは知らぬが 将軍様の御座所を・ 85 00:06:20,202 --> 00:06:22,204 これ以上 汚させるわけにはいかぬ! 86 00:06:22,204 --> 00:06:25,207 (幕臣)戦じゃ! (幕臣)そうじゃ 戦じゃ! 87 00:06:25,207 --> 00:06:30,212 (騒ぎ声) 88 00:06:30,212 --> 00:06:32,214 (勝)バカ者! 89 00:06:32,214 --> 00:06:35,217 (天璋院)一同 お静まりなされよ! 90 00:06:35,217 --> 00:06:38,220 (本多)天璋院様! 91 00:06:38,220 --> 00:06:41,223 何故 こちらに? 92 00:06:41,223 --> 00:06:46,223 (天璋院)六兵衛が 生死の境にいると伺いました 93 00:06:51,233 --> 00:06:55,237 (天璋院)体の具合を これ幸いと引きずり出すのは・ 94 00:06:55,237 --> 00:06:57,237 卑怯です 95 00:06:59,241 --> 00:07:04,180 (勝)まあ どちらにしろ なんとかせんと死んでしまう 96 00:07:04,180 --> 00:07:06,182 誰か いい策はないか? 97 00:07:06,182 --> 00:07:10,186 (一同)ンン… (官軍将校)ひとつ ここは・ 98 00:07:10,186 --> 00:07:12,188 徳川宗家をお継ぎになられた・ 99 00:07:12,188 --> 00:07:17,193 家達公の心積もりを 聞きんしゃったらどうじゃろうか 100 00:07:17,193 --> 00:07:22,198 家達公にとって 六兵衛は 家来にあたるはずじゃけぇ 101 00:07:22,198 --> 00:07:26,202 上様に そこ退けと 下知させるおつもりか? 102 00:07:26,202 --> 00:07:29,202 (官軍将校)グッ… ハァー 103 00:07:32,208 --> 00:07:36,212 どうすればいいんじゃ? 104 00:07:36,212 --> 00:07:40,216 (天璋院)上様 (一同)オッ… 105 00:07:40,216 --> 00:07:42,218 (天璋院) 屋敷でお待ちいただくよう・ 106 00:07:42,218 --> 00:07:45,221 申し上げたはずです 107 00:07:45,221 --> 00:07:47,221 (家達)戦はなりません 108 00:07:49,225 --> 00:07:53,229 的矢には しかと申しつくるゆえ 109 00:07:53,229 --> 00:07:57,229 ・~ 110 00:08:00,236 --> 00:08:03,172 上様 しばらく! 誰か? 111 00:08:03,172 --> 00:08:07,176 尾張家中 加倉井隼人と申しまする 112 00:08:07,176 --> 00:08:12,181 それがしの不行き届きにより かくなる次第と相成りました 113 00:08:12,181 --> 00:08:18,187 上様におかせられましては お関わりなさりませぬよう 114 00:08:18,187 --> 00:08:24,193 なれど このままでは 戦になってしまう 115 00:08:24,193 --> 00:08:27,196 もし 江戸が・ 116 00:08:27,196 --> 00:08:30,196 上野のお山みたいに 焼けてしまったら・ 117 00:08:32,201 --> 00:08:36,205 権現様に申し訳ないもの 118 00:08:36,205 --> 00:08:56,225 ・~ 119 00:08:56,225 --> 00:08:59,228 ・~ 120 00:08:59,228 --> 00:09:01,128 (配下たち)アッ… 121 00:09:12,174 --> 00:09:16,178 上様 あちらが 将軍家の御座所にござりまする 122 00:09:16,178 --> 00:09:18,180 お運びくださりませ 123 00:09:18,180 --> 00:09:22,184 もはや 将軍家のものではない 124 00:09:22,184 --> 00:09:26,188 あれなるは 天朝様の玉座ゆえ・ 125 00:09:26,188 --> 00:09:29,188 座ってはならぬ 126 00:09:40,202 --> 00:09:45,202 (家達)苦しゅうない 面を上げよ 127 00:09:51,213 --> 00:09:55,213 お前に 子はあるのかな? 128 00:10:00,222 --> 00:10:05,222 ねえ 答えてよ 的矢に 子はあるの? 129 00:10:08,230 --> 00:10:11,233 ウウッ… ウッ… 130 00:10:11,233 --> 00:10:14,233 ウゥ… 131 00:10:21,243 --> 00:10:25,247 ウゥ… 分かった 132 00:10:25,247 --> 00:10:28,250 だったら お薬をのんでよ 133 00:10:28,250 --> 00:10:33,250 お前が死んでしまったら 子が かわいそうだよ 134 00:10:35,257 --> 00:10:39,261 ・~ 135 00:10:39,261 --> 00:10:42,264 (家達) ててなし子は かわいそうだよ 136 00:10:42,264 --> 00:10:44,266 だから 死なないで 137 00:10:44,266 --> 00:10:56,278 ・~ 138 00:10:56,278 --> 00:10:59,281 上様のおっしゃるとおりじゃ! 139 00:10:59,281 --> 00:11:03,219 お主には 妻と子供がおるであろう! 140 00:11:03,219 --> 00:11:06,222 お主が どこで何をしようと もはや かまわぬが・ 141 00:11:06,222 --> 00:11:09,225 死ぬことは 断じて許さぬ! 142 00:11:09,225 --> 00:11:17,233 ・~ 143 00:11:17,233 --> 00:11:20,236 のんでくれ 144 00:11:20,236 --> 00:11:22,238 六兵衛! 145 00:11:22,238 --> 00:11:42,258 ・~ 146 00:11:42,258 --> 00:12:02,211 ・~ 147 00:12:02,211 --> 00:12:10,219 ・~ 148 00:12:10,219 --> 00:12:12,221 よかった 149 00:12:12,221 --> 00:12:29,238 ・~ 150 00:12:29,238 --> 00:12:34,243 (お勢)時代は変われど 私どもの主人は戻らず…・ 151 00:12:34,243 --> 00:12:38,247 でございますね 152 00:12:38,247 --> 00:12:42,251 うちの主人が 勤めを果たさぬせいで… 153 00:12:42,251 --> 00:12:44,253 なんと申し上げてよいやら… (お勢)しずゑ様・ 154 00:12:44,253 --> 00:12:47,256 そんなつもりでは… ほら もしや・ 155 00:12:47,256 --> 00:12:51,260 元号が変われば 六兵衛様も 時代とともに・ 156 00:12:51,260 --> 00:12:55,264 立ち去るのではございませぬか? (女性)きっと そうですよ 157 00:12:55,264 --> 00:12:58,264 そうだとよいのですが… 158 00:13:18,220 --> 00:13:28,230 159 00:13:28,230 --> 00:13:30,230 ゆっくり休まれよ 160 00:13:43,245 --> 00:14:00,262 ・~ 161 00:14:00,262 --> 00:14:06,201 <徳川慶喜が 駿府で謹慎を始め ひと月余り> 162 00:14:06,201 --> 00:14:11,206 <追うように移った家達は 駿府藩主となる> 163 00:14:11,206 --> 00:14:17,212 ・~ 164 00:14:17,212 --> 00:14:21,216 <そして この日 「慶応」は「明治」に改元され・ 165 00:14:21,216 --> 00:14:25,220 江戸時代は幕を閉じた> 166 00:14:25,220 --> 00:14:28,223 <だが…> 167 00:14:28,223 --> 00:14:31,226 六兵衛 168 00:14:31,226 --> 00:14:35,230 本日をもって 改元がなされた 169 00:14:35,230 --> 00:14:40,230 新しき元号は 「明治」と称する 170 00:14:55,250 --> 00:15:00,255 来る十月十三日 京都の御所より・ 171 00:15:00,255 --> 00:15:03,155 天朝様が こちらに ご到着あそばされる 172 00:15:08,197 --> 00:15:12,201 さすれば・ 173 00:15:12,201 --> 00:15:16,201 旗本である お主の役目は 終わったのではないか? 174 00:15:21,210 --> 00:15:23,212 まったく… 175 00:15:23,212 --> 00:15:27,216 ・(足音) 176 00:15:27,216 --> 00:15:31,220 (本多)そやつの狙いが とうとう分かったぞ! 177 00:15:31,220 --> 00:15:33,222 何を今更… 178 00:15:33,222 --> 00:15:37,226 (本多)天朝様と共に・ 179 00:15:37,226 --> 00:15:40,229 多くのお偉方が やってくるであろう 180 00:15:40,229 --> 00:15:46,235 その機に乗じて 新政府の顕官に 取り入ろうとしておるのだ 181 00:15:46,235 --> 00:15:49,238 いいかげんにしてくだされ 182 00:15:49,238 --> 00:15:54,243 しからば なぜ 六兵衛は 大村様の誘いを断ったのですか? 183 00:15:54,243 --> 00:15:57,246 (本多)大村殿は武官じゃ 184 00:15:57,246 --> 00:16:01,183 武官である大村殿に付けば・ 185 00:16:01,183 --> 00:16:05,187 イギリスと 戦うはめになるかもしれん 186 00:16:05,187 --> 00:16:11,193 座っておるだけのこやつに そんな勇気はなかろう 187 00:16:11,193 --> 00:16:14,196 自分を棚に上げて どの口が言いなさる 188 00:16:14,196 --> 00:16:16,198 (本多)なんじゃと? 189 00:16:16,198 --> 00:16:21,203 其処許こそ 新政府の役職に 就こうと思ってるのではないか? 190 00:16:21,203 --> 00:16:25,203 ・~ 191 00:16:27,209 --> 00:16:34,109 (本多)沈没する船もろとも 江戸前に沈むわけにはゆかぬ 192 00:16:36,218 --> 00:16:42,218 それがしにも 妻や子があるのじゃ 193 00:16:47,229 --> 00:16:51,233 (長太郎)い~ち… ふた~つ み~っつ… ワアー 194 00:16:51,233 --> 00:16:54,236 フフフッ 195 00:16:54,236 --> 00:16:56,238 しずゑ 196 00:16:56,238 --> 00:16:58,238 今 帰った 197 00:17:00,242 --> 00:17:03,178 おかえりなさいませ うむ 198 00:17:03,178 --> 00:17:05,178 長らく留守にして すまなんだ 199 00:17:07,182 --> 00:17:10,185 天朝様が来るまでには 出てゆけと言うたんじゃが・ 200 00:17:10,185 --> 00:17:14,185 あやつ 仏像になったようでのう ハハハッ 201 00:17:19,194 --> 00:17:24,199 ん? どうした? 202 00:17:24,199 --> 00:17:27,202 六兵衛のように 腹でも下したか? 203 00:17:27,202 --> 00:17:30,205 ハァ… 204 00:17:30,205 --> 00:17:33,208 久方ぶりに帰ったというのに・ 205 00:17:33,208 --> 00:17:37,212 六兵衛様の話ばかりで ございますね 206 00:17:37,212 --> 00:17:40,215 ん? 旦那様がおらぬ間・ 207 00:17:40,215 --> 00:17:44,219 長太郎が どれだけ寂しがっていることか 208 00:17:44,219 --> 00:17:46,219 アッ… 209 00:17:50,225 --> 00:17:53,228 長太郎 210 00:17:53,228 --> 00:17:55,230 すまんのう 211 00:17:55,230 --> 00:17:57,232 すまんのう (長太郎)うん 212 00:17:57,232 --> 00:18:00,235 すまんのう 213 00:18:00,235 --> 00:18:04,172 フフッ すまんのう~ 214 00:18:04,172 --> 00:18:08,176 先日 私 六兵衛様のお宅へ伺いました 215 00:18:08,176 --> 00:18:12,180 はあ? 奥様に会い お話をしました 216 00:18:12,180 --> 00:18:15,183 なぜ そのようなまねを? 217 00:18:15,183 --> 00:18:19,187 旦那様が だらしないからでございましょう 218 00:18:19,187 --> 00:18:21,189 余計なことをせんでくれ 219 00:18:21,189 --> 00:18:23,191 わしは わしで 精いっぱいやっておる! 220 00:18:23,191 --> 00:18:25,193 精いっぱいでございますか? そうじゃ 221 00:18:25,193 --> 00:18:27,195 食いぶちを得られるように・ 222 00:18:27,195 --> 00:18:30,198 毎日 毎日 必死に勤めておるのじゃ! 223 00:18:30,198 --> 00:18:33,201 旦那様 お給金さえ持ってくればいいと・ 224 00:18:33,201 --> 00:18:35,203 お思いではございませぬか! なぬ? 225 00:18:35,203 --> 00:18:37,205 旦那様は 何も分かっておりません 226 00:18:37,205 --> 00:18:41,209 分かっとらんのは そっちじゃ ハァー 227 00:18:41,209 --> 00:18:45,209 つべこべ言わず 早く お勤めを終えてくださいまし 228 00:18:48,216 --> 00:18:50,216 もう知らぬわ 229 00:18:55,223 --> 00:18:57,223 勝手にせぇ! 230 00:19:01,163 --> 00:19:04,166 (長太郎)とと様は? 231 00:19:04,166 --> 00:19:07,169 (福地)ふむ… なるほど 232 00:19:07,169 --> 00:19:11,173 独り身の僕には分からぬ 苦労があるようだな 233 00:19:11,173 --> 00:19:14,176 しかし 単身 的矢家に乗り込むとは・ 234 00:19:14,176 --> 00:19:18,176 おびえて逃げた加倉井さんより 男気があるではないか 235 00:19:20,182 --> 00:19:24,186 なあ 福地殿 もう一度 的矢家を訪ねてみんか? 236 00:19:24,186 --> 00:19:27,189 (福地)ん? なんの心変わりだ? 237 00:19:27,189 --> 00:19:31,193 いや あやつのご家族なら 心を動かせるかもしれぬ 238 00:19:31,193 --> 00:19:34,196 (福地)うん… 239 00:19:34,196 --> 00:19:36,196 よし… (福地)ん? 240 00:19:50,212 --> 00:19:52,212 アッ 241 00:19:57,219 --> 00:19:59,221 (清右衛門)何用か? 242 00:19:59,221 --> 00:20:03,225 拙者 加倉井隼人と申しまする 243 00:20:03,225 --> 00:20:08,225 的矢六兵衛殿の近況を 伝えに参りました 244 00:20:14,236 --> 00:20:17,239 入りなされよ 245 00:20:17,239 --> 00:20:19,239 江戸も終わった 246 00:20:21,243 --> 00:20:26,248 すべて話すときが 来たのかもしれぬ 247 00:20:26,248 --> 00:20:32,254 ・~ 248 00:20:32,254 --> 00:20:35,257 (清右衛門)この的矢という家・ 249 00:20:35,257 --> 00:20:40,262 旗本の家という看板が 残っているだけでござる 250 00:20:40,262 --> 00:20:43,265 ん? それは どういう意味でございますか? 251 00:20:43,265 --> 00:20:49,265 実は それがし この家の生まれではないのだ 252 00:20:51,273 --> 00:20:57,279 母は 的矢に捨てられた女で・ 253 00:20:57,279 --> 00:21:00,282 貧しい長屋育ち 254 00:21:00,282 --> 00:21:04,219 そもそも それがしは・ 255 00:21:04,219 --> 00:21:08,219 旗本を継ぐべき人間ではなかった 256 00:21:10,225 --> 00:21:16,231 しかし 本家の兄上が 早くに亡くなり・ 257 00:21:16,231 --> 00:21:18,233 跡継ぎもおらず・ 258 00:21:18,233 --> 00:21:23,238 それがしは 的矢の体面を保つため・ 259 00:21:23,238 --> 00:21:28,238 とりあえず 迎えられたのでござるよ 260 00:21:30,245 --> 00:21:32,247 そうであったのですか… 261 00:21:32,247 --> 00:21:39,147 (清右衛門)それから 一昨年に この家を去った・ 262 00:21:41,256 --> 00:21:44,259 借金をこさえていた六兵衛… 263 00:21:44,259 --> 00:21:47,262 (元の六兵衛)無理を承知で お願い申し上げまする 264 00:21:47,262 --> 00:21:50,265 父 母だけは…・ 265 00:21:50,265 --> 00:21:53,268 なんとかならぬでしょうか? 266 00:21:53,268 --> 00:21:56,271 あやつは・ 267 00:21:56,271 --> 00:22:01,209 みどもらとは血縁のない 養子でござった 268 00:22:01,209 --> 00:22:03,211 養子? 269 00:22:03,211 --> 00:22:09,211 それがしどもの本当の子は 早くに亡くなったのでござる 270 00:22:15,223 --> 00:22:22,230 (清右衛門)それから先 子は できなかったのだが・ 271 00:22:22,230 --> 00:22:29,237 的矢の家を 絶やすわけにはいかぬゆえ・ 272 00:22:29,237 --> 00:22:32,240 養子をもらい受けたのでござる 273 00:22:32,240 --> 00:22:36,244 その養子が 旗本として ふさわしくない・ 274 00:22:36,244 --> 00:22:39,247 とんでもない人間だったわけですか 275 00:22:39,247 --> 00:22:46,254 (清右衛門)いや… それがしどもの罪でござる 276 00:22:46,254 --> 00:22:51,259 (はる)養子とはいえ できた子供が かわいくて・ 277 00:22:51,259 --> 00:22:54,259 甘やかしすぎたのでございます 278 00:22:57,265 --> 00:23:00,268 そんなときでござった 279 00:23:00,268 --> 00:23:05,206 淀屋に 旗本株を買いたいという男を・ 280 00:23:05,206 --> 00:23:07,206 紹介されたのは 281 00:23:09,210 --> 00:23:13,214 もし 男に無礼あらば・ 282 00:23:13,214 --> 00:23:17,218 刺し違えて 死ぬる覚悟にござった 283 00:23:17,218 --> 00:23:37,238 ・~ 284 00:23:37,238 --> 00:23:44,138 (六兵衛の妻)私どもの 父 母になってくださいまし 285 00:23:46,247 --> 00:23:50,251 お心遣いは ありがたいがの・ 286 00:23:50,251 --> 00:23:55,256 お主らの 誠の親御どのを差し置いて・ 287 00:23:55,256 --> 00:23:59,260 我らが 親になどなれようか 288 00:23:59,260 --> 00:24:06,201 ・~ 289 00:24:06,201 --> 00:24:13,101 主人も私も 生まれついて 親を知りませぬ 290 00:24:27,222 --> 00:24:33,228 お主 一体 何をしてきた? 291 00:24:33,228 --> 00:24:37,232 親の顔すら知らぬ二人が・ 292 00:24:37,232 --> 00:24:40,232 どうやって ここまで来た? 293 00:24:49,244 --> 00:24:54,249 やめおけ 幕府は しまいじゃ 294 00:24:54,249 --> 00:25:01,189 そうとなれば 旗本とて 一文の値打ちもない 295 00:25:01,189 --> 00:25:08,089 これまでの苦労を 水の泡にしてはなるまいぞ 296 00:25:19,207 --> 00:25:24,212 (清右衛門)「さればこそ」 297 00:25:24,212 --> 00:25:28,212 重いひと言でござった 298 00:25:30,218 --> 00:25:35,223 そのあと 的矢の事情を話した 299 00:25:35,223 --> 00:25:40,223 すると あの男 自ら言いだしたのじゃ 300 00:25:42,230 --> 00:25:47,235 的矢六兵衛を名乗りたいと… 301 00:25:47,235 --> 00:25:51,239 六兵衛殿は 一体 なぜ 旗本になったのでございますか? 302 00:25:51,239 --> 00:25:54,242 知らぬ えっ? 303 00:25:54,242 --> 00:25:58,246 あの男の生まれも本名も・ 304 00:25:58,246 --> 00:26:01,182 何も知らぬ 305 00:26:01,182 --> 00:26:06,187 (福地)しかし 素性の分からぬ者と 一緒に暮らすなど… 306 00:26:06,187 --> 00:26:08,189 フッ… 307 00:26:08,189 --> 00:26:13,189 素性を知ることに なんの意味があろう 308 00:26:15,196 --> 00:26:22,203 家柄だ 血筋だと こだわり続けるうちに・ 309 00:26:22,203 --> 00:26:28,203 天下の旗本にふさわしい武士は 一人もいなくなった 310 00:26:30,211 --> 00:26:33,214 それが すべてではござらんか? 311 00:26:33,214 --> 00:26:38,219 ・~ 312 00:26:38,219 --> 00:26:43,224 武士の時代 最後のときを迎えて・ 313 00:26:43,224 --> 00:26:51,232 我らは 的矢六兵衛という 一閃の光芒を見た 314 00:26:51,232 --> 00:27:03,178 ・~ 315 00:27:03,178 --> 00:27:06,181 それでいいではござらんか 316 00:27:06,181 --> 00:27:26,201 ・~ 317 00:27:26,201 --> 00:27:39,214 ・~ 318 00:27:39,214 --> 00:27:42,217 (六兵衛の妻) ご苦労さまでございました 319 00:27:42,217 --> 00:27:47,217 アッ… 六兵衛殿は 随分と 腹をくくってらっしゃる 320 00:27:50,225 --> 00:27:54,225 (福地)しかし あなたは それでよいのですか? 321 00:27:56,231 --> 00:27:59,231 (六兵衛の妻)かまいませぬ 322 00:28:04,172 --> 00:28:07,175 ところで 先日・ 323 00:28:07,175 --> 00:28:10,175 女房が訪ねたと聞いた 324 00:28:12,180 --> 00:28:17,185 その折は 大変 失礼いたした 325 00:28:17,185 --> 00:28:20,188 失礼なことなど 何もござりませぬ 326 00:28:20,188 --> 00:28:24,192 いや ぶしつけなところも あったでござろう 327 00:28:24,192 --> 00:28:30,198 それもこれも お城勤めを果たされている・ 328 00:28:30,198 --> 00:28:34,202 加倉井様を 思ってのことでござりましょう 329 00:28:34,202 --> 00:28:36,204 なんじゃと? 330 00:28:36,204 --> 00:28:39,207 私が・ 331 00:28:39,207 --> 00:28:45,213 主人が死んで 戻らずともかまわぬと申したら・ 332 00:28:45,213 --> 00:28:49,217 こんなことを おっしゃっておりました 333 00:28:49,217 --> 00:28:53,221 たとえ 戻らずに死んでも かまわぬとおっしゃいますか? 334 00:28:53,221 --> 00:28:57,221 それが宿命なれば 335 00:29:01,162 --> 00:29:04,165 承知いたしました 336 00:29:04,165 --> 00:29:07,168 ですが・ 337 00:29:07,168 --> 00:29:11,168 私は 主人が死んで戻ることは 許しませぬ 338 00:29:13,174 --> 00:29:18,179 どんなことがあっても 生き抜いて・ 339 00:29:18,179 --> 00:29:24,185 私と息子を 幸せにしてもらいますゆえ 340 00:29:24,185 --> 00:29:38,199 ・~ 341 00:29:38,199 --> 00:29:41,202 狙って… 342 00:29:41,202 --> 00:29:43,204 惜しい 343 00:29:43,204 --> 00:29:46,207 ヨッ 344 00:29:46,207 --> 00:29:48,209 オッ アアー! 345 00:29:48,209 --> 00:29:52,213 当たった フフフッ 346 00:29:52,213 --> 00:29:59,113 ・~ 347 00:30:03,224 --> 00:30:05,224 すまなんだ! 348 00:30:07,228 --> 00:30:09,228 旦那様… 349 00:30:18,239 --> 00:30:21,239 わしは 大バカ者じゃった 350 00:30:23,244 --> 00:30:26,247 お主が いかなる気持ちで 家を守っていてくれたか・ 351 00:30:26,247 --> 00:30:30,251 考えが及ばんかった 352 00:30:30,251 --> 00:30:35,251 わしは 一介の御徒組頭じゃ 353 00:30:37,258 --> 00:30:43,264 遊んで暮らせるような 大金を稼ぐなど まずなかろう 354 00:30:43,264 --> 00:30:46,267 この先 世が変わるなかで・ 355 00:30:46,267 --> 00:30:51,272 つらく苦しい思いを させてしまうかもしれん 356 00:30:51,272 --> 00:30:54,272 じゃが これだけは約束する 357 00:30:56,277 --> 00:31:00,277 お主と長太郎のことは 必ずや守ってみせる! 358 00:31:02,216 --> 00:31:09,223 それが わしの人生で 最も大切な使命じゃ 359 00:31:09,223 --> 00:31:17,231 ・~ 360 00:31:17,231 --> 00:31:19,231 しずゑ・ 361 00:31:22,236 --> 00:31:25,239 長太郎・ 362 00:31:25,239 --> 00:31:29,243 お城での勤めを果たすまで・ 363 00:31:29,243 --> 00:31:34,248 もうしばし待っていてくれ 364 00:31:34,248 --> 00:31:44,258 ・~ 365 00:31:44,258 --> 00:31:47,261 お顔を上げてくださいまし 366 00:31:47,261 --> 00:31:51,265 ・~ 367 00:31:51,265 --> 00:31:56,270 旦那様は 加倉井家の主でございますゆえ 368 00:31:56,270 --> 00:31:58,272 主! 369 00:31:58,272 --> 00:32:01,172 フフッ フフッ フッ 370 00:32:03,211 --> 00:32:06,214 <明治元年九月二十日> 371 00:32:06,214 --> 00:32:09,217 <明治天皇を乗せた御鳳輦は・ 372 00:32:09,217 --> 00:32:14,222 京都御所より東京へ向けて 行幸に発った> 373 00:32:14,222 --> 00:32:19,227 <九月二十二日 会津若松城が落城> 374 00:32:19,227 --> 00:32:24,232 <翌月九日 盛岡藩が 新政府に降伏し・ 375 00:32:24,232 --> 00:32:27,235 東北戦争は終結> 376 00:32:27,235 --> 00:32:31,239 <こうして 江戸の時代は 姿を消してゆく> 377 00:32:31,239 --> 00:32:37,245 ・~ 378 00:32:37,245 --> 00:32:39,245 六兵衛よ・ 379 00:32:41,249 --> 00:32:45,249 あさってには 天朝様が ご到着あそばされる 380 00:32:49,257 --> 00:32:52,260 それでな・ 381 00:32:52,260 --> 00:32:58,260 儀式は ここ… 黒書院で行われる予定なんじゃ 382 00:33:01,202 --> 00:33:04,205 じゃが・ 383 00:33:04,205 --> 00:33:07,205 お主が ここに居座っていては それが かなわぬ 384 00:33:10,211 --> 00:33:13,214 お城の中にいるのはよい 385 00:33:13,214 --> 00:33:17,214 せめて ここから出てくれぬか? 386 00:33:25,226 --> 00:33:29,230 事と次第によっては わしも お主も・ 387 00:33:29,230 --> 00:33:32,230 腹を切ることになるかもしれん 388 00:33:37,238 --> 00:33:39,238 動く気はないか? 389 00:33:43,244 --> 00:33:45,246 (福地)フゥー 390 00:33:45,246 --> 00:33:49,250 おい 別れの挨拶に来たぞ 391 00:33:49,250 --> 00:33:52,253 (福地)駿府ですか? (勝)おうよ 392 00:33:52,253 --> 00:33:56,257 上様方がおるのでな 393 00:33:56,257 --> 00:34:01,157 で 結局 俺よりも居残ったか 394 00:34:04,198 --> 00:34:06,200 大した風格だ 395 00:34:06,200 --> 00:34:12,206 もはや 本物の将軍のようだな 396 00:34:12,206 --> 00:34:15,209 で どうした? 397 00:34:15,209 --> 00:34:19,213 天朝様を迎え入れるにあたり やはり こやつを どうかせんと 398 00:34:19,213 --> 00:34:23,217 アアー それなんだがね 置き土産に 一つ 案を考えてきた 399 00:34:23,217 --> 00:34:26,220 (福地)オッ なんと 400 00:34:26,220 --> 00:34:30,224 (勝)出ないのならば この黒書院を 板戸で塞ぎ・ 401 00:34:30,224 --> 00:34:32,226 廊下に 見張りでも立たしとけ 402 00:34:32,226 --> 00:34:34,228 (福地)オッ それは… (勝)そうすりゃ・ 403 00:34:34,228 --> 00:34:37,231 外からは ただの座敷に見えるし 直訴もできん 404 00:34:37,231 --> 00:34:40,234 いや しかし もろもろの儀式は ここで行われると… 405 00:34:40,234 --> 00:34:43,237 そんなもん 大広間にでも 変更すりゃいいんだよ! 406 00:34:43,237 --> 00:34:47,241 いや しかし… 俺が 話をつけといてやる 407 00:34:47,241 --> 00:34:50,244 なっ じゃあ 頼んだぞ アッ… 408 00:34:50,244 --> 00:34:53,244 (勝)じゃあ 福地君 元気でな (福地)はい 409 00:35:01,188 --> 00:35:04,191 さすが 無理筋を通してきた人だ 410 00:35:04,191 --> 00:35:07,191 (小源太)どうなさいますか? 411 00:35:10,197 --> 00:35:12,199 やるしかあるまい 412 00:35:12,199 --> 00:35:20,207 ・~ 413 00:35:20,207 --> 00:35:23,210 (福地) 守神のお社を作ってる気分だな 414 00:35:23,210 --> 00:35:27,214 (小源太)しかし 結局 こやつ 何者なのでございましょうか? 415 00:35:27,214 --> 00:35:30,217 もはや 何者でもよい 416 00:35:30,217 --> 00:35:33,220 こやつの生まれが 何であろうと 名が 何であろうと・ 417 00:35:33,220 --> 00:35:36,223 そこに 意味などござらん 418 00:35:36,223 --> 00:35:41,228 武士として生きることに 家柄や血筋など関係ないのだ 419 00:35:41,228 --> 00:35:46,233 己の道を信じ 意思を貫く一人の旗本 420 00:35:46,233 --> 00:35:49,236 それでよいではないか 421 00:35:49,236 --> 00:35:58,245 ・~ 422 00:35:58,245 --> 00:36:02,183 <この日 江戸の街から人が消えた> 423 00:36:02,183 --> 00:36:05,186 <江戸の 人々は 新たな支配者である・ 424 00:36:05,186 --> 00:36:07,188 天皇についての知識を・ 425 00:36:07,188 --> 00:36:09,190 持ち合わせておらず・ 426 00:36:09,190 --> 00:36:12,193 <むげに 占領されるのではないかと・ 427 00:36:12,193 --> 00:36:14,195 恐れていたからである> 428 00:36:14,195 --> 00:36:17,198 <皆 恐れや困惑にとらわれ・ 429 00:36:17,198 --> 00:36:21,202 ただ 息を潜めるのみであった> 430 00:36:21,202 --> 00:36:27,208 ・~ 431 00:36:27,208 --> 00:36:32,213 <一方の江戸城 城内は 静寂に包まれ・ 432 00:36:32,213 --> 00:36:36,217 幕府始まって以来 二六〇有余年の・ 433 00:36:36,217 --> 00:36:41,217 栄華と喧騒は もはや みじんも感じられなかった> 434 00:37:00,241 --> 00:37:04,141 六兵衛 入るぞ 435 00:37:24,198 --> 00:37:33,207 436 00:37:33,207 --> 00:37:35,207 お主のじゃ 437 00:37:37,211 --> 00:37:40,214 いくら封禁されておるとはいえ・ 438 00:37:40,214 --> 00:37:44,214 その格好で 天朝様を お迎えするわけにもいくまい 439 00:38:03,170 --> 00:38:23,190 440 00:38:23,190 --> 00:38:38,205 441 00:38:38,205 --> 00:38:40,205 ンン… 442 00:38:46,213 --> 00:38:48,215 フゥー 443 00:38:48,215 --> 00:38:51,215 お主が飲まんでも わしは飲むぞ 444 00:38:56,223 --> 00:38:59,223 アァ… 445 00:39:03,163 --> 00:39:05,163 ンン… 446 00:39:08,168 --> 00:39:14,174 ここは 今でも 江戸が続いとるようじゃのう 447 00:39:14,174 --> 00:39:21,181 花のお江戸も 随分 廃れてしまった 448 00:39:21,181 --> 00:39:27,187 お大名は どなたも お国元に引き揚げてしもうたし・ 449 00:39:27,187 --> 00:39:31,191 旗本御家人の多くは 自ら 逼塞しおるか・ 450 00:39:31,191 --> 00:39:36,191 さもなくば… 行方知れずじゃ 451 00:39:40,200 --> 00:39:47,207 じゃが 天朝様がいらっしゃれば また 空気も変わるじゃろう 452 00:39:47,207 --> 00:39:49,207 うん 453 00:39:52,212 --> 00:39:54,212 アァ… 454 00:40:02,222 --> 00:40:06,222 思えば 実に 足かけ八月 455 00:40:09,229 --> 00:40:15,229 お主とは 長い月日を共にしたのう 456 00:40:19,239 --> 00:40:25,245 あれは まだ 桜も咲かぬ 底冷えする時期じゃったのう 457 00:40:25,245 --> 00:40:29,249 虎の間に居座る お主を見たときは・ 458 00:40:29,249 --> 00:40:32,249 どうしたもんかと思うたもんじゃ 459 00:40:34,254 --> 00:40:39,259 握り飯を食うた姿は 今でも よう覚えとる 460 00:40:39,259 --> 00:40:45,259 あんなに うまそうに食らうやつは 生まれて初めて見たのう 461 00:40:47,267 --> 00:40:53,273 あれ以来 わしらも 食事の作法を 気にするようになったもんじゃ 462 00:40:53,273 --> 00:40:57,277 虎の間を立ったお主は・ 463 00:40:57,277 --> 00:41:01,177 大広間の武者隠しに向こうたのう 464 00:41:03,217 --> 00:41:08,217 それで 風呂に入ったと思うたら 帝鑑の間じゃ 465 00:41:10,224 --> 00:41:14,228 何を思うて 場所を移ったかは分からぬが・ 466 00:41:14,228 --> 00:41:17,228 そのつど 肝を冷やしたものじゃ 467 00:41:19,233 --> 00:41:23,233 お主の脇差しを 取ろうとしたときは… 468 00:41:26,240 --> 00:41:29,240 生きた心地がせんかったわ 469 00:41:31,245 --> 00:41:36,250 こんなことを言うと 笑われるかもしれんがのう・ 470 00:41:36,250 --> 00:41:41,255 武士の魂でもある脇差しを わしに渡してくれたとき・ 471 00:41:41,255 --> 00:41:46,255 少し 心が通じ合った気がしたもんじゃ 472 00:41:49,263 --> 00:41:52,266 あのとき・ 473 00:41:52,266 --> 00:41:55,269 こやつは 無益に人を殺したりせんと・ 474 00:41:55,269 --> 00:41:57,269 ふっと感じてな 475 00:42:00,274 --> 00:42:02,209 まあ・ 476 00:42:02,209 --> 00:42:06,213 お主が わしのことを どう思っとるかは分からぬがな 477 00:42:06,213 --> 00:42:10,217 ・~ 478 00:42:10,217 --> 00:42:12,219 アァ… 479 00:42:12,219 --> 00:42:16,223 ・~ 480 00:42:16,223 --> 00:42:22,229 西郷様に 大村様 481 00:42:22,229 --> 00:42:26,233 お主の前に どんなお偉方が現れても… 482 00:42:26,233 --> 00:42:30,237 ・~ 483 00:42:30,237 --> 00:42:34,237 お主は 誰にも媚びへつらわんかった 484 00:42:37,244 --> 00:42:40,247 あまりに堂々としておるゆえ・ 485 00:42:40,247 --> 00:42:43,250 上様かと思ってしまったほどじゃ 486 00:42:43,250 --> 00:42:47,254 ・~ 487 00:42:47,254 --> 00:42:49,256 ハァー 488 00:42:49,256 --> 00:42:54,261 その度胸 分けてほしいものよ 489 00:42:54,261 --> 00:43:00,267 ・~ 490 00:43:00,267 --> 00:43:04,204 ところで お主… 491 00:43:04,204 --> 00:43:09,209 ・~ 492 00:43:09,209 --> 00:43:12,209 やはり 上様ではあるまいな? 493 00:43:14,214 --> 00:43:16,214 フゥ… 494 00:43:18,218 --> 00:43:22,222 ハハッ 冗談じゃ 495 00:43:22,222 --> 00:43:27,227 ・~ 496 00:43:27,227 --> 00:43:31,227 大廊下の上之御部屋に 溜間 497 00:43:33,233 --> 00:43:38,238 世間が 時代の変化に大騒ぎすれど・ 498 00:43:38,238 --> 00:43:42,242 お主は 戦国の世から そこにおるように変わらなかった 499 00:43:42,242 --> 00:43:44,244 お主を見る度・ 500 00:43:44,244 --> 00:43:48,248 どっしりとした安心すら 感じるようになっておった 501 00:43:48,248 --> 00:43:51,251 あまりに お主のことを気にしたせいで・ 502 00:43:51,251 --> 00:43:54,254 女房に 叱られてしもうたんじゃぞ! 503 00:43:54,254 --> 00:43:59,259 ・~ 504 00:43:59,259 --> 00:44:04,198 お主の奥方も 大層 気が強そうじゃ 505 00:44:04,198 --> 00:44:08,198 こっぴどく 叱られるのではござらぬか? 506 00:44:10,204 --> 00:44:13,207 そうか 分かったぞ 507 00:44:13,207 --> 00:44:18,212 怒られるのが怖くて 帰れぬのじゃな? 508 00:44:18,212 --> 00:44:20,214 ハハハッ 509 00:44:20,214 --> 00:44:25,219 ・~ 510 00:44:25,219 --> 00:44:29,223 うなぎのせいで 死なんでよかったわい 511 00:44:29,223 --> 00:44:36,123 ・~ 512 00:44:38,232 --> 00:44:41,232 まだ 何も語ってくれぬか? 513 00:44:48,242 --> 00:44:50,242 よい 514 00:44:55,249 --> 00:45:00,249 いつか お主と 笑って 酒を酌み交わしたいものじゃ 515 00:45:04,191 --> 00:45:09,191 のう 六兵衛と申す者よ 516 00:45:17,204 --> 00:45:19,204 アァ… 517 00:45:22,209 --> 00:45:25,209 しかし まさか・ 518 00:45:27,214 --> 00:45:30,217 将軍様の御座所・ 519 00:45:30,217 --> 00:45:35,217 ここ… 黒書院まで上るとは思わなんだ 520 00:45:40,227 --> 00:45:45,232 幕府は滅び 江戸はなくなり・ 521 00:45:45,232 --> 00:45:49,236 上様も駿府におられる今・ 522 00:45:49,236 --> 00:45:53,240 お主は まるで・ 523 00:45:53,240 --> 00:45:56,243 代々の将軍様に代わって・ 524 00:45:56,243 --> 00:46:00,243 天朝様をお迎えするようじゃな 525 00:46:05,185 --> 00:46:09,189 お主・ 526 00:46:09,189 --> 00:46:11,189 今 何を思うておる? 527 00:46:15,195 --> 00:46:19,199 よもや・ 528 00:46:19,199 --> 00:46:22,199 初めから お迎えするつもりで居座った…・ 529 00:46:24,204 --> 00:46:27,207 ということはあるまいな? 530 00:46:27,207 --> 00:46:36,216 ・~ 531 00:46:36,216 --> 00:46:38,216 (杯を置く音) 532 00:46:41,221 --> 00:46:43,221 おい 六兵衛 533 00:46:46,226 --> 00:46:49,229 死を覚悟することはかまわぬ 534 00:46:49,229 --> 00:46:53,233 じゃが・ 535 00:46:53,233 --> 00:46:57,233 本当に死するつもりであれば…・ 536 00:47:00,240 --> 00:47:02,140 許さぬ 537 00:47:05,178 --> 00:47:07,178 六兵衛 538 00:47:12,185 --> 00:47:16,189 新しい時代を・ 539 00:47:16,189 --> 00:47:20,193 共に生きようぞ 540 00:47:20,193 --> 00:47:24,197 ・~ 541 00:47:24,197 --> 00:47:26,199 よいな? 542 00:47:26,199 --> 00:47:31,204 ・~ 543 00:47:31,204 --> 00:47:34,207 男と男の約束じゃ 544 00:47:34,207 --> 00:47:50,223 ・~ 545 00:47:50,223 --> 00:47:53,226 (西郷)力ずくは いけもはん! 546 00:47:53,226 --> 00:47:55,228 (木戸)大不敬の罪により・ 547 00:47:55,228 --> 00:47:59,232 首を はねられるだけじゃ 548 00:47:59,232 --> 00:48:03,170 (女官)徳川幕府の怨念 549 00:48:03,170 --> 00:48:06,173 武士の魂は 忘れてはなりませんよ 550 00:48:06,173 --> 00:48:09,176 (慶喜)その方には 話してもよいかもしれぬ 551 00:48:09,176 --> 00:48:11,176 なりませぬ! 552 00:48:13,180 --> 00:48:15,182 (男性)的矢六兵衛… (男性)的矢殿! 553 00:48:15,182 --> 00:48:17,182 六兵衛! 554 00:48:19,186 --> 00:48:39,206 ・~ 555 00:48:39,206 --> 00:48:59,226 ・~ 556 00:48:59,226 --> 00:49:19,179 ・~ 557 00:49:19,179 --> 00:49:39,199 ・~ 558 00:49:39,199 --> 00:49:53,999 ・~