1 00:00:02,202 --> 00:00:08,942 ♬~(テーマ音楽) 2 00:00:08,942 --> 00:01:06,633 ♬~ 3 00:01:11,972 --> 00:01:15,475 (マチ子)ごちそうさまでした。 (はる)はい。 4 00:01:25,485 --> 00:01:29,489 (マリ子)どこ行くの? 表 掃いてくんの。 5 00:01:32,292 --> 00:01:35,796 (ヨウ子)ごちそうさまでした。 (はる)はい。 6 00:01:35,796 --> 00:01:41,301 (戸の開閉音) 7 00:01:41,301 --> 00:01:43,503 (ヨウ子)支度してきます。 8 00:01:46,640 --> 00:01:49,443 (はる)ねえ 一家のことだもの。 9 00:01:49,443 --> 00:01:53,146 この際 我が家の状態を あの子たちにも 話しておいた方がいいんじゃないかしら。 10 00:01:53,146 --> 00:01:55,082 言う時が来たら言います。 11 00:01:55,082 --> 00:01:57,651 でも せっかく糸口が つかめかかったんですもの。 12 00:01:57,651 --> 00:02:01,388 もう少し 暮らしのめどがつくまで 馬耳東風でいいんじゃないんですか。 13 00:02:01,388 --> 00:02:05,592 (はる)マリ子が そう言うとなら そうしましょうか。 14 00:02:05,592 --> 00:02:09,763 あのね 私も 私にできる仕事を 何か探してみようかと思うとるの。 15 00:02:09,763 --> 00:02:12,599 それだけはやめて! また そこの人たちと➡ 16 00:02:12,599 --> 00:02:16,470 喜びや苦しみを分かち合ったりしたら それこそ 我が家はパンクです。 17 00:02:16,470 --> 00:02:19,373 そうかしら。 そうよ! 18 00:02:19,373 --> 00:02:22,275 それより 私が 運よく忙しくなるようだったら➡ 19 00:02:22,275 --> 00:02:25,779 お母様は家にいて お台所や買い物をしていただいた方が➡ 20 00:02:25,779 --> 00:02:28,281 どれだけ助かるか分かんないですよ。 21 00:02:28,281 --> 00:02:31,118 はい そうしましょう。 22 00:02:31,118 --> 00:02:34,021 <お見事 マー姉ちゃん。➡ 23 00:02:34,021 --> 00:02:39,726 この時 一家の主導権を 確かに その手に入れたのですが…> 24 00:02:41,628 --> 00:02:44,531 変よ! お母様も マー姉ちゃんも! 25 00:02:44,531 --> 00:02:47,300 確かに 絶対 おかしいわよ! (巡査)おい こら!➡ 26 00:02:47,300 --> 00:02:49,302 何をするんだ! どうも すみません。 27 00:02:49,302 --> 00:02:52,172 女の子なら もうちょっと おしとやかにやらんか。 28 00:02:52,172 --> 00:02:55,175 わしは ゴミじゃないんだからな。 はい。 29 00:02:56,977 --> 00:03:00,580 あっ… 失礼します。 30 00:03:00,580 --> 00:03:06,253 んっ うん… あ~… 磯野はるさんというのは ここだね? 31 00:03:06,253 --> 00:03:08,188 はい 母ですけど。 32 00:03:08,188 --> 00:03:11,591 あ~ 実はな 昨日 はるさんの通帳を拾ったと➡ 33 00:03:11,591 --> 00:03:15,395 交番に届け出があったので わしが預かっておいたんだが。 ほら。 34 00:03:15,395 --> 00:03:19,099 どうも すみません。 本当に 母は そそっかしいところがあるもんですから。 35 00:03:19,099 --> 00:03:22,969 (巡査)いや もっとも空だからね そう感謝される筋合いはないんだが。 36 00:03:22,969 --> 00:03:25,972 空? それ どういうことですか? そんなこと わしが知るか。 37 00:03:25,972 --> 00:03:29,276 しかし たとえ 空でも 落とし物は落とし物だ。 38 00:03:29,276 --> 00:03:32,179 じゃあ 確かに渡したよ。 はい。ああ それから➡ 39 00:03:32,179 --> 00:03:34,147 もう少し 丁寧に掃きなさい。 40 00:03:34,147 --> 00:03:37,784 それじゃあ ゴミを散らかしているのと 同じだぞ。 41 00:03:37,784 --> 00:03:40,087 はい! うむ。 42 00:03:47,294 --> 00:03:49,796 一体…。 43 00:03:49,796 --> 00:03:52,833 (ヨウ子)マッちゃん姉ちゃま。 ヨウ子…。 44 00:03:52,833 --> 00:03:57,437 そうなの。 うちには もう全然 お金がないの。 45 00:03:57,437 --> 00:03:59,506 だけど 一体…。 ううん。 46 00:03:59,506 --> 00:04:03,744 だから トミ子さんの結婚式にも マー姉ちゃん 行かれなかったの。 47 00:04:03,744 --> 00:04:06,780 え… 信じられないわ そんなこと。 48 00:04:06,780 --> 00:04:09,382 マー姉ちゃん 働くつもりなんです。 49 00:04:09,382 --> 00:04:12,919 だから ゆうべだって 私たちが寝てから もらってきた仕事を。 50 00:04:12,919 --> 00:04:15,756 じゃあ 病気だっていうのは うそなの? 51 00:04:15,756 --> 00:04:18,391 (ヨウ子)病気なんかじゃない。 私たちに ないしょで➡ 52 00:04:18,391 --> 00:04:22,596 挿絵の仕事を探しに歩いてたんです。 53 00:04:22,596 --> 00:04:26,933 つまり うちは 貧乏になってしまったってこと? 54 00:04:26,933 --> 00:04:29,269 (ヨウ子)はい。 どうして そんな…。 55 00:04:29,269 --> 00:04:33,607 お千代ねえやが言ってたでしょ? お金は使えばなくなるものだって。 56 00:04:33,607 --> 00:04:36,109 だって お母様も マー姉ちゃんも➡ 57 00:04:36,109 --> 00:04:38,145 そんなそぶり 全然見せなかったじゃないの。 58 00:04:38,145 --> 00:04:41,915 (ヨウ子)だから マー姉ちゃんだって 突然聞かされたんです。 59 00:04:41,915 --> 00:04:46,419 冗談じゃないわ! バカにしないでよ! (ヨウ子)マッちゃん姉ちゃま…。 60 00:04:46,419 --> 00:04:48,955 何で そんな大事なこと 私に… 私に2人とも➡ 61 00:04:48,955 --> 00:04:52,425 隠しておかなきゃなんないの? (ヨウ子)だから それは…。 62 00:04:52,425 --> 00:04:55,796 行ってくる。 行って あの人に 母親失格を宣言してくる! 63 00:04:55,796 --> 00:04:59,432 待って お願い! だって そうでしょ? 64 00:04:59,432 --> 00:05:02,235 私が心配してたとおりじゃないの。 65 00:05:02,235 --> 00:05:07,741 なにも 通帳がゼロになるまで 人の面倒に お金ばらまくことないじゃないの。 66 00:05:07,741 --> 00:05:09,676 そのために 才能あるマー姉ちゃんに➡ 67 00:05:09,676 --> 00:05:12,078 挿絵 描かせるなんて 私 絶対に許せない! 68 00:05:12,078 --> 00:05:16,583 そんなこと言ったら マー姉ちゃん 悲しませるだけでしょ? 69 00:05:16,583 --> 00:05:19,920 ヨウ子…。 いつかきっと 私たちにも➡ 70 00:05:19,920 --> 00:05:21,955 ちゃんと話してくれると思うの。 71 00:05:21,955 --> 00:05:26,693 だから その時までは 私たちも一緒に 陰で力を合わせたらと思って。 72 00:05:26,693 --> 00:05:29,262 ねっ マッちゃん姉ちゃま。 73 00:05:29,262 --> 00:05:34,401 私 いざとなったら 女学校やめるわ。 何ですって!? 74 00:05:34,401 --> 00:05:38,271 お金もないのに あんな お嬢様学校 行くことないし。 75 00:05:38,271 --> 00:05:41,107 ヨウ子ちゃん…。 お願い。 76 00:05:41,107 --> 00:05:47,414 私たちが知ってしまったということ 2人だけの秘密にして。 ねっ? 77 00:05:56,590 --> 00:06:00,360 (細谷)いいじゃないの。 どうですか? 78 00:06:00,360 --> 00:06:02,295 (塚田)まあ 時間もないことだし➡ 79 00:06:02,295 --> 00:06:05,899 一応 川谷君の絵に似せてる努力は 認められるな。 80 00:06:05,899 --> 00:06:07,934 はい。 81 00:06:07,934 --> 00:06:10,070 じゃあ これが今日の画料だ。 82 00:06:10,070 --> 00:06:12,005 えっ? もう頂けるんですか? 83 00:06:12,005 --> 00:06:14,574 (塚田)中に受取が入ってるからね。 84 00:06:14,574 --> 00:06:18,745 あの… それで このあとも 描かせていただけるんでしょうか? 85 00:06:18,745 --> 00:06:23,383 それは 追って連絡するよ。 はい…。 86 00:06:23,383 --> 00:06:27,254 (細谷)あっ そうだ。 あの 昨日 田河先生のお宅に伺ったらね➡ 87 00:06:27,254 --> 00:06:29,756 近いうちに 一度 顔を出してくれって言ってた。 88 00:06:29,756 --> 00:06:31,691 あの 私にですか? ああ。 89 00:06:31,691 --> 00:06:34,261 あれで なかなか 気の短いとこもあるからね。 90 00:06:34,261 --> 00:06:37,264 出たついでだし これから 行ってきた方がいいんじゃないかな? 91 00:06:37,264 --> 00:06:39,766 はい そうしてみます。 どうも。 92 00:06:39,766 --> 00:06:43,103 おい 受取。 えっ? あっ あっ そうだ! 93 00:06:43,103 --> 00:06:46,006 すいません。 94 00:06:46,006 --> 00:06:49,276 ほら。 どうも すいません。 95 00:06:49,276 --> 00:06:51,611 (細谷)名前。 名前を書いて。 あっ ここですか。 96 00:06:51,611 --> 00:06:54,114 (細谷)うん そうそう。 あっ そっか。 97 00:06:54,114 --> 00:06:59,920 <細谷に言われ その足で マリ子は田河水泡氏を訪れました> 98 00:07:06,226 --> 00:07:08,728 (均)あっ いらっしゃい。 あの…。 99 00:07:08,728 --> 00:07:12,365 お待ちしてましたよ。 心配してたんですよ。 えっ? 100 00:07:12,365 --> 00:07:15,568 (均)いやいや。 まあ どうぞ さあ。 101 00:07:15,568 --> 00:07:18,271 (水泡)はい。 はい? 102 00:07:21,441 --> 00:07:24,911 紹介状だ。 はあ。 103 00:07:24,911 --> 00:07:30,250 (水泡)春秋文学社 近代婦人社 昭和書房 文学館➡ 104 00:07:30,250 --> 00:07:33,753 ここにはね 僕の知ってる編集者がいるんでね➡ 105 00:07:33,753 --> 00:07:36,089 挿絵をやるんだったら いくらか お役に立てるんじゃなかろうかと➡ 106 00:07:36,089 --> 00:07:38,992 思ってね。 先生…。 107 00:07:38,992 --> 00:07:41,761 (水泡)ゆうべ 陽談社の ほら 細谷君が来て➡ 108 00:07:41,761 --> 00:07:44,097 君のことを話してた。 心配してたよ。 109 00:07:44,097 --> 00:07:46,399 どうも 申し訳ありませんでした。 110 00:07:46,399 --> 00:07:51,771 (水泡)いや これでも 私はさ いくらか雑誌社の方に顔の利く方だから。 111 00:07:51,771 --> 00:07:56,109 どうも ありがとうございます。 このご恩は 一生忘れません。 112 00:07:56,109 --> 00:07:58,611 いいの いいの。 そんなことは覚えてる必要ないんだよ。 113 00:07:58,611 --> 00:08:02,582 (ノック)はい。 ⚟(均)失礼します。 114 00:08:02,582 --> 00:08:05,352 まあ 顔が利くっていってもね➡ 115 00:08:05,352 --> 00:08:08,555 それは優先的に 会ってくれるっていうことであって➡ 116 00:08:08,555 --> 00:08:12,726 いいかい? 挿絵っていうのは 絵を商品として売ることなんだから➡ 117 00:08:12,726 --> 00:08:16,363 もし 君の絵がね お金をもらえるだけの 値打ちがなかったら➡ 118 00:08:16,363 --> 00:08:18,898 それでも使ってもらえるかどうかは 分からんからね。 119 00:08:18,898 --> 00:08:22,369 もちろん そうだと思います。 でも私 頑張ります。 120 00:08:22,369 --> 00:08:24,437 お金になる絵を描きます。 121 00:08:24,437 --> 00:08:27,240 うん 期待してるよ。 はい! 122 00:08:27,240 --> 00:08:31,578 うん 細谷君も言ってたよ。 123 00:08:31,578 --> 00:08:35,749 さすが 大したもんだ。 さすがはね 川添画塾に通っただけのことはあるって。 124 00:08:35,749 --> 00:08:38,585 本当ですか? (水泡)いや それは まあ➡ 125 00:08:38,585 --> 00:08:41,388 挿絵としては まだ やわらかみには欠けるがね➡ 126 00:08:41,388 --> 00:08:45,091 案外 将来有望な女流挿絵画家に なるんじゃなかろうかってね。 127 00:08:45,091 --> 00:08:47,027 本当ですか? 128 00:08:47,027 --> 00:08:50,263 それには 君の順応性が物を言うと思うんだよ。 129 00:08:50,263 --> 00:08:54,768 何しろね 女流挿絵家っていうのは ほら 「乙女の友」に描いてる➡ 130 00:08:54,768 --> 00:08:56,703 深井深雪ぐらいしかいないんだからね➡ 131 00:08:56,703 --> 00:09:00,106 君の もし 腕が認められれば これは珍重すべき存在であることは➡ 132 00:09:00,106 --> 00:09:03,076 間違いないんだ。 はい。 133 00:09:03,076 --> 00:09:05,578 あっ 均ちゃん もういいよ。 134 00:09:11,751 --> 00:09:15,889 辛抱第一。 まあ 細谷がね 褒めてるから➡ 135 00:09:15,889 --> 00:09:18,925 だったら 画料は すぐに払えよって 言っといたよ。 ハハハッ! 136 00:09:18,925 --> 00:09:22,362 はい 今 確かに頂いてまいりました。 137 00:09:22,362 --> 00:09:25,899 そうかね。 じゃあ 一応 急場の仕事はパスしたんだな。 138 00:09:25,899 --> 00:09:27,834 はい! 139 00:09:27,834 --> 00:09:31,771 先生のご配慮があったなんて ちっとも気が付かないで すいません。 140 00:09:31,771 --> 00:09:34,574 私って どうして こう 鈍いんでしょうか? 141 00:09:34,574 --> 00:09:37,911 いいの いいの。 それがマリ子さんの お人柄っていうもんだ。 142 00:09:37,911 --> 00:09:40,246 ⚟はい。 ⚟(水泡)よかった よかった。➡ 143 00:09:40,246 --> 00:09:43,082 いや 僕は もっと心配してたんだよ。 君がね 深刻な顔で➡ 144 00:09:43,082 --> 00:09:45,985 うちへ来るんじゃなかろうかって。 145 00:09:45,985 --> 00:09:49,856 「座して祈れば 道は開ける」って お母様が おっしゃってました。 146 00:09:49,856 --> 00:09:53,793 一生懸命やったんだから あとは なるようになるだろうって。 147 00:09:53,793 --> 00:09:56,262 マリ子さんは 大物だ。 その意気で頑張ってくれ! 148 00:09:56,262 --> 00:10:02,068 フフフッ はい! あっ あの 先生に 一つ お願いがあるんですけど。 149 00:10:02,068 --> 00:10:04,003 (水泡)うん いいよ 言ってごらん。 150 00:10:04,003 --> 00:10:08,775 このことは しばらくの間 マチ子には伏せておいてほしいんです。 151 00:10:08,775 --> 00:10:11,611 (水泡)それは無理だね。 なぜですか? 152 00:10:11,611 --> 00:10:14,514 だって 先生のおかげで マチ子は 今➡ 153 00:10:14,514 --> 00:10:17,417 好きな漫画を 伸び伸びと描いていられるんです。 154 00:10:17,417 --> 00:10:22,121 あの子にまで お金のための絵は 描かせたくないんです。 155 00:10:22,121 --> 00:10:25,158 (水泡)私は反対だな。 反対? 156 00:10:25,158 --> 00:10:27,794 そうだよ。 だって いいかい? 157 00:10:27,794 --> 00:10:31,130 たった一コマの漫画で 生計を立ててるやつだっているんだ。 158 00:10:31,130 --> 00:10:33,967 そりゃ 今のうちはいいが 趣味でなんかやっていたら➡ 159 00:10:33,967 --> 00:10:37,837 そういう連中に マチ子さんだって 迫力で水をあけられるに決まってるんだ。 160 00:10:37,837 --> 00:10:41,708 もちろん そうだと思います。 でも もうしばらくの間…。 161 00:10:41,708 --> 00:10:43,977 困ったね~。 162 00:10:43,977 --> 00:10:49,315 マチ子さんも 同じことを言ってたよ。 マチ子が? 何をですか? 163 00:10:49,315 --> 00:10:52,819 あの子 みんな知ってるよ。 みんな? 164 00:10:52,819 --> 00:10:55,722 今朝来てね うちの金庫は もうゼロだって。 165 00:10:55,722 --> 00:10:57,690 本当ですか!? 166 00:10:57,690 --> 00:11:01,528 (水泡)うん。 だから 仕事を世話しろって その「少女倶楽部」だけじゃなくて➡ 167 00:11:01,528 --> 00:11:04,397 「幼年倶楽部」の方もって まるで脅迫だ。 ハハハッ! 168 00:11:04,397 --> 00:11:08,268 まあ。 まあ いいじゃないの。 169 00:11:08,268 --> 00:11:10,770 人間 どうせ生まれてきた時は みんな裸。 170 00:11:10,770 --> 00:11:14,407 君たちが 素っ裸になるまでには 大勢の人がさ➡ 171 00:11:14,407 --> 00:11:18,278 その お母さんの病気で 救われたと思えば➡ 172 00:11:18,278 --> 00:11:20,780 心晴れやかじゃないか。 はい…。 173 00:11:20,780 --> 00:11:24,117 いや お母さんのこと病気だなんて言って これは ごめんな。 174 00:11:24,117 --> 00:11:28,421 いいえ やっぱり 母は病気なんでしょうね。 175 00:11:28,421 --> 00:11:31,958 いや~ あれは天使かもしれんよ。 176 00:11:31,958 --> 00:11:36,429 天使なら 少し老け過ぎてませんか? ハハッ これは手厳しい。 177 00:11:36,429 --> 00:11:40,300 しかし 御言葉を信じるっていうのは 童女のようなもの…➡ 178 00:11:40,300 --> 00:11:46,105 いやいや 生まれたばっかりの 真っ白な赤ん坊の心かもしれん。 179 00:11:46,105 --> 00:11:48,174 多分 童女だと思います。 180 00:11:48,174 --> 00:11:51,911 赤ん坊なら あんなふうに 歩き回るようなことはしませんもの。 181 00:11:51,911 --> 00:11:55,448 (笑い声) 182 00:11:55,448 --> 00:11:58,318 (くしゃみ) 183 00:11:58,318 --> 00:12:00,587 誰かしら 一体? 184 00:12:00,587 --> 00:12:06,459 トミ子さんだわ。 あの絵が届いたんで きっと それで うわさを…。 185 00:12:06,459 --> 00:12:08,461 (くしゃみ) 186 00:12:08,461 --> 00:12:11,598 はい これは今日頂けた画料です。 187 00:12:11,598 --> 00:12:14,400 おやまあ もう頂けたの? 188 00:12:14,400 --> 00:12:16,936 駄目よ マー姉ちゃん お母様に また 渡したら➡ 189 00:12:16,936 --> 00:12:18,871 どんなことになるか 分かんないじゃないの。 190 00:12:18,871 --> 00:12:20,807 いいじゃないの それでも。 そんな…。 191 00:12:20,807 --> 00:12:23,810 だって あとひとつき分の生活費だって ないんでしょう? 192 00:12:23,810 --> 00:12:30,416 そうよ。 でもね これはマー姉ちゃんが 生まれて初めて働いて入ったお金なの。 193 00:12:30,416 --> 00:12:32,952 今まで お母様のすねをかじってきたんだもの。 194 00:12:32,952 --> 00:12:37,423 このお金だけは お母様に渡したいの。 分かってよ。 195 00:12:37,423 --> 00:12:41,294 気持ちは分かる。 でも 現実問題として➡ 196 00:12:41,294 --> 00:12:45,632 もうしばらくの間 生活費は 共同管理ってことにしないと…。 197 00:12:45,632 --> 00:12:48,668 どうだと言うんですか? 198 00:12:48,668 --> 00:12:51,137 また右から左では かないません。 199 00:12:51,137 --> 00:12:55,308 マチ子。 だって…➡ 200 00:12:55,308 --> 00:12:58,645 マー姉ちゃんが どんな気持ちで 雑誌社 回ったかと思うと…。 201 00:12:58,645 --> 00:13:03,483 マチ子だって 私にないしょで 田河先生に お願いしてくださったでしょう? 202 00:13:03,483 --> 00:13:06,753 私 どんなに うれしかったか 分かんないのよ。 203 00:13:06,753 --> 00:13:09,656 だって それは…。 (はる)そうですよ。➡ 204 00:13:09,656 --> 00:13:12,558 そういうふうに みんなで力を合わせたからこそ➡ 205 00:13:12,558 --> 00:13:16,095 マリ子の初めての挿絵も 無事に乗り切れたんでしょう? 206 00:13:16,095 --> 00:13:19,132 この問題については お母様に発言の権利なんてない。 207 00:13:19,132 --> 00:13:21,267 マッちゃん姉ちゃま…。 208 00:13:21,267 --> 00:13:23,603 細谷さんから聞いたけど この稿料だって➡ 209 00:13:23,603 --> 00:13:27,273 田河先生が ご自分の受け取りの分の中からでいい➡ 210 00:13:27,273 --> 00:13:29,208 早く渡してやってくれって➡ 211 00:13:29,208 --> 00:13:32,412 そうおっしゃってくださったからこそ 今日にだって頂けたのよ。 212 00:13:32,412 --> 00:13:35,281 (はる)ありがたいことじゃありませんか。 213 00:13:35,281 --> 00:13:38,184 だから お願い。 お母様 この稿料は…。 214 00:13:38,184 --> 00:13:41,788 お黙り。 お母様…。 215 00:13:41,788 --> 00:13:44,824 そういうふうに 皆さんの力があったからこその➡ 216 00:13:44,824 --> 00:13:49,662 このお金でしょう。 だったら そういう力を必要としてる人たちに➡ 217 00:13:49,662 --> 00:13:55,802 お分けできることを 私たちは むしろ 幸せだと考えなければいけません。 218 00:13:55,802 --> 00:13:58,137 だからといって…。 219 00:13:58,137 --> 00:14:01,374 人間は まっとうに暮らしていさえすれば➡ 220 00:14:01,374 --> 00:14:05,244 やもめと みなしごの家に 粉は尽きることがない。 221 00:14:05,244 --> 00:14:08,247 そう御言葉に書いてありますよ。 222 00:14:08,247 --> 00:14:12,752 もし たった今 お金がないために お医者様にもかかれず➡ 223 00:14:12,752 --> 00:14:15,388 死にかけているご病人がいたとしたら➡ 224 00:14:15,388 --> 00:14:19,258 私は 迷わずに このお金を差し上げます。 225 00:14:19,258 --> 00:14:21,928 だって あなたたちは このように➡ 226 00:14:21,928 --> 00:14:24,764 元気で ピンピンしているじゃありませんか。 227 00:14:24,764 --> 00:14:27,400 そのことに感謝できないとしたら➡ 228 00:14:27,400 --> 00:14:30,269 お母様は 断固 あなたを勘当します。 229 00:14:30,269 --> 00:14:32,772 人の道に恥じなさい! 230 00:14:38,978 --> 00:14:43,816 <病気というか 童女というか➡ 231 00:14:43,816 --> 00:14:47,286 とにかく 母親の確固たる人生観は➡ 232 00:14:47,286 --> 00:14:52,291 いまだ健在だったというほかは ありませんでした>