1 00:00:02,202 --> 00:00:08,141 ♬~(テーマ音楽) 2 00:00:08,141 --> 00:01:06,133 ♬~ 3 00:01:10,771 --> 00:01:13,607 (マチ子)ねえ マー姉ちゃん 背景の墨の色➡ 4 00:01:13,607 --> 00:01:17,477 これぐらいの濃さでいいかな? (マリ子)うん いいんじゃないの? 5 00:01:17,477 --> 00:01:21,481 でも こんなことじゃ駄目ね。 あら 私がいいって言うんだからいいのよ。 6 00:01:21,481 --> 00:01:24,618 仕事よ 仕事。 仕事? 7 00:01:24,618 --> 00:01:27,654 便せんの絵入れ 私 気に入ってたんだけどな~。 8 00:01:27,654 --> 00:01:32,292 こう 紙が不足してくると この仕事だって いつ どうなるか分からないものね。 9 00:01:32,292 --> 00:01:35,128 大丈夫よ。 どんなに窮屈になったって➡ 10 00:01:35,128 --> 00:01:38,165 児童物だけは なくなりっこないと 私は信じてるんだから。 11 00:01:38,165 --> 00:01:41,001 相変わらず のんき屋ね。 どうして? 12 00:01:41,001 --> 00:01:44,304 現に 私には こうして仕事があるじゃないの。 13 00:01:44,304 --> 00:01:46,239 だって それにしたって先細りよ。 14 00:01:46,239 --> 00:01:49,643 あぶれている絵描きたちが それに全部 群がってるんですもの。 15 00:01:49,643 --> 00:01:52,679 現に こうして私だって マー姉ちゃんが 一人でできる仕事を➡ 16 00:01:52,679 --> 00:01:54,815 回してもらってるんだし。 17 00:01:54,815 --> 00:01:58,452 何よ。 たかが1週間 仕事が切れたぐらいで。 18 00:01:58,452 --> 00:02:00,387 でも…。 19 00:02:00,387 --> 00:02:04,758 マチ子の作品は 先方も欲しいんだし 私だって 大助かりよ。 20 00:02:04,758 --> 00:02:08,095 これで 結構 隣組の用で 顔出しが多いんだから。 21 00:02:08,095 --> 00:02:11,131 ごめんね。 バカ。 22 00:02:11,131 --> 00:02:13,767 私は これでも 一家のあるじなんだから➡ 23 00:02:13,767 --> 00:02:16,603 本当は 一人でも みんなを食べさせていかなくちゃ。 24 00:02:16,603 --> 00:02:20,941 でも マー姉ちゃんが結婚しちゃったら 私 そんなことできるかな? 25 00:02:20,941 --> 00:02:25,278 大丈夫よ。 東郷さんだって 当分 帰らないだろうし➡ 26 00:02:25,278 --> 00:02:27,948 相手がいなくちゃ お嫁にだって行けないじゃないの。 27 00:02:27,948 --> 00:02:31,818 マー姉ちゃんのためには 本当は 悲しんであげなくちゃいけないのよね。 28 00:02:31,818 --> 00:02:35,622 そう思ったら感謝しなさい 姉上様を。 29 00:02:35,622 --> 00:02:38,959 はい。 あら 案外 素直じゃない。 30 00:02:38,959 --> 00:02:43,830 (物音) 31 00:02:43,830 --> 00:02:45,832 (物音) ん? 32 00:02:45,832 --> 00:02:47,968 (物音) 何? あの音。 33 00:02:47,968 --> 00:02:52,639 泥棒かな? マチ子…! 34 00:02:52,639 --> 00:02:54,574 大丈夫 大丈夫。 35 00:02:54,574 --> 00:02:57,577 こういう時のために この次女がいるんだから! 36 00:03:00,447 --> 00:03:03,917 どうするのよ? お姉ちゃん ここにいていいから➡ 37 00:03:03,917 --> 00:03:06,586 私が 「こら~!」って叫んだら この窓開けて➡ 38 00:03:06,586 --> 00:03:10,457 外に 「泥棒!」って叫ぶのよ。 分かった。 39 00:03:10,457 --> 00:03:13,927 分かったら その手 放しなさいよ。 あっ…。 40 00:03:13,927 --> 00:03:29,476 ♬~ 41 00:03:29,476 --> 00:03:34,247 ⚟一体 何してらっしゃるの お母様!? 42 00:03:34,247 --> 00:03:36,249 お母様? 43 00:03:37,951 --> 00:03:42,823 (はる)片づけていたら思い出したのよ。 まだ 蚊帳の取っ手が残っとったことをね。 44 00:03:42,823 --> 00:03:44,825 思い出して どうなさるおつもり? 45 00:03:44,825 --> 00:03:47,627 何を寝ぼけてることを 言うとるとですか。 46 00:03:47,627 --> 00:03:52,299 昨日の回覧板 読まなかったと? そりゃ 読んだけど…。 47 00:03:52,299 --> 00:03:54,634 だったら もう一度 自分のお部屋を整理して➡ 48 00:03:54,634 --> 00:03:58,338 眠ってる資源を お出しなさい。 はいはい。 49 00:04:01,441 --> 00:04:06,913 お母様 これ 仏様のお線香立てと お鈴じゃありませんか。 50 00:04:06,913 --> 00:04:09,583 そうですよ。 どうする気? 51 00:04:09,583 --> 00:04:11,918 明日から おじいちゃまたちに お線香あげないつもり? 52 00:04:11,918 --> 00:04:14,588 いいえ。 お線香立てだったら➡ 53 00:04:14,588 --> 00:04:17,491 お湯飲みに灰を入れたら 十分 間に合います。 54 00:04:17,491 --> 00:04:19,926 そこまですることあるのかしら? 55 00:04:19,926 --> 00:04:24,264 非常時ですもの。 太田道灌さんや 家康さんの銅像も➡ 56 00:04:24,264 --> 00:04:28,935 お寺の鐘と一緒に 鉄砲の弾に おなりになったんですもの。 57 00:04:28,935 --> 00:04:31,838 もう一度 身の回りを見回して 出せるべきものは出すのが➡ 58 00:04:31,838 --> 00:04:33,807 日本人の務めでしょう? 59 00:04:33,807 --> 00:04:36,810 でも ウラマドのおば様たちが おっしゃってたわ。 60 00:04:36,810 --> 00:04:38,945 金やダイヤの供出があった時➡ 61 00:04:38,945 --> 00:04:41,281 ヨーロッパでは 絶対 そういうものは出さないって。 62 00:04:41,281 --> 00:04:45,152 うん そう言ってた。 動乱や戦争が いくら起こっても➡ 63 00:04:45,152 --> 00:04:48,622 国家は 最終的に 個人への責任は 何も取ってくれないんだから➡ 64 00:04:48,622 --> 00:04:51,958 私たちは 絶対に 宝石類は手放しませんって。 65 00:04:51,958 --> 00:04:54,861 あちらは あちら。 私は私。 66 00:04:54,861 --> 00:04:59,299 なにも 人様の考えまで強制するつもりは 私にはありませんよ。 67 00:04:59,299 --> 00:05:01,902 だからって これが鉄砲の弾になったりしたら➡ 68 00:05:01,902 --> 00:05:05,572 また 死んだり けがをしたりする人たちが 増えるじゃありませんか。 69 00:05:05,572 --> 00:05:08,475 お母様は あれほど 戦争は罪悪だとおっしゃっていたのに…。 70 00:05:08,475 --> 00:05:12,913 お黙んなさい。 はい。 71 00:05:12,913 --> 00:05:15,215 私はね…。 72 00:05:17,584 --> 00:05:22,255 なにも 戦争を応援するために 供出しようというのではありませんよ。 73 00:05:22,255 --> 00:05:26,593 日本人でしょう? 私たちは。 はい。 74 00:05:26,593 --> 00:05:31,464 今 日本人の多くの人たちが あらゆる不自由に耐えているという時に➡ 75 00:05:31,464 --> 00:05:37,604 私はね 私だけが出し惜しみをするという そういう考え方ができないのです。➡ 76 00:05:37,604 --> 00:05:41,942 苦しみを分かち合わなくて どうして生きていけましょうか。 77 00:05:41,942 --> 00:05:46,613 あなたたちも私の娘ならば こういう信念でもって耐えるべきです。 78 00:05:46,613 --> 00:05:51,284 さあ お部屋に行って 不用資源を 探していらっしゃい。 早う! 79 00:05:51,284 --> 00:05:53,286 はい。 80 00:05:55,155 --> 00:06:01,094 <オネストさんの援助と 不用品供出が 何の抵抗もなくドッキングして➡ 81 00:06:01,094 --> 00:06:04,831 この非常時に はるの分かち合い精神は 健在でした。➡ 82 00:06:04,831 --> 00:06:07,534 いえ それだけでなく…> 83 00:06:16,376 --> 00:06:20,747 <埋もれた才能を引き出そうという 例の病気の方も➡ 84 00:06:20,747 --> 00:06:26,620 まだまだ 噴火活動をやめてはいない様子です> 85 00:06:26,620 --> 00:06:29,256 マリ子! 86 00:06:29,256 --> 00:06:32,759 え~!? 菊池先生に ヨウ子の原稿を? 87 00:06:32,759 --> 00:06:35,795 (はる)私の見たところ なかなか 筋がいいようなの。 88 00:06:35,795 --> 00:06:37,931 だからといって…。 89 00:06:37,931 --> 00:06:40,767 (はる)私は何も マリ子に読めとは言ってはいないのよ。➡ 90 00:06:40,767 --> 00:06:45,105 ものになるかどうか 菊池先生に 目を通していただきなさいと。 91 00:06:45,105 --> 00:06:47,607 お母様…。 92 00:06:47,607 --> 00:06:52,112 <という具合で 例により マリ子は はるの命令一下➡ 93 00:06:52,112 --> 00:06:56,116 数年ぶりに菊池邸を訪れました> 94 00:07:00,553 --> 00:07:02,889 (菊池)ん~…。 あの…。 95 00:07:02,889 --> 00:07:08,228 今年から女子大? はい。うむ…。 96 00:07:08,228 --> 00:07:11,898 本当に ご多忙のところ お時間を潰して 申し訳ございませんでした。 97 00:07:11,898 --> 00:07:14,734 これは 母の 一つの病気なものですから➡ 98 00:07:14,734 --> 00:07:17,370 どうぞ あしからず お許しくださいませんでしょうか。 99 00:07:17,370 --> 00:07:20,073 病気? はい 本当に悪い癖で➡ 100 00:07:20,073 --> 00:07:24,244 すぐ下の妹の時も 田河先生の門をたたけと こうでしたし。 101 00:07:24,244 --> 00:07:26,746 しかし いつだったか 水泡さんに会うた時➡ 102 00:07:26,746 --> 00:07:29,649 なかなか すばらしい才能の持ち主だと えらく褒めとったよ。 103 00:07:29,649 --> 00:07:33,086 ありがとうございます。 でも 目をつけた誰も彼もが➡ 104 00:07:33,086 --> 00:07:35,388 そうだとは限りませんし。 105 00:07:35,388 --> 00:07:38,091 あの 「目をつけた誰も彼も」って あの あんたのお母さん➡ 106 00:07:38,091 --> 00:07:40,393 そんなに いろいろな人に 目をつけるのかね? 107 00:07:40,393 --> 00:07:45,098 はい こうと思ったら見境のない方で。 ふ~ん。 108 00:07:45,098 --> 00:07:49,602 大分前のことでしたけれど 「国宝級のお寺やお庭を見ずして➡ 109 00:07:49,602 --> 00:07:52,639 何で ひとかどの職人になれるか」と いきまきまして➡ 110 00:07:52,639 --> 00:07:57,477 大工さんや植木屋さんたちを引き連れて 京都にまで見学に行ったこともあります。 111 00:07:57,477 --> 00:08:01,715 (菊池)ふむ それで? 一流のものを見に行ったはずなのに➡ 112 00:08:01,715 --> 00:08:05,218 職人さんたちは 「ご婦人が結構でした」と 帰ってきまして…。 113 00:08:05,218 --> 00:08:09,055 (菊池)ハハハハハハハッ! 先生~…。 114 00:08:09,055 --> 00:08:11,558 (菊池)いやいや 失礼。 それで どうした? 115 00:08:11,558 --> 00:08:14,227 はあ… 今度のことでも お分かりのように➡ 116 00:08:14,227 --> 00:08:17,230 母は 一向 懲りることを 知らないたちのものですから。 117 00:08:17,230 --> 00:08:20,734 うん いや しかし なかなか 思いつき豊かな➡ 118 00:08:20,734 --> 00:08:22,669 すばらしいお母さんじゃないか。 119 00:08:22,669 --> 00:08:25,905 でも そういうのと 一緒に暮らしている 身にもなってください。 120 00:08:25,905 --> 00:08:27,841 どうして? 子供のことに関しては➡ 121 00:08:27,841 --> 00:08:29,776 命令するだけなんですもの。 122 00:08:29,776 --> 00:08:34,914 僕の所へ行ってこいと。 はい 本当に申し訳ございませんでした。 123 00:08:34,914 --> 00:08:39,386 でも 先生のお言葉なら 母も納得して諦めると思いますので。 124 00:08:39,386 --> 00:08:43,757 (菊池)諦めるって 何を? ですから つまり 末の妹には➡ 125 00:08:43,757 --> 00:08:45,692 文才が ありやなしやという…。 126 00:08:45,692 --> 00:08:49,629 (菊池)それだったら そう簡単に諦めることはないよ。 はあ? 127 00:08:49,629 --> 00:08:52,932 文学部だと言うとったね? はい。 128 00:08:52,932 --> 00:08:55,835 だったら やめさせなさい。 えっ? 129 00:08:55,835 --> 00:08:57,804 女子大の方をだよ。 130 00:08:57,804 --> 00:09:01,641 でも せっかく受かったんですよ? いいじゃないか。 131 00:09:01,641 --> 00:09:06,346 そのかわり 僕が やめても それに見合うだけの講義をしてやるから。 132 00:09:06,346 --> 00:09:09,048 はあ? (菊池)講義だよ。 133 00:09:09,048 --> 00:09:10,984 何の講義ですか? 134 00:09:10,984 --> 00:09:15,355 う~ん そうだな… 西鶴辺りは どうだろうかな? 135 00:09:15,355 --> 00:09:17,290 先生…。 136 00:09:17,290 --> 00:09:20,059 (菊池)「諸国ばなし」から入るのも➡ 137 00:09:20,059 --> 00:09:23,563 いいかもしれん。 それでは…。 138 00:09:23,563 --> 00:09:28,234 うん。 今 ざっと読ましてもらったんだが 感受性が鋭い。 139 00:09:28,234 --> 00:09:31,738 はい。 (菊池)なかなか 素直な目を持ってる。 140 00:09:31,738 --> 00:09:35,241 はい。 だからね 僕が責任持つからと➡ 141 00:09:35,241 --> 00:09:37,577 妹さんに言うてやりなさい。 142 00:09:37,577 --> 00:09:42,749 そう 土曜日と日曜日… 午前中がええかな。 143 00:09:42,749 --> 00:09:45,785 そう 時間はと… そうだ…➡ 144 00:09:45,785 --> 00:09:49,088 え~っと…。 145 00:09:49,088 --> 00:09:54,594 うん 9時半。 9時半までに このうちに来るようにしなさい。 146 00:09:56,763 --> 00:09:59,399 (ヨウ子)私が!? どうして? 147 00:09:59,399 --> 00:10:01,468 お母様の命令だったのよ。 148 00:10:01,468 --> 00:10:05,271 それに 菊池先生も うんと おっしゃるとは思わなかったし…。 149 00:10:05,271 --> 00:10:08,942 そんなこと言ったって…。 それが うんと おっしゃったんだし➡ 150 00:10:08,942 --> 00:10:12,612 こちらから お願いしといて お断りするっていうのも まずいわよね。 151 00:10:12,612 --> 00:10:16,115 だったら どうすればいいの? まあ せっかく受かったんだから➡ 152 00:10:16,115 --> 00:10:19,419 女子大の方は やめることはないと思うけど➡ 153 00:10:19,419 --> 00:10:24,290 この際 菊池先生の講義は 受けといた方が無難じゃないかな~。 154 00:10:24,290 --> 00:10:27,160 マッちゃん姉ちゃまは ご自分のことじゃないから。 155 00:10:27,160 --> 00:10:30,430 大丈夫よ! まさか 取って食われるわけじゃなし。 156 00:10:30,430 --> 00:10:33,299 マー姉ちゃんだって いろいろと ちゃんと お教えをいただいたんだから。 157 00:10:33,299 --> 00:10:37,804 うん それは私が保証する。 見た目よりは とても優しい方だから。 158 00:10:37,804 --> 00:10:41,674 ただ いちいち 驚いてさえいなければ あとは 全く普通の人よ。 159 00:10:41,674 --> 00:10:47,981 ううん 普通どころか とても立派な すばらしい文学者であり先生だわ。 160 00:10:47,981 --> 00:10:51,818 嫌だわ 何だか驚くことばっかりがありそうで。 161 00:10:51,818 --> 00:10:54,654 ううん 一つ一つは大したことじゃないの。 162 00:10:54,654 --> 00:10:57,690 例えば 今日も 腕時計を2つはめていらしたし。 163 00:10:57,690 --> 00:11:01,261 両側に? ううん 左手に2つ。 164 00:11:01,261 --> 00:11:03,196 どうして? それなのよ。 165 00:11:03,196 --> 00:11:05,598 そういうふうに 改めて聞き直さなければいいの。 166 00:11:05,598 --> 00:11:08,935 先生ご自身は 全く 何とも思っていらっしゃらないんだもの。 167 00:11:08,935 --> 00:11:11,838 どういう意味? うん 2つしていらっしゃることに➡ 168 00:11:11,838 --> 00:11:14,807 気が付いていないのか あるいは 気が付いていても➡ 169 00:11:14,807 --> 00:11:17,277 面倒くさいから 知らん顔なさっているのか➡ 170 00:11:17,277 --> 00:11:19,279 そこのところが よく分からないんだけど➡ 171 00:11:19,279 --> 00:11:22,115 要するに それで こっちが不都合さえなければ➡ 172 00:11:22,115 --> 00:11:25,151 黙っていればいいのよ。 帯が ほどけていらしても➡ 173 00:11:25,151 --> 00:11:27,420 タバコを 火の方から吸われたとしても。 174 00:11:27,420 --> 00:11:31,624 えっ!? できないわ そんなこと 私には…。 175 00:11:31,624 --> 00:11:36,296 でもね ヨウ子 う~ん… 先生は ヨウ子のことを➡ 176 00:11:36,296 --> 00:11:38,298 なかなか感受性の鋭い 見込みのある子だって➡ 177 00:11:38,298 --> 00:11:40,300 おっしゃってくださってるんですってよ。 178 00:11:40,300 --> 00:11:43,069 別に 私は 小説家や文学者になるつもりなんか…。 179 00:11:43,069 --> 00:11:46,806 いいのよ そんなことは 相手に任しておけば。 マッちゃん。 180 00:11:46,806 --> 00:11:48,841 だって マー姉ちゃんの時だって そうだったじゃない。 181 00:11:48,841 --> 00:11:51,978 自然に挿絵家にしていただいたような もんじゃない。 182 00:11:51,978 --> 00:11:54,881 それでも 私なりに努力はしたわよ。 183 00:11:54,881 --> 00:11:57,650 もちろん それは認めます。 184 00:11:57,650 --> 00:12:00,553 だけどね ヨウ子 今 ヒトラーに逆らうのは➡ 185 00:12:00,553 --> 00:12:03,456 我が家の平和のためにも 問題があるんじゃないかな。 186 00:12:03,456 --> 00:12:06,459 やめなさいよ そんな脅かすような言い方は。 187 00:12:06,459 --> 00:12:10,597 だって 彼女には 熱中できる何かが必要なのよ。 188 00:12:10,597 --> 00:12:14,467 今のところ 私もマー姉ちゃんも 鳴かず飛ばずだし➡ 189 00:12:14,467 --> 00:12:19,772 残る末娘のヨウ子に 懸けてみようとしてるんじゃないかな。 190 00:12:19,772 --> 00:12:23,943 今や ヨウ子は ヒトラーにとって この暗黒時代における➡ 191 00:12:23,943 --> 00:12:26,412 我が家の輝かしき星なのよ。 192 00:12:26,412 --> 00:12:28,481 いいこと言うのね マチ子も。 193 00:12:28,481 --> 00:12:31,117 だからって それでは まるで 人身ごくうだわ。 194 00:12:31,117 --> 00:12:33,152 し~! どうしたのよ? 195 00:12:33,152 --> 00:12:36,289 下のヒトラーに聞こえたら どうすんのよ。 196 00:12:36,289 --> 00:12:38,224 張り切ってんですからね。 197 00:12:38,224 --> 00:12:41,628 久々に ピシャンっていうのが 飛んできたって 私 知らないわよ。 198 00:12:41,628 --> 00:12:44,664 意地悪。 199 00:12:44,664 --> 00:12:47,967 <とどのつまり おとなしいヨウ子は➡ 200 00:12:47,967 --> 00:12:51,838 ヒトラーに対するレジスタンスなど 思いも寄らず➡ 201 00:12:51,838 --> 00:12:56,976 磯野家の新しい星として 文壇大御所自ら講義するところの➡ 202 00:12:56,976 --> 00:13:00,947 栄えある聴講生となりました> 203 00:13:00,947 --> 00:13:03,783 (菊池)すると 君は…。 はい。 204 00:13:03,783 --> 00:13:08,621 (菊池)う~ん 書く方よりも 読む方が得意というわけ? はい。 205 00:13:08,621 --> 00:13:11,090 あ~ それは なかなか結構。 206 00:13:11,090 --> 00:13:15,261 そもそも文学というものは 受注産業であって➡ 207 00:13:15,261 --> 00:13:18,097 いくら表現したいものを たくさん抱えておっても➡ 208 00:13:18,097 --> 00:13:20,600 注文がなければ これは商売にならない。 209 00:13:20,600 --> 00:13:25,772 また逆に 書くもの 表現するものが 種切れになっても➡ 210 00:13:25,772 --> 00:13:29,942 注文があったらば 一定水準のものを 生産しなければならない。 211 00:13:29,942 --> 00:13:33,613 はい。 従って 僕はだね いくら才能があっても➡ 212 00:13:33,613 --> 00:13:37,784 若いうちから あんまり早く 物書き始めるっていうのは反対なんだ。 213 00:13:37,784 --> 00:13:40,420 できるだけ 満を持してから書く。 214 00:13:40,420 --> 00:13:43,289 するというと そこには 今まで抑えに抑えていたものが➡ 215 00:13:43,289 --> 00:13:47,293 一挙に噴出する爆発力となって生まれる。 216 00:13:47,293 --> 00:13:51,998 その爆発力が いい文学を生むんだと そう信じてるんだ。 217 00:13:51,998 --> 00:13:54,300 はい。 (菊池)だから 今のうちにね➡ 218 00:13:54,300 --> 00:13:56,636 なるだけ たくさん いいものを読んで➡ 219 00:13:56,636 --> 00:13:59,305 作家としての栄養を 蓄えるようにしなさい。 220 00:13:59,305 --> 00:14:02,575 はい。 それにはだね う~ん…➡ 221 00:14:02,575 --> 00:14:07,380 まあ 読み方というか 古典などには 解釈の方法というものがある。 222 00:14:07,380 --> 00:14:11,250 はい。 まあ それはね え~…➡ 223 00:14:11,250 --> 00:14:14,921 読む人の個性によって 読み取り方は自由だが➡ 224 00:14:14,921 --> 00:14:17,590 君は まだ学生の身分だからね➡ 225 00:14:17,590 --> 00:14:22,395 だから 僕の解釈法というものを 勉強するとよろしい。 はい。 226 00:14:31,137 --> 00:14:34,140 ⚟(はる)マリ子! はい! 227 00:14:34,140 --> 00:14:37,777 ⚟(はる)ヨウ子のことなら 心配はいりません。 はい。 228 00:14:37,777 --> 00:14:41,948 ⚟(はる)親バカみたいに みっともないまねは おやめなさい。 229 00:14:41,948 --> 00:14:43,950 はい。 230 00:14:46,285 --> 00:14:52,592 <この家のヒトラーは 普通の親バカとは ひと味違うもののようでした>