1 00:00:02,936 --> 00:00:09,276 ♬~(テーマ音楽) 2 00:00:09,276 --> 00:01:07,467 ♬~ 3 00:01:16,410 --> 00:01:19,313 (マチ子)じゃあ 行ってきます。 (はる)はい 行ってらっしゃい。 4 00:01:19,313 --> 00:01:23,617 ヨウ子 おとなしく寝ているのよ。 (ヨウ子)行ってらっしゃい。 気を付けて。 5 00:01:23,617 --> 00:01:27,788 うん ヨウ子も頑張ってね。 今日一日の辛抱だから。 6 00:01:27,788 --> 00:01:30,290 (ヨウ子)えっ? 明日の夜になったら マー姉ちゃん➡ 7 00:01:30,290 --> 00:01:32,793 お土産いっぱい 持って帰ってきてくれるからね。 8 00:01:32,793 --> 00:01:37,130 (ヨウ子)ううん もっともっと 東郷さんと 一緒にいられたらいいのに。 9 00:01:37,130 --> 00:01:39,433 ヨウ子…。 10 00:01:39,433 --> 00:01:43,136 大丈夫ですよ。 東郷さんは また ひょっこりと帰ってきて➡ 11 00:01:43,136 --> 00:01:46,440 何かを 早く早くって せかすに決まってます。 12 00:01:46,440 --> 00:01:50,811 そうよね! きっとそうよね! そうですとも。 13 00:01:50,811 --> 00:01:55,649 婚約の時も 出征の時も 婚礼の時だって そうだったでしょう。 14 00:01:55,649 --> 00:01:58,151 あの慌て者のマリ子と 一緒になるからといって➡ 15 00:01:58,151 --> 00:02:01,922 なにも ご自分まで 慌ただしくすることはないのにね。 16 00:02:01,922 --> 00:02:04,758 となると 今度は 何の時に飛び込んでくるのかしら。 17 00:02:04,758 --> 00:02:07,594 さあ~? まあ いいや。 18 00:02:07,594 --> 00:02:10,631 それを考えるのも また楽しからずや。 ねっ ヨウ子。 19 00:02:10,631 --> 00:02:13,767 もちろん! おっ 元気だな。 20 00:02:13,767 --> 00:02:15,702 元気です! フフフフッ! 21 00:02:15,702 --> 00:02:19,639 何をしてるんですよ。 早く行かないと遅刻しますよ お仕事の。 22 00:02:19,639 --> 00:02:21,642 あっ いけない。 23 00:02:21,642 --> 00:02:25,946 マリ子は もう お嫁に行ったんですからね あなたが磯野家の戸主なんですよ。 24 00:02:25,946 --> 00:02:30,283 その自覚を持ってもらわなくてはね。 とうとう お鉢が回ってきたか。 25 00:02:30,283 --> 00:02:34,154 ええ 名目上は あなたが総大将なんですからね。 26 00:02:34,154 --> 00:02:36,957 行ってらっしゃいませ 旦那様。 27 00:02:36,957 --> 00:02:41,294 あっ ブルータス お前もか。 はい。 28 00:02:41,294 --> 00:02:46,133 しかたがない こう裏切り者が多いのでは 行くよりほかになかりけり。 29 00:02:46,133 --> 00:02:50,637 では 余は行くぞよ。 はい では 殿様のお見送りに。 30 00:02:50,637 --> 00:02:53,940 きゃ~! 退散退散! 31 00:02:59,346 --> 00:03:03,583 あのね 帰りに進藤先生の所へ お寄りしていってちょうだいね。 32 00:03:03,583 --> 00:03:06,620 このところ 夕方の熱が8度も上がるのよ。 33 00:03:06,620 --> 00:03:09,089 無理してるのよ ヨウ子。 34 00:03:09,089 --> 00:03:11,925 私たちに心配かけまいとして 明るい顔してるのよ。 35 00:03:11,925 --> 00:03:14,261 私 ちゃんと分かってるの。 36 00:03:14,261 --> 00:03:18,932 だからこそ 私たちは分からないふりをしなくてはね。 37 00:03:18,932 --> 00:03:20,867 ええ。 38 00:03:20,867 --> 00:03:24,071 じゃあ お願いしますよ。 はい。 39 00:03:28,275 --> 00:03:31,178 行ってきま~す! 行ってらっしゃい! 40 00:03:31,178 --> 00:03:36,883 (戸の開閉音) 41 00:03:43,423 --> 00:03:45,625 マー姉ちゃん…。 42 00:03:54,167 --> 00:03:57,637 (新八郎)では 父上 母上。 43 00:03:57,637 --> 00:04:04,244 (隆太郎)うむ 武運長久を祈る。 (新八郎)はい。 44 00:04:04,244 --> 00:04:09,382 (貴美)マリ子さん どうぞ よろしくお願いいたします。 45 00:04:09,382 --> 00:04:13,587 (マリ子) はい 確かに お供をしてまいります。 46 00:04:13,587 --> 00:04:16,923 うむ。 47 00:04:16,923 --> 00:04:21,228 では 新八郎 ただいまより 行ってまいります! 48 00:04:25,398 --> 00:04:27,934 では。 49 00:04:27,934 --> 00:04:47,954 ♬~ 50 00:04:47,954 --> 00:04:49,890 泣くな。 51 00:04:49,890 --> 00:04:56,663 おはんも 武人の母ならば 晴れの門出に涙を見せるな。 52 00:04:56,663 --> 00:05:01,902 はい そうでごわんな。 53 00:05:01,902 --> 00:05:13,613 ♬~ 54 00:05:25,091 --> 00:05:30,397 ええ~? 東京へ初めて行くのに 八幡で降りて 大阪でも途中下車したのか。 55 00:05:30,397 --> 00:05:33,600 だから あの時は 一体 何日掛かりで 東京に着いたのかしら。 56 00:05:33,600 --> 00:05:37,938 驚いたね~ ハハハッ。 しかし 君たちらしい話だ。 うん。 57 00:05:37,938 --> 00:05:42,809 だから 今度も あちこち そうして行かれたら どんなにうれしいか。 58 00:05:42,809 --> 00:05:44,811 マリ子…。 59 00:05:44,811 --> 00:05:47,280 ううん これ以上は ぜいたくよ! 60 00:05:47,280 --> 00:05:51,785 お義父様たちを追い出して あんなに ゆっくりさせていただいたんですもの。 61 00:05:51,785 --> 00:05:54,621 うん。 すまないな。 62 00:05:54,621 --> 00:05:58,425 何をおっしゃるの。 これ以上は ぜいたくだって言ったでしょう。 63 00:05:58,425 --> 00:06:01,728 あんまり多くのものを望むと 後の勘定書きが大きいっていうの➡ 64 00:06:01,728 --> 00:06:04,631 ご存じないの? こら。 65 00:06:04,631 --> 00:06:08,068 (笑い声) 66 00:06:08,068 --> 00:06:10,971 でもね。 何だ? 67 00:06:10,971 --> 00:06:14,941 あの時 私 女流画家を目指してたの。 68 00:06:14,941 --> 00:06:19,079 でも 私 挿絵家に転向して 本当によかった。 69 00:06:19,079 --> 00:06:24,251 どうして? ん~ 新八郎さんって 案外鈍いのね。 70 00:06:24,251 --> 00:06:26,920 僕は そんなに鈍いか? そうよ。 71 00:06:26,920 --> 00:06:30,590 そのおかげで 私たち 知り合えたんじゃありませんか。 72 00:06:30,590 --> 00:06:33,493 何だ そんなことか。「そんなこと」って 言うことはないでしょう。 73 00:06:33,493 --> 00:06:35,462 いや 僕は こう思ってるんだ。 74 00:06:35,462 --> 00:06:37,764 たとえ マリ子が 挿絵画家にならなくてもね➡ 75 00:06:37,764 --> 00:06:41,401 僕たちは巡り会い そして結婚をしていた。あら どうして? 76 00:06:41,401 --> 00:06:43,336 (新八郎)そういう星の下に生まれてたんだ 僕たちは。 77 00:06:43,336 --> 00:06:46,106 まあ 新八郎さんって 運命論者でしたの? 78 00:06:46,106 --> 00:06:49,776 いや 別に そういうわけじゃないんだけど そういう巡り合わせになっていたのだ。 79 00:06:49,776 --> 00:06:53,280 亭主関白。 おう 少なくとも2~3年分は➡ 80 00:06:53,280 --> 00:06:56,116 まとめて発揮しないとな。 すぐに広島に着いちゃうからね。 81 00:06:56,116 --> 00:06:58,151 嫌! 82 00:06:58,151 --> 00:07:14,868 (走行音) 83 00:07:25,578 --> 00:07:27,881 マー姉ちゃん…。 84 00:07:32,752 --> 00:07:35,655 私の人生の全部の時間をあげてもいいわ。 85 00:07:35,655 --> 00:07:38,391 だから…➡ 86 00:07:38,391 --> 00:07:43,196 今のマー姉ちゃんの時間が 永久に続きますように。 87 00:07:53,406 --> 00:07:55,942 あっ すいません。 88 00:07:55,942 --> 00:07:59,279 ああ どうした? んっ?えっ? 大丈夫か? 疲れたろ。 89 00:07:59,279 --> 00:08:02,549 いいえ。 90 00:08:02,549 --> 00:08:04,484 ねえ。 (新八郎)うん? 91 00:08:04,484 --> 00:08:08,054 「新太郎」っていうのは どうでしょう? 「新太郎」? 92 00:08:08,054 --> 00:08:10,957 嫌だわ 子供の名前。 93 00:08:10,957 --> 00:08:15,362 ああ そうか そうか。 う~ん。 94 00:08:15,362 --> 00:08:20,567 新八郎さんの「新」の字を 1字 頂いて。 95 00:08:20,567 --> 00:08:24,437 悪くないな。 いや しかし 女の子だったら どうする? 96 00:08:24,437 --> 00:08:28,641 一緒に考えて。 よし。 97 00:08:30,577 --> 00:08:39,886 (汽笛) 98 00:08:42,922 --> 00:08:47,594 (戸が開く音) ヨウ子。 99 00:08:47,594 --> 00:08:51,398 夕方の熱を測りましょうね。 (ヨウ子)はい。 100 00:08:51,398 --> 00:08:55,268 はい。 101 00:08:55,268 --> 00:08:58,605 どう? 気分は。 (ヨウ子)大丈夫です。 102 00:08:58,605 --> 00:09:02,108 そう。 それは よかった。 103 00:09:03,877 --> 00:09:07,580 (ヨウ子)ねえ お母様。 ん? 何? 104 00:09:09,215 --> 00:09:13,053 もうそろそろ広島でしょうか? 105 00:09:13,053 --> 00:09:15,722 そうね…。 106 00:09:15,722 --> 00:09:58,598 ♬~ 107 00:09:58,598 --> 00:10:03,403 (貴美)あっ。 (隆太郎)うむ。はい。 108 00:10:03,403 --> 00:10:11,277 考えてみたら 新八郎たつは 初めての2人旅じゃのう。 109 00:10:11,277 --> 00:10:15,615 はい そうでごわんな。 110 00:10:15,615 --> 00:10:18,418 うむ よかよか。 111 00:10:18,418 --> 00:10:23,623 出征と新婚旅行を 一緒に決行するなんち➡ 112 00:10:23,623 --> 00:10:30,130 新八郎も なかなかやるぞ。 ハハハハハハ。 113 00:10:30,130 --> 00:10:32,632 はい。 114 00:10:48,815 --> 00:10:53,319 気を付けてな。 後のことは よろしく頼むぞ。 115 00:10:53,319 --> 00:10:58,191 ご無事のお帰りを お待ち申しております。 116 00:10:58,191 --> 00:11:00,393 うん。 117 00:11:25,618 --> 00:12:07,927 ♬~ 118 00:12:07,927 --> 00:12:10,830  心の声 あの人の船は➡ 119 00:12:10,830 --> 00:12:15,635 今夜中に あの港を離れてしまうのだろうか…。 120 00:12:20,106 --> 00:12:24,978 <そして マリ子が9日ぶりに 世田谷の家に帰り着いたのは➡ 121 00:12:24,978 --> 00:12:28,681 その翌日のことでした> 122 00:12:36,556 --> 00:12:39,292 ただいま。 123 00:12:39,292 --> 00:12:41,794 ⚟お帰り~! 124 00:12:41,794 --> 00:12:46,132 マー姉ちゃん! 帰ってたの!? 125 00:12:46,132 --> 00:12:48,801 マー姉ちゃん! ねえねえ… ちょっと 腰押してくれない? 126 00:12:48,801 --> 00:12:51,437 もう痛くて痛くて…。 127 00:12:51,437 --> 00:12:53,506 何よ 帰ってくるなり いきなり。 128 00:12:53,506 --> 00:12:55,642 だって 列車に乗りづめだったんですもの。 129 00:12:55,642 --> 00:12:57,577 もう ミリミリ 音がしそう。 130 00:12:57,577 --> 00:12:59,512 いいわよ そのかわり 高いわよ。 131 00:12:59,512 --> 00:13:03,916 大丈夫。 お土産 たくさん頂いてきたから。 132 00:13:03,916 --> 00:13:06,586 どうかな? う~ん 効く! 133 00:13:06,586 --> 00:13:08,621 やっぱり 我が家が一番よ。 134 00:13:08,621 --> 00:13:11,391 まあまあ 何でしょう お嫁に行った人が。 135 00:13:11,391 --> 00:13:13,326 だって 東京で暮らしていいっていう 条件だから➡ 136 00:13:13,326 --> 00:13:15,762 お嫁さんになってやったんですもの。 ねっ ヨウ子。 137 00:13:15,762 --> 00:13:19,265 ええ。やれやれ せっかく戸主になれたと思ったのに➡ 138 00:13:19,265 --> 00:13:22,101 すぐ姉っ風吹かすんだから 本当に 嫌になっちゃう! 139 00:13:22,101 --> 00:13:24,771 まことに 申し訳ございませんと! 140 00:13:24,771 --> 00:13:29,942 (笑い声) ああ~! 141 00:13:29,942 --> 00:13:34,113 でも 本当に ご苦労さんでしたね。 はい。 142 00:13:34,113 --> 00:13:36,949 (ヨウ子)やっぱり変よ。 何が? 143 00:13:36,949 --> 00:13:39,986 お嫁さんに行ったのが ご苦労さんだなんて。 144 00:13:39,986 --> 00:13:43,423 本当だ! まあ そう言えばそうだわね。 145 00:13:43,423 --> 00:13:45,958 (笑い声) あっ そうだ! 146 00:13:45,958 --> 00:13:49,462 マチ子に お土産ね。 本当!? 147 00:13:57,970 --> 00:14:01,741 <そうです。 語らなくても みんなには➡ 148 00:14:01,741 --> 00:14:06,579 マー姉ちゃんの複雑な胸の内が 分かっているのです。➡ 149 00:14:06,579 --> 00:14:12,251 この時 既に 東郷新八郎は 愛するマリ子 愛する日本を後に➡ 150 00:14:12,251 --> 00:14:15,955 南の海へと向かっておりました> 151 00:14:18,925 --> 00:14:23,596 <そして その秋には イタリアが連合軍に降伏。➡ 152 00:14:23,596 --> 00:14:27,467 ドイツは 既に ソ連戦線において 大敗を喫し➡ 153 00:14:27,467 --> 00:14:32,305 日独伊三国同盟も空中分解同然の中で➡ 154 00:14:32,305 --> 00:14:39,779 日本は 理工科系以外の大学生に対し 学徒出陣令を公布。➡ 155 00:14:39,779 --> 00:14:43,416 秋雨の煙る神宮外苑での壮行式は➡ 156 00:14:43,416 --> 00:14:47,920 まさに 悲壮感漂うものでした>