1 00:00:02,202 --> 00:00:08,609 ♬~(テーマ音楽) 2 00:00:08,609 --> 00:01:06,300 ♬~ 3 00:01:08,635 --> 00:01:10,637 (マリ子)はい。 4 00:01:16,276 --> 00:01:19,279 これはね なつめといって➡ 5 00:01:19,279 --> 00:01:23,050 本当は お抹茶を入れる お道具なの。 6 00:01:23,050 --> 00:01:24,985 (道子)はい。 7 00:01:24,985 --> 00:01:28,622 あなたには 今日まで 肌身離さず持っていらして➡ 8 00:01:28,622 --> 00:01:30,958 思い出も多いと思うのよ。 9 00:01:30,958 --> 00:01:35,295 でも こうして お父様も帰っていらっしゃれたんだし➡ 10 00:01:35,295 --> 00:01:40,434 あの空き缶から この なつめに 移っていただいたらどうかしら? 11 00:01:40,434 --> 00:01:42,502 (道子)はい。 12 00:01:42,502 --> 00:01:46,239 (はる)いいえ なにも無理にとは言いませんよ。 13 00:01:46,239 --> 00:01:49,142 ただ もし よかったら 使っていただけたら。 14 00:01:49,142 --> 00:01:52,045 そう思っただけなのよ。 15 00:01:52,045 --> 00:01:55,649 ありがとうございます。 16 00:01:55,649 --> 00:01:58,685 頂かせていただきます。 17 00:01:58,685 --> 00:02:01,922 はい。 18 00:02:01,922 --> 00:02:05,592 大変だったのね 本当に…。 19 00:02:05,592 --> 00:02:10,263 はい。 でも…。 20 00:02:10,263 --> 00:02:15,402 いいのよ。 胸に詰まってることは 全部 お話ししておしまいなさい。 21 00:02:15,402 --> 00:02:20,941 もう あなたは うちに来たんですから。 (道子)はい。 22 00:02:20,941 --> 00:02:25,612 (マチ子)でも そうは言っても 何から話していいか分からないわよね。 23 00:02:25,612 --> 00:02:27,948 (道子)はい…。 24 00:02:27,948 --> 00:02:30,417 いいえ! 25 00:02:30,417 --> 00:02:34,121 私 おじさんに感謝しています。 26 00:02:34,121 --> 00:02:37,791 本当に感謝しています。 27 00:02:37,791 --> 00:02:40,127 あの おじさんが いなかったら➡ 28 00:02:40,127 --> 00:02:44,831 私は とても 生きては 日本に帰ってこれなかったと思います。 29 00:02:46,800 --> 00:02:50,137 私の髪…➡ 30 00:02:50,137 --> 00:02:54,307 こんなふうに切ってくれたのも おじさんです。 31 00:02:54,307 --> 00:02:56,243 そうでなかったら➡ 32 00:02:56,243 --> 00:03:02,049 とても無事では済まされない時が 何度もありました。 33 00:03:02,049 --> 00:03:09,356 でも おじさんは 本当に命懸けで 私のことを守ってくれました。 34 00:03:11,792 --> 00:03:15,262 じゃあ 三郷さんと お父様は お友達だったの? 35 00:03:15,262 --> 00:03:20,133 (道子)いいえ 違います。 まあ。 36 00:03:20,133 --> 00:03:26,773 (道子)父が もう歩けなくなった時に あの おじさんに会ったんです。➡ 37 00:03:26,773 --> 00:03:32,112 それで 私のことを 日本に連れてってくれって➡ 38 00:03:32,112 --> 00:03:36,783 父が おじさんに頼んだんです。➡ 39 00:03:36,783 --> 00:03:42,422 そしたら おじさんだって フラフラだったのに➡ 40 00:03:42,422 --> 00:03:49,730 3日間も… 動けない父のことを おぶって 歩いてくれました。 41 00:03:51,965 --> 00:03:56,803 でも… 寒くって…➡ 42 00:03:56,803 --> 00:04:00,674 食べ物もなくって…➡ 43 00:04:00,674 --> 00:04:05,078 小さな村の手前で とうとう 父は…➡ 44 00:04:05,078 --> 00:04:07,881 し… し…。 45 00:04:10,750 --> 00:04:16,757 ごめんなさいね。 つらいことを思い出させて悪かったわね。 46 00:04:18,625 --> 00:04:21,328 おば様…。 47 00:04:31,938 --> 00:04:36,276 (泣き声) 48 00:04:36,276 --> 00:04:50,423 ♬~ 49 00:04:50,423 --> 00:04:54,628 <一緒に満州へ渡った家族のことを➡ 50 00:04:54,628 --> 00:05:00,734 ついに ひと言も聞かなかった マリ子たちの思いやりを胸に➡ 51 00:05:00,734 --> 00:05:07,908 智正は 何としても寝つけない 帰国第1夜を送ろうとしていました> 52 00:05:07,908 --> 00:05:31,198 ♬~ 53 00:05:55,288 --> 00:06:02,095 <この海の向こうで 全てを失ってしまった 三郷智正> 54 00:06:06,233 --> 00:06:09,736 <彼の胸に 今 去来しているものは➡ 55 00:06:09,736 --> 00:06:14,441 マリ子にも痛いほど分かっておりました> 56 00:06:36,830 --> 00:06:38,798 (はる)まあ お帰りなさいませ。 57 00:06:38,798 --> 00:06:42,402 (智正)ああ どうも申し訳ありません。 58 00:06:42,402 --> 00:06:47,274 いいえ。 それは もう あきれるほどに 汚れておりましたんですよ。 59 00:06:47,274 --> 00:06:51,111 恐縮です。 はい。 60 00:06:51,111 --> 00:06:55,282 ですから きれいさっぱりと 洗い落としておきました。 61 00:06:55,282 --> 00:06:58,184 きれいさっぱりとね。 62 00:06:58,184 --> 00:07:03,556 はい… あの 道子ちゃんは? 63 00:07:03,556 --> 00:07:07,427 もう先に お食事を済まして ヨウ子と一緒に お買い物に出ております。 64 00:07:07,427 --> 00:07:09,896 そうですか それは すいません。 65 00:07:09,896 --> 00:07:12,365 海辺の散歩が あまりに気持ちよかったものですから➡ 66 00:07:12,365 --> 00:07:14,901 つい 時間がたつのを忘れてしまいました。 67 00:07:14,901 --> 00:07:17,370 それでは 気持ちよく おなかも おすきになったでしょう? 68 00:07:17,370 --> 00:07:19,306 さあ どうぞ。 はあ すいません。 69 00:07:19,306 --> 00:07:23,076 (はる)マリ子 マリ子! ⚟はい! 70 00:07:23,076 --> 00:07:26,746 もう お支度 できていますから。 (智正)どうも 申し訳ありません。➡ 71 00:07:26,746 --> 00:07:30,383 あの これ… お言葉に甘えて お借りいたしました。 72 00:07:30,383 --> 00:07:32,452 やっぱり 和服をお召しになると➡ 73 00:07:32,452 --> 00:07:35,088 日本に帰ってきたなっていう気分に なりますでしょう? 74 00:07:35,088 --> 00:07:37,023 ああ~ それは もう。 75 00:07:37,023 --> 00:07:40,393 ですから いつ 新八郎さんが お帰りになってもいいように➡ 76 00:07:40,393 --> 00:07:42,929 縫っておいたものなんです。 77 00:07:42,929 --> 00:07:46,399 そうだったんですか。 78 00:07:46,399 --> 00:07:49,769 さあ どうぞ こちらから お上がりになって。 79 00:07:49,769 --> 00:08:21,368 ♬~ 80 00:08:21,368 --> 00:08:25,238 どうも ごちそうさまでした。 お粗末さまでございました。 81 00:08:25,238 --> 00:08:28,074 こんなに ごやっかいになるつもりは なかったんですが…。 82 00:08:28,074 --> 00:08:30,010 何を おっしゃいますの。 83 00:08:30,010 --> 00:08:33,580 ご無事なお顔を見て ずっと心配していたことが 一つ消えて➡ 84 00:08:33,580 --> 00:08:39,252 私たち どんなに うれしいか。 ありがとう マリ子さん。 85 00:08:39,252 --> 00:08:43,590 これで 私も やり直す決心がつきました。 86 00:08:43,590 --> 00:08:47,394 あの服が乾き次第 出発させていただきます。 87 00:08:47,394 --> 00:08:49,329 出発って 一体どこへ? 88 00:08:49,329 --> 00:08:52,232 はい 北海道へ渡ります。 89 00:08:52,232 --> 00:08:54,768 北海道? (智正)はい。 90 00:08:54,768 --> 00:08:58,104 待って。 一体 北海道へ何をしに? 91 00:08:58,104 --> 00:09:03,343 はい 北海道開拓団の話がありましたので それに応募することにしました。 92 00:09:03,343 --> 00:09:07,547 駄目です そんな! 北海道といったって 知り合いも何もないじゃありませんか! 93 00:09:07,547 --> 00:09:09,582 そうですとも。 取り消していらっしゃいませよ すぐ。 94 00:09:09,582 --> 00:09:12,719 いえ あとで マリ子に やらせますわ。 (智正)しかし…。 95 00:09:12,719 --> 00:09:15,555 一体 何を遠慮していらっしゃるんですか。 96 00:09:15,555 --> 00:09:17,891 幸い このうちも焼け残りましたし➡ 97 00:09:17,891 --> 00:09:20,727 道子さんと お二人のお部屋ぐらいは ございますのよ。 98 00:09:20,727 --> 00:09:23,063 ですから 当分 ここで ゆっくりなすって➡ 99 00:09:23,063 --> 00:09:25,899 お疲れが取れたところで また新しいお仕事を➡ 100 00:09:25,899 --> 00:09:27,834 お探しになったらいいじゃありませんか。 101 00:09:27,834 --> 00:09:31,071 お願いします。 そうしてください 是非。 102 00:09:31,071 --> 00:09:35,241 お気持ちは うれしいんですが それはできません。 103 00:09:35,241 --> 00:09:37,544 三郷さん…。 104 00:09:40,747 --> 00:09:44,918 私は ご覧のとおり…➡ 105 00:09:44,918 --> 00:09:49,756 のめのめと 一人 生き残って 帰ってまいりました。 106 00:09:49,756 --> 00:09:53,259 満州の いてついた土になってしまった➡ 107 00:09:53,259 --> 00:10:00,033 母や 妻や 子供たちのことを考えますと 私…。 108 00:10:00,033 --> 00:10:04,771 どうぞ もう そのことを おっしゃらないで…。 109 00:10:04,771 --> 00:10:07,807 聞いてください。 110 00:10:07,807 --> 00:10:11,811 でも 決して捨ててきたわけじゃないんです。 111 00:10:14,280 --> 00:10:19,786 あれは 終戦のすぐあとでした。 112 00:10:19,786 --> 00:10:24,958 私たちの開拓団は 男だけが駆り出されて➡ 113 00:10:24,958 --> 00:10:30,763 その日のうちに 男女別々にされてしまったんです。 114 00:10:30,763 --> 00:10:36,436 お互いに 行方も知れないまま 三月ほど過ぎてしまいました。 115 00:10:36,436 --> 00:10:42,809 年が明けたら 順々に帰国できる そんなうわさも流れてきました。 116 00:10:42,809 --> 00:10:45,445 でも 一方では➡ 117 00:10:45,445 --> 00:10:48,348 無残に死んでいった 多くの人たちのうわさも➡ 118 00:10:48,348 --> 00:10:52,218 耳に入ってきたんです。 119 00:10:52,218 --> 00:10:59,025 私 思い切って 収容所を脱走いたしました。 120 00:10:59,025 --> 00:11:03,596 まあ…。 (智正)家内たちのいる所までは➡ 121 00:11:03,596 --> 00:11:07,934 百数十キロの道のりでした。➡ 122 00:11:07,934 --> 00:11:14,274 ようやく たどりついたものの その村では➡ 123 00:11:14,274 --> 00:11:17,610 誤った情報から➡ 124 00:11:17,610 --> 00:11:25,118 全員 集団自殺していたんです。➡ 125 00:11:25,118 --> 00:11:29,956 私とても 一人 生き残って➡ 126 00:11:29,956 --> 00:11:35,128 おめおめと帰国する気力など 毛頭ありませんでした。 127 00:11:35,128 --> 00:11:40,934 その時なんですよ 道子ちゃん親子に出会ったのは。 128 00:11:42,869 --> 00:11:45,772 そうだったんですか。 129 00:11:45,772 --> 00:11:50,610 父親から あの子を託されなかったら 私➡ 130 00:11:50,610 --> 00:11:57,383 こうして 皆様に お会いできることは 二度となかったと思います。 131 00:11:57,383 --> 00:12:02,088 あの子だけは どんなことがあっても…➡ 132 00:12:02,088 --> 00:12:05,959 どうしても 日本へ連れて帰らなければいけない。 133 00:12:05,959 --> 00:12:10,597 それが むなしく 異郷で死んでいった➡ 134 00:12:10,597 --> 00:12:16,269 母や 妻や 子供たちへの➡ 135 00:12:16,269 --> 00:12:20,473 せめてもの償いだと 私 決心したんです。 136 00:12:25,612 --> 00:12:30,283 よう 帰ってくださいました。 137 00:12:30,283 --> 00:12:34,287 よう 無事で連れてきてくださいましたわ。 138 00:12:37,790 --> 00:12:40,293 ありがとうございます。 139 00:12:45,665 --> 00:12:50,303 道子ちゃんのお父さん 北海道が出身でしてね➡ 140 00:12:50,303 --> 00:12:53,806 せめて そこへ お骨を納めさせてやりたい と思ってるんですよ。 141 00:12:53,806 --> 00:12:56,709 でも それが終わったら➡ 142 00:12:56,709 --> 00:12:59,445 なにも あちらに お住みになることはないんでしょう? 143 00:12:59,445 --> 00:13:05,151 はい。 でも 決めてしまったことなんです。 144 00:13:14,394 --> 00:13:19,599 分かりました。 それでは お引き止めいたしませんわ。 145 00:13:19,599 --> 00:13:24,103 でも 決して ご無理はなさいませんように。 146 00:13:29,275 --> 00:13:33,112 ここに いつも私たちがいること➡ 147 00:13:33,112 --> 00:13:37,417 道子ちゃんのためにも 忘れないでくださいね。 148 00:13:37,417 --> 00:13:42,955 (智正)ありがとう マリ子さん 奥さん。 149 00:13:42,955 --> 00:13:49,729 どんな所にいらしても お体だけは お気を付けくださいましね。 150 00:13:49,729 --> 00:13:52,031 はい。 151 00:14:00,907 --> 00:14:03,576 (ヨウ子)ごめんなさい。 すっかり 荷物を持たせてしまって。 152 00:14:03,576 --> 00:14:07,080 いいえ ほとんど 私のものばっかり 買っていただいたんですもの。 153 00:14:07,080 --> 00:14:09,382 (ヨウ子)でも 気に入ったのがあって よかったわね。 154 00:14:09,382 --> 00:14:12,251 はい! 155 00:14:12,251 --> 00:14:15,755 (ヨウ子)ただいま~! 156 00:14:15,755 --> 00:14:18,091 (智正)へえ~ よかったじゃないか 道子ちゃん。 157 00:14:18,091 --> 00:14:20,993 はい! クリームも買っていただきました。 158 00:14:20,993 --> 00:14:23,963 (智正)クリームも? はい! これ。 159 00:14:23,963 --> 00:14:26,766 じゃあ せっせとつけて どんどん きれいになることね。 160 00:14:26,766 --> 00:14:31,637 はい! あっ でも でも…。 (笑い声) 161 00:14:31,637 --> 00:14:36,109 <道子が 本来の少女らしさを 取り戻したことは➡ 162 00:14:36,109 --> 00:14:40,780 三郷さんにとって どれほどの喜びだったでしょう。➡ 163 00:14:40,780 --> 00:14:43,116 そして その喜びは➡ 164 00:14:43,116 --> 00:14:46,986 そのまま マリ子たちにも 分かち合える喜びであり➡ 165 00:14:46,986 --> 00:14:49,188 感動だったのです>