1 00:00:02,202 --> 00:00:08,609 ♬~(テーマ音楽) 2 00:00:08,609 --> 00:01:06,600 ♬~ 3 00:01:09,269 --> 00:01:14,775 <話はポンと飛んで 昭和25年になりました。➡ 4 00:01:14,775 --> 00:01:21,648 お千代ねえやの後釜には お琴さんという お手伝いさんが来ています。➡ 5 00:01:21,648 --> 00:01:26,486 頑張って出した「サザエさん」第3巻が 売れに売れて➡ 6 00:01:26,486 --> 00:01:30,123 磯野家が買い取ったはずの ウラマドさんの家は➡ 7 00:01:30,123 --> 00:01:33,327 一体 どこへ行ったのでしょう?> 8 00:01:54,314 --> 00:01:59,186 (均)ごめんください 大宗です! ⚟(道子)は~い! 9 00:01:59,186 --> 00:02:01,588 やあ こんにちは。 (道子)いらっしゃいませ。➡ 10 00:02:01,588 --> 00:02:03,924 お電話の旨 お伝えしておきましたので➡ 11 00:02:03,924 --> 00:02:06,760 マリ子奥様が お待ち申し上げていらっしゃいます。➡ 12 00:02:06,760 --> 00:02:08,795 さあ どうぞ お上がりになってください。 13 00:02:08,795 --> 00:02:12,099 はいはい じゃあ 失礼します。 はい。 14 00:02:12,099 --> 00:02:14,134 あ~ そうだ。 15 00:02:14,134 --> 00:02:17,904 これ。 あっ… 私にですか? 16 00:02:17,904 --> 00:02:19,840 そう。 渋谷で見かけたもんだから。 17 00:02:19,840 --> 00:02:22,109 あ~ どうも ありがとうございます! 18 00:02:22,109 --> 00:02:25,012 いえいえ それほどのもんじゃないんだよ。 いえ とんでもございません! 19 00:02:25,012 --> 00:02:27,814 さあ こちらです。 どうぞ。 20 00:02:35,622 --> 00:02:39,426 しばらく こちらで お待ちくださいませ。 はいはい。 21 00:02:41,495 --> 00:02:44,197 はあ~…。 22 00:02:47,134 --> 00:02:52,439 <そうです。 買い取った前島家は ゴロゴロと運ばれて➡ 23 00:02:52,439 --> 00:02:59,646 ウラマドさん愛用の家具と一緒に このとおり 磯野家の応接間となりました> 24 00:03:02,916 --> 00:03:05,952 (ドアが開く音) (マリ子)いらっしゃいませ。 25 00:03:05,952 --> 00:03:08,722 (均)お邪魔してます。 (マチ子)しばらくでした 先輩。 26 00:03:08,722 --> 00:03:11,625 しばらくはいいけども 忙しいんじゃないの? あなた 大丈夫? 27 00:03:11,625 --> 00:03:14,261 それがね どうした風の吹き回しか➡ 28 00:03:14,261 --> 00:03:16,196 今日は明日の案まで 出来てしまったんですって。 29 00:03:16,196 --> 00:03:19,132 翻訳すると ふだんの心掛けがよかった ということになるわけ。 30 00:03:19,132 --> 00:03:21,134 (均)なるほど。➡ 31 00:03:21,134 --> 00:03:25,605 いや しかし 昨日の「サザエさん」ね あれは 断然 面白かったな。 32 00:03:25,605 --> 00:03:27,541 あら そうでしたか? (均)うん! 33 00:03:27,541 --> 00:03:31,278 それでね 早速なんだけども ここにさ➡ 34 00:03:31,278 --> 00:03:34,281 君のサインを もらいたいんだ。 下宿のおばさんに頼まれてね。 35 00:03:34,281 --> 00:03:37,951 サイン? (均)うん。 悪いけど この横にね➡ 36 00:03:37,951 --> 00:03:40,787 磯野マチ子って書いてくれないか? 嫌… 嫌だわ そんなの…。 37 00:03:40,787 --> 00:03:45,292 いや~ 頼むよ。 そうなるとね 晩飯の おかずも 多少違うんじゃないかと…。 38 00:03:45,292 --> 00:03:47,227 えっ? いやいや こっちの話。 39 00:03:47,227 --> 00:03:49,162 ねっ? 先輩を助けると思って お願いしますよ。 40 00:03:49,162 --> 00:03:51,431 そんなこと言ったって…。 書いておあげなさいよ。 41 00:03:51,431 --> 00:03:53,366 それで おかずが違うと おっしゃるんだったら。 42 00:03:53,366 --> 00:03:57,671 あら 聞かれちゃった。 面目ない。 いや~。(笑い声) 43 00:04:04,578 --> 00:04:10,083 <マチ子の「サザエさん」も 去年から 毎朝新聞の夕刊に連載となり➡ 44 00:04:10,083 --> 00:04:15,088 日本全国へと 笑いを まき散らしておりました> 45 00:04:18,258 --> 00:04:21,161 それで 田河先生のお話 何でしたの? 46 00:04:21,161 --> 00:04:25,599 それそれ! それが本日の 一大テーマでしたよ。はいはい。 47 00:04:25,599 --> 00:04:29,469 いよいよ 細谷君が みこしを上げて 東京へ出てくることになったんだ。 48 00:04:29,469 --> 00:04:32,272 まあ! それじゃあ お病気の方は? 49 00:04:32,272 --> 00:04:34,941 うん まあ 小説をね ベッドの中で書いて➡ 50 00:04:34,941 --> 00:04:37,611 しばらくの間 行ったり来たりの 病状だったんだけども➡ 51 00:04:37,611 --> 00:04:39,546 彼も しっかり治ってね。➡ 52 00:04:39,546 --> 00:04:42,949 いや なかなか あれで慎重派だからね。 53 00:04:42,949 --> 00:04:48,755 いや それより何より 去年の秋の文学賞受賞が➡ 54 00:04:48,755 --> 00:04:50,824 東京へ出てくるきっかけを 作ったんじゃないか? 55 00:04:50,824 --> 00:04:53,426 あれは うれしかったわ~。 56 00:04:53,426 --> 00:04:58,632 新聞で細谷さんの名前を見た時 柄にもなく感激してしまって…。 57 00:04:58,632 --> 00:05:00,567 母も申しておりました。 58 00:05:00,567 --> 00:05:04,371 これぞ 座して祈り 道を開いた見本のようなものだって。 59 00:05:04,371 --> 00:05:08,241 ああ。 あっ ところで 今日 おかあさんは? 60 00:05:08,241 --> 00:05:10,243 湯河原のホームに入り浸り。 61 00:05:10,243 --> 00:05:12,245 また せっせと 分かち合ってるんでしょうよ。 62 00:05:12,245 --> 00:05:14,748 相変わらず天使ですね おかあさんは。 63 00:05:14,748 --> 00:05:17,784 いいえ ワンマンです。 ワンマン…。 64 00:05:17,784 --> 00:05:21,922 ハハハハッ 2人とも なかなか あだ名の名人だね! 65 00:05:21,922 --> 00:05:23,857 ワンマン! 感じが出てる! 66 00:05:23,857 --> 00:05:26,760 <吉田 茂という首相が登場して➡ 67 00:05:26,760 --> 00:05:29,095 戦時中のヒトラーに取って代わって➡ 68 00:05:29,095 --> 00:05:33,266 はるのあだ名は ワンマンに変わったようです> 69 00:05:33,266 --> 00:05:35,936 ねえねえ それで どういうことになりましたの? 70 00:05:35,936 --> 00:05:38,839 (均)何が? だから 田河先生のお話。 71 00:05:38,839 --> 00:05:41,808 あっ ごめんなさい。 駄目だな~…。 72 00:05:41,808 --> 00:05:44,110 俺は どうも 幹事には向いてないらしいな こりゃ…。 73 00:05:44,110 --> 00:05:48,281 いいえ 絶望するには早すぎます。 (均)それはそうですね。 74 00:05:48,281 --> 00:05:51,952 実はね 田河先生がね これを機会に➡ 75 00:05:51,952 --> 00:05:54,287 同窓会をやろうじゃないか ってことになったんだ。 76 00:05:54,287 --> 00:05:56,790 賛成! 私も賛成! 77 00:05:56,790 --> 00:06:00,126 やりましょう しっかり 盛大に! (2人)はい! 78 00:06:00,126 --> 00:06:04,564 <というわけで 足かけ7年ぶりに➡ 79 00:06:04,564 --> 00:06:09,269 懐かしい顔が 田河家に勢ぞろいいたしました> 80 00:06:15,075 --> 00:06:18,378 (水泡)さあ みんな いいかな? そろったかな?➡ 81 00:06:18,378 --> 00:06:24,384 それじゃあ 無事を祝って… 乾杯! (一同)乾杯! 82 00:06:29,022 --> 00:06:32,892 いや~ 本当に みんな… みんな よく来てくれたな。 83 00:06:32,892 --> 00:06:35,262 (順子)本当 皆さん お忙しいのに。 84 00:06:35,262 --> 00:06:37,597 今を時めく塚田さんまで よく いらしてくだすったわ。 85 00:06:37,597 --> 00:06:41,101 (塚田) いやいや… 今を時めくというなら➡ 86 00:06:41,101 --> 00:06:44,137 当代人気随一の漫画家 磯野マチ子ですよ。 87 00:06:44,137 --> 00:06:46,273 そんな…。 88 00:06:46,273 --> 00:06:49,776 ハッハ~ いや 告白するとだな 少々後悔しとるんだ 私は。 89 00:06:49,776 --> 00:06:52,612 まあ 塚田さんがですか? 一体 何を? 90 00:06:52,612 --> 00:06:55,415 いや 同窓会だって言われて つい その気になってしまったんだが➡ 91 00:06:55,415 --> 00:06:57,784 ねえ 先生 こうやって見回したところ➡ 92 00:06:57,784 --> 00:06:59,819 私だけ 一回り とうが立ってるみたいな感じで…。 93 00:06:59,819 --> 00:07:03,056 (笑い声) そんなことはないだろう 塚田君。 94 00:07:03,056 --> 00:07:06,359 君は それに あの… 細谷君の後見人でもあることだし。 95 00:07:06,359 --> 00:07:08,295 いやいや とてもとても…。 96 00:07:08,295 --> 00:07:12,065 (細谷)いやいや 塚田さんから 毎週送っていただいた手紙で➡ 97 00:07:12,065 --> 00:07:14,000 尻をひっぱたかれなかったら➡ 98 00:07:14,000 --> 00:07:17,871 僕は文学賞どころか 小説すら書かなかっただろうし➡ 99 00:07:17,871 --> 00:07:21,374 一人寂しく 信州で 野たれ死んでたかもしれませんよ。 100 00:07:21,374 --> 00:07:25,745 まあ 細谷君のね 塚田君に対する 感謝の気持ちは それくらいにしてね➡ 101 00:07:25,745 --> 00:07:29,582 君の その隣に おとなしく座っている その女性がね➡ 102 00:07:29,582 --> 00:07:31,518 君を死なせたりは 絶対せんかった。➡ 103 00:07:31,518 --> 00:07:35,255 どうだ? この辺で 奥さんを みんなに紹介したら。 104 00:07:35,255 --> 00:07:37,924 いや 改めて紹介するほどのことじゃ ないんですけど…。 105 00:07:37,924 --> 00:07:41,795 (順子)あら 駄目駄目。 そうです 紹介してくださらなければ。 106 00:07:41,795 --> 00:07:44,597 戦後 女性が強くなったっていうことを ご存じないんですか? 107 00:07:44,597 --> 00:07:48,468 (細谷) てれるな… そんな年でもないのに…。 108 00:07:48,468 --> 00:07:52,772 あの… 浩子です。 109 00:07:54,607 --> 00:07:59,779 信州の療養所を出てから 小説を書くために居候してた農家の娘で➡ 110 00:07:59,779 --> 00:08:03,650 このとおり おとなしいだけが取り柄の 家内です。 111 00:08:03,650 --> 00:08:06,353 (浩子)よろしくお願いいたします。 112 00:08:06,353 --> 00:08:10,724 (拍手) 113 00:08:10,724 --> 00:08:15,595 お似合いだわ。 ねっ マー姉ちゃん 本当に お似合いのお二人よね。 114 00:08:15,595 --> 00:08:17,597 本当! 115 00:08:17,597 --> 00:08:21,434 いや しかし おとなしいといったら これは ヨウ子さんと いい勝負だな。 116 00:08:21,434 --> 00:08:23,436 (道子)とんでもございません。 えっ? 117 00:08:23,436 --> 00:08:26,906 ヨウ子お嬢様は お見かけは 静かでいらっしゃいますけれども➡ 118 00:08:26,906 --> 00:08:31,378 マリ子奥様が お留守の時など 私 マチ子先生が お忙しいので➡ 119 00:08:31,378 --> 00:08:33,913 ヨウ子お嬢様に 全部 お伺いしてるんですね。 120 00:08:33,913 --> 00:08:37,584 そうしますと お口数こそ 少なくいらっしゃいますけれども➡ 121 00:08:37,584 --> 00:08:40,620 マリ子お嬢様のような言い違いなんか 絶対しませんし…。 122 00:08:40,620 --> 00:08:43,456 (ヨウ子) 何を言うのよ 道子ちゃんは 全く…。 123 00:08:43,456 --> 00:08:46,259 なかなか はっきりしてて 気立てのいい子じゃないか。 124 00:08:46,259 --> 00:08:48,194 そうなんですよ 塚田さん。 125 00:08:48,194 --> 00:08:52,132 いや~ 道子ちゃんはね 磯野家では ヒナゲシ的存在ですからね。 126 00:08:52,132 --> 00:08:54,134 (塚田)いやに肩を持つな 均ちゃん。 127 00:08:54,134 --> 00:08:56,770 いや 別に 僕は 他意はございませんけど…。 128 00:08:56,770 --> 00:09:00,206 この子を見ると 私たちの昔を 思い出してくださるんですって。 129 00:09:00,206 --> 00:09:02,142 あ~ それは言えるね。 130 00:09:02,142 --> 00:09:04,711 先生 そうでしょう? ねっ? 131 00:09:04,711 --> 00:09:11,351 いや~ しかし 時間というものは 全く大したもんですね 田河先生。 132 00:09:11,351 --> 00:09:14,254 私も その昔のヨウ子さんしか 知らんもんだから➡ 133 00:09:14,254 --> 00:09:16,222 つい 失礼なこと言ってしまって。 134 00:09:16,222 --> 00:09:20,093 (ヨウ子) いいえ 私たち3人は いつまでたっても 独り立ちできませんの。 135 00:09:20,093 --> 00:09:22,896 まあ 私も同罪? そうじゃない だって。 136 00:09:22,896 --> 00:09:27,367 まあ いずれにしろ 道子ちゃんの爪のあかを煎じて➡ 137 00:09:27,367 --> 00:09:30,270 うちのにも のませた方がいいかもしれませんね。 138 00:09:30,270 --> 00:09:32,906 はい。 あら まあ! 139 00:09:32,906 --> 00:09:37,077 (笑い声) 140 00:09:37,077 --> 00:09:40,914 浩子さん しかし 頼みますよ。 141 00:09:40,914 --> 00:09:44,384 あんたんとこの旦那さんはね 一見 おとなしそうに見えるけど➡ 142 00:09:44,384 --> 00:09:47,253 なかなか 強情屋なんだからね。 はい。 143 00:09:47,253 --> 00:09:49,756 ああ。 (笑い声) 144 00:09:49,756 --> 00:09:53,259 あっ 三吉君 あんたも 前来て 掛けなさい。 145 00:09:53,259 --> 00:09:56,596 (順子)あら 三吉君 せっかく いらしたのに どうぞ。➡ 146 00:09:56,596 --> 00:10:00,100 そんなとこ引っ込んでないで。 (三吉)じゃあ 失礼します。 147 00:10:00,100 --> 00:10:02,035 じゃあ 私 運びます。 (順子)お願いします。 148 00:10:02,035 --> 00:10:05,972 浩子さん。はい。 じゃあ 私も。 149 00:10:05,972 --> 00:10:10,110 三吉君 君も本当に頑張ったね。 150 00:10:10,110 --> 00:10:12,145 炭屋のおばあさんは元気かい? 151 00:10:12,145 --> 00:10:15,281 はい おかげさんで。 そうか。 それは よかった よかった。 152 00:10:15,281 --> 00:10:17,217 (順子)あなたが無事に復員なすったんで➡ 153 00:10:17,217 --> 00:10:19,152 それで おばあちゃま お元気になられたのよ。 154 00:10:19,152 --> 00:10:23,156 ありがとうございます。 これも マチ子先生から➡ 155 00:10:23,156 --> 00:10:25,992 のらくろのお札を 頂いていったからです。 156 00:10:25,992 --> 00:10:28,428 のらくろのお札? 157 00:10:28,428 --> 00:10:35,635 はい。 のらくろが凱旋してくるところを 私が描きました。(水泡)そう。 158 00:10:35,635 --> 00:10:38,671 それがですね 先生 三吉君は➡ 159 00:10:38,671 --> 00:10:42,976 のらくろは絶対に死なないんだから 自分も死なないと➡ 160 00:10:42,976 --> 00:10:45,445 そう信じていたそうですよ。 161 00:10:45,445 --> 00:10:48,815 三吉君 本当に そう思うか? 162 00:10:48,815 --> 00:10:52,318 はい。 そう…。 163 00:10:54,988 --> 00:10:56,923 先生…? 164 00:10:56,923 --> 00:11:01,761 うん? いや~ ごめん ごめん。 165 00:11:01,761 --> 00:11:07,267 三吉君が信じたんだから 僕も信じよう その話を。 166 00:11:07,267 --> 00:11:10,169 あなた…。 (水泡)うん うれしいね。 167 00:11:10,169 --> 00:11:12,138 ええ。 168 00:11:12,138 --> 00:11:16,976 2人で出かけた時にね 焼夷弾が バラバラ バラバラ 落っこってきてね➡ 169 00:11:16,976 --> 00:11:19,979 もう これは駄目だななんて 思ったんだけど➡ 170 00:11:19,979 --> 00:11:24,817 生きとって よかったね 奥さん…。 はい…。 171 00:11:24,817 --> 00:11:29,289 先生 私も信じておりました。 172 00:11:29,289 --> 00:11:33,293 マチ子とヨウ子と よく話し合ったものですわ。 173 00:11:33,293 --> 00:11:36,629 必ず 絵が描ける時代が やって来る。 174 00:11:36,629 --> 00:11:41,301 その時まで 絵のことを忘れてはいけない と おっしゃられた先生のことを。 175 00:11:41,301 --> 00:11:48,808 紙がなくなったら 地べたにでも 心の中にでも 漫画は描けるんだって➡ 176 00:11:48,808 --> 00:11:52,679 先生がおっしゃった その言葉 私 忘れたことがありません。 177 00:11:52,679 --> 00:11:57,317 ありがとう。 本当に ありがとう。 いいえ。 178 00:11:57,317 --> 00:12:01,254 マッちゃんは 今や 押しも押されもせぬ女流漫画家。 179 00:12:01,254 --> 00:12:05,058 マリ子さんは まあ これは 僕の意思に反しとるんだが➡ 180 00:12:05,058 --> 00:12:07,927 でも まあ 出版社社長だ。 181 00:12:07,927 --> 00:12:14,267 細谷君は 今や文壇に 静かな旋風を巻き起こしつつある小説家。 182 00:12:14,267 --> 00:12:20,406 そして 三吉君は炭屋の旦那さんか。 183 00:12:20,406 --> 00:12:24,277 ねえ 先生 考えてみたら このサロンからは➡ 184 00:12:24,277 --> 00:12:28,781 随分と次の次代を担う傑物が 続出してるわけですな。 185 00:12:28,781 --> 00:12:31,117 本当に そうだね 塚田君。 186 00:12:31,117 --> 00:12:34,621 しかし あの うちの均五郎のことを 忘れんでほしいよ 塚田編集長。 187 00:12:34,621 --> 00:12:39,492 (塚田)ああ! うん。 いや 僕はね…。 188 00:12:39,492 --> 00:12:41,494 ああ 君 ビールがないね。 189 00:12:41,494 --> 00:12:44,130 (水泡)「石の上にも三年」 っていう話があるけどね➡ 190 00:12:44,130 --> 00:12:49,435 3年どころか この男は 僕の所へ弟子入りして かれこれ20年だ。➡ 191 00:12:49,435 --> 00:12:52,338 僕の方は もう とうに諦めかけてる このごろになってだね➡ 192 00:12:52,338 --> 00:12:55,642 急に奇妙に味のある漫画を描き始めたぞ。 193 00:12:55,642 --> 00:12:59,512 あっ 見ましたよ 先月号の「春秋文学」で。 194 00:12:59,512 --> 00:13:03,449 あっ あれ 見… 恥ずかしいな~…。 195 00:13:03,449 --> 00:13:07,086 大器晩成っていうんですよ 大宗さんみたいな人を。 196 00:13:07,086 --> 00:13:10,590 ハハハッ ものにはね言い方がありますからね。 197 00:13:10,590 --> 00:13:12,525 それは 自分で一番よく分かってることだろ。 198 00:13:12,525 --> 00:13:16,095 あっ そうか! 失敗 失敗! (笑い声) 199 00:13:16,095 --> 00:13:20,767 でも よかった。 先生も奥様も 本当に昔のまんま➡ 200 00:13:20,767 --> 00:13:24,637 お元気で優しくて楽しくて 私たち 本当に幸せです。 201 00:13:24,637 --> 00:13:26,639 ありがとう マリ子さん。 202 00:13:26,639 --> 00:13:31,277 そうだとも。 僕だってね まだまだ 君たちには負けちゃいられないからね。 203 00:13:31,277 --> 00:13:33,780 おお? すると? 204 00:13:33,780 --> 00:13:37,617 そう また描き始めたよ 相変わらず 「のらくろ」をね。 205 00:13:37,617 --> 00:13:39,552 先生…! (水泡)駄目駄目…!➡ 206 00:13:39,552 --> 00:13:42,488 まだね 時期が来るまではね見せませんよ。 207 00:13:42,488 --> 00:13:44,490 まあ ひどい! 208 00:13:44,490 --> 00:13:47,794 今度はね「少年倶楽部」向きじゃないんだよ 塚田君。 209 00:13:47,794 --> 00:13:51,130 気になりますな。 (水泡)うん 気にしてくれよ。➡ 210 00:13:51,130 --> 00:13:54,434 いや 三吉君だってね 僕のうちへ初めて来た時には➡ 211 00:13:54,434 --> 00:13:56,369 こんな少年だった。➡ 212 00:13:56,369 --> 00:14:00,907 それがね 戦争行って そして復員して 店を復興させて➡ 213 00:14:00,907 --> 00:14:02,942 こんな立派な若者になった。➡ 214 00:14:02,942 --> 00:14:06,713 だからね 今度ののらくろは大人なんだよ。 215 00:14:06,713 --> 00:14:09,582 大人の のらくろですか? (水泡)うん。 216 00:14:09,582 --> 00:14:13,386 先生 それは面白そうですね。 217 00:14:13,386 --> 00:14:16,589 まあね 人間だって 野良犬だってね➡ 218 00:14:16,589 --> 00:14:19,258 時代とともに たくましく生きてるんだよ。 219 00:14:19,258 --> 00:14:24,597 それにね もう ほら うるさい憲兵隊の文句もないしね。 220 00:14:24,597 --> 00:14:28,468 のんきにね かつ自由にね➡ 221 00:14:28,468 --> 00:14:32,271 好きな花を咲かせたり エッチングなんかやりながらね➡ 222 00:14:32,271 --> 00:14:34,273 のらくろは生きてるんだよ。 223 00:14:34,273 --> 00:14:40,613 <敗戦から5年たったとはいえ まだまだ苦しい時代でした。➡ 224 00:14:40,613 --> 00:14:45,485 だからこそ お互いの無事を確認し合った この同窓会は➡ 225 00:14:45,485 --> 00:14:50,490 一層 みんなの心温まるものだったのでしょう>