1 00:00:01,935 --> 00:00:04,271 (萬平)生前葬? (鈴)はい。 2 00:00:04,271 --> 00:00:06,206 そんなこと できるんですか。 3 00:00:06,206 --> 00:00:08,609 図書館に行って調べました。 4 00:00:08,609 --> 00:00:10,544 (福子)えっ! 5 00:00:10,544 --> 00:00:16,483 明治40年に 落語家の二代目 三遊亭金朝が➡ 6 00:00:16,483 --> 00:00:19,253 生前葬をやりました。 7 00:00:19,253 --> 00:00:21,622 シャレでやってるんやないの。 8 00:00:21,622 --> 00:00:25,292 (源)何で おばあちゃんは 生前葬やりたいって思たん? 9 00:00:25,292 --> 00:00:30,163 この前 病気になって 私 思たの。 10 00:00:30,163 --> 00:00:34,635 人間 いつ死ぬか分からないって。 11 00:00:34,635 --> 00:00:38,505 ある時 ポックリ逝ってしまったら➡ 12 00:00:38,505 --> 00:00:43,310 みんなに ありがとうって 言えないやない。 13 00:00:43,310 --> 00:00:45,245 (幸)ありがとう…。 14 00:00:45,245 --> 00:00:49,983 いつかは やるんやから 生きているうちにお葬式を挙げて➡ 15 00:00:49,983 --> 00:00:55,322 みんなに 感謝の気持ちを伝えたいのよ。 16 00:00:55,322 --> 00:00:58,659 私は ええと思う。 17 00:00:58,659 --> 00:01:00,594 ええと思うよ おばあちゃん。 18 00:01:00,594 --> 00:01:03,263 せやけど…。 僕も面白いと思うな。 19 00:01:03,263 --> 00:01:07,601 葬式だぞ。 人を呼ぶんだ。 でも お義母さんは生きてる。 20 00:01:07,601 --> 00:01:11,271 みんな どんな顔すればいいんだ。 ニコニコしてればいいのよ。 21 00:01:11,271 --> 00:01:13,941 ニコニコって…。 22 00:01:13,941 --> 00:01:22,115 ♬「丸まってる背中に もらい泣き」 23 00:01:22,115 --> 00:01:25,152 ♬「恥じだって一緒に」 24 00:01:25,152 --> 00:01:29,856 ♬「あなたとならトゥラッタッタ♪」 25 00:01:29,856 --> 00:01:33,627 ♬「飛行機雲ぼんやり眺む」 26 00:01:33,627 --> 00:01:37,497 ♬「心ここに在らず」 27 00:01:37,497 --> 00:01:40,968 ♬「年間トータル もししたら」 28 00:01:40,968 --> 00:01:45,839 ♬「付き合うあたしすごい?」 29 00:01:45,839 --> 00:01:53,981 ♬「とぼけてる眉毛に もらい笑い」 30 00:01:53,981 --> 00:01:57,317 ♬「照れだってなんだって」 31 00:01:57,317 --> 00:01:59,987 ♬「あなたとならトゥラッタッタ♪」 32 00:01:59,987 --> 00:02:07,794 ♬「もらい泣き もらい笑い もらい怒り」 33 00:02:07,794 --> 00:02:13,533 ♬「もらいっ恥じ どんと来い!」 34 00:02:13,533 --> 00:02:17,471 ♬「晴天も曇天も霹靂も」 35 00:02:17,471 --> 00:02:23,176 ♬「さあ あなたとトゥラッタッタ♪」 36 00:02:26,146 --> 00:02:31,284 そして 鈴さんの生前葬の日がやって来ました。 37 00:02:31,284 --> 00:02:33,286 (世良)うおっ! 38 00:02:36,623 --> 00:02:39,626 ほんまに葬式や。 39 00:02:41,294 --> 00:02:49,169 本日は 本当に ありがとうございます。 40 00:02:49,169 --> 00:02:54,841 私は もう よわい80。 41 00:02:54,841 --> 00:02:59,646 いつ死んでも おかしくありません。➡ 42 00:02:59,646 --> 00:03:02,549 せやけど 死んでしまっては➡ 43 00:03:02,549 --> 00:03:09,256 皆さんと お別れのご挨拶が できないのでございます。 44 00:03:09,256 --> 00:03:16,129 ですから このような 生前葬という形で➡ 45 00:03:16,129 --> 00:03:22,436 先に お葬式を挙げさせて頂くことに いたしました。 46 00:03:28,608 --> 00:03:31,912 それでは 始めましょう。 47 00:03:35,949 --> 00:03:38,852 (タカ)おばあちゃん…。 (神部)まだ死んでない。 48 00:03:38,852 --> 00:03:41,822 (忠彦)シュールすぎる。 49 00:03:41,822 --> 00:03:47,961 (読経) 50 00:03:47,961 --> 00:03:50,297 (世良)「今井 鈴さん。➡ 51 00:03:50,297 --> 00:03:56,169 いや 僕は あえて お母さんと呼ばせて頂きます。➡ 52 00:03:56,169 --> 00:04:03,243 お母さん あなたとは もう25年の付き合いです」。 53 00:04:03,243 --> 00:04:05,178 そうね。 54 00:04:05,178 --> 00:04:10,917 (世良)「発明家の立花君 立花君を支える福ちゃん。➡ 55 00:04:10,917 --> 00:04:18,792 その2人を お母さんは いつも 温かく見守っていらっしゃいました。➡ 56 00:04:18,792 --> 00:04:22,529 お母さんは 僕のことを うさんくさい男やと➡ 57 00:04:22,529 --> 00:04:25,265 いつも おっしゃっていましたが➡ 58 00:04:25,265 --> 00:04:30,937 僕は その言葉の裏に 深い愛情を感じておりました」。 59 00:04:30,937 --> 00:04:33,607 本当に? シッ! 60 00:04:33,607 --> 00:04:35,942 (世良) 「お母さんが いらっしゃらなければ➡ 61 00:04:35,942 --> 00:04:41,615 今の立花君や福ちゃんは なかったと思います」。 62 00:04:41,615 --> 00:04:43,550 (真一)そうだね。 63 00:04:43,550 --> 00:04:47,287 「ありがとう お母さん。➡ 64 00:04:47,287 --> 00:04:54,628 どうぞ 安らかに お眠り下さい。➡ 65 00:04:54,628 --> 00:04:56,930 世良勝夫」。 66 00:04:58,965 --> 00:05:02,235 どわあ~っ! うわっ! ありがとう! 67 00:05:02,235 --> 00:05:04,571 その後も弔辞は続きました。 68 00:05:04,571 --> 00:05:08,441 (敏子)「誰よりも深い愛情を 注いでこられたお母さん。➡ 69 00:05:08,441 --> 00:05:12,445 長い間 ご苦労さまでした」。 70 00:05:12,445 --> 00:05:14,915 その度に鈴さんは…。 71 00:05:14,915 --> 00:05:17,217 ありがとう。 72 00:05:22,789 --> 00:05:26,526 (赤津)大奥様 僕を覚えてらっしゃいますか。 73 00:05:26,526 --> 00:05:30,463 おっ 赤津! はい! 74 00:05:30,463 --> 00:05:35,602 それでは 最後に 今井 鈴本人から皆様に。 75 00:05:35,602 --> 00:05:42,475 待って。 克子と福子も 何かしゃべって。 76 00:05:42,475 --> 00:05:45,278 (克子)私? そやけど それは…。 77 00:05:45,278 --> 00:05:48,615 普通のお葬式やないんやから ええのよ。 78 00:05:48,615 --> 00:05:53,486 娘たちとも ちゃんと お別れしないと。 79 00:05:53,486 --> 00:05:56,489 お別れって…。 80 00:05:56,489 --> 00:05:58,792 分かりました。 81 00:06:00,894 --> 00:06:04,231 (克子)お母さん…。 82 00:06:04,231 --> 00:06:08,568 お母さんは ほんまに面白い人やわ。 83 00:06:08,568 --> 00:06:14,441 いっつも 「私は武士の娘です」って 言うてたくせに➡ 84 00:06:14,441 --> 00:06:19,212 武士の娘が 生きてる間に お葬式を挙げようやなんて考える? 85 00:06:19,212 --> 00:06:21,214 いいでしょ。 86 00:06:23,583 --> 00:06:34,227 せやけど 生前葬は 案外よかったのかも。 87 00:06:34,227 --> 00:06:41,601 お母さんが ほんまに亡くなってしもて…➡ 88 00:06:41,601 --> 00:06:46,940 これが本物のお葬式やったら…➡ 89 00:06:46,940 --> 00:06:52,646 私は きっと 泣いてばっかりで何にも言えんかった。 90 00:06:56,616 --> 00:07:04,224 正直言うとね… 年を取れば取るほど➡ 91 00:07:04,224 --> 00:07:07,928 自分は お母さんに似てきたと思うの。 92 00:07:10,897 --> 00:07:17,570 思たことを すぐに口に出してしまうところとか➡ 93 00:07:17,570 --> 00:07:24,444 タカに小言言う時の物言いとか…。 94 00:07:24,444 --> 00:07:33,119 自分の ふとした しぐさとか…。 95 00:07:33,119 --> 00:07:42,796 はあ… 私は… 私は やっぱり➡ 96 00:07:42,796 --> 00:07:45,799 お母さんの娘なんやね。 97 00:07:49,269 --> 00:07:52,973 お母さんの娘で よかった…。 98 00:07:56,609 --> 00:07:59,913 ほんまに よかった…。 99 00:08:08,221 --> 00:08:13,893 ありがとう お母さん。 100 00:08:13,893 --> 00:08:19,199 克子… ありがとう。 101 00:08:26,473 --> 00:08:28,475 福子。 102 00:08:42,255 --> 00:08:47,260 私は 咲姉ちゃんと一緒に挨拶します。 103 00:09:01,741 --> 00:09:09,416 お母さん。 お母さんは 咲姉ちゃんのことが大好きやった。 104 00:09:09,416 --> 00:09:15,889 そして すごくすごく頼りにしてました。 105 00:09:15,889 --> 00:09:21,227 咲姉ちゃんも お母さんのことが大好きやったよね。 106 00:09:21,227 --> 00:09:29,569 せやから 咲姉ちゃんが亡くなって 克子姉ちゃんは もう嫁いでたから➡ 107 00:09:29,569 --> 00:09:39,913 お母さんと2人だけになって 私は なんとか 一生懸命➡ 108 00:09:39,913 --> 00:09:46,252 咲姉ちゃんの代わりになろうと思って 頑張ったけど➡ 109 00:09:46,252 --> 00:09:51,124 やっぱり それは できませんでした。 110 00:09:51,124 --> 00:09:55,428 お母さんに 心配かけてばっかりやった。 111 00:09:59,265 --> 00:10:06,139 私が 一番お母さん困らせたのは…➡ 112 00:10:06,139 --> 00:10:10,877 萬平さんと結婚したいって 言いだした時かもしれません。 113 00:10:10,877 --> 00:10:13,279 フフッ。 114 00:10:13,279 --> 00:10:16,616 いや~ あの時 お母さん 許してくれなかったら➡ 115 00:10:16,616 --> 00:10:22,288 もう 一体 どんなことになってたんやろう。 116 00:10:22,288 --> 00:10:31,965 せやけど 何やかんやと 萬平さんを受け入れてくれました。 117 00:10:31,965 --> 00:10:35,268 本当に感謝しています。 118 00:10:38,838 --> 00:10:48,982 いや~… せやけど それから お母さんには苦労をかけてばっかり。 119 00:10:48,982 --> 00:10:54,854 お塩を作ってた時も もう ダネイホン作ってた時も➡ 120 00:10:54,854 --> 00:10:58,158 ほんま大変やったね。 121 00:11:00,927 --> 00:11:08,601 萬平さん 理事長やってた時だけは 楽ができたけど…。 122 00:11:08,601 --> 00:11:12,472 はあ… 一文無しになってしもて それから。 123 00:11:12,472 --> 00:11:17,277 それで まんぷくラーメン作ることになって…。 124 00:11:17,277 --> 00:11:24,617 もう ほんまに 山あり谷ありの私たちを 文句言いながらも➡ 125 00:11:24,617 --> 00:11:29,289 もう ずっと私たちと一緒にいてくれた。 126 00:11:29,289 --> 00:11:33,993 いつも いつも そばにいてくれた。 127 00:11:35,962 --> 00:11:38,865 そやな。 128 00:11:38,865 --> 00:11:48,541 お母さんには 心の底から 感謝しています。 129 00:11:48,541 --> 00:11:56,983 まだまだ 逝ってほしくはないけど もし 向こうに行ってしまっても➡ 130 00:11:56,983 --> 00:12:03,790 咲姉ちゃんが待っててくれるから 大丈夫よ。 131 00:12:03,790 --> 00:12:09,495 ずっと 今のままのお母さんでいて下さい。 132 00:12:13,933 --> 00:12:19,606 (泣き声) 133 00:12:19,606 --> 00:12:21,908 ほんまに ありがとう。 134 00:12:23,476 --> 00:12:28,615 うっ… うう… 福子…。 135 00:12:28,615 --> 00:12:32,485 フフフフ… お母さん。 136 00:12:32,485 --> 00:12:37,190 克子も ありがとうね。 137 00:12:41,628 --> 00:12:45,498 (泣き声) 138 00:12:45,498 --> 00:12:49,302 (鈴)ああ… ああ…。 139 00:12:49,302 --> 00:12:54,173 私が 生前葬をしたいって言うた時➡ 140 00:12:54,173 --> 00:12:58,978 賛成してくれたのは さっちゃんだけやったけど。 141 00:12:58,978 --> 00:13:05,585 僕かて 賛成したよ。 (鈴)そうやったわね 源ちゃん。 142 00:13:05,585 --> 00:13:14,594 今日は 本当に よかった。 143 00:13:14,594 --> 00:13:19,098 集まってくれた皆さんに➡ 144 00:13:19,098 --> 00:13:24,604 心から 感謝します。 うん。 145 00:13:24,604 --> 00:13:29,475 僕にも ひと言 お礼を言わせて下さい お義母さん。 146 00:13:29,475 --> 00:13:35,248 さっき 福子が お義母さんには 苦労をかけてばっかりだったと➡ 147 00:13:35,248 --> 00:13:41,954 言っていましたが それは全部 僕のせいです。 148 00:13:41,954 --> 00:13:45,825 もう 終わったことよ。 149 00:13:45,825 --> 00:13:49,295 でも まだまだ これから何が起こるか分かりません。 150 00:13:49,295 --> 00:13:51,964 ええっ! 萬平君やからなあ。 151 00:13:51,964 --> 00:13:55,301 これで終わりやないやろう。 そうよ お母さん。 152 00:13:55,301 --> 00:14:01,908 でも 大丈夫です。 僕には 信頼できる仲間がいます。 153 00:14:01,908 --> 00:14:11,918 家族 親族… そして福子がいます。 154 00:14:11,918 --> 00:14:16,589 お義母さんには 何よりも 福子を産んで下さったこと➡ 155 00:14:16,589 --> 00:14:24,263 そして 僕たちの結婚を 許して下さったことに 感謝します。 156 00:14:24,263 --> 00:14:28,601 本当に ありがとうございました。 157 00:14:28,601 --> 00:14:33,940 はい。 ありがとう 萬平さん。 158 00:14:33,940 --> 00:14:47,954 (笑い声) 159 00:14:47,954 --> 00:14:53,259 こうして 鈴さんの生前葬は 無事 終わったのです。