1 00:00:34,244 --> 00:00:42,244 ♬~ 2 00:00:44,655 --> 00:00:47,324 <時は 寛政11年。➡ 3 00:00:47,324 --> 00:00:53,197 第十一代将軍 徳川家斉公のお膝元 江戸 神田> 4 00:00:53,197 --> 00:00:55,666 うわ~! 5 00:00:55,666 --> 00:01:06,009 ♬~ 6 00:01:06,009 --> 00:01:07,945 <先ほどから➡ 7 00:01:07,945 --> 00:01:11,682 いかにも のんきそうな顔で 歩いている この男。➡ 8 00:01:11,682 --> 00:01:15,552 我が神田八か町で 代々 町名主を務める➡ 9 00:01:15,552 --> 00:01:22,326 高橋家の跡取り息子 高橋麻之助でございます。➡ 10 00:01:22,326 --> 00:01:26,029 この麻之助お坊ちゃん 16の年までは➡ 11 00:01:26,029 --> 00:01:31,902 父も自慢の 出来のいい息子 だったんでありますが…➡ 12 00:01:31,902 --> 00:01:35,839 何があったか ある日 突然 人格豹変。➡ 13 00:01:35,839 --> 00:01:39,309 それまでの 生真面目で勤勉なところを➡ 14 00:01:39,309 --> 00:01:42,646 どこぞへ 落としてきてしまったらしい> 15 00:01:42,646 --> 00:01:45,346 麻之助! 16 00:01:46,984 --> 00:01:48,919 麻之助!➡ 17 00:01:48,919 --> 00:01:52,322 麻之助は!? 麻之助は どこへ行った!? 18 00:01:52,322 --> 00:01:56,322 さあ 私は知りませんけど。 19 00:01:57,995 --> 00:02:01,665 おい! 麻之助! 20 00:02:01,665 --> 00:02:03,600 (巳之助) 麻之助さんなら出かけましたよ。 21 00:02:03,600 --> 00:02:07,337 どうしても片づけねばならない 大事な用があるとかで。 22 00:02:07,337 --> 00:02:10,240 またか! はい また。 23 00:02:10,240 --> 00:02:12,209 お前も お前だ! 24 00:02:12,209 --> 00:02:15,679 麻之助が出かける時は ちゃんと行き先を…! 25 00:02:15,679 --> 00:02:18,582 あっ! ああ…。 お前さん? 26 00:02:18,582 --> 00:02:22,019 ああ…。 また 大丈夫ですか!? 27 00:02:22,019 --> 00:02:24,019 巳之助! 巳之助さん ちょっと! 28 00:02:25,689 --> 00:02:29,359 <うわさによれば どうやら 16の年に➡ 29 00:02:29,359 --> 00:02:35,359 好いた相手を失ったらしい というんですが…> 30 00:02:37,968 --> 00:02:42,306 <そのうわさも まことかどうか> 31 00:02:42,306 --> 00:02:52,316 ♬~ 32 00:02:52,316 --> 00:02:54,251 こら 花泥棒! 33 00:02:54,251 --> 00:02:56,186 (麻之助)あっ! 34 00:02:56,186 --> 00:02:58,989 <おっと ほら! この調子だ> 35 00:02:58,989 --> 00:03:01,689 あ~ ちょいと ごめんよ! 36 00:03:03,327 --> 00:03:06,230 あ~ ちょっと! 立ちねえ 立ちねえ! ほら ほら! 37 00:03:06,230 --> 00:03:08,930 邪魔だ! 邪魔だよ! 38 00:03:10,667 --> 00:03:16,540 <この先 この男が 父の跡を継ぎ 名主となる事を考えると➡ 39 00:03:16,540 --> 00:03:19,676 父は もとより 周りの人たちも➡ 40 00:03:19,676 --> 00:03:24,014 気が気じゃあないという訳で ございます> 41 00:03:24,014 --> 00:03:27,351 そっとだよ! アイタタタタ! 42 00:03:27,351 --> 00:03:29,686 <町名主といいますのは➡ 43 00:03:29,686 --> 00:03:32,589 江戸の町役人の一人で ありまして➡ 44 00:03:32,589 --> 00:03:36,960 町奉行の支配を受け 町方の民政を行います。➡ 45 00:03:36,960 --> 00:03:41,832 お触れの伝達から 人別改め 証文類の検閲など➡ 46 00:03:41,832 --> 00:03:45,132 仕事は多岐にわたりますが…> 47 00:03:49,539 --> 00:03:53,510 <それに加えて 奉行所では扱わないような➡ 48 00:03:53,510 --> 00:03:56,980 町の人々のもめごとを 調停するのも➡ 49 00:03:56,980 --> 00:03:59,650 名主の大きな仕事。➡ 50 00:03:59,650 --> 00:04:05,350 ですから 町名主には 人格者が求められる> 51 00:04:09,993 --> 00:04:12,663 (清十郎)麻之助! 52 00:04:12,663 --> 00:04:17,534 いい所で会った。 助けてくれ! お~ 何だい いきなり。 53 00:04:17,534 --> 00:04:21,371 あっ さては また 女との もめごとだな? 54 00:04:21,371 --> 00:04:23,674 え? 憎いね~。 55 00:04:23,674 --> 00:04:27,544 今度は 何をやったんだい? 違う 違う! そうじゃなくて! 56 00:04:27,544 --> 00:04:29,546 じゃあ 何だい? 57 00:04:29,546 --> 00:04:33,483 それが 今 家に 太物問屋の笠松屋さんが➡ 58 00:04:33,483 --> 00:04:35,953 娘のおのぶを連れてきていてな。 ほう。 59 00:04:35,953 --> 00:04:39,623 どうやら おのぶは 子をみごもってるらしい。 60 00:04:39,623 --> 00:04:42,292 お前の子か? 違う! 61 00:04:42,292 --> 00:04:45,963 本当だよ! 手どころか 口をきいた事もない。 62 00:04:45,963 --> 00:04:51,301 じゃあ 何で逃げるんだい? そりゃあ 家の者が みんな➡ 63 00:04:51,301 --> 00:04:54,638 俺を疑ってるからだよ。 まあ そりゃそうだろうな。 64 00:04:54,638 --> 00:04:57,975 麻にいちゃ~ん! 幸太! 65 00:04:57,975 --> 00:05:00,975 清十郎にいちゃんを 捕まえに来たのかい? 66 00:05:05,315 --> 00:05:07,250 お由有さん。 67 00:05:07,250 --> 00:05:10,654 (お由有)清十郎さん! 何をしているんです! 68 00:05:10,654 --> 00:05:12,589 うちの人が捜していましたよ。 69 00:05:12,589 --> 00:05:15,993 お父っつぁんが? はい。 大層 ご立腹です。 70 00:05:15,993 --> 00:05:18,028 私は おのぶの事なんか…。 おのぶさんは➡ 71 00:05:18,028 --> 00:05:22,828 赤ん坊の父親を 清十郎さん あなただと言ってらっしゃいます。 72 00:05:25,335 --> 00:05:28,005 そんなバカな…。 73 00:05:28,005 --> 00:05:35,445 ようよう 天下の色男も ついに 年貢の納め時だぁね~。 74 00:05:35,445 --> 00:05:37,745 納め時だね。 75 00:05:40,951 --> 00:05:47,624 <麻之助に泣きついてきた清十郎も 同じく町名主の息子であります> 76 00:05:47,624 --> 00:05:50,527 どうして! どうして 俺が先に入るんだい! 77 00:05:50,527 --> 00:05:52,496 いいから! まず お前が入って➡ 78 00:05:52,496 --> 00:05:54,965 何となく こう 場を和ませてだな…。 79 00:05:54,965 --> 00:05:56,900 俺は 幇間か! 頼む! 80 00:05:56,900 --> 00:05:59,636 このままじゃ 俺は 父親にされちまうよ! 81 00:05:59,636 --> 00:06:04,508 本当に 身に覚えはないのかい? ああ。 神田の明神様に誓って。 82 00:06:04,508 --> 00:06:08,311 ≪何を ごちゃごちゃ言っておる! 早く入んなさい! 83 00:06:08,311 --> 00:06:10,611 はい! 84 00:06:13,183 --> 00:06:16,653 失礼します。 何だい 麻之助も一緒かい。 85 00:06:16,653 --> 00:06:19,953 はい。 立ち会いにと思いまして…。 86 00:06:21,525 --> 00:06:24,825 まあ いいだろう。 座んなさい。 87 00:06:34,938 --> 00:06:40,811 おのぶさん もう一度 聞くよ。 88 00:06:40,811 --> 00:06:47,284 あんたの そのおなかの中の子の父親は➡ 89 00:06:47,284 --> 00:06:50,584 清十郎だと言うんだね? 90 00:06:53,156 --> 00:06:55,456 (源兵衛)おのぶさん。 91 00:06:57,627 --> 00:07:04,301 (おのぶ)私 どうしても おなかの子を産みたいんです。 92 00:07:04,301 --> 00:07:07,204 けど お父っつぁんが➡ 93 00:07:07,204 --> 00:07:12,642 嫁入り前に そんなふしだらは 許さないって怒るんです。 94 00:07:12,642 --> 00:07:15,642 この子を邪魔者みたいに…。 95 00:07:24,988 --> 00:07:28,658 ごめんなさい 清十郎さん。 96 00:07:28,658 --> 00:07:31,995 お父っつぁんに どうしても言えと言われて➡ 97 00:07:31,995 --> 00:07:36,995 私 父親を あんただと…。 98 00:07:42,272 --> 00:07:45,942 おのぶさんといったね。 99 00:07:45,942 --> 00:07:47,878 はい。 100 00:07:47,878 --> 00:07:53,178 私は あんたと会った事が あったかね? 101 00:07:55,285 --> 00:07:59,623 それとも 私は 自分の名を清十郎と偽って➡ 102 00:07:59,623 --> 00:08:02,292 あんたをだましたのかな? 103 00:08:02,292 --> 00:08:04,227 (おのぶ)え? 104 00:08:04,227 --> 00:08:08,965 私は 八木清十郎じゃあない。 105 00:08:08,965 --> 00:08:11,965 この色男だよ。 106 00:08:13,637 --> 00:08:19,509 一緒に 子をなした男の顔を 間違えるとは おかしな話だね。 107 00:08:19,509 --> 00:08:23,980 (笠松屋)おのぶ どういう事だ? 108 00:08:23,980 --> 00:08:27,651 お前 うそをついたのか!? 109 00:08:27,651 --> 00:08:31,521 おのぶ! 何とか言いなさい! 110 00:08:31,521 --> 00:08:37,260 ごめんなさい。 ごめんなさい お父っつぁん。 111 00:08:37,260 --> 00:08:39,960 でも 私…。 112 00:08:42,599 --> 00:08:47,270 それで そのおのぶさんって娘の 相手は 分かったんですか? 113 00:08:47,270 --> 00:08:52,142 いえ 結局 分からずじまいです。 あらまあ…。 114 00:08:52,142 --> 00:08:55,946 そいつは 心配ですね 笠松屋さんも。 115 00:08:55,946 --> 00:08:58,615 大体 お前が いい加減だから➡ 116 00:08:58,615 --> 00:09:00,951 おなかの子の父親などと 言われるんだ。 117 00:09:00,951 --> 00:09:04,287 あきれるにも 程があるよ! はあ…。 118 00:09:04,287 --> 00:09:07,190 けど 疑われたのは 清十郎さんで➡ 119 00:09:07,190 --> 00:09:10,961 麻之助には 罪はないのでは? え? 120 00:09:10,961 --> 00:09:13,296 さすが おっ母さんだ。 そうなんです。 121 00:09:13,296 --> 00:09:16,633 おのぶさんは 私を 清十郎と間違えただけで➡ 122 00:09:16,633 --> 00:09:19,302 私を父親と言った訳では…。 123 00:09:19,302 --> 00:09:22,973 どっちでもいいよ そんな事は! とにかく 私は➡ 124 00:09:22,973 --> 00:09:26,643 お前に 常日頃の行いを改めろと 言ってるんだ。 125 00:09:26,643 --> 00:09:30,313 そして こういう時にこそ 私に代わって 名主の仕事…。 126 00:09:30,313 --> 00:09:33,583 アイタッ! アチチチチ! あららら… そうですか。 127 00:09:33,583 --> 00:09:36,486 これぐらいしないと効きませんよ。 128 00:09:36,486 --> 00:09:41,258 なぜ 説教してる私が 灸を据えられねばならんのだ! 129 00:09:41,258 --> 00:09:44,160 けど 腰が立たないとおっしゃるから➡ 130 00:09:44,160 --> 00:09:46,129 よかれと思って。 131 00:09:46,129 --> 00:09:48,932 分かりました お父っつぁん。 ここは ひとつ➡ 132 00:09:48,932 --> 00:09:50,867 私が あの子の父親を見つけ出し➡ 133 00:09:50,867 --> 00:09:54,271 この騒ぎ まとめてみせましょう。 え? 134 00:09:54,271 --> 00:09:56,940 な~に ぬれぎぬを着せられた縁だ。 135 00:09:56,940 --> 00:10:00,277 どんな事をしてでも 相手の男を 見つけ出してみせますよ。 136 00:10:00,277 --> 00:10:02,612 できるのか? お前に そんな事が。 137 00:10:02,612 --> 00:10:06,950 幸い 私には 力強い友がおりますので。 …友。 138 00:10:06,950 --> 00:10:09,619 という訳で 巳之助さん しばらくの間➡ 139 00:10:09,619 --> 00:10:12,289 こまごまとした仕事の手伝いは あんたに任せたよ。 140 00:10:12,289 --> 00:10:15,989 じゃあ お父っつぁん くれぐれも お大事に。 141 00:10:18,962 --> 00:10:23,300 (吉五郎)駄目だ! 俺は お前たちと違って 忙しいんだ。 142 00:10:23,300 --> 00:10:26,636 頼むよ~。 いざって時には 子どもの頃から ほら➡ 143 00:10:26,636 --> 00:10:28,571 助け合った仲じゃないか。 144 00:10:28,571 --> 00:10:31,308 俺は まだ 同心見習いの身だ。 145 00:10:31,308 --> 00:10:35,178 こんな事が ばれてみろ。 舅殿に 何と言われるか…。 146 00:10:35,178 --> 00:10:38,982 貧乏御家人の三男坊が ようやく入った養子先だぞ。 147 00:10:38,982 --> 00:10:42,319 8歳の娘を めとる約束と 引き換えにな。 9歳だ。 148 00:10:42,319 --> 00:10:45,221 そう言わずにさ 力を貸しておくれよ。 149 00:10:45,221 --> 00:10:49,659 江戸で一番と名高い 同心見習い 相馬吉五郎さんの➡ 150 00:10:49,659 --> 00:10:53,530 腕と頭が 入り用なんだよ~。 ああ~ そのとおりだ。 151 00:10:53,530 --> 00:10:56,533 俺は 吉五郎ほどの眼力を持った男を➡ 152 00:10:56,533 --> 00:11:00,670 ほかには知らないねぇ。 知らないねぇ。 153 00:11:00,670 --> 00:11:07,344 それで おのぶの周りについて 何か 手がかりは つかめたのか? 154 00:11:07,344 --> 00:11:12,015 いや~ まだだ。 155 00:11:12,015 --> 00:11:15,685 すまんが この辺りの絵図を 持ってきてくれ。 156 00:11:15,685 --> 00:11:19,022 へい 親分。 157 00:11:19,022 --> 00:11:21,691 吉五郎さん お久しぶり。 158 00:11:21,691 --> 00:11:25,028 おお こりゃあ どうも。 かたじけない。 159 00:11:25,028 --> 00:11:28,698 ああ おっ母さん すみませんね。 160 00:11:28,698 --> 00:11:31,034 何だか こうしていると➡ 161 00:11:31,034 --> 00:11:33,636 子どもの頃に 戻ったみたいね。 162 00:11:33,636 --> 00:11:35,572 え? 163 00:11:35,572 --> 00:11:38,308 小さい頃から 3人は いつも➡ 164 00:11:38,308 --> 00:11:41,644 じゃれ合うようにして 遊んでいたから。 165 00:11:41,644 --> 00:11:47,644 そのお由有さんが まさか 清十郎のおっ母さんになるとはな。 166 00:11:52,288 --> 00:11:56,659 おなかに 赤ん坊がいるの。 167 00:11:56,659 --> 00:11:58,595 え? 168 00:11:58,595 --> 00:12:04,595 この縁談 断ったら 麻之助が父親になってくれる? 169 00:12:06,669 --> 00:12:09,339 (お由有)けど かわいそうに…。➡ 170 00:12:09,339 --> 00:12:12,008 おのぶさん。 え? 171 00:12:12,008 --> 00:12:16,346 あの子が あんなに かたくなに 父親の名を言わないのは➡ 172 00:12:16,346 --> 00:12:19,682 何か 人に言えぬ訳が あるのでしょう。 173 00:12:19,682 --> 00:12:23,019 なのに みんなに責められて。 174 00:12:23,019 --> 00:12:28,358 誰も 生まれてくる赤ん坊の事を 喜んでもくれない。 175 00:12:28,358 --> 00:12:34,058 生まれてくる子には 何の罪もないのに。 176 00:12:38,168 --> 00:12:40,637 (幸太)おっ母さん! 177 00:12:40,637 --> 00:12:42,972 お父っつぁんが あめ玉を買ってくれたよ! 178 00:12:42,972 --> 00:12:45,642 (お由有)よかったわね。 179 00:12:45,642 --> 00:12:48,545 お帰りなさい。 お帰りなさい。 お帰りなさい。 180 00:12:48,545 --> 00:12:52,315 3人そろって 何の悪だくみだ。 あ いやいやいや。 181 00:12:52,315 --> 00:12:55,218 麻之助が 笠松屋の おのぶさんの子の父親を➡ 182 00:12:55,218 --> 00:12:58,188 捜し出すと言いだしまして。 ほう。 183 00:12:58,188 --> 00:13:02,325 笠松屋さんは うちの預かりでもありますんで。 184 00:13:02,325 --> 00:13:07,997 その 笠松屋の娘の事なんだけどね➡ 185 00:13:07,997 --> 00:13:13,670 確か あの子には 少し前に 縁談があったんじゃないのかな。 186 00:13:13,670 --> 00:13:16,573 縁談が? ああ。 187 00:13:16,573 --> 00:13:20,343 あれから ふと その事を思い出してね。 188 00:13:20,343 --> 00:13:28,685 ♬~ 189 00:13:28,685 --> 00:13:30,620 ええ ござんした。 190 00:13:30,620 --> 00:13:36,292 確か 日本橋の瀬戸物問屋の 小倉屋さんの長男の…➡ 191 00:13:36,292 --> 00:13:38,962 そう! 亀太郎さんと。 小倉屋さんの長男? 192 00:13:38,962 --> 00:13:41,865 亀太郎というのか。 でも その跡取りが➡ 193 00:13:41,865 --> 00:13:44,767 かわいそうに 先月 急に亡くなって➡ 194 00:13:44,767 --> 00:13:47,303 破談になっちまったんですよ。 亡くなった? 195 00:13:47,303 --> 00:13:51,174 何でも 風邪をこじらせたとかで。 そうそう 気の毒にね。 196 00:13:51,174 --> 00:13:55,979 いい縁談だって 笠松屋さんも喜んでいたのにね。 197 00:13:55,979 --> 00:14:00,817 文使いの男が 年中 付け文 届けに来ててさ。 文使い? 198 00:14:00,817 --> 00:14:02,852 そういえば しょっちゅう来てたね。 199 00:14:02,852 --> 00:14:05,989 あたしゃ 羨ましくってさ。 そうそうそう! 200 00:14:05,989 --> 00:14:08,658 おのぶちゃん 何か 妙に きれいになっちゃって。 201 00:14:08,658 --> 00:14:12,328 恋は 女を変えるからね。 (笑い声) 202 00:14:12,328 --> 00:14:14,328 おい! 203 00:14:17,000 --> 00:14:19,836 どうやら おのぶは 亀太郎との縁談に➡ 204 00:14:19,836 --> 00:14:22,338 乗り気だったようだな。 ああ。 205 00:14:22,338 --> 00:14:27,010 だとすると おなかの子は 亀太郎の子じゃないのか? 206 00:14:27,010 --> 00:14:29,913 そいつは違うよ 吉五郎。 え? 207 00:14:29,913 --> 00:14:33,616 だって 亀太郎さんの子なら 隠すまでもないだろう。 208 00:14:33,616 --> 00:14:36,953 おお ここだ ここだ。 吉五郎 行け。 209 00:14:36,953 --> 00:14:38,888 ごめんよ! いるかい? 210 00:14:38,888 --> 00:14:40,823 ああ~っ! 211 00:14:40,823 --> 00:14:43,626 (産婆)何だい! 今 取り込み中なんだよ。 212 00:14:43,626 --> 00:14:47,497 あんたたち! このおけに 水くんでくれでないかい!? 213 00:14:47,497 --> 00:14:49,499 え? あ いや あの~。 214 00:14:49,499 --> 00:14:52,302 何を もたもたしてんだよ! 生まれちまうよ! 215 00:14:52,302 --> 00:14:56,172 もっと湯を沸かしとくれ。 分かってますよ! 頼んだよ! 216 00:14:56,172 --> 00:14:59,175 (産婆)さっさとしとくれ! (2人)はい! 217 00:14:59,175 --> 00:15:01,978 行くぞ 吉五郎。 218 00:15:01,978 --> 00:15:05,848 こっちだろ? あっちだよ! 本当かい? 219 00:15:05,848 --> 00:15:09,652 ところで 麻之助 もう一人の友は なぜいないんだ!? 220 00:15:09,652 --> 00:15:12,322 俺も 今 その事を考えていたところだよ! 221 00:15:12,322 --> 00:15:18,194 ♬「梅は さいたか」 222 00:15:18,194 --> 00:15:24,334 ♬「さくらは まだかいな」 223 00:15:24,334 --> 00:15:30,206 ♬~ 224 00:15:30,206 --> 00:15:39,616 ♬「やなぎや なよなよ」 225 00:15:39,616 --> 00:15:46,489 ♬「風しだい」 226 00:15:46,489 --> 00:15:57,967 ♬「山ぶきや浮気で いろばつかり しよんがいな」 227 00:15:57,967 --> 00:16:08,267 ♬~ 228 00:16:18,988 --> 00:16:24,861 お師匠さん これは 俺への当てつけかい? 229 00:16:24,861 --> 00:16:27,997 (おと吉) おやまあ 甘えん坊だこと。 230 00:16:27,997 --> 00:16:32,297 小さい時に おっ母さんを 亡くしちまったからかしらねぇ? 231 00:16:33,803 --> 00:16:36,272 ヘヘッ。 232 00:16:36,272 --> 00:16:42,972 おっ母さんは こんないい匂いは しなかったよ。 233 00:16:51,821 --> 00:16:55,958 やはり おのぶさんの おなかの中の子は➡ 234 00:16:55,958 --> 00:16:58,861 死んだ亀太郎さんの子では ないようだね。 235 00:16:58,861 --> 00:17:03,633 え? それは どういう事だい? 産婆の話によると➡ 236 00:17:03,633 --> 00:17:06,969 赤子ができたと おのぶが やって来たのは ふたつき前。 237 00:17:06,969 --> 00:17:11,307 その時 既に 腹の中の子は みつきに入っていたらしい。 238 00:17:11,307 --> 00:17:16,646 つまり 亀太郎が生きていた時だ。 うん。 239 00:17:16,646 --> 00:17:19,315 もしも 亀太郎さんの子なら➡ 240 00:17:19,315 --> 00:17:22,652 婚礼を少し早めれば いいだけの事だろう? 241 00:17:22,652 --> 00:17:26,989 って事は 亀太郎との縁談が まとまっていたのに➡ 242 00:17:26,989 --> 00:17:30,660 ほかの男の子を みごもったって事か。 243 00:17:30,660 --> 00:17:35,932 はあ~ やるねぇ おのぶさんも。 あんな あどけねえ顔して。 244 00:17:35,932 --> 00:17:39,802 男の名が分かった事にしちゃあ どうだろう? 245 00:17:39,802 --> 00:17:43,606 父親が かんかんになって 名主に訴えようとしていると➡ 246 00:17:43,606 --> 00:17:45,942 うわさを立てるんだよ。 247 00:17:45,942 --> 00:17:49,612 今度の裁定は 父が腰を痛めたために➡ 248 00:17:49,612 --> 00:17:53,282 高橋家名主名代 麻之助が やるらしい。 249 00:17:53,282 --> 00:17:55,952 麻之助は お堅いので有名だ。 250 00:17:55,952 --> 00:17:59,822 あんなのに裁定されちゃ 何を言われるか分からない。 251 00:17:59,822 --> 00:18:05,294 そうなったらさ 慌てて 自分から 頭を下げてくるんじゃねえの? 252 00:18:05,294 --> 00:18:08,631 うん? うん? 253 00:18:08,631 --> 00:18:12,301 お前さん それ 本気で言ってんのかい。 254 00:18:12,301 --> 00:18:14,237 うん? 255 00:18:14,237 --> 00:18:18,641 そんな事で 科人が挙がったら 同心は いらねえよ! 256 00:18:18,641 --> 00:18:21,544 アッタ! 痛~い! ちょちょちょ… 待ってくれよ~。 257 00:18:21,544 --> 00:18:23,980 俺は忙しいんだ! お前らに構っちゃいられねえ。 258 00:18:23,980 --> 00:18:27,650 そう言わずにさ。 離せ! 待ってくれって! 259 00:18:27,650 --> 00:18:31,320 やかましい! 260 00:18:31,320 --> 00:18:35,191 静かにしろよ お前ら。 261 00:18:35,191 --> 00:18:40,129 ひ… 火消しの…。 頭取。 262 00:18:40,129 --> 00:18:42,429 すいませんでした。 263 00:18:45,601 --> 00:18:48,938 <ところが その3日後の事です。➡ 264 00:18:48,938 --> 00:18:54,277 本当に その男が 現れちまったってえから驚いた> 265 00:18:54,277 --> 00:18:56,946 名主名代の麻之助さんかい? 266 00:18:56,946 --> 00:19:00,817 お前さんかい? 私を呼び出したのは。 267 00:19:00,817 --> 00:19:04,620 お願いだ。 頼みますよ。 268 00:19:04,620 --> 00:19:07,957 これで おのぶと赤子の一件を➡ 269 00:19:07,957 --> 00:19:12,295 うまく終わりにしちゃあ もらえませんか? 270 00:19:12,295 --> 00:19:15,595 あんた 一体 誰なんだい? 271 00:19:17,633 --> 00:19:22,933 名前を言わなきゃ 金子は受け取れませんね。 272 00:19:25,975 --> 00:19:30,847 半次郎と申します。 瀬戸物問屋の小倉屋の次男ですよ。 273 00:19:30,847 --> 00:19:35,585 おやまあ! 亀太郎さんの弟さんかい。 274 00:19:35,585 --> 00:19:37,520 こいつは驚いた。 275 00:19:37,520 --> 00:19:41,820 あんた 兄さんの相手と できちまったのかい? 276 00:19:43,459 --> 00:19:48,598 なるほど。 おのぶさんに 付け文を届けていたってのは➡ 277 00:19:48,598 --> 00:19:50,933 お前さんかい。 278 00:19:50,933 --> 00:19:53,603 いや けど 分からないねぇ。 279 00:19:53,603 --> 00:19:57,273 おのぶさんの おなかの中には あんたの子がいるんだろう? 280 00:19:57,273 --> 00:20:01,444 だったら あんたが 小倉屋の嫁に もらってやれば いいじゃないか。 281 00:20:01,444 --> 00:20:06,282 あんた 兄さんに代わって 跡を継ぐ事になるんだろう? 282 00:20:06,282 --> 00:20:10,152 けど その子が 本当に私の子か➡ 283 00:20:10,152 --> 00:20:13,155 何の証拠もないですからね。 え? 284 00:20:13,155 --> 00:20:17,293 死んだ兄の子かもしれないし。 285 00:20:17,293 --> 00:20:24,634 兄貴は おのぶとの祝言を それはそれは喜んでいましたから。 286 00:20:24,634 --> 00:20:28,504 それでも その子は 兄さんの忘れ形見だろう。 287 00:20:28,504 --> 00:20:31,507 代わりに育ててやる気は ないのか? 288 00:20:31,507 --> 00:20:35,278 面倒くさい事 言わないで下さいよ。 289 00:20:35,278 --> 00:20:39,181 私は おのぶと一緒になる気は ありません。 290 00:20:39,181 --> 00:20:42,652 だから こうやって 頼んでるんじゃありませんか。 291 00:20:42,652 --> 00:20:46,322 いや~ さすがは 小倉屋さんだね。 292 00:20:46,322 --> 00:20:49,992 まさか すんなり 50両出てくるとは思わなかったよ。 293 00:20:49,992 --> 00:20:52,895 これは 立派な袖の下だぞ。 294 00:20:52,895 --> 00:20:56,332 こんな事が父上に見つかってみろ。 勘当だ。 295 00:20:56,332 --> 00:20:59,001 勘当 結構。 されてみたいねぇ。 296 00:20:59,001 --> 00:21:01,904 そうすりゃあ 名主の跡も継がなくて済まあ。 297 00:21:01,904 --> 00:21:04,340 ハハハッ。 お前は 何を言っているんだ。 298 00:21:04,340 --> 00:21:08,010 それに 小判を積んだからといって 笠松屋や おのぶさんが➡ 299 00:21:08,010 --> 00:21:13,349 おとなしく黙るとは限らねえぞ。 そうだよ。 どうするんだ? 300 00:21:13,349 --> 00:21:16,686 う~ん。 301 00:21:16,686 --> 00:21:19,355 そうだよね。 どうしたもんだろうね? 302 00:21:19,355 --> 00:21:22,692 はあ! はあ~。 まあ けど➡ 303 00:21:22,692 --> 00:21:25,361 1つだけ分かった事はさ…。 何だい? 304 00:21:25,361 --> 00:21:30,700 おのぶさんは あの男に 本気で ほれてるって事さ。 305 00:21:30,700 --> 00:21:37,400 そして 赤子の父親は 間違いなく あの男だ。 306 00:21:41,310 --> 00:21:51,954 ♬~ 307 00:21:51,954 --> 00:21:55,858 これを 私に? きっと 似合うぜ。 308 00:21:55,858 --> 00:22:31,858 ♬~ 309 00:22:33,562 --> 00:22:37,299 <という訳で 小倉屋の半次郎から➡ 310 00:22:37,299 --> 00:22:42,171 50両もの大金を 受け取ってしまった 麻之助> 311 00:22:42,171 --> 00:22:45,171 (あくび) 312 00:22:47,309 --> 00:22:51,981 <あっ これは ただ ぼんやり してるんじゃございませんよ。➡ 313 00:22:51,981 --> 00:22:57,681 麻之助なりに いろいろ 頭ひねってるんです> 314 00:23:04,560 --> 00:23:24,680 ♬~ 315 00:23:24,680 --> 00:23:27,016 <そして 10日が過ぎ➡ 316 00:23:27,016 --> 00:23:30,886 いよいよ 麻之助の 高橋家名主名代としての➡ 317 00:23:30,886 --> 00:23:34,824 初裁定が 行われる事になりました。➡ 318 00:23:34,824 --> 00:23:37,293 裁定というのは つまり➡ 319 00:23:37,293 --> 00:23:40,963 もめごとの可否を 決定する事でございまして➡ 320 00:23:40,963 --> 00:23:45,835 名主の家の玄関奥にある この部屋で行われます。➡ 321 00:23:45,835 --> 00:23:49,972 ここに おのぶの一件に関わった 人物たちが➡ 322 00:23:49,972 --> 00:23:53,272 集められるって訳です> 323 00:24:00,316 --> 00:24:03,219 あの娘は? 知らねえのかい? 324 00:24:03,219 --> 00:24:06,989 和国屋の小町娘の おぬいだよ。 325 00:24:06,989 --> 00:24:33,149 ♬~ 326 00:24:33,149 --> 00:24:38,849 では 麻之助。 はい。 327 00:24:41,624 --> 00:24:46,962 さて 皆さん 本日は お忙しい中 お集まり頂きまして➡ 328 00:24:46,962 --> 00:24:49,662 ありがとうございます。 329 00:24:52,635 --> 00:24:54,970 今日 お集まり頂いたのは➡ 330 00:24:54,970 --> 00:24:58,641 笠松屋さんの一件を 収めるためでございまして➡ 331 00:24:58,641 --> 00:25:03,312 笠松屋さんの おのぶさんの おなかの中には赤ん坊がおります。 332 00:25:03,312 --> 00:25:08,184 笠松屋さんとしては 是非とも その子の父親を見つけ出し➡ 333 00:25:08,184 --> 00:25:13,322 その責めを負わせたい という事でございますよね。 334 00:25:13,322 --> 00:25:15,322 はい。 335 00:25:17,193 --> 00:25:24,333 実は まあ 笠松屋さんには 申し訳ないが 私は➡ 336 00:25:24,333 --> 00:25:28,204 おのぶさんの おなかの中の子の 父親が誰かって事には➡ 337 00:25:28,204 --> 00:25:31,504 あんまり興味がないんですよ。 338 00:25:33,142 --> 00:25:38,614 なぜです! 私は 娘のおなかの子の父親を…。 339 00:25:38,614 --> 00:25:41,283 だって そうじゃありませんか。 340 00:25:41,283 --> 00:25:44,186 間もなく 子が生まれるというのに➡ 341 00:25:44,186 --> 00:25:48,157 その男は いまだに 名乗り出てもこない。 342 00:25:48,157 --> 00:25:52,628 そんな男など いても いなくても同じ事。 343 00:25:52,628 --> 00:25:54,964 それより大事な事は➡ 344 00:25:54,964 --> 00:25:58,300 生まれてくる赤ん坊の 行く末ではありませんか。 345 00:25:58,300 --> 00:26:02,638 一に大事な事は その子が無事に生まれ➡ 346 00:26:02,638 --> 00:26:06,308 大切に育ててもらえる事だ。 347 00:26:06,308 --> 00:26:10,980 そこで ものは相談だがね おのぶさん。 348 00:26:10,980 --> 00:26:14,850 はい。 どうだろう? あんた➡ 349 00:26:14,850 --> 00:26:18,854 生まれてくる子どもを 養子に出さないかい? え? 350 00:26:18,854 --> 00:26:23,993 いや 実は 浅草に 大瀬屋っていう 葉茶屋をやってる➡ 351 00:26:23,993 --> 00:26:27,663 子のない夫婦がいてね おのぶさんさえ よかったら➡ 352 00:26:27,663 --> 00:26:31,333 自分の子として 大切に育ててくれるというんだよ。 353 00:26:31,333 --> 00:26:35,938 どうだい? その夫婦に 赤子を託してみちゃあ。 354 00:26:35,938 --> 00:26:42,611 そして おのぶさん自身の 身の振り方だがね➡ 355 00:26:42,611 --> 00:26:48,284 少し遠くに嫁ぐ事を 考えてみちゃあ どうかな? 356 00:26:48,284 --> 00:26:50,953 嫁入り先の心当たりも いくつかあるようですし…。 357 00:26:50,953 --> 00:26:54,953 ねえ お父っつぁん。 …ああ。 358 00:26:56,825 --> 00:27:01,597 笠松屋さん どうでしょう? 359 00:27:01,597 --> 00:27:08,304 まあ 名主名代が そうおっしゃるなら。 360 00:27:08,304 --> 00:27:12,174 どうだい? おのぶ。 361 00:27:12,174 --> 00:27:15,978 まあ こりゃあ すぐに 決めなきゃいけない事でもなし➡ 362 00:27:15,978 --> 00:27:19,848 あ~ どうだい? この事は 無事に子どもが生まれてから➡ 363 00:27:19,848 --> 00:27:23,148 ゆっくりと 考えてみる事にしちゃあ。 364 00:27:25,988 --> 00:27:28,324 はい。 365 00:27:28,324 --> 00:27:30,659 (宗右衛門)という訳で 皆さん どうでしょう? 366 00:27:30,659 --> 00:27:32,594 今日のところは こんなところで…。 367 00:27:32,594 --> 00:27:38,594 おっと そうだ。 1つ忘れちゃいけねえ事があった。 368 00:27:44,940 --> 00:27:50,813 ♬~ 369 00:27:50,813 --> 00:27:53,949 これは 10日ほど前に➡ 370 00:27:53,949 --> 00:27:56,852 そこにいる 小倉屋の次男 半次郎さんに➡ 371 00:27:56,852 --> 00:28:01,852 今度の裁定のためにと よこして頂いたものなんですがね。 372 00:28:04,960 --> 00:28:07,629 (小倉屋)半次郎が? ええ。 373 00:28:07,629 --> 00:28:13,302 神社の境内に呼び出されて こう… こっそりとね。 374 00:28:13,302 --> 00:28:16,602 麻之助さん! 何で おめえが そんな事を? 375 00:28:18,640 --> 00:28:22,340 まさか おめえ おのぶさんと何か…。 376 00:28:27,649 --> 00:28:29,585 お父っつぁん 何 言ってるんです! 377 00:28:29,585 --> 00:28:33,922 違いますよ! 私じゃない! 私は…➡ 378 00:28:33,922 --> 00:28:37,793 もしも おのぶさんの子の父親が 兄さんであるなら➡ 379 00:28:37,793 --> 00:28:40,796 小倉屋から いくらかでも 金を出さねばと思い…! 380 00:28:40,796 --> 00:28:43,932 なぜ お前が 金を出さねばならんのだ! 381 00:28:43,932 --> 00:28:46,835 亀太郎の子であるなら 私にだって…。 382 00:28:46,835 --> 00:28:52,274 おなかの子は… この子は…➡ 383 00:28:52,274 --> 00:28:54,943 亀太郎さんの子ではありません。 384 00:28:54,943 --> 00:28:58,280 おのぶ! おのぶさん…。 385 00:28:58,280 --> 00:29:03,619 確かに 小倉屋の亀太郎さんとの 婚礼話はありました。 386 00:29:03,619 --> 00:29:07,956 でも 私は 亀太郎さんと一度も お目にかかった事はありません。 387 00:29:07,956 --> 00:29:13,295 お会いしていたのは 毎日のように お兄様の文を持ってきてくれた➡ 388 00:29:13,295 --> 00:29:16,632 半次郎さんとだけです。➡ 389 00:29:16,632 --> 00:29:20,632 そうですよね? 半次郎さん。 390 00:29:26,308 --> 00:29:29,211 半次郎さん。 391 00:29:29,211 --> 00:29:33,115 私が おなかの赤子の事を 打ち明けた時➡ 392 00:29:33,115 --> 00:29:38,587 あんた 私に 少しだけ 待ってほしいと言いましたよね。➡ 393 00:29:38,587 --> 00:29:41,924 兄貴が死んで すぐに 弟とつきあい➡ 394 00:29:41,924 --> 00:29:44,827 赤子までなしたというのでは 外聞が悪い。 395 00:29:44,827 --> 00:29:50,599 でも きっと迎えに来るから 少しの間 赤ん坊ができた事も➡ 396 00:29:50,599 --> 00:29:54,599 ご自分が父親である事も 黙っていてほしいと。 397 00:30:00,609 --> 00:30:08,283 そう あなたが言ったから 私 黙っていたのに。 398 00:30:08,283 --> 00:30:14,623 あなたを信じて 誰にも あなたの事…。 399 00:30:14,623 --> 00:30:17,526 お父っつぁんにも言わずに…。 400 00:30:17,526 --> 00:30:19,495 (笠松屋)おのぶ…。 401 00:30:19,495 --> 00:30:24,633 けど いつまでたっても 迎えに来てくれないどころか…。 402 00:30:24,633 --> 00:30:28,303 黙れ~! この娘は うそをついてるんだ!➡ 403 00:30:28,303 --> 00:30:30,239 おなかの子は 俺の子なんかじゃない!➡ 404 00:30:30,239 --> 00:30:32,174 俺は身に覚えはない! 405 00:30:32,174 --> 00:30:34,977 何で 俺が こんな目に 遭わなきゃならねえんだ! 406 00:30:34,977 --> 00:30:38,847 何を…! うちの娘は うそをつくような子ではない! 407 00:30:38,847 --> 00:30:41,850 笠松屋さん! 落ち着いて下さい! 408 00:30:41,850 --> 00:30:46,321 そうですよ! ここは 落ち着いて! あっ…! 409 00:30:46,321 --> 00:30:48,991 (小倉屋)笠松屋様! この話が本当なら➡ 410 00:30:48,991 --> 00:30:52,991 私は 謝らなけりゃあなりません! 411 00:30:55,330 --> 00:30:58,667 半次郎! おめえってやつは➡ 412 00:30:58,667 --> 00:31:00,602 子どもの時から そうだ! 413 00:31:00,602 --> 00:31:03,539 亀太郎のように 真面目でもなけりゃ➡ 414 00:31:03,539 --> 00:31:07,676 出来もよくねえ! 親の言う事を聞こうともしねえ! 415 00:31:07,676 --> 00:31:11,013 亀太郎 亀太郎って もう よせよ! あいつは死んだんだ! 416 00:31:11,013 --> 00:31:14,683 半次郎! 小倉屋の跡取り息子は➡ 417 00:31:14,683 --> 00:31:17,352 兄貴じゃなく 俺なんだ! 418 00:31:17,352 --> 00:31:20,652 今は この俺が 跡取りじゃねえか! 419 00:31:23,025 --> 00:31:27,696 半次郎さん。 兄さんが亡くなって➡ 420 00:31:27,696 --> 00:31:31,033 あんたには 随分と 良縁が来たそうだね。 421 00:31:31,033 --> 00:31:32,968 え…。 422 00:31:32,968 --> 00:31:38,307 それまで 次男坊の冷や飯食いと 言われていた お前さんが➡ 423 00:31:38,307 --> 00:31:43,645 跡取りとして 急に ちやほやされ 続々と縁談が舞い込んだ。 424 00:31:43,645 --> 00:31:49,345 小町娘と名高い 和国屋のおぬいさんともな。 425 00:31:50,986 --> 00:31:58,660 なるほど。 これで 得心がいった。 426 00:31:58,660 --> 00:32:05,000 この人は うちのおのぶが 兄の相手であった時は➡ 427 00:32:05,000 --> 00:32:09,871 兄へのねたみから 娘を手に入れようと思った。➡ 428 00:32:09,871 --> 00:32:15,010 だが 兄が死んだ途端 良縁欲しさに…。 429 00:32:15,010 --> 00:32:17,346 だから…。 (笠松屋)娘では 満足しなくなったんだ! 430 00:32:17,346 --> 00:32:19,281 だから それは 言いがかりだ! 431 00:32:19,281 --> 00:32:21,683 赤子は 俺の子じゃなく 兄貴の…。 432 00:32:21,683 --> 00:32:27,356 もういい! あんたに 娘を押しつける気はない! 433 00:32:27,356 --> 00:32:33,161 いや こんな男に 娘はやれない! 434 00:32:33,161 --> 00:32:41,637 娘は おのぶは 私の大事な宝だ。 435 00:32:41,637 --> 00:32:44,306 お父っつぁん…。 436 00:32:44,306 --> 00:32:50,979 悪かったな 苦しい思いをさせて。 だが この先 何があっても➡ 437 00:32:50,979 --> 00:32:55,651 お前も そのおなかの子も お父っつぁんが守ってみせる。 438 00:32:55,651 --> 00:32:57,986 だから もう こんな男の事は…。 439 00:32:57,986 --> 00:33:00,656 お父っつぁん ごめんなさい。 440 00:33:00,656 --> 00:33:04,326 私は お父っつぁんの思ってるような➡ 441 00:33:04,326 --> 00:33:06,662 いい娘ではないんです。 442 00:33:06,662 --> 00:33:09,564 おのぶ…。 だって➡ 443 00:33:09,564 --> 00:33:12,534 私が 半次郎さんの名前を 言わないでいたら➡ 444 00:33:12,534 --> 00:33:15,337 こんな大ごとになって…。 445 00:33:15,337 --> 00:33:21,009 本当は 私 心の中じゃ うれしかった。 446 00:33:21,009 --> 00:33:22,944 (笠松屋)え? 447 00:33:22,944 --> 00:33:27,883 だって 騒ぎになれば半次郎さんも 逃げられなくなって➡ 448 00:33:27,883 --> 00:33:34,556 私と この子を引き受けて くれるんじゃないかと。➡ 449 00:33:34,556 --> 00:33:39,961 だって 私は 半次郎さんを…➡ 450 00:33:39,961 --> 00:33:43,261 半次郎さんの事を…。 451 00:33:45,834 --> 00:33:48,970 おのぶさん。 452 00:33:48,970 --> 00:33:51,640 あんた こんな事があっても➡ 453 00:33:51,640 --> 00:33:54,940 まだ 半次郎さんの事が 好きなんだね。 454 00:33:56,511 --> 00:34:04,219 けどね 私は 心を鬼にして 本当の事を言うよ。 455 00:34:04,219 --> 00:34:06,188 半次郎さんは➡ 456 00:34:06,188 --> 00:34:11,326 おのぶさんを嫁にしたいとは これっぽっちも思っちゃあいない。 457 00:34:11,326 --> 00:34:16,998 おのぶさんの事を 好きでも何でもないんだよ。 458 00:34:16,998 --> 00:34:21,870 そんな男と一緒にいて あんた 幸せかい? 459 00:34:21,870 --> 00:34:24,873 毎日毎日 半次郎さんの顔色をうかがって➡ 460 00:34:24,873 --> 00:34:28,009 それでも 好きと言ってくれない 相手といて➡ 461 00:34:28,009 --> 00:34:30,912 それが 幸せと言えるかい? 462 00:34:30,912 --> 00:34:39,621 ♬~ 463 00:34:39,621 --> 00:34:42,958 諦める事だな。 464 00:34:42,958 --> 00:34:49,831 諦めて 別れてやるのも 情けのうちさ。 465 00:34:49,831 --> 00:34:56,972 そして 自分の新しい幸せを 見つける事だ。 466 00:34:56,972 --> 00:34:59,875 あんた まだ 16だ。 467 00:34:59,875 --> 00:35:04,312 これから先 きっと いい事も たくさんあるよ。 468 00:35:04,312 --> 00:35:15,323 ♬~ 469 00:35:15,323 --> 00:35:17,259 おのぶ。 470 00:35:17,259 --> 00:35:19,661 ごめんなさい。 471 00:35:19,661 --> 00:35:21,997 お父っつぁん ごめんなさい。 472 00:35:21,997 --> 00:35:26,997 もういい。 いいから 泣くな。 473 00:35:36,945 --> 00:35:40,816 これは 赤ん坊の誕生祝に 受け取っておくれ。 474 00:35:40,816 --> 00:35:43,285 そ… そんなバカな! その金は…。 475 00:35:43,285 --> 00:35:47,155 名主の調停に不満なら 江戸を出ていくんだな。 476 00:35:47,155 --> 00:35:51,626 人別帳から外れちまえば 私から調停される事もないし➡ 477 00:35:51,626 --> 00:35:54,626 己が子からも逃げられる。 478 00:35:59,501 --> 00:36:05,173 和国屋さん こんな所まで 呼び出しちまって 悪かったが➡ 479 00:36:05,173 --> 00:36:09,177 半次郎さんと おのぶさんの事は 今後のためにも➡ 480 00:36:09,177 --> 00:36:11,313 知っておいてもらった方が いいと思ってね。 481 00:36:11,313 --> 00:36:16,013 (和国屋) いえ ありがとうございます。 482 00:36:24,326 --> 00:36:28,663 (宗右衛門)笠松屋さん 小倉屋さん いかがでしょう?➡ 483 00:36:28,663 --> 00:36:33,268 名主名代の この取り決めについて 何かございますでしょうか? 484 00:36:33,268 --> 00:36:37,606 麻之助は まだ若く 初めての裁定ゆえ➡ 485 00:36:37,606 --> 00:36:39,941 不満もあるかと思います。 486 00:36:39,941 --> 00:36:44,279 何かありましたら 私が 今 ここで お聞きしますが。 487 00:36:44,279 --> 00:36:49,150 いえ 私は 何も…。 488 00:36:49,150 --> 00:36:56,291 ただ 息子の不始末を お許し頂ければと。 489 00:36:56,291 --> 00:37:21,291 ♬~ 490 00:37:27,989 --> 00:37:31,860 (巳之助)それにしても あの裁定には驚きました。➡ 491 00:37:31,860 --> 00:37:36,798 麻之助さんが あんなに立派に 名主名代を やり遂げられるとは。 492 00:37:36,798 --> 00:37:41,269 あいつは やればできる。 できるんだ。 493 00:37:41,269 --> 00:37:44,940 何せ 16までは 神童の誉れ高い…。 494 00:37:44,940 --> 00:37:47,842 あれ? 麻之助は どこ行ったんだ? 495 00:37:47,842 --> 00:37:50,612 どこかへ出かけましたよ。 496 00:37:50,612 --> 00:37:53,281 どうしても 片づけなければならない➡ 497 00:37:53,281 --> 00:37:56,318 大事な用があるとかで。 498 00:37:56,318 --> 00:37:58,954 また やられましたか。 499 00:37:58,954 --> 00:38:10,298 ♬~ 500 00:38:10,298 --> 00:38:12,233 おい 聞いたか? うん? 501 00:38:12,233 --> 00:38:16,638 どうやら 半次郎と和国屋の娘との 縁談は 破談になったらしいぜ。 502 00:38:16,638 --> 00:38:19,307 へえ~ そうかい。 いい気味だ。 503 00:38:19,307 --> 00:38:23,178 あの男 いくら次男で 冷や飯 食わされていたからといって➡ 504 00:38:23,178 --> 00:38:25,647 てめえの都合ばかり 考えやがって。 505 00:38:25,647 --> 00:38:28,316 まあ 吉五郎みたいに 長男でなくとも➡ 506 00:38:28,316 --> 00:38:30,652 曲がらず生きてる男も いるのにな。 507 00:38:30,652 --> 00:38:33,254 まあ 少しは曲がってもいいかなと 思う事もあるけどな。 508 00:38:33,254 --> 00:38:35,190 (2人)アハハハハ! あら 清さん。 509 00:38:35,190 --> 00:38:37,926 お久しぶり。 ああ 元気かい? 510 00:38:37,926 --> 00:38:40,261 たまには うちにも 顔出しておくれよ。 511 00:38:40,261 --> 00:38:43,164 さみしいじゃないの~。 ごめんな。 512 00:38:43,164 --> 00:38:46,935 麻之助さんもね。 分かってるよ。 513 00:38:46,935 --> 00:38:49,270 また今度な。 うん。 514 00:38:49,270 --> 00:38:51,940 お前たちのように ちゃらちゃらしてられるか! 515 00:38:51,940 --> 00:38:56,811 俺は 同心見習いだ。 しかも 既に 養子先に 許嫁もいる身だ。 516 00:38:56,811 --> 00:38:59,614 お~ そうだった そうだった。 9歳のな。 517 00:38:59,614 --> 00:39:02,283 お前も 苦労が多い人生だな。 518 00:39:02,283 --> 00:39:05,583 俺は それを 苦労などとは思っちゃおらん! 519 00:39:07,155 --> 00:39:09,155 あっ! 520 00:39:11,292 --> 00:39:13,228 吉五郎さん! 521 00:39:13,228 --> 00:39:15,163 お寿ずさん。 522 00:39:15,163 --> 00:39:18,863 すまん。 ちょっと行ってくる。 え? 523 00:39:22,303 --> 00:39:24,239 お久しぶりです。 524 00:39:24,239 --> 00:39:27,642 誰だい? ありゃ。 なかなかの美人だね。 525 00:39:27,642 --> 00:39:29,978 えっ? 許嫁じゃあないのかい? 526 00:39:29,978 --> 00:39:32,881 バカだねぇ。 あの子が9歳に見えるかい? 527 00:39:32,881 --> 00:39:38,253 見えないね。 あっ! えっ! まさか…➡ 528 00:39:38,253 --> 00:39:40,553 これかい? 529 00:39:45,126 --> 00:39:47,262 しかし 麻之助さんは➡ 530 00:39:47,262 --> 00:39:52,600 なかなか いい裁定を なされたのではありませんか? 531 00:39:52,600 --> 00:39:54,936 そうでしょうか。 532 00:39:54,936 --> 00:39:58,807 人は誰でも 好きになった相手に➡ 533 00:39:58,807 --> 00:40:03,611 同じように 自分を思ってもらいたいもの。 534 00:40:03,611 --> 00:40:08,483 だが なかなか そうならないのが 男女の仲。 535 00:40:08,483 --> 00:40:14,183 あなたは その娘に それを気付かせた。 536 00:40:15,957 --> 00:40:20,628 恋とは不公平なものですね。 537 00:40:20,628 --> 00:40:24,928 色恋の末に傷つくのは 女ばかり。 538 00:40:27,969 --> 00:40:31,306 ♬~ 539 00:40:31,306 --> 00:40:34,306 どうしました? 540 00:40:35,977 --> 00:40:41,316 いえ。 今 ふと頭に…。 541 00:40:41,316 --> 00:40:53,316 ♬~ 542 00:41:04,339 --> 00:41:19,888 ♬~ 543 00:41:19,888 --> 00:41:24,659 うん なかなかいい。 544 00:41:24,659 --> 00:41:32,300 麻之助さんの句には どこか ふんわりとした優しさがある。 545 00:41:32,300 --> 00:41:36,171 だが その優しさが➡ 546 00:41:36,171 --> 00:41:42,871 人生を生きづらくさせる事も あるやもしれません。 547 00:42:12,340 --> 00:43:28,340 ♬~