1 00:00:33,485 --> 00:00:41,893 ♬~ 2 00:00:41,893 --> 00:00:47,766 <神田の町名主 高橋宗右衛門の 跡取り息子 麻之助は➡ 3 00:00:47,766 --> 00:00:50,569 少し前に 妻をめとりました。➡ 4 00:00:50,569 --> 00:00:53,472 すると 支配町には とんでもないうわさが➡ 5 00:00:53,472 --> 00:00:55,440 駆け抜けたんです> 6 00:00:55,440 --> 00:00:57,909 (読売り)麻之助さんは 悪い人じゃないけれど➡ 7 00:00:57,909 --> 00:00:59,845 お気楽者だからね。 8 00:00:59,845 --> 00:01:03,782 ちょいとばかりというよりは だいぶん 頼りないわなぁ。 9 00:01:03,782 --> 00:01:07,252 (唐辛子売り) どうやって お武家のお嬢さんを もらったんだい? 10 00:01:07,252 --> 00:01:10,155 しかも 器量よしの しっかり者らしいぜ。 11 00:01:10,155 --> 00:01:13,125 (大工)こりゃ おてんとさまも 西から昇るんじゃねえのか? 12 00:01:13,125 --> 00:01:15,127 おめえ そりゃ 言い過ぎだよ。 (笑い声) 13 00:01:15,127 --> 00:01:17,596 さあ 買った 買った! <しまいにゃあ➡ 14 00:01:17,596 --> 00:01:20,932 天変地異の前触れとまで 言いだす者もいて➡ 15 00:01:20,932 --> 00:01:23,835 うわさ話は とどまるところを知らず➡ 16 00:01:23,835 --> 00:01:26,805 盛り上がっていったので ございます> 17 00:01:26,805 --> 00:01:29,941 まあ! 天変地異の前触れ! 18 00:01:29,941 --> 00:01:34,212 ハッハ 面白い事 言う人も いるもんですねぇ。 19 00:01:34,212 --> 00:01:36,715 そんなうわさになるなんて きっと みんな➡ 20 00:01:36,715 --> 00:01:39,751 お寿ずの事が知りたいんですよ。 ねえ お父っつぁん。 21 00:01:39,751 --> 00:01:42,220 ハッハッハッハ。 ああ そうだな。 22 00:01:42,220 --> 00:01:45,557 お前が ようやく嫁をもらったんで みんな 一安心して➡ 23 00:01:45,557 --> 00:01:48,460 軽口をたたけるように なったのかもしれないね。➡ 24 00:01:48,460 --> 00:01:52,431 一番 ほっとしたのは この私だよ。 25 00:01:52,431 --> 00:01:56,201 お寿ずが 麻之助の嫁になって。 26 00:01:56,201 --> 00:01:59,104 こりゃ 神仏のお恵みに違いないね。 27 00:01:59,104 --> 00:02:02,908 ああ~ お父っつぁんに そこまで褒めてもらえるなんて➡ 28 00:02:02,908 --> 00:02:07,245 お寿ずは 幸せ者だなぁ。 早速 伝えてこなくっちゃ。 29 00:02:07,245 --> 00:02:11,917 お~い お寿ず! お寿ずさ~ん! 30 00:02:11,917 --> 00:02:15,587 あいつには 当てつけってのが 通じないのかね? 31 00:02:15,587 --> 00:02:19,925 あら 当てつけだったんですか? 32 00:02:19,925 --> 00:02:23,595 私は てっきり 褒めているんだとばっかり。 33 00:02:23,595 --> 00:02:25,530 はあ? 34 00:02:25,530 --> 00:02:27,933 <そんなある日の事> 35 00:02:27,933 --> 00:02:31,803 (巳之助)えっ? でも これは どう見ても 恋文じゃないか。 36 00:02:31,803 --> 00:02:36,541 (下女)そうなんですよ。 だけど 「返しに来た」って その子が…。 37 00:02:36,541 --> 00:02:40,879 (巳之助)麻之助さんにかい? って事は この文を書いたのは…。 38 00:02:40,879 --> 00:02:43,782 (一同)麻之助さん!? (巳之助)えっ! うそ! 39 00:02:43,782 --> 00:02:47,552 (お寿ず)巳之助さん? それ 何です? 40 00:02:47,552 --> 00:02:50,222 え? いや…。 ちょっと! 痛っ! 41 00:02:50,222 --> 00:02:52,157 何です? 42 00:02:52,157 --> 00:02:55,093 麻之助様 お願いがあります。 43 00:02:55,093 --> 00:02:58,096 うん? 何だい? 44 00:02:58,096 --> 00:03:01,233 起きて下さいませ 麻之助様。 45 00:03:01,233 --> 00:03:05,103 もう少し… もう少しだけ。 46 00:03:05,103 --> 00:03:07,906 三行半を下さいまし。 47 00:03:07,906 --> 00:03:10,906 三行…? 48 00:03:13,778 --> 00:03:16,581 三行!? 49 00:03:16,581 --> 00:03:20,919 三行半と聞こえたような気が したのだけれど➡ 50 00:03:20,919 --> 00:03:25,919 そら耳じゃ…。 いえ そら耳ではございません。 51 00:03:29,594 --> 00:03:33,198 一体 何があったんだい? 52 00:03:33,198 --> 00:03:36,898 何か 気に障るような事でも? 53 00:03:41,072 --> 00:03:43,372 何だい? 54 00:03:47,212 --> 00:03:50,115 え…? 55 00:03:50,115 --> 00:03:53,885 「昨日 お顔を見たばかりなのに➡ 56 00:03:53,885 --> 00:03:57,556 もう随分と お会いしていない気が致します。➡ 57 00:03:57,556 --> 00:04:03,228 先日 町歩きの折 急に あなた様の事を思い出しました。➡ 58 00:04:03,228 --> 00:04:06,898 いつ また 2人きりで お会いできましょう?➡ 59 00:04:06,898 --> 00:04:10,769 あなた様に会えぬつらさに 小夜更けて➡ 60 00:04:10,769 --> 00:04:14,773 私の心は 千々に乱れ」って…。 61 00:04:14,773 --> 00:04:20,445 これ ひょっとして 恋文じゃあ? へえ~! ヘッヘッヘ! 62 00:04:20,445 --> 00:04:25,250 お寿ず あんた まさか これを 私が書いたとでも? 63 00:04:25,250 --> 00:04:27,586 そんな事は思っておりません。 はあ…。 64 00:04:27,586 --> 00:04:30,488 麻之助さんの筆不精は 承知しています。 65 00:04:30,488 --> 00:04:33,858 婚礼前に 麻之助さんから 文を頂いた事は➡ 66 00:04:33,858 --> 00:04:37,729 ただの一度も ございませんから。 67 00:04:37,729 --> 00:04:42,867 じゃあ なぜ 怒ってるんだい? 怒ってなどおりません! 68 00:04:42,867 --> 00:04:45,867 怒ってるじゃないか! さっきから。 69 00:04:47,739 --> 00:04:52,210 この文は 八木家の方から うちに届いたようなのです。 70 00:04:52,210 --> 00:04:56,081 え? 幸太ちゃんぐらいの男の子が➡ 71 00:04:56,081 --> 00:04:59,884 あなたに渡してくれと 持ってきたそうです。 72 00:04:59,884 --> 00:05:05,884 恐らく どなたか 大人から 言づかったのでしょう。 73 00:05:12,230 --> 00:05:14,566 「ゆ… ゆら」…? 74 00:05:14,566 --> 00:05:17,235 うん? 「ゆう」? 75 00:05:17,235 --> 00:05:19,935 「ゆか」かな? 76 00:05:21,906 --> 00:05:24,576 「ゆう」? 77 00:05:24,576 --> 00:05:26,511 「ご存じより」。 78 00:05:26,511 --> 00:05:31,383 この文を読まれた方が 文を書いたのは 麻之助さん➡ 79 00:05:31,383 --> 00:05:33,852 あなただと思われたのでは ないのですか!? 80 00:05:33,852 --> 00:05:37,522 いやいや… そんなバカな! えっ? 81 00:05:37,522 --> 00:05:39,457 ああ~! こうなったらさ➡ 82 00:05:39,457 --> 00:05:41,393 この文を どこの誰が 誰に宛てて書いたのか➡ 83 00:05:41,393 --> 00:05:44,029 調べなくちゃいけないねぇ! そうでございますね。 84 00:05:44,029 --> 00:05:46,531 麻之助さん 今日は また どこぞへ お急ぎで? 85 00:05:46,531 --> 00:05:48,466 そうなんだよ。 一大事が起こっちまってさ。 86 00:05:48,466 --> 00:05:50,869 麻之助さん 今朝は また お早いですね。 87 00:05:50,869 --> 00:05:52,804 何を言ってるんだい。 いつもの事ですよ! 88 00:05:52,804 --> 00:05:54,739 随分と お知り合いが多いのですね。 89 00:05:54,739 --> 00:05:56,741 そりゃ 私は 町名主の跡取りだもの。 90 00:05:56,741 --> 00:05:58,743 親しい仲じゃなくたって 声をかけてくるものさ。 91 00:05:58,743 --> 00:06:02,881 まあ。 この文を 幸太が お宅に? 92 00:06:02,881 --> 00:06:06,551 (2人)はい。 やですわ。 93 00:06:06,551 --> 00:06:09,888 手習い所へ返してきなさいと あれほど言ったのに。 94 00:06:09,888 --> 00:06:12,557 手習い所? はい。 95 00:06:12,557 --> 00:06:14,893 幸太も 7つになりましたので➡ 96 00:06:14,893 --> 00:06:19,193 半月ほど前から 手習い所へ 通わせる事にしたのです。 97 00:06:20,765 --> 00:06:26,237 どうやら この文は お習字の 紙の中に紛れていたらしく➡ 98 00:06:26,237 --> 00:06:31,509 宛名を見て 私への文と思い込み 持って帰ってきてしまったのです。 99 00:06:31,509 --> 00:06:33,845 習字の紙? (お由有)ええ。➡ 100 00:06:33,845 --> 00:06:37,515 手習い用の反故紙です。 あ~ なるほど。 101 00:06:37,515 --> 00:06:41,515 けど なぜ それを 麻之助さんに? 102 00:06:44,856 --> 00:06:47,192 う~ん…。 103 00:06:47,192 --> 00:06:50,528 幸太を呼んでみよう。 おい 幸太! 104 00:06:50,528 --> 00:06:53,865 幸太は いるかい? 幸太! 幸太~! 105 00:06:53,865 --> 00:06:57,535 (幸太)は~い。 何? 106 00:06:57,535 --> 00:07:01,206 おお~ 幸太! こっちだ こっちだ。 107 00:07:01,206 --> 00:07:04,109 麻にいちゃ~ん! おお 座れ 座れ。 108 00:07:04,109 --> 00:07:09,547 幸太 この文を 麻之助のところへ 持ってったってぇのは 本当かい? 109 00:07:09,547 --> 00:07:13,218 あっ。 なぜ そんな事をしたのです? 110 00:07:13,218 --> 00:07:16,918 大林先生のところへ 返してらっしゃいと言ったでしょ。 111 00:07:18,556 --> 00:07:22,227 幸太 黙っていたのでは 分かりませんよ。 112 00:07:22,227 --> 00:07:25,897 あ~ お由有さん そんなに叱らなくても。 113 00:07:25,897 --> 00:07:28,566 幸太 偉かったね。 114 00:07:28,566 --> 00:07:32,170 お前さん おっ母さんの名が 読めるようになったんだね。 115 00:07:32,170 --> 00:07:34,506 うん。 あ~ けど➡ 116 00:07:34,506 --> 00:07:36,841 どうして これを 麻にいちゃんのところに➡ 117 00:07:36,841 --> 00:07:39,177 持ってきたんだい? 118 00:07:39,177 --> 00:07:42,080 だって…。 うん。 119 00:07:42,080 --> 00:07:46,050 麻にいちゃん おっ母さんと仲よしだから。 120 00:07:46,050 --> 00:07:53,191 ♬~ 121 00:07:53,191 --> 00:07:58,062 まあ だけどさ この文は 麻之助が書いた訳でもなきゃ➡ 122 00:07:58,062 --> 00:08:00,532 おっ母さん宛てでもないって事が 分かったんだ。 123 00:08:00,532 --> 00:08:04,035 それでいいじゃないか。 ねえ お寿ずさん。 はあ…。 124 00:08:04,035 --> 00:08:07,539 まあ この字 見りゃ 麻之助が 書いたものじゃあないって事は➡ 125 00:08:07,539 --> 00:08:10,875 一目瞭然だけどさ。 え? 126 00:08:10,875 --> 00:08:13,912 こんな滑らかな文字を この男が書けると思いますか? 127 00:08:13,912 --> 00:08:16,548 え? 見た事あるでしょう? 麻之助の字。 128 00:08:16,548 --> 00:08:18,483 おい! どういう事だよ! ハハハハ! 129 00:08:18,483 --> 00:08:23,888 そんな事 言ったら かわいそうですよ。 フフフ…。 あっ。 130 00:08:23,888 --> 00:08:27,225 いえ… 子どもの頃 麻之助さんが 手習いで➡ 131 00:08:27,225 --> 00:08:29,561 大真面目に 字のお稽古をしていたのを➡ 132 00:08:29,561 --> 00:08:31,496 思い出してしまって。 133 00:08:31,496 --> 00:08:36,835 紙が真っ黒になるほど 何度も書き直して。 その割に…。 134 00:08:36,835 --> 00:08:40,705 やめて下さいよ そんな話は! 麻之助は 子どもの頃は➡ 135 00:08:40,705 --> 00:08:43,508 今と違って くそ真面目だったからねぇ。 136 00:08:43,508 --> 00:08:46,411 字も 紙を破りそうなほど 角張っていて。 137 00:08:46,411 --> 00:08:50,181 本当? ええ。 もう お由有さんったら! 138 00:08:50,181 --> 00:08:53,852 (お由有)おっ母さんも 清十郎さんも 麻之助さんも➡ 139 00:08:53,852 --> 00:08:56,754 幸太くらいの年から 同じ先生のところで➡ 140 00:08:56,754 --> 00:08:59,190 読み 書き そろばんを 習っていたのですよ。 141 00:08:59,190 --> 00:09:01,526 (幸太)ふ~ん。 142 00:09:01,526 --> 00:09:04,195 麻にいちゃんな 字 下手っぴなんだよ。 143 00:09:04,195 --> 00:09:06,865 (お由有)幸太の方が 上手かも。 かもな。 144 00:09:06,865 --> 00:09:09,767 (笑い声) 145 00:09:09,767 --> 00:09:15,206 やれやれ。 麻之助の疑いが晴れて よかったけれど➡ 146 00:09:15,206 --> 00:09:19,077 あれで 結構 お寿ずさんも やきもち焼きですね。 え? 147 00:09:19,077 --> 00:09:22,881 いきなり 三行半とは。 148 00:09:22,881 --> 00:09:25,216 本当に。 149 00:09:25,216 --> 00:09:29,888 けど お似合いの夫婦だと思いますよ。 150 00:09:29,888 --> 00:09:35,693 だって 怒るという事は 好いている裏返しでしょ? 151 00:09:35,693 --> 00:09:37,693 そうですね。 152 00:09:39,497 --> 00:09:44,369 羨ましい? だって 3人は 本当に 仲がよろしいから。 153 00:09:44,369 --> 00:09:48,840 私には あんなふうに 心を開いて話せる友はいません。 154 00:09:48,840 --> 00:09:53,840 心を開き過ぎて ポカポカ殴り合ったり 悪口を言い合ったりしてもかい? 155 00:09:55,713 --> 00:09:59,013 男3人じゃなくて…。 156 00:10:08,526 --> 00:10:10,461 どちらへ いらっしゃるのですか? 157 00:10:10,461 --> 00:10:13,865 方角が違います。 え? だから➡ 158 00:10:13,865 --> 00:10:16,701 この文を書いた主を 捜しに行くんだよ。 159 00:10:16,701 --> 00:10:20,538 お寿ずも一緒に。 え? 今からですか? 160 00:10:20,538 --> 00:10:24,876 文の主が分かれば お寿ずも すっきりするだろ? 161 00:10:24,876 --> 00:10:27,211 もう よろしゅうございます。 162 00:10:27,211 --> 00:10:30,882 麻之助さんが書いたものでは ない事は 分かったのですから。 163 00:10:30,882 --> 00:10:35,553 いいじゃないか。 たまには 2人で 辺りを ぶらぶらしてみようよ。 164 00:10:35,553 --> 00:10:39,424 気持ちがいいよ~ 町歩きは。 165 00:10:39,424 --> 00:10:42,894 まずは 幸太の手習い所だ。 166 00:10:42,894 --> 00:10:47,231 <…とまあ 歩きだしたのは いいのですが➡ 167 00:10:47,231 --> 00:10:49,567 あれあれ もう道草だ> 168 00:10:49,567 --> 00:10:52,267 ほら お寿ず お食べ。 169 00:10:53,905 --> 00:10:57,775 歩きながら食べるのですか? うん。 うまいよ。 170 00:10:57,775 --> 00:11:04,549 そんな事は… これまで 一度もした事がありません。 171 00:11:04,549 --> 00:11:06,918 だったら してみればいいじゃないか。 172 00:11:06,918 --> 00:11:10,254 もう お武家の娘じゃないんだ。 173 00:11:10,254 --> 00:11:14,592 な~に 私と一緒なら だ~れも 驚きはしないよ。 174 00:11:14,592 --> 00:11:22,934 ♬~ 175 00:11:22,934 --> 00:11:26,804 あら 坊や。 この辺の子? 176 00:11:26,804 --> 00:11:31,542 大林っていう お師匠様の 手習い所を知っている? 177 00:11:31,542 --> 00:11:35,542 それ くれたら 案内すらぁ! これ? 178 00:11:38,216 --> 00:11:41,119 じゃあ どうぞ。 179 00:11:41,119 --> 00:11:43,888 へっ! ここ曲がったら すぐだよ! 180 00:11:43,888 --> 00:11:49,188 あらまあ! ハハッ! えらく また あっさりとした案内だねぇ。 181 00:11:56,234 --> 00:11:58,903 (大林)これを ご覧下さい。➡ 182 00:11:58,903 --> 00:12:03,241 この紙は 全て 懸想文の下書きです。➡ 183 00:12:03,241 --> 00:12:08,112 書き損じだったり 書きかけで やめていたり。 184 00:12:08,112 --> 00:12:12,917 はあ~! これは また たくさんの…。 ハハハ。 185 00:12:12,917 --> 00:12:16,254 へえ~ そうですか。 ハハハハ! 186 00:12:16,254 --> 00:12:20,124 ああ ああ…! これは 私が書いたものではありません。 187 00:12:20,124 --> 00:12:22,927 たまたま この中に入っていたのです。 188 00:12:22,927 --> 00:12:26,798 あ… ああ~! (笑い声) 189 00:12:26,798 --> 00:12:31,736 ここにあるものは全て 私が この手習い所を始める時に➡ 190 00:12:31,736 --> 00:12:34,205 古道具屋から 買い入れたものなのです。 191 00:12:34,205 --> 00:12:37,875 へえ~ 古道具屋から。 はい。 192 00:12:37,875 --> 00:12:41,546 この文庫も その一つです。 この中に➡ 193 00:12:41,546 --> 00:12:45,049 反故紙が たくさん入っていたので 子どもたちの手習い用に➡ 194 00:12:45,049 --> 00:12:47,885 ちょうどいいと 思っていたのですが。 195 00:12:47,885 --> 00:12:51,556 まさか 懸想文が交ざっていようとは。➡ 196 00:12:51,556 --> 00:12:56,227 子どもたちは 懸想文だと分かると 大騒ぎしたので➡ 197 00:12:56,227 --> 00:13:01,099 一枚残らず 取り戻したつもり だったんですが…。 198 00:13:01,099 --> 00:13:04,902 それにしても なぜ 恋文というだけで➡ 199 00:13:04,902 --> 00:13:07,805 人は 色めき立つんでしょうなぁ。➡ 200 00:13:07,805 --> 00:13:11,776 老若男女 子どもまでが。 あの~ では➡ 201 00:13:11,776 --> 00:13:15,246 この恋文を誰が書いたかは…。 202 00:13:15,246 --> 00:13:19,117 さあ 私には…。 203 00:13:19,117 --> 00:13:22,587 古道具屋に聞いてみては いかがですか? 204 00:13:22,587 --> 00:13:26,257 どこの古道具屋から? 両国です。 205 00:13:26,257 --> 00:13:30,128 しかし なぜ そんな事を調べているのですか? 206 00:13:30,128 --> 00:13:33,064 え…。 207 00:13:33,064 --> 00:13:37,064 夫婦円満のためでしょうかね。 208 00:13:39,537 --> 00:13:42,440 一体 どこ行ったんだ? 麻之助は。 209 00:13:42,440 --> 00:13:44,876 何やら調べたい事があるとかで➡ 210 00:13:44,876 --> 00:13:48,546 お寿ずさんをご一緒に 朝早くから お出かけになりましたが。 211 00:13:48,546 --> 00:13:52,546 お寿ずも連れていったのか。 はあ。 212 00:13:58,222 --> 00:14:01,893 おさん! はい。 飯が かたいぞ。 213 00:14:01,893 --> 00:14:06,230 そうですか? 後で言っておきます。 214 00:14:06,230 --> 00:14:10,568 でも 私は これぐらいの方が かみ応えがあって好きですけどね。 215 00:14:10,568 --> 00:14:13,905 お前の好みを聞いてる訳じゃない。 はい。 216 00:14:13,905 --> 00:14:19,577 全く 麻之助ときたら あきれて 物が言えないねぇ。 217 00:14:19,577 --> 00:14:23,447 鉄砲玉みたいに出ていったきり 帰ってこないんだから。 218 00:14:23,447 --> 00:14:26,250 それも お寿ずまで連れて。 219 00:14:26,250 --> 00:14:31,122 よろしいではないですか。 少しぐらい 大目に見てやっても。 220 00:14:31,122 --> 00:14:33,858 そうですよ。 もし 何でしたら➡ 221 00:14:33,858 --> 00:14:37,528 私が 麻之助さんの代わりを 務めさせて頂いても➡ 222 00:14:37,528 --> 00:14:41,199 不都合はない訳ですし。 223 00:14:41,199 --> 00:14:45,069 きっと あの子には あの子なりの考えがあるんですよ。 224 00:14:45,069 --> 00:14:48,072 どういう? 225 00:14:48,072 --> 00:14:52,543 お寿ずをだしに 仕事を怠ける魂胆か? 226 00:14:52,543 --> 00:14:55,213 いや ですから…。 227 00:14:55,213 --> 00:15:00,213 そうですね 例えば…。 228 00:15:03,087 --> 00:15:05,556 なにかしら…。 229 00:15:05,556 --> 00:15:11,429 ♬~ 230 00:15:11,429 --> 00:15:13,429 おっ。 231 00:15:19,103 --> 00:15:23,574 (古道具屋)さあ 私には 皆目 分かりませんねぇ。 232 00:15:23,574 --> 00:15:27,445 大体 反故なんてものはね まとめて品物を買う時に➡ 233 00:15:27,445 --> 00:15:29,914 ついでに 引き取るんです。 234 00:15:29,914 --> 00:15:33,184 どこの手習い師匠の道具に 入ってたかなんて➡ 235 00:15:33,184 --> 00:15:36,087 そんな事 聞かれたってねぇ。 (せきこみ) 236 00:15:36,087 --> 00:15:41,525 何年も前の 売れ残りの 反故かもしれませんしねぇ。 237 00:15:41,525 --> 00:15:46,864 反故なんてねぇ ほらほら こんなにあるんですよ。 よいしょ。 238 00:15:46,864 --> 00:15:48,799 そいつは参ったねぇ。 239 00:15:48,799 --> 00:15:52,737 いや 是非 この文を書いた師匠を 見つけ出したいんだが…。 240 00:15:52,737 --> 00:15:56,874 手習い所を やめるお人はねぇ これで 結構多いんですよ。 241 00:15:56,874 --> 00:16:00,211 師匠なんて言うと 聞こえがいいんでしょうかねぇ。 242 00:16:00,211 --> 00:16:03,881 皆さん 気軽に始めようとするんです。 243 00:16:03,881 --> 00:16:06,217 でも いざ 開いたところで➡ 244 00:16:06,217 --> 00:16:09,887 子どもが集まんなきゃ 暮らしていけませんからねぇ。 245 00:16:09,887 --> 00:16:15,760 で 立ち行かなくなり うちに 道具を売りに来ると。 246 00:16:15,760 --> 00:16:18,760 ハハハハ。 なるほどねぇ。 247 00:16:20,531 --> 00:16:24,235 では ここ1年以内で 手習い所をやめ➡ 248 00:16:24,235 --> 00:16:27,905 品物を売ったお人 それなら お分かりになりますか? 249 00:16:27,905 --> 00:16:29,840 え? 250 00:16:29,840 --> 00:16:34,178 こちらの文 まだ 墨や紙が さほど古びてはいませんわ。 251 00:16:34,178 --> 00:16:37,081 それほど前に書いたものとは 思えません。 252 00:16:37,081 --> 00:16:40,051 なるほど。 お寿ずの言うとおりだ。 253 00:16:40,051 --> 00:16:45,751 ほらほら ほらほら! ご主人 是非 帳面を調べちゃくれないかい? 254 00:16:52,863 --> 00:16:56,734 あ~ あった あった! これじゃないですかね? 255 00:16:56,734 --> 00:17:01,205 米津尚吾様。 米津… 尚吾様? 256 00:17:01,205 --> 00:17:03,205 (古道具屋) ああ 思い出しましたよ。 257 00:17:06,077 --> 00:17:10,214 これで この文を書いたのが 私じゃないって事は➡ 258 00:17:10,214 --> 00:17:12,550 はっきり分かったね。 はい。 259 00:17:12,550 --> 00:17:16,220 恐らく この文を書いたのは 米津尚吾様だ。 260 00:17:16,220 --> 00:17:18,920 そうでございますね。 うん。 261 00:17:21,892 --> 00:17:26,764 もしや お寿ずさん あんた 私と同じ事を思ってるね? 262 00:17:26,764 --> 00:17:30,234 やはり そうですか? 麻之助さんも。 263 00:17:30,234 --> 00:17:32,837 (2人)ここまで来たら最後まで…。 264 00:17:32,837 --> 00:17:34,772 調べたいよねぇ! 調べとうございます! 265 00:17:34,772 --> 00:17:39,176 是非 お目にかかってみたいよねぇ その米津尚吾様に。 266 00:17:39,176 --> 00:17:41,846 けど お目にかかって どうされるのですか? 267 00:17:41,846 --> 00:17:45,516 そりゃあ 「この文を書いたのは あなたでしょ?➡ 268 00:17:45,516 --> 00:17:48,185 それで 私は 大迷惑を被ったんだ」って➡ 269 00:17:48,185 --> 00:17:51,088 こう言ってやりますよ。 相手は お武家ですよ? 270 00:17:51,088 --> 00:17:53,858 お武家だろうと何だろうと 言ってやりますよ 私は。 271 00:17:53,858 --> 00:17:57,194 「てやんでえ! うちの嫁は お武家の出だ」ってな。 272 00:17:57,194 --> 00:17:59,864 「紛らわしい事 あ するんじゃねえ!」って。 273 00:17:59,864 --> 00:18:01,799 あ 痛い 痛い 痛い! 麻之助さん どうされましたか? 274 00:18:01,799 --> 00:18:03,734 あ いやいやいや…。 大丈夫ですか? 275 00:18:03,734 --> 00:18:05,734 痛みますか? 276 00:18:08,205 --> 00:18:12,076 お寿ずは 優しいね。 頼りになる嫁だ。 277 00:18:12,076 --> 00:18:14,078 いいえ。 278 00:18:14,078 --> 00:18:17,882 一生 お前さんの肩を借りて 生きていきたいよ。 279 00:18:17,882 --> 00:18:21,182 (吉五郎)何をやっている! お前たち! 280 00:18:22,753 --> 00:18:25,756 あっ! 吉五郎さん。 281 00:18:25,756 --> 00:18:29,493 どうも~。 真っ昼間から お熱いこって。 282 00:18:29,493 --> 00:18:31,429 あ…。 283 00:18:31,429 --> 00:18:36,000 吉五郎 ちょうどよかった。 折り入って 頼みがあるんだけど。 284 00:18:36,000 --> 00:18:38,500 また お前の頼み事か! 285 00:18:42,773 --> 00:18:46,510 駄目だ。 俺は忙しいんだ。 286 00:18:46,510 --> 00:18:50,181 懸想文だの へちまだので いちいち動いていられるか! 287 00:18:50,181 --> 00:18:53,083 まあまあ。 いいじゃありやせんか 兄貴。 288 00:18:53,083 --> 00:18:55,853 大切なお友達の一大事です。 289 00:18:55,853 --> 00:19:00,191 よし 分かりやした。 あっしが 一っ走り 調べてきやすよ。 290 00:19:00,191 --> 00:19:03,861 その米津尚吾様って お人の事を。 えっ 本当かい!? 291 00:19:03,861 --> 00:19:08,199 ああ! この界わいの事は この貞に任せておくんなせえ! 292 00:19:08,199 --> 00:19:11,535 たた… 頼んだよ! もう 行っちまいやがった。 293 00:19:11,535 --> 00:19:14,872 早いねぇ。 しかし また➡ 294 00:19:14,872 --> 00:19:19,743 懸想文の主捜しとは 酔狂な事をしているもんだな。 295 00:19:19,743 --> 00:19:21,743 ヘヘッ。 296 00:19:24,215 --> 00:19:28,886 こういう事を 一番喜びそうな男が いないが どうしたんだ? 297 00:19:28,886 --> 00:19:33,586 え? 名主様は 仕事が忙しくて それどころじゃないそうだよ。 298 00:19:35,693 --> 00:19:38,162 (おと吉)いい加減にしておくれ! 299 00:19:38,162 --> 00:19:41,862 二度と… 二度と来るんじゃないよ! 300 00:19:43,501 --> 00:19:56,080 ♬~ 301 00:19:56,080 --> 00:20:00,050 (平三) 旦那さん どうされたんです? 302 00:20:00,050 --> 00:20:02,520 いや…。 303 00:20:02,520 --> 00:20:12,196 ♬~ 304 00:20:12,196 --> 00:20:17,868 平三さん すまねえが 先に うちへ帰ってくれるかい? 305 00:20:17,868 --> 00:20:20,538 へえ。 306 00:20:20,538 --> 00:20:25,409 ♬~ 307 00:20:25,409 --> 00:20:28,212 なあ どうしたんだい? 教えとくれよ。 308 00:20:28,212 --> 00:20:31,115 何でもありませんよ。 何 言ってるんです。 309 00:20:31,115 --> 00:20:35,886 けど どうして泣いてるんだい。 何かあるのか? あの男と。 310 00:20:35,886 --> 00:20:40,558 帰って下さいよ。 何でもないったら! 311 00:20:40,558 --> 00:20:42,858 お師匠さん…。 312 00:20:44,428 --> 00:20:47,898 清さん あんた もう➡ 313 00:20:47,898 --> 00:20:51,569 私のところへなんか来るのは およしなさい。 314 00:20:51,569 --> 00:20:57,441 こんな所へ来ていても ろくな事はありませんよ。 315 00:20:57,441 --> 00:21:03,441 あんた もう 名主様なんですから。 316 00:21:05,583 --> 00:21:09,453 麻さん 兄貴! 分かりやしたぜ 事の次第が! 317 00:21:09,453 --> 00:21:13,257 米津家は 上野の近くに住んでる 御家人でね➡ 318 00:21:13,257 --> 00:21:16,160 朝顔作りの内職で知られた 家だそうです。 319 00:21:16,160 --> 00:21:18,929 まあ あんまり お禄の高い家じゃあ ありやせん。 320 00:21:18,929 --> 00:21:23,267 尚吾様は そこの三男坊で 家を継ぐ事もできず➡ 321 00:21:23,267 --> 00:21:26,170 自分で 手習い所を始めたって訳です。 322 00:21:26,170 --> 00:21:31,542 そうかい。 それじゃ ようやく 尚吾様に会えるんだね。 323 00:21:31,542 --> 00:21:35,879 ところが 麻さん そいつは ちょっと無理な話なんでさぁ。 324 00:21:35,879 --> 00:21:37,815 どうして? 325 00:21:37,815 --> 00:21:42,753 米津尚吾様は 遠い所へ行っちゃったんです。 326 00:21:42,753 --> 00:21:44,888 遠い所? 327 00:21:44,888 --> 00:21:47,224 (貞吉)あの世ですよ。 328 00:21:47,224 --> 00:21:49,893 死んでたって事か。 329 00:21:49,893 --> 00:21:54,231 まだ 24だったそうです。 まあ…。 330 00:21:54,231 --> 00:21:57,901 手習い所を開いたあと 脚気にかかっちまってね➡ 331 00:21:57,901 --> 00:22:00,804 それで 一旦 親元へ戻ったんだそうですが➡ 332 00:22:00,804 --> 00:22:05,576 急に 心の臓が悪くなり 倒れ それきりだったって…。 333 00:22:05,576 --> 00:22:07,511 なあ? へえ。 334 00:22:07,511 --> 00:22:11,448 なんと…。 それで 僅か半年ばかりで➡ 335 00:22:11,448 --> 00:22:14,585 手習い所を閉めたって訳か。 336 00:22:14,585 --> 00:22:19,456 まあ そういう事なんでしょう。 お気の毒に…。 337 00:22:19,456 --> 00:22:21,925 それじゃあ 何かい?➡ 338 00:22:21,925 --> 00:22:25,596 せっかく書いた恋文を 尚吾様は➡ 339 00:22:25,596 --> 00:22:29,933 好いた相手に渡せなかったってぇ そういう事かい? 340 00:22:29,933 --> 00:22:33,203 あっ 頭取! 頭! 341 00:22:33,203 --> 00:22:38,542 (頭取)おっ どうも 初めやして。 はあ。 342 00:22:38,542 --> 00:22:45,215 そうかい。 かわいそうになぁ。 で 何だよ その恋文ってぇのは。 343 00:22:45,215 --> 00:22:48,552 どれどれ どういう文だい? ちょいと拝見。 344 00:22:48,552 --> 00:22:51,889 え? あっ ああ これ…。 345 00:22:51,889 --> 00:22:55,559 <懸想文だの 片思いだのと聞くと➡ 346 00:22:55,559 --> 00:23:00,230 つい 首を突っ込みたくなるのが 江戸っ子って訳でして…> 347 00:23:00,230 --> 00:23:03,901 これ 何て書いてあんだ? 「ゆら」? 「ゆか」? 348 00:23:03,901 --> 00:23:07,237 バ~カ。 こら どう見ても 「ゆう」だろう。 349 00:23:07,237 --> 00:23:09,907 おい。 おめえ 字読めんのかい? 350 00:23:09,907 --> 00:23:12,810 まあ 仮名だけな。 くそ~っ! 351 00:23:12,810 --> 00:23:14,778 (噺家)ちょちょちょいと 私… 私に➡ 352 00:23:14,778 --> 00:23:17,781 ちょいと ちょいと 見しておくれよ。 ええ? 353 00:23:17,781 --> 00:23:22,252 <あれ? ここに 一人 粋な噺家がおりますねぇ> 354 00:23:22,252 --> 00:23:28,592 「いつ また 2人っきりで お会いできましょう?」。 355 00:23:28,592 --> 00:23:31,862 <うん? どっかで聞いた いい声だって?> 356 00:23:31,862 --> 00:23:36,734 「きっと 暮らしも立ちましょう」。 357 00:23:36,734 --> 00:23:41,538 <そう。 この人が 私って訳です。➡ 358 00:23:41,538 --> 00:23:43,474 はい お粗末さま> 359 00:23:43,474 --> 00:23:47,211 って事は 手習い所を開いたってのも➡ 360 00:23:47,211 --> 00:23:52,549 ひょっとすると この娘と 一緒に なりたかったからじゃねえのか? 361 00:23:52,549 --> 00:23:57,221 手習い所を開き ようやく思いを 伝えられると思ったんだろうな。 362 00:23:57,221 --> 00:24:00,557 だから こんなに躍起になって 恋文を書いたんだよ。 363 00:24:00,557 --> 00:24:02,893 なのに すぐ死んじまった。 364 00:24:02,893 --> 00:24:05,796 という事は この娘ってぇのは➡ 365 00:24:05,796 --> 00:24:09,767 米津様の思いも 知らなかったって事かい? 366 00:24:09,767 --> 00:24:12,236 いや 知ってはいるだろう。 367 00:24:12,236 --> 00:24:15,906 ここに 「また会いたい」って書いてある。 368 00:24:15,906 --> 00:24:20,778 おいおい けどよ いいのか? このままで。 369 00:24:20,778 --> 00:24:24,248 恋文も渡さず あの世へ行っちまうなんてさ。 370 00:24:24,248 --> 00:24:29,119 麻之助さん。 お前さん なんとかしてやりなよ。 371 00:24:29,119 --> 00:24:32,956 そうだよ! してやんなよ! 名主の跡取りだろ? 372 00:24:32,956 --> 00:24:38,195 いや~ 何で こんな話になっちまったのかね? 373 00:24:38,195 --> 00:24:41,098 ねえ 吉五郎。 374 00:24:41,098 --> 00:24:44,098 こんな時だけ頼るな。 375 00:24:45,869 --> 00:24:50,541 まあ どのみち 道は2つだ。 376 00:24:50,541 --> 00:24:54,411 一つは 差出人も亡くなってる事だし➡ 377 00:24:54,411 --> 00:24:57,214 このまま 事を終わらせる。 378 00:24:57,214 --> 00:25:01,552 残った文が 気にかかるのであれば 寺で供養してもらえばよい。 379 00:25:01,552 --> 00:25:03,487 うん。 380 00:25:03,487 --> 00:25:11,895 もう一つは 相手の娘を捜し出し 渡すという手だ。 381 00:25:11,895 --> 00:25:16,233 だが 相手の娘を捜すとなれば それはそれで➡ 382 00:25:16,233 --> 00:25:20,103 大ごとになるかもしれんな。 え? 383 00:25:20,103 --> 00:25:24,908 「ゆう」だか「ゆら」だか「ゆか」だか 分からねえんだからな。 384 00:25:24,908 --> 00:25:29,580 けど たとえ 捜し出す事ができたとしても➡ 385 00:25:29,580 --> 00:25:32,482 渡せぬという事が あるやもしれません。 386 00:25:32,482 --> 00:25:35,853 え? 尚吾様が お亡くなりになってから➡ 387 00:25:35,853 --> 00:25:38,522 どれだけ 月日がたったかは 存じません。 388 00:25:38,522 --> 00:25:42,192 ですが 相手の娘さんが年頃ならば➡ 389 00:25:42,192 --> 00:25:45,095 既に婚礼を挙げている事も 考えられます。 390 00:25:45,095 --> 00:25:48,095 だとしたら…。 391 00:25:49,867 --> 00:25:53,370 うん。 それもそうだね。 392 00:25:53,370 --> 00:25:55,706 (お寿ず)え? お寿ずの言うとおりだ。 393 00:25:55,706 --> 00:25:59,543 これ以上 首を突っ込んで 誰かに迷惑をかけちゃいけないね。 394 00:25:59,543 --> 00:26:02,880 この話は やめとしよう。 おしまいだ。 395 00:26:02,880 --> 00:26:05,782 何でえ! つまんねえなぁ。 396 00:26:05,782 --> 00:26:09,219 せめて 相手の娘を 捜し出すくれえはなぁ。 397 00:26:09,219 --> 00:26:13,891 嫁さんもらった途端に 言いなりかぁ。 あっ。 398 00:26:13,891 --> 00:26:16,793 言いなりかぁ! 行くぞ。 あっ。 399 00:26:16,793 --> 00:26:21,565 <という事で この話は 一件落着➡ 400 00:26:21,565 --> 00:26:25,435 と言いたいところですが その後も やじ馬たちは➡ 401 00:26:25,435 --> 00:26:30,574 米津尚吾様の恋のお相手を 捜し回ったんでございます。➡ 402 00:26:30,574 --> 00:26:36,179 懸想文が関わるとなると 事を見届けたいという気持ちが➡ 403 00:26:36,179 --> 00:26:40,851 ものぐさな根性を上回る事が あるらしいんですな これが。➡ 404 00:26:40,851 --> 00:26:44,187 …って 私も その一人なんですがね> 405 00:26:44,187 --> 00:26:46,123 兄貴! あっ? 406 00:26:46,123 --> 00:26:48,859 見つかりやした。 本当か。 どこだ!? 407 00:26:48,859 --> 00:26:51,194 あっちです。 何~!? 408 00:26:51,194 --> 00:26:54,097 麻之助さん。➡ 409 00:26:54,097 --> 00:26:57,067 麻之助さん!➡ 410 00:26:57,067 --> 00:27:00,067 麻之助さんってば。 411 00:27:01,838 --> 00:27:07,538 何だい お寿ず。 もう 三行半は 勘弁…。 412 00:27:09,212 --> 00:27:11,882 巳之助さん? おお…。 ちょ…。 413 00:27:11,882 --> 00:27:14,785 どうしたんです? ハハッ 起きましたね。 ええ。 414 00:27:14,785 --> 00:27:17,220 火消しの頭取の使いが 麻之助さんたちに➡ 415 00:27:17,220 --> 00:27:19,556 すぐに来てほしいと。 416 00:27:19,556 --> 00:27:21,556 ええ~。 417 00:27:28,565 --> 00:27:32,169 (頭取)麻之助さんは 真ん中だ。 真ん中。 418 00:27:32,169 --> 00:27:35,505 ご新造さんは 隣に。 さあさあ。 はい。 419 00:27:35,505 --> 00:27:37,841 何だい 吉五郎まで。 ええ? 420 00:27:37,841 --> 00:27:40,877 いえ。 証人として 是非とも 兄貴には➡ 421 00:27:40,877 --> 00:27:43,513 立ち会ってもらいたくて 来て頂きやした。 422 00:27:43,513 --> 00:27:47,851 え…。 じゃあ 何かい? その おゆうとかいう娘を➡ 423 00:27:47,851 --> 00:27:50,354 見つけたのかい? 貞さんは。 へえ。 424 00:27:50,354 --> 00:27:53,857 おゆうは 米津様のご近所に 住んでる御家人の娘で➡ 425 00:27:53,857 --> 00:27:55,792 二十歳と言ってやした。 426 00:27:55,792 --> 00:27:58,729 それが まあ えらい器量よしでねぇ。➡ 427 00:27:58,729 --> 00:28:01,531 尚吾様とも 顔見知りのようですし➡ 428 00:28:01,531 --> 00:28:05,869 その娘が 恋文の相手に違えねえと 思いやすよ。 なあ 辰。 429 00:28:05,869 --> 00:28:08,538 そんじょそこらの玉じゃ ありませんでしたぜ。 430 00:28:08,538 --> 00:28:10,474 (噺家)バカ言っちゃいけないねぇ。 431 00:28:10,474 --> 00:28:15,412 麻之助さん。 私が出会ったのはね おゆらという娘でね➡ 432 00:28:15,412 --> 00:28:20,550 この子は 16。 米津家お出入りの 植木屋の娘なんですよ。 433 00:28:20,550 --> 00:28:23,220 おゆら? (噺家)おゆら。 434 00:28:23,220 --> 00:28:25,889 これが もう… 何と言うのかね? 435 00:28:25,889 --> 00:28:30,560 楚々とした中にもね 何か こう 色気があってね➡ 436 00:28:30,560 --> 00:28:32,829 かわいらしいったら ないんですよ。 437 00:28:32,829 --> 00:28:37,501 きっと 尚吾様は この子に 一目ぼれしたんですね。 438 00:28:37,501 --> 00:28:41,838 へえ~。 楚々とした…。 いいねぇ! 439 00:28:41,838 --> 00:28:45,175 (貞吉)いや 俺のおゆうは もっと美人だぜ。➡ 440 00:28:45,175 --> 00:28:47,511 切れ長の すっとした目でよぉ。 441 00:28:47,511 --> 00:28:50,414 あんな目で見つめられたら 男は イチコロだねぇ。 442 00:28:50,414 --> 00:28:54,184 切れ長の目か。 たまらねえな! ハハハハ! 443 00:28:54,184 --> 00:28:57,484 俺なら おゆうだな。 444 00:29:01,525 --> 00:29:04,194 そんな二十歳なんて年増。 445 00:29:04,194 --> 00:29:06,530 おゆらの方が よっぽど きれいだよ。 446 00:29:06,530 --> 00:29:11,201 なにを!? 16なんてのは まだ ションベン臭え小娘じゃねえか! 447 00:29:11,201 --> 00:29:14,104 俺のおゆうの方が 器量よしだぜ! 私の方だね! 448 00:29:14,104 --> 00:29:17,541 なにを この~!? よさねえか 貞! 449 00:29:17,541 --> 00:29:20,877 おゆうは お前の持ち物か! けど 兄貴…! 450 00:29:20,877 --> 00:29:24,714 いやいや これはさ どちらの娘が 器量よしかなんて事じゃあ➡ 451 00:29:24,714 --> 00:29:26,750 ないだろうよ。 (貞吉 噺家)え? 452 00:29:26,750 --> 00:29:30,520 要は 尚吾様が ほれたかどうかだ。 453 00:29:30,520 --> 00:29:33,423 そりゃそうだ。 けど 麻さん…。 454 00:29:33,423 --> 00:29:35,358 ほれてしまえば 「痘痕も靨」。 455 00:29:35,358 --> 00:29:38,361 尚吾様には 恋しく思う相手が➡ 456 00:29:38,361 --> 00:29:41,498 一番の器量よしに見えたに 違いないよ。 457 00:29:41,498 --> 00:29:44,835 大体さ 美人なんてものは 一日で飽きちまうが➡ 458 00:29:44,835 --> 00:29:48,171 おへちゃは違いますよ。 朝日で見て 夕日で見て➡ 459 00:29:48,171 --> 00:29:50,507 それぞれ 味わいがあるんだから。 460 00:29:50,507 --> 00:29:52,843 奥が深いよ おへちゃは。 うん。 461 00:29:52,843 --> 00:29:56,513 なるほど。 麻之助さんは おなごの器量など➡ 462 00:29:56,513 --> 00:29:59,182 思い込みで どうにでもなると おっしゃりたいのですね。 463 00:29:59,182 --> 00:30:02,085 え? そうですか。 それで 私をお選びに。 464 00:30:02,085 --> 00:30:04,054 いやいやいや… そういう事じゃないけどさ。 465 00:30:04,054 --> 00:30:07,858 ねえねえ 違う 違う…。 うるさいな! 静かにおしよ! 466 00:30:07,858 --> 00:30:09,793 麻さんが 持ってきた話じゃねえか! 467 00:30:09,793 --> 00:30:11,728 どっちの女か 決めておくれよ! 468 00:30:11,728 --> 00:30:14,531 そうだ そうだ! 決めてくれよ! 469 00:30:14,531 --> 00:30:18,201 そうだ。 お前さんが決めな! 470 00:30:18,201 --> 00:30:21,538 …と 頭取の一声。 471 00:30:21,538 --> 00:30:25,876 そんなもん どっちか分かる訳ないじゃないか。 472 00:30:25,876 --> 00:30:30,747 いや けどね 一つ言える事は…。 おう! はい! 473 00:30:30,747 --> 00:30:33,550 話の2人より 間違いなく➡ 474 00:30:33,550 --> 00:30:35,485 お寿ずの方が きれいだって事だよ! 475 00:30:35,485 --> 00:30:39,222 アハハハハハ! (噺家)ふざけた事を! 476 00:30:39,222 --> 00:30:41,158 のろけてんじゃねえよ。 何だい! 477 00:30:41,158 --> 00:30:44,094 何のために集まったんだか。 何の…!? 478 00:30:44,094 --> 00:30:47,097 全く 麻さんときた日にゃあ➡ 479 00:30:47,097 --> 00:30:49,566 せっかく 苦労して 捜し出してきたのによぉ。 480 00:30:49,566 --> 00:30:51,902 適当に どちらか言っておきゃあ よかったんだ。 481 00:30:51,902 --> 00:30:57,574 頭の固いやつだな~。 お前にだけは言われたくないよ。 482 00:30:57,574 --> 00:31:02,445 実はさ 文の相手は誰か 答えは もう出ているんだ。 483 00:31:02,445 --> 00:31:05,248 どちらのお人ですの? やっぱり 俺の方かい!? 484 00:31:05,248 --> 00:31:07,184 いや どちらでもない。 え? 485 00:31:07,184 --> 00:31:09,119 何でですか? 486 00:31:09,119 --> 00:31:14,819 もしも 貞さんの見つけてきた おゆうだとするよ? 487 00:31:20,797 --> 00:31:23,934 あ… ここ。 「今より 3日後の昼九つ➡ 488 00:31:23,934 --> 00:31:26,836 あの神社の境内にて お待ちしております」。 489 00:31:26,836 --> 00:31:31,274 それと ここ。 「今の2人なら きっと 暮らしも立ちましょう。➡ 490 00:31:31,274 --> 00:31:36,112 水入らずの暮らしをしていけたら ほかに 何を望みましょう」。 491 00:31:36,112 --> 00:31:40,083 この文を読む限り 2人は 単なる顔見知りって事はないよね。 492 00:31:40,083 --> 00:31:42,886 だとすると おゆうではないだろう。 493 00:31:42,886 --> 00:31:46,556 それほど ほれてくれたお人の事を 貞さんに尋ねられて➡ 494 00:31:46,556 --> 00:31:49,459 平気な顔で答えられると 思うかい? 495 00:31:49,459 --> 00:31:52,429 そりゃあ そうですが…。 496 00:31:52,429 --> 00:31:55,899 お寿ず ちょっと ここを読んでごらん。 497 00:31:55,899 --> 00:31:58,802 「昨日 お顔を お見かけしたばかりなのに➡ 498 00:31:58,802 --> 00:32:02,239 もう随分と お会いしていない気がします」。 499 00:32:02,239 --> 00:32:04,574 うん。 ここに書いてあるように➡ 500 00:32:04,574 --> 00:32:07,911 昼間は ちょくちょく顔を見る事が できる人だと思うのさ。 501 00:32:07,911 --> 00:32:12,249 だとすると たまにしか来ない 植木屋の娘 おゆらでは➡ 502 00:32:12,249 --> 00:32:16,119 話が合わない。 つまり こう考えていくとさ➡ 503 00:32:16,119 --> 00:32:20,590 尚吾様の恋しい相手は よほど近くにいるお人だ。 504 00:32:20,590 --> 00:32:25,262 で 2人は 間違いなく 深~い仲だろうよ。 505 00:32:25,262 --> 00:32:29,562 じゃあ 麻さんは 初めから 分かってたって事か。 506 00:32:32,535 --> 00:32:34,471 なあ お寿ず。 507 00:32:34,471 --> 00:32:40,210 これから 上野の近くまで 行ってみないかい? え? 508 00:32:40,210 --> 00:32:44,547 行きたい所があるんだ。 行きたい所…。 509 00:32:44,547 --> 00:32:48,885 尚吾様のお墓さ。 なぜです? 510 00:32:48,885 --> 00:32:54,557 うん… 何だか 呼ばれてるような気がしてさ。 511 00:32:54,557 --> 00:32:58,428 いや だって 私たちが調べるのをやめても➡ 512 00:32:58,428 --> 00:33:02,432 まだ 相手のおなごを捜そうと みんなが騒ぎだしたろう? 513 00:33:02,432 --> 00:33:06,169 そりゃ 米津尚吾様が お墓の下で➡ 514 00:33:06,169 --> 00:33:09,169 そう願っているからじゃ ないのかい? 515 00:33:13,576 --> 00:33:18,448 これは 私たちが たまたま 見つけたものなんですが➡ 516 00:33:18,448 --> 00:33:25,922 恐らく 亡くなられた米津尚吾様が 書かれた懸想文のようなのです。 517 00:33:25,922 --> 00:33:28,825 (住職)尚吾様が。 518 00:33:28,825 --> 00:33:31,728 ご本人に お返ししようと 捜したところ➡ 519 00:33:31,728 --> 00:33:35,198 故人となられたと知りました。 520 00:33:35,198 --> 00:33:42,198 この文 宛名の方へ お渡ししてよいものかどうか。 521 00:33:44,874 --> 00:33:47,377 おゆり殿にですか? 522 00:33:47,377 --> 00:33:51,548 おゆり? おゆり様とおっしゃるのですか。 523 00:33:51,548 --> 00:33:55,418 お二人は 同じ町内に住み➡ 524 00:33:55,418 --> 00:34:00,223 古くからの 知り合いだったそうです。 525 00:34:00,223 --> 00:34:13,770 ですが おゆり殿が 一度 外へ嫁ぎ 出戻られております。 526 00:34:13,770 --> 00:34:21,511 そう 年は 尚吾様より 少し上かと。➡ 527 00:34:21,511 --> 00:34:27,917 尚吾様は 御家人の三男で 部屋住み。➡ 528 00:34:27,917 --> 00:34:31,254 互いに 好き合っていても➡ 529 00:34:31,254 --> 00:34:38,254 そうやすやすとは 一緒にはなれなかったのでしょう。 530 00:34:42,532 --> 00:34:47,203 では やはり 尚吾様は おゆり様と一緒になるために➡ 531 00:34:47,203 --> 00:34:49,539 手習い所を開かれたのですか? 532 00:34:49,539 --> 00:34:52,208 そのようです。 533 00:34:52,208 --> 00:34:58,908 ですが 残念な事を致しました。 534 00:35:07,223 --> 00:35:12,896 この文 ご住職に お預けしても よろしいでしょうか? 535 00:35:12,896 --> 00:35:14,831 え? 536 00:35:14,831 --> 00:35:20,770 尚吾様からの文が残っていた事 おゆり様に お伝え願えますか? 537 00:35:20,770 --> 00:35:25,241 その上で もしも 要らぬと言われたら➡ 538 00:35:25,241 --> 00:35:29,941 火にくべて 燃やしてさしあげて下さい。 539 00:35:32,048 --> 00:35:35,852 分かりました。 540 00:35:35,852 --> 00:35:38,852 お預かり致しましょう。 541 00:35:40,523 --> 00:35:45,862 おゆり様は あの文を受け取るでしょうか? 542 00:35:45,862 --> 00:35:50,533 そうだねぇ。 どうだろうね? 543 00:35:50,533 --> 00:35:54,404 まあ けど あの住職なら 文をどうするか➡ 544 00:35:54,404 --> 00:35:58,404 おゆりさんの望むように してくれるだろう。 545 00:36:00,877 --> 00:36:05,215 お寿ず。 お前さんなら どうする? (お寿ず)え? 546 00:36:05,215 --> 00:36:09,886 もしも 亡くなってしまった 方からの懸想文が残っていて➡ 547 00:36:09,886 --> 00:36:13,586 それが お前さんのもとへ届いたら。 548 00:36:15,225 --> 00:36:21,225 (又四郎)お寿ずの事を頼む。 549 00:36:24,234 --> 00:36:28,104 そんなものはありませんよ。 え? 550 00:36:28,104 --> 00:36:31,841 私は 生まれてから ただの一度も➡ 551 00:36:31,841 --> 00:36:36,841 どなたからも 恋文など 頂いた事はありませんもの。 552 00:36:50,860 --> 00:36:56,860 尚吾様 こんな結末で よかったんでしょうかね? 553 00:37:09,879 --> 00:37:11,814 (あくび) 554 00:37:11,814 --> 00:37:17,754 三行半から始まって 長かったねぇ ここ何日かは。 555 00:37:17,754 --> 00:37:22,892 麻之助さん。 うん? 何だい? 556 00:37:22,892 --> 00:37:27,592 三行半などと言って 申し訳ありませんでした。 557 00:37:47,083 --> 00:37:56,192 ♬~ 558 00:37:56,192 --> 00:37:58,861 さて 一度 お寿ずに➡ 559 00:37:58,861 --> 00:38:03,533 私の達筆な字で 懸想文でも書いて 届けようかねぇ。 560 00:38:03,533 --> 00:38:05,868 まあ うれしい。 561 00:38:05,868 --> 00:38:11,741 けど 宛名は はっきりと 読めるように書いて下さいましね。 562 00:38:11,741 --> 00:38:13,743 そうですねぇ。 563 00:38:13,743 --> 00:38:16,743 (笑い声) 564 00:38:21,217 --> 00:38:26,889 ほう 亡くなった方の懸想文ですか。 565 00:38:26,889 --> 00:38:32,161 それはまた 大変なものを 手にしてしまいましたな。 566 00:38:32,161 --> 00:38:41,504 はい。 けど おかげで 少しだけ 妻と近づけたような気が致します。 567 00:38:41,504 --> 00:38:47,176 夫婦とは おかしなものですな。 え? 568 00:38:47,176 --> 00:38:53,049 もともと他人同士だった男女が 生涯を共にすると決め➡ 569 00:38:53,049 --> 00:38:55,852 一緒に暮らし始める。 570 00:38:55,852 --> 00:39:00,189 せなかあわせだった者たちが 互いに向き合う。 571 00:39:00,189 --> 00:39:04,189 いや 肩を並べて歩いていく。 572 00:39:06,062 --> 00:39:09,532 これからは 長い時をかけ➡ 573 00:39:09,532 --> 00:39:14,832 お二人は 本物の連れ合いと なっていくのでしょう。 574 00:39:17,206 --> 00:39:23,079 何だか 遠い道のりのような気が 致しますが…。 575 00:39:23,079 --> 00:39:29,218 ♬~ 576 00:39:29,218 --> 00:39:34,824 私 どうして あんなに 麻之助が お寿ずを連れ回しているのか➡ 577 00:39:34,824 --> 00:39:38,494 分かりました。 なぜだい? 578 00:39:38,494 --> 00:39:43,833 いずれは お寿ずが 町名主の妻となるからです。 579 00:39:43,833 --> 00:39:46,169 ええ? 580 00:39:46,169 --> 00:39:49,505 名主の妻の仕事は たくさんあります。 581 00:39:49,505 --> 00:39:53,176 町内のおかみさんたちの相談に 乗る事もあれば➡ 582 00:39:53,176 --> 00:39:59,515 陰ながら 旦那様の手助けを しなければならない事もあります。 583 00:39:59,515 --> 00:40:02,185 うむ。 その時に➡ 584 00:40:02,185 --> 00:40:06,055 町内の者たちに 顔や人柄を知られていれば➡ 585 00:40:06,055 --> 00:40:10,059 お寿ずが 楽だと 思ったのでしょう。 うむ。 586 00:40:10,059 --> 00:40:12,829 あの人は 町人の娘ではありませんから➡ 587 00:40:12,829 --> 00:40:15,531 慣れない事も多い。 588 00:40:15,531 --> 00:40:22,205 フフッ…。 麻之助も あれで いろいろと考えているんですよ。 589 00:40:22,205 --> 00:40:26,075 (宗右衛門)そうかねぇ? (おさん)そうですよ。 590 00:40:26,075 --> 00:40:29,378 私には 怠けているとしか 思えないがね。 591 00:40:29,378 --> 00:40:33,178 あら そんな事はありませんよ。 592 00:40:35,885 --> 00:40:38,885 ありませんよ。 593 00:40:40,556 --> 00:40:43,459 多分…。 594 00:40:43,459 --> 00:40:52,168 いずれにせよ 末永く 幸せに 暮らしてもらいたいものだね。 595 00:40:52,168 --> 00:40:54,103 ええ。 596 00:40:54,103 --> 00:41:32,403 ♬~ 597 00:42:11,514 --> 00:43:28,514 ♬~