1 00:00:06,000 --> 00:00:24,000 (柱時計の時報) 2 00:00:24,000 --> 00:00:45,000 ♬〜 3 00:00:45,000 --> 00:01:07,000 ♬〜 4 00:01:14,000 --> 00:01:17,000 (女の子)あっ 帽子が飛んでいく。 5 00:01:20,000 --> 00:01:28,000 ♬〜 6 00:01:28,000 --> 00:01:32,000 ♬〜 7 00:01:32,000 --> 00:01:56,000 ♬〜 8 00:01:56,000 --> 00:02:02,000 ♬〜 9 00:02:02,000 --> 00:02:07,000 ♬〜 10 00:02:07,000 --> 00:02:09,000 (楓)おじいちゃん。 11 00:02:09,000 --> 00:02:15,000 ♬〜 12 00:02:15,000 --> 00:02:20,000 (祖父)ああ… おかえり 楓。 よく来たね。 13 00:02:20,000 --> 00:02:22,000 うん。 14 00:02:22,000 --> 00:02:25,000 香苗には会えたかな? 15 00:02:27,000 --> 00:02:29,000 会えなかったなあ。 16 00:02:30,000 --> 00:02:34,000 お母さん 来てたんだ。 ああ…。 17 00:02:34,000 --> 00:02:37,000 入れ違いか。 18 00:02:37,000 --> 00:02:39,000 そうだね。 フフッ…。 19 00:02:43,000 --> 00:02:46,000 えっ? 青いトラ? 20 00:02:47,000 --> 00:02:49,000 ええっ? 21 00:02:49,000 --> 00:02:55,000 風格のあるトラが 今朝 書斎に入ってきたんだ。 22 00:02:55,000 --> 00:02:58,000 どうやって障子を開けたのか…。 23 00:02:58,000 --> 00:03:02,000 ああ… 器用だと思わないか? 24 00:03:02,000 --> 00:03:04,000 かまれなくて良かったね。 25 00:03:04,000 --> 00:03:13,000 うん。 いやあ あのトラには こう… 余裕を感じさせるものがあった。 26 00:03:13,000 --> 00:03:23,000 ただじーっと僕を見つめる あの瞳には 思わず引き込まれそうになってね。 27 00:03:23,000 --> 00:03:25,000 へえ〜。 28 00:03:25,000 --> 00:03:28,000 それで… トラは どうしたの? 29 00:03:29,000 --> 00:03:35,000 笑顔を見せて また優雅に歩いていった。 30 00:03:35,000 --> 00:03:39,000 フフフフ…。 えっ トラが笑ったの? 31 00:03:40,000 --> 00:03:42,000 (あくび) 32 00:03:42,000 --> 00:03:48,000 実に幸せそうにね…。 33 00:04:17,000 --> 00:04:19,000 (女の子)おはよう! おはよう! 34 00:04:20,000 --> 00:04:23,000 おはようございます! まどふき先生! 35 00:04:23,000 --> 00:04:26,000 おはよう。 おお 廊下は走らない。 はい! 36 00:04:26,000 --> 00:04:28,000 〈まどふき先生〉 37 00:04:28,000 --> 00:04:31,000 おっ 今は なんの本を読んでる? 大輔くん。 38 00:04:31,000 --> 00:04:36,000 〈校長先生だった頃 おじいちゃんは そう呼ばれていた〉 39 00:04:36,000 --> 00:04:38,000 〈全校生徒の名前を覚えて…〉 40 00:04:40,000 --> 00:04:47,000 〈卒業式では 児童それぞれの個性に合わせて 一冊の本を手渡す→ 41 00:04:47,000 --> 00:04:50,000 生徒思いの先生だった〉 42 00:04:50,000 --> 00:04:52,000 おめでとう。 43 00:04:53,000 --> 00:04:58,000 〈あれほどに聡明だったおじいちゃん まどふき先生は→ 44 00:04:58,000 --> 00:05:06,000 今 記憶障害 パーキンソン症状を引き起こす認知症→ 45 00:05:06,000 --> 00:05:11,000 レビー小体型認知症を患っている〉 46 00:05:11,000 --> 00:05:14,000 〈その最大の特徴が→ 47 00:05:14,000 --> 00:05:19,000 そこにないものをまざまざと見る 幻視だ〉 48 00:05:21,000 --> 00:05:28,000 〈周囲の人間がその存在を否定しても 納得させるのは至難の業〉 49 00:05:28,000 --> 00:05:33,000 〈できたとしても 残酷だ〉 50 00:05:33,000 --> 00:05:44,000 (チャイム) 51 00:05:44,000 --> 00:05:46,000 ᗕ(岩田)楓先生。 52 00:05:46,000 --> 00:05:49,000 あっ! (岩田)今日は ガトーショコラ作ってみました。 53 00:05:49,000 --> 00:05:51,000 ああ〜! 54 00:05:52,000 --> 00:05:55,000 ジャン! うわ〜! 55 00:05:55,000 --> 00:05:59,000 岩田先生 いつもありがとうございます。 56 00:06:00,000 --> 00:06:02,000 んっ! 57 00:06:02,000 --> 00:06:04,000 (岩田)図書室だよりか…。 毎週 楽しみにしてるんですよ。 58 00:06:04,000 --> 00:06:06,000 んん…。 59 00:06:07,000 --> 00:06:09,000 『たんぽぽ娘』? 60 00:06:09,000 --> 00:06:14,000 うん。 愛する人に会うために 人生を懸けてタイムトラベルをする→ 61 00:06:14,000 --> 00:06:17,000 たんぽぽ色の髪の少女の話です。 62 00:06:17,000 --> 00:06:21,000 へえ〜。 人生を懸けるほどの恋か〜! 63 00:06:21,000 --> 00:06:23,000 とってもすてきな恋です。 64 00:06:24,000 --> 00:06:28,000 〈すてきな恋愛をしてほしい〉 65 00:06:28,000 --> 00:06:32,000 〈この本には きっと 祖父のそんな願いが込められてる〉 66 00:06:35,000 --> 00:06:40,000 〈おじいちゃん ごめんね。 恋愛は全然…〉 67 00:06:44,000 --> 00:06:47,000 楓先生→ 68 00:06:47,000 --> 00:06:50,000 今夜 絶対負けられない代表戦があるんですけど→ 69 00:06:50,000 --> 00:06:53,000 一緒にどうですか? スポーツバーでサッカー観戦! 70 00:06:55,000 --> 00:06:58,000 あっ… ごめんなさい。 71 00:06:58,000 --> 00:07:00,000 この後 予定があって。 72 00:07:00,000 --> 00:07:04,000 あっ… いや そうですよね…。 73 00:07:04,000 --> 00:07:08,000 あっ… あっ あの… 本当に予定があるんです! 74 00:07:08,000 --> 00:07:12,000 あの… 祖父に これを持っていきたくて。 75 00:07:12,000 --> 00:07:15,000 瀬戸川…。 76 00:07:15,000 --> 00:07:17,000 瀬戸川猛資。 77 00:07:17,000 --> 00:07:19,000 論理の帝王 エラリー・クイーン ミステリの女王 アガサ・クリスティ→ 78 00:07:19,000 --> 00:07:23,000 不可能犯罪の巨匠 ディクスン・カーの名作に 真っ向から異を唱える天才であり→ 79 00:07:23,000 --> 00:07:25,000 おじいちゃんの先輩なんです。 80 00:07:25,000 --> 00:07:29,000 あっ… 楓先生のミステリー好きは おじいさん譲りなんですね。 81 00:07:29,000 --> 00:07:31,000 はい! フフッ…。 82 00:07:35,000 --> 00:07:39,000 ᗒ(久喜・祖父)あー んー→ 83 00:07:39,000 --> 00:07:50,000 うー いー えー おー。 84 00:07:50,000 --> 00:07:53,000 (久喜)はい。 じゃあ お水飲みましょうか。 85 00:07:54,000 --> 00:07:56,000 はい。 86 00:07:57,000 --> 00:07:59,000 (飲む音) 87 00:07:59,000 --> 00:08:01,000 うん。 ちゃんと飲めてますね。 88 00:08:01,000 --> 00:08:03,000 ᗒただいま! 89 00:08:03,000 --> 00:08:07,000 おお… おお 香苗か? 楓か? 90 00:08:07,000 --> 00:08:11,000 楓だよ。 ああ 楓 おかえり。 よく来たね。 91 00:08:11,000 --> 00:08:13,000 うん ただいま。 あっ 今日もありがとうございます。 92 00:08:13,000 --> 00:08:15,000 (久喜)こんにちは。 こんにちは。 93 00:08:15,000 --> 00:08:19,000 (久喜)お孫さんがいらして 元気が出ますねえ。 94 00:08:20,000 --> 00:08:25,000 しかし 碑文谷さんは 相変わらず 立派な髪をお持ちだなあ。 95 00:08:25,000 --> 00:08:27,000 ハハハハ…。 うらやましいか? 96 00:08:27,000 --> 00:08:31,000 (久喜)でもね うちの娘の髪も負けてませんよ。 97 00:08:31,000 --> 00:08:34,000 まず 長さが違う 滑らかさが違う そして なんといっても…。 98 00:08:34,000 --> 00:08:36,000 艶が違う。 99 00:08:36,000 --> 00:08:39,000 ご名答! (久喜と祖父の笑い声) 100 00:08:39,000 --> 00:08:44,000 いつも そんなんだから 「親バカさん」って言われるんだよ。 101 00:08:44,000 --> 00:08:46,000 (久喜と祖父の笑い声) 102 00:08:46,000 --> 00:08:49,000 (久喜)では 碑文谷さん 今日は娘が帰ってくるんで 私はこれで。 103 00:08:49,000 --> 00:08:51,000 ああ。 104 00:08:51,000 --> 00:08:54,000 あっ ありがとうございました。 次は…。 来週の火曜日です。 105 00:08:54,000 --> 00:08:56,000 ですよね。 来週もよろしくお願いします。 106 00:08:56,000 --> 00:08:58,000 (久喜)ありがとうございました。 ありがとうございました。 107 00:08:58,000 --> 00:09:00,000 お疲れさん。 108 00:09:01,000 --> 00:09:03,000 〈昔のはなし家たちのように→ 109 00:09:03,000 --> 00:09:08,000 おじいちゃんは この場所 「碑文谷」の呼び名を気に入っている〉 110 00:09:08,000 --> 00:09:14,825 ♬〜 111 00:09:16,825 --> 00:09:17,000 ♬〜 112 00:09:17,000 --> 00:09:20,000 あっ おじいちゃん…。 うん…。 113 00:09:25,000 --> 00:09:27,000 ああ〜…。 よし…。 114 00:09:27,000 --> 00:09:29,000 おお ありがとう。 115 00:09:29,000 --> 00:09:33,000 今日はね おじいちゃんに見せたいものがあるの。 116 00:09:33,000 --> 00:09:38,000 おお! 瀬戸川先輩の遺作だ。 117 00:09:38,000 --> 00:09:40,000 サークルで一緒だったんだよね? 118 00:09:40,000 --> 00:09:47,000 ああ。 ワセダミステリクラブ。 いやあ 懐かしいなあ。 119 00:09:47,000 --> 00:09:58,000 おお… あの時はね 喫茶モンシェリで 度々 ミステリ談義を繰り広げていたんだ。 120 00:09:58,000 --> 00:10:03,000 あのひとときは 僕の原点ともいえる時間だったよ。 121 00:10:03,000 --> 00:10:05,000 フフフ…。 ええ〜。 フフフ…。 122 00:10:07,000 --> 00:10:10,000 よく手に入ったねえ。 123 00:10:10,000 --> 00:10:13,000 中古本専門のネット書店があるの。 124 00:10:13,000 --> 00:10:15,000 稀覯本の宝庫だよ。 125 00:10:15,000 --> 00:10:17,000 これは…? 126 00:10:17,000 --> 00:10:20,000 あっ 届いた本の中に挟み込まれてたの。 127 00:10:20,000 --> 00:10:24,000 いやあ しおりにしては多いよ。 128 00:10:28,000 --> 00:10:30,000 う〜ん? 129 00:10:30,000 --> 00:10:36,000 おじいちゃん 作為的な違和感を感じない? 130 00:10:36,000 --> 00:10:40,000 これって いわゆる 日常ミステリだと思うの。 131 00:10:41,000 --> 00:10:43,000 う〜ん…。 132 00:10:45,000 --> 00:10:53,000 一体 どこの誰が なんの目的で この4枚の訃報記事を挟んだか。 133 00:10:55,000 --> 00:10:57,000 うん。 134 00:11:00,000 --> 00:11:07,000 楓… 香りを焚かせてくれないか? 135 00:11:07,000 --> 00:11:10,000 うん! フフッ…! 136 00:11:13,000 --> 00:11:28,000 ♬〜 137 00:11:28,000 --> 00:11:30,000 懐かしい。 138 00:11:30,000 --> 00:11:44,000 ♬〜 139 00:11:44,000 --> 00:11:47,000 今 「絵」が見えたよ。 140 00:11:49,000 --> 00:11:54,000 ほら すぐそこで→ 141 00:11:54,000 --> 00:12:01,000 穏やかな顔つきの男性が 本の中に何かを挟んでいる。 142 00:12:03,000 --> 00:12:06,000 だが… 残念ながら→ 143 00:12:06,000 --> 00:12:13,000 本の元所有者である男性は すでに亡くなっている。 144 00:12:13,000 --> 00:12:16,000 なんで分かるの? 145 00:12:16,000 --> 00:12:24,000 彼は 生前 大好きな瀬戸川猛資氏の訃報記事を→ 146 00:12:24,000 --> 00:12:31,000 哀惜の念を込め 大切にしている本の中に挟み込んでいた。 147 00:12:31,000 --> 00:12:39,000 ところが 彼の死後 奥さまが それほどの宝物だとはつゆ知らず→ 148 00:12:39,000 --> 00:12:42,000 遺品整理の一環として→ 149 00:12:42,000 --> 00:12:48,000 さまざまな本と一緒に まとめて中古本の書店に売ってしまった。 150 00:12:48,000 --> 00:12:52,000 元所有者が男性だと断言する理由は? 151 00:12:52,000 --> 00:12:55,000 女性ってケースもあるんじゃない? 152 00:12:55,000 --> 00:12:57,000 う〜ん…→ 153 00:12:57,000 --> 00:12:59,000 「配偶者が亡くなった時→ 154 00:12:59,000 --> 00:13:08,000 悲しみを抑えつつも 冷静な行動が取れるのは 女性のほうだから」と言えば→ 155 00:13:08,000 --> 00:13:11,000 納得してくれるかな? 156 00:13:13,000 --> 00:13:15,000 実際 僕なんかも→ 157 00:13:15,000 --> 00:13:21,000 夏米に先立たれた時 何もできなかったからねえ。 158 00:13:24,000 --> 00:13:28,000 楓 ほら 見てごらん。 159 00:13:28,000 --> 00:13:30,000 うん? 160 00:13:30,000 --> 00:13:37,000 モンシェリに ワセダミステリクラブの顔ぶれがそろってる。 161 00:13:37,000 --> 00:13:43,000 そこで瀬戸川先輩と話しているのが 本の元所有者だ。 162 00:13:43,000 --> 00:13:45,000 これはこれは! 163 00:13:45,000 --> 00:13:50,000 今度は クイーンとクリスティのお出ましだ。 164 00:13:50,000 --> 00:13:58,000 おや? フフッ… いつの間にか カーも談義に加わってる。 165 00:13:58,000 --> 00:14:02,000 ああ〜 フフフフフ…。 うん。 166 00:14:03,000 --> 00:14:05,000 んん…。 楽しそうだね。 167 00:14:05,000 --> 00:14:09,000 おお…。 おい! おい! 168 00:14:09,000 --> 00:14:11,000 ハハハハハハ…。 169 00:14:12,000 --> 00:14:28,000 ♬〜 170 00:14:31,825 --> 00:14:33,825 (岩田)楓先生! 171 00:14:33,825 --> 00:14:36,825 あっ おはようございます。 岩田先生。 おはようございます。 172 00:14:36,825 --> 00:14:39,825 実は ミステリー好きの楓先生に どうしても聞いてほしいことがあって。 173 00:14:39,825 --> 00:14:41,825 おっ なんかあったんですか? 174 00:14:41,825 --> 00:14:43,825 はる乃っていう居酒屋があるんですけど…。 175 00:14:43,825 --> 00:14:48,825 うん ああ… 何回か行ったことあります。 祖父の行きつけで。 176 00:14:48,825 --> 00:14:51,825 では 落ち着いて聞いてくださいね。 はい。 177 00:14:51,825 --> 00:14:58,825 昨日 代表戦の最中に はる乃で殺人事件があったらしいんですよ。 178 00:14:58,825 --> 00:15:00,825 殺人!? (岩田)はい。 179 00:15:00,825 --> 00:15:04,825 しかも 高校時代の後輩が そこに居合わせてたみたいで。 180 00:15:04,825 --> 00:15:06,825 ああ…。 181 00:15:06,825 --> 00:15:10,825 今夜 そいつと一緒に飲むんですけど よかったら一緒にどうですか? 182 00:15:10,825 --> 00:15:13,825 あっ でも 急に私が行ったら びっくりさせちゃうんじゃ…。 183 00:15:13,825 --> 00:15:17,825 ハハッ… そこは大丈夫です。 ただし…。 うん? 184 00:15:17,825 --> 00:15:20,825 あいつのほうには だいぶ問題あるんですけどね。 185 00:15:20,825 --> 00:15:23,825 何しろ 相当 変人なんで。 186 00:15:27,825 --> 00:15:38,825 ♬〜(店内の音楽) 187 00:15:38,825 --> 00:15:42,825 あの… 岩田先生の後輩さんでいらっしゃいますか? 188 00:15:42,825 --> 00:15:44,825 (四季)はい。 189 00:15:44,825 --> 00:15:47,825 あっ 良かった。 あの…。 190 00:15:47,825 --> 00:15:51,825 待ち合わせまで4分25秒あります。 あと少しなんで 最後まで読んじゃいますね。 191 00:15:52,825 --> 00:15:55,825 あっ… はい。 192 00:16:02,825 --> 00:16:05,825 初めまして。 下の名前で呼んでください。 193 00:16:05,825 --> 00:16:09,825 日本の四季の「しき」と書いて四季です。 194 00:16:09,825 --> 00:16:13,825 四季さん。 えっと じゃあ こちらも 初めまして。 195 00:16:13,825 --> 00:16:18,825 えっと 木偏に風 もうすぐ紅葉がきれいな木のカエデ→ 196 00:16:18,825 --> 00:16:20,825 楓っていいます。 197 00:16:20,825 --> 00:16:22,825 ハハハ… ポエムですか? えっ? 198 00:16:22,825 --> 00:16:25,825 僕の自己紹介に引きずられたの 分かんなくはないですけどね。 199 00:16:25,825 --> 00:16:29,825 自分の名前を説明する時 普通 「紅葉がきれいでどうの」とか言います? 200 00:16:29,825 --> 00:16:31,825 はい? (店員)注文は? 201 00:16:31,825 --> 00:16:34,825 もう来ると思うんで まずは 生3つで。 (店員)はい。 202 00:16:34,825 --> 00:16:37,825 飲めますよね? いきなり僕に 変なポエム飲ませたくらいだもん。 203 00:16:39,825 --> 00:16:43,825 あっ 不可能犯罪の巨匠 ディクスン・カーですか? 204 00:16:43,825 --> 00:16:45,825 あっ えっ? えっ 知ってますか? 205 00:16:45,825 --> 00:16:47,825 『四つの兇器』です。 206 00:16:47,825 --> 00:16:50,825 あっ もう ラスト近いんですけど なかなかいいですよ。 207 00:16:50,825 --> 00:16:53,825 本当に読んでるんですか? ファッションとして忍ばせてるんじゃなくて? 208 00:16:53,825 --> 00:16:55,825 今どき カーの初期作を? 209 00:16:55,825 --> 00:16:57,825 一周して おしゃれですね。 210 00:16:58,825 --> 00:17:01,825 カー読んでて何が悪いんですか? 211 00:17:01,825 --> 00:17:04,825 あっ いや カーが悪いんじゃなくて…。 212 00:17:04,825 --> 00:17:06,825 うーん…→ 213 00:17:06,825 --> 00:17:10,825 翻訳もののクラシカルな本格ミステリなんて よく読めるなあと思って。 214 00:17:10,825 --> 00:17:12,825 どういうことですか? 215 00:17:12,825 --> 00:17:16,825 理由を全部挙げていたら一晩かかるので 結論だけ言いますね。 216 00:17:16,825 --> 00:17:21,825 舞台設定 キャラ設定 翻訳がとにかく古い上に 登場人物の名前が覚えにくい。 217 00:17:21,825 --> 00:17:23,825 レックス・フォテスキュー アディール・フォテスキュー→ 218 00:17:23,825 --> 00:17:25,825 パーシヴァル・フォテスキュー ジェニファ・フォテスキュー…。 219 00:17:25,825 --> 00:17:27,825 ああ〜…! 220 00:17:29,825 --> 00:17:32,825 (四季)フォテスキュー一家の 一族全員のフルネームを把握するのは→ 221 00:17:32,825 --> 00:17:34,825 至難の業です。 222 00:17:34,825 --> 00:17:37,825 インホテプの娘 レニセンブが登場しても まるきり頭に入ってこない。 223 00:17:37,825 --> 00:17:39,825 ああ〜…。 ハハッ…。 224 00:17:39,825 --> 00:17:45,825 日本の四季の四季くん あなた 偏見の塊なの? 225 00:17:45,825 --> 00:17:49,825 紅葉がきれいな楓さん 変わってるって言われません? 226 00:17:49,825 --> 00:17:52,825 いや よく言われますけど そちらこそ。 そちらこそ。 227 00:17:52,825 --> 00:17:54,825 いや あなたも…! はい 2人とも そこまで! 228 00:17:54,825 --> 00:17:57,825 どうしたら 初対面で そうなるんですか? 岩田先輩 遅いですよ。 229 00:17:57,825 --> 00:17:59,825 飲み会 仕切って 遅れるとか あり得なくないですか? 230 00:17:59,825 --> 00:18:03,825 岩田先生 悪いけど あなたの後輩さんに もう一つだけ言わせてもらってもいいかな? 231 00:18:03,825 --> 00:18:05,825 フォテスキュー一族は『ポケットにライ麦を』→ 232 00:18:05,825 --> 00:18:08,825 インホテプの娘 レニセンブは 『死が最後にやってくる』の登場人物。 233 00:18:08,825 --> 00:18:10,825 覚えにくい名前でも つくりものでも→ 234 00:18:10,825 --> 00:18:13,825 結局 クラシカルな翻訳ミステリ 読んでるじゃないですか! 235 00:18:15,825 --> 00:18:17,825 お待たせしました。 あっ ありがとうございます。 236 00:18:17,825 --> 00:18:19,825 生ビール 3つです。 僕やりますよ。 はい。 はい〜! 237 00:18:19,825 --> 00:18:23,825 遅れてすいませんでした! 乾杯! はい〜 乾杯。 乾杯! 238 00:18:23,825 --> 00:18:25,825 乾杯…。 すいません ボロネーゼ 3つお願いします。 239 00:18:25,825 --> 00:18:27,825 (店員)はい。 (四季・楓)はあ? 240 00:18:27,825 --> 00:18:31,825 いや ここのボロネーゼはね 家では再現できないほどの絶品なんですよ! 241 00:18:31,825 --> 00:18:34,825 僕 『クッキングパパ』 全巻 持ってるじゃないですか。 242 00:18:34,825 --> 00:18:37,825 初耳ですけど。 先輩 『クッキングパパ』の話 また今度で。 243 00:18:37,825 --> 00:18:41,825 あっ… こう見えて 高校時代 野球のバッテリー組んでたんですよ。 244 00:18:41,825 --> 00:18:43,825 へえ〜! 245 00:18:43,825 --> 00:18:46,825 それより そろそろ 事件のこと話してもいいですか? 246 00:18:46,825 --> 00:18:49,825 そうだよな。 本題は それだ。 247 00:18:49,825 --> 00:18:52,825 現場に居合わせたって聞きましたけど。 248 00:18:52,825 --> 00:18:54,825 はい。 249 00:18:55,825 --> 00:19:01,825 昨晩の代表戦の影響もあってか まだ ほとんど報道はされていませんが→ 250 00:19:01,825 --> 00:19:06,825 これは 紛れもなく… 殺人なんです。 251 00:19:10,825 --> 00:19:13,825 これが はる乃の簡単な間取りです。 252 00:19:16,825 --> 00:19:19,825 このAからVっていうのは お客さん? (四季)そうです。 253 00:19:19,825 --> 00:19:21,825 僕は Hに座っていました。 254 00:19:23,825 --> 00:19:27,825 (四季の声)代表戦が見られるお店は 満員の活況を呈していました。 255 00:19:29,825 --> 00:19:31,825 (四季の声)そして 3対3→ 256 00:19:31,825 --> 00:19:34,825 同点のまま後半戦が始まり→ 257 00:19:34,825 --> 00:19:37,825 しばらくたった午後9時 10分前。 258 00:19:37,825 --> 00:19:42,825 ここから 日本代表による 怒濤のシュート3連発が放たれます。 259 00:19:42,825 --> 00:19:46,825 ああ あの10分間は すごかった! それで? 260 00:19:46,825 --> 00:19:50,825 (四季の声)猛攻が終わって 敵がボールを支配したのは→ 261 00:19:50,825 --> 00:19:53,825 ちょうど夜の9時きっかり。 262 00:19:54,825 --> 00:19:56,825 (根津)トイレ行ってくるわ。 うん。 263 00:19:56,825 --> 00:19:59,825 (四季の声) Fに座っていた根津がトイレに立ちます。 264 00:20:02,825 --> 00:20:06,825 ああ… 根津は 僕の劇団の仲間で はる乃の常連なんですが…。 265 00:20:06,825 --> 00:20:08,825 こいつ 劇団員なんですよ。 266 00:20:08,825 --> 00:20:10,825 へえ〜! 267 00:20:10,825 --> 00:20:12,825 大事なところなんで よく聞いてくださいね。 268 00:20:12,825 --> 00:20:17,825 根津は トイレに行って3分ほどしてから 席に戻ってきました。 269 00:20:17,825 --> 00:20:19,825 🖥️(実況)揺さぶられる日本。 270 00:20:19,825 --> 00:20:21,825 🖥️ああ〜っと 縦パスが入った! 271 00:20:24,825 --> 00:20:26,825 根津。 272 00:20:29,825 --> 00:20:31,825 (四季)根津? (根津)えっ? 273 00:20:31,825 --> 00:20:33,825 トイレ 空いてた? 274 00:20:33,825 --> 00:20:35,825 ああ…。 275 00:20:40,825 --> 00:20:42,825 どうぞ。 276 00:20:45,825 --> 00:20:47,825 (根津)空いてるよ。 おう。 277 00:20:51,825 --> 00:20:55,825 (ドアノブを回す音) 278 00:20:55,825 --> 00:20:57,825 (ノック) 279 00:20:58,825 --> 00:21:00,825 (ノック) 280 00:21:01,825 --> 00:21:04,825 (四季)うわっ! えっ!? 281 00:21:06,825 --> 00:21:10,825 だ… 大丈夫ですか? 大丈夫ですか!? なんかあったんですか!? 282 00:21:10,825 --> 00:21:31,825 ♬〜 283 00:21:35,825 --> 00:21:37,825 確信しました。 284 00:21:37,825 --> 00:21:40,825 この人は既に死んでいる。 285 00:21:40,825 --> 00:21:43,825 おまえ 第一発見者だったのかよ。 286 00:21:43,825 --> 00:21:47,825 えっ それで? どうなったの? 警察呼んだの? 287 00:21:47,825 --> 00:21:52,825 まずは なるべく騒ぎにならないように 厨房に行きました。 288 00:21:52,825 --> 00:21:55,825 女将さんは 頬づえをついて→ 289 00:21:55,825 --> 00:21:58,825 スパイスを利かせた鶏料理か何かの 新メニューを→ 290 00:21:58,825 --> 00:22:00,825 紙に書き込んでいたんですけど…。 291 00:22:01,825 --> 00:22:04,825 トイレ… トイレに血だらけの男が…。 292 00:22:04,825 --> 00:22:07,825 (四季の声)僕のただならぬ様子を見た途端→ 293 00:22:07,825 --> 00:22:10,825 手元の紙を捨ててしまったんです。 294 00:22:13,825 --> 00:22:15,825 はあ…。 295 00:22:15,825 --> 00:22:19,825 それから パトカーが3台も来て 現場は封鎖。 296 00:22:19,825 --> 00:22:21,825 すぐに事情聴取が行われました。 297 00:22:23,825 --> 00:22:28,825 まず トイレまでの動線が見える男性 V。 298 00:22:29,825 --> 00:22:32,825 ハーフタイムが終わった後だから 8時半かな? 299 00:22:32,825 --> 00:22:37,825 それ以降は 9時ごろまで 誰も用を足していないと思います。 300 00:22:37,825 --> 00:22:41,825 (四季の声) 次に 僕たちの隣のテーブルの女性 I。 301 00:22:41,825 --> 00:22:48,825 日本のシュート3連発の後に 隣のテーブルの方が行った覚えはあります。 302 00:22:49,825 --> 00:22:51,825 それがお友達の根津さんだった。 303 00:22:51,825 --> 00:22:53,825 そうです。 304 00:22:53,825 --> 00:22:57,825 他には 「9時まで 店の全員が席に着いたままだった」→ 305 00:22:57,825 --> 00:23:01,825 「正直 それどころじゃなかった」と 証言が続きます。 306 00:23:01,825 --> 00:23:05,825 つまり 夜9時過ぎに遺体を発見した 四季さんを除けば→ 307 00:23:05,825 --> 00:23:08,825 最後に男性用トイレに行ったのは→ 308 00:23:08,825 --> 00:23:12,825 その直前に用を足しに行った 根津さんということになる。 309 00:23:12,825 --> 00:23:16,825 そして さらに問題なのは…。 310 00:23:19,825 --> 00:23:26,825 根津は 「黙秘します」と 一切の証言を拒否してるんです。 311 00:23:26,825 --> 00:23:30,825 そのせいで 警察に連れていかれました。 312 00:23:30,825 --> 00:23:34,825 友達が連行? 被害者の身元は? 313 00:23:34,825 --> 00:23:37,825 恐らくですが 判明していないと思います。 314 00:23:37,825 --> 00:23:41,825 「免許証も何もないですね」と話している 警官の声が聞こえましたから。 315 00:23:41,825 --> 00:23:43,825 凶器のナイフは? 316 00:23:43,825 --> 00:23:46,825 これも 鑑識の話が耳に入っちゃったんですけど→ 317 00:23:46,825 --> 00:23:48,825 被害者の男性は→ 318 00:23:48,825 --> 00:23:53,825 腰のベルトに ナイフを収納する 革ケースをつけていたそうです。 319 00:23:53,825 --> 00:23:59,825 じゃあ 犯人は 被害者の腰のナイフを奪い取って刺した? 320 00:23:59,825 --> 00:24:01,825 そうなりますね。 321 00:24:03,825 --> 00:24:06,825 四季には悪いが なんらかの理由で→ 322 00:24:06,825 --> 00:24:10,825 その根津って男が 衝動的に殺しちゃったんじゃないか? 323 00:24:10,825 --> 00:24:14,825 3分もあれば犯行には十分だし→ 324 00:24:14,825 --> 00:24:17,825 それに 黙秘ってのがな…。 325 00:24:17,825 --> 00:24:20,825 めちゃくちゃ怪しいぞ。 326 00:24:20,825 --> 00:24:24,825 根津は とてつもなく真面目な奴なんです。 327 00:24:24,825 --> 00:24:27,825 性格の良さだけは 僕が保証します。 328 00:24:27,825 --> 00:24:31,825 とても人を殺せるような奴じゃない。 329 00:24:35,825 --> 00:24:39,825 きっと 黙秘を続ける理由があるはず。 330 00:24:43,825 --> 00:24:47,825 明日 時間作れるかな? 331 00:24:47,825 --> 00:24:50,825 2人に会わせたい人がいる。 332 00:24:53,825 --> 00:24:56,825 (四季)おっきいですね。 (岩田)すごいな。 333 00:24:56,825 --> 00:25:03,825 ♬〜 334 00:25:03,825 --> 00:25:05,825 何してるんですか? 335 00:25:05,825 --> 00:25:08,825 いや その… 楓先生のご実家に 足を…。 336 00:25:08,825 --> 00:25:11,825 何 言ってるんですか。 行きますよ。 いや… ちょっと待って…! 337 00:25:12,825 --> 00:25:15,825 玄関 オッケーだし…。 338 00:25:15,825 --> 00:25:18,825 えっと キッチン トイレもオッケー。 339 00:25:18,825 --> 00:25:21,825 あっ スリッパ履くか…。 あっ 座布団…! 340 00:25:21,825 --> 00:25:23,825 (チャイム) は… はーい! 341 00:25:30,891 --> 00:25:33,891 以上が はる乃で起きた事件の概要です。 342 00:25:34,891 --> 00:25:39,891 被害者が こつぜんとトイレに現れて 同時に犯人も姿を消した。 343 00:25:39,891 --> 00:25:44,891 (四季)そして 誰も 犯人と被害者の姿を見ていない。 344 00:25:44,891 --> 00:25:47,891 作為的な違和感を感じない? 345 00:25:47,891 --> 00:25:50,891 うん…。 346 00:25:50,891 --> 00:25:56,891 はる乃か。 あそこのね もつ煮込みは最高なんだよ。 347 00:25:56,891 --> 00:25:59,891 お客さんが少なくなると→ 348 00:25:59,891 --> 00:26:03,891 勉強を教えてほしいと 女将に よーく頼まれてね。 349 00:26:03,891 --> 00:26:05,891 なんの勉強してたの? 350 00:26:05,891 --> 00:26:07,891 高卒認定試験。 351 00:26:07,891 --> 00:26:11,891 いやあ 昔 悪い男と付き合っていたようで→ 352 00:26:11,891 --> 00:26:17,891 何件もの押し込み強盗に加担させられ 逮捕。 353 00:26:17,891 --> 00:26:24,891 主犯ではなかったんだけどね 高校中退を余儀なくされたんだな。 354 00:26:24,891 --> 00:26:26,891 ボニー&クライドみたいだな。 355 00:26:26,891 --> 00:26:34,891 フフ… 小柄で身軽な女将は まさに日本のボニーだったろうね。 356 00:26:34,891 --> 00:26:38,891 女将の相棒… クライドと呼ぼうか。 357 00:26:38,891 --> 00:26:40,891 ボニー&クライドって? 358 00:26:40,891 --> 00:26:44,891 1930年代に アメリカで強盗を繰り返したカップルです。 359 00:26:44,891 --> 00:26:50,891 常連だった根津くんも よく女将と楽しげに話をしていたんだが…。 360 00:26:50,891 --> 00:26:57,891 そうか。 あそこで殺人事件が…。 361 00:27:00,891 --> 00:27:09,891 それで 楓は どんな物語を紡ぐのかな? 362 00:27:16,891 --> 00:27:19,891 根津さんは犯人ではない。 363 00:27:19,891 --> 00:27:24,891 真犯人は 女将の相棒だったクライドである。 364 00:27:24,891 --> 00:27:27,891 被害者の男は なんらかの方法で女将の過去を知り→ 365 00:27:27,891 --> 00:27:29,891 脅していた。 366 00:27:29,891 --> 00:27:34,891 耐えかねた女将は かつての相棒だったクライドに助けを求めた。 367 00:27:34,891 --> 00:27:37,891 (楓の声) 昨晩 店の客に紛れていたクライドは→ 368 00:27:37,891 --> 00:27:40,891 男を殺害し 中から鍵をかけ→ 369 00:27:40,891 --> 00:27:44,891 トイレの上部から脱出し 席に戻ったのだ。 370 00:27:44,891 --> 00:27:48,891 うん… クライドが登場するのは悪くない。 371 00:27:48,891 --> 00:27:52,891 だが 大きな矛盾がある。 372 00:27:54,891 --> 00:27:59,891 女将は クライドに助けを求めるだろうか。 373 00:27:59,891 --> 00:28:07,891 それに 苦労して手に入れた自分の城を 殺人現場に選ぶとは思えない。 374 00:28:07,891 --> 00:28:09,891 …確かに。 375 00:28:09,891 --> 00:28:16,891 要するに これ以外の物語Xが存在するんだ。 376 00:28:19,891 --> 00:28:25,891 さて 楓 香りを焚かせてくれないか。 377 00:28:25,891 --> 00:28:44,891 ♬〜 378 00:28:44,891 --> 00:28:46,891 「絵」が見えたよ。 379 00:28:48,891 --> 00:28:51,891 …やはり そうだったのか。 380 00:28:54,891 --> 00:28:57,891 トイレで絶命しているのは→ 381 00:28:57,891 --> 00:29:02,891 女将のかつての相棒 クライドだ。 382 00:29:02,891 --> 00:29:05,891 被害者は クライド…? 383 00:29:05,891 --> 00:29:07,891 えっ…? 384 00:29:08,891 --> 00:29:11,891 おじいちゃん。 今 見てる世界を教えて。 385 00:29:11,891 --> 00:29:18,891 ♬〜 386 00:29:18,891 --> 00:29:21,891 (祖父の声) 日本のシュート攻勢 真っただ中…。 387 00:29:21,891 --> 00:29:24,891 クライドが やって来た。 388 00:29:24,891 --> 00:29:28,891 目的は 女将の金だろう。 389 00:29:28,891 --> 00:29:31,891 女将を脅していたのは クライドだった…? 390 00:29:31,891 --> 00:29:39,891 彼の存在に気が付いたのは カウンター越しに その姿を見た女将だけ。 391 00:29:39,891 --> 00:29:44,891 (四季)普通 目立つ男が入ってきたら 気付くと思いますが。 392 00:29:44,891 --> 00:29:48,891 客の視線はテレビに向き→ 393 00:29:48,891 --> 00:29:57,891 あちらの四季くんは 「何を そんなに熱くなって」とでも思いながら→ 394 00:29:57,891 --> 00:30:00,891 枝豆を食べている。 395 00:30:00,891 --> 00:30:03,891 あ… あちらの四季くん…? 396 00:30:03,891 --> 00:30:06,891 つまり 誰もドアに注目なんてしていなかった。 397 00:30:06,891 --> 00:30:09,891 そのとおり。 398 00:30:09,891 --> 00:30:13,891 店内での騒動を何より恐れた女将は→ 399 00:30:13,891 --> 00:30:16,891 クライドをトイレにいざなう。 400 00:30:16,891 --> 00:30:24,891 ♬〜 401 00:30:24,891 --> 00:30:28,891 (クライド)俺とやってきたことバラしたら こんな店 すぐつぶれんぞ。 402 00:30:30,891 --> 00:30:34,891 なあ。 なあ…。 403 00:30:37,891 --> 00:30:39,891 さっさと金出せよ。 404 00:30:41,891 --> 00:30:43,891 (女将)帰って。 405 00:30:43,891 --> 00:30:51,891 ♬〜 406 00:30:51,891 --> 00:30:53,891 おめえ 死にてえのかよ? 407 00:30:57,891 --> 00:31:02,891 あんたに渡す金なんかない…! 408 00:31:07,891 --> 00:31:10,891 (祖父の声)ナイフを取り出すクライド。 409 00:31:10,891 --> 00:31:12,891 そして この時…。 410 00:31:14,891 --> 00:31:17,891 (祖父の声)根津くんが やって来た。 411 00:31:20,891 --> 00:31:24,891 (祖父の声) 女将を助けようとナイフをもぎ取った。 412 00:31:24,891 --> 00:31:26,891 (刺す音) 413 00:31:29,891 --> 00:31:31,891 (クライド)うう…。 414 00:31:31,891 --> 00:31:33,891 (根津)はっ…! 415 00:31:33,891 --> 00:31:35,891 はっ! 416 00:31:36,891 --> 00:31:40,891 勢い余って クライドの背中を刺してしまった。 417 00:31:42,891 --> 00:31:45,891 つまり… 犯人は根津さん? 418 00:31:45,891 --> 00:31:47,891 待ってください! 419 00:31:47,891 --> 00:31:49,891 女将がクライドを刺した可能性だって ありますよね? 420 00:31:49,891 --> 00:31:52,891 女将は首を絞められていたんだ。 421 00:31:52,891 --> 00:31:56,891 そんな状態で クライドの背中に ナイフを刺すのは不可能に近い。 422 00:31:56,891 --> 00:31:59,891 本当に女将が首を絞められてたかは 分かりませんよね? 423 00:31:59,891 --> 00:32:01,891 いや 断言できる。 424 00:32:04,891 --> 00:32:10,891 楓 女将になったつもりで 痛む首を触ってみてくれないか? 425 00:32:11,891 --> 00:32:15,891 そして 机で その腕を支えると…。 426 00:32:26,891 --> 00:32:30,891 (岩田)女将は 頬づえをついていたわけじゃなかった…。 427 00:32:31,891 --> 00:32:35,891 ですが! 根津が刺したって確証は どこにもない。 428 00:32:35,891 --> 00:32:37,891 じゃあ なんで黙秘なんか…。 429 00:32:37,891 --> 00:32:41,891 では 仮に… 仮に 根津がクライドを刺したとして→ 430 00:32:41,891 --> 00:32:44,891 あいつは なぜ 僕を男性用トイレに向かわせたんです? 431 00:32:44,891 --> 00:32:48,891 男性用トイレであれば 問題ないはずだった。 432 00:32:48,891 --> 00:32:54,891 四季くん 昨晩 はる乃にいた客の男女比は? 433 00:32:54,891 --> 00:32:58,891 男性客が18名と 女性客が4名です。 434 00:32:58,891 --> 00:33:00,891 8割以上が男性客…。 435 00:33:01,891 --> 00:33:06,891 男性用トイレは 試合が終わった後 客が殺到する可能性が高い。 436 00:33:06,891 --> 00:33:10,891 では なぜ クライドは 男性用トイレで見つかった? 437 00:33:10,891 --> 00:33:14,891 (岩田)それは 男性用トイレが 犯行現場だったからなんじゃ…。 438 00:33:14,891 --> 00:33:18,891 だとしたら 根津さんは「空いてるよ」なんて言うかな? 439 00:33:18,891 --> 00:33:21,891 (岩田)というと つまり…? 440 00:33:21,891 --> 00:33:24,891 (四季の声)あいつは なぜ 僕を男性用トイレに向かわせたんです? 441 00:33:24,891 --> 00:33:27,891 (祖父の声) 男性用トイレであれば 問題ないはずだった。 442 00:33:27,891 --> 00:33:29,891 (岩田の声)8割以上が男性客…。 443 00:33:31,891 --> 00:33:35,891 クライドは 女性用トイレにいるはずだった。 444 00:33:36,891 --> 00:33:38,891 (女将)大丈夫? 大丈夫? 445 00:33:38,891 --> 00:33:42,891 (楓の声)根津さんが刺した後 クライドは まだ生きていて…。 446 00:33:42,891 --> 00:33:45,891 女将は 少しでも人目を避けようと→ 447 00:33:45,891 --> 00:33:50,891 まだ息があるクライドを 女性用トイレに連れ込んだんじゃないかな。 448 00:33:53,891 --> 00:33:56,891 (荒い息) 449 00:33:56,891 --> 00:33:59,891 大丈夫だから。 450 00:33:59,891 --> 00:34:02,891 あとは なんとかするから…。 451 00:34:02,891 --> 00:34:04,891 戻って。 452 00:34:06,891 --> 00:34:08,891 (楓の声)根津さんは→ 453 00:34:08,891 --> 00:34:12,891 クライドが女性用トイレにいるのを見てから 席に戻った。 454 00:34:12,891 --> 00:34:20,891 ♬〜 455 00:34:20,891 --> 00:34:26,891 (祖父の声)しかし クライドは 再び凶暴性をあらわにさせた。 456 00:34:26,891 --> 00:34:28,891 (女将)うわあっ! 457 00:34:32,891 --> 00:34:34,891 (刺さる音) (クライド)ああっ…!! 458 00:34:34,891 --> 00:34:39,891 (祖父の声)女将が押しのけた勢いで 背中のナイフが深くまで刺さり→ 459 00:34:39,891 --> 00:34:43,891 クライドの動脈を完全に断ち切った。 460 00:34:43,891 --> 00:34:49,891 ♬〜 461 00:34:49,891 --> 00:34:51,891 (施錠音) 462 00:34:51,891 --> 00:34:55,891 (祖父の声) 女将は 男性用トイレの鍵を内側からかけ→ 463 00:34:55,891 --> 00:34:57,891 上から脱出した。 464 00:34:59,891 --> 00:35:03,891 彼女がボニーだった頃のようにね。 465 00:35:03,891 --> 00:35:06,891 じゃあ 女将の正当防衛…? 466 00:35:06,891 --> 00:35:08,891 そうかもしれない。 467 00:35:08,891 --> 00:35:13,891 しかしね 彼の傷は 根津くんに刺された時点で→ 468 00:35:13,891 --> 00:35:18,891 すでに致命的なものだったという 可能性もある。 469 00:35:18,891 --> 00:35:22,891 (岩田)あれ? でも 女将がトイレに入ったとか出てきたとか→ 470 00:35:22,891 --> 00:35:24,891 そういう証言 ないんですよね? 471 00:35:24,891 --> 00:35:28,891 彼女は トイレでの出来事を知っていたはずだ。 472 00:35:28,891 --> 00:35:33,891 四季くん 君は それを裏付けるものを見ている。 473 00:35:33,891 --> 00:35:35,891 え…? 474 00:35:42,891 --> 00:35:47,891 クライドがいる男性用トイレを 使用禁止にしたい時→ 475 00:35:47,891 --> 00:35:49,891 楓なら どうする? 476 00:35:50,891 --> 00:35:53,891 「故障のため使用禁止」みたいな貼り紙を…。 477 00:35:54,891 --> 00:35:57,891 こしょう! そのとおり。 478 00:35:57,891 --> 00:36:03,891 慌てていた女将は 「故障」という漢字が出てこなかった。 479 00:36:03,891 --> 00:36:07,891 そこで やむを得ず平仮名で書いたんだ。 480 00:36:07,891 --> 00:36:09,891 女将としては この段階で→ 481 00:36:09,891 --> 00:36:13,891 トイレの注意書きを読まれるわけには いかなかった。 482 00:36:13,891 --> 00:36:16,891 だから女将は 紙を捨てるしかなかった。 483 00:36:18,891 --> 00:36:21,891 じゃあ なんで 誰も女将の姿を見ていないんですか? 484 00:36:26,891 --> 00:36:29,891 トイレから出てきた女将は→ 485 00:36:29,891 --> 00:36:35,891 クライドの所持品が入っている くず箱を抱えていたんだ。 486 00:36:35,891 --> 00:36:37,891 いつものようにね。 487 00:36:37,891 --> 00:36:43,891 トイレ整備を終えて 出てくる時と同じ いつもどおりの光景…。 488 00:36:45,891 --> 00:36:49,891 チェスタトンの『見えない人』。 489 00:36:52,891 --> 00:36:57,891 僕たちは 女将を見てないんじゃない。 印象に残っていないだけだった。 490 00:36:57,891 --> 00:37:00,891 でも 根津さんだけは違った。 491 00:37:00,891 --> 00:37:02,891 根津。 492 00:37:03,891 --> 00:37:05,891 (四季)根津? (根津)えっ? 493 00:37:05,891 --> 00:37:07,891 トイレ 空いてた? 494 00:37:07,891 --> 00:37:09,891 ああ…。 495 00:37:09,891 --> 00:37:11,891 (祖父の声)トイレには 女将とクライドがいる。 496 00:37:11,891 --> 00:37:14,891 根津くんは迷ったはずだ。 497 00:37:14,891 --> 00:37:19,891 ちょうど出てきた女将が 「心配しないで」とうなずくが→ 498 00:37:19,891 --> 00:37:25,891 動揺していた根津くんは 「もう大丈夫」と受け取ってしまった。 499 00:37:25,891 --> 00:37:27,891 どうぞ。 500 00:37:27,891 --> 00:37:29,891 (祖父の声) あの男がいるのは女性トイレのはず。 501 00:37:29,891 --> 00:37:31,891 だから…。 502 00:37:31,891 --> 00:37:33,891 空いてるよ。 503 00:37:35,891 --> 00:37:39,891 (祖父の声)誰もいないはずの 男性用トイレならば… と思い→ 504 00:37:39,891 --> 00:37:43,891 やむなく四季くんをトイレに向かわせた。 505 00:37:47,891 --> 00:37:53,891 でも クライドは 女性用トイレではなく 男性用トイレで発見された。 506 00:37:53,891 --> 00:37:55,891 ᗕ(巡査)被害者は40代前後の男性。 507 00:37:55,891 --> 00:37:58,891 男性用トイレにて 背中に刃物が刺さったまま…。 508 00:37:58,891 --> 00:38:01,891 (祖父の声)根津くんは思ったはずだ。 509 00:38:01,891 --> 00:38:07,891 あの後 女将が とどめを刺してしまったんじゃないか とね。 510 00:38:07,891 --> 00:38:09,891 すいません…。 511 00:38:10,891 --> 00:38:13,891 でも 理由が分かりません。 512 00:38:13,891 --> 00:38:15,891 なんで 根津は黙秘なんか…。 513 00:38:17,891 --> 00:38:21,891 動機は 温度を持つ。 514 00:38:21,891 --> 00:38:28,891 襲われている女将を見た根津さんは 思ったんじゃないかな。 515 00:38:28,891 --> 00:38:33,891 女将と 女将が何よりも大切にしてる店を 守りたいって。 516 00:38:33,891 --> 00:38:35,891 フフフフフ…。 517 00:38:38,891 --> 00:38:42,891 (楓の声)気付いた時には ナイフを奪っていたのかもしれない。 518 00:38:45,891 --> 00:38:52,891 根津さんは 女将が犯人だと思ったからこそ→ 519 00:38:52,891 --> 00:38:54,891 いまだに黙秘を続けてる。 520 00:38:57,891 --> 00:39:01,891 そこまでして… なんで…。 521 00:39:03,891 --> 00:39:07,891 好き… だったのかも。 522 00:39:12,891 --> 00:39:18,891 女将と話す時の彼の笑顔は 今でも覚えているよ。 523 00:39:19,891 --> 00:39:25,891 根津くんは 彼女が現れない限り→ 524 00:39:25,891 --> 00:39:31,891 何も話すまいと心に誓っている。 525 00:39:34,891 --> 00:39:40,891 女将が泣いている声さえ 聞こえてくるじゃないか。 526 00:39:41,891 --> 00:39:44,891 故意に刺したわけじゃないんです。 527 00:39:46,891 --> 00:39:49,891 彼は悪くないんです。 528 00:39:50,891 --> 00:39:55,891 楓。 女将にハンカチを。 529 00:39:55,891 --> 00:40:09,891 ♬〜 530 00:40:09,891 --> 00:40:13,891 いや… 楓先生に あんなすごいおじいさんがいたなんてな。 531 00:40:13,891 --> 00:40:15,891 フフフフ…。 532 00:40:15,891 --> 00:40:19,891 僕 信じてる言葉があるんです。 533 00:40:20,891 --> 00:40:23,891 「今 起こっていることが全て正解」。 534 00:40:23,891 --> 00:40:26,891 この言葉を 僕は こう解釈します。 535 00:40:26,891 --> 00:40:32,891 「全ての出来事は物語であり かつ ハッピーエンドなんだ」って。 536 00:40:35,891 --> 00:40:37,891 ふ〜ん。 537 00:40:39,891 --> 00:40:44,891 《「世の中で起こる全ての出来事は物語」》 538 00:40:44,891 --> 00:40:47,891 《おじいちゃんが よく口にしていた言葉》 539 00:40:47,891 --> 00:40:54,891 ♬〜 540 00:40:54,891 --> 00:40:59,891 《でも 違和感がある…》 541 00:41:15,891 --> 00:41:17,891 (息を吐く音) 542 00:41:24,891 --> 00:41:40,891 ♬〜 543 00:41:40,891 --> 00:41:42,891 (救急隊員) 「血まみれの楓が ここに倒れている」と→ 544 00:41:42,891 --> 00:41:44,891 通報がありまして。 545 00:41:45,891 --> 00:41:53,891 〈私の知る限り それが おじいちゃんが見た 最初の幻視だった〉 546 00:42:12,891 --> 00:42:14,891 楓か? 547 00:42:16,891 --> 00:42:19,891 うん。 ただいま。 548 00:42:25,891 --> 00:42:30,891 話があるのかな? その顔を見れば分かる。 549 00:42:45,891 --> 00:42:47,891 おじいちゃんさ…。 550 00:42:55,891 --> 00:42:58,891 おじいちゃんさ…→ 551 00:42:58,891 --> 00:43:06,891 本当は 自分が病気だってこと 分かってるんじゃない? 552 00:43:10,891 --> 00:43:14,891 現実じゃなくて…→ 553 00:43:14,891 --> 00:43:21,891 いつも 幻視を見てるってこと→ 554 00:43:21,891 --> 00:43:26,891 本当は自覚してるんじゃない? 555 00:43:28,891 --> 00:43:35,891 でも 自覚してないふりをしてるんじゃない? 556 00:43:38,891 --> 00:43:41,891 楓の言うとおりだ。 557 00:43:41,891 --> 00:43:47,891 僕は紛れもなく レビー小体型認知症の患者だよ。 558 00:44:01,891 --> 00:44:05,891 ある朝 この柱を見ると→ 559 00:44:05,891 --> 00:44:09,891 まるで 腕のいい宮大工が みこしに彫ったかのような→ 560 00:44:09,891 --> 00:44:15,891 細かい彫刻が施されていたことがあってね。 561 00:44:17,891 --> 00:44:22,891 だが 触ってみると 彫られている感触は まるでない。 562 00:44:22,891 --> 00:44:25,891 極めて滑らかなんだ。 563 00:44:25,891 --> 00:44:31,891 一晩で こんなに精巧な彫刻を施すのは 到底不可能だ。 564 00:44:31,891 --> 00:44:35,891 ということは…→ 565 00:44:35,891 --> 00:44:41,891 僕の視覚は まるで信用ならないというわけだ。 566 00:44:41,891 --> 00:44:46,891 いやあ… この体に何が起きているのか 気になってね。 567 00:44:46,891 --> 00:44:49,891 いろんな本をめくっていくと→ 568 00:44:49,891 --> 00:44:57,891 僕の脳には 緋色のレビー小体が 広がっていると確信したんだ。 569 00:45:00,891 --> 00:45:05,891 ポアロが灰色の脳細胞を持っているなら→ 570 00:45:05,891 --> 00:45:11,891 僕は緋色の脳細胞の持ち主というわけだ。 571 00:45:11,891 --> 00:45:19,891 じゃあ… じゃあ なんで…→ 572 00:45:19,891 --> 00:45:25,891 いつも 私に幻視の話を わざわざ聞かせてくるの? 573 00:45:25,891 --> 00:45:32,891 僕が幻視の話をしている時 楓は声を出して 相づちを打ってくれる。 574 00:45:32,891 --> 00:45:38,891 その表情をくるくる変えながら 笑顔を見せてくれる。 575 00:45:38,891 --> 00:45:45,891 そうすると僕は 楓の実在を 確信を持って感じ取れるんだ。 576 00:45:45,891 --> 00:45:48,891 えっ… どうして? 577 00:45:48,891 --> 00:45:57,891 私は いつまでも… ずっと おじいちゃんのそばにいるよ? 578 00:45:59,891 --> 00:46:03,891 いやあ… こう言えば 分かってくれるかなあ。 579 00:46:04,891 --> 00:46:07,891 僕は以前 楓に向かって→ 580 00:46:07,891 --> 00:46:13,891 正直 あまり長くはないであろう 僕の今後の身の振り方について→ 581 00:46:13,891 --> 00:46:17,891 とことん本音を語ったことがあったんだ。 582 00:46:17,891 --> 00:46:22,891 その時は自分でも 体調がいいと うぬぼれていてね。 583 00:46:22,891 --> 00:46:26,891 1時間ほど たっぷり話したかな。 584 00:46:27,891 --> 00:46:32,891 ところが なぜか 楓は無言のままで→ 585 00:46:32,891 --> 00:46:36,891 突然 ふっと消えてしまった。 586 00:46:39,891 --> 00:46:44,891 その楓は… 幻視だったんだ。 587 00:46:49,891 --> 00:46:55,891 こんなにみじめで 悲しいことはないじゃないか。 588 00:46:55,891 --> 00:47:01,891 ♬〜 589 00:47:01,891 --> 00:47:07,891 以来 僕は 病気の話は 自らすまいと決めたんだ。 590 00:47:07,891 --> 00:47:15,891 まともな会話が成立しない認知症の老人だと 思われたとしても仕方がない…。 591 00:47:15,891 --> 00:47:17,891 そう思ったんだ。 592 00:47:17,891 --> 00:47:23,891 ♬〜 593 00:47:23,891 --> 00:47:28,891 《気付いてあげられなくて ごめんなさい》 594 00:47:30,891 --> 00:47:34,891 《おじいちゃんは 知性を失ったわけじゃなかった》 595 00:47:36,891 --> 00:47:42,891 《私よりもずっと 病気を受け入れてたんだ》