1 00:00:07,000 --> 00:00:12,000 (男)死にたいだなんて そんな悲しいこと言わないでくださいよ。 2 00:00:14,000 --> 00:00:16,000 (男)おかあさん。 3 00:00:16,000 --> 00:00:23,000 ♬〜 4 00:00:23,000 --> 00:00:25,000 (男)まずは…。 5 00:00:30,000 --> 00:00:33,000 (男)悩みを整理しましょう。 6 00:00:33,000 --> 00:00:35,000 (ひばり)はい。 7 00:00:37,000 --> 00:00:43,000 (男)「あいつなんか いなくなればいいのに」。 8 00:00:43,000 --> 00:00:45,000 そう思っている人物はいますか? 9 00:00:45,000 --> 00:00:49,000 いるといえばいます。 10 00:00:49,000 --> 00:00:51,000 っていうか人間→ 11 00:00:51,000 --> 00:00:54,000 そんな感情がないほうが おかしくないですか? 12 00:00:55,000 --> 00:00:58,000 (男)じゃあ 要するに あなたは→ 13 00:00:58,000 --> 00:01:03,000 その人物に消えてほしいと 願っているわけだ。 14 00:01:04,000 --> 00:01:07,000 それは 少し違います。 15 00:01:07,000 --> 00:01:10,000 (ペンで机をたたく音) 16 00:01:10,000 --> 00:01:14,000 いや…。 (ペンで机をたたく音) 17 00:01:14,000 --> 00:01:17,000 そういう気持ちが…→ 18 00:01:17,000 --> 00:01:20,000 なくはないかもしれません…。 19 00:01:20,000 --> 00:01:23,000 (ペンで机をたたく音) 20 00:01:24,000 --> 00:01:27,000 (男)正直で結構です。 21 00:01:27,000 --> 00:01:32,000 では あなたの その感情を→ 22 00:01:32,000 --> 00:01:36,000 端的に表現しましょう。 23 00:01:36,000 --> 00:01:39,000 いいですか? それはね→ 24 00:01:39,000 --> 00:01:41,000 殺意です。 25 00:01:41,000 --> 00:01:49,000 ♬〜 26 00:01:50,000 --> 00:01:52,000 (ひばりがワインを飲む音) 27 00:01:55,000 --> 00:01:57,000 (美咲)告白された!? 28 00:01:59,000 --> 00:02:01,000 えっ… 四季くんから? 29 00:02:01,000 --> 00:02:03,000 えっ… で? えっ? 30 00:02:03,000 --> 00:02:07,000 (楓)ん? 「で?」って? それだけ。 31 00:02:07,000 --> 00:02:10,000 えっ? ちょっと待って。 待って待って…。 えっ… 何? それ。 どういうこと? 32 00:02:10,000 --> 00:02:12,000 どういうことって? 33 00:02:12,000 --> 00:02:15,000 でも それ以上 何も言われてないし。 34 00:02:15,000 --> 00:02:19,000 はあ はあ はあ… ああ…。 35 00:02:19,000 --> 00:02:23,000 で? 楓は どうなの? 好きなの? 36 00:02:23,000 --> 00:02:26,000 好きっていうか…。 37 00:02:26,000 --> 00:02:31,000 一緒にいて心地いいし 安心できるんだけど→ 38 00:02:31,000 --> 00:02:36,000 でも それって 岩田先生と3人でいる時のことであって→ 39 00:02:36,000 --> 00:02:39,000 まあ 好きなのかどうか… う〜ん…。 40 00:02:39,000 --> 00:02:42,000 岩田先生ねえ…。 41 00:02:42,000 --> 00:02:45,000 ミステリー好きで毒舌な四季くんか→ 42 00:02:45,000 --> 00:02:49,000 爽やかスマイルで真っすぐな岩田先生か。 43 00:02:49,000 --> 00:02:52,000 まだ選べないってことね。 フフッ…。 44 00:02:56,000 --> 00:02:58,000 (四季)抜け駆けしちゃって すいません。 45 00:02:59,000 --> 00:03:01,000 (岩田)フッ…。 46 00:03:01,000 --> 00:03:03,000 変なとこ律義だよな。 47 00:03:05,000 --> 00:03:11,000 だって 正々堂々 いきたいじゃないですか。 48 00:03:14,000 --> 00:03:17,000 そういうところかもな。 49 00:03:17,000 --> 00:03:20,000 えっ? いや…。 50 00:03:21,000 --> 00:03:24,000 正々堂々な。 51 00:03:24,000 --> 00:03:31,000 ♬〜 52 00:03:31,000 --> 00:03:34,000 いい球 投げますね。 53 00:03:34,000 --> 00:03:40,000 ♬〜 54 00:03:40,000 --> 00:03:42,000 遠くまで ありがとうございます。 55 00:03:42,000 --> 00:03:45,000 (城之内)いやあ〜 碑文谷って初めて来ましたけど→ 56 00:03:45,000 --> 00:03:47,000 いい所ですね! 57 00:03:47,000 --> 00:03:50,000 (我妻)最近 何するにもついてくるんですよ こいつ。 58 00:03:50,000 --> 00:03:54,000 だって 師匠と弟子の感動の再会 見たいじゃないですか。 59 00:03:54,000 --> 00:03:57,000 祖父も とっても楽しみにしてました。 どうぞ。 60 00:03:57,000 --> 00:03:59,000 (我妻・城之内)お邪魔します。 61 00:04:05,000 --> 00:04:09,000 おじいちゃん 我妻さんたち いらっしゃったよ。 62 00:04:17,000 --> 00:04:19,000 あっ… どうぞ。 どうぞ。 63 00:04:28,000 --> 00:04:33,000 あの… おじいさま だいぶ具合が悪いのでは…? 64 00:04:33,000 --> 00:04:35,000 出直したほうがいいですか? 65 00:04:35,000 --> 00:04:37,000 あっ いや あの…→ 66 00:04:37,000 --> 00:04:44,000 祖父は今 幼い頃の私を横に座らせて 『こいのぼり』を弾いてるんだと思います。 67 00:04:44,000 --> 00:04:48,000 あの… そういう夢を見てるんだと思います。 68 00:04:50,000 --> 00:04:53,000 あっ でも… もうすぐ帰ってくると思います。 69 00:04:54,000 --> 00:04:57,000 あっ すいません! 荷物 よかったら こちらに…。 70 00:04:57,000 --> 00:04:59,000 (城之内)ああ… すいません。 すいません ごめんなさい。 71 00:04:59,000 --> 00:05:01,000 (城之内)よかったら これ…。 ありがとうございます。 72 00:05:08,000 --> 00:05:11,000 ご無沙汰してます。 まどふき先生。 73 00:05:22,000 --> 00:05:24,000 (祖父)我妻くん! 74 00:05:24,000 --> 00:05:26,000 はい! おお〜! 75 00:05:26,000 --> 00:05:32,000 1年間 僕が薦めたミステリとSFを 50冊以上読破した→ 76 00:05:32,000 --> 00:05:36,000 ミステリ好きの我妻くんだ! 50冊…? 77 00:05:37,000 --> 00:05:39,000 来てくれて ありがとう! 78 00:05:39,000 --> 00:05:42,000 お会いできて うれしいです。 おお…! 79 00:05:43,000 --> 00:05:46,000 先生 紹介させてください。 80 00:05:46,000 --> 00:05:48,000 僕の相棒です。 81 00:05:48,000 --> 00:05:50,000 初めまして 城之内といいます。 82 00:05:50,000 --> 00:05:52,000 ジョーって呼んでください。 83 00:05:52,000 --> 00:05:57,000 こう見えて帰国子女でしてね 5カ国語を操る語学の天才なんです。 84 00:05:57,000 --> 00:05:59,000 そうだったんですか! 85 00:05:59,000 --> 00:06:02,000 我妻さん。 「こう見えて」は余計ですけどね。 86 00:06:02,000 --> 00:06:05,000 頼りになる相棒を持ったな。 87 00:06:05,000 --> 00:06:07,000 はい。 (城之内)はい。 88 00:06:07,000 --> 00:06:11,000 (一同の笑い声) 89 00:06:12,000 --> 00:06:15,000 (振り子の音) 90 00:06:15,000 --> 00:06:17,000 (風鈴の音) 91 00:06:17,000 --> 00:06:20,000 懐かしいなあ 逆上がり特訓。 92 00:06:20,000 --> 00:06:23,000 今でも覚えてますよ。 フフフ…。 93 00:06:25,000 --> 00:06:28,000 あのな 蹴り上げ… うん。 94 00:06:28,000 --> 00:06:32,000 ここの足の蹴り上げを もっと ドヒャッといくんだ。 95 00:06:32,000 --> 00:06:35,000 (祖父の声)あの頃と変わらない→ 96 00:06:35,000 --> 00:06:39,000 真っすぐな目をしているねえ。 ハハハ…。 97 00:06:39,000 --> 00:06:46,000 名探偵を夢見ていた 我妻少年のまんまだ。 98 00:06:46,000 --> 00:06:51,000 あの頃 僕の夢を笑わなかったのは 先生だけでした。 99 00:06:52,000 --> 00:06:55,000 かなえることはできませんでしたが…。 100 00:06:55,000 --> 00:06:59,000 人生は いつもままならない。 101 00:06:59,000 --> 00:07:01,000 それでも…。 102 00:07:02,000 --> 00:07:06,000 それでも前を向き 突き進むべきだ。 103 00:07:06,000 --> 00:07:10,000 いや 突き進まなければならない。 104 00:07:10,000 --> 00:07:12,000 分かったか? よしよし…。 105 00:07:13,000 --> 00:07:18,000 我妻くん 君は突き進んできたはずだ。 106 00:07:18,000 --> 00:07:21,000 その真っすぐな目を見れば分かる。 107 00:07:23,000 --> 00:07:30,000 君が これまで歩んできた道のりは 幸せばかりじゃなかったかもしれない。 108 00:07:30,000 --> 00:07:37,000 でも だからこそ 今の君がいるんだ。 109 00:07:37,000 --> 00:07:46,000 ♬〜 110 00:07:48,000 --> 00:07:50,000 楓さん。 はい。 111 00:07:50,000 --> 00:07:53,000 手伝いまーす! えっ いや 大丈夫ですよ。 112 00:07:53,000 --> 00:07:56,000 ほら 恩師と2人きりにしてあげたいなって。 113 00:07:56,000 --> 00:07:58,000 僕 そういうところ 気が利くんで。 フフフ…。 114 00:07:58,000 --> 00:08:00,000 じゃあ お言葉に甘えて。 115 00:08:00,000 --> 00:08:02,000 Djamelo a m! 116 00:08:02,000 --> 00:08:04,000 えっ? すごい! 117 00:08:04,000 --> 00:08:06,000 フフフフ…! えっ 何語ですか? 118 00:08:06,000 --> 00:08:09,000 スペイン語です。 日本語で「任せて」って意味なんですよ。 119 00:08:09,000 --> 00:08:11,000 へえ〜! 120 00:08:12,000 --> 00:08:17,000 我妻さん 「先生は自分の人生の一部だ」 って言ってました。 121 00:08:17,000 --> 00:08:20,000 へえ〜 それ聞いたら 絶対喜びます。 122 00:08:31,000 --> 00:08:38,000 かつての教え子が 自分の人生を歩む。 123 00:08:38,000 --> 00:08:45,000 その姿を見るというのは この上なく幸せなことだ。 124 00:08:45,000 --> 00:08:55,000 孫であり 教え子でもある楓にも 自分の人生を歩んでほしいんだが→ 125 00:08:55,000 --> 00:09:01,000 僕がその時間を奪っていないか心配でね。 126 00:09:01,000 --> 00:09:06,000 あの子には ずっと未来を見ていてほしいんだ。 127 00:09:08,000 --> 00:09:17,000 残される寂しさというのは もう十分だろうからね。 128 00:09:35,000 --> 00:09:37,000 (ドアの開く音) 129 00:09:37,000 --> 00:09:39,000 (岩田)ひばりさん。 130 00:09:41,000 --> 00:09:45,000 (岩田)ひばりさん? 大丈夫ですか? なんか困ったことでも…。 131 00:09:45,000 --> 00:09:47,000 ううん。 大丈夫。 132 00:09:47,000 --> 00:09:50,000 これからランニング? いってらっしゃい。 133 00:09:50,000 --> 00:09:52,000 はい! いってきます! 134 00:09:52,000 --> 00:10:00,000 ♬〜 135 00:10:00,000 --> 00:10:05,000 (美咲)すずちゃん。 無理はしなくていいんだよ。 136 00:10:05,000 --> 00:10:12,000 でもね 友達みんな すずちゃんが来るの 待ってるよ。 137 00:10:23,000 --> 00:10:25,000 『怪人二十面相』!? 138 00:10:26,000 --> 00:10:28,000 (小林)あっ… えっ これですか? 139 00:10:28,000 --> 00:10:30,000 知ってます? 140 00:10:30,000 --> 00:10:32,000 俺 今 読んでんだよ。 141 00:10:34,000 --> 00:10:37,000 えっ? 奇遇ですね。 (岩田)うん。 142 00:10:37,000 --> 00:10:40,000 乱歩 好きなんですか? 143 00:10:40,000 --> 00:10:44,000 好きっていうか… 薦めてもらったんだ。 144 00:10:44,000 --> 00:10:46,000 名探偵に。 145 00:10:46,000 --> 00:10:48,000 名探偵? 146 00:10:49,000 --> 00:10:52,000 (美咲)ありがとう。 うん。 147 00:10:58,000 --> 00:11:00,000 (岩田)ありがとうございます。 148 00:11:01,000 --> 00:11:03,000 (四季)ありがとうございます。 149 00:11:12,000 --> 00:11:14,000 (せき払い) 150 00:11:14,000 --> 00:11:18,000 皆さん 本日は お集まりいただき ありがとうございます。 151 00:11:18,000 --> 00:11:21,000 まず 紹介すべきは 彼。 152 00:11:21,000 --> 00:11:25,000 なんと ミステリーな話を抱えてるみたいなんです。 153 00:11:25,000 --> 00:11:28,000 ミステリな話…。 (岩田)うん。 154 00:11:28,000 --> 00:11:31,000 あっ ほら 僕 碑文谷さんに弟子入りしたじゃないですか。 155 00:11:31,000 --> 00:11:36,000 えっ? 初耳ですけど。 えっ? でしたっけ? 156 00:11:36,000 --> 00:11:39,000 でね 彼なんですけど→ 157 00:11:39,000 --> 00:11:45,000 碑文谷さんにお借りしていた 『怪人二十面相』を彼も読んでいたんです。 158 00:11:45,000 --> 00:11:48,000 しかも… 名前は? 159 00:11:49,000 --> 00:11:51,000 小林です。 160 00:11:51,000 --> 00:11:54,000 (楓・四季)小林少年!? 161 00:11:54,000 --> 00:11:57,000 (美咲)小林少年って 少年探偵団のリーダーの? 162 00:11:57,000 --> 00:12:00,000 (楓・四季)小林芳雄。 163 00:12:00,000 --> 00:12:03,000 (岩田)「りんごのようにつやつやした頬の」…。 164 00:12:05,000 --> 00:12:07,000 …なんだっけ? 165 00:12:08,000 --> 00:12:12,000 (小林)「目の大きい 12〜13歳の少年が立っていました」。 166 00:12:12,000 --> 00:12:14,000 何? それ。 167 00:12:14,000 --> 00:12:17,000 小林少年の登場シーンですね。 (美咲)えっ 暗記してんの!? 168 00:12:17,000 --> 00:12:20,000 まさか みんな ミステリーマニア? 169 00:12:20,000 --> 00:12:22,000 です! 170 00:12:22,000 --> 00:12:24,000 先輩は 「ミステリー」って言ってる時点で まだまだです。 171 00:12:24,000 --> 00:12:26,000 一緒だろ。 全然違います。 172 00:12:26,000 --> 00:12:29,000 「ミステリ」は 推理や探偵ものの事件を想起させますが→ 173 00:12:29,000 --> 00:12:33,000 「ミステリー」は SF ホラーサスペンスなどを含みます。 174 00:12:33,000 --> 00:12:36,000 つまり ミステリーは 言葉の指す対象が広すぎる。 175 00:12:36,000 --> 00:12:38,000 細かいなあ…。 176 00:12:38,000 --> 00:12:40,000 (楓・四季)大事なことです。 177 00:12:43,000 --> 00:12:46,000 そもそも 『怪人二十面相』しか読んでないですよね? 178 00:12:46,000 --> 00:12:50,000 なんだよ 悪いか? 鋭意努力中だ! 179 00:12:50,000 --> 00:12:55,000 傑作選も おすすめですよ。 『江戸川乱歩傑作選』。 新潮社文庫の。 180 00:12:55,000 --> 00:12:59,000 うん 新潮社! 181 00:12:59,000 --> 00:13:02,000 ここで老舗レーベルの名前が出るとは。 182 00:13:02,000 --> 00:13:06,000 (岩田)大人ぶりやがって。 ってか 何年生だっけ? 183 00:13:06,000 --> 00:13:09,000 (小林)高校2年です。 イエイ。 184 00:13:09,000 --> 00:13:12,000 (一同の笑い声) 185 00:13:12,000 --> 00:13:14,000 ってか… ってか そんなことより→ 186 00:13:14,000 --> 00:13:19,000 こちらには 明智小五郎にも負けない 名探偵がいるって聞いたんですけど…。 187 00:13:19,000 --> 00:13:23,000 実はね 小林くん 名探偵は祖父なの。 188 00:13:26,000 --> 00:13:29,000 (風鈴の音) 189 00:13:32,825 --> 00:13:34,825 (風鈴の音) 190 00:13:34,825 --> 00:13:39,825 ねえ ミステリな話があるんだよね? よかったら 聞かせてくれない? 191 00:13:39,825 --> 00:13:41,825 …はい! 192 00:13:42,825 --> 00:13:45,825 (小林)小学生の頃 毎年夏休みに→ 193 00:13:45,825 --> 00:13:49,825 家族で祖父母の家に行ってました。 194 00:13:49,825 --> 00:13:52,825 (岩田)いい写真だな。 195 00:13:53,825 --> 00:13:57,825 (小林)いつもは すぐ祖父母の家に行くんですけど→ 196 00:13:57,825 --> 00:14:00,825 その年は 空港に着くなり→ 197 00:14:00,825 --> 00:14:05,825 父が 「できれば すぐに 予約をお願いします」って→ 198 00:14:05,825 --> 00:14:08,825 どこかに電話してたんです。 199 00:14:08,825 --> 00:14:10,825 すぐにって なんの予約? 200 00:14:10,825 --> 00:14:12,825 乗馬でした。 201 00:14:12,825 --> 00:14:16,825 「じょうば」って あの 馬に乗る あれか? 202 00:14:16,825 --> 00:14:19,825 (四季)いやいや 他に何があるんですか。 ハハッ…。 203 00:14:19,825 --> 00:14:25,825 僕 その前の年に 馬から落ちちゃって…。 204 00:14:25,825 --> 00:14:28,825 それが軽いトラウマになってたんです。 205 00:14:28,825 --> 00:14:33,825 ん? それでも ご両親は 初日に乗馬の予約したんだ? 206 00:14:33,825 --> 00:14:35,825 はい。 207 00:14:35,825 --> 00:14:41,825 それで 僕が行かないって言ったら ホテルに連れていかれました。 208 00:14:41,825 --> 00:14:44,825 「ここで留守番してて。 今日は ここに泊まるから」って。 209 00:14:44,825 --> 00:14:48,825 (岩田)ふーん…。 ちゃんと留守番できたのか? 小林少年。 210 00:14:48,825 --> 00:14:51,825 (四季)ちょっと…。 いや…。 211 00:14:51,825 --> 00:14:57,825 実は ホテルを抜け出して 祖父母の家に…。 212 00:14:57,825 --> 00:15:00,825 小学生一人で? 213 00:15:00,825 --> 00:15:02,825 早く2人に会いたかったんです。 214 00:15:02,825 --> 00:15:04,825 フフフフ…。 215 00:15:04,825 --> 00:15:06,825 大好きだったんだ。 216 00:15:07,825 --> 00:15:14,825 祖父は昔から 広い庭で よくキャッチボールをしてくれました。 217 00:15:16,825 --> 00:15:20,825 祖母は 手相を見るのが好きで…。 218 00:15:24,825 --> 00:15:29,825 (小林の祖母)みんなから ずっと好かれる子だ。 手が教えてくれる。 219 00:15:29,825 --> 00:15:36,825 いいことは重なるもんだよ。 あんたには いいことしか起こらない。 220 00:15:36,825 --> 00:15:38,825 (風鈴の音) 221 00:15:38,825 --> 00:15:45,825 ♬〜 222 00:15:45,825 --> 00:15:47,825 (岩田)なるほどなあ。 223 00:15:47,825 --> 00:15:51,825 うれしいね。 そんなふうに言ってもらえたら。 224 00:15:51,825 --> 00:15:54,825 (小林)ですよね。 225 00:15:54,825 --> 00:16:00,825 その日も 野球を始めたって言ったら なんて占ってくれるかなって→ 226 00:16:00,825 --> 00:16:02,825 楽しみにしてました。 227 00:16:04,825 --> 00:16:10,825 (小林の声)祖父母の家に向かう道には かかしが並ぶ祖父の田んぼがあって…。 228 00:16:14,825 --> 00:16:19,825 (小林の声)その側溝に ツツジからとれる染料の跡を見たのを→ 229 00:16:19,825 --> 00:16:21,825 今でも覚えてます。 230 00:16:21,825 --> 00:16:23,825 ツツジ? (小林)はい。 231 00:16:23,825 --> 00:16:29,825 ツツジの染料は 手染めが好きな祖母が よく使ってて。 232 00:16:30,825 --> 00:16:36,825 (小林の声)で それから家のほうに行くと 祖父母の姿が見えました。 233 00:16:37,825 --> 00:16:45,825 リウマチを患っていた祖母は 車椅子がないと生活できない状態でした。 234 00:16:45,825 --> 00:16:54,825 でも 祖父は 農業の傍らで 楽しそうに祖母の介護をしてました。 235 00:16:54,825 --> 00:16:58,825 多分 生きがいだったんだと思います。 236 00:17:01,825 --> 00:17:07,825 あの時は もう 1年ぶりに会えるのがうれしくて→ 237 00:17:07,825 --> 00:17:09,825 おっきい声で呼んだんですけど…。 238 00:17:09,825 --> 00:17:11,825 (小林)おじいちゃん! おばあちゃん! 239 00:17:14,825 --> 00:17:16,825 (小林の声)返事がありませんでした。 240 00:17:18,825 --> 00:17:20,825 聞こえてなかったとか? 241 00:17:20,825 --> 00:17:23,825 でも 祖母は手を振ってくれました。 242 00:17:23,825 --> 00:17:25,825 (風鈴の音) 243 00:17:25,825 --> 00:17:30,825 (小林の声)で そのまま2人は ゆっくり 家の中に入っていっちゃったんです。 244 00:17:30,825 --> 00:17:35,825 僕は 走って門を抜けて 玄関に向かいました。 245 00:17:35,825 --> 00:17:37,825 そしたら…。 246 00:17:42,825 --> 00:17:46,825 そしたら…→ 247 00:17:46,825 --> 00:17:48,825 ドーン! って…。 248 00:17:48,825 --> 00:17:50,825 え…? 249 00:17:52,825 --> 00:17:55,825 すごい音がしたんです。 250 00:17:55,825 --> 00:17:57,825 (小林の声)見えたのは…。 251 00:18:05,825 --> 00:18:08,825 (小林の声)炎でした。 252 00:18:08,825 --> 00:18:13,825 火は どんどん広がって あっという間に大きくなって…。 253 00:18:13,825 --> 00:18:20,825 ♬〜 254 00:18:20,825 --> 00:18:22,825 (割れる音) 255 00:18:26,825 --> 00:18:33,825 そしたら 祖父が一人 よろよろと外に出てきました。 256 00:18:33,825 --> 00:18:38,825 それで 祖母の名前を叫んでから 言ったんです。 257 00:18:38,825 --> 00:18:42,825 (小林の祖父)わしを捨てんでくれ! けいこ…! 258 00:18:42,825 --> 00:18:44,825 おじいちゃん! 259 00:18:44,825 --> 00:18:48,825 ばあさんが出てこなかったか!? ああーっ…! 260 00:18:49,825 --> 00:18:51,825 捨てんでくれ…? 261 00:18:54,825 --> 00:18:56,825 それで…→ 262 00:18:56,825 --> 00:19:01,825 そのまま 祖母を捜しに 家の中に戻っちゃったんです。 263 00:19:01,825 --> 00:19:04,825 えっ 家って…→ 264 00:19:04,825 --> 00:19:07,825 でも 燃えてるんじゃ…? 265 00:19:07,825 --> 00:19:14,825 ♬〜 266 00:19:14,825 --> 00:19:19,825 次に覚えてるのは 消火活動が終わった後の光景です。 267 00:19:19,825 --> 00:19:22,825 家は全焼していて→ 268 00:19:22,825 --> 00:19:27,825 玄関だった場所には 小さめの脚立が転がっていて→ 269 00:19:27,825 --> 00:19:29,825 白い煙が上がってました。 270 00:19:32,825 --> 00:19:38,825 でも 僕… 何もできなくて。 271 00:19:40,825 --> 00:19:42,825 それで 祖父は…。 272 00:19:45,825 --> 00:19:49,825 もういい… もういいよ ありがとう。 273 00:19:49,825 --> 00:19:51,825 よくないんです…! 274 00:19:52,825 --> 00:19:54,825 おかしいのは ここからなんです。 275 00:19:56,825 --> 00:20:01,825 燃えた家の中に 祖母の形跡がなかったんです。 276 00:20:01,825 --> 00:20:03,825 …えっ? 277 00:20:07,825 --> 00:20:12,825 家は塀に囲まれてて 外に逃げたとは考えづらい。 278 00:20:12,825 --> 00:20:18,825 なのに 車椅子でさえも 焼け跡から見つからなくて…。 279 00:20:18,825 --> 00:20:23,825 えっ… でも 車椅子に乗ったおばあさんを 見てるんだよね? 280 00:20:23,825 --> 00:20:26,825 車椅子ごと消えたってこと? 281 00:20:27,825 --> 00:20:32,825 僕が幼いこともあって→ 282 00:20:32,825 --> 00:20:37,825 警察は 祖母を見たことを まともに取り合ってくれませんでした。 283 00:20:40,825 --> 00:20:48,825 祖母は 祖父を捨てて どこに消えてしまったんでしょうか…。 284 00:20:48,825 --> 00:20:55,825 車椅子に座っていた祖母は 一体 どうやって姿を消したんでしょうか? 285 00:20:59,825 --> 00:21:02,825 ご両親は なんて言ってるの? 286 00:21:03,825 --> 00:21:06,825 聞けなかったんです。 287 00:21:10,825 --> 00:21:16,825 祖父母の家に向かってたんですけど→ 288 00:21:16,825 --> 00:21:23,825 一時停止を無視した車が 横から飛び出してきて…。 289 00:21:26,825 --> 00:21:29,825 暴走してきた相手は即死でした。 290 00:21:29,825 --> 00:21:34,825 でも 両親も そのまま…。 291 00:21:35,825 --> 00:21:37,825 (岩田)うわっ! (四季)ちょっと! 292 00:21:37,825 --> 00:21:39,825 (岩田)ごめん! (四季)先輩…! 293 00:21:39,825 --> 00:21:44,825 (岩田)小林 もう その話は いいよ。 もういい…。 294 00:21:46,825 --> 00:21:49,825 で 小林は どうやって高校まで進んだんだ? 295 00:21:51,825 --> 00:21:57,825 母方の親戚が いろいろと助けてくれました。 296 00:21:57,825 --> 00:22:02,825 そっか… 良かった。 297 00:22:02,825 --> 00:22:05,825 ちゃんといい人がいて 良かった。 298 00:22:05,825 --> 00:22:11,825 (美咲)その親戚は おばあさんのことについて 何か言ってなかったの? 299 00:22:11,825 --> 00:22:16,825 いつも 「おばあちゃんは 遠くに行っちゃったんだよ」って→ 300 00:22:16,825 --> 00:22:18,825 言うばかりで…。 301 00:22:18,825 --> 00:22:22,825 今日は にぎやかだねえ。 302 00:22:24,825 --> 00:22:27,825 初めまして 小林くん。 303 00:22:29,825 --> 00:22:31,825 初めまして…。 304 00:22:34,825 --> 00:22:37,825 話は全て聞いていたよ。 305 00:22:37,825 --> 00:22:46,825 ♬〜 306 00:22:50,759 --> 00:22:57,759 (柱時計の時報) 307 00:22:57,759 --> 00:23:06,759 小林くん これは僕の勝手な想像なんだがね。 308 00:23:06,759 --> 00:23:09,759 君が本当に知りたいのは→ 309 00:23:09,759 --> 00:23:14,759 不思議な出来事の真相では ないんじゃないかな? 310 00:23:14,759 --> 00:23:17,759 (岩田)えっ そうなの? 311 00:23:17,759 --> 00:23:19,759 …はい。 312 00:23:21,759 --> 00:23:24,759 いつも考えちゃうんです。 313 00:23:24,759 --> 00:23:32,759 なんで あの日 両親は すぐに祖父母の家に行かなかったのかって。 314 00:23:32,759 --> 00:23:40,759 なんで 空港に着いて 急に 乗馬の予約をしたんでしょうか? 315 00:23:40,759 --> 00:23:43,759 旅行に行く少し前から→ 316 00:23:43,759 --> 00:23:52,759 祖父母の話をすると なぜか顔を曇らせて 話をすり替えようとしてました。 317 00:23:52,759 --> 00:23:59,759 父と母は 祖父母のことが…→ 318 00:23:59,759 --> 00:24:01,759 嫌いだったんでしょうか? 319 00:24:04,759 --> 00:24:08,759 世の中で起こる全ての出来事は物語。 320 00:24:08,759 --> 00:24:10,759 僕は そう思うんだ。 321 00:24:12,759 --> 00:24:20,759 もし 君が望むなら ご家族の物語を紡いでみよう。 322 00:24:25,759 --> 00:24:32,759 ご両親には おじいさまとおばあさまの家に 行きづらい理由があったんだ。 323 00:24:32,759 --> 00:24:36,759 では その理由とは 一体 何か? 324 00:24:38,759 --> 00:24:43,759 楓は どんな物語を紡ぐのかな? 325 00:24:46,759 --> 00:24:52,759 関係が変わったのは 両親と祖父母ではなく おじいさんとおばあさんだった。 326 00:24:52,759 --> 00:24:56,759 おじいさんが発した 「俺を捨てんでくれ」という言葉が→ 327 00:24:56,759 --> 00:24:58,759 この物語を補完している。 328 00:24:58,759 --> 00:25:03,759 祖父母の関係性が変わったという視点は 悪くない。 329 00:25:03,759 --> 00:25:07,759 だが まだ 謎が残っている。 330 00:25:07,759 --> 00:25:11,759 なんで わざわざ乗馬を選んだのか? 331 00:25:11,759 --> 00:25:13,759 うん。 332 00:25:14,759 --> 00:25:17,759 祖父母の家に行きづらいだけなら→ 333 00:25:17,759 --> 00:25:24,759 もっと 小林くんも 同行したくなるようなことを考えたはずだ。 334 00:25:24,759 --> 00:25:26,759 あっ… はい。 335 00:25:26,759 --> 00:25:31,759 ツツジは春から初夏の花。 夏休みに見るには遅いと思う。 336 00:25:31,759 --> 00:25:33,759 うん。 337 00:25:33,759 --> 00:25:38,759 なぜ 室内や納屋ではなく 玄関に脚立があったのか? 338 00:25:38,759 --> 00:25:41,759 (四季)なぜ おじいさんの足が よろついていたのか? 339 00:25:43,759 --> 00:25:50,759 つまり これには 別の物語Xが存在するんだ。 340 00:25:51,759 --> 00:25:53,759 物語X…? 341 00:25:54,759 --> 00:25:59,759 楓 香りを焚かせてくれないか? 342 00:26:08,759 --> 00:26:16,759 ♬〜 343 00:26:16,759 --> 00:26:19,759 (風鈴の音) 344 00:26:23,759 --> 00:26:25,759 「絵」が見えたよ。 345 00:26:28,759 --> 00:26:31,759 君のご両親は→ 346 00:26:31,759 --> 00:26:35,759 おじいさまの元に 行かなかったわけじゃない。 347 00:26:36,759 --> 00:26:38,759 行けなかったんだ。 348 00:26:40,759 --> 00:26:42,759 (小林)えっ…? 349 00:26:43,759 --> 00:26:50,759 ご両親は 君が断ることを分かった上で あえて 乗馬を提案したんだ。 350 00:26:50,759 --> 00:26:53,759 あえてって… なんで そんなこと? 351 00:26:54,759 --> 00:26:57,759 君を留守番させるためだろうね。 352 00:26:57,759 --> 00:27:04,759 まだ幼かった君には 少々 残酷な現実が待っていたからだ。 353 00:27:05,759 --> 00:27:07,759 …なんですか? 354 00:27:09,759 --> 00:27:13,759 君のおじいさまは…→ 355 00:27:13,759 --> 00:27:16,759 認知症を患っていたんだ。 356 00:27:17,759 --> 00:27:19,759 認知症…。 357 00:27:20,759 --> 00:27:25,759 そんな…。 いや だって あんな元気だったのに…。 358 00:27:25,759 --> 00:27:29,759 簡単に受け入れられないのも無理はない。 359 00:27:30,759 --> 00:27:36,759 だが おじいさまが認知症だとすれば つじつまが合うんだ。 360 00:27:37,759 --> 00:27:44,759 ご両親は おばあさまから 時折 認知症の相談を受けていたんだ。 361 00:27:44,759 --> 00:27:49,759 (美咲)だから 祖父母の話になると 顔を曇らせてたんだ。 362 00:27:49,759 --> 00:27:52,759 おじいさんが認知症だったとしたら…。 363 00:27:52,759 --> 00:27:56,759 介護する人と される人が 入れ替わっていた…。 364 00:27:56,759 --> 00:27:59,759 祖父母の関係性が変わった。 365 00:27:59,759 --> 00:28:03,759 火事の後 家に おばあさまの姿がなかったことが→ 366 00:28:03,759 --> 00:28:06,759 何より その状況を示している。 367 00:28:07,759 --> 00:28:13,759 あの日 小林くんが見たのは おばあさまではなかった。 368 00:28:13,759 --> 00:28:16,759 えっ じゃあ 誰だったんです? 369 00:28:22,759 --> 00:28:24,759 (小林)おじいちゃん! おばあちゃん! 370 00:28:24,759 --> 00:28:27,759 (祖父の声)おじいさまが押していたのは→ 371 00:28:27,759 --> 00:28:32,759 車椅子ではなく シルバーカーだったんだ。 372 00:28:32,759 --> 00:28:37,759 玄関で白い煙を上げていた 脚立のような それが→ 373 00:28:37,759 --> 00:28:40,759 シルバーカーだった。 374 00:28:41,759 --> 00:28:45,759 小林くんが見た おばあさんっていうのは? 375 00:28:46,759 --> 00:28:51,759 小林くんのおじいさまは 農業をやっていた。 376 00:28:51,759 --> 00:28:53,759 農家に いつもあり→ 377 00:28:53,759 --> 00:28:57,759 火が移れば 跡形もなくなってしまうものは…。 378 00:28:59,759 --> 00:29:01,759 かかし…? 379 00:29:05,759 --> 00:29:08,759 (岩田)あれ? でも 手を振ってるように見えたのは? 380 00:29:09,759 --> 00:29:15,759 シルバーカーに伝わる振動で かかしの体が動くこともある。 381 00:29:15,759 --> 00:29:20,759 まして 固定されていないとしたら なおさらだ。 382 00:29:21,759 --> 00:29:25,759 なんで 祖父は シルバーカーに かかしなんか…。 383 00:29:26,759 --> 00:29:28,759 おばあちゃんに見立ててたのかも。 384 00:29:29,759 --> 00:29:31,759 えっ? 385 00:29:31,759 --> 00:29:36,759 しばらく 姿が見えない おばあさんを かかしに重ねてしまった。 386 00:29:36,759 --> 00:29:41,759 認知症の中には そういう幻を見るものもあるんだよ。 387 00:29:43,759 --> 00:29:46,759 じゃあ 祖母は どこにいたんですか? 388 00:29:46,759 --> 00:29:51,759 旅行の直前に 一体 何があったのか…。 389 00:29:52,759 --> 00:29:58,759 小林くん 君が近くの側溝で ツツジの色を見た それは→ 390 00:29:58,759 --> 00:30:01,759 本当に染料だったのかな? 391 00:30:02,759 --> 00:30:04,759 …えっ? 392 00:30:06,759 --> 00:30:08,759 (祖父の声)君のご両親は→ 393 00:30:08,759 --> 00:30:12,759 おじいさまの元に 行かなかったわけじゃない。 394 00:30:12,759 --> 00:30:14,759 行けなかったんだ。 395 00:30:14,759 --> 00:30:16,759 認知症を患っていたんだ。 396 00:30:18,759 --> 00:30:22,759 (美咲の声)介護する人と される人が 入れ替わっていた…。 397 00:30:26,759 --> 00:30:28,759 あっ…! 398 00:30:34,759 --> 00:30:36,759 あっ…! 399 00:30:36,759 --> 00:30:38,759 なんですか? 教えてください! 400 00:30:43,759 --> 00:30:48,759 ツツジの色と間違えるぐらい 赤みがかっていたということは…。 401 00:30:49,759 --> 00:30:52,759 比較的 新しい血痕だった。 402 00:30:52,759 --> 00:30:54,759 血痕? 403 00:30:54,759 --> 00:31:03,759 ♬〜 404 00:31:03,759 --> 00:31:05,759 あの日 おばあさまは→ 405 00:31:05,759 --> 00:31:11,759 認知症のおじいさまが押す車椅子で 用水路に転倒し→ 406 00:31:11,759 --> 00:31:13,759 大けがをしてしまった。 407 00:31:16,759 --> 00:31:18,759 そんな…。 408 00:31:19,759 --> 00:31:22,759 病院に搬送される時→ 409 00:31:22,759 --> 00:31:27,759 車椅子は おばあさまと一緒に 救急車に乗せられた。 410 00:31:28,759 --> 00:31:31,759 だから 焼け跡から 車椅子が見つからなかったんですね。 411 00:31:32,759 --> 00:31:38,759 当然 おじいさまも 救急車に同乗したことだろう。 412 00:31:39,759 --> 00:31:43,759 だが 病院に着くなり 自宅に戻ってしまった。 413 00:31:45,759 --> 00:31:48,759 なんで 祖父は 一人で家に帰ったんですか? 414 00:31:48,759 --> 00:31:54,759 家に帰れば おばあさんに会えると思ったのかも。 415 00:31:54,759 --> 00:31:58,759 突然 最愛の人の姿が消えたんだ。 416 00:31:58,759 --> 00:32:04,759 その苦しさは 簡単に受け入れられるものではない。 417 00:32:06,759 --> 00:32:13,759 きっと おじいさまの「こころ」は 完全に壊れてしまったんだ。 418 00:32:15,759 --> 00:32:19,759 おばあさまへの愛情ゆえに。 419 00:32:21,759 --> 00:32:29,759 小林くんに 認知症の話をするわけにもいかず→ 420 00:32:29,759 --> 00:32:33,759 大けがをした おばあさんの症状も 思わしくなかった。 421 00:32:34,759 --> 00:32:40,759 だから 病院には ご両親だけで行くしかなかった。 422 00:32:42,759 --> 00:32:47,759 (美咲)つまり ご両親は 乗馬ではなく 病院に向かっていた。 423 00:32:48,759 --> 00:32:51,759 そんな中 火事が起きた。 424 00:32:51,759 --> 00:32:55,759 おばあさんだと思っていた かかしが 燃えてしまった。 425 00:32:55,759 --> 00:32:57,759 かかしは わらでできているから→ 426 00:32:57,759 --> 00:32:59,759 残骸が残らない。 427 00:32:59,759 --> 00:33:05,759 おじいさんは 「妻が消えた」「捨てられた」って 思い込んじゃった…。 428 00:33:06,759 --> 00:33:08,759 (岩田)だから 「捨てんでくれ」って…。 429 00:33:11,759 --> 00:33:14,759 なんで お父さんたちは 嘘なんかついたんですか? 430 00:33:14,759 --> 00:33:19,759 何も隠さずに みんなで一緒にいたら あんなことには…。 431 00:33:20,759 --> 00:33:23,759 ショックを与えたくなかったんだろう。 432 00:33:23,759 --> 00:33:30,759 「聡明でいたい」という おじいさまの願いもあったかもしれない。 433 00:33:32,759 --> 00:33:38,759 君の家族は 君に優しい嘘をついたんだ。 434 00:33:41,759 --> 00:33:46,759 家族の愛情を感じる嘘もあるんですね。 435 00:33:55,759 --> 00:34:01,759 小林くん 写真 見せてもらってもいいかな? 436 00:34:09,759 --> 00:34:14,759 こんな僕だけどね これだけは言える。 437 00:34:15,759 --> 00:34:20,759 いや 僕だからこそ言える。 438 00:34:22,759 --> 00:34:26,759 おじいさまは 決して 不幸ではなかったはずだ。 439 00:34:26,759 --> 00:34:32,759 最期の時 薄れゆく意識の中で きっと→ 440 00:34:32,759 --> 00:34:35,759 見つけることができたはずだからね。 441 00:34:37,759 --> 00:34:40,759 やわらかく ほほ笑む 妻の姿を。 442 00:34:40,759 --> 00:34:43,759 一緒に笑い合う 家族の姿を。 443 00:34:46,759 --> 00:34:49,759 君には そう思う義務がある。 444 00:34:52,759 --> 00:35:00,759 「いいことは重なるものだ」と おばあさまが おっしゃっていたからだ。 445 00:35:00,759 --> 00:35:07,759 確かに あの日の君には 悪いことが重なった。 446 00:35:07,759 --> 00:35:11,759 だが 今後の君には→ 447 00:35:11,759 --> 00:35:16,759 いいことを重ねる義務がある。 448 00:35:16,759 --> 00:35:25,759 ♬〜 449 00:35:25,759 --> 00:35:27,759 (たたく音) 450 00:35:28,759 --> 00:35:30,759 (たたく音) 451 00:35:35,759 --> 00:35:38,759 そういう義務がある。 452 00:35:39,759 --> 00:35:41,759 (泣き声) 453 00:35:42,759 --> 00:35:51,759 (すすり泣き) 454 00:35:51,759 --> 00:35:55,759 どんな形の「家族」であっても→ 455 00:35:55,759 --> 00:36:03,759 そこには 思い合える温かさがあると 僕は信じてる。 456 00:36:06,759 --> 00:36:10,759 小林くんの家族が そうであったようにね。 457 00:36:12,759 --> 00:36:15,759 僕には分かる。 458 00:36:17,759 --> 00:36:22,759 小林くんのご家族が どれほどの愛に満ちていたのか。 459 00:36:22,759 --> 00:36:33,759 ♬〜 460 00:36:33,759 --> 00:36:39,759 ほら 君のおじいさまとおばあさま…。 461 00:36:42,759 --> 00:36:44,759 ご両親もだ。 462 00:36:47,759 --> 00:36:53,759 あんなに温かい目で 君を見守ってくれているじゃないか。 463 00:36:53,759 --> 00:37:00,759 ♬〜 464 00:37:02,759 --> 00:37:08,759 せっかく いらしたんですから どうぞ 上がってください。 465 00:37:10,759 --> 00:37:14,759 僕の手相も見ていただけますか? 466 00:37:15,759 --> 00:37:18,759 えっ? ああ…。 どうぞ…。 467 00:37:18,759 --> 00:37:20,759 (風鈴の音) 468 00:37:24,759 --> 00:37:26,759 おっ…! なんだよ? 469 00:37:26,759 --> 00:37:31,759 (四季)こっちのせりふです。 何 寂しそうな顔してるんですか? 470 00:37:32,759 --> 00:37:34,759 (缶を開ける音) (岩田)いや…→ 471 00:37:34,759 --> 00:37:38,759 ぶっちゃけ 「俺の両親って どうだったんだろう」って。 472 00:37:45,759 --> 00:37:50,759 自分は独りぼっちだ とでも言うつもりですか? 473 00:37:51,759 --> 00:37:55,759 (四季)言っときますけど そう思ってるの 先輩だけですからね! 474 00:37:56,759 --> 00:37:58,759 ちゃんと 周り見てください。 475 00:38:04,759 --> 00:38:06,759 (岩田)四季〜っ! (四季)うおーっ! やめてください! 476 00:38:06,759 --> 00:38:09,759 こぼれる こぼれる! (岩田)おまえって奴は! おまえ…! 477 00:38:11,759 --> 00:38:15,759 まどふき先生が なんで レジェンドなのか 分かった気がする。 478 00:38:15,759 --> 00:38:17,759 うん。 479 00:38:17,759 --> 00:38:20,759 初めて会った人の家族のことまで 分かっちゃうんだから すごいよなあ…。 480 00:38:20,759 --> 00:38:22,759 うん。 481 00:38:23,759 --> 00:38:27,759 教師 続けてれば 分かるようになるのかな? 482 00:38:28,759 --> 00:38:30,759 ねえ 美咲。 ん? 483 00:38:30,759 --> 00:38:33,759 なんで そんな悲しい顔してるの? 484 00:38:36,759 --> 00:38:40,759 (美咲)すずちゃん。 無理はしなくていいんだよ。 485 00:38:40,759 --> 00:38:45,759 でもね 友達みんな すずちゃんが来るの 待ってるよ。 486 00:38:46,759 --> 00:38:50,759 学校が怖いんだって。 487 00:38:51,759 --> 00:38:54,759 怖くて眠れないって。 488 00:38:54,759 --> 00:38:57,759 美咲は 顔見て 話せてるの? 489 00:38:57,759 --> 00:39:01,759 うーん… 部屋に こもっちゃう日もある。 490 00:39:03,759 --> 00:39:07,759 どうしてあげたらいいのか 私も分かんなくなっちゃって。 491 00:39:08,759 --> 00:39:10,759 ねえ じゃあ 相談してみる? 492 00:39:11,759 --> 00:39:13,759 えっ? 493 00:39:13,759 --> 00:39:16,759 元校長の名探偵に。 494 00:39:21,891 --> 00:39:24,891 (すず)あなたが 名探偵さん? 495 00:39:25,891 --> 00:39:29,891 おお〜! 名探偵か。 496 00:39:29,891 --> 00:39:34,891 いやあ そう呼ばれると 気分のいいものだね。 フフフッ…。 497 00:39:35,891 --> 00:39:43,891 すずちゃん 早速だけどね 学校のことで悩みがあるそうだね。 498 00:39:44,891 --> 00:39:47,891 (すず)悩みというより これは事件なの。 499 00:39:48,891 --> 00:39:53,891 なるほど。 詳しく聞かせてくれないか? 500 00:39:54,891 --> 00:39:56,891 (すず)うちの学校の階段ね→ 501 00:39:56,891 --> 00:40:01,891 いつもは 12段なのに 時々 13段になっちゃうの。 502 00:40:01,891 --> 00:40:05,891 ほお〜…。 それは不思議だねえ。 503 00:40:05,891 --> 00:40:09,891 (すず)それから 音楽室の前を通りかかったら→ 504 00:40:09,891 --> 00:40:13,891 中で 前の校長先生がピアノを弾いてた。 505 00:40:13,891 --> 00:40:16,891 1年前に死んじゃったはずなのに。 506 00:40:18,891 --> 00:40:21,891 それは怖いものを見たね。 507 00:40:22,891 --> 00:40:29,891 (すず)でもね 友達に言ったら 「すずは嘘つきだ」って言われちゃった…。 508 00:40:29,891 --> 00:40:31,891 嘘なんかついてないのに。 509 00:40:31,891 --> 00:40:37,891 いやあ そのとおり。 すずちゃんは 嘘なんかついていない。 510 00:40:38,891 --> 00:40:40,891 信じてくれるの? 511 00:40:40,891 --> 00:40:42,891 もちろん! 512 00:40:43,891 --> 00:40:50,891 じゃあ 名探偵さんは どう解決する? 513 00:40:52,891 --> 00:41:00,891 すずちゃん 世の中で起こった出来事に なんでも原因を求めちゃいけないよ。 514 00:41:00,891 --> 00:41:07,891 不思議なことに遭遇するのは なんの刺激もない日々を送るよりも→ 515 00:41:07,891 --> 00:41:11,891 ずっと幸せだと思うべきだ。 516 00:41:13,891 --> 00:41:16,891 (すず)幸せ? どうして? 517 00:41:16,891 --> 00:41:22,891 すずちゃんは 魔法の世界の主人公だからだよ。 518 00:41:24,891 --> 00:41:27,891 フフフッ…。 (すず)魔法? 519 00:41:27,891 --> 00:41:35,891 すずちゃんは 12段しかない階段を 13段に増やす魔法が使える。 520 00:41:35,891 --> 00:41:37,891 さらに すごいのは→ 521 00:41:37,891 --> 00:41:45,891 前の校長先生を生き返らせるという とっておきの魔法だ。 522 00:41:47,891 --> 00:41:54,891 これは 相当な腕を持つ魔法使いじゃないと 使えないらしい。 523 00:41:57,891 --> 00:41:59,891 (すず)そっか…。 524 00:42:01,891 --> 00:42:04,891 (すず)全部 魔法だったんだ…。 525 00:42:07,891 --> 00:42:11,891 (すず)私は魔法が使えたんだ…。 526 00:42:11,891 --> 00:42:14,891 そっか…。 527 00:42:14,891 --> 00:42:19,891 とっておきの魔法だったんだ…。 528 00:42:19,891 --> 00:42:25,891 ああ… そっか…。 529 00:42:25,891 --> 00:42:34,891 ♬〜 530 00:42:34,891 --> 00:42:39,891 ずっと 怖くて眠れないって言ってたんです。 531 00:42:40,891 --> 00:42:44,891 怖い思いは 払拭されたかな? 532 00:42:45,891 --> 00:42:47,891 ありがとうございます。 533 00:42:52,891 --> 00:42:56,891 本当に ありがとうございます。 534 00:42:58,891 --> 00:43:01,891 うちの→ 535 00:43:01,891 --> 00:43:03,891 おばあちゃんのために。 536 00:43:06,891 --> 00:43:09,891 お会いしたいと思っていたんですよ。 537 00:43:10,891 --> 00:43:15,891 同じ病気を患っていると聞いた時から。 538 00:43:16,891 --> 00:43:25,891 (柱時計の時報) 539 00:43:29,891 --> 00:43:34,891 ん? 目が覚めたかな? すずちゃん。 540 00:43:34,891 --> 00:43:39,891 (すず)ああ… 名探偵さん…。 541 00:43:39,891 --> 00:43:45,891 あっ… 私 何か失礼なこと言ってませんでしたか? 542 00:43:45,891 --> 00:43:50,891 いやいやいや… 心配の必要はありませんよ すずさん。 543 00:43:55,891 --> 00:43:57,891 美咲。 544 00:43:58,891 --> 00:44:00,891 おばあちゃん…。 545 00:44:00,891 --> 00:44:04,891 はあっ… 2カ月ぶりだ…。 546 00:44:07,891 --> 00:44:10,891 (すず)美咲。 (美咲)ん? 547 00:44:10,891 --> 00:44:13,891 連れてきてくれて ありがとう。 548 00:44:15,891 --> 00:44:17,891 フフッ…。 549 00:44:19,891 --> 00:44:21,891 名探偵さん…。 550 00:44:21,891 --> 00:44:27,891 あの… 私… 私ね→ 551 00:44:27,891 --> 00:44:30,891 病気なんです。 552 00:44:30,891 --> 00:44:36,891 孫娘のことが 時々 分からなくなってしまう。 553 00:44:36,891 --> 00:44:42,891 頭の片隅では 美咲だって分かっていても→ 554 00:44:42,891 --> 00:44:47,891 大好きだった 小学校の先生に 見えてしまうことがあるんです。 555 00:44:48,891 --> 00:44:55,891 (すず)その度に 美咲が私に合わせて 演技してくれてることも分かってる。 556 00:44:59,891 --> 00:45:02,891 (すず)名探偵さん…。 557 00:45:02,891 --> 00:45:07,891 幻を見ないようにするには→ 558 00:45:07,891 --> 00:45:12,891 美咲に心配をかけないようにするには どうしたらいいんでしょうか? 559 00:45:18,891 --> 00:45:23,891 いやあ… 難しい問題だ。 560 00:45:23,891 --> 00:45:27,891 僕も 何度も考えていたことでしてね。 561 00:45:28,891 --> 00:45:31,891 実はね→ 562 00:45:31,891 --> 00:45:37,891 僕も同じ病気なんですよ すずさん。 563 00:45:39,891 --> 00:45:41,891 そうなんですか。 564 00:45:41,891 --> 00:45:49,891 だが 残酷なようだが 僕たちの幻は 病気が見せているものだ。 565 00:45:50,891 --> 00:45:54,891 自力で消そうにも そう うまくはいかない。 566 00:45:56,891 --> 00:45:58,891 でも すずさん→ 567 00:45:58,891 --> 00:46:02,891 心配かけたっていいじゃないか。 568 00:46:02,891 --> 00:46:05,891 忘れたっていいじゃないか。 569 00:46:06,891 --> 00:46:09,891 たとえ 思い出せない時がきても→ 570 00:46:09,891 --> 00:46:13,891 われわれが孫を思う気持ちは→ 571 00:46:13,891 --> 00:46:20,891 この子たちが生まれた時から 何一つ変わらない。 572 00:46:23,891 --> 00:46:25,891 そうですね。 573 00:46:26,891 --> 00:46:28,891 すずさん。 574 00:46:28,891 --> 00:46:36,891 どんなに病気が進んでも すずさんは美咲先生のおばあさまです。 575 00:46:36,891 --> 00:46:42,891 ♬〜 576 00:46:42,891 --> 00:46:46,891 僕が楓のおじいちゃんであるようにね。 577 00:46:46,891 --> 00:46:48,891 フフッ。 578 00:46:53,891 --> 00:46:56,891 はい おしまい。 579 00:46:56,891 --> 00:46:59,891 おっ? なんだ? 580 00:46:59,891 --> 00:47:02,891 まだまだ読めっていう顔だな。 581 00:47:02,891 --> 00:47:05,891 う〜ん… 仕方がないな。 582 00:47:05,891 --> 00:47:09,891 じゃあ もう一冊だけ。 なっ。 583 00:47:09,891 --> 00:47:11,891 よし。 584 00:47:11,891 --> 00:47:13,891 うっ… ふう…。 585 00:47:13,891 --> 00:47:17,891 ああ…。 まだまだ読み足りないって。 586 00:47:17,891 --> 00:47:20,891 いやあ 誰に似たのかなあ…。 587 00:47:20,891 --> 00:47:22,891 ほら 見てごらん。 588 00:47:22,891 --> 00:47:29,891 こんなに楽しげな顔をされては 断れるはずもない。 フフフッ…。 589 00:47:29,891 --> 00:47:31,891 なあ 香苗。 590 00:47:32,891 --> 00:47:36,891 ハハハハッ…。 うん…。 591 00:47:36,891 --> 00:47:42,891 うん。 フフフ… フフッ… ハハハ…。 592 00:47:42,891 --> 00:47:46,891 うん? フフフフッ…。 (風鈴の音)