1 00:00:01,906 --> 00:00:05,660 には 現在都内に本社のあるIT企業や 2 00:00:05,660 --> 00:00:09,463 大手電機メーカーなどが入居して いて 3 00:00:09,463 --> 00:00:13,217 銚子市によりますと、およそ 100社から問い合わせがあると 4 00:00:13,217 --> 00:00:15,219 いうことです。 5 00:00:33,971 --> 00:00:36,707 (澪)さあさ つる家の振る舞い飯ですよ! 6 00:00:36,707 --> 00:00:39,707 はてなの飯は いかが? 7 00:00:43,381 --> 00:00:45,716 おい はてなの飯 お代わり 2つ くれ! 8 00:00:45,716 --> 00:00:47,652 (種市)はいよ! こっちは 3つだ 3つ! 9 00:00:47,652 --> 00:00:51,389 はいよ! 親父 こっちも! 10 00:00:51,389 --> 00:00:53,324 おい ちょっと まあまあ…。 11 00:00:53,324 --> 00:00:56,260 そう 腰の悪い年寄りを いじめないでくれよ もう~。 12 00:00:56,260 --> 00:00:59,263 (笑い声) 13 00:00:59,263 --> 00:01:03,563 おい こっちの はてなは まだか? は~い ただいま! 14 00:01:05,937 --> 00:01:08,406 (おりょう)澪ちゃん。 おりょうさん! 15 00:01:08,406 --> 00:01:11,309 これ うちの旦那。 いい男だろ。 16 00:01:11,309 --> 00:01:14,278 よいしょ。 悪いね 忙しい時分に来ちまったみたいで。 17 00:01:14,278 --> 00:01:18,416 太一があんまり はてなの飯の 絵ばっかり描くもんだから➡ 18 00:01:18,416 --> 00:01:21,085 いっぺん食べて みたいんだってさ。 19 00:01:21,085 --> 00:01:23,020 ようこそ いらっしゃいました。 20 00:01:23,020 --> 00:01:24,956 いらっしゃい! (伊佐三)ああ どうも。 21 00:01:24,956 --> 00:01:28,426 さっ どうぞ。 悪いね。 22 00:01:28,426 --> 00:01:30,761 (清右衛門)帰る! (坂村堂)先生! 23 00:01:30,761 --> 00:01:33,664 3日も通って やっと中に入れたというのに➡ 24 00:01:33,664 --> 00:01:36,033 一体 いつまで待たせる気だ! 25 00:01:36,033 --> 00:01:38,369 (坂村堂)もう少し… もう少しの辛抱でございます! 26 00:01:38,369 --> 00:01:43,708 え~い! 伝説の花魁ばなしは よそで書く。 27 00:01:43,708 --> 00:01:46,408 (坂村堂)そんな! ちょっと待ちな! 28 00:01:53,050 --> 00:01:58,923 大の男が何だい 子どもみたいに!➡ 29 00:01:58,923 --> 00:02:00,923 座んな。 30 00:02:03,394 --> 00:02:07,064 (おりょう) 次は どこの どいつだい! 31 00:02:07,064 --> 00:02:10,401 おい みんなじゃねえか。 (笑い声) 32 00:02:10,401 --> 00:02:12,336 何だい もう…。 33 00:02:12,336 --> 00:02:27,418 ♬~ 34 00:02:27,418 --> 00:02:34,025 お澪坊 こいつを見てくれ。 何ですか? これ。 35 00:02:34,025 --> 00:02:37,361 去年の江戸の料理番付だ。➡ 36 00:02:37,361 --> 00:02:41,232 この登龍楼ってのは 東の大関。 37 00:02:41,232 --> 00:02:44,702 東の大関いう事は…。 38 00:02:44,702 --> 00:02:47,402 江戸一番の料理屋ってこった。 39 00:02:49,040 --> 00:02:53,911 お澪坊の料理で つる家が番付に載る日が来たら➡ 40 00:02:53,911 --> 00:02:57,381 そんな うれしい事はねえよ。 41 00:02:57,381 --> 00:02:59,381 旦那さん…。 42 00:03:02,253 --> 00:03:05,256 おっ そろそろ 暖簾を出す頃合いじゃねえか。 43 00:03:05,256 --> 00:03:07,725 え? さっき出しました。 44 00:03:07,725 --> 00:03:11,395 え? じゃあ 何で客が来ねえんだよ。➡ 45 00:03:11,395 --> 00:03:13,330 いつもなら とうに行列が…。 46 00:03:13,330 --> 00:03:15,733 大変だよ! (種市)おりょうさん。 47 00:03:15,733 --> 00:03:20,071 澪ちゃん… あんた 盗まれちまってるよ! 48 00:03:20,071 --> 00:03:22,006 え? (種市)何だって!? 49 00:03:22,006 --> 00:03:27,745 お澪坊 銭は しっかり 帯に挟んどけって…。 違うよ! 50 00:03:27,745 --> 00:03:31,615 よその店が はてなの飯を出してるんだよ。 51 00:03:31,615 --> 00:03:34,018 (澪 種市)え? うちのが見つけただけで➡ 52 00:03:34,018 --> 00:03:37,354 3軒もあるっていうんだよ。 53 00:03:37,354 --> 00:03:40,024 なんてこった…。 54 00:03:40,024 --> 00:03:45,896 お澪坊が やっとの思いで ひねり出した趣向をよう。 55 00:03:45,896 --> 00:03:48,596 (おりょう)ひどいねえ。 56 00:03:51,035 --> 00:03:54,371 (芳)そら しかたあらへんのと違うか。 57 00:03:54,371 --> 00:03:56,707 鰹飯そのもんは 別に おまはんが➡ 58 00:03:56,707 --> 00:03:59,043 考えたものやあれへんのやさかい。 59 00:03:59,043 --> 00:04:01,378 はい…。 60 00:04:01,378 --> 00:04:05,049 どのみち 戻り鰹の旬は もうじき しまいや。 61 00:04:05,049 --> 00:04:07,952 また なんぞ 店の看板になる料理を➡ 62 00:04:07,952 --> 00:04:10,652 作らんとあかん。 63 00:04:12,389 --> 00:04:16,389 それは分かってるんですけど…。 64 00:04:18,062 --> 00:04:24,735 [ 回想 ] (小松原)お前の料理は 本筋から外れている。 65 00:04:24,735 --> 00:04:27,071 本筋に戻れ。 66 00:04:27,071 --> 00:04:31,371 そして 己の一番の欠点から 目をそらすな。 67 00:04:33,677 --> 00:04:36,013 ほんまの事 言うたら➡ 68 00:04:36,013 --> 00:04:38,916 自分でも 得心してへんかったんです。 69 00:04:38,916 --> 00:04:42,916 江戸に来てからの 自分の料理の味に…。 70 00:04:46,023 --> 00:04:49,693 澪 覚えてるか? 71 00:04:49,693 --> 00:04:52,029 天満一兆庵の味が変わった➡ 72 00:04:52,029 --> 00:04:57,368 殊に 汁物が まずい言うて 大騒ぎになった時の事。 73 00:04:57,368 --> 00:05:00,271 あっ はい。 (芳)あの時➡ 74 00:05:00,271 --> 00:05:03,040 おまはん 一人が気付いたんや。 75 00:05:03,040 --> 00:05:08,379 井戸の水の味が 僅かに変わった事に。➡ 76 00:05:08,379 --> 00:05:11,715 それで…。 77 00:05:11,715 --> 00:05:15,386 澪を板場へ入れるて…。 78 00:05:15,386 --> 00:05:18,055 (嘉兵衛) この子は仕込みがいがある。 79 00:05:18,055 --> 00:05:21,725 けど おなごは 料理人にはなれまへん。 80 00:05:21,725 --> 00:05:25,596 どない努力したかて 天性の舌は得られへん。 81 00:05:25,596 --> 00:05:29,296 それを 澪は持ってんのや。 82 00:05:31,068 --> 00:05:35,339 (芳)おまはんの舌は 嘉兵衛のお墨付きや。 83 00:05:35,339 --> 00:05:38,639 何にも案ずる事はあれへん。 84 00:05:41,679 --> 00:05:44,348 旦さん…。 85 00:05:44,348 --> 00:05:48,686 [ 回想 ] これが 天満一兆庵の出汁や。 86 00:05:48,686 --> 00:05:50,686 ん。 87 00:05:53,357 --> 00:05:58,657 ええか? 澪。 料理の基本は出汁や。 88 00:06:02,700 --> 00:06:04,635 出汁…。 89 00:06:04,635 --> 00:06:08,038 え? 90 00:06:08,038 --> 00:06:10,038 出汁…。 91 00:06:11,909 --> 00:06:13,911 出汁です! 92 00:06:13,911 --> 00:06:16,380 料理の基本がなってないて➡ 93 00:06:16,380 --> 00:06:18,716 出汁の味が 決まってへんいう事です! 94 00:06:18,716 --> 00:06:20,651 (芳)そうや おまはん 江戸では➡ 95 00:06:20,651 --> 00:06:23,587 思うような昆布出汁が とれへん言うてたなあ。 96 00:06:23,587 --> 00:06:26,390 つる家の旦那さんの 見よう見まねで➡ 97 00:06:26,390 --> 00:06:28,726 鰹出汁を使うてます。 98 00:06:28,726 --> 00:06:31,629 見よう見まねで…。 99 00:06:31,629 --> 00:06:35,332 情けない。 天満一兆庵で➡ 100 00:06:35,332 --> 00:06:38,032 あれほど たたき込んでもろたのに…。 101 00:06:41,005 --> 00:06:47,344 澪 江戸で一番の料理屋いうたら どこや? 102 00:06:47,344 --> 00:06:53,044 ええと… 登龍楼いうお店やて 旦那さんが。 103 00:06:55,019 --> 00:06:56,954 仕立物の手間賃の中から➡ 104 00:06:56,954 --> 00:07:00,357 もしもの時のために取っておいた お銭や。 105 00:07:00,357 --> 00:07:05,029 その 登龍楼へ行って 料理を食べとおみ。 106 00:07:05,029 --> 00:07:07,698 ご寮さん… 駄目です。 107 00:07:07,698 --> 00:07:10,601 そないな贅沢。 あほやなあ。 108 00:07:10,601 --> 00:07:15,601 「一文惜しみの百知らず」いう ことわざがあるやろ。 109 00:07:18,042 --> 00:07:19,977 けど…。 110 00:07:19,977 --> 00:07:37,328 ♬~ 111 00:07:37,328 --> 00:07:39,628 お守り代わりや。 112 00:08:04,355 --> 00:08:06,655 ありがとうございました。 113 00:08:09,026 --> 00:08:11,362 すんません。 114 00:08:11,362 --> 00:08:13,697 上方から来た者です。 115 00:08:13,697 --> 00:08:16,033 江戸一番とうたわれる こちらで➡ 116 00:08:16,033 --> 00:08:20,033 お吸い物の一椀でも 頂いてみたい思いまして。 117 00:08:22,373 --> 00:08:25,042 どうぞ こちらへ。 118 00:08:25,042 --> 00:09:22,342 ♬~ 119 00:09:26,970 --> 00:09:29,270 はあ…。 120 00:09:49,226 --> 00:09:57,668 ♬~ 121 00:09:57,668 --> 00:09:59,668 すんません。 122 00:10:06,009 --> 00:10:08,709 削りたてを使う。 123 00:10:10,347 --> 00:10:13,647 煮えたぎる手前の湯に入れる。 124 00:10:15,219 --> 00:10:18,519 吸い物に使う時は 煮立たせない。 125 00:10:21,959 --> 00:10:27,698 よりによって み~んな 逆さやったのやなあ。 126 00:10:27,698 --> 00:10:30,367 つる家の出汁は お蕎麦の味を➡ 127 00:10:30,367 --> 00:10:33,270 引き立たせるためのもの やったんです。 128 00:10:33,270 --> 00:10:37,241 野菜に使たら そら 鰹の味に負けてしまいます。 129 00:10:37,241 --> 00:10:42,379 よう 鰹節屋に 聞きに行ったこっちゃ。 130 00:10:42,379 --> 00:10:46,717 ほんまは 三ツ橋へ行ってたんです。 131 00:10:46,717 --> 00:10:49,052 三ツ橋…。 132 00:10:49,052 --> 00:10:53,390 天満一兆庵があった場所です。 133 00:10:53,390 --> 00:10:58,729 若旦さんは どないして こういう江戸と上方の違いを➡ 134 00:10:58,729 --> 00:11:02,065 一つ一つ 乗り越えていったんやろか思て。 135 00:11:02,065 --> 00:11:05,736 そしたら ちょうど 目の前に。 136 00:11:05,736 --> 00:11:10,073 ほうか。 佐兵衛の事を考えて…。 137 00:11:10,073 --> 00:11:40,037 ♬~ 138 00:11:40,037 --> 00:11:43,373 はあ~ これは…➡ 139 00:11:43,373 --> 00:11:47,373 なんと 上品な香りと うまみやろか。 140 00:12:00,924 --> 00:12:06,063 できるかもしれません。 (芳)いや…。 141 00:12:06,063 --> 00:12:08,363 きっと でける。 142 00:12:10,400 --> 00:12:15,272 澪 この出汁を育てなはれ。 143 00:12:15,272 --> 00:12:31,688 ♬~ 144 00:12:31,688 --> 00:12:33,688 ごめんください。 145 00:12:38,028 --> 00:12:41,365 にわかに すみません。 146 00:12:41,365 --> 00:12:44,267 その後 お体の具合は いかがかと思いまして。 147 00:12:44,267 --> 00:12:49,039 先生から頂いた お薬のおかげで 少し楽になりました。 148 00:12:49,039 --> 00:12:51,942 ああ それは よかった。 149 00:12:51,942 --> 00:12:57,714 しかし 決して 無理は なさいませんように。 150 00:12:57,714 --> 00:13:00,384 まあ 娘さんが一緒ですから➡ 151 00:13:00,384 --> 00:13:02,684 大事ないとは思いますが。 152 00:13:06,723 --> 00:13:12,062 私らは 親子ではあれへんのです。 153 00:13:12,062 --> 00:13:14,731 え? 154 00:13:14,731 --> 00:13:17,031 澪。 はい。 155 00:13:18,602 --> 00:13:24,902 源斉先生 大坂の… 享和の大水を ご存じですか? 156 00:13:29,279 --> 00:13:34,217 10年ほど前 長雨が続いて➡ 157 00:13:34,217 --> 00:13:36,987 とうとう 淀川の堤が切れ➡ 158 00:13:36,987 --> 00:13:41,987 大坂の町は 水に沈みました。 159 00:13:43,894 --> 00:13:48,894 私は 8つで 二親を失うて…。 160 00:14:00,711 --> 00:14:02,711 こら! 161 00:14:04,581 --> 00:14:07,281 何をさらすんじゃ! 162 00:14:09,052 --> 00:14:11,052 やめなはれ! 163 00:14:15,392 --> 00:14:18,729 これで文句なしや。 164 00:14:18,729 --> 00:14:21,631 もう この子に 手出しは無用だすで。 165 00:14:21,631 --> 00:14:25,602 へえ すぐ包みますよって。 要りまへん! 166 00:14:25,602 --> 00:14:28,739 料理は料理人の器量次第。 167 00:14:28,739 --> 00:14:32,439 おまはんの器量のほどは よう分かりました。 168 00:14:40,350 --> 00:14:42,285 お帰りやす。 169 00:14:42,285 --> 00:14:44,585 ご寮さんのお帰りです。 170 00:14:51,695 --> 00:14:53,630 (一同)お帰りやす。 171 00:14:53,630 --> 00:14:55,630 着きましたで。 172 00:15:04,274 --> 00:15:06,974 慌てて食べたらあかん。 173 00:15:12,716 --> 00:15:16,416 (芳)ゆっくり ゆっくりやで。 174 00:15:20,390 --> 00:15:23,293 どうや? 分かるか? 175 00:15:23,293 --> 00:15:25,262 これが お米の味や。➡ 176 00:15:25,262 --> 00:15:28,562 ほかには何にも足してへんのやで。 177 00:15:35,338 --> 00:15:38,038 どうや? ん? 178 00:15:40,210 --> 00:15:46,950 それから 私は 天満一兆庵に 奉公人として置いて頂いたんです。 179 00:15:46,950 --> 00:15:54,024 主人の嘉兵衛が 澪の才に気付き 料理人として仕込みました。 180 00:15:54,024 --> 00:16:01,024 けど 隣からの もらい火で 店が焼けてしもて。 181 00:16:04,367 --> 00:16:06,667 江戸には なぜ? 182 00:16:10,040 --> 00:16:16,379 一人息子の佐兵衛を 頼って参りました。 183 00:16:16,379 --> 00:16:19,282 若旦さんは 5年ほど前➡ 184 00:16:19,282 --> 00:16:22,719 こちらで 江戸店を開かはったんです。 185 00:16:22,719 --> 00:16:26,590 そやのに 私らが来てみると…。 186 00:16:26,590 --> 00:16:31,061 佐兵衛! 佐兵衛~。 187 00:16:31,061 --> 00:16:32,996 佐兵衛! 若旦さ~ん! 188 00:16:32,996 --> 00:16:35,899 どないなっとんのや。 189 00:16:35,899 --> 00:16:42,199 澪… 託せるのは おまはんだけや。 190 00:16:45,008 --> 00:16:52,883 何としても 天満一兆庵の暖簾を➡ 191 00:16:52,883 --> 00:16:55,352 この江戸に…。 192 00:16:55,352 --> 00:17:05,996 ♬~ 193 00:17:05,996 --> 00:17:08,365 すみません。 194 00:17:08,365 --> 00:17:11,268 しめっぽい話を お聞かせしてしもて。 195 00:17:11,268 --> 00:17:13,268 ああ いえ…。 196 00:17:17,040 --> 00:17:21,740 けれど ひとつ 合点がいきました。 197 00:17:23,713 --> 00:17:28,051 ご寮さんに食べさせてもらった 重湯が➡ 198 00:17:28,051 --> 00:17:29,986 澪さんの料理の➡ 199 00:17:29,986 --> 00:17:35,859 そして 心根の 原点なのでしょう。 200 00:17:35,859 --> 00:17:40,159 だから 澪さんの握る お握りは あんなに おいしいのですね。 201 00:17:42,565 --> 00:17:47,537 食べ物は また 薬でもあるのですよ。 202 00:17:47,537 --> 00:17:50,674 食べ物が 薬? ええ。 203 00:17:50,674 --> 00:17:55,345 例えば 卵が滋養になるのは 明々白々ですね。 204 00:17:55,345 --> 00:18:01,017 また 百合根は 不安を静め よく眠れるようにしてくれます。 205 00:18:01,017 --> 00:18:05,689 銀杏も また 驚くほど 滋養があるのです。 206 00:18:05,689 --> 00:18:09,989 口から とるものだけが 人の体を作るのです。 207 00:18:11,561 --> 00:18:17,033 昔の人は こう言っています。 208 00:18:17,033 --> 00:18:20,033 食は人の天なり。 209 00:18:21,905 --> 00:18:25,709 食は人の天なり…。 210 00:18:25,709 --> 00:18:31,381 おいしい料理を作れる人は それだけで尊いのですよ。 211 00:18:31,381 --> 00:18:52,381 ♬~ 212 00:18:55,005 --> 00:18:58,875 しかしよう お澪坊。 213 00:18:58,875 --> 00:19:03,680 若い娘が一人で 登龍楼の暖簾をくぐるのは➡ 214 00:19:03,680 --> 00:19:06,583 さぞかし 度胸がいっただろ。 215 00:19:06,583 --> 00:19:10,553 ご寮さんが お守りに簪を挿してくれました。 216 00:19:10,553 --> 00:19:12,689 簪? 217 00:19:12,689 --> 00:19:18,028 ああ ご寮さんが いつも挿してる 珊瑚のひとつ玉かい。➡ 218 00:19:18,028 --> 00:19:20,930 ありゃあ 品がよくて 見事だよなあ。 219 00:19:20,930 --> 00:19:24,930 婚礼の時に 旦さんから もろたものやそうです。 220 00:19:26,703 --> 00:19:29,606 近頃 体の具合は どうだい? 221 00:19:29,606 --> 00:19:32,509 大事あらへんとは 言うてはりますけど➡ 222 00:19:32,509 --> 00:19:35,209 まだ 寝たり起きたりで…。 223 00:19:38,648 --> 00:19:41,985 (物音) 伊佐三さん? 224 00:19:41,985 --> 00:19:45,855 (種市)おう おりょうさんの旦那さんかい。 225 00:19:45,855 --> 00:19:48,324 食ってみたよ。 226 00:19:48,324 --> 00:19:50,260 大工仲間と連れ立って➡ 227 00:19:50,260 --> 00:19:53,196 よその はてなの飯を 食ってみたんだよ。 228 00:19:53,196 --> 00:19:57,333 けど くどいのやら 生臭いのやら。 229 00:19:57,333 --> 00:20:01,671 どれも ここの足元にも 及ばなかったぜ。 230 00:20:01,671 --> 00:20:05,542 それだけ言いに来たんだ。 じゃあな。 231 00:20:05,542 --> 00:20:07,544 あっ 伊佐三さん! 232 00:20:07,544 --> 00:20:30,700 ♬~ 233 00:20:30,700 --> 00:20:34,037 色の薄い方が香りがいいな。 234 00:20:34,037 --> 00:20:37,707 けど 濃い方は うまみが強い。 235 00:20:37,707 --> 00:20:39,642 おっ 分かってるね。 236 00:20:39,642 --> 00:20:44,581 おんなじ鰹節から いろんな味ができるもんだなあ。 237 00:20:44,581 --> 00:20:47,717 全く 大したもんだよ お澪坊は。 238 00:20:47,717 --> 00:20:52,388 上方の昆布出汁とは まるっきり 勝手が違うってのによう。 239 00:20:52,388 --> 00:20:54,724 そうなのか。 はい。 240 00:20:54,724 --> 00:20:58,061 昆布出汁のうまみは まろやかで甘いんです。 241 00:20:58,061 --> 00:21:02,732 口の中いっぱいに ふんわり広がっていくような心地。 242 00:21:02,732 --> 00:21:06,069 逆に鰹出汁のうまみは鋭くて➡ 243 00:21:06,069 --> 00:21:08,404 舌の上に 集まってくる心地がします。 244 00:21:08,404 --> 00:21:11,741 ふ~ん…。 245 00:21:11,741 --> 00:21:14,077 いっそ 両方いっぺんに飲んじまやあ➡ 246 00:21:14,077 --> 00:21:17,947 口の中が すっかり うまみで満たされそうだなあ。 247 00:21:17,947 --> 00:21:21,417 (種市)そいつは 欲が深すぎるってもんだ。 248 00:21:21,417 --> 00:21:23,753 (伊佐三)すまねえ 女房の食い意地がうつっちまった。 249 00:21:23,753 --> 00:21:26,422 (種市 伊佐三)ハッハッハッハッハッ! 250 00:21:26,422 --> 00:21:34,422 ♬~ 251 00:21:37,700 --> 00:21:39,636 小松原様! 252 00:21:39,636 --> 00:21:41,571 おう 親父。 253 00:21:41,571 --> 00:21:44,574 悪いが 一杯だけ飲ませてくれるか? 254 00:21:44,574 --> 00:21:47,377 そりゃあ もう。 255 00:21:47,377 --> 00:21:50,713 随分 ご無沙汰じゃあ ございませんか? 256 00:21:50,713 --> 00:21:52,713 ああ…。 257 00:21:58,054 --> 00:22:00,354 見当たらんな。 え? 258 00:22:01,925 --> 00:22:05,395 あの 下がり眉だ。 259 00:22:05,395 --> 00:22:08,064 ああ お澪坊なら…。 260 00:22:08,064 --> 00:22:24,414 ♬~ 261 00:22:24,414 --> 00:22:27,317 合わせ出汁? (種市)ええ。 262 00:22:27,317 --> 00:22:32,689 うまみが 片や広がり 片や集まる。 263 00:22:32,689 --> 00:22:35,024 昆布と鰹の いいところ合わせたら➡ 264 00:22:35,024 --> 00:22:39,696 とんでもねえ出汁が できるはずだって言いやしてね。 265 00:22:39,696 --> 00:22:43,366 なんと まあ…。 266 00:22:43,366 --> 00:22:46,703 あっしだって あきれてますよ。 267 00:22:46,703 --> 00:22:51,040 けど お澪坊が やりてえってんなら➡ 268 00:22:51,040 --> 00:22:53,740 気の済むまで やらせてやりてえ。 269 00:22:57,714 --> 00:23:00,714 何だって そんなに肩入れする? 270 00:23:03,586 --> 00:23:05,586 小松原様…。 271 00:23:07,390 --> 00:23:12,090 何で うちの屋号が つる家だか お分かりですか? 272 00:23:14,264 --> 00:23:16,264 つる…。 273 00:23:22,739 --> 00:23:24,674 違いますよ! 274 00:23:24,674 --> 00:23:29,078 ああ ち… 違うのか。 275 00:23:29,078 --> 00:23:38,688 あっしが お澪坊と出会ったのは 水無月の15日。 276 00:23:38,688 --> 00:23:42,988 娘 つるの 祥月命日だったんでさぁ。 277 00:23:45,561 --> 00:23:51,261 (種市)17で逝っちまった 大事な一人娘の おつる。 278 00:23:53,036 --> 00:23:56,906 (種市)お澪坊を初めて見た時➡ 279 00:23:56,906 --> 00:23:59,709 あっ おつるだ。➡ 280 00:23:59,709 --> 00:24:04,580 おつるが 俺んとこへ帰ってきた。➡ 281 00:24:04,580 --> 00:24:08,718 あっしは そう思ったんでさぁ。 282 00:24:08,718 --> 00:24:11,387 お澪坊を知れば知るほど➡ 283 00:24:11,387 --> 00:24:16,387 あっ やっぱり おつるが戻ってきた。 284 00:24:18,061 --> 00:24:21,731 あっしに償いをさせるために➡ 285 00:24:21,731 --> 00:24:26,431 この娘に姿を変えて 戻ってきてくれたんだと。 286 00:24:32,008 --> 00:24:35,345 そうか。 へい。 287 00:24:35,345 --> 00:24:38,681 禿だからじゃなかったんだな。 そこですかい。 288 00:24:38,681 --> 00:24:41,017 フフフフッ。 289 00:24:41,017 --> 00:24:46,317 しかし 何とも 眉の下がった娘に 姿を変えたもんだな。 フフッ。 290 00:24:48,358 --> 00:24:51,694 いや 小松原様…。 291 00:24:51,694 --> 00:24:54,597 料理に入り込んでる時の お澪坊は➡ 292 00:24:54,597 --> 00:24:58,297 ちっとも 下がり眉じゃないんですぜ。 293 00:25:00,036 --> 00:25:05,375 まるで 愛染明王みてえで。➡ 294 00:25:05,375 --> 00:25:07,675 そら 恐ろしいくらいだ。 295 00:25:10,046 --> 00:25:12,715 (種市) あの小さな体に背負わせるのは➡ 296 00:25:12,715 --> 00:25:15,015 酷かもしれねえが…。 297 00:25:16,586 --> 00:25:19,589 (種市)あっしは賭けてるんです。 298 00:25:19,589 --> 00:25:24,060 お澪坊の清い心根と➡ 299 00:25:24,060 --> 00:25:26,396 料理の才に。 300 00:25:26,396 --> 00:26:50,096 ♬~ 301 00:27:07,029 --> 00:27:09,029 ≪お邪魔しますよ! 302 00:27:12,902 --> 00:27:16,602 日本橋伊勢町 大坂屋でございます。 303 00:27:31,721 --> 00:27:34,323 こ… こいつは 一体…。 304 00:27:34,323 --> 00:27:38,023 お品が切れましたら また お声がけ下さい。 305 00:27:39,662 --> 00:27:42,362 ほな お邪魔さまです。 306 00:27:50,306 --> 00:27:54,010 つる家の旦那さんに お頼み申します。 307 00:27:54,010 --> 00:27:56,010 ご寮さん! 308 00:28:01,684 --> 00:28:04,020 ご寮さん 何をなさるんで! 309 00:28:04,020 --> 00:28:07,356 何もおっしゃらず これを使うて➡ 310 00:28:07,356 --> 00:28:11,227 澪に思うような料理を 作らせてやって頂きとうおます。 311 00:28:11,227 --> 00:28:14,697 か… 顔を上げて下せえ! 体だって悪いのに…。 312 00:28:14,697 --> 00:28:17,366 ご寮さん! 313 00:28:17,366 --> 00:28:20,666 ご寮さん 簪…。 314 00:28:27,043 --> 00:28:30,379 澪。 315 00:28:30,379 --> 00:28:33,679 存分に試しとおみ。 316 00:28:39,188 --> 00:28:43,926 ご寮さん…。 317 00:28:43,926 --> 00:28:59,542 (泣き声) 318 00:28:59,542 --> 00:29:31,040 ♬~ 319 00:29:31,040 --> 00:29:34,910 ひい ふう みい よう➡ 320 00:29:34,910 --> 00:29:41,317 いつ むう なあ やあ ここ とお。 321 00:29:41,317 --> 00:31:00,062 ♬~ 322 00:31:00,062 --> 00:31:03,733 ご寮さん 朝餉が出来ました。 323 00:31:03,733 --> 00:31:12,742 ♬~ 324 00:31:12,742 --> 00:31:15,077 (芳)茶碗蒸しか。 325 00:31:15,077 --> 00:31:17,980 久しぶりやなあ。 326 00:31:17,980 --> 00:31:19,949 どうぞ。 327 00:31:19,949 --> 00:31:22,418 頂きます。 328 00:31:22,418 --> 00:31:41,370 ♬~ 329 00:31:41,370 --> 00:31:45,670 澪 この出汁は…。 330 00:31:48,711 --> 00:31:52,411 でけたんやな。 でけたんやな 澪! 331 00:31:56,051 --> 00:32:01,390 この合わせ出汁で 最初に 何 作ろか思て。 332 00:32:01,390 --> 00:32:05,690 つる家の旦那さんには 申し訳ない思たんですけど…。 333 00:32:08,731 --> 00:32:15,404 卵に 百合根に…➡ 334 00:32:15,404 --> 00:32:17,404 銀杏。 335 00:32:20,075 --> 00:32:22,011 澪…。 336 00:32:22,011 --> 00:32:25,748 ご寮さん しっかり 滋養つけて➡ 337 00:32:25,748 --> 00:32:29,418 早う元気になって下さいね。 338 00:32:29,418 --> 00:32:34,118 澪 あんたいう子は…。 339 00:32:41,030 --> 00:32:45,701 おいしい。 ほんまに おいしいわ。 340 00:32:45,701 --> 00:32:48,037 (芳 澪)フフフフッ。 341 00:32:48,037 --> 00:33:30,412 ♬~ 342 00:33:30,412 --> 00:33:32,412 こいつは いけねえ。 343 00:33:36,018 --> 00:33:39,318 いけねえよう! 344 00:33:42,691 --> 00:33:44,627 (種市)いけねえよう…。 345 00:33:44,627 --> 00:33:48,564 いや~ うまいねえ! ありがとうございます! 346 00:33:48,564 --> 00:33:59,041 ♬~ 347 00:33:59,041 --> 00:34:01,944 こんな うまいものが この世にある訳がありません! 348 00:34:01,944 --> 00:34:04,713 ねえ 先生! ふん。 349 00:34:04,713 --> 00:34:07,383 (坂村堂)これは まるで極楽の味! 350 00:34:07,383 --> 00:34:11,083 口の中で とろとろと 溶けてしまいましたよ! 351 00:34:15,257 --> 00:34:18,257 とろとろ茶碗蒸しっていうのかい おい! 352 00:34:22,731 --> 00:34:26,068 すんません。 悪いね! また明日な! 353 00:34:26,068 --> 00:34:28,768 すんません。 354 00:34:55,030 --> 00:35:29,398 ♬~ 355 00:35:29,398 --> 00:35:31,398 (猫の鳴き声) 356 00:35:33,268 --> 00:35:36,568 えっ? えっ!? 357 00:35:40,342 --> 00:35:43,642 合わせ出汁が出来たのだな。 358 00:35:47,016 --> 00:35:52,688 若い娘が 香をたきしめもせず 出汁で煮しめられるやつがあるか。 359 00:35:52,688 --> 00:35:55,024 この下がり眉。 360 00:35:55,024 --> 00:36:15,024 ♬~ 361 00:36:17,713 --> 00:36:20,049 こんなに おいしいの 生まれて初めてです。 362 00:36:20,049 --> 00:36:22,718 澪ちゃんは 奉公人でも 同居人でもない➡ 363 00:36:22,718 --> 00:36:25,621 紛れもなく娘なのさ。 強うなりたい。 364 00:36:25,621 --> 00:36:29,058 そやないと 大事な人を守られへんから。 365 00:36:29,058 --> 00:36:31,358 お前のが好きだ。 え? 366 00:36:39,668 --> 00:36:44,968 <とろとろ茶碗蒸し 私と一緒に作りませんか?> 367 00:36:57,219 --> 00:37:01,356 <まず 出汁を冷ましておく。➡ 368 00:37:01,356 --> 00:37:03,692 卵をよく かき混ぜます。➡ 369 00:37:03,692 --> 00:37:08,030 かき混ぜ方が足らんと 後で固まりにくいんです。➡ 370 00:37:08,030 --> 00:37:10,699 さっきの冷ました出汁を 加えます。➡ 371 00:37:10,699 --> 00:37:14,369 薄口醤油 塩 みりんで 味を調え➡ 372 00:37:14,369 --> 00:37:16,669 また かき混ぜる> 373 00:37:29,718 --> 00:37:33,989 <蒸している間に 具の下ごしらえをします。➡ 374 00:37:33,989 --> 00:37:37,860 百合根は 塩少々で 透明感が出るまで ゆで➡ 375 00:37:37,860 --> 00:37:39,862 海老は ひたひたの水に➡ 376 00:37:39,862 --> 00:37:44,333 塩と酒少々で ゆでます。➡ 377 00:37:44,333 --> 00:37:50,633 銀杏は 塩少々でゆで 薄皮をむき 半分に切る> 378 00:37:55,677 --> 00:37:59,348 <百合根 海老 銀杏を飾ったら➡ 379 00:37:59,348 --> 00:38:01,283 具が顔を出すぐらいまで➡ 380 00:38:01,283 --> 00:38:03,983 さっき残したものを 注ぎます> 381 00:38:05,687 --> 00:38:07,623 <具が表面に顔を出し➡ 382 00:38:07,623 --> 00:38:11,623 目に鮮やかになるよう 2段蒸しにします> 383 00:38:14,029 --> 00:38:17,900 <蒸し上がったら 柚子を飾ります。➡ 384 00:38:17,900 --> 00:38:22,704 とろとろ茶碗蒸し どうぞ召し上がれ> 385 00:38:22,704 --> 00:38:25,607 春だったら 柚子の代わりに 木の芽を使うなど➡ 386 00:38:25,607 --> 00:38:28,907 旬の食材を使うと よいでしょう。 試してみて下さいね。