1 00:00:02,366 --> 00:00:06,103 標識に加え路面にも白い文字で STOPと表示されています。 2 00:00:35,098 --> 00:00:38,068 (澪)小松原様にも 苦手なものがあるやなんて➡ 3 00:00:38,068 --> 00:00:41,872 思いも寄りませんでした。 ほかにもあるんですか? 4 00:00:41,872 --> 00:00:43,807 (小松原)そうだな…。 5 00:00:43,807 --> 00:00:48,211 生姜と鱚が駄目だな。 まあ。 6 00:00:48,211 --> 00:00:54,885 あ~ 駄目だ。 どちらも 言葉にしただけで げんなりする。 7 00:00:54,885 --> 00:00:58,221 頼む 俺には決して 出さないようにしてくれ。 8 00:00:58,221 --> 00:01:01,124 はい。 9 00:01:01,124 --> 00:01:03,824 [ 回想 ] これ以上 つる家に構うな。 10 00:01:05,896 --> 00:01:08,565 土圭の間の小野寺が そう言っていたと➡ 11 00:01:08,565 --> 00:01:10,565 采女に伝えよ。 12 00:01:12,235 --> 00:01:18,909 笑い過ぎだぞ 下がり眉! フフフフッ…。 13 00:01:18,909 --> 00:01:20,844 源斉先生。 14 00:01:20,844 --> 00:01:23,780 (源斉)ああ… すみません。 15 00:01:23,780 --> 00:01:26,583 もう 店じまいだとは 思ったのですが…。 16 00:01:26,583 --> 00:01:31,254 ああ どうぞ。 小松原様にも 今 お出ししたところですから。 17 00:01:31,254 --> 00:01:33,954 あっ では…。 18 00:01:41,064 --> 00:01:44,201 往診の帰りですか? 19 00:01:44,201 --> 00:01:49,072 ええ。 土用だというのに 食事するのを忘れてしまいまして。 20 00:01:49,072 --> 00:01:53,543 源斉先生らしい。 でも お医者様が倒れては➡ 21 00:01:53,543 --> 00:01:56,880 ご面目が立たないでしょう。 ええ 本当に。 22 00:01:56,880 --> 00:01:58,880 お待ち下さい。 23 00:02:01,551 --> 00:02:05,422 (種市)あれ こいつぁ 珍しい組み合わせだなぁ。 24 00:02:05,422 --> 00:02:07,891 遅くにすみません。 いえいえ。 25 00:02:07,891 --> 00:02:10,560 よし 俺は そろそろ帰る。 26 00:02:10,560 --> 00:02:13,230 (種市)えっ そんな まだいいじゃありませんか。 27 00:02:13,230 --> 00:02:16,900 腹が膨れたら眠くなった。 28 00:02:16,900 --> 00:02:19,200 またな 下がり眉。 29 00:02:24,241 --> 00:02:26,541 あっ 小松原様! 30 00:02:28,578 --> 00:02:34,184 これ ありがとうございました。 31 00:02:34,184 --> 00:02:36,484 捨てればいいものを。 32 00:02:41,858 --> 00:02:46,530 全く どっから来て どこへ帰るんだか。 33 00:02:46,530 --> 00:02:49,199 小松原様とおっしゃいましたか。 34 00:02:49,199 --> 00:02:54,871 ええ。 あんな風体ですけど 舌の肥えた旦那でさぁ。 35 00:02:54,871 --> 00:02:57,541 お澪坊の料理を 贔屓にして下さって➡ 36 00:02:57,541 --> 00:02:59,841 ありがてえなぁ。 37 00:03:04,881 --> 00:03:30,106 ♬~ 38 00:03:30,106 --> 00:03:33,043 うれしかったわ。 39 00:03:33,043 --> 00:03:36,813 下がり眉の名付け親に会えて。 40 00:03:36,813 --> 00:03:39,182 ああ…。 41 00:03:39,182 --> 00:03:46,523 澪。 おまはんは 私の娘のようなもんや。 42 00:03:46,523 --> 00:03:50,860 けど いっそ ほんまの娘になってくれたらと➡ 43 00:03:50,860 --> 00:03:54,531 どれだけ願うたか知れん。 44 00:03:54,531 --> 00:03:56,866 え? 45 00:03:56,866 --> 00:04:03,540 もしも… もしも 佐兵衛が 無事に戻ったら➡ 46 00:04:03,540 --> 00:04:09,540 佐兵衛の嫁になってほしいと。 そして 私の娘に…。 47 00:04:13,216 --> 00:04:15,151 ご寮さん…。 48 00:04:15,151 --> 00:04:18,088 堪忍してな。 49 00:04:18,088 --> 00:04:25,788 おまはんが誰を思てるか よう分かった。 50 00:04:29,232 --> 00:04:33,503 私… 考えてません。 51 00:04:33,503 --> 00:04:36,203 そんな大それた事…。 52 00:04:37,841 --> 00:04:42,512 小松原様やなんて そんな…。 53 00:04:42,512 --> 00:04:44,447 そんな…。 54 00:04:44,447 --> 00:04:54,124 ♬~ 55 00:04:54,124 --> 00:04:57,527 酒井右近! 御膳奉行の立場を悪用し➡ 56 00:04:57,527 --> 00:05:01,865 商人から賂を得ていた疑いあり 同道せよ! 57 00:05:01,865 --> 00:05:04,865 うわ~! 待てい! 58 00:05:07,537 --> 00:05:12,409 しかし これは 賂なんぞという 些末な罪ではなかった。 59 00:05:12,409 --> 00:05:14,878 恐れ多くも 公方様をも巻き込んだ➡ 60 00:05:14,878 --> 00:05:18,748 大がかりな悪事が 企てられていたのだ。 61 00:05:18,748 --> 00:05:22,218 そ… その悪事とは一体…。 62 00:05:22,218 --> 00:05:24,218 それはな…。 63 00:05:26,556 --> 00:05:29,459 それは…➡ 64 00:05:29,459 --> 00:05:31,759 これから考える。 65 00:05:34,831 --> 00:05:36,766 御膳奉行の不正とは➡ 66 00:05:36,766 --> 00:05:40,170 我ながら いい目の付けどころだと 思うたのだが➡ 67 00:05:40,170 --> 00:05:43,506 いかんせん からくりが思いつかん。 68 00:05:43,506 --> 00:05:45,842 御膳奉行って何ですか? 69 00:05:45,842 --> 00:05:48,178 ん? 平たく言えば➡ 70 00:05:48,178 --> 00:05:51,514 公方様の召し上がる 献立を考えたり➡ 71 00:05:51,514 --> 00:05:55,385 料理番に料理法を指南したりする お役目だ。 72 00:05:55,385 --> 00:05:57,387 公方様の。 73 00:05:57,387 --> 00:05:59,856 よほど食べ物について ご存じないと➡ 74 00:05:59,856 --> 00:06:02,759 務まらへんでしょうねえ。 知識だけでは務まらんぞ。 75 00:06:02,759 --> 00:06:05,729 確かな舌を持っておらねば。 (坂村堂)先生。 76 00:06:05,729 --> 00:06:07,731 そんな思いつきは どうでもいいから➡ 77 00:06:07,731 --> 00:06:11,868 さっさと あさひ太夫の物語を 書いて下さいよ! 78 00:06:11,868 --> 00:06:13,803 (種市)あさひ太夫だって? 79 00:06:13,803 --> 00:06:17,741 あの 吉原の幻の花魁かい? (坂村堂)そうですよ。➡ 80 00:06:17,741 --> 00:06:22,879 もう随分前から 想を練っていらっしゃるんです。 81 00:06:22,879 --> 00:06:25,782 (おりょう)えっ 何だい その 幻の花魁って? 82 00:06:25,782 --> 00:06:30,553 翁屋って見世にいる 吉原一って評判の花魁だよ。 83 00:06:30,553 --> 00:06:32,822 (清右衛門)若いのう 親父。 84 00:06:32,822 --> 00:06:35,492 (坂村堂) その美しさは ただならず➡ 85 00:06:35,492 --> 00:06:40,363 牡丹の花も自ら恥じて しおれるほどとか。➡ 86 00:06:40,363 --> 00:06:46,836 唄を歌えば その声の美しさに うぐいすまでもが聞きほれるとか。 87 00:06:46,836 --> 00:06:49,739 けど 噂ばかりが ひとり歩きして➡ 88 00:06:49,739 --> 00:06:51,708 実際に その あさひ太夫を見た者は➡ 89 00:06:51,708 --> 00:06:53,710 いねえってんだよ。 90 00:06:53,710 --> 00:06:56,846 しかし 清右衛門先生は きっと本当にいると にらみ➡ 91 00:06:56,846 --> 00:07:01,518 それを御作に使おうと 思いつかれた。 92 00:07:01,518 --> 00:07:05,855 あさひ太夫… 何だか面白そうだねえ! 93 00:07:05,855 --> 00:07:08,525 その 何とか奉行の ややっこしそうな話より➡ 94 00:07:08,525 --> 00:07:12,195 よっぽど読んでみたいよ! 95 00:07:12,195 --> 00:07:14,864 [ 回想 ] (又次)斬られちまったんだ。 96 00:07:14,864 --> 00:07:16,800 ああ~っ! 97 00:07:16,800 --> 00:07:19,500 (又次)菊乃って遊女をかばって。 98 00:07:35,485 --> 00:07:39,485 心配なんやな 野江ちゃんの事。 99 00:07:41,357 --> 00:07:45,657 又次さんには とても言われへんし…。 100 00:07:58,508 --> 00:08:01,208 涙は 来ん来ん。 101 00:08:04,180 --> 00:08:07,083 転んで 膝を擦りむいた時➡ 102 00:08:07,083 --> 00:08:11,521 野江ちゃんが こうして 励ましてくれたんです。 103 00:08:11,521 --> 00:08:13,857 泣いたらあかん➡ 104 00:08:13,857 --> 00:08:16,557 涙は あっちいけって。 105 00:08:18,528 --> 00:08:24,868 私には こうして願う事しかできません。 106 00:08:24,868 --> 00:08:28,538 野江ちゃんが 泣いてませんようにって。 107 00:08:28,538 --> 00:08:37,814 ♬~ 108 00:08:37,814 --> 00:08:41,114 涙は 来ん来ん。 109 00:08:48,825 --> 00:08:52,495 (伝右衛門)こっちだ こっちだ! 届いたぞ 又次! 110 00:08:52,495 --> 00:08:54,831 さあ早く運びなさい。 へい! 111 00:08:54,831 --> 00:08:57,500 そこへ置いて。 112 00:08:57,500 --> 00:08:59,435 ご苦労さん。 113 00:08:59,435 --> 00:09:02,435 早速 取りかかれ。 (又次)はい。 114 00:09:12,048 --> 00:09:14,048 こいつは? 115 00:09:20,523 --> 00:09:22,523 あっ! 116 00:09:25,862 --> 00:09:28,531 熱は もうないようですね。 117 00:09:28,531 --> 00:09:32,531 傷も滞りなく塞がってきています。 118 00:09:37,807 --> 00:09:40,107 (あさひ太夫)菊乃。 119 00:09:51,154 --> 00:09:55,024 身請けが決まったんやて? 120 00:09:55,024 --> 00:09:57,827 (菊乃)太夫…。 121 00:09:57,827 --> 00:10:02,498 どうか許して下しゃんせ。➡ 122 00:10:02,498 --> 00:10:07,370 私のせいで こんな事になったのに➡ 123 00:10:07,370 --> 00:10:09,670 私だけ…。 124 00:10:16,512 --> 00:10:19,512 何を あほな事 言うてるのや。 125 00:10:24,387 --> 00:10:30,526 おめでとう。 幸せになるんやで。 126 00:10:30,526 --> 00:10:36,866 (泣き声) 127 00:10:36,866 --> 00:10:38,866 源斉先生。 128 00:10:42,739 --> 00:10:47,210 旦那様が ちょっと板場へ お願いしますと。 129 00:10:47,210 --> 00:10:49,545 板場? 130 00:10:49,545 --> 00:10:53,883 では あさひという遊女は 本当にいたのですね。 131 00:10:53,883 --> 00:10:57,220 翁屋は それを 必死に打ち消してはいるが➡ 132 00:10:57,220 --> 00:10:59,889 人の口に戸は立てられんものよ。 133 00:10:59,889 --> 00:11:03,226 さすが 清右衛門先生 よくぞ そこまで。 134 00:11:03,226 --> 00:11:05,161 それだけではない。➡ 135 00:11:05,161 --> 00:11:09,565 どうやら あさひ太夫は 上方の出らしいのだ。 136 00:11:09,565 --> 00:11:11,501 (坂村堂)上方の…。➡ 137 00:11:11,501 --> 00:11:14,904 新町廓を経て 吉原へ売られたのでしょうか。 138 00:11:14,904 --> 00:11:20,243 ふん。 その いきさつは これから調べるところだ。 139 00:11:20,243 --> 00:11:22,912 聞いちゃいけない 聞いちゃ いけないと思うんですがね➡ 140 00:11:22,912 --> 00:11:26,249 もう どうしても 耳に入っちまって。 141 00:11:26,249 --> 00:11:30,586 客の話を店の主が 盗み聞きするなんてなぁ。➡ 142 00:11:30,586 --> 00:11:33,489 しゃれにもならねえ。 143 00:11:33,489 --> 00:11:37,393 よう 先生。 こんにちは。 144 00:11:37,393 --> 00:11:39,862 澪さん お忙しいところ すみません。 145 00:11:39,862 --> 00:11:42,198 少し お話できますか? 146 00:11:42,198 --> 00:11:45,101 あ… はい。 どうぞ お掛けになってて下さい。 147 00:11:45,101 --> 00:11:47,101 はい。 148 00:11:49,072 --> 00:11:51,207 (清右衛門)それからな➡ 149 00:11:51,207 --> 00:11:53,876 あさひ太夫だけを診る医者が いるらしい。 150 00:11:53,876 --> 00:11:56,212 (坂村堂)一体 どうやって そのような事を…。 151 00:11:56,212 --> 00:11:58,548 翁屋で厠に立った時だ。 152 00:11:58,548 --> 00:12:00,483 吉原の客とは思えぬ➡ 153 00:12:00,483 --> 00:12:03,886 涼やかで聡い顔だちの 医者を見かけた。 154 00:12:03,886 --> 00:12:07,757 通りかかった男衆に銭をつかませ 聞き出したところ➡ 155 00:12:07,757 --> 00:12:10,760 わしの にらんだとおりだった。➡ 156 00:12:10,760 --> 00:12:14,897 しかも その医者は 御典医の倅だというのだ。 157 00:12:14,897 --> 00:12:17,567 御典医の!? 158 00:12:17,567 --> 00:12:19,502 その 御典医とは一体…。 159 00:12:19,502 --> 00:12:23,239 (清右衛門)永田陶斉じゃ。 永田…? 160 00:12:23,239 --> 00:12:27,110 (清右衛門)そして その町医者は 陶斉の次男 永田…。 161 00:12:27,110 --> 00:12:29,112 源斉先生? そう 源斉… ん? 162 00:12:29,112 --> 00:12:33,049 なぜ お前が知っておるのだ。 失礼。 用を思い出しました。 163 00:12:33,049 --> 00:12:37,186 あっ そうそう ちょうど こんな 涼やかで聡い顔… ああっ! 164 00:12:37,186 --> 00:12:39,886 永田源斉! (坂村堂)えっ!? 165 00:12:49,532 --> 00:12:51,532 源斉先生! 166 00:12:57,874 --> 00:13:01,574 確かに 父は 奥医師です。 167 00:13:03,212 --> 00:13:09,212 しかし 私は ただの町医者です。 168 00:13:10,887 --> 00:13:14,187 あさひ太夫の怪我の具合を 教えて下さい。 169 00:13:19,562 --> 00:13:22,862 どうか お願いします。 170 00:13:26,235 --> 00:13:30,935 なぜ そんな事が知りたいのです。 171 00:13:32,842 --> 00:13:35,542 野江ちゃんやったんです。 172 00:13:37,513 --> 00:13:43,186 あさひ太夫は 幼なじみの野江ちゃんなんです。 173 00:13:43,186 --> 00:13:45,186 まさか…。 174 00:13:50,526 --> 00:13:54,226 まさか そんな事が…。 175 00:14:03,105 --> 00:14:05,875 患者の体に関して➡ 176 00:14:05,875 --> 00:14:10,746 知り得た事の一切を ほかに漏らしてはならない。 177 00:14:10,746 --> 00:14:16,519 医師となった時に 父から 戒めとして言われた言葉です。 178 00:14:16,519 --> 00:14:27,563 ♬~ 179 00:14:27,563 --> 00:14:30,900 澪さんは 鱧を料理できますか? 180 00:14:30,900 --> 00:14:35,600 鱧? はい。 181 00:14:38,507 --> 00:14:42,178 上方では なじみの深い魚だそうですが➡ 182 00:14:42,178 --> 00:14:44,113 江戸では珍しい。 183 00:14:44,113 --> 00:14:47,516 上方から舟で運んできたものの➡ 184 00:14:47,516 --> 00:14:52,855 さばける人がいないと 困っているお方がいるのですよ。 185 00:14:52,855 --> 00:14:55,155 その方というのは…。 186 00:14:59,528 --> 00:15:04,400 翁屋の楼主 伝右衛門殿です。 187 00:15:04,400 --> 00:15:07,870 翁屋て…。 188 00:15:07,870 --> 00:15:10,570 あさひ太夫のいる廓です。 189 00:15:18,214 --> 00:15:20,149 源斉先生! 190 00:15:20,149 --> 00:15:23,552 いや いくら 源斉先生のおっしゃる事でも➡ 191 00:15:23,552 --> 00:15:26,455 こればかりはいけません。 192 00:15:26,455 --> 00:15:31,427 伝右衛門殿。 こちらは正真正銘➡ 193 00:15:31,427 --> 00:15:35,831 上方の名料理屋で 包丁を握っていた料理人です。 194 00:15:35,831 --> 00:15:38,734 鱧について詳しく 安心して料理を任せられる…。 195 00:15:38,734 --> 00:15:45,174 女が作った料理など この翁屋で出せる道理がない。➡ 196 00:15:45,174 --> 00:15:49,474 そちらの方には お引き取り願いましょうか。 197 00:15:51,847 --> 00:15:55,518 どうして 女が作る料理は 駄目なのでしょうか。 198 00:15:55,518 --> 00:15:57,518 (伝右衛門のため息) 199 00:16:00,389 --> 00:16:05,528 女の料理は あくまで所帯の賄い。 200 00:16:05,528 --> 00:16:10,199 板場に女が入る事など とんでもない事ですよ。 201 00:16:10,199 --> 00:16:14,070 月の障りのあるような手で 作られたものなど➡ 202 00:16:14,070 --> 00:16:17,073 銭を払ってまで食いたいとは 思わない。 203 00:16:17,073 --> 00:16:19,542 おいしいお料理を作るのに➡ 204 00:16:19,542 --> 00:16:23,879 男も女も 関係ないのやありませんか? 205 00:16:23,879 --> 00:16:26,782 料理を口にして おいしい思た気持ちは➡ 206 00:16:26,782 --> 00:16:29,552 料理人が女と知っただけで 消えてしまうものなのでしょうか。 207 00:16:29,552 --> 00:16:31,887 消えてしまうでしょうな。 208 00:16:31,887 --> 00:16:36,726 (又次)その人を帰しちまったら 客に出す料理が作れませんぜ。 209 00:16:36,726 --> 00:16:40,162 あっ 又次さん 怪我の具合は いかがですか? 210 00:16:40,162 --> 00:16:44,033 ああ 先生…。 この役立たずが! 211 00:16:44,033 --> 00:16:46,035 料理番のくせに➡ 212 00:16:46,035 --> 00:16:50,172 あんな魚一匹 まともにさばけず 手ぇ かまれるとは。➡ 213 00:16:50,172 --> 00:16:53,075 どこまで ふがいないのだ。 214 00:16:53,075 --> 00:16:57,847 それは 鱧という魚を知らないから 言える事です。 215 00:16:57,847 --> 00:17:00,750 気性が荒い上 血には毒。 216 00:17:00,750 --> 00:17:03,519 にわかに 扱いきれるものではありません。 217 00:17:03,519 --> 00:17:06,422 おい! ≪へい! 218 00:17:06,422 --> 00:17:08,858 今すぐ 喜の字屋へ行って➡ 219 00:17:08,858 --> 00:17:12,528 一等 腕の立つ料理人に 来てもらえ。 へい。 220 00:17:12,528 --> 00:17:15,197 (伝右衛門) 祝儀は いくらでも弾む。➡ 221 00:17:15,197 --> 00:17:18,534 何なら 給金の半分払うと そう言いな。 222 00:17:18,534 --> 00:17:20,534 へい。 223 00:17:27,543 --> 00:17:31,881 源斉先生 お聞きのとおりでございます。 224 00:17:31,881 --> 00:17:35,484 せっかくのお心遣いでは ありますが➡ 225 00:17:35,484 --> 00:17:40,156 翁屋伝右衛門 手前の方で 料理人を手配しましたので➡ 226 00:17:40,156 --> 00:17:44,156 今日のところは ご勘弁のほどを。 227 00:17:46,495 --> 00:17:51,367 廓には 廓のしきたりや 教えもある事でしょう。 228 00:17:51,367 --> 00:17:54,170 ほかに料理人がいるのならば結構。 229 00:17:54,170 --> 00:17:57,073 要らぬ世話を焼いてしまいました。 いえ…。 230 00:17:57,073 --> 00:18:00,509 ただ 伝右衛門殿。 231 00:18:00,509 --> 00:18:04,180 鱧という魚 扱いに危険が伴うのであれば➡ 232 00:18:04,180 --> 00:18:09,852 やはり 医師が そばにいた方がよい。 233 00:18:09,852 --> 00:18:13,522 私に同席させて 頂けませんでしょうか。 234 00:18:13,522 --> 00:18:17,522 できれば この人も一緒に。 235 00:18:19,195 --> 00:18:21,130 お願いします。 236 00:18:21,130 --> 00:18:32,475 ♬~ 237 00:18:32,475 --> 00:18:35,377 えっ 澪ちゃんが? 238 00:18:35,377 --> 00:18:38,677 はい。 俺も手伝いに入ります。 239 00:18:42,485 --> 00:18:45,821 澪ちゃんが すぐそこに…。 240 00:18:45,821 --> 00:18:56,121 ♬~ 241 00:19:03,372 --> 00:19:09,512 ハハッ どんな難しい魚かと思って 来てみりゃあ 何の事はない。 242 00:19:09,512 --> 00:19:12,812 鰻や穴子と同じ見てくれかい。 243 00:19:16,185 --> 00:19:18,185 あっ それは…。 244 00:19:20,055 --> 00:19:24,527 いや うちの料理番が 手ぇ かまれちまった。➡ 245 00:19:24,527 --> 00:19:28,397 扱いには 十分 気を付けて下さいよ。 246 00:19:28,397 --> 00:19:31,400 フッ…。 247 00:19:31,400 --> 00:19:34,100 おい。 へい。 248 00:19:39,041 --> 00:19:42,478 ああっ! あっ! 馬鹿野郎! 249 00:19:42,478 --> 00:19:45,381 引っ張っては駄目です! 指を食いちぎられてしまいます! 250 00:19:45,381 --> 00:19:47,349 ああっ! 251 00:19:47,349 --> 00:19:49,818 落ち着いて下さい! 252 00:19:49,818 --> 00:19:51,818 大事ありません! 253 00:19:53,689 --> 00:19:55,691 湯冷ましはありますか。 254 00:19:55,691 --> 00:20:22,184 ♬~ 255 00:20:22,184 --> 00:20:26,855 先に首の付け根を切って 締めた方が…。 256 00:20:26,855 --> 00:20:28,791 いい加減にしねえか。 257 00:20:28,791 --> 00:20:31,193 すんません…。 258 00:20:31,193 --> 00:21:02,891 ♬~ 259 00:21:02,891 --> 00:21:05,891 鱧は背からはおろせません。 260 00:21:15,471 --> 00:21:20,242 見せ物じゃねえんだ! あっ! 261 00:21:20,242 --> 00:21:23,145 目に入ったんですか!? 早く目を洗って下さい! 262 00:21:23,145 --> 00:21:26,115 手出し口出しは無用だ! いいから 言うとおりになさい。 263 00:21:26,115 --> 00:21:28,117 いいから 構うんじゃねえっつって…。 264 00:21:28,117 --> 00:21:30,417 取り返しのつかない事に なりますよ! 265 00:21:33,789 --> 00:21:37,526 あっ イテッ…。 大丈夫ですか? 266 00:21:37,526 --> 00:21:39,826 なんて魚だ…。 267 00:21:44,199 --> 00:21:46,199 伝右衛門殿。 268 00:21:49,872 --> 00:21:53,542 この際 こちらの料理人に➡ 269 00:21:53,542 --> 00:21:57,242 鱧の調理をお任せになっては いかがでしょうか。 270 00:21:59,882 --> 00:22:02,551 私は医師ですが➡ 271 00:22:02,551 --> 00:22:05,888 これまで扱った事のない症状に 出くわせば➡ 272 00:22:05,888 --> 00:22:09,224 平静さを失う事もあります。 273 00:22:09,224 --> 00:22:14,524 そんな時は 先達の意見に耳を貸し 助けてもらう。 274 00:22:16,899 --> 00:22:21,770 料理人も同じではないでしょうか。 275 00:22:21,770 --> 00:23:57,866 ♬~ 276 00:23:57,866 --> 00:24:00,866 なんと典雅な…。 277 00:24:02,738 --> 00:24:04,740 見える? 何? 278 00:24:04,740 --> 00:24:07,040 何やってるの? は… 鱧? 279 00:24:08,877 --> 00:24:11,780 又次さん 頭と中骨は捨てずに➡ 280 00:24:11,780 --> 00:24:14,750 焦げないくらいに じんわり あぶっておいてもらえませんか。 281 00:24:14,750 --> 00:24:16,752 いい出汁が引けますから。 282 00:24:16,752 --> 00:24:21,223 あと 葛が欲しいんですが。 できれば 吉野葛が。 283 00:24:21,223 --> 00:24:23,559 分かった すぐに用意する。 284 00:24:23,559 --> 00:24:26,228 すり鉢で できるだけ 細かくしておいて下さい。 285 00:24:26,228 --> 00:24:28,163 任してくれ。 286 00:24:28,163 --> 00:25:12,463 ♬~ 287 00:25:20,215 --> 00:25:24,887 これが あの おっかねえ魚の…。 288 00:25:24,887 --> 00:25:27,587 お味を見て下さい。 289 00:26:00,522 --> 00:26:04,522 鬼の目に涙とは この事…。 290 00:26:10,866 --> 00:26:13,769 源斉先生…。 291 00:26:13,769 --> 00:26:23,211 この伝右衛門 今日は 心底 参りました。 292 00:26:23,211 --> 00:26:30,511 さすが 先生が目をかけた 料理人だけの事はあります。 293 00:26:37,159 --> 00:26:40,829 (伝右衛門) お前さんにも礼を言いますよ。 294 00:26:40,829 --> 00:26:46,501 いや~ よくやってくれた。 295 00:26:46,501 --> 00:26:51,840 料理の味わいは おいしいと思う気持ちは➡ 296 00:26:51,840 --> 00:26:55,540 料理人が女と知って 変わったでしょうか。 297 00:26:57,713 --> 00:27:00,182 すまなかった。 298 00:27:00,182 --> 00:27:05,482 いや このとおり。 299 00:27:13,528 --> 00:27:34,483 ♬~ 300 00:27:34,483 --> 00:27:37,183 さすが 澪ちゃんやわ。 301 00:27:41,156 --> 00:27:43,156 (又次)太夫。 302 00:27:45,827 --> 00:27:48,527 本当にいいんですか。 303 00:27:51,166 --> 00:27:54,836 このまま 澪さんを帰しちまって。 304 00:27:54,836 --> 00:28:04,513 ♬~ 305 00:28:04,513 --> 00:28:09,184 伝右衛門殿が 何かお礼をしたいと 言っていましたよ。 306 00:28:09,184 --> 00:28:12,854 そんな お礼なんて。 307 00:28:12,854 --> 00:28:15,757 そう言うと思いました。 308 00:28:15,757 --> 00:28:21,863 ですが 澪さん 本当にいいのですか? え? 309 00:28:21,863 --> 00:28:27,563 本当は 願う事が あるのではありませんか? 310 00:28:30,872 --> 00:28:33,172 (あさひ太夫)あほな事 言いな。 311 00:28:35,477 --> 00:28:41,477 こないな姿 澪ちゃんに 見せられる訳あれへん。 312 00:28:47,489 --> 00:28:50,489 そないな事は願てません。 313 00:28:53,361 --> 00:28:56,061 願てはあかん事なんです。 314 00:29:03,505 --> 00:29:06,174 少し ここでお待ち頂けますか? 315 00:29:06,174 --> 00:29:09,511 先ほど 目に鱧の血が入った人を もう一度 診てきますので。 316 00:29:09,511 --> 00:29:11,446 はい。 317 00:29:11,446 --> 00:29:23,859 ♬~ 318 00:29:23,859 --> 00:29:26,194 澪さん。 319 00:29:26,194 --> 00:29:29,097 又次さん どこへ行くんですか? 320 00:29:29,097 --> 00:29:32,397 源斉先生が戻る前に戻らんと…。 321 00:29:34,469 --> 00:29:40,342 店の裏手 青垣の途切れた所だ。➡ 322 00:29:40,342 --> 00:29:45,814 そこに 翁屋の名の書かれた 天水桶がある。➡ 323 00:29:45,814 --> 00:29:49,484 そこで立っていちゃくれめぇか。 何でですか? 324 00:29:49,484 --> 00:29:53,184 (又次) いいから そうしてほしいんだ。 325 00:29:57,826 --> 00:30:02,497 太夫! ほんの少しだけ障子を開けて➡ 326 00:30:02,497 --> 00:30:04,432 外を見て下さい。 327 00:30:04,432 --> 00:30:19,432 ♬~ 328 00:30:34,196 --> 00:30:36,196 澪ちゃん…。 329 00:30:44,840 --> 00:30:55,884 ♬~(三味線) 330 00:30:55,884 --> 00:30:58,184 あっ…。 331 00:31:08,897 --> 00:31:10,832 野江ちゃん? 332 00:31:10,832 --> 00:32:14,562 ♬~ 333 00:32:14,562 --> 00:32:18,233 (あさひ太夫)来ん 来ん。 334 00:32:18,233 --> 00:32:45,193 ♬~ 335 00:32:45,193 --> 00:32:49,893 (野江)澪ちゃん 涙は 来ん 来ん。 336 00:32:53,535 --> 00:32:56,871 涙は 来ん来ん。 337 00:32:56,871 --> 00:33:09,884 ♬~ 338 00:33:09,884 --> 00:33:11,820 来ん来ん。 339 00:33:11,820 --> 00:33:23,898 ♬~ 340 00:33:23,898 --> 00:33:27,235 野江ちゃん…。 341 00:33:27,235 --> 00:33:30,138 涙は 来ん来ん。 342 00:33:30,138 --> 00:33:50,191 ♬~ 343 00:33:50,191 --> 00:33:55,864 [ 心の声 ] 澪ちゃん いつか会おうね。 344 00:33:55,864 --> 00:34:00,535 [ 心の声 ] うん。 野江ちゃん。➡ 345 00:34:00,535 --> 00:34:05,407 いつか会える。 きっと会える。 346 00:34:05,407 --> 00:34:16,107 ♬~ 347 00:34:19,554 --> 00:34:25,427 きっと かないますよ。 旭日昇天と雲外蒼天。 348 00:34:25,427 --> 00:34:29,427 ともに見上げる天は 一つなのですから。 349 00:34:49,184 --> 00:34:51,184 澪さん。 350 00:34:53,054 --> 00:34:55,857 実は 前のつる家が➡ 351 00:34:55,857 --> 00:34:59,157 火付けに遭った すぐあとの事なのですが…。 352 00:35:02,530 --> 00:35:06,868 これ以上 つる家に構うな。 353 00:35:06,868 --> 00:35:09,537 土圭の間の小野寺が そう言っていたと➡ 354 00:35:09,537 --> 00:35:11,473 采女に伝えよ。 355 00:35:11,473 --> 00:35:14,409 土圭の間の小野寺➡ 356 00:35:14,409 --> 00:35:18,409 つまり 御膳奉行の小野寺様でした。 357 00:35:20,548 --> 00:35:22,884 そのような お方が➡ 358 00:35:22,884 --> 00:35:25,884 どうして つる家のために そんな…。 359 00:35:31,226 --> 00:35:35,926 つる家に頻繁にお見えのようです。 360 00:35:39,834 --> 00:35:42,534 私も先日 お目にかかった。 361 00:35:44,172 --> 00:35:49,844 あ~ 駄目だ。 どちらも 言葉にしただけで げんなりする。 362 00:35:49,844 --> 00:35:53,544 頼む 俺には決して 出さないようにしてくれ。 363 00:35:55,517 --> 00:35:57,517 え…。 364 00:36:05,860 --> 00:36:10,198 小松原様が…➡ 365 00:36:10,198 --> 00:36:12,898 そんな立派な ご身分の…。 366 00:36:17,872 --> 00:36:20,542 江戸一番の料理屋に なろうやなんて➡ 367 00:36:20,542 --> 00:36:24,879 そないな大それた事 夢みたいな事…。 368 00:36:24,879 --> 00:36:28,216 澪標の澪。 それがお前の名だろう。 369 00:36:28,216 --> 00:36:30,916 お前の澪標は何だ? 370 00:36:38,493 --> 00:36:42,830 <鱧の代わりに ふっくら鯛の葛叩き➡ 371 00:36:42,830 --> 00:36:45,830 私と一緒に作りませんか?> 372 00:36:59,180 --> 00:37:03,180 <鯛のさくに 包丁で切れ目を入れ…> 373 00:37:05,520 --> 00:37:07,820 <薄く塩を振る> 374 00:37:09,857 --> 00:37:15,196 <葛は 細かくすって 粉にしておきます。➡ 375 00:37:15,196 --> 00:37:18,533 はけを使って 薄化粧するように➡ 376 00:37:18,533 --> 00:37:22,833 葛の粉を包丁目の奥まで 丁寧にはたく> 377 00:37:25,406 --> 00:37:28,543 <出汁をとったあとの昆布と 塩少々で➡ 378 00:37:28,543 --> 00:37:31,243 下煮の汁を作ります> 379 00:37:33,381 --> 00:37:36,150 <葛をはたいた鯛を さっきの汁で➡ 380 00:37:36,150 --> 00:37:41,489 2分ほど ゆでると 身が ふっくらと広がります。➡ 381 00:37:41,489 --> 00:37:46,789 鯛に火が通ったら 固く絞った布巾に上げておく> 382 00:37:48,363 --> 00:37:54,663 <出汁 塩 薄口醤油を加えて 本つゆを作ります> 383 00:37:58,506 --> 00:38:01,843 <椀に鯛を盛りつけたら➡ 384 00:38:01,843 --> 00:38:08,182 千切りにした青柚子と ちぎった梅干しを飾る。➡ 385 00:38:08,182 --> 00:38:11,182 そこに本つゆを注ぎます> 386 00:38:13,855 --> 00:38:18,855 <ふっくら鯛の葛叩き どうぞ召し上がれ> 387 00:38:24,198 --> 00:38:27,101 そうめんなどを加えても 涼しげに頂けますよ。 388 00:38:27,101 --> 00:38:29,101 試してみて下さいね。