1 00:00:01,635 --> 00:00:04,838 (犬の遠吠え) 2 00:00:09,042 --> 00:00:11,078 (東助)酒だ 酒だ~。 3 00:00:11,078 --> 00:00:13,380 飲むぞ 飲むぞ~! 4 00:00:13,380 --> 00:00:16,083 (笑い声) 5 00:00:18,719 --> 00:00:20,654 (種市)大根と油揚げの椀を3つ! 6 00:00:20,654 --> 00:00:23,223 (芳)こちらは 蓮根のきんぴらを 2人前だす! 7 00:00:23,223 --> 00:00:25,158 (ふき)おいでなさいませ! 8 00:00:25,158 --> 00:00:27,094 (丑丸)親父 まずは酒だ! はい。 9 00:00:27,094 --> 00:00:29,997 (東助)うまそうだな おい! おい こっちにもくれ! 10 00:00:29,997 --> 00:00:34,568 (おりょう)何だい 座りもしないうちから。 食い意地 張ってるねえ もう。 11 00:00:34,568 --> 00:00:37,604 又さん 熱燗1本。 ⚟(又次)はいよ。お澪坊 菊花雪だ。 12 00:00:37,604 --> 00:00:40,073 (澪)は~い。 13 00:00:40,073 --> 00:00:51,752 ♬~ 14 00:00:51,752 --> 00:00:54,755 (又次)はいよ。 ありがとうございます。 15 00:00:57,090 --> 00:00:59,393 お願いします! 16 00:01:04,197 --> 00:01:06,233 (弥三郎)う~ん。 17 00:01:06,233 --> 00:01:08,535 お口に合いましたでしょうか。 18 00:01:08,535 --> 00:01:14,041 いずれも 実にうまい! おおきに ありがとうございました。 19 00:01:14,041 --> 00:01:18,912 妻にせがまれて来たかいがあった。 まあ。 20 00:01:18,912 --> 00:01:22,215 ⚟(種市)お澪坊 だし巻きは まだかい? 21 00:01:22,215 --> 00:01:25,018 ⚟は~い ただいま! 22 00:01:40,734 --> 00:01:44,237 又さん ありがとよ。 こいつぁ 今日の分だ。 23 00:01:44,237 --> 00:01:47,074 遠慮なく頂戴するぜ。 24 00:01:47,074 --> 00:01:52,946 又次さんがいてくれはるおかげで 「三方よしの日」は いつも大入りです。 25 00:01:52,946 --> 00:01:56,416 なに。 俺ぁ 里ん中しか 知らなかったから➡ 26 00:01:56,416 --> 00:02:00,020 10日に一度 こうして みんなと働けるのが➡ 27 00:02:00,020 --> 00:02:03,357 どうにも うれしいのさ。 28 00:02:03,357 --> 00:02:06,693 柄じゃねえがな。 29 00:02:06,693 --> 00:02:11,031 それじゃ すまねえが 今夜も お澪坊とご寮さん 送ってくれるかい。 30 00:02:11,031 --> 00:02:14,067 (又次)もちろんだ。 31 00:02:14,067 --> 00:02:16,703 (小松原)う~ 寒い寒い。 (種市)小松原様! 32 00:02:16,703 --> 00:02:20,207 親父 熱いのを頼む。 (種市)へい! 33 00:02:20,207 --> 00:02:22,409 (ふき)旦那さん。 (種市)ん? 34 00:02:25,846 --> 00:02:29,216 よう。 下がり眉。 35 00:02:29,216 --> 00:02:31,718 ああ いい いい。 すぐに乾く。 でも…。 36 00:02:31,718 --> 00:02:38,392 聞いているぞ。 「三方よしの日」とは なかなか しゃれたことを考えたものだな。 37 00:02:38,392 --> 00:02:44,264 ふだんは酒を出さぬ つる家が 月に三度 三のつく日にだけ酒を出す。 38 00:02:44,264 --> 00:02:49,102 店によし 客によし 世間によしで 三方よし。 39 00:02:49,102 --> 00:02:52,873 フッ 全く お前さんてやつは➡ 40 00:02:52,873 --> 00:02:55,742 眉に似合わず 知恵者だ。 41 00:02:55,742 --> 00:03:00,180 眉で考えるわけや ありません。 フッ。 42 00:03:00,180 --> 00:03:03,817 あ~ 寒い。 俺ぁ 何だか寒気がしてきたぜ。 43 00:03:03,817 --> 00:03:06,520 悪いが お澪坊 あと任せた。 44 00:03:06,520 --> 00:03:10,357 えっ。 旦那さん 大事ありませんか。 私が お布団敷きます。 45 00:03:10,357 --> 00:03:13,260 又次さん すんません 雨降りのようやさかい➡ 46 00:03:13,260 --> 00:03:16,029 わてらは 今夜 こちらに泊めて頂こう思います。 47 00:03:16,029 --> 00:03:19,900 えっ。 あ~ うん そいつがいい うん そうしな。 48 00:03:19,900 --> 00:03:22,602 じゃあ 澪さん また10日後に。 49 00:03:27,541 --> 00:03:30,210 おい。 50 00:03:30,210 --> 00:03:32,546 何か食わせろ。 51 00:03:32,546 --> 00:03:34,748 はい。 52 00:04:08,181 --> 00:04:23,363 ♬~ 53 00:04:23,363 --> 00:04:29,035 ん? 何だ。 54 00:04:29,035 --> 00:04:33,907 何か…。 何か? 55 00:04:33,907 --> 00:04:38,211 何か緑色のものが…。 56 00:04:38,211 --> 00:04:40,847 ああ 取ってくれ。 57 00:04:40,847 --> 00:04:43,850 でも…。 取れ。 58 00:04:45,719 --> 00:04:48,054 …はい。 59 00:04:48,054 --> 00:05:09,342 ♬~ 60 00:05:09,342 --> 00:05:13,213 ああ ほうき草の実だな。 61 00:05:13,213 --> 00:05:15,215 ほうき草? 62 00:05:15,215 --> 00:05:18,518 うん。 枝は 箒の材料だが➡ 63 00:05:18,518 --> 00:05:21,188 実は 料理にも使えるらしい。 64 00:05:21,188 --> 00:05:23,223 まあ。 65 00:05:23,223 --> 00:05:26,526 母方の祖父は もう亡くなってしまったが➡ 66 00:05:26,526 --> 00:05:30,030 陸奥の出で これをよく好んだと聞く。 67 00:05:33,700 --> 00:05:36,203 ん? 68 00:05:36,203 --> 00:05:42,976 いえ。 あの… 初めてやなと思て。 69 00:05:42,976 --> 00:05:45,545 何が? 70 00:05:45,545 --> 00:05:50,383 小松原様が ご自分のことをお話しして下さるの。 71 00:05:50,383 --> 00:06:16,543 ♬~ 72 00:06:16,543 --> 00:06:19,012 また来るよ。 おおきに。 73 00:06:19,012 --> 00:06:22,015 またのお越しを お待ちしとります。 74 00:06:26,753 --> 00:06:28,955 あ…。 75 00:06:32,559 --> 00:06:36,062 早帆といいます。 お見知りおき下さい。 76 00:06:38,198 --> 00:06:41,101 あなたが こちらの料理人ですか。 77 00:06:41,101 --> 00:06:45,372 はい。 澪と申します。 78 00:06:45,372 --> 00:06:49,042 澪さん 一つお願いがあります。 79 00:06:49,042 --> 00:06:53,046 私に お料理を指南して頂けませんか。 80 00:06:56,216 --> 00:07:02,656 恥をお話ししますが 嫁いで13年 一向に料理が上達いたしませぬ。 81 00:07:02,656 --> 00:07:06,660 本来 奉公人に任せていればよいのですが たとえ 時折でも➡ 82 00:07:06,660 --> 00:07:10,363 私は自身で試みたいたちなのです。 83 00:07:12,365 --> 00:07:17,203 夫の好物のかき揚げを作れば 歯こぼれしそうなものしか出来ず➡ 84 00:07:17,203 --> 00:07:22,676 里芋の煮つけは えぐいばかり。 煮魚は ぱさぱさで 焼き魚は ぐずぐず。 85 00:07:22,676 --> 00:07:26,546 鮎飯は焦げ焦げで 栗飯は ごわごわです。 86 00:07:26,546 --> 00:07:32,686 おや まあ。 そりゃあ 奥方様 相当なもんですよ。 87 00:07:32,686 --> 00:07:39,359 ええ。 私の作った料理を食べたくないと 泣いて里に帰った侍女もおります。➡ 88 00:07:39,359 --> 00:07:43,697 湯豆腐は ありえないほど鬆が入って 軽石のようになります。 89 00:07:43,697 --> 00:07:47,367 作った本人が申すのも何なのですが 食べ進めるうちに➡ 90 00:07:47,367 --> 00:07:51,037 豆腐なのか 軽石なのか 分からなくなりました。 91 00:07:51,037 --> 00:07:54,841 プッ… ハハッ 申し訳おまへん。 92 00:07:54,841 --> 00:08:03,350 (笑い声) 93 00:08:04,985 --> 00:08:08,855 ほな 料理の下ごしらえを お教えすることにしたんか。 94 00:08:08,855 --> 00:08:13,660 はい。 早帆様の場合 その方がええと思います。 95 00:08:13,660 --> 00:08:16,162 下ごしらえを おろそかにしたのでは➡ 96 00:08:16,162 --> 00:08:20,033 決して おいしい料理には 仕上がらんさかいな。 97 00:08:20,033 --> 00:08:26,339 天満一兆庵の旦那さんも いつも 口癖のように…。 98 00:08:26,339 --> 00:08:30,543  回想 (嘉兵衛)佐兵衛。 佐兵衛。 99 00:08:32,212 --> 00:08:34,681 (嘉兵衛)佐兵衛~。(芳)佐兵衛! 若旦さ~ん! 100 00:08:34,681 --> 00:08:37,016 (嘉兵衛)どないなっとんのや。 101 00:08:37,016 --> 00:08:43,723 澪… 託せるのは おまはんだけや。 102 00:08:46,693 --> 00:08:53,500 何としても 天満一兆庵の暖簾を…。 103 00:08:56,836 --> 00:08:58,838 この江戸に…。 104 00:09:01,474 --> 00:09:07,647 何で 佐兵衛は 訪ねてきてくれへんのやろか。 105 00:09:07,647 --> 00:09:12,986 わてらが 江戸に つる家にいてることは 知ってるはずやのに。 106 00:09:12,986 --> 00:09:32,672 ♬~ 107 00:09:36,810 --> 00:09:41,681 里芋のえぐみは お米のとぎ汁で 下ゆですることで抜けますよ。 108 00:09:41,681 --> 00:09:46,553 煮つけなら艶やかに仕上がりますし 柔らかな丸い味になるんです。 109 00:09:46,553 --> 00:09:49,823 まあ! 知りませんでした。 110 00:09:49,823 --> 00:09:55,028 煮崩れや色あせを避けたいのなら 下ゆでした方がいいんですよ。 111 00:09:55,028 --> 00:09:58,832 小松菜の煮浸しが 真っ黒で どろどろだった理由が分かりました。 112 00:09:58,832 --> 00:10:01,134 (笑い声) 113 00:10:03,670 --> 00:10:09,375 すっかり打ち解けてらぁ。 まるで姉妹みてぇだぜ。 114 00:10:09,375 --> 00:10:11,845 どこかで お会いしたような気がするんです。 115 00:10:11,845 --> 00:10:14,214 早帆様かい? 116 00:10:14,214 --> 00:10:19,219 実は 俺もそうなんだ。 だが 一向に思い出せねぇ。 117 00:10:22,722 --> 00:10:25,558 あの 早帆様。 はい。 118 00:10:25,558 --> 00:10:31,364 お武家では お母上様から 料理を教わったりはなさらないのですか? 119 00:10:31,364 --> 00:10:37,070 子細は伏せますが お役目柄 亡き父は 母が台所に入るのを好まず➡ 120 00:10:37,070 --> 00:10:41,407 私は 料理をする母を 見たことがございません。 121 00:10:41,407 --> 00:10:45,578 兄によれば 私に輪をかけて料理下手だとか。 122 00:10:45,578 --> 00:10:49,415 それは また すさまじい…。 123 00:10:49,415 --> 00:10:51,751 澪さん。 124 00:10:51,751 --> 00:10:56,256 (笑い声) 125 00:10:56,256 --> 00:10:59,692 すんません。 126 00:10:59,692 --> 00:11:07,567 実は 母は もう長くないかもしれないのです。え…。 127 00:11:07,567 --> 00:11:12,038 長らく腎の臓を患い むくみに苦しんでいます。 128 00:11:12,038 --> 00:11:17,043 お医者様も手を尽くして下さったのですが もはや…。 129 00:11:20,547 --> 00:11:25,051 あ… ごめんなさい。 湿っぽい話をいたしました。 130 00:11:30,056 --> 00:11:33,393 では 武家のご妻女に 料理を指南しているんですか。 131 00:11:33,393 --> 00:11:36,429 はい。 132 00:11:36,429 --> 00:11:40,066 町人ならば 母親が口うるさく教えますが➡ 133 00:11:40,066 --> 00:11:45,572 武家では 重きを置くところが違いますからね。 134 00:11:45,572 --> 00:11:48,408 通りかかっただけなのに お茶をごちそうになってしまいました。 135 00:11:48,408 --> 00:11:53,279 すいません。 そんな。 いつでも来て下さい。 136 00:11:53,279 --> 00:11:55,782 では これで。 137 00:12:00,053 --> 00:12:05,525 あの 源斉先生。 はい。 138 00:12:05,525 --> 00:12:08,828 むくみに効くお薬は ありますでしょうか。 139 00:12:08,828 --> 00:12:12,031 むくみ。 早帆様の…➡ 140 00:12:12,031 --> 00:12:17,837 先ほどの方のお身内が 腎の臓を患ってらっしゃって。 141 00:12:17,837 --> 00:12:21,708 そのような病人には 地膚子を使います。 142 00:12:21,708 --> 00:12:24,043 じふし? はい。 143 00:12:24,043 --> 00:12:27,714 ほうき草の実を乾かした薬種です。 144 00:12:27,714 --> 00:12:30,016 ほうき草…。 145 00:12:31,718 --> 00:12:34,487  回想 ほうき草の実だな。 146 00:12:34,487 --> 00:12:38,791 枝は 箒の材料だが 実は料理にも使えるらしい。 147 00:12:41,728 --> 00:12:46,566 ほうき草の実を料理に用いる土地が あるというのは まことでしょうか。 148 00:12:46,566 --> 00:12:49,235 料理にですか。 149 00:12:49,235 --> 00:12:53,039 いや… 皆目見当もつきません。 150 00:12:56,876 --> 00:13:01,180 えっ! では 清右衛門先生 今度こそ 書かれるのですね。 151 00:13:01,180 --> 00:13:03,116 あさひ太夫の物語を。 152 00:13:03,116 --> 00:13:06,352 うむ。 ようやっと あさひ太夫を➡ 153 00:13:06,352 --> 00:13:10,223 幼い頃に売り飛ばした女衒を 突き止めたのだ。➡ 154 00:13:10,223 --> 00:13:12,225 詳しい話が聞き出せた。 155 00:13:12,225 --> 00:13:15,528 (坂村堂)では 速やかに お帰りになって下さい。(清右衛門)ん? 156 00:13:15,528 --> 00:13:18,431 何をいつまでも くつろいでいらっしゃるのです。 157 00:13:18,431 --> 00:13:22,835 さあ お勘定は私に任せて 早く帰って書いて下さい! 158 00:13:22,835 --> 00:13:24,904 せかすな。 早く! 159 00:13:24,904 --> 00:13:27,040 清右衛門先生! 160 00:13:27,040 --> 00:13:31,544 何だ。 蕪の柚子漬けなら 悪くなかったぞ。 161 00:13:33,212 --> 00:13:36,716 お願いいたします。 何だ。 162 00:13:36,716 --> 00:13:40,219 何をお願いされてるのだ わしは。 163 00:13:40,219 --> 00:13:44,557 あさひ太夫のことを書くのは 取りやめて下さい。 164 00:13:44,557 --> 00:13:48,861 何をたわけたことを…。 165 00:13:48,861 --> 00:13:52,732 あさひ太夫と私は➡ 166 00:13:52,732 --> 00:13:55,735 幼なじみなんです。 167 00:13:55,735 --> 00:13:57,737 何だと…! 168 00:14:04,343 --> 00:14:07,013 (東西)これは まさに天下取り。 169 00:14:07,013 --> 00:14:09,682 太閤はんにも勝る➡ 170 00:14:09,682 --> 00:14:12,685 旭日昇天の相や! 171 00:14:12,685 --> 00:14:15,355 えらいこっちゃ 天下取りやで! 172 00:14:15,355 --> 00:14:17,290 ちょっと みんな聞いたか!? 173 00:14:17,290 --> 00:14:19,225 (野江)澪ちゃん。➡ 174 00:14:19,225 --> 00:14:26,532 私は旭日昇天より 澪ちゃんが言われた 雲外蒼天の方がええ。 175 00:14:26,532 --> 00:14:29,369 え? な… 何で? 176 00:14:29,369 --> 00:14:31,404 天下取るような運やったら➡ 177 00:14:31,404 --> 00:14:35,608 それに見合うような不運も 連れてくるんや。 178 00:14:38,044 --> 00:14:43,249 それから間もなく 享和の大水がありました。 179 00:14:45,785 --> 00:14:51,724 私は みなしごになり ご寮さんに助けて頂きました。 180 00:14:51,724 --> 00:14:56,929 幼なじみは生きてるかどうかも 分からへんままでしたが…。 181 00:15:04,203 --> 00:15:06,906 野江ちゃん…? 182 00:15:08,674 --> 00:15:11,344 生きて…。 183 00:15:11,344 --> 00:15:14,013 (又次)あさひ太夫。 184 00:15:14,013 --> 00:15:17,316 …てえのが その人の名だ。 185 00:15:22,355 --> 00:15:27,660 雲外蒼天の方が ずっとええ。 186 00:15:33,833 --> 00:15:38,204 お願いします。 もう誰にも➡ 187 00:15:38,204 --> 00:15:40,840 野江ちゃんを傷つけてほしくない。 188 00:15:40,840 --> 00:15:43,543 見世物にしてほしくないんです。 189 00:15:45,378 --> 00:15:48,080 享和の大水と言ったか。 190 00:15:50,049 --> 00:15:53,853 わしも あの時 戯作の筆の足しにと➡ 191 00:15:53,853 --> 00:15:56,389 大坂へ出かけた。 192 00:15:56,389 --> 00:16:00,893 そうか あの地獄絵図の中に…。 193 00:16:03,496 --> 00:16:07,700 あ~ いつまで そうしてるのだ。 話しづらくてしょうがない。 194 00:16:12,171 --> 00:16:18,177 お前は あさひ太夫が どうやって 今の位に上り詰めたか知っているのか。 195 00:16:22,181 --> 00:16:27,386 お前の幼なじみは記憶を失い お助け小屋にいた。 196 00:16:29,822 --> 00:16:33,025 (清右衛門) それを知った女衒の卯吉という男が➡ 197 00:16:33,025 --> 00:16:36,062 かどわかし同然に 江戸へ連れていき➡ 198 00:16:36,062 --> 00:16:39,799 翁屋の楼主に売ったのだ。 199 00:16:39,799 --> 00:16:44,370 旭日昇天の易を受けた娘だ。 200 00:16:44,370 --> 00:16:47,373 高う売れるで。 201 00:16:49,709 --> 00:16:55,414 (清右衛門)そして その娘が 禿から新造になる時のことだ。 202 00:16:57,216 --> 00:16:59,986 (清右衛門)いずれも 江戸で その名を知らぬ者はいない➡ 203 00:16:59,986 --> 00:17:03,022 御用商人が3人。➡ 204 00:17:03,022 --> 00:17:10,830 それぞれ 4,000両を翁屋に預けて 遊女としてのあさひを買い上げたのだ。 205 00:17:13,533 --> 00:17:20,006 (清右衛門)それ故 あさひ太夫は ほかに客を取る憂いもないし➡ 206 00:17:20,006 --> 00:17:23,809 楼主から借財を重ねることもない。 207 00:17:25,811 --> 00:17:29,181 (清右衛門)あさひ太夫は翁屋では別格。➡ 208 00:17:29,181 --> 00:17:32,685 形の上では抱え遊女でありながら➡ 209 00:17:32,685 --> 00:17:37,189 下へも置かぬ 客人扱いを受けているのだ。➡ 210 00:17:37,189 --> 00:17:40,493 それだけでも救いと思うことだ。 211 00:17:42,361 --> 00:17:49,035 そんな…。 そんなふうには とても…。 212 00:17:49,035 --> 00:17:52,371 (清右衛門)ならば こうせよ。 213 00:17:52,371 --> 00:17:57,243 お前が あさひ太夫を身請けするのだ。➡ 214 00:17:57,243 --> 00:18:02,048 身請け代 4,000両を払えば かなうことだ。 215 00:18:02,048 --> 00:18:04,016 無理です…。 216 00:18:04,016 --> 00:18:08,154 4,000両なんて 到底 無理です。 217 00:18:08,154 --> 00:18:11,991 ふん。 気概のないやつだ。 218 00:18:11,991 --> 00:18:15,494 お前が料理で客を呼ぶことができれば➡ 219 00:18:15,494 --> 00:18:17,997 かなわぬ夢ではあるまい。 220 00:18:17,997 --> 00:18:21,500 ハッハッハッハッハ。 221 00:18:21,500 --> 00:18:26,205 ぐずぐずしていたら 戯作に仕立てるぞ。 222 00:18:35,014 --> 00:18:38,818 まず 乾かした ほうき草をゆでます。 223 00:18:38,818 --> 00:18:44,523 そして 水にさらして 皮を剥ぐのだそうです。 224 00:18:44,523 --> 00:18:48,361 繰り返し 冷たい水にさらして もみ洗いしなくてはなりません。 225 00:18:48,361 --> 00:18:50,696 気が遠くなるような仕事です。 226 00:18:50,696 --> 00:18:52,999 分かりました。 227 00:18:57,470 --> 00:19:02,641 後には おもしをかけて 水抜きをしなくてはなりませんが➡ 228 00:19:02,641 --> 00:19:06,646 これも 書物を読む限り 恐ろしく厄介な手順です。 229 00:19:14,653 --> 00:19:21,160 澪さん ほうき草の古い呼び名を 知っていますか。 230 00:19:21,160 --> 00:19:23,095 いえ。 231 00:19:23,095 --> 00:19:25,498 ははきぎと言うのだそうですよ。 232 00:19:25,498 --> 00:19:28,334 ははきぎ? はい。 そうです。 233 00:19:28,334 --> 00:19:31,670 は…。 (あくび) 234 00:19:31,670 --> 00:19:35,007 これは失敬。 先生。 235 00:19:35,007 --> 00:19:39,178 もしかして ご本を調べるのに 一睡もしてはれへんのと違いますか。 236 00:19:39,178 --> 00:19:41,180 いや そんなことは。 237 00:19:43,682 --> 00:19:49,355 源斉先生。 いつも いつも ほんまに いつも➡ 238 00:19:49,355 --> 00:19:53,159 ご厚意に甘えてしまって 申し訳ありません。 239 00:19:55,695 --> 00:19:58,030 澪さん。 240 00:19:58,030 --> 00:20:02,701 澪さんは 腎の臓を患い むくみに苦しむ人を➡ 241 00:20:02,701 --> 00:20:05,705 救いたいと考えているんでしょう? 242 00:20:05,705 --> 00:20:07,840 はい。 243 00:20:07,840 --> 00:20:13,646 ならば そのお手伝いをするのは これこそ医師の本分というものです。 244 00:20:13,646 --> 00:20:38,737 ♬~ 245 00:20:38,737 --> 00:20:40,673 うっ…。 246 00:20:40,673 --> 00:20:44,877 まるで氷やないか。 このままやったらあかん。 247 00:20:44,877 --> 00:20:47,746 大事ありません。 そうかて。 248 00:20:47,746 --> 00:20:50,082 やり遂げたいんです。 249 00:20:50,082 --> 00:21:20,713 ♬~ 250 00:21:20,713 --> 00:21:23,916 どうした義兄上 やにわに。 251 00:21:26,051 --> 00:21:30,756 今日は我らの同輩が 詰め腹を切らされた日だ。 252 00:21:32,825 --> 00:21:39,398 ご公儀に背いた者を悼むことはかなわぬが 2人も働いた この部屋で➡ 253 00:21:39,398 --> 00:21:43,569 命日に手を合わせても 咎められることはあるまい。 254 00:21:43,569 --> 00:21:53,579 ♬~ 255 00:21:53,579 --> 00:21:59,084 死ぬ時は悔いのないようにしたいものだ。 256 00:22:02,021 --> 00:22:08,694 このまま死ぬならば 悔いは何であろう。 257 00:22:08,694 --> 00:22:10,696 何だ 柄にもない。 258 00:22:10,696 --> 00:22:16,368 お前が悔いるとすれば 母上様のお望みに 応えられぬことであろう。 259 00:22:16,368 --> 00:22:18,838 母の望み? 何だ それは。 260 00:22:18,838 --> 00:22:22,374 跡継ぎのことに決まっておろう。 261 00:22:22,374 --> 00:22:25,044 それには心配は及ばん。 262 00:22:25,044 --> 00:22:26,979 早帆が5人も おのこを産んでおるのだから➡ 263 00:22:26,979 --> 00:22:29,715 1人くらい分けてくれればよい。 ん。 264 00:22:29,715 --> 00:22:34,053 また そのようなことを。 己でなんとかせい! 265 00:22:34,053 --> 00:23:00,813 ♬~ 266 00:23:00,813 --> 00:23:06,685 まあ! なんと ふっくらとして おいしそうな。 267 00:23:06,685 --> 00:23:09,555 これからは べちょべちょや 焦げ焦げのご飯を➡ 268 00:23:09,555 --> 00:23:13,359 夫や子らに食べさせなくて済みます。 269 00:23:16,395 --> 00:23:22,534 夫は兄の朋友で 昔から存じておりました。 270 00:23:22,534 --> 00:23:25,204 幼なじみだったのですか。 271 00:23:25,204 --> 00:23:33,012 ええ。 妻となるまで 語り尽くせぬほどに いろいろとありました。 272 00:23:34,914 --> 00:23:38,384 私は幸せ者ですね。 273 00:23:38,384 --> 00:23:41,587 思う人と結ばれたのですから。 274 00:23:50,863 --> 00:23:54,366 早帆様が羨ましいです。 275 00:23:59,071 --> 00:24:03,876 お許し下さいませ。 身をわきまえぬ物言いを…。 276 00:24:07,179 --> 00:24:09,214 澪さん。 277 00:24:09,214 --> 00:24:12,351 もしや 心に思う殿方が➡ 278 00:24:12,351 --> 00:24:15,821 いるのではありませぬか? 279 00:24:15,821 --> 00:24:20,626 恐らく どれほど慕っても添えぬ人が。 280 00:24:26,198 --> 00:24:31,537 澪さん。 私を姉と思い 聞かせてはもらえませぬか。 281 00:24:31,537 --> 00:24:34,039 どのような人なのか。 282 00:24:42,181 --> 00:24:45,384 早帆様に…。 283 00:24:45,384 --> 00:24:49,188 早帆様に よく似た人です。 284 00:24:55,728 --> 00:24:59,732 報われるなど 端から望みません。 285 00:25:01,533 --> 00:25:03,802 思いを打ち明けることも➡ 286 00:25:03,802 --> 00:25:06,705 悟られることもない。 287 00:25:06,705 --> 00:25:13,012 ただ その方に お健やかで➡ 288 00:25:13,012 --> 00:25:16,715 お幸せにいてほしいと祈るばかりです。 289 00:25:20,519 --> 00:25:24,189 なんと一途な。 290 00:25:24,189 --> 00:25:30,362 私が そのお方なら 男冥利に尽きるというもの。 291 00:25:30,362 --> 00:25:33,866 打ち明けて下さって ありがとう。 292 00:25:37,836 --> 00:25:43,542 (早帆)そろそろ刻限ですね。 帰り支度をいたします。 293 00:25:43,542 --> 00:25:45,577 あの… 早帆様。 294 00:25:45,577 --> 00:25:47,579 はい。 295 00:25:53,052 --> 00:25:56,088 お帰りになられましたら➡ 296 00:25:56,088 --> 00:26:00,793 私がお教えしたとおりに 白いご飯を炊いて下さい。 297 00:26:00,793 --> 00:26:06,165 それから すりおろした山芋をかけて下さい。 298 00:26:06,165 --> 00:26:11,804 そして最後に これを載せて➡ 299 00:26:11,804 --> 00:26:16,008 母上様にお召し上がり頂いて下さい。 300 00:26:18,577 --> 00:26:21,814 これは? 301 00:26:21,814 --> 00:26:26,685 ははきぎの… ほうき草の実です。 302 00:26:26,685 --> 00:26:29,988 むくみに効くと言われているそうです。 303 00:26:36,028 --> 00:26:40,332 出過ぎたことをして申し訳ありません。 304 00:26:52,211 --> 00:26:57,082 澪さん これを持って 一刻 おつきあい願えませぬか。 305 00:26:57,082 --> 00:27:00,652 え? こちらのご主人には 私からお願いし➡ 306 00:27:00,652 --> 00:27:04,156 お店に迷惑のかからぬうちに お帰しします。 307 00:27:04,156 --> 00:27:07,793 さあ 急いで。 308 00:27:07,793 --> 00:27:20,806 ♬~ 309 00:27:20,806 --> 00:27:23,108 戻りました。 ⚟はい。 310 00:27:32,551 --> 00:27:36,388 (重光)お姫様。 重光。 母上のお加減はいかがか。 311 00:27:36,388 --> 00:27:41,827 むくみは どうか。 はっ。 まだ引いてはおりませぬ…。 312 00:27:41,827 --> 00:27:46,665 子細は後に。 まずは急ぎ この人を厨に案内せよ。 313 00:27:46,665 --> 00:27:58,277 ♬~ 314 00:27:58,277 --> 00:28:04,783 澪さん。 その ははきぎ飯とやらを あなたが ここで作って下さい。 315 00:28:04,783 --> 00:28:06,718 え? そなたたち➡ 316 00:28:06,718 --> 00:28:11,156 万事 澪さんの指図に従うように。 (一同)はい。あの…。 317 00:28:11,156 --> 00:28:13,492 何も恐れることはありませぬ。 318 00:28:13,492 --> 00:28:18,797 あとのことは私に任せて 存分に腕を振るって下さい。 319 00:28:18,797 --> 00:29:14,786 ♬~ 320 00:29:22,494 --> 00:29:25,998 お連れいたしました。 321 00:29:25,998 --> 00:29:28,200 ⚟(早帆)お通ししなさい。 322 00:29:35,007 --> 00:29:40,812 澪さん。 どうぞ それを我が母の前へ。 323 00:31:15,640 --> 00:32:06,691 ♬~ 324 00:32:06,691 --> 00:32:09,694 (里津)早帆から聞きました。➡ 325 00:32:09,694 --> 00:32:15,901 私のむくみを気にかけて これを作ってくれたのですね。 326 00:32:21,706 --> 00:32:24,042 (里津)ああ…。 327 00:32:24,042 --> 00:32:37,722 ♬~ 328 00:32:37,722 --> 00:32:46,865 私の父は 奥州南部家の御境奉行に仕えていました。 329 00:32:46,865 --> 00:32:53,738 そこは幾たびも飢饉が襲う土地でした。 330 00:32:53,738 --> 00:32:59,411 そこで生きる人々は 平生は口にもしなかった➡ 331 00:32:59,411 --> 00:33:02,314 ははきぎの実に工夫を凝らして➡ 332 00:33:02,314 --> 00:33:06,618 食べ物として 凶作にも耐えたのです。 333 00:33:08,520 --> 00:33:14,826 よもや 食べ物があふれる この江戸で➡ 334 00:33:14,826 --> 00:33:20,632 ははきぎの実を料理しようと思う 娘がいたとは。 335 00:33:27,038 --> 00:33:30,075 人払いを。 336 00:33:30,075 --> 00:33:33,378 重光 お前もお下がり。 337 00:33:33,378 --> 00:33:35,380 はっ。 338 00:33:46,858 --> 00:33:50,061 我が名は覚華院。 339 00:33:50,061 --> 00:33:53,565 いや 里津と申す。 340 00:33:53,565 --> 00:33:59,371 亡き父の家名は小松原。 341 00:33:59,371 --> 00:34:02,173 小松原? 342 00:34:02,173 --> 00:34:05,210 (早帆)ごめんなさい 澪さん。 343 00:34:05,210 --> 00:34:14,019 つる家の方々が 小松原と呼ぶ浪人は 我が兄 小野寺数馬です。 344 00:34:17,522 --> 00:34:25,830 (里津)そなたが ははきぎ飯を作る間に 早帆が私に言った。 345 00:34:25,830 --> 00:34:30,835 そなたを数馬の嫁に迎えてはと。 346 00:34:32,537 --> 00:34:36,374 (里津)話にならぬと私は言った。➡ 347 00:34:36,374 --> 00:34:41,546 小野寺家の跡取りの嫁が 町娘➡ 348 00:34:41,546 --> 00:34:46,384 しかも 料理人などと…。 349 00:34:46,384 --> 00:34:55,060 なれど… そなたが作った ははきぎ飯を食べるうち➡ 350 00:34:55,060 --> 00:34:58,396 心が動いた。 351 00:34:58,396 --> 00:35:07,105 そなたが食べる者の気持ちを 大切に思うておるのが よう分かった。 352 00:35:08,807 --> 00:35:16,514 (里津) そなたなら 立派に数馬の心と体を支え➡ 353 00:35:16,514 --> 00:35:19,818 小野寺家を支えてくれよう。 354 00:35:23,388 --> 00:35:31,830 2年の間 駒澤家で 早帆の下で行儀見習いをなさい。 355 00:35:31,830 --> 00:35:38,370 そして しかるべき 旗本の養女となり➡ 356 00:35:38,370 --> 00:35:43,208 小野寺家に嫁いできなさい。➡ 357 00:35:43,208 --> 00:35:46,044 御膳奉行の妻となるには➡ 358 00:35:46,044 --> 00:35:49,547 数多の苦難もあろう。➡ 359 00:35:49,547 --> 00:35:55,220 なれど ははきぎの実を料理した そなたなら➡ 360 00:35:55,220 --> 00:35:58,123 きっと乗り越えられる。 361 00:35:58,123 --> 00:36:03,795 親類縁者から不平不満も出ようが➡ 362 00:36:03,795 --> 00:36:10,001 私の残る命を懸けて➡ 363 00:36:10,001 --> 00:36:13,304 それらを封じてみせましょう。 364 00:36:15,874 --> 00:36:18,877 よろしいですね? 365 00:36:24,349 --> 00:36:27,018 (早帆)澪さん。 366 00:36:27,018 --> 00:36:29,220 答えるのです。 367 00:36:33,792 --> 00:36:35,727 お許し下さいませ! 368 00:36:35,727 --> 00:36:40,532 澪さん…。 澪さん! 369 00:36:40,532 --> 00:36:44,402 (重光)いかがなされた! お待ち下され! 370 00:36:44,402 --> 00:37:01,486 ♬~ 371 00:37:01,486 --> 00:37:05,323 怖い… 怖い。 372 00:37:05,323 --> 00:37:12,197 お父はん お母はん 助けて。 373 00:37:12,197 --> 00:37:14,999 助けて 野江ちゃん。 374 00:37:38,523 --> 00:37:42,360 澪。 今日も寝つかれへんのか。 375 00:37:42,360 --> 00:37:48,066 ご寮さん 風邪をひかれては大変です。 376 00:37:50,034 --> 00:37:55,373 澪。 何で話 してくれんのだす。 377 00:37:55,373 --> 00:38:01,980 あの日 早帆様のお屋敷で何があったんや。 378 00:38:01,980 --> 00:38:04,649 何もあれしまへん。 379 00:38:04,649 --> 00:38:09,487 ただ… 怖い夢を見ただけだす。 380 00:38:09,487 --> 00:38:12,157 (芳)夢? 381 00:38:12,157 --> 00:38:17,462 夢やさかい もう思い出すこともおまへん。 382 00:38:21,332 --> 00:38:23,334 御免! 383 00:38:25,170 --> 00:38:28,006 あっ これは お侍様 申し訳ごぜぇやせん。 384 00:38:28,006 --> 00:38:29,941 夕餉は七つからでごぜぇやす。 385 00:38:29,941 --> 00:38:32,343 あっ いや そうではない。 (種市)えっ? 386 00:38:32,343 --> 00:38:38,216 ああ。 今夜の肴は銀杏の素揚げに 小鰭の天ぷらでごぜぇやす。 387 00:38:38,216 --> 00:38:40,218 それは うまそうな…。 388 00:38:40,218 --> 00:38:43,021 いや そうではない! (種市)えっ? 389 00:38:44,923 --> 00:38:47,692 (重光)拙者は 小野寺家の用人で➡ 390 00:38:47,692 --> 00:38:50,361 多浜重光と申す者。 391 00:38:50,361 --> 00:38:55,200 小野寺家当主ご母堂 覚華院様が 澪殿を大層気に入られ➡ 392 00:38:55,200 --> 00:38:59,537 是非とも行儀見習いにと仰せなのだ。 393 00:38:59,537 --> 00:39:02,140 おそばにいて 身の回りの世話などしながら➡ 394 00:39:02,140 --> 00:39:06,311 書や和歌 琴などの 雅なたしなみごとのほかにも➡ 395 00:39:06,311 --> 00:39:08,780 武家の女人としての立ち居振る舞いを➡ 396 00:39:08,780 --> 00:39:11,316 身につけることができる。 397 00:39:11,316 --> 00:39:13,251 (種市)冗談言っちゃいけねぇ。 398 00:39:13,251 --> 00:39:15,787 お澪坊をただ働きさせた上に➡ 399 00:39:15,787 --> 00:39:19,657 さんざん恩に着せて教え込むのが 和歌やら琴だってぇのか。 400 00:39:19,657 --> 00:39:23,494 そんなもんで腹が膨れるのか 生きていけるのかよ。 401 00:39:23,494 --> 00:39:25,430 帰ってくんな! (重光)待て待て待て。➡ 402 00:39:25,430 --> 00:39:27,365 武術も教えようというのだ。 403 00:39:27,365 --> 00:39:30,802 覚華院様も早帆様も大層腕が立つ。 404 00:39:30,802 --> 00:39:36,808 早帆様? 今 早帆様と言わはりましたなぁ。 405 00:39:40,812 --> 00:39:45,516 多浜様。 澪は わてにとって 娘も同然でおます。 406 00:39:45,516 --> 00:39:50,722 どうぞ包み隠さず 子細を話しておくんなはれ。 407 00:39:58,830 --> 00:40:00,832 うん。 408 00:40:06,371 --> 00:40:11,876 あの小松原様が御旗本だと…? 409 00:40:14,045 --> 00:40:16,948 (おりょう)澪ちゃん。 410 00:40:16,948 --> 00:40:21,386 澪ちゃん すごいじゃないか! 411 00:40:21,386 --> 00:40:26,724 御旗本のところへ輿入れだなんて とんでもない玉の輿だよ! 412 00:40:26,724 --> 00:40:28,660 おめでとう! 413 00:40:28,660 --> 00:40:33,231 どうしたんだい。 うれしくないのかい。 414 00:40:33,231 --> 00:40:37,235 事は そうたやすくはねぇぜ。 415 00:40:43,741 --> 00:40:54,385 ♬~ 416 00:40:54,385 --> 00:41:00,191 全く 御旗本だなんて とんでもねぇや。 417 00:41:02,694 --> 00:41:07,365 ただのご浪人てぇなら いっそ 刀なんぞ捨てちまって➡ 418 00:41:07,365 --> 00:41:11,703 このつる家を お澪坊ごともらってくれ と言えるんだ。 419 00:41:11,703 --> 00:41:17,041 そうさ お澪坊と一緒に つる家を…。 420 00:41:17,041 --> 00:41:20,345 どうした ふき坊。 眠れねぇのか? 421 00:41:21,913 --> 00:41:25,717 澪姉さん お嫁に行くの? 422 00:41:29,053 --> 00:41:31,356 (種市)行ったら寂しいか。 423 00:41:34,225 --> 00:41:38,730 お嫁に行きたいのに 行けなかったら寂しい。 424 00:41:47,739 --> 00:41:51,743 そうだな ふき坊。 425 00:41:51,743 --> 00:41:54,245 ふき坊の言うとおりだ。 426 00:41:54,245 --> 00:42:33,384 ♬~ 427 00:42:33,384 --> 00:42:37,555 (芳)2本の指だけ氷のようや。 428 00:42:37,555 --> 00:42:40,391 おまはんが こないな怪我をしたんは➡ 429 00:42:40,391 --> 00:42:45,396 御膳奉行が詰め腹を切らされた いう話を聞かされた時やったなあ。 430 00:42:49,734 --> 00:42:57,075 一途に料理だけで生きてきた子が その大事な指を怪我してしまうほど…。 431 00:42:57,075 --> 00:43:01,045 おまはんにとって 小松原様は…➡ 432 00:43:01,045 --> 00:43:07,852 小野寺様は それほどまでに大事なお方なんやなあ。 433 00:43:13,357 --> 00:43:15,693 (芳)澪。 434 00:43:15,693 --> 00:43:18,496 幸せになっておくれ。 435 00:43:21,365 --> 00:43:24,035 (芳)おまはんが幸せにならへんかったら➡ 436 00:43:24,035 --> 00:43:28,906 わては亡うなった おまはんの二親に 顔向けできへんのや。 437 00:43:28,906 --> 00:43:30,908 けど ご寮さん…。 438 00:43:30,908 --> 00:43:34,378 わてのことなら 心配せんかて構へん。 439 00:43:34,378 --> 00:43:37,215 もう 前のわてとは違う。 440 00:43:37,215 --> 00:43:43,521 この江戸で一人で生きていける才覚も 健やかな体もおますのや。 441 00:43:46,390 --> 00:43:50,895 ご寮さん。 私には…。 442 00:43:53,164 --> 00:43:58,870 私には 小松原様のお気持ちが分かりません。 443 00:44:00,905 --> 00:44:06,177 若くもない。 美しくもない。 444 00:44:06,177 --> 00:44:10,882 こないな私を 望んでくれるとは 思われへんのです。 445 00:44:28,032 --> 00:44:32,203 こいつはいけねぇ いけねぇよ。 446 00:44:32,203 --> 00:44:36,040 こいつだ! このとろとろ茶碗蒸し。 447 00:44:36,040 --> 00:44:41,212 やっぱり こいつはいけねぇ。 ようやく ありつけたぜ。 448 00:44:41,212 --> 00:44:46,384 毎年 これの初日は昼も夜も お客が途切れませんよって。 449 00:44:46,384 --> 00:44:49,854 旦那さん お味噌汁も 火にかけておきますね。 450 00:44:49,854 --> 00:44:54,225 おう ありがとよ。 ほな そろそろ失礼させてもらいまひょ。 451 00:44:54,225 --> 00:44:56,227 はい。 452 00:44:58,062 --> 00:45:02,900 (勝手口が開く音) うう… 寒い 寒い 寒い。 453 00:45:02,900 --> 00:45:05,336 まずは 熱いのを頼む。 454 00:45:05,336 --> 00:45:08,005 はい。 455 00:45:08,005 --> 00:45:11,342 小腹も減っている。 何か食わしてくれ。 456 00:45:11,342 --> 00:45:24,689 ♬~ 457 00:45:24,689 --> 00:45:29,360 小松原様。 ん。 458 00:45:29,360 --> 00:45:34,165 いや 小野寺様と申し上げるべきですかね。 459 00:45:38,035 --> 00:45:42,707 お前さん 酒だの何だの言う前に きちんと筋を通して➡ 460 00:45:42,707 --> 00:45:45,209 話すべきことが あるんじゃねぇんですかい。 461 00:45:45,209 --> 00:45:59,657 ♬~ 462 00:45:59,657 --> 00:46:02,660 確かに そうだな。 463 00:46:21,679 --> 00:46:25,683 長い間 たばかって すまなかった。 464 00:46:25,683 --> 00:46:28,019 そんなことじゃねぇ! 465 00:46:28,019 --> 00:46:31,522 お澪坊の気持ちを考えたことがあるのか ってぇ話だ!➡ 466 00:46:31,522 --> 00:46:35,026 本当なら 玉の輿で浮かれても おかしかねぇのに➡ 467 00:46:35,026 --> 00:46:38,062 お澪坊は ずっと沈んだままだ!➡ 468 00:46:38,062 --> 00:46:41,799 母親やら 妹やら 家来やらが いろいろ言ってきたところで➡ 469 00:46:41,799 --> 00:46:46,637 肝心要のお前さんは これまで 知らぬ顔の半兵衛だ! 470 00:46:46,637 --> 00:46:50,941 人の心をもてあそぶのも いい加減にしろって話だよ! 471 00:47:05,990 --> 00:47:10,695 すまないが 2人で話をさせてもらえまいか。 472 00:47:42,693 --> 00:47:46,997 これでは話にならぬ。 こちらへ。 473 00:48:15,326 --> 00:48:18,996 う~ん…。 474 00:48:18,996 --> 00:48:23,334 このところ 母や 妹や 重光が➡ 475 00:48:23,334 --> 00:48:30,007 何やら 俺に隠れて こそこそと 様子がおかしいと思っていた。 476 00:48:30,007 --> 00:48:35,880 妹にせがまれ お忍びで ここに来たことも 義弟からは聞いておったが。 477 00:48:35,880 --> 00:48:38,682 フッ なるほどな。 478 00:48:38,682 --> 00:48:40,985 早帆の考えそうなことだ。 479 00:48:44,355 --> 00:48:49,059 やはり ご存じなかったのですね。 480 00:48:52,029 --> 00:48:58,335 全ては 小松原様のお気持ちの 関わりのないところで…。 481 00:49:08,512 --> 00:49:10,815 このまま死ぬならば…。 482 00:49:15,653 --> 00:49:21,959 このまま死ぬならば 悔いは何であろう。 483 00:49:27,364 --> 00:49:33,003 (匂いを嗅ぐ) 484 00:49:33,003 --> 00:49:36,340 何やら匂うぞ。 485 00:49:36,340 --> 00:49:38,342 はっ! 486 00:49:47,952 --> 00:49:49,954 ああ…。 487 00:50:00,030 --> 00:50:02,066 フフフフ…。 488 00:50:02,066 --> 00:50:05,536 フッ ハハハッ…。 489 00:50:05,536 --> 00:50:10,407 ハッハッハッハッハッハッ…。 490 00:50:10,407 --> 00:50:16,180 ハハハハハハハッ。 小松原様 笑い過ぎです。 491 00:50:16,180 --> 00:50:18,482 フフフフ…。 492 00:50:29,727 --> 00:50:32,530 俺の女房殿にならぬか。 493 00:50:41,238 --> 00:50:46,243 ともに生きるならば 下がり眉がよい。 494 00:50:48,412 --> 00:51:07,898 ♬~ 495 00:51:07,898 --> 00:51:13,537 答えろ 下がり眉。 496 00:51:13,537 --> 00:51:16,240 俺の女房殿にならぬか。 497 00:51:25,549 --> 00:51:28,385 お澪坊 さっさと答えんだよぅ! 498 00:51:28,385 --> 00:51:32,089 なるのか ならねぇのか はっきり答えな お澪坊! 499 00:51:39,029 --> 00:51:44,234 そうか なるのだな。 500 00:51:47,571 --> 00:51:49,506 はい。 501 00:51:49,506 --> 00:52:25,309 ♬~ 502 00:52:25,309 --> 00:52:31,115 そうか… お澪坊をもらってくれるのかい。 503 00:52:31,115 --> 00:52:35,552 ありがとよ。 ありがとよ…。 504 00:52:35,552 --> 00:52:55,572 ♬~ 505 00:52:55,572 --> 00:53:00,377 この形で ここに来るのも これが最後か。 506 00:53:07,217 --> 00:53:09,219 見てみろ。 507 00:53:12,523 --> 00:53:14,525 よい月だ。 508 00:53:22,032 --> 00:53:25,702 よいか。 509 00:53:25,702 --> 00:53:28,405 決して無理はするな。 510 00:53:46,390 --> 00:53:52,062 (雨音) 511 00:53:52,062 --> 00:53:55,933 今夜は そろそろ しまいにしようか。 はい。 ほな 2階の座敷を片づけてきます。 512 00:53:55,933 --> 00:53:59,937 ありがとよ。 おい ふき 暖簾しまってきな。 513 00:54:02,706 --> 00:54:06,343 あっ 源斉先生! あ~ どうぞ!➡ 514 00:54:06,343 --> 00:54:09,813 どうぞ どうぞ。 515 00:54:09,813 --> 00:54:14,017 お澪坊 ぐずぐずしてねぇで 先生に摘み入れ汁を頼むぜ。 516 00:54:14,017 --> 00:54:16,520 はい。 澪さん。 517 00:54:21,892 --> 00:54:24,695 おめでとうございます。 518 00:54:24,695 --> 00:54:26,697 あ…。 519 00:54:31,835 --> 00:54:34,138 ありがとうございます。 520 00:54:36,540 --> 00:54:39,209 しきたりの違いなど➡ 521 00:54:39,209 --> 00:54:41,712 いろいろと難しいこともあるでしょうが➡ 522 00:54:41,712 --> 00:54:44,214 澪さんなら きっと やっていけます。 523 00:54:51,054 --> 00:54:54,391 それでは。 えっ。 いや 源斉先生➡ 524 00:54:54,391 --> 00:54:57,060 飯を食ってって下せぇよ。 今すぐ 熱いの入れますから。 525 00:54:57,060 --> 00:55:00,798 いえ。 往診がありますので。 526 00:55:00,798 --> 00:55:03,600 あ…。 (種市)先生! 527 00:55:07,171 --> 00:55:10,073 (種市)傘! 傘 傘! あっ! 528 00:55:10,073 --> 00:55:12,976 源斉先生! 529 00:55:12,976 --> 00:55:15,179 源斉先生! 530 00:55:33,030 --> 00:55:46,710 ♬~ 531 00:55:46,710 --> 00:55:51,215 (種市)雨なのに 傘を忘れるなんざ…。 532 00:55:56,720 --> 00:56:01,325 澪さん この度は よう 心を決めて下さいました。➡ 533 00:56:01,325 --> 00:56:06,830 兄の縁談の目処が立ったことは 母の心の支えになっていますよ。 534 00:56:09,066 --> 00:56:11,335 なるべく 身一つで おいでなさい。 535 00:56:11,335 --> 00:56:15,205 入り用なものは 当家で ご用意しますからね。 536 00:56:15,205 --> 00:56:18,675 ありがとうございます。 537 00:56:18,675 --> 00:56:23,347 あの… 早帆様。 538 00:56:23,347 --> 00:56:28,218 父の形見のお箸だけ 持っていくのを お許し下さい。 539 00:56:28,218 --> 00:56:32,689 (早帆)お箸? はい。 540 00:56:32,689 --> 00:56:39,463 塗師だった父の作った塗り箸です。 形見の品です。 541 00:56:39,463 --> 00:56:41,965 さようですか。 542 00:56:46,236 --> 00:56:53,710 塗り箸は いかによいものでも 格としては低いのです。➡ 543 00:56:53,710 --> 00:57:00,984 小野寺も 駒澤も 食に関わる役職ゆえ そのようなことには厳しいのです。 544 00:57:00,984 --> 00:57:07,758 お父上の形見の品なら やむをえませんが 家の者には知られぬようになさい。 545 00:57:07,758 --> 00:57:31,948 ♬~ 546 00:57:31,948 --> 00:57:35,185 じゃあ 今月いっぱいで 一旦 店を閉めるんだな? 547 00:57:35,185 --> 00:57:42,526 ああ。 で 半月後に新しい料理人で 始めるつもりだ。 548 00:57:42,526 --> 00:57:46,830 なら 俺が ここへ来るのも今夜が最後だ。 549 00:57:46,830 --> 00:57:51,668 え? いや 又さんには 「三方よしの日」を引き続き…。 550 00:57:51,668 --> 00:57:54,538 (又次)悪いが諦めてくんな。 551 00:57:54,538 --> 00:58:00,143 もとは 翁屋の楼主が澪さんを見込んで 俺を手伝いに よこしたんだ。 552 00:58:00,143 --> 00:58:03,847 澪さんが抜けるとなりゃ 事情が違ってくる。 553 00:58:06,316 --> 00:58:09,786 あ…。 承知したぜ 又さん。 554 00:58:09,786 --> 00:58:12,489 あとのことは 俺がなんとかすらぁ。 555 00:58:14,157 --> 00:58:20,497 すまねぇな。 今日一日 精いっぱい 務めさせてもらうぜ。 556 00:58:20,497 --> 00:58:22,999 おう。 頼んだぜ。 557 00:58:26,303 --> 00:58:28,505 (種市)ふき坊。 558 00:58:36,947 --> 00:58:43,353 さてと。 おっ こいつは いい鰯だ。 559 00:58:43,353 --> 00:58:46,189 蒲焼きにするか。 梅干しで炊きます。 560 00:58:46,189 --> 00:58:48,692 ほう そりゃ うまそうだ。 561 00:58:48,692 --> 00:58:51,595 野江ちゃんの好物です。 562 00:58:51,595 --> 00:58:54,297 今日のお弁当に入れますね。 563 00:58:56,199 --> 00:58:59,636 澪さん。 564 00:58:59,636 --> 00:59:05,442 あさひ太夫の弁当は もう作らなくていい。 え…。 565 00:59:05,442 --> 00:59:10,280 いや 作ってくれるな。 566 00:59:10,280 --> 00:59:14,785 何で… 又次さん 何で そないなこと…。 俺じゃねえ。 567 00:59:14,785 --> 00:59:17,287 あさひ太夫からの伝言だ。 568 00:59:19,623 --> 00:59:24,461 そうか。 澪ちゃんが。 569 00:59:24,461 --> 00:59:28,999 あの澪ちゃんが お嫁に…。 570 00:59:28,999 --> 00:59:52,823 ♬~ 571 00:59:52,823 --> 00:59:56,326 又次。 はい。 572 00:59:58,361 --> 01:00:01,064 澪ちゃんに伝えてくれるか。 573 01:00:05,702 --> 01:00:11,708 おめでとう。 どうか 達者で暮らして。 574 01:00:16,713 --> 01:00:20,217 達者で暮らしてって…。 575 01:00:20,217 --> 01:00:22,719 (又次)御旗本の奥様になろうって人が➡ 576 01:00:22,719 --> 01:00:25,388 吉原の遊女と関わりがあるとなりゃ➡ 577 01:00:25,388 --> 01:00:28,859 迷惑がかかる。➡ 578 01:00:28,859 --> 01:00:32,395 そう考えておいでなのさ。 579 01:00:32,395 --> 01:00:35,432 そんな…。 580 01:00:35,432 --> 01:00:38,869 ほな 野江ちゃんには 二度と…。 581 01:00:38,869 --> 01:00:44,074 あさひ太夫のことなら心配ねぇ。 何があっても 俺が守る。 582 01:00:44,074 --> 01:00:46,376 けど…。 (又次)忘れちまいな。 583 01:00:48,245 --> 01:00:53,116 あさひ太夫のことも 翁屋のことも。 584 01:00:53,116 --> 01:00:56,920 これまであった何もかも 一切合財…。 585 01:01:03,360 --> 01:01:07,197 いいから 料理に精を出しな。 586 01:01:07,197 --> 01:01:11,835 あと何度 包丁を握れるか 分からねぇんだ。➡ 587 01:01:11,835 --> 01:01:16,706 武家に嫁いだ女に求められるのは 料理の腕なんかじゃねぇ。 588 01:01:16,706 --> 01:01:21,845 下手すりゃ 包丁を持つことすら 許されねぇかもしれねぇぜ。 589 01:01:21,845 --> 01:02:14,130 ♬~ 590 01:02:19,836 --> 01:02:24,641  回想  ともに生きるならば 下がり眉がよい。 591 01:02:28,578 --> 01:02:31,581 (足音) 592 01:02:37,854 --> 01:02:40,724 源斉先生。 593 01:02:40,724 --> 01:02:43,226 澪さん? 594 01:02:43,226 --> 01:02:46,730 どうされたのです? こんな所で。 595 01:02:46,730 --> 01:02:50,033 少し 考え事を…。 596 01:02:57,741 --> 01:03:00,243 つる家まで送りましょう。 597 01:03:36,212 --> 01:03:38,515 源斉先生。 598 01:03:41,084 --> 01:03:51,594 道が枝分かれして 迷いに迷った時 源斉先生なら どうなさいますか。 599 01:03:58,401 --> 01:04:02,706 私なら 心星を探します。 600 01:04:06,142 --> 01:04:08,812 心星? 601 01:04:08,812 --> 01:04:12,682 そう 心星です。 602 01:04:12,682 --> 01:04:17,387 あそこに輝く あれが心星ですよ。 603 01:04:19,556 --> 01:04:25,261 あの星こそが 天の中心なんです。 604 01:04:25,261 --> 01:04:30,767 全ての星は あの心星を軸に回っているんですよ。 605 01:04:34,370 --> 01:04:41,144 悩み 迷い 考えが堂々巡りしている時でも➡ 606 01:04:41,144 --> 01:04:48,918 きっと 自身の中には 揺るぎないものが潜んでいるはずです。 607 01:04:48,918 --> 01:04:51,921 これだけは譲れないというものが。 608 01:04:57,560 --> 01:05:04,000 それこそが その人の生きる標となる心星でしょう。 609 01:05:04,000 --> 01:05:25,688 ♬~ 610 01:05:25,688 --> 01:05:29,025 どうぞ どうぞ。 どうぞ。 611 01:05:29,025 --> 01:05:31,027 うまいね! 612 01:05:33,196 --> 01:05:36,499 おいしい。 ほんまに おいしいわ。 613 01:05:38,368 --> 01:05:41,271 こいつはいけねぇ。 ヘヘヘッ。 614 01:05:41,271 --> 01:05:43,773 私 こんなにおいしいの 生まれて初めてです。 615 01:05:51,714 --> 01:05:54,551 ごちそうさん! (芳)あっ ありがとうございます。 616 01:05:54,551 --> 01:05:57,387 おかげさんで生き返ったぜ。 ありがとよ! 617 01:05:57,387 --> 01:06:14,404 ♬~ 618 01:07:09,325 --> 01:07:12,028 よう 下がり眉。 619 01:07:15,131 --> 01:07:17,133 どうした。 620 01:07:25,508 --> 01:07:30,179 俺の目の中に 何かあるのか。 621 01:07:30,179 --> 01:07:34,183 ん? フッ ハハッ。 622 01:07:38,688 --> 01:07:40,990 お許し下さいませ。 623 01:07:45,461 --> 01:07:51,034 料理は 私の生きる縁です。 624 01:07:51,034 --> 01:07:56,539 それを手放すなど できません。 625 01:07:56,539 --> 01:08:02,779 この命がある限り 一人の料理人として➡ 626 01:08:02,779 --> 01:08:06,482 料理の道を 存分に全うしたく存じます。 627 01:08:40,183 --> 01:08:43,686 顔を上げよ 下がり眉。 628 01:08:50,693 --> 01:08:55,398 その道を選ぶのだな。 629 01:08:59,202 --> 01:09:01,404 はい。 630 01:09:07,910 --> 01:09:14,317 そうか 相分かった。 631 01:09:14,317 --> 01:09:54,524 ♬~ 632 01:09:54,524 --> 01:09:57,226 ならば その道を行くのだ。 633 01:10:04,534 --> 01:10:08,337 あとのことは 何も案ずるな。 634 01:10:11,407 --> 01:10:15,845 お前は 誰にも 何も言わずともよい。 635 01:10:15,845 --> 01:10:18,347 全て俺に任せておけ。 636 01:10:21,717 --> 01:10:23,720 分かったな。 637 01:10:23,720 --> 01:11:36,058 ♬~ 638 01:11:36,058 --> 01:11:38,060 よいか 澪。 639 01:11:42,732 --> 01:11:47,737 その道を行くと決めた以上 もはや迷うな。 640 01:11:51,240 --> 01:11:55,578 道は➡ 641 01:11:55,578 --> 01:11:57,880 一つきりだ。 642 01:11:57,880 --> 01:12:39,589 ♬~ 643 01:12:39,589 --> 01:12:43,359 あさひ太夫をよこしてもらいましょう。 644 01:12:43,359 --> 01:12:47,230 いつの日か また あの橋の真ん中に2人並んで➡ 645 01:12:47,230 --> 01:12:49,865 真っ青な天を仰ぐ日が来る。 646 01:12:49,865 --> 01:12:53,369 いつの日か きっと。